説明

粒子状物質浄化用触媒及びそれを用いた粒子状物質浄化方法

【課題】十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有し、高温に曝された後においても十分に高い粒子状物質浄化性能を発揮することが可能な粒子状物質浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化する粒子状物質浄化用触媒であって、
組成式:ZnFe(式中、xは1〜3の範囲の値を示し、yは2.5〜5.5の範囲の値を示す。)で表される複合酸化物からなる担体と、該担体に担持されたセシウムとを含有することを特徴とする粒子状物質浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質浄化用触媒並びにそれを用いた粒子状物質浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排ガスには、燃焼により生じた煤及びその他の炭素粒子状物質等を含む粒子状物質(PM)が含まれている。そして、このような粒子状物質は動植物に悪影響を及ぼす大気汚染物質として知られている。そのため、粒子状物質を低減することを課題として種々の粒子状物質浄化用触媒が研究されている。
【0003】
例えば、特開2005−66559号公報(特許文献1)や特開2005−21818号公報(特許文献2)においては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素−酸化アルミニウム複合物、酸化ケイ素、ゼオライト等の酸化物担体と、前記酸化物担体に担持されたアルカリ金属成分とを含有する触媒が開示されている。また、特開2005−125254号公報(特許文献3)においては、ジルコニウム複合酸化物担体と、前記ジルコニウム複合酸化物担体に担持されたアルカリ金属とを含む触媒が開示されている。更に、特開2006−272288号公報(特許文献4)においては、鉄酸化物を12質量部含有する金属酸化物担体と、前記金属酸化物担体に担持されたアルカリ金属とを含有する触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1〜4に記載のような特許文献1〜4に記載のような従来の触媒においては、粒子状物質浄化性能と耐熱性の両立という点で必ずしも十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2005−66559号公報
【特許文献2】特開2005−21818号公報
【特許文献3】特開2005−125254号公報
【特許文献4】特開2006−272288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有し、高温に曝された後においても十分に高い粒子状物質浄化性能を発揮することが可能な粒子状物質浄化用触媒、並びに、その粒子状物質浄化用触媒を用いた粒子状物質浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、組成式:ZnFe(式中、xは1〜3の範囲の値を示し、yは2.5〜5.5の範囲の値を示す。)で表される複合酸化物からなる担体を用い、前記担体にセシウムを担持することにより、十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有し、高温に曝された後においても十分に高い粒子状物質浄化性能を発揮することが可能な粒子状物質浄化用触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の粒子状物質浄化用触媒は、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化する粒子状物質浄化用触媒であって、
組成式:ZnFe(式中、xは1〜3の範囲の値を示し、yは2.5〜5.5の範囲の値を示す。)で表される複合酸化物からなる担体と、該担体に担持されたセシウムとを含有することを特徴とするものである。
【0007】
上記本発明の粒子状物質浄化用触媒においては、前記担体に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される少なくとも一種の貴金属が更に担持されていることが好ましい。
【0008】
また、上記本発明の粒子状物質浄化用触媒においては、前記担体が、組成式:ZnFeで表される複合酸化物からなることが好ましい。
【0009】
また、上記本発明の粒子状物質浄化用触媒においては、前記セシウムの担持量が、前記担体100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。
【0010】
さらに、上記本発明の粒子状物質浄化用触媒においては、前記担体に、セシウム以外のアルカリ金属が更に担持されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の粒子状物質浄化方法は、上記本発明の粒子状物質浄化用触媒に排ガスを接触させて、排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化することを特徴とする方法である。
【0012】
なお、本発明の粒子状物質浄化用触媒及び粒子状物質浄化方法によって、上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、上記特許文献1〜4に記載のような従来の触媒においては、アルカリ金属としてセシウムを担持させた場合に、高温条件下において担体中の金属酸化物成分(例えば鉄酸化物)とセシウムとの間で固相反応が起こり、活性が低下してしまう場合があった。本発明においては、担体として上記組成式で表されるような亜鉛と鉄の複合酸化物を用いており、予め鉄酸化物を亜鉛と化合させておくことで、その固相反応性は低減され、担体とセシウムの固相反応が十分に抑制されるものと推察される。
【0013】
また、このような粒子状物質浄化用触媒においては、触媒の活性種がCsのイオン構造を持つ超酸化セシウム(CsO)であると推察される。そして、このようなCsOの触媒中での安定性は、セシウムを担持させる担体の性質に依存するものと推察される。担体の酸性質が比較的強い場合には、CsOが生成されたとしても、正電荷を持つCsから担体に電子が吸引されてしまうため、CsOは不安定化する。そのため、担体の酸性質が比較的強い場合には、CsOが生成し難い。これに対して、担体の塩基性質が比較的強い場合には、正電荷を持つCsから担体に電子が供与されるため、CsOは安定化する。そのため、担体の塩基性質が比較的強い場合には、CsOが生成し易い。一方、担体に担持されたセシウムは、担体との相互作用によって高温条件下での蒸散が抑制される。そのため、触媒の耐熱性もセシウムを担持させる担体の性質に依存するものと推察される。担体の塩基性質が比較的強い場合には、セシウムが塩基性質のものであるため、担体とセシウムとの間に十分な相互作用が得られず、高温条件下でセシウムが蒸散し易い。反対に、担体の酸性質が比較的強い場合には、セシウムと担体とが良好に相互作用し、セシウムの蒸散が抑制される。従って、触媒の浄化性能という観点からは塩基性質が比較的強い担体が好ましく、耐熱性の観点からは酸性質が比較的強い担体が好ましい。本発明においては、担体が上記組成式で表される複合酸化物からなるため、担体にセシウムに対する適度な酸性質と塩基性質とが付与されるものと推察される。
【0014】
このように、本発明においては、触媒の活性種であるCsOの生成促進、高温条件下での担体とセシウムとの間の固相反応の抑制、並びに、高温条件下でのセシウムの蒸散の抑制が同時に図られ、十分に高い粒子状物質浄化性能と十分に高い耐熱性とが発揮されるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有し、高温に曝された後においても十分に高い粒子状物質浄化性能を発揮することが可能な粒子状物質浄化用触媒、並びに、その粒子状物質浄化用触媒を用いた粒子状物質浄化方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0017】
先ず、本発明の粒子状物質浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の粒子状物質浄化用触媒は、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化する粒子状物質浄化用触媒であって、
組成式:ZnFe(式中、xは1〜3の範囲の値を示し、yは2.5〜5.5の範囲の値を示す。)で表される複合酸化物からなる担体と、該担体に担持されたセシウムとを含有することを特徴とするものである。
【0018】
本発明にかかる担体は、上記組成式:ZnFeで表される複合酸化物からなる。本発明においては、前記組成式で表される複合酸化物を担体として用いることによって、セシウムと担体との固相反応を十分に防止することを可能とするとともに、担体にセシウムに対する適度な酸性質と塩基性質とを付与することを可能とし、これによって粒子状物質浄化性能と耐熱性との両立を可能とする。
【0019】
このような組成式:ZnFeで表される複合酸化物において、前記組成式中の鉄(Fe)の原子比xの値は、1〜3(より好ましくは1.5〜2.5)の範囲の値である。このようなxの値が1未満となると、複合酸化物中における鉄の含有量が低下して担体の塩基性質が強くなって、高温条件下においてセシウムが蒸散し易くなり、他方、xの値が3を超えると、担体に適度な酸性質と塩基性質とを付与することができず、活性点(CsO)の生成促進が図られなくなるばかりか、鉄酸化物の性質が顕著になって、高温条件下において、担体中の酸化鉄とセシウムとの固相反応(Fe+Cs→CsFe)が進行し易くなり、粒子状物質浄化性能が低下する。また、前記組成式中の酸素の原子比yの値は、2.5〜5.5(より好ましくは3.5〜4.5)の範囲で、xの値に対応して決まる値である。例えば、ZnOとFeとからなる複合酸化物では、y=1.5x+1となる。また、前記組成式で表される複合酸化物の中でも、高温条件下における安定性及び鉄酸化物とセシウムとの固相反応をより十分に防止するという観点から、組成式:ZnFeで表される複合酸化物がより好ましい。
【0020】
さらに、組成式:ZnFeで表される複合酸化物としては、具体的には、ZnO−Fe、ZnO−Fe、ZnO−FeO、ZnO−FeO等の複合酸化物が挙げられ、高温条件下における安定性及び鉄酸化物とセシウムとの固相反応をより十分に防止するという観点から、ZnO−Feの複合酸化物がより好ましい。また、このような複合酸化物としては特に制限されず、結晶構造がアモルファス構造のものやスピネル型構造のものや逆スピネル型構造のもの、更にはZnOとFey−1との混合物等、種々の態様のものが含まれる。
【0021】
また、このような複合酸化物は、単位質量当たりの表面積が大きいという理由から粒子状粉末であることが好ましい。このような粒子状の複合酸化物の平均粒子径としては、特に制限されないが、10〜10000nmであることが好ましく、50〜1000nmであることがより好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では、高温条件下において担体が焼結し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、比表面積が小さくなって触媒活性が低下する傾向にある。
【0022】
さらに、前記担体の比表面積としては特に制限されないが、1〜200m/gであることが好ましく、10〜100m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記上限を超えると、担体が焼結し易くなり、得られる触媒の耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、セシウムの分散性が低下する傾向にある。このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0023】
また、このような担体の形状としては特に制限されず、用途にあわせてその形状を適宜変更することができ、ペレット形状、モノリス形状とすることができる。また、このような担体の形状の成形方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えばモノリス形状とする場合には、ストレートハニカム基材又はディーゼルパティキュレートフィルター基材に前記担体をコートする方法を採用してもよい。なお、このような基材としては特に制限されず、例えばコージェライト製又は炭化ケイ素製のものを挙げることができる。
【0024】
また、このような複合酸化物の製造方法は特に制限されず、前記組成式で表される複合酸化物を製造することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。このような複合酸化物の製造方法としては、例えば、亜鉛の塩(例えば硝酸塩、酢酸塩等)と鉄の塩(例えば硝酸塩、酢酸塩等)と、更に必要に応じて界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)とを含有する水溶液を調製し、アンモニアの存在下において共沈殿物を生成せしめ、得られた共沈殿物を乾燥し、焼成することによって複合酸化物を得る方法が挙げられる。
【0025】
また、本発明においては、前記担体にセシウムが担持されている。このようなセシウムの担持量としては特に制限されないが、前記担体100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。このようなセシウムの担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高温条件下で過剰量のセシウムが蒸散する傾向にある。また、このようなセシウムを前記担体に担持させる方法としては、特に制限されず、担体にセシウムを担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、セシウムの塩を含有する水溶液を前記担体に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。
【0026】
さらに、本発明においては、より高い粒子状物質浄化性能を付与するとともにHC及びCO浄化性能を付与するという観点から、前記担体に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される少なくとも一種の貴金属が更に担持されていることが好ましい。また、このような貴金属成分の中でも、粒子状物質に対するより高度な酸化能を付与するという観点から、白金、ロジウム、パラジウムを用いることが好ましく、白金を用いることが特に好ましい。また、これらの貴金属成分は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、このような貴金属の担持量としては、特に制限されないが、前記担体100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。このような貴金属の担持量が前記下限未満では、貴金属による効果が十分に得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、コストの増加といった問題が生じる傾向にある。また、このような貴金属成分を前記担体に担持せしめる方法としては、特に制限されず、担体に貴金属を担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、貴金属の塩(例えば、ジニトロジアミン塩)や錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液を前記担体に含浸させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。
【0028】
また、本発明においては、前記担体に、セシウム以外の他のアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)が更に担持させることが好ましい。前記担体に、セシウムと共に他のアルカリ金属を担持させることで、排ガス中のNOと硝酸塩活性種が生成され、浄化性能が向上する傾向にある。なお、このような他のアルカリ金属を担持させる方法としては、特に制限されず、前述のセシウムを担持させる方法と同様の方法を適宜採用することができる。
【0029】
また、本発明の粒子状物質浄化用触媒の形態は特に制限されず、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の形態とすることができる。このような形態とする際に用いられる基材も特に制限されず、パティキュレートフィルタ基材(DPF基材)、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用することができる。また、このような基材の材質も特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用することができる。
【0030】
以上、本発明の粒子状物質浄化用触媒について説明したが、以下、本発明の粒子状物質浄化方法について説明する。すなわち、本発明の粒子状物質浄化方法は、上記本発明の粒子状物質浄化用触媒を排ガスと接触させて、排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化することを特徴とする方法である。このように、本発明の粒子状物質浄化方法においては、上記本発明の粒子状物質浄化用触媒を用いているため、十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有し、高温条件下で使用した後においても十分に高い粒子状物質浄化性能を発揮することが可能であり、長期に亘り十分に高い活性で粒子状物質を酸化して浄化することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
組成式:ZnFeで表される複合酸化物からなる担体に、セシウム(Cs)と白金(Pt)とが担持された粒子状物質浄化用触媒(Cs/Pt/ZnFe触媒)を製造した。
【0033】
このような触媒の製造に際しては、先ず、組成式:ZnFeで表される担体を以下のようにして製造した。すなわち、先ず、前記担体を硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO:和光純薬工業製)50.0gと、硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO・9HO:和光純薬工業製)135.8gと、イオン交換水500gとを混合して混合水溶液を調製した。次に、1Lビーカー内に入れた25質量%のアンモニア(NH)水溶液(和光純薬工業製)150g中に、前記混合水溶液を滴下して、鉄及び亜鉛の水酸化物の沈殿を生成させた。その後、前記水酸化物の沈殿が生成された水溶液をビーカーに入れたまま、空気中、110℃の温度条件で24時間乾燥し、更に、空気中、400℃の温度条件で5時間、焼成して固形物を得た後、前記固形物を150μm以下に粉砕してZnFe粉末(担体)を得た。
【0034】
次に、上述のようにして得られたZnFe粉末に、Cs及びPtを担持して、Cs/Pt/ZnFe触媒を得た。すなわち、先ず、ZnFe粉末50gと、Ptの濃度が4.57質量%のジニトロジアンミン白金(Pt(NH(NO)水溶液(田中貴金属製)21.9gと、水酸化セシウム(CsOH:和光純薬工業製)9.99gと、イオン交換水500gとを混合して混合物を得た後、前記混合物を80℃の温度条件で3時間蒸発乾固させて触媒前駆体を得た。次に、得られた触媒前駆体を空気中、110℃の温度条件で12時間乾燥させた後、更に、空気中、500℃の温度条件で3時間焼成した。そして、このようにして焼成した後の触媒前駆体を圧粉成型することにより粉砕してペレット状(粒径150〜250μm)にした後、空気中、750℃の温度条件で5時間焼成することによって、Cs/Pt/ZnFe触媒を得た。
【0035】
(比較例1)
ZnFe粉末を調製することなく、ZnFe粉末の代わりに酸化鉄(Fe)粉末(戸田工業製)50gを担体として用いた以外は、実施例1と同様の方法を採用して、比較のための粒子状物質浄化用触媒(Cs/Pt/Fe触媒)を製造した。
【0036】
(比較例2)
ZnFe粉末を調製することなく、ZnFe粉末の代わりに、Fe粉末(戸田工業製)25gと、酸化セリウム(CeO)粉末(第一稀元素化学工業製)25gとの混合物を担体として用いた以外は、実施例1と同様の方法を採用して、比較のための粒子状物質浄化用触媒(Cs/Pt/Fe−CeO触媒)を製造した。
【0037】
(比較例3)
ZnFe粉末を調製することなく、ZnFe粉末の代わりに、Fe粉末(戸田工業製)5gとCeO粉末(第一稀元素化学工業製)5gと酸化アルミニウム(Al)粉末(住友化学工業製)40gとの混合物を担体として用いた以外は、実施例1と同様の方法を採用して、比較のための粒子状物質浄化用触媒(Cs/Pt/Fe−CeO−Al)を製造した。
【0038】
[実施例1及び比較例1〜3で得られた粒子状物質浄化用触媒の性能評価]
以下において、熱処理を施していない粒子状物質浄化用触媒を初期品と称し、熱処理後の粒子状物質浄化用触媒を熱耐久品と称する。
【0039】
<初期品の粒状物質酸化活性試験>
実施例1及び比較例1〜3で得られた粒子状物質浄化用触媒(初期品)に対して、それぞれ粒状物質酸化活性試験を実施した。すなわち、先ず、円筒状サンプル管瓶内に、粒子状物質浄化用触媒0.475gと模擬粒子状物質としてのカーボンブラック(東海カーボン製)0.025gとを添加した。次に、円筒状サンプル管瓶を6時間回転させて、添加した前記粒子状物質浄化用触媒と前記カーボンブラックとを撹拌し、粒子状物質浄化用触媒の外表面にカーボンブラックが付着した試料を得た。次に、得られた試料0.5gを直径30mm、長さ300mmの石英管内に充填した後、O(10容量%)/HO(10容量%)/N(80容量%)からなる混合ガスを前記試料に対して流量30L/分の割合で供給した。なお、前記混合ガス(入りガス)の温度は、初期温度を200℃とし、200℃から20℃/分の昇温速度で昇温した。そして、酸化に伴って発生する出ガス中のCOおよびCO濃度を1分間(20℃昇温)ごとに測定することにより、酸化速度を求めた。なお、酸化速度は、入りガスの温度条件下において、前記石英管からの出ガス中のCO及びCOの濃度を測定し、その温度におけるカーボンブラックの酸化量を算出した後、時間1時間、触媒150gあたりの酸化速度に換算して算出した。得られた結果を図1に示す。
【0040】
<熱耐久品の粒状物質酸化活性試験>
実施例1及び比較例1〜2で得られた粒子状物質浄化用触媒(初期品)に対して、それぞれ熱処理を施した後、得られた熱耐久品を用いて、前述の初期品の粒状物質酸化活性試験と同様の方法を採用して試験を行い、酸化速度を求めた。なお、熱処理は、初期品を空気中、750℃の温度条件下において50時間加熱する処理とした。得られた結果を図1に示す。
【0041】
先ず、初期品について検討すると、図1に示す結果からも明らかように、実施例1及び比較例1〜2で得られた粒子状物質浄化用触媒の初期品は、ほぼ同様の酸化性能を示すことが確認された。これに対して、比較例3で得られた粒子状物質浄化用触媒は、初期品の酸化性能が十分なものとはならないことが確認された。なお、各触媒が担体のみが相違するものであることから触媒中の担体の種類に着目すると、酸化速度に対する寄与という観点からの初期品の担体の序列は:
ZnFe(実施例1)≒Fe(比較例1)≒Fe−CeO(比較例2)>Fe−CeO−AlO(比較例3)
であることが分かった。次に、熱耐久品について検討すると、図1に示す結果からも明らかように、実施例1で得られた粒子状物質浄化用触媒においては、比較例1〜2で得られた粒子状物質浄化用触媒と比較すると、熱処理後(熱耐久品)においても十分に高い粒子状物質の酸化活性を有することが確認された。なお、担体の種類に着目すると、酸化速度に対する寄与という観点からの熱耐久品の担体の序列は:
ZnFe(実施例1)>Fe(比較例1)>Fe−CeO(比較例2)
であることが分かった。このような結果から、本発明の粒子状物質浄化用触媒(実施例1)においては、初期品及び熱耐久品の酸化性能が十分に高いことから、十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、十分に高い粒子状物質浄化性能を有するとともに十分に高い耐熱性を有し、高温に曝された後においても十分に高い粒子状物質浄化性能を発揮することが可能な粒子状物質浄化用触媒、並びに、その粒子状物質浄化用触媒を用いた粒子状物質浄化方法を提供することが可能となる。
【0043】
したがって、本発明の粒子状物質浄化用触媒は、粒子状物質の浄化性能に優れるため、ディーゼルエンジン等の内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を浄化するための触媒として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1及び比較例1〜3で得られた粒子状物質浄化用触媒の酸化速度と、入りガス温度との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化する粒子状物質浄化用触媒であって、
組成式:ZnFe(式中、xは1〜3の範囲の値を示し、yは2.5〜5.5の範囲の値を示す。)で表される複合酸化物からなる担体と、該担体に担持されたセシウムとを含有することを特徴とする粒子状物質浄化用触媒。
【請求項2】
前記担体に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金及び金からなる群から選択される少なくとも一種の貴金属が更に担持されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質浄化用触媒。
【請求項3】
前記担体が、組成式:ZnFeで表される複合酸化物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子状物質浄化用触媒。
【請求項4】
前記セシウムの担持量が、前記担体100質量部に対して1〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の粒子状物質浄化用触媒。
【請求項5】
前記担体に、セシウム以外のアルカリ金属が更に担持されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の粒子状物質浄化用触媒。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の粒子状物質浄化用触媒に排ガスを接触させて、排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化することを特徴とする粒子状物質浄化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−253941(P2008−253941A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100845(P2007−100845)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】