粒子状物質検出装置
【課題】被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置において、検出素子の載置方向の違いによる影響を廃除すると共に被測定ガスの流速変化に対応しつつ、粗大粒子による測定誤差を減らした信頼性の高い粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】少なくとも検出素子1を覆う略有底筒状に形成したカバー体3の基端側側面300に被測定ガス導入孔301を設け、底部310に被測定ガス導出孔311を設けて、被測定ガスを検出素子1の長手軸方向に沿って移動させる流れを形成すると共に、検出素子1の内側に一端151が検出素子1の基端側で被測定ガスの進行方向に直交する方向に開孔し、他端142が検出素子1の先端側で被測定ガス導出孔311に対向する方向に開孔する被測定ガス通気路141を区画し、被測定ガス通気路141内に堆積する粒子状物質の量によって変化する電気的特性を検出する一対に検出用電極12、13を設ける。
【解決手段】少なくとも検出素子1を覆う略有底筒状に形成したカバー体3の基端側側面300に被測定ガス導入孔301を設け、底部310に被測定ガス導出孔311を設けて、被測定ガスを検出素子1の長手軸方向に沿って移動させる流れを形成すると共に、検出素子1の内側に一端151が検出素子1の基端側で被測定ガスの進行方向に直交する方向に開孔し、他端142が検出素子1の先端側で被測定ガス導出孔311に対向する方向に開孔する被測定ガス通気路141を区画し、被測定ガス通気路141内に堆積する粒子状物質の量によって変化する電気的特性を検出する一対に検出用電極12、13を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置に関し、特に内燃機関の燃焼排気を浄化する排気浄化システムに好適に利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ディーゼルエンジン等において、排気ガスに含まれる環境汚染物質、特に煤粒子(Soot)及び可溶性有機成分(SOF)を主体とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に排気ガスを通過させてPMを捕捉する。
【0003】
DPFは、PM捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大したり、PMのすり抜けが増加したりするおそれがあり、定期的に再生処理を行って捕集能力を回復させている。再生時期は、一般的には、PM捕集量の増加により前後差圧が増大することを利用しており、このため、DPFの上流及び下流の圧力差を検出する差圧センサが設置される。再生処理は、ヒータ加熱あるいはポスト噴射等により高温の燃焼排気ガスをDPF内に導入し、PMを燃焼除去する。
【0004】
一方、排気ガス中のPMを直接検出可能なセンサとして、絶縁性を有する基板の表面に、一対の導電性電極を形成し、基板の裏面又は内部に発熱体を形成した電気抵抗式のセンサが提案されている。このセンサをDPFの下流に設置した場合は、DPFをすり抜けるPMを検出することになり、車載式故障診断装置(OBD;On Board Diagnosis)においてDPFの作動状態を監視し、例えば亀裂や破損といった異常の早期検出に利用可能である。
また、近年、DPFをすり抜ける50nm以下の極めて微細な粒子状物質が問題視されてきている。
【0005】
特許文献1には、このような微細な粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置として、粒子状物質検出素子本体に貫通孔を形成し、貫通孔を形成する壁面内部に、誘電体で覆われた一対の電極を埋設した構成が開示されている。この粒子状物質検出素子では、一対の電極間に電圧を印加して、貫通孔内に放電を生起させ、放電により貫通孔内を通過する粒子状物質に荷電して貫通孔の内壁面に電気的に吸着させ、静電容量等の貫通孔壁面の電気的特性の変化を測定することによって被測定ガス中の粒子状物質を検出しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1にあるように、粒子状物質検出素子の両側面を貫通するように貫通孔を設けた構成では、不可避的に、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子との位置関係によって貫通孔に流入する被測定ガスの流量が大きく変動することが判明した。
例えば、被測定ガスの進行方向と粒子状物質検出素子に設けた貫通孔の開口方向とが直交し、貫通孔の両端に流れる被測定ガスの流速が略等しく、貫通孔内に圧力差が生じないような場合には、粒子状物質の荷電による粒子状物質の捕集を行おうにも貫通孔内に被測定ガスがほとんど流入しなくなる虞がある。
一方、被測定ガスの進行方向と粒子状物質検出素子に設けた貫通孔の開口方向とが一致する場合には、流速に比例した流量の被測定ガスが貫通孔内に流入する反面、流速が早い場合には、貫通孔内に捕集された粒子状物質が被測定ガスによって吹き飛ばされる虞もある。
【0007】
一般に、粒子状物質検出装置では、粒子状物質検出素子保護のため、粒子状物質検出素子の被測定ガスに晒される部分は、開口を設けたカバー体で覆われている。
したがって、従来の粒子状物質検出装置では、被測定ガスの進行方向と貫通孔の開口方向とが所定の位置関係となるように、カバー体の開口方向と貫通孔の開口方向とを特定し、さらに、粒子状物質検出装置を被測定ガス流路に組み付ける際にも、被測定ガスの進行方向と貫通孔の開口方向とを特定しないと、粒子状物質を安定して検出することができなくなる虞がある。
【0008】
また、内燃機関の燃焼排気を被測定ガスとした場合、機関の運転状況によって被測定ガスである燃焼排気の流速が変化する。
ところが、従来の粒子状物質検出装置では、被測定ガスの流速の変化と粒子状物質検出素子内に取り込まれる被測定ガスの流量の変化とが必ずしも一致せず、検出出力の変化が被測定ガス中の粒子状物質の変化によるものなのか、被測定ガスの流速の変化によるものなのか区別することが困難となる虞もある。
【0009】
さらに、従来の粒子状物質検出装置では、DPFをすり抜ける極めて微細な粒子状物質を検出可能なレベルに感度を高めると、比較的大きな粒径の粒子状物質やその凝集体等が偶発的に捕集された場合と微細な粒子状物質の堆積された場合とを区別して検出することができず、DPFの状態を誤判定する虞もある。
【0010】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、製造工程において検出素子の組み付け方向を考慮したり、被測定ガス流路への組み付け時の方向性を考慮したりする必要がなく、粒子状物質検出素子の周方向の組み付け角度に拘わらず安定した検出を実現すると共に、粗大粒子の誤検出を防ぎ、被測定ガス流路中の極めて微細な粒子状物質を安定して検出することが可能で、しかも、被測定ガスの流速変化に一致して検出素子内に取り込む被測定ガスの流量が線形に変化し、被測定ガスの流速の変化と被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量の変化とを区別して検出できる信頼性の高い粒子状物質検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明では、軸方向に伸びる略平板状に形成され、その先端側が被測定ガス中に配設された絶縁性基体に一対の検出用電極を設け、該検出用電極間に堆積する被測定ガス中の粒子状物質の量によって変化する電気的特性を測定して、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出素子を備える粒子状物質検出装置において、
被測定ガス導入孔として、上記粒子状物質検出素子を覆う略有底筒状に形成したカバー体の基端側外周に複数の貫通孔を穿設して、被測定ガス導出孔として、上記カバー体の底部に一、又は、複数の貫通孔を穿設して、上記カバー体内に導入された被測定ガスが上記検出素子の基端側から先端側に向かって長手軸方向に沿って移動する流れを形成すると共に、
上記粒子状物質検出素子の内側に、その軸方向に伸びる被測定ガス通気路を区画し、該被測定ガス通気路の基端側を被測定ガスの進行方向に直交する方向に向かって開孔せしめ、その先端側を上記被測定ガス導出孔に対向する方向に開孔せしめて、上記一対の検出用電極を上記被測定ガス通気路内に流れる被測定ガスの流速が安定する流速安定領域に対向する位置に配設する。
【0012】
請求項1の発明によれば、上記カバー体が被測定ガス流路に対して如何なる回転方向で組み付けられていようとも、また、上記粒子状物質検出素子が上記カバー体の周方向に対して如何なる角度で組み付けられていようとも、上記粒子状物質検出素子の長手軸方向に沿って被測定ガスが流れたときに、上記粒子状物質検出素子の内側に区画した上記被測定ガス通気路の基端側開孔と先端側開孔との圧力差によって、必然的に被測定ガスが上記被測定ガス通気路内に引き込まれる。
また、本発明によれば、上記粒子状物質検出素子の周方向の組み付け角度の変化によって、上記被測定ガス通気路内に導入される被測定ガスの流量の変化が少ないことが判明した。
したがって、製造時や組み付け時に粒子状物質検出素子の方向性を考慮することなく粒子状物質検出素子の周方向の組み付け角度に拘わらず安定した検出を実現することができる。
しかも、本発明では、上記流速安定領域に対向する位置に上記一対の検出電極が形成されているので、極めて安定した条件で被測定ガス中に含まれる粒子状物質の検出を行うことができる。
さらに、本発明によれば、被測定ガスの流速の変化に対して、上記被測定ガス通気路内に導入される被測定ガスの流量がほぼ線形に変化することが判明した。
したがって、被測定ガスの流速の変化と被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量の変化とを区別して検出することが可能となり、極めて信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現できる。
【0013】
請求項2の発明では、上記被測定ガス通気路の基端側開孔に延設して、基端側開孔に対向する位置における上記絶縁性基体の表面を窪ませて粗大粒子捕集部とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、上記被測定ガス通気路内に導入された被測定ガス中に含まれる粒子状物質のうち、比較的粒径の大きな粗大粒子、又は、複数の粒子が集合した凝集粒子は、慣性により上記粗大粒捕集部に衝突し、上記一対の検出用電極の形成された上記流速安定領域に移動することなく捕集され、粒径の微細な粒子状物質が分級されて、被測定ガスと共に上記流速安定領域に移動し、上記一対の検出用電極によって検出される。
【0015】
また、具体的な検出用電極の形状として、請求項3の発明のように、上記一対の検出用電極が、上記被測定ガス通気路を区画する内壁の一の表面上に形成され、外部に設けた検出回路に接続する一対の検出用電極リード部に接続して複数の検出用電極検出部を一定の間隙を隔てて交互に引き出した櫛歯状電極でも良いし、請求項4の発明のように、上記一対の検出用電極が、上記絶縁性基体の内部に埋設され、上記被測定ガス通気路を挟んで対向する略平板状に形成された検出用電極検出部と、それぞれの検出用電極検出部と外部に設けた検出回路とを接続する一対の検出用電極リード部とで構成しても良い。
いずれの場合であっても、粒子状物質検出素子の配置方向に拘わらず、上記被測定ガス通気路内に導入される被測定ガスの流速が安定させることができるので、極めて容易に信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現できる。
また、上記一対の電極間に電圧を印加して、粒子状物質の捕集性を高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図2】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【図3】比較例における従来の粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図4】比較例における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【図5】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その時の粒子状物質検出装置内の被測定ガスの流れを示す流れ解析図。
【図6】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが平行となる場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その時の粒子状物質検出装置内の被測定ガスの流れを示す流れ解析図。
【図7】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った横断面における流れ解析図、(c)は、本図(a)中B−Bに沿った横断面における流れ解析図、(d)は、本図(c)の要部拡大図。
【図8】比較例における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その粒子状物質検出装置内における縦断面に沿った被測定ガスの流れを示す流れ解析図、(c)は、本図(b)の要部拡大図。
【図9】比較例における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが平行となる場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その粒子状物質検出装置内における縦断面に沿った被測定ガスの流れを示す流れ解析図、(c)は、本図(b)の要部拡大図。
【図10】比較例における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った横断面における流れ解析図、(c)は、本図(a)中B−Bに沿った横断面における流れ解析図、(d)は、本図(c)の要部拡大図。
【図11】比較例と共に、本発明の粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、被測定ガスの流速変化に対する効果を示す特性図、(b)は、検出素子の周方向の載置角度変化に対する効果を示す特性図。
【図12】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図13】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【図14】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図15】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6の概要について説明する。
本発明の粒子状物質検出装置6は、内燃機関の燃焼排気流路に配設され、燃焼排気を被測定ガスとして、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を粒子状物質検出素子1の先端に設けた一対の検出用電極12、13に捕集し、検出用電極間(12、13)に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量に応じて変化する検出用電極間(12、13)の抵抗値や静電容量等の電気的特性を検出して、被測定ガス中の粒子状物質の量を検出するものであり、特に、粒径が50nm以下の極めて微細な、粒子状物質を検出するのに好適なものである。
【0018】
本実施形態における粒子状物質検出装置6は、図略の被測定ガス流路に固定される略筒状のハウジング5の内側に、インシュレータ4及び封止部材40を介して固定される粒子状物質検出素子1と、その被測定ガスに晒される部分を覆う2重筒構造のカバー体2、3とによって構成され、図略の通電制御装置及び検出回路に接続されている。
【0019】
粒子状物質検出素子1を覆う最も内側のカバー体内筒3は、略有底筒状に形成され、被測定ガス導入孔として、側面部300の基端側外周に複数の内筒側面貫通孔301が等間隔に穿設され、被測定ガス導出孔として、内筒底部310には一、又は、複数の内筒底部貫通孔311が穿設されている。
なお、本実施形態において、内筒側面貫通孔301は、周方向に等間隔で6カ所に穿設されている。
このため、カバー体内筒3内に導入された被測定ガスは粒子状物質検出素子1の基端側から先端側に向かって長手軸方向に沿って移動する流れを形成する。
このとき、内筒側面貫通孔301が複数設けてあるので、周方向に回転して組み付けられても、カバー体内筒3内を流れる被測定ガスの流れ方向への影響は小さい。
【0020】
さらに、カバー体内筒3を覆うように略有底筒状に形成されたカバー体外筒2が同心に設けられており、カバー体外筒2の側面部200の先端側外周に複数の外筒側面貫通孔201が穿設され、外筒底部210には、一、又は、複数の外筒底部貫通孔211が穿設されている。
カバー体外筒2は、被測定ガスを直接的にカバー体内筒3内に導入するのではなく、被測定ガスの流速を制限して、カバー体内筒3内に導入させることができ、内燃機関の運転状況に応じて変化する被測定ガスの流速の影響を小さくすることができる。
【0021】
また、外筒側面貫通孔201を先端側に設け、内筒側面貫通孔301を基端側に設けてあるので、外筒側面貫通孔201から導入された被測定ガスが内筒側面貫通孔301に導入されるときに、被測定ガスの進行方向が変化するので、被測定ガス中に含まれる粒子状物質のうち、比較的大きな粒径の粗大粒子の一部は、カバー体外筒2とカバー体内筒3との間に捕集され、カバー体内筒3の内側に導入される粒子状物質を分級する効果も発揮される。
【0022】
本発明の要部である粒子状物質検出素子1は、アルミナ等の絶縁性耐熱材料を用いて略軸方向に伸びる略平板状に形成された絶縁基体10、11、14、15の内側に被測定ガスを導入する被測定ガス通気路141が区画されている。
被測定ガス通気路141の基端側開孔部152は、粒子状物質検出素子1の被測定ガスに晒される部分の基端側に位置する一方の表面側に引き出され被測定ガスの進行方向に対して直交するような方向に開孔している。
【0023】
さらに基端側開孔部152に延設して、被測定ガスの進行方向が急峻に変化するように屈曲して粒子状物質検出素子1内を軸方向に伸びる被測定ガス通気路141が形成されている。
被測定ガス通気路141の先端側開孔部142は、内筒底部開孔311に対向する方向に開孔している。
また、基端側開孔部152の反開孔方向には、反開孔方向に窪んだ粗大粒子捕集部111が形成されている。
【0024】
被測定ガス通気路141を区画する内壁の一の表面上には、一対の検出用電極12、13が形成されている。
本実施形態においては、本図(b)に示すように、検出用電極12、13は、略短冊状に形成された複数の検出用電極検出部120、130が交互に配設され、それぞれの検出用電極検出部120、130が検出用電極リード部121、131に接続された櫛歯状に形成されている。
さらに検出用電極リード部121、131は、外部に設けた図略の検出回路に接続されている。
また、検出用電極検出部120、130と検出用電極リード部121、131とが接続された部分、検出用電極131、121に対向する検出用電極検出部120、130の先端部分、及び、検出用電極リード部121、131は、絶縁性基体14によって覆われ、検出用電極検出部120、130が平行に並べられた部分のみが被測定ガス通気路141に露出している。
なお、検出用電極検出部120、130は、被測定ガス通気路141内を流れる被測定ガスの流速が安定する流速安定領域に対向する位置に設けられている。
【0025】
図2を参照して、本発明の要部である粒子状物質検出素子1のより具体的な構成並びに製造方法について説明する。
本実施形態において、絶縁性基体10、11、14、15は、アルミナ等の絶縁性耐熱素材をドクターブレード法、プレス等の公知の方法により、略平板状に形成されている。
絶縁性基体15は基端側開孔部形成層を構成し、略平板状の基体部150の被測定ガスに晒される部分の基端となる位置に基端側開孔部151を構成する貫通孔が穿設され、基端側に一対の検出用電極端子部123、133を露出するための切り欠き部152、153が形成されている。
【0026】
絶縁性基体14は、被測定ガス通気路形成層を構成し、被測定ガス通気孔141及び先端側開孔部142を区画するために、先端側から被測定ガス導入孔151に対向する位置まで略コ字形に切り欠かれ、さらに、基端側に一対の検出用電極端子部123、133を露出するための切り欠き部143、144が形成されている。
絶縁性基体11は捕集部形成層を構成し、平板状の基体部110の被測定ガス導入孔151に対向する位置に粗大粒子捕集部111として矩形の貫通孔が穿設してある。
本実施形態においては、絶縁性基体11の表面にPt等の導体材料を用いて、スクリーン印刷、メッキ、蒸着等の公知の方法によって、一対の検出用電極12、13が形成されている。
【0027】
また、本実施形態においては、一対の検出用電極12、13は、複数の略平板状に形成された検出用電極検出部120、130が一定の間隙を隔てて交互に配設され、それぞれの検出用電極検出部120、130の一端が検出用電極リード部121、131に接続された櫛歯状に形成されている。
さらに、検出用電極リード部121、131の基端側には、検出電極用端子部123、133が形成されている。
絶縁性基体10、11、14、15及び一対の検出用電極12、13が一体的に積層されセンサ部(10〜15)を構成している。
【0028】
さらに、絶縁性基体10に積層して、ヒータ部16及び絶縁性基体17が形成されている。
ヒータ部16は、通電により発熱する発熱体160と発熱体リード部161、162と発熱体端子部163、164とによって構成され、厚膜印刷、メッキ。蒸着等の公知の方法で絶縁性基体17と絶縁性基体16との間に形成されている。
絶縁性基体17は、アルミナ等の絶縁性耐熱材料を用いて、ドクターブレード法、プレス等の公知の方法を略平板状に形成され、基端側に、発熱体端子部163、164を露出させるための切り欠き部171、172が形成されている。
【0029】
上述のセンサ部(10〜15)と、ヒータ部16、絶縁性基体17と積層し、一体的に焼結することにより、本発明の要部である絶縁性基体の内部に基端側が被測定ガスの進行方向に対して直交する方向に開口する基端側開孔部151となり、先端側が底部開孔311に対向する先端側開孔部142となった被測定ガス通気路141を区画した粒子状検出素子1が完成する。
なお、本実施形態において、捕集部形成層11を廃して、絶縁性基体10の表面に一対の検出用電極12、13を形成した構成としても良い。この場合、絶縁性基体10の被測定ガス導入孔151に対向する位置における表面に粗大粒子が衝突して捕集されることになる。
【0030】
さらに、上記実施形態においては、絶縁性基体14、15、17に切り欠き部143,144、152、153、171、172を設けることによって、検出用電極端子部123、133、発熱体端子部163、164を露出させるようにした構成を示したが、スルーホール電極を介して、絶縁性基体15、17の表面にそれぞれの電極端子部を引き出すような構成としても良い。
なお、ヒータ部16は、通電により発熱体160が発熱し、検出用電極12,13の温度を一定とし、検出条件を安定化したり、検出用電極12、13間に堆積した粒子状物質を加熱除去したりすることに用いられる。
【0031】
ここで、図3、図4を参照して、比較例とした、従来の絶縁性基体14zの側面方向を貫通する被測定ガス通気孔141zを区画した粒子状物質検出素子1z及びそれを備えた粒子状物質検出装置6zについて説明する。
なお、比較例の粒子状物質検出装置6zにおいては、粒子状物質検出素子1z以外は、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6と同じ構成としてあり、本発明との相違点を明らかにするために、同一の構成については同じ符号を付し、相違する構成については、類似する部分に対応する符号にzの符号を付してある。
比較例における粒子状物質検出素子1zでは、図3(a)に示すように、絶縁性基体10z、14z、15の両側側面を貫通する方向に被測定ガス通気孔141zが穿設してあり、図3(b)に示すように、一対の検出用電極検出部120z、130zと検出用電極リード部121z、131zとの接続部122z、132z、検出用電極リード部121z、131zの一部、及び、他方の検出用電極リード部131z、121zに対向する検出用電極検出部120z、130zの先端が被測定ガス通気路141zに露出している。
【0032】
図5〜図10を参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6の効果と比較例における粒子状物質検出装置6zの効果の違いについて説明する。
本発明の実施例1として、本発明の粒子状物質検出装置6において、粒子状物質検出素子1の組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、90°となった場合、即ち、基端側開孔部152が、被測定ガスの下流方向に向かって開孔する位置となった場合の横断面を図5(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図5(b)に示す。
【0033】
図5(b)に示すように、外筒側面開孔201を被測定ガス導入孔としてカバー体外筒2内に導入され、外筒側面開孔201から導入された被測定ガスは、カバー体内筒3との間隙を上昇し、基端側に設けられた内筒側面開孔301からカバー体内筒3の内側に導入され、さらに、粒子状物質検出素子1の長手軸方向に沿うように下降し、内筒底部開孔311及び外筒底部開孔211を介して、外部に排出される。
このとき、粒子状物質検出素子1の基端側で粒子状物質検出素子1の長手軸に対して直交する方向に開孔する基端側開孔部151の周囲を流れる被測定ガスと、内筒底部開孔311に対向する方向に開口する先端側開孔部142の周囲を流れる被測定ガスとの圧力差によって、図5(b)に示すように、基端側開孔部151から取り込まれた被測定ガスが、被測定ガス通気路141内を通過し、先端側開孔部142に向かう流れが形成される。
【0034】
被測定ガス通気路141の基端側では、被測定ガスの進行方向が大きく屈曲するため、被測定ガス中に含まれる粒径の大きな粗大粒子状物質は、慣性により、捕集部111に衝突し捕集され、粒径が50nm以下の、極めて微細な粒子状物質は、被測定ガスの流れに沿って被測定ガス通気路141内を移動する。
被測定ガス通気路141の先端側に向かうにつれて、被測定ガスの流速は安定し、被測定ガス安定領域においては、ほぼ一定の流速となっている。
【0035】
本発明の実施例2として、本発明の粒子状物質検出装置6において、粒子状物質検出素子1の組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、0°となった場合、即ち、基端側開孔部152が、被測定ガスの流れ方向に対して直交方向に開孔する位置となった場合の横断面を図6(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図6(b)に示す。
図6(b)に示すように、実施例2においても、被測定ガス通気路141内には、基端側開孔部151から、先端側開孔部142に向かう流れが形成されており、実施例1と同様に、被測定ガス通気路141の先端側に向かうにつれて、被測定ガスの流速は安定し、被測定ガス安定領域においては、ほぼ一定の流速となっている。
【0036】
図7を参照して、実施例2における断面方向の流れ解析結果について説明する。
図7(a)は、流れ解析位置を示す縦断面図であり、図7(b)、(c)は、それぞれ、図7(a)中A−A及びB−Bに沿った断面における流れ解析結果を示し、図7(d)は、図7(c)の要部拡大図である。
図7(b)に示すように、内筒側面貫通孔301から導入された被測定ガスは、粒子状物質検出素子1の基端側では、流速が早く、カバー体外筒2の周囲を流れる被測定ガスの上流側となる図の左側から下流側となる右側に向かう流れが形成されている。これは、外筒側面貫通孔201から導入された被測定ガスの流速及び圧力が被測定ガスの上流側ほど高いため、その影響が残っているものと考えられる。
しかし、カバー体内筒3の内側を流れる被測定ガスは、カバー体内筒3の内周壁と粒子状物質検出素子1の表面とによって整流され、図7(c)に示すように、カバー体内筒3内を流れる被測定ガスは、基端側から先端側に向かう均一な流速分布を示す流れとなっている。
さらに、図7(c)及び(d)に示すように、被測定ガス通気路141内の尾流れは、基端側から先端側に向かう極めて均一な流れとなっていることが分かる。
【0037】
ここで、比較例における流れ解析結果について説明する。
比較例1として、従来の粒子状物質検出装置6zにおいて、粒子状物質検出素子1zの組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、90°となった場合、即ち、被測定ガス通気孔141zが被測定ガスの流れ方向に対して直交するように開孔する位置となった場合の横断面を、図8(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図8(b)に示す。
図8(b)に示すように、粒子状物質検出素子1zの周囲に形成される被測定ガスの流れは、カバー体2、3が同じであるため、当然のことながら、実施例1と同様の流れを形成している。
しかし、比較例1においては、被測定ガス通気孔141zが、側面方向に開孔している。このため、開口の両側の流速がほぼ均等となり、図8(c)に示すように、被測定ガス通気孔141z内には、基端側から先端側に向かう小さな流れが形成されるものの、被測定ガス通気孔141zの両側の開孔を横断する流れはほとんど形成されない。
このため、比較例1においては、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向が直交するように載置された場合には、被測定ガス通気孔141z内に被測定ガスがほとんど取り込まれない虞があることが判明した。
【0038】
比較例2として、従来の粒子状物質検出装置6zにおいて、粒子状物質検出素子1zの組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、0°となった場合、即ち、被測定ガス通気孔141zが、被測定ガスの流れ方向に対して平行となる方向に開孔する位置となった場合の横断面を図9(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図9(b)に示す。
図9(b)、(c)に示すように、比較例2においては、被測定ガス通気路141z内に、一方の開孔から被測定ガス通気孔141zに斜めに侵入した被測定ガスが、他方の開孔から排出され、図の左側から右側に向かう流れ、即ち、被測定ガスの上流側から下流側に向かう流れと一致する方向の大きな流れが形成されているのが分かる。
【0039】
比較例2における。断面方向の流れ解析結果を図10に示す。
本図(c)、(d)に示すように、被測定ガス通気孔141z内に被測定ガスの上流側から下流側に向かう流れと一致する方向の大きな流れが形成されているのが分かる。
このため、比較例2においては、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向が平行となるように載置された場合には、被測定ガス通気孔141z内に極めて早い流速で被測定ガスが流入することが判明した。
【0040】
図11(a)は、被測定ガスの流速の変化に対する本発明の粒子状物質検出装置6の被測定ガス通気路141内に流れる被測定ガスの流量変化と比較例の粒子状物質検出装置6zの被測定ガス通気路141z内を流れる被測定ガスの流量変化との相違を示すものである。なお、粒子状物質検出素子1及び粒子状物質検出素子1zは、被測定ガスの流れ方向に対して、幅方向が直交するように載置された条件で測定した結果を示す。
本図(a)に実施例1として示すように、本発明の粒子状物質検出装置6においては、内燃機関の運転状況に応じて被測定ガスの流速V(m/s)が変化したとき、それに追従して、ほぼ直線的に被測定ガス通気路1内に導入される被測定ガスの流入量Q(mm3/s)も変化し、線形性が保たれていることが分かる。
一方、本図(a)に比較例1として示すように、従来の粒子状物質検出装置6zにおいては、流速が遅い場合には、ほとんど被測定ガス通気路141z内に被測定ガスが流入せず、流速が早い場合には、急激に被測定ガス通気路141z内に導入される被測定ガスの流量が多くなり、線形性が保たれていないことが分かる。
【0041】
図11(b)を参照して、一定の流速の被測定ガスの流れ方向に対して、周方向に粒子状物質検出素子1、1zの角度を変化させたときの影響について説明する。
図11(b)に実施例2として示すように、本発明の粒子状物質検出装置6においては、粒子状物質検出素子1の載置された位置が周方向に回転した場合でも、ほぼ一定の流量となることが判明した。
これは、上述の如く、本発明によれば、粒子状物質検出素子1の周囲を流れる被測定ガスの基端側開口部151における圧力と先端側開口部142における圧力との圧力差によって被測定ガス通気路141内の流速が決定されるためと思料する。
一方、図11(b)に比較例2として示すように、従来の粒子状物質検出装置6zにおいては、粒子状物質検出素子1の載置された位置が周方向に回転した場合に、被測定ガス通気孔1z内に導入される被測定ガスの流量が大きく変化することが判明した。
被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向とが直交する場合には、被測定ガス通気路141z内にほとんど被測定ガスが流入せず、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向とが平行となる場合には、被測定ガス通気路141z内に多くの被測定ガスが導入されることになる。
したがって、従来の粒子状物質検出装置6zでは、被測定ガスの流れ方向と、粒子状物質検出素子1zの載置方向とを特定の条件としなければ、検出結果が全く信頼できないものとなる虞がある。
【0042】
また、本実施形態によれば、図1(b)に示したように、櫛歯状に形成された検出用電極12、13の複数の検出用電極検出部120、130が平行に並べられた部分のみが被測定ガス通気路141に露出しているので、検出用電極12、13間に電圧を印加し、被測定ガス通気路141内を通過する被測定ガス中に含まれる粒子状物質を荷電して検出用電極12、13間に捕集させようとした場合、検出用電極12、13間の電界強度が均一な領域のみが、被測定ガス通気路141に露出しているので、粒子状物質の偏在を防ぎ、安定して出力することができる。
【0043】
一方、図3(b)に示したように、比較例においては、櫛歯状に形成された一対の検出用電極検出部120z、130zと検出用電極リード部121z、131zとの接続部122z、132z、検出用電極リード部121z、131zの一部、及び、他方の検出用電極リード部131z、121zに対向する検出用電極検出部120z、130zの先端が被測定ガス通気路141zに露出している。
このため、検出用電極検出部120z、130z間に電圧を印加し、被測定ガス通気路141z内を通過する被測定ガス中に含まれる粒子状物質を荷電して検出用電極12z、13z間に捕集させようとした場合、検出用電極接続部122z、132zや、検出用電極検出部120z、130zの先端に不可避的に電界集中する部分が表れる。このため、電界強度の高い部分への被測定ガス中に含まれる粒子状物質の偏在を招く虞があり、出力結果の信頼性をさらに下げることになる。
【0044】
以上のことから、本発明の粒子状物質検出装置6を用いれば、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1の周方向の角度が変化しても、ほぼ一定の条件で、被測定ガス通気孔141内に被測定ガスが導入される。
したがって、比較例として示した従来の粒子状物質検出装置6zのように、製造時や、被測定ガス流路へ組み付ける際に、粒子状物質検出素子1zの方向性を考慮する必要がなく、極めて容易に、信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現できる。
また、本発明の粒子状物質検出装置6によれば、内燃機関の運転状況の変化によって、被測定ガスとして排出される燃焼排気の排出量が変化したときに、被測定ガス通気孔141内に導入される被測定ガスの流量は、ほぼ線形に変化するので、検出された被測定ガス中の粒子状物質の量の変化が、燃焼条件の変化によるものなのか、DPF等の異常によるものかを判断することも容易となる。
【0045】
なお、上記実施形態において、図1等には、外筒底部開孔211、内筒底部開孔311をそれぞれ、1個のみ穿設した例を示したが、カバー体2、3の底部210、310に底部開孔211、311が複数設けられている場合には、その一部は被測定ガスを被測定ガス流路側に排出する導出孔として機能し、他の一部は被測定ガスをカバー体2、3の内側に取り込む導入孔として機能し、カバー体内に導入された被測定ガスの交換が容易となる。
加えて、外筒底部開孔211、内筒底部開孔311が複数の場合、カバー体2、3の横断面方向の流れが変化する可能性があるが、カバー体2、3の内側に流れる被測定ガスの流速に比べ、カバー体2、3の外側の被測定ガス流路を流れる被測定ガスの流速は遥かに早いので、カバー体2、3の底部に穿設した孔の数に拘わらず、カバー体内筒3の内側に形成される被測定ガスの流れは、全体としてカバー体3の基端側から先端側に向かうこととになる。
したがって、基端側開孔部152における圧力と先端側開孔部142における圧力差によって、被測定ガス通気路141内には、必然的に基端側開孔部152から先端側開孔部142に向かう流れが形成されることになる。
このため、カバー体の底部に設けた開孔の数に拘わらず、上記実施形態と同様の効果が発揮されるものと思料する。また、以下に示す実施形態においても同様である。
【0046】
図12、図13を参照して、本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置6aについて説明する。
上記第1の実施形態においては、絶縁性基体10、又は、捕集部形成層11の表面に一対の検出用電極12、13を形成し、これに、通気路形成層14を積層した例を示したが、本実施形態においては、絶縁性基体15の裏面側の表面に、一対の検出用電極12a、13aを櫛歯状に形成し、これに積層して、通気路形成層として、絶縁性基体14aを形成した点が相違する。このような構成としても上記実施形態と同様の効果を発揮できる。
また、本実施形態によれば、構造が簡素化され、絶縁性基体の積層数を削減でき、製造コストの削減を図ることも可能となる。
【0047】
図14、図15を参照して、本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置6bについて説明する。
上記実施形態においては、一対の検出用電極12、13として、被測定ガス通気路141を区画する内周壁の一の表面上にいわゆる櫛歯状電極を形成した例を示したが、本実施形態においては、一対の検出用電極12b、13bを、絶縁性基体10、11b、14b、15の内部に埋設され、被測定ガス通気路141を挟んで対向する略平板状に形成した検出用電極検出部120b、130bによって構成した点が相違する。
本実施形態によれば、上記実施形態と同様、被測定ガス通気路141bの基端側開口部152bと先端側開口部142bとの圧力差によって、被測定ガス通気路141b内に安定した流速で被測定ガスが導入される。
本実施形態においては、検出用電極検出部120b、130b間に電圧を印加し、被測定ガス通気路141b内を通過する粒子状物質を荷電し、絶縁性基体11b、14bの表面に付着させ、その堆積量に応じて変化する検出用電極検出部120b、130b間の静電容量を電気的特性として検出したり、検出用電極検出部120b、130b間に交流電流を印加し、検出用電極検出部120b、130b間の交流インピーダンスの変化を検出することによって、被測定ガス中の粒子状物質検出の量を検知することができる。
なお、検出用電極検出部120b、130bの表面はそれぞれ、絶縁性基体11b、14bによって覆われており、絶縁性基体11b、14bとして、上記実施形態と同様のアルミナ等を緻密に焼結した絶縁性材料を用いても良いし、多孔質に形成し、捕集性を高めた構成としても良い。
また、絶縁性基体11b、14bを誘電体によって形成して、電気的特性として静電容量を計測しても良い。
さらに、絶縁性基体11b、14bに換えて、ジルコニア等の導電性材料を用いて、電気的特性として粒子状物質の堆積量に応じて変化する導電性を検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 粒子状物質検出素子
10、11、14、15 絶縁性基体
12、13 検出用電極
120、130 検出用電極検出部
121、131 検出用電極リード部
122、132 検出用電極接続部
123、133 検出用電極端子部
111 粗大粒捕集部
141 被測定ガス通気路
142 底部開孔
151 側面開孔
16 ヒータ
160 発熱体
161、162 発熱体リード部
2 カバー体外筒
200 外筒周壁部
201 外筒周壁開孔
210 外筒底部
211 外筒底部開孔
3 カバー体内筒
300 内筒周壁部
301 内筒周壁開孔
310 内筒底部
311 内筒底部開孔
4 インシュレータ
40 封止部材
5 ハウジング
6 ガスセンサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2009−186278号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置に関し、特に内燃機関の燃焼排気を浄化する排気浄化システムに好適に利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ディーゼルエンジン等において、排気ガスに含まれる環境汚染物質、特に煤粒子(Soot)及び可溶性有機成分(SOF)を主体とする粒子状物質(Particulate Matter;以下、適宜PMと称する)を捕集するために、排気通路にディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、適宜DPFと称する)を設置することが行われている。DPFは、耐熱性に優れる多孔質セラミックスからなり、多数の細孔を有する隔壁に排気ガスを通過させてPMを捕捉する。
【0003】
DPFは、PM捕集量が許容量を超えると、目詰まりが生じて負圧が増大したり、PMのすり抜けが増加したりするおそれがあり、定期的に再生処理を行って捕集能力を回復させている。再生時期は、一般的には、PM捕集量の増加により前後差圧が増大することを利用しており、このため、DPFの上流及び下流の圧力差を検出する差圧センサが設置される。再生処理は、ヒータ加熱あるいはポスト噴射等により高温の燃焼排気ガスをDPF内に導入し、PMを燃焼除去する。
【0004】
一方、排気ガス中のPMを直接検出可能なセンサとして、絶縁性を有する基板の表面に、一対の導電性電極を形成し、基板の裏面又は内部に発熱体を形成した電気抵抗式のセンサが提案されている。このセンサをDPFの下流に設置した場合は、DPFをすり抜けるPMを検出することになり、車載式故障診断装置(OBD;On Board Diagnosis)においてDPFの作動状態を監視し、例えば亀裂や破損といった異常の早期検出に利用可能である。
また、近年、DPFをすり抜ける50nm以下の極めて微細な粒子状物質が問題視されてきている。
【0005】
特許文献1には、このような微細な粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置として、粒子状物質検出素子本体に貫通孔を形成し、貫通孔を形成する壁面内部に、誘電体で覆われた一対の電極を埋設した構成が開示されている。この粒子状物質検出素子では、一対の電極間に電圧を印加して、貫通孔内に放電を生起させ、放電により貫通孔内を通過する粒子状物質に荷電して貫通孔の内壁面に電気的に吸着させ、静電容量等の貫通孔壁面の電気的特性の変化を測定することによって被測定ガス中の粒子状物質を検出しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1にあるように、粒子状物質検出素子の両側面を貫通するように貫通孔を設けた構成では、不可避的に、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子との位置関係によって貫通孔に流入する被測定ガスの流量が大きく変動することが判明した。
例えば、被測定ガスの進行方向と粒子状物質検出素子に設けた貫通孔の開口方向とが直交し、貫通孔の両端に流れる被測定ガスの流速が略等しく、貫通孔内に圧力差が生じないような場合には、粒子状物質の荷電による粒子状物質の捕集を行おうにも貫通孔内に被測定ガスがほとんど流入しなくなる虞がある。
一方、被測定ガスの進行方向と粒子状物質検出素子に設けた貫通孔の開口方向とが一致する場合には、流速に比例した流量の被測定ガスが貫通孔内に流入する反面、流速が早い場合には、貫通孔内に捕集された粒子状物質が被測定ガスによって吹き飛ばされる虞もある。
【0007】
一般に、粒子状物質検出装置では、粒子状物質検出素子保護のため、粒子状物質検出素子の被測定ガスに晒される部分は、開口を設けたカバー体で覆われている。
したがって、従来の粒子状物質検出装置では、被測定ガスの進行方向と貫通孔の開口方向とが所定の位置関係となるように、カバー体の開口方向と貫通孔の開口方向とを特定し、さらに、粒子状物質検出装置を被測定ガス流路に組み付ける際にも、被測定ガスの進行方向と貫通孔の開口方向とを特定しないと、粒子状物質を安定して検出することができなくなる虞がある。
【0008】
また、内燃機関の燃焼排気を被測定ガスとした場合、機関の運転状況によって被測定ガスである燃焼排気の流速が変化する。
ところが、従来の粒子状物質検出装置では、被測定ガスの流速の変化と粒子状物質検出素子内に取り込まれる被測定ガスの流量の変化とが必ずしも一致せず、検出出力の変化が被測定ガス中の粒子状物質の変化によるものなのか、被測定ガスの流速の変化によるものなのか区別することが困難となる虞もある。
【0009】
さらに、従来の粒子状物質検出装置では、DPFをすり抜ける極めて微細な粒子状物質を検出可能なレベルに感度を高めると、比較的大きな粒径の粒子状物質やその凝集体等が偶発的に捕集された場合と微細な粒子状物質の堆積された場合とを区別して検出することができず、DPFの状態を誤判定する虞もある。
【0010】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、製造工程において検出素子の組み付け方向を考慮したり、被測定ガス流路への組み付け時の方向性を考慮したりする必要がなく、粒子状物質検出素子の周方向の組み付け角度に拘わらず安定した検出を実現すると共に、粗大粒子の誤検出を防ぎ、被測定ガス流路中の極めて微細な粒子状物質を安定して検出することが可能で、しかも、被測定ガスの流速変化に一致して検出素子内に取り込む被測定ガスの流量が線形に変化し、被測定ガスの流速の変化と被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量の変化とを区別して検出できる信頼性の高い粒子状物質検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明では、軸方向に伸びる略平板状に形成され、その先端側が被測定ガス中に配設された絶縁性基体に一対の検出用電極を設け、該検出用電極間に堆積する被測定ガス中の粒子状物質の量によって変化する電気的特性を測定して、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出素子を備える粒子状物質検出装置において、
被測定ガス導入孔として、上記粒子状物質検出素子を覆う略有底筒状に形成したカバー体の基端側外周に複数の貫通孔を穿設して、被測定ガス導出孔として、上記カバー体の底部に一、又は、複数の貫通孔を穿設して、上記カバー体内に導入された被測定ガスが上記検出素子の基端側から先端側に向かって長手軸方向に沿って移動する流れを形成すると共に、
上記粒子状物質検出素子の内側に、その軸方向に伸びる被測定ガス通気路を区画し、該被測定ガス通気路の基端側を被測定ガスの進行方向に直交する方向に向かって開孔せしめ、その先端側を上記被測定ガス導出孔に対向する方向に開孔せしめて、上記一対の検出用電極を上記被測定ガス通気路内に流れる被測定ガスの流速が安定する流速安定領域に対向する位置に配設する。
【0012】
請求項1の発明によれば、上記カバー体が被測定ガス流路に対して如何なる回転方向で組み付けられていようとも、また、上記粒子状物質検出素子が上記カバー体の周方向に対して如何なる角度で組み付けられていようとも、上記粒子状物質検出素子の長手軸方向に沿って被測定ガスが流れたときに、上記粒子状物質検出素子の内側に区画した上記被測定ガス通気路の基端側開孔と先端側開孔との圧力差によって、必然的に被測定ガスが上記被測定ガス通気路内に引き込まれる。
また、本発明によれば、上記粒子状物質検出素子の周方向の組み付け角度の変化によって、上記被測定ガス通気路内に導入される被測定ガスの流量の変化が少ないことが判明した。
したがって、製造時や組み付け時に粒子状物質検出素子の方向性を考慮することなく粒子状物質検出素子の周方向の組み付け角度に拘わらず安定した検出を実現することができる。
しかも、本発明では、上記流速安定領域に対向する位置に上記一対の検出電極が形成されているので、極めて安定した条件で被測定ガス中に含まれる粒子状物質の検出を行うことができる。
さらに、本発明によれば、被測定ガスの流速の変化に対して、上記被測定ガス通気路内に導入される被測定ガスの流量がほぼ線形に変化することが判明した。
したがって、被測定ガスの流速の変化と被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量の変化とを区別して検出することが可能となり、極めて信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現できる。
【0013】
請求項2の発明では、上記被測定ガス通気路の基端側開孔に延設して、基端側開孔に対向する位置における上記絶縁性基体の表面を窪ませて粗大粒子捕集部とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、上記被測定ガス通気路内に導入された被測定ガス中に含まれる粒子状物質のうち、比較的粒径の大きな粗大粒子、又は、複数の粒子が集合した凝集粒子は、慣性により上記粗大粒捕集部に衝突し、上記一対の検出用電極の形成された上記流速安定領域に移動することなく捕集され、粒径の微細な粒子状物質が分級されて、被測定ガスと共に上記流速安定領域に移動し、上記一対の検出用電極によって検出される。
【0015】
また、具体的な検出用電極の形状として、請求項3の発明のように、上記一対の検出用電極が、上記被測定ガス通気路を区画する内壁の一の表面上に形成され、外部に設けた検出回路に接続する一対の検出用電極リード部に接続して複数の検出用電極検出部を一定の間隙を隔てて交互に引き出した櫛歯状電極でも良いし、請求項4の発明のように、上記一対の検出用電極が、上記絶縁性基体の内部に埋設され、上記被測定ガス通気路を挟んで対向する略平板状に形成された検出用電極検出部と、それぞれの検出用電極検出部と外部に設けた検出回路とを接続する一対の検出用電極リード部とで構成しても良い。
いずれの場合であっても、粒子状物質検出素子の配置方向に拘わらず、上記被測定ガス通気路内に導入される被測定ガスの流速が安定させることができるので、極めて容易に信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現できる。
また、上記一対の電極間に電圧を印加して、粒子状物質の捕集性を高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図2】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【図3】比較例における従来の粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図4】比較例における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【図5】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その時の粒子状物質検出装置内の被測定ガスの流れを示す流れ解析図。
【図6】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが平行となる場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その時の粒子状物質検出装置内の被測定ガスの流れを示す流れ解析図。
【図7】本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った横断面における流れ解析図、(c)は、本図(a)中B−Bに沿った横断面における流れ解析図、(d)は、本図(c)の要部拡大図。
【図8】比較例における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その粒子状物質検出装置内における縦断面に沿った被測定ガスの流れを示す流れ解析図、(c)は、本図(b)の要部拡大図。
【図9】比較例における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが平行となる場合の位置関係を示す横断面図、(b)は、その粒子状物質検出装置内における縦断面に沿った被測定ガスの流れを示す流れ解析図、(c)は、本図(b)の要部拡大図。
【図10】比較例における粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、粒子状物質検出素子と被測定ガスの流れ方向とが直交する場合の位置関係を示す縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った横断面における流れ解析図、(c)は、本図(a)中B−Bに沿った横断面における流れ解析図、(d)は、本図(c)の要部拡大図。
【図11】比較例と共に、本発明の粒子状物質検出装置の効果を示し、(a)は、被測定ガスの流速変化に対する効果を示す特性図、(b)は、検出素子の周方向の載置角度変化に対する効果を示す特性図。
【図12】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図13】本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【図14】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置の概要を示し、(a)は、縦断面図、(b)は、本図(a)中A−Aに沿った断面における矢視平面図。
【図15】本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置の要部である粒子状物質検出素子の概要を示す展開斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6の概要について説明する。
本発明の粒子状物質検出装置6は、内燃機関の燃焼排気流路に配設され、燃焼排気を被測定ガスとして、被測定ガス中に含まれる粒子状物質を粒子状物質検出素子1の先端に設けた一対の検出用電極12、13に捕集し、検出用電極間(12、13)に堆積する被測定ガス中に含まれる粒子状物質の量に応じて変化する検出用電極間(12、13)の抵抗値や静電容量等の電気的特性を検出して、被測定ガス中の粒子状物質の量を検出するものであり、特に、粒径が50nm以下の極めて微細な、粒子状物質を検出するのに好適なものである。
【0018】
本実施形態における粒子状物質検出装置6は、図略の被測定ガス流路に固定される略筒状のハウジング5の内側に、インシュレータ4及び封止部材40を介して固定される粒子状物質検出素子1と、その被測定ガスに晒される部分を覆う2重筒構造のカバー体2、3とによって構成され、図略の通電制御装置及び検出回路に接続されている。
【0019】
粒子状物質検出素子1を覆う最も内側のカバー体内筒3は、略有底筒状に形成され、被測定ガス導入孔として、側面部300の基端側外周に複数の内筒側面貫通孔301が等間隔に穿設され、被測定ガス導出孔として、内筒底部310には一、又は、複数の内筒底部貫通孔311が穿設されている。
なお、本実施形態において、内筒側面貫通孔301は、周方向に等間隔で6カ所に穿設されている。
このため、カバー体内筒3内に導入された被測定ガスは粒子状物質検出素子1の基端側から先端側に向かって長手軸方向に沿って移動する流れを形成する。
このとき、内筒側面貫通孔301が複数設けてあるので、周方向に回転して組み付けられても、カバー体内筒3内を流れる被測定ガスの流れ方向への影響は小さい。
【0020】
さらに、カバー体内筒3を覆うように略有底筒状に形成されたカバー体外筒2が同心に設けられており、カバー体外筒2の側面部200の先端側外周に複数の外筒側面貫通孔201が穿設され、外筒底部210には、一、又は、複数の外筒底部貫通孔211が穿設されている。
カバー体外筒2は、被測定ガスを直接的にカバー体内筒3内に導入するのではなく、被測定ガスの流速を制限して、カバー体内筒3内に導入させることができ、内燃機関の運転状況に応じて変化する被測定ガスの流速の影響を小さくすることができる。
【0021】
また、外筒側面貫通孔201を先端側に設け、内筒側面貫通孔301を基端側に設けてあるので、外筒側面貫通孔201から導入された被測定ガスが内筒側面貫通孔301に導入されるときに、被測定ガスの進行方向が変化するので、被測定ガス中に含まれる粒子状物質のうち、比較的大きな粒径の粗大粒子の一部は、カバー体外筒2とカバー体内筒3との間に捕集され、カバー体内筒3の内側に導入される粒子状物質を分級する効果も発揮される。
【0022】
本発明の要部である粒子状物質検出素子1は、アルミナ等の絶縁性耐熱材料を用いて略軸方向に伸びる略平板状に形成された絶縁基体10、11、14、15の内側に被測定ガスを導入する被測定ガス通気路141が区画されている。
被測定ガス通気路141の基端側開孔部152は、粒子状物質検出素子1の被測定ガスに晒される部分の基端側に位置する一方の表面側に引き出され被測定ガスの進行方向に対して直交するような方向に開孔している。
【0023】
さらに基端側開孔部152に延設して、被測定ガスの進行方向が急峻に変化するように屈曲して粒子状物質検出素子1内を軸方向に伸びる被測定ガス通気路141が形成されている。
被測定ガス通気路141の先端側開孔部142は、内筒底部開孔311に対向する方向に開孔している。
また、基端側開孔部152の反開孔方向には、反開孔方向に窪んだ粗大粒子捕集部111が形成されている。
【0024】
被測定ガス通気路141を区画する内壁の一の表面上には、一対の検出用電極12、13が形成されている。
本実施形態においては、本図(b)に示すように、検出用電極12、13は、略短冊状に形成された複数の検出用電極検出部120、130が交互に配設され、それぞれの検出用電極検出部120、130が検出用電極リード部121、131に接続された櫛歯状に形成されている。
さらに検出用電極リード部121、131は、外部に設けた図略の検出回路に接続されている。
また、検出用電極検出部120、130と検出用電極リード部121、131とが接続された部分、検出用電極131、121に対向する検出用電極検出部120、130の先端部分、及び、検出用電極リード部121、131は、絶縁性基体14によって覆われ、検出用電極検出部120、130が平行に並べられた部分のみが被測定ガス通気路141に露出している。
なお、検出用電極検出部120、130は、被測定ガス通気路141内を流れる被測定ガスの流速が安定する流速安定領域に対向する位置に設けられている。
【0025】
図2を参照して、本発明の要部である粒子状物質検出素子1のより具体的な構成並びに製造方法について説明する。
本実施形態において、絶縁性基体10、11、14、15は、アルミナ等の絶縁性耐熱素材をドクターブレード法、プレス等の公知の方法により、略平板状に形成されている。
絶縁性基体15は基端側開孔部形成層を構成し、略平板状の基体部150の被測定ガスに晒される部分の基端となる位置に基端側開孔部151を構成する貫通孔が穿設され、基端側に一対の検出用電極端子部123、133を露出するための切り欠き部152、153が形成されている。
【0026】
絶縁性基体14は、被測定ガス通気路形成層を構成し、被測定ガス通気孔141及び先端側開孔部142を区画するために、先端側から被測定ガス導入孔151に対向する位置まで略コ字形に切り欠かれ、さらに、基端側に一対の検出用電極端子部123、133を露出するための切り欠き部143、144が形成されている。
絶縁性基体11は捕集部形成層を構成し、平板状の基体部110の被測定ガス導入孔151に対向する位置に粗大粒子捕集部111として矩形の貫通孔が穿設してある。
本実施形態においては、絶縁性基体11の表面にPt等の導体材料を用いて、スクリーン印刷、メッキ、蒸着等の公知の方法によって、一対の検出用電極12、13が形成されている。
【0027】
また、本実施形態においては、一対の検出用電極12、13は、複数の略平板状に形成された検出用電極検出部120、130が一定の間隙を隔てて交互に配設され、それぞれの検出用電極検出部120、130の一端が検出用電極リード部121、131に接続された櫛歯状に形成されている。
さらに、検出用電極リード部121、131の基端側には、検出電極用端子部123、133が形成されている。
絶縁性基体10、11、14、15及び一対の検出用電極12、13が一体的に積層されセンサ部(10〜15)を構成している。
【0028】
さらに、絶縁性基体10に積層して、ヒータ部16及び絶縁性基体17が形成されている。
ヒータ部16は、通電により発熱する発熱体160と発熱体リード部161、162と発熱体端子部163、164とによって構成され、厚膜印刷、メッキ。蒸着等の公知の方法で絶縁性基体17と絶縁性基体16との間に形成されている。
絶縁性基体17は、アルミナ等の絶縁性耐熱材料を用いて、ドクターブレード法、プレス等の公知の方法を略平板状に形成され、基端側に、発熱体端子部163、164を露出させるための切り欠き部171、172が形成されている。
【0029】
上述のセンサ部(10〜15)と、ヒータ部16、絶縁性基体17と積層し、一体的に焼結することにより、本発明の要部である絶縁性基体の内部に基端側が被測定ガスの進行方向に対して直交する方向に開口する基端側開孔部151となり、先端側が底部開孔311に対向する先端側開孔部142となった被測定ガス通気路141を区画した粒子状検出素子1が完成する。
なお、本実施形態において、捕集部形成層11を廃して、絶縁性基体10の表面に一対の検出用電極12、13を形成した構成としても良い。この場合、絶縁性基体10の被測定ガス導入孔151に対向する位置における表面に粗大粒子が衝突して捕集されることになる。
【0030】
さらに、上記実施形態においては、絶縁性基体14、15、17に切り欠き部143,144、152、153、171、172を設けることによって、検出用電極端子部123、133、発熱体端子部163、164を露出させるようにした構成を示したが、スルーホール電極を介して、絶縁性基体15、17の表面にそれぞれの電極端子部を引き出すような構成としても良い。
なお、ヒータ部16は、通電により発熱体160が発熱し、検出用電極12,13の温度を一定とし、検出条件を安定化したり、検出用電極12、13間に堆積した粒子状物質を加熱除去したりすることに用いられる。
【0031】
ここで、図3、図4を参照して、比較例とした、従来の絶縁性基体14zの側面方向を貫通する被測定ガス通気孔141zを区画した粒子状物質検出素子1z及びそれを備えた粒子状物質検出装置6zについて説明する。
なお、比較例の粒子状物質検出装置6zにおいては、粒子状物質検出素子1z以外は、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6と同じ構成としてあり、本発明との相違点を明らかにするために、同一の構成については同じ符号を付し、相違する構成については、類似する部分に対応する符号にzの符号を付してある。
比較例における粒子状物質検出素子1zでは、図3(a)に示すように、絶縁性基体10z、14z、15の両側側面を貫通する方向に被測定ガス通気孔141zが穿設してあり、図3(b)に示すように、一対の検出用電極検出部120z、130zと検出用電極リード部121z、131zとの接続部122z、132z、検出用電極リード部121z、131zの一部、及び、他方の検出用電極リード部131z、121zに対向する検出用電極検出部120z、130zの先端が被測定ガス通気路141zに露出している。
【0032】
図5〜図10を参照して、本発明の第1の実施形態における粒子状物質検出装置6の効果と比較例における粒子状物質検出装置6zの効果の違いについて説明する。
本発明の実施例1として、本発明の粒子状物質検出装置6において、粒子状物質検出素子1の組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、90°となった場合、即ち、基端側開孔部152が、被測定ガスの下流方向に向かって開孔する位置となった場合の横断面を図5(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図5(b)に示す。
【0033】
図5(b)に示すように、外筒側面開孔201を被測定ガス導入孔としてカバー体外筒2内に導入され、外筒側面開孔201から導入された被測定ガスは、カバー体内筒3との間隙を上昇し、基端側に設けられた内筒側面開孔301からカバー体内筒3の内側に導入され、さらに、粒子状物質検出素子1の長手軸方向に沿うように下降し、内筒底部開孔311及び外筒底部開孔211を介して、外部に排出される。
このとき、粒子状物質検出素子1の基端側で粒子状物質検出素子1の長手軸に対して直交する方向に開孔する基端側開孔部151の周囲を流れる被測定ガスと、内筒底部開孔311に対向する方向に開口する先端側開孔部142の周囲を流れる被測定ガスとの圧力差によって、図5(b)に示すように、基端側開孔部151から取り込まれた被測定ガスが、被測定ガス通気路141内を通過し、先端側開孔部142に向かう流れが形成される。
【0034】
被測定ガス通気路141の基端側では、被測定ガスの進行方向が大きく屈曲するため、被測定ガス中に含まれる粒径の大きな粗大粒子状物質は、慣性により、捕集部111に衝突し捕集され、粒径が50nm以下の、極めて微細な粒子状物質は、被測定ガスの流れに沿って被測定ガス通気路141内を移動する。
被測定ガス通気路141の先端側に向かうにつれて、被測定ガスの流速は安定し、被測定ガス安定領域においては、ほぼ一定の流速となっている。
【0035】
本発明の実施例2として、本発明の粒子状物質検出装置6において、粒子状物質検出素子1の組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、0°となった場合、即ち、基端側開孔部152が、被測定ガスの流れ方向に対して直交方向に開孔する位置となった場合の横断面を図6(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図6(b)に示す。
図6(b)に示すように、実施例2においても、被測定ガス通気路141内には、基端側開孔部151から、先端側開孔部142に向かう流れが形成されており、実施例1と同様に、被測定ガス通気路141の先端側に向かうにつれて、被測定ガスの流速は安定し、被測定ガス安定領域においては、ほぼ一定の流速となっている。
【0036】
図7を参照して、実施例2における断面方向の流れ解析結果について説明する。
図7(a)は、流れ解析位置を示す縦断面図であり、図7(b)、(c)は、それぞれ、図7(a)中A−A及びB−Bに沿った断面における流れ解析結果を示し、図7(d)は、図7(c)の要部拡大図である。
図7(b)に示すように、内筒側面貫通孔301から導入された被測定ガスは、粒子状物質検出素子1の基端側では、流速が早く、カバー体外筒2の周囲を流れる被測定ガスの上流側となる図の左側から下流側となる右側に向かう流れが形成されている。これは、外筒側面貫通孔201から導入された被測定ガスの流速及び圧力が被測定ガスの上流側ほど高いため、その影響が残っているものと考えられる。
しかし、カバー体内筒3の内側を流れる被測定ガスは、カバー体内筒3の内周壁と粒子状物質検出素子1の表面とによって整流され、図7(c)に示すように、カバー体内筒3内を流れる被測定ガスは、基端側から先端側に向かう均一な流速分布を示す流れとなっている。
さらに、図7(c)及び(d)に示すように、被測定ガス通気路141内の尾流れは、基端側から先端側に向かう極めて均一な流れとなっていることが分かる。
【0037】
ここで、比較例における流れ解析結果について説明する。
比較例1として、従来の粒子状物質検出装置6zにおいて、粒子状物質検出素子1zの組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、90°となった場合、即ち、被測定ガス通気孔141zが被測定ガスの流れ方向に対して直交するように開孔する位置となった場合の横断面を、図8(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図8(b)に示す。
図8(b)に示すように、粒子状物質検出素子1zの周囲に形成される被測定ガスの流れは、カバー体2、3が同じであるため、当然のことながら、実施例1と同様の流れを形成している。
しかし、比較例1においては、被測定ガス通気孔141zが、側面方向に開孔している。このため、開口の両側の流速がほぼ均等となり、図8(c)に示すように、被測定ガス通気孔141z内には、基端側から先端側に向かう小さな流れが形成されるものの、被測定ガス通気孔141zの両側の開孔を横断する流れはほとんど形成されない。
このため、比較例1においては、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向が直交するように載置された場合には、被測定ガス通気孔141z内に被測定ガスがほとんど取り込まれない虞があることが判明した。
【0038】
比較例2として、従来の粒子状物質検出装置6zにおいて、粒子状物質検出素子1zの組み付け方向が、カバー体外筒2の外側を流れる被測定ガスの流れ方向に対して、0°となった場合、即ち、被測定ガス通気孔141zが、被測定ガスの流れ方向に対して平行となる方向に開孔する位置となった場合の横断面を図9(a)に示し、そのA−Aに沿った縦断面における流れ解析結果を図9(b)に示す。
図9(b)、(c)に示すように、比較例2においては、被測定ガス通気路141z内に、一方の開孔から被測定ガス通気孔141zに斜めに侵入した被測定ガスが、他方の開孔から排出され、図の左側から右側に向かう流れ、即ち、被測定ガスの上流側から下流側に向かう流れと一致する方向の大きな流れが形成されているのが分かる。
【0039】
比較例2における。断面方向の流れ解析結果を図10に示す。
本図(c)、(d)に示すように、被測定ガス通気孔141z内に被測定ガスの上流側から下流側に向かう流れと一致する方向の大きな流れが形成されているのが分かる。
このため、比較例2においては、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向が平行となるように載置された場合には、被測定ガス通気孔141z内に極めて早い流速で被測定ガスが流入することが判明した。
【0040】
図11(a)は、被測定ガスの流速の変化に対する本発明の粒子状物質検出装置6の被測定ガス通気路141内に流れる被測定ガスの流量変化と比較例の粒子状物質検出装置6zの被測定ガス通気路141z内を流れる被測定ガスの流量変化との相違を示すものである。なお、粒子状物質検出素子1及び粒子状物質検出素子1zは、被測定ガスの流れ方向に対して、幅方向が直交するように載置された条件で測定した結果を示す。
本図(a)に実施例1として示すように、本発明の粒子状物質検出装置6においては、内燃機関の運転状況に応じて被測定ガスの流速V(m/s)が変化したとき、それに追従して、ほぼ直線的に被測定ガス通気路1内に導入される被測定ガスの流入量Q(mm3/s)も変化し、線形性が保たれていることが分かる。
一方、本図(a)に比較例1として示すように、従来の粒子状物質検出装置6zにおいては、流速が遅い場合には、ほとんど被測定ガス通気路141z内に被測定ガスが流入せず、流速が早い場合には、急激に被測定ガス通気路141z内に導入される被測定ガスの流量が多くなり、線形性が保たれていないことが分かる。
【0041】
図11(b)を参照して、一定の流速の被測定ガスの流れ方向に対して、周方向に粒子状物質検出素子1、1zの角度を変化させたときの影響について説明する。
図11(b)に実施例2として示すように、本発明の粒子状物質検出装置6においては、粒子状物質検出素子1の載置された位置が周方向に回転した場合でも、ほぼ一定の流量となることが判明した。
これは、上述の如く、本発明によれば、粒子状物質検出素子1の周囲を流れる被測定ガスの基端側開口部151における圧力と先端側開口部142における圧力との圧力差によって被測定ガス通気路141内の流速が決定されるためと思料する。
一方、図11(b)に比較例2として示すように、従来の粒子状物質検出装置6zにおいては、粒子状物質検出素子1の載置された位置が周方向に回転した場合に、被測定ガス通気孔1z内に導入される被測定ガスの流量が大きく変化することが判明した。
被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向とが直交する場合には、被測定ガス通気路141z内にほとんど被測定ガスが流入せず、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1zの幅方向とが平行となる場合には、被測定ガス通気路141z内に多くの被測定ガスが導入されることになる。
したがって、従来の粒子状物質検出装置6zでは、被測定ガスの流れ方向と、粒子状物質検出素子1zの載置方向とを特定の条件としなければ、検出結果が全く信頼できないものとなる虞がある。
【0042】
また、本実施形態によれば、図1(b)に示したように、櫛歯状に形成された検出用電極12、13の複数の検出用電極検出部120、130が平行に並べられた部分のみが被測定ガス通気路141に露出しているので、検出用電極12、13間に電圧を印加し、被測定ガス通気路141内を通過する被測定ガス中に含まれる粒子状物質を荷電して検出用電極12、13間に捕集させようとした場合、検出用電極12、13間の電界強度が均一な領域のみが、被測定ガス通気路141に露出しているので、粒子状物質の偏在を防ぎ、安定して出力することができる。
【0043】
一方、図3(b)に示したように、比較例においては、櫛歯状に形成された一対の検出用電極検出部120z、130zと検出用電極リード部121z、131zとの接続部122z、132z、検出用電極リード部121z、131zの一部、及び、他方の検出用電極リード部131z、121zに対向する検出用電極検出部120z、130zの先端が被測定ガス通気路141zに露出している。
このため、検出用電極検出部120z、130z間に電圧を印加し、被測定ガス通気路141z内を通過する被測定ガス中に含まれる粒子状物質を荷電して検出用電極12z、13z間に捕集させようとした場合、検出用電極接続部122z、132zや、検出用電極検出部120z、130zの先端に不可避的に電界集中する部分が表れる。このため、電界強度の高い部分への被測定ガス中に含まれる粒子状物質の偏在を招く虞があり、出力結果の信頼性をさらに下げることになる。
【0044】
以上のことから、本発明の粒子状物質検出装置6を用いれば、被測定ガスの流れ方向と粒子状物質検出素子1の周方向の角度が変化しても、ほぼ一定の条件で、被測定ガス通気孔141内に被測定ガスが導入される。
したがって、比較例として示した従来の粒子状物質検出装置6zのように、製造時や、被測定ガス流路へ組み付ける際に、粒子状物質検出素子1zの方向性を考慮する必要がなく、極めて容易に、信頼性の高い粒子状物質検出装置が実現できる。
また、本発明の粒子状物質検出装置6によれば、内燃機関の運転状況の変化によって、被測定ガスとして排出される燃焼排気の排出量が変化したときに、被測定ガス通気孔141内に導入される被測定ガスの流量は、ほぼ線形に変化するので、検出された被測定ガス中の粒子状物質の量の変化が、燃焼条件の変化によるものなのか、DPF等の異常によるものかを判断することも容易となる。
【0045】
なお、上記実施形態において、図1等には、外筒底部開孔211、内筒底部開孔311をそれぞれ、1個のみ穿設した例を示したが、カバー体2、3の底部210、310に底部開孔211、311が複数設けられている場合には、その一部は被測定ガスを被測定ガス流路側に排出する導出孔として機能し、他の一部は被測定ガスをカバー体2、3の内側に取り込む導入孔として機能し、カバー体内に導入された被測定ガスの交換が容易となる。
加えて、外筒底部開孔211、内筒底部開孔311が複数の場合、カバー体2、3の横断面方向の流れが変化する可能性があるが、カバー体2、3の内側に流れる被測定ガスの流速に比べ、カバー体2、3の外側の被測定ガス流路を流れる被測定ガスの流速は遥かに早いので、カバー体2、3の底部に穿設した孔の数に拘わらず、カバー体内筒3の内側に形成される被測定ガスの流れは、全体としてカバー体3の基端側から先端側に向かうこととになる。
したがって、基端側開孔部152における圧力と先端側開孔部142における圧力差によって、被測定ガス通気路141内には、必然的に基端側開孔部152から先端側開孔部142に向かう流れが形成されることになる。
このため、カバー体の底部に設けた開孔の数に拘わらず、上記実施形態と同様の効果が発揮されるものと思料する。また、以下に示す実施形態においても同様である。
【0046】
図12、図13を参照して、本発明の第2の実施形態における粒子状物質検出装置6aについて説明する。
上記第1の実施形態においては、絶縁性基体10、又は、捕集部形成層11の表面に一対の検出用電極12、13を形成し、これに、通気路形成層14を積層した例を示したが、本実施形態においては、絶縁性基体15の裏面側の表面に、一対の検出用電極12a、13aを櫛歯状に形成し、これに積層して、通気路形成層として、絶縁性基体14aを形成した点が相違する。このような構成としても上記実施形態と同様の効果を発揮できる。
また、本実施形態によれば、構造が簡素化され、絶縁性基体の積層数を削減でき、製造コストの削減を図ることも可能となる。
【0047】
図14、図15を参照して、本発明の第3の実施形態における粒子状物質検出装置6bについて説明する。
上記実施形態においては、一対の検出用電極12、13として、被測定ガス通気路141を区画する内周壁の一の表面上にいわゆる櫛歯状電極を形成した例を示したが、本実施形態においては、一対の検出用電極12b、13bを、絶縁性基体10、11b、14b、15の内部に埋設され、被測定ガス通気路141を挟んで対向する略平板状に形成した検出用電極検出部120b、130bによって構成した点が相違する。
本実施形態によれば、上記実施形態と同様、被測定ガス通気路141bの基端側開口部152bと先端側開口部142bとの圧力差によって、被測定ガス通気路141b内に安定した流速で被測定ガスが導入される。
本実施形態においては、検出用電極検出部120b、130b間に電圧を印加し、被測定ガス通気路141b内を通過する粒子状物質を荷電し、絶縁性基体11b、14bの表面に付着させ、その堆積量に応じて変化する検出用電極検出部120b、130b間の静電容量を電気的特性として検出したり、検出用電極検出部120b、130b間に交流電流を印加し、検出用電極検出部120b、130b間の交流インピーダンスの変化を検出することによって、被測定ガス中の粒子状物質検出の量を検知することができる。
なお、検出用電極検出部120b、130bの表面はそれぞれ、絶縁性基体11b、14bによって覆われており、絶縁性基体11b、14bとして、上記実施形態と同様のアルミナ等を緻密に焼結した絶縁性材料を用いても良いし、多孔質に形成し、捕集性を高めた構成としても良い。
また、絶縁性基体11b、14bを誘電体によって形成して、電気的特性として静電容量を計測しても良い。
さらに、絶縁性基体11b、14bに換えて、ジルコニア等の導電性材料を用いて、電気的特性として粒子状物質の堆積量に応じて変化する導電性を検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 粒子状物質検出素子
10、11、14、15 絶縁性基体
12、13 検出用電極
120、130 検出用電極検出部
121、131 検出用電極リード部
122、132 検出用電極接続部
123、133 検出用電極端子部
111 粗大粒捕集部
141 被測定ガス通気路
142 底部開孔
151 側面開孔
16 ヒータ
160 発熱体
161、162 発熱体リード部
2 カバー体外筒
200 外筒周壁部
201 外筒周壁開孔
210 外筒底部
211 外筒底部開孔
3 カバー体内筒
300 内筒周壁部
301 内筒周壁開孔
310 内筒底部
311 内筒底部開孔
4 インシュレータ
40 封止部材
5 ハウジング
6 ガスセンサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開2009−186278号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に伸びる略平板状に形成され、その先端側が被測定ガス中に配設された絶縁性基体に一対の検出用電極を設け、該検出用電極間に堆積する被測定ガス中の粒子状物質の量によって変化する電気的特性を測定して、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出素子を備える粒子状物質検出装置において、
被測定ガス導入孔として、上記粒子状物質検出素子を覆う略有底筒状に形成したカバー体の基端側外周に複数の貫通孔を穿設して、
被測定ガス導出孔として、上記カバー体の底部に一、又は、複数の貫通孔を穿設して、
上記カバー体内に導入された被測定ガスが上記検出素子の基端側から先端側に向かって長手軸方向に沿って移動する流れを形成すると共に、
上記粒子状物質検出素子の内側に、その軸方向に伸びる被測定ガス通気路を区画し、
該被測定ガス通気路の基端側を被測定ガスの進行方向に直交する方向に向かって開孔せしめ、
その先端側を上記被測定ガス導出孔に対向する方向に開孔せしめて、
上記一対の検出用電極を上記被測定ガス通気路内に流れる被測定ガスの流速が安定する流速安定領域に対向する位置に配設したことを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
上記被測定ガス通気路の基端側開孔に延設して、基端側開孔に対向する位置における上記絶縁性基体の表面を窪ませて粗大粒子捕集部とした請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
上記一対の検出用電極が、上記被測定ガス通気路を区画する内壁の一の表面上に形成され、外部に設けた検出回路に接続する一対の検出用電極リード部に接続して複数の検出用電極検出部を一定の間隙を隔てて交互に引き出した櫛歯状電極である請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
上記一対の検出用電極が、上記絶縁性基体の内部に埋設され、上記被測定ガス通気路を挟んで対向する略平板状に形成された検出用電極検出部と、それぞれの検出用電極検出部と外部に設けた検出回路とを接続する一対の検出用電極リード部とで構成した請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項1】
軸方向に伸びる略平板状に形成され、その先端側が被測定ガス中に配設された絶縁性基体に一対の検出用電極を設け、該検出用電極間に堆積する被測定ガス中の粒子状物質の量によって変化する電気的特性を測定して、被測定ガス中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出素子を備える粒子状物質検出装置において、
被測定ガス導入孔として、上記粒子状物質検出素子を覆う略有底筒状に形成したカバー体の基端側外周に複数の貫通孔を穿設して、
被測定ガス導出孔として、上記カバー体の底部に一、又は、複数の貫通孔を穿設して、
上記カバー体内に導入された被測定ガスが上記検出素子の基端側から先端側に向かって長手軸方向に沿って移動する流れを形成すると共に、
上記粒子状物質検出素子の内側に、その軸方向に伸びる被測定ガス通気路を区画し、
該被測定ガス通気路の基端側を被測定ガスの進行方向に直交する方向に向かって開孔せしめ、
その先端側を上記被測定ガス導出孔に対向する方向に開孔せしめて、
上記一対の検出用電極を上記被測定ガス通気路内に流れる被測定ガスの流速が安定する流速安定領域に対向する位置に配設したことを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
上記被測定ガス通気路の基端側開孔に延設して、基端側開孔に対向する位置における上記絶縁性基体の表面を窪ませて粗大粒子捕集部とした請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
上記一対の検出用電極が、上記被測定ガス通気路を区画する内壁の一の表面上に形成され、外部に設けた検出回路に接続する一対の検出用電極リード部に接続して複数の検出用電極検出部を一定の間隙を隔てて交互に引き出した櫛歯状電極である請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
上記一対の検出用電極が、上記絶縁性基体の内部に埋設され、上記被測定ガス通気路を挟んで対向する略平板状に形成された検出用電極検出部と、それぞれの検出用電極検出部と外部に設けた検出回路とを接続する一対の検出用電極リード部とで構成した請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−168143(P2012−168143A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31625(P2011−31625)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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