説明

粒度分布が改善された担体材料を含む触媒組成物

粒度分布が改善された担体材料を有する触媒組成物を提供する。ポリオレフィン組成物を製造するための方法を提供する。また、重合体及びフィルムも提供する。触媒組成物の例は、(a)非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される少なくとも2種の触媒成分と、(b)約30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が約6未満の粒度分布を有する担体材料と、(c)活性剤とを含む担持多種遷移金属触媒組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリオレフィン製造用触媒に関し、具体的には、重合体生成物を製造する際に使用できるポリオレフィン作成用の担持触媒であって、粒度分布が改善された担体材料を含み、また、望ましい実施形態では、該担持触媒が単一の反応器内でポリオレフィンを製造するために使用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
重合と触媒作用の発達により、様々な優れた製品及び用途に有用な改善された物性及び化学的性質を有する多くの新規な重合体を製造することができるようになってきた。新規な触媒の開発により、特定の重合体を製造するための重合技術(溶液、スラリー、高圧又は気相)の選択の幅が大きく広がった。また、重合技術の発達によって、より効率的で、非常に生産的で且つ経済性が向上した方法が獲得された。
【0003】
あらゆる新規な技術分野と同様に、特にポリオレフィン産業では、少しのコスト削減によって商業上の努力がなお実現可能かどうかが決まる場合が多い。当該産業は、新規で且つ改良された触媒系を開発することに極度に重点を置いてきた。いくつかは新規な重合体を製造するための触媒系を設計することに重点を置き、他は触媒の操作性を改善させることに重点を置き、そして多くはさらに触媒の生産性を改善させるこに重点を置いていた。触媒の生産性は、通常、ポリオレフィン産業における新たな商業開発をなす又はそれを切り開くことができる重要な経済的要因である。
【0004】
複数の異なる触媒型(2種金属、3種金属、4種金属など)を使用して製造されたマルチモーダル重合体は、特にポリエチレン及び他のポリオレフィンを製造するにあたって、ますます興味を持たれているものである。また、触媒の生産性を改善させることも、ここでの関心事である。というのは、生産性は、多種遷移金属触媒の大きなコストを考えると、そのプロセスの経済効率を最適にするために可能な限り高い必要があるからである。
【0005】
ポリオレフィン製造の別の側面は、重合体製品中に存在するゲルのレベル(例えば、明白な欠陥)に関連する。高いゲル濃度で製造される重合体製品、特にフィルムは、とりわけ、美しさ、バブル安定性又は連続性に乏しいため、商業的価値が制限されたり商業価値が全くない可能性がある。従って、重合体製品中のゲル(特に、視認されるほどのサイズのゲル)濃度を最小にすることが極めて重要なことである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概略
本発明の方法の例は、水素及びエチレン単量体と担持多種遷移金属触媒組成物とを接触させてポリオレフィン組成物を形成させることを含むポリオレフィン組成物の製造方法であって、該担持多種遷移金属触媒組成物が、(a)非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される少なくとも2種の触媒成分と、(b)約30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が約6未満の粒度分布を有する担体材料と、(c)活性剤とを含むものである。
【0007】
本発明の触媒組成物の例は、(a)非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される少なくとも2種の触媒成分と、(b)約30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が約6未満の粒度分布を有する担体材料と、(c)活性剤とを含む担持多種遷移金属触媒組成物である。
【0008】
本発明の重合体の例は、水素及びエチレン単量体と担持多種遷移金属触媒組成物とを接触させてポリオレフィン組成物を形成させることを含む方法であって、該担持多種遷移金属触媒組成物が、(1)非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される少なくとも2種の触媒成分と、(2)約30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が約6未満の粒度分布を有する担体材料と、(3)活性剤とを含むものから作られた重合体である。
【0009】
本発明のフィルムの例は、水素及びエチレン単量体と担持多種遷移金属触媒組成物とを接触させてポリオレフィン組成物を形成させることを含む方法であって、該担持多種遷移金属触媒組成物が、(1)非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される少なくとも2種の触媒成分と、(2)約30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が約6未満の粒度分布を有する担体材料と、(3)活性剤とを含むものの生成物である重合体から作られたフィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の重合方法に従って製造された代表的な重合体を含めて所定の代表的な重合体の粒度分布を比較例と共に示すグラフ図である。
【0011】
図2は、本発明の重合方法に従って製造された代表的な重合体を含めて所定の代表的な重合体によって示されるゲルカウントを比較例と共に示すグラフ図である。
【0012】
詳細な説明
一般的定義
ここで使用するときに、元素の周期律表の「族」に関しては、CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS(David R.Lide著,CRC Press第81版,2000)と同様に、周期律表の元素についての「新しい」番号付けスキームを用いる。
【0013】
ここで使用するときに、成句「担持多種遷移金属触媒」又は「担持多種遷移金属触媒組成物」とは、とりわけ、2種以上の「触媒成分」と、少なくとも1種の「活性剤」と、粒度分布が改善された本発明の担体材料とを含む組成物をいう。ここで、好適な触媒成分、活性剤及び担体材料をさらに説明する。担持多種遷移金属触媒は、他の成分(例えば、充填剤)をも含むことができ、そして、これは該活性剤、担体材料及び2種以上の触媒成分に限定されない。粒度分布が改善された本発明の担体材料を含むことに加えて、本発明の担持多種遷移金属触媒は、とりわけ、任意の数の触媒成分をここで説明するような任意の組合せで含むことができるだけでなく、任意の活性剤をここで説明するような任意の組合せで含むことができる。
【0014】
ここで使用するときに、成句「触媒化合物」には、適切に活性化されると、オレフィンの重合又はオリゴマー化を触媒することができる任意の化合物であって、少なくとも1個の第3族〜第12族原子と、随意にそれに結合する少なくとも1個の脱離基とを有するものが含まれる。
【0015】
ここで使用するときに、成句「脱離基」とは、活性剤によって触媒成分から引き抜かれ、それによってオレフィンの重合又はオリゴマー化に対して活性な種を生じさせることができる、該触媒成分の金属中心結合した1個以上の化学的部分をいう。好適な活性剤については、以下でさらに説明する。
【0016】
ここで使用するときに、用語「置換」とは、当該用語に続く基が任意の箇所で1個以上の水素の代わりに少なくとも1種の部分を有することを意味し、ここで、当該部分は、ハロゲン基(特に、Cl、F、Br)、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルケニル基及びそれらの組合せのような基から選択される。置換アルキル及びアリールの例としては、アシル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボモイル基、アルキルカルバモイル基及びジアルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
ここで使用するときに、構造式は、化学分野において一般的に理解されているとおりに採用する;金属原子(「M」、すなわち第3族〜第12族原子)と、配位子又は配位子原子(例えば、シクロペンタジエニル、窒素、酸素、ハロゲンイオン、アルキルなど)との間の会合(結合)を表すために使用する線(「−」)並びに成句「と会合」、「に結合」及び「結合」は、これらの線及び成句が「化学結合」を表すことを意味する限りにおいて、所定の種類の化学結合を表すことに限定されない;「化学結合」は、原子間の引力であって、その集合体を一つの単位として又は「化合物」として機能させるのに十分強力なものであると定義される。
【0018】
所定の構造又は構造の部分についての所定の立体配置は、所定の構造についてそのように述べない限り、或いは点線及び/又は太線によるような一般的に使用される結合記号の使用により明らかにしない限り、含意されるべきではない。
【0019】
ここで、特に述べない限り、本発明のどの実施形態も、以下の個々の説明及び実施例において定義するような金属原子「M」の酸化状態には限定されない。金属原子「M」の結合とは、特に示さない限り、ここで説明する化合物が中性であるというものである。
【0020】
ここで使用するときに、重合体又は重合体組成物(例えば、ポリエチレンのようなポリオレフィン又は他の単独重合体、共重合体若しくは三元共重合体)を説明するために用いるときの用語である「バイモーダル」とは、「二峰分子量分布」を意味し、これは、当業者が刊行物及び発行された特許に反映されるように当該用語に与えた最も広い定義を有するものとする。例えば、少なくとも1種の特定可能な高分子量分布を有するポリオレフィンと、少なくとも1種の特定可能な低分子量分布を有するポリオレフィンとを含む単一の組成物は、当該用語がここで使用される場合には、「バイモーダル」ポリオレフィンであると見なされる。異なる分子量を有するもの以外の特定の実施形態では、高分子量ポリオレフィン及び低分子量ポリオレフィンは、本質的に同じタイプの重合体、例えば、ポリエチレンであることができる。ここで使用するときに、用語「トリモーダル」、「クアドリモーダル」及び「マルチモーダル」は、同様に、当業者が刊行物及び発行された特許に反映されるように当該用語に与えた最も広い定義を有するものとする。
【0021】
ここで使用するときに、用語「生産性」とは、重合方法において使用される触媒の重量当たりに製造された重合体の重量を意味する(例えば、重合体(グラム)/触媒(グラム)。
【0022】
ここで使用するときに、用語「脱水」とは、触媒担体材料(例えば、シリカ)を説明するに際して刊行物及び発行された特許に反映されるように当該用語に与えた最も広い定義を有するものとし、任意の材料(例えば、担体粒子)であって含まれる水/吸収された水の大部分がそこから取り除かれたものを包含する。
【0023】
用語「D10」「D50」及び「D90」は、ここでは、特定の担体材料の試料の粒度分布を説明するために使用する。ここで使用するときに、用語「D10」とは、担体材料の試料中の粒子の10%がD10値よりも小さな直径を有することを意味するものとする。用語「D50」とは、中央粒度値を意味するものとする。用語「D90」とは、当該試料中の粒子の90%がD90値よりも小さな直径を有することを意味するものとする。
【0024】
ここで述べるときに、用語「第8〜10族金属含有触媒」とは、第8〜10族のなかから選択される少なくとも1種の金属を含む触媒化合物をいうものとする。
【0025】
ここで述べるときに、用語「後周期遷移金属」とは、第8〜10族のなかから選択される金属をいうものとする。
【0026】
担持多種遷移金属触媒
本発明の一実施形態によれば、とりわけ、活性剤と、少なくとも2種の触媒成分と、30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が約6未満の粒度分布を有する担体材料とを含む担持多種遷移金属触媒を提供する。所定の実施形態では、少なくとも2種の触媒成分は、非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される。例えば、該少なくとも2種の触媒成分は少なくとも2種の非メタロセン触媒成分を含むことができ、又はこれらは少なくとも2種のメタロセン触媒成分を含むことができ、又はこれらは少なくとも1種のメタロセン触媒成分及び少なくとも1種の非メタロセン触媒成分などを含むことができる。好適な触媒成分、活性剤及び担体材料の例を以下でさらに説明する。
【0027】
各種触媒成分は、とりわけ、メタロセン触媒成分及び非メタロセン触媒成分を含む本発明の担持多種遷移金属触媒に使用するために好適であり得る。
【0028】
本発明の担持多種遷移金属触媒は、例えばマルチモーダルな重合体生成物を製造するために使用できる。該重合体生成物は、例えば、バイモーダル、トリモーダル又はクアドリモーダルであることができる。実際には、所定の実施形態では、本発明の担持多種遷移金属触媒系は4種以上の触媒成分を含むことができる。つまり、所定の実施形態では、高分子量樹脂(例えば、>ca100,000amu)は、例えば、チタンの非メタロセン触媒成分を含むことができる触媒成分から製造できる。所定の実施形態では、低分子量樹脂(例えば、<ca100,000amu)は、例えば、メタロセン触媒成分から製造できる。従って、複数の異なる触媒成分の存在下での重合によって、異なる分子量の成分を含むマルチモーダルポリオレフィン組成物を得ることができる。例えば、1種の非メタロセン触媒成分及び1種のメタロセン触媒成分の存在下での重合によって、低分子量成分と高分子量成分とを含むバイモーダルポリオレフィン組成物を得ることができる。
【0029】
本発明の所定の実施形態は、単量体と本発明の担持多種遷移金属触媒の非メタロセン及び/又はメタロセン触媒成分とを接触させることを伴う。特定の実施形態では、多種遷移金属触媒中に存在するそれぞれ異なる触媒成分が存在し、又は単一型の担体上に、平均して、担体材料のそれぞれの粒子が多種遷移金属触媒中に存在するそれぞれの非メタロセン及び/又はメタロセン触媒成分のうちの1種を含むように担持される。別の実施形態では、それぞれの異なる触媒成分は、平均して、担体材料の任意の所定の粒子が単一触媒成分のみを含むように他の触媒成分とは別に担持できる(例えば、2種金属触媒系では、メタロセン触媒成分は、非メタロセン触媒成分とは別に担持できる)。この後者の実施形態では、それぞれの担持触媒は、任意の順序で重合反応器に連続的に導入でき、或いは部分的に導入でき、又は同時に導入できる。
【0030】
本発明の一具体例では、まず触媒成分を担体材料と混合し、次にこの担持触媒成分を別の触媒成分と混合させることができる。例えば、一実施形態では、まず非メタロセン触媒成分を担体材料と混合させて担持非メタロセン組成物を与えることができる;続いて、この担持非メタロセン組成物をメタロセン触媒成分と混合させて、バイモーダルポリオレフィン組成物の製造に使用したときに生産性を向上させる2種金属触媒を生じさせることができる。当業者であれば分かるように、他の組合せも可能である。
【0031】
複数の異なる触媒成分(触媒成分の異なる組合せであっても)を担体に固定させる様々な方法が使用できる。担持多種遷移金属触媒を製造するための一般的な手順の一例は、担持非メタロセン触媒成分を準備し、非極性炭化水素中に該非メタロセン触媒を含むスラリーとメタロセン触媒成分を含む溶液であって活性剤も含んでいてよいものとを接触させ、非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分を含む得られた生成物を乾燥させ、担持2種金属触媒組成物を回収することを含むことができる。担持2種金属触媒組成物並びに他の担持多種遷移金属触媒組成物(例えば、3種金属、4種金属などのもの)を製造するための他の手順は、当業者であれば分かるであろう。
【0032】
非メタロセン触媒成分
本発明の所定の実施形態では、1種以上の非メタロセン触媒成分を含む、担持された多種遷移金属触媒組成物を製造することができる。ここで使用するときに、用語「非メタロセン触媒成分」とは、メタロセンでも以下で特定するメタロセン型触媒化合物の一つでもない任意の触媒成分をいう。本発明において非メタロセン触媒成分として使用するのに、多数の化合物が好適であり得る。好ましい非メタロセン触媒成分の例としては、とりわけ、例えば、限定されないが、チタン及びバナジウムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物又はアルコキシハロゲン化物、例えば、四塩化チタン(TiCl4)、四塩化バナジウム(VCl4)及びオキシ三塩化バナジウム(VOCl3)、並びにチタン及びバナジウムのアルコキシドであってそのアルコキシド部分が1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜6個炭素原子の分岐又は非分岐アルキル基を有するもののようなチタン系又はバナジウム系チーグラー・ナッタ触媒成分を含めて、チーグラー・ナッタ触媒が挙げられる。好ましい非メタロセン触媒成分の他の例としては、前周期遷移金属第4及び5族原子を含む触媒成分、例えば、ハロゲン化ハフニウム、ハロゲン化ジルコニウム及びハロゲン化ニオブが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい非メタロセン触媒成分のさらに別の例としては、とりわけ、酸化クロム又は有機クロム化合物を含む触媒成分、例えば、シリカ担持又はアルミナ担持酸化クロム又はCr(pi−アリル)3が挙げられる。他の例としては、好ましい非メタロセン触媒成分は、とりわけ、アルミナ担持酸化モリブデンを含むことができる。好ましい非メタロセン触媒成分の他の例としては、とりわけ、ネオジム及び/又はランタンを含む触媒成分が挙げられる。好ましい非メタロセン触媒成分のさらなる例としては、とりわけ、酸素、窒素、燐、硫黄又はシリカを含む多座配位のものを含めて、後周期遷移金属触媒成分又は後周期メタロセン触媒成分が挙げられる。
【0033】
上記のように、所定の実施形態では、本発明の担持多種遷移金属触媒は、チーグラー・ナッタ触媒化合物である非メタロセン触媒成分を含むことができる。チーグラー・ナッタ触媒成分は当業者に周知であり、例えば、ZIEGLER CATALYSTS 363−386(G.Fink,R.Mulhaupt and H.H.Brintzinger著,Springer−Verlag 1995)に記載されている。当該触媒の例としては、TiCl4と、他の当該遷移金属の酸化物及び塩化物を含むものとが挙げられる。所定の実施形態では、本発明の担持多種遷移金属触媒は、第4及び第5族元素のハロゲン化物、酸化物、オキシハロゲン化物、アルコキシド及びそれらの混合物よりなる群から選択される非メタロセン遷移金属化合物を含むチーグラー・ナッタ触媒成分である非メタロセン触媒成分を有することができる。
【0034】
1種以上の非メタロセン触媒成分を使用する本発明の実施形態では、非メタロセン触媒成分は、本発明の担体材料と、一実施形態では別の触媒成分(例えば、メタロセン触媒成分又は同一の若しくは異なる非メタロセン触媒成分)と共に又はそれなしで混合できる。この非メタロセン触媒成分は、様々な方法で、本発明の担体材料と結合させたり、当該材料上に置いたり、さもなくば当該材料に固定したりすることができる。これらの方法の一つでは、当該担体材料の好適な非極性炭化水素希釈剤へのスラリーと有機マグネシウム化合物とを接触させることができるが、このときに、これがこのスラリーの非極性炭化水素希釈剤に溶解して溶液を形成し、続いて、これから有機マグネシウム化合物がキャリヤーに付着する。この有機マグネシウム化合物は、次式RMgR'(ここで、R’及びRは、同一の又は異なるC2〜C12アルキル基、又はC4〜C10アルキル基、又はC4〜C8アルキル基である。)によって表すことができる。少なくとも一つの特定の実施形態では、当該有機マグネシウム化合物はジブチルマグネシウムである。
【0035】
一実施形態では、シリカスラリー中に含まれる有機マグネシウム化合物の量は、本発明の担体材料に物理的又は化学的に付着する量、例えば、担体材料上のヒドロキシル基に結合する量にしかすぎず、且つ、この量を超えない。というのは、どのような過剰の有機マグネシウム化合物も望ましくない副反応を生じさせる可能性があるからである。日常的な実験を用いて有機マグネシウム化合物の最適量を決定することができる。例えば、有機マグネシウム化合物は、該有機マグネシウム化合物が担体溶媒中で検出されるまで、スラリーに該スラリーを撹拌しながら添加できる。別法では、有機マグネシウム化合物は、担体材料に付着する量を超えて添加できるが、この場合には、ろ過及び洗浄によって、付着したあらゆる過剰の量も除去できる。脱水シリカ(グラム)の量に基づく有機マグネシウム化合物の量(モル)は、一般に、一実施形態では0.2ミリモル/グラム〜2ミリモル/グラムの範囲にある。
【0036】
随意に、有機マグネシウム化合物処理スラリーと、電子供与体、例えばテトラエチルオルトシロキサン(TEOS)又は有機アルコールR”OH(ここで、R”はC1〜C12アルキル基、又はC1〜C8アルキル基、又はC2〜C4アルキル基である。)とを接触させることができる。特定の実施形態では、R”OHはn−ブタノールであることができる。有機アルコールの使用量は、0.2〜1.5、又は0.4〜1.2、又は0.6〜1.1、又は0.9〜1.1のR”OH:Mg mol/mol比を与えるのに十分な量であることができる。
【0037】
スラリー(これは、上述のとおり、随意に有機マグネシウム処理及び/又はアルコール処理されていてよい)と非メタロセン遷移金属化合物とを接触させることができる。非メタロセン遷移金属化合物の使用量は、0.3〜1.5、又は0.5〜0.8の遷移金属対マグネシウムのmol/mol比を与えるのに十分なものである。続いて、希釈剤を蒸発又はろ過のような従来の方法で除去して、乾燥した担持非メタロセン触媒成分を得ることができる。
【0038】
1種以上の非メタロセン触媒成分を使用する(例えば、他の非メタロセン触媒成分及び/又は1種以上のメタロセン触媒成分と共に)実施形態では、この触媒成分と本発明の担体材料とを任意の順序で接触させることができる。本発明の特定の実施形態では、まず非メタロセン触媒成分を上記のように本発明の担体材料と反応させ、次いで、この担持非メタロセン触媒成分とメタロセン触媒成分とを接触させることができる。
【0039】
メタロセン触媒成分
本発明の所定の実施形態では、1種以上の非メタロセン触媒成分を含む担持多種遷移金属触媒を製造することができる。一般に、メタロセン触媒化合物は、例えば、1&2 Metallocene−Based Polyolefins(John Scheirs及びW.Kaminsky著,John Wiley & Sons社.2000);G.G.Hlatky,181 COORDINATION CHEM.REV.243−296(1999)並びに、特に、ポリエチレンの合成における使用については、1 Metallocene−Based Polyolefins 261−377(2000)に全体的に記載されている。ここで説明するメタロセン触媒化合物としては、1個以上のCp配位子(シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子)が少なくとも1個の第3〜第12族金属原子に結合し、且つ、1個以上の脱離基が少なくとも1個の金属原子に結合してなる「半サンドイッチ」及び「全サンドイッチ」化合物が挙げられる。また、これらのものとしては、第3、4、5及び6B族の金属原子を含む制限幾何触媒化合物を挙げることもできる。以下、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」という。含まれる場合には、メタロセン触媒成分は、以下でさらに説明する特定の実施形態では本発明の担体材料上に担持でき、1種以上の非メタロセン触媒成分と共に又はそれなしで(特定の実施形態では1種以上の非メタロセン触媒成分と共に)担持できる。
【0040】
Cp配位子は、典型的にはπ結合した環及び/又は縮合環或いは環系である。環(若しくは複数の環)又は環系(若しくは複数の環系)は、典型的には、第13〜16族原子よりなる群から選択される原子を含み、特に、Cp配位子を構成する原子は、炭素、窒素、酸素、珪素、硫黄、燐、ゲルマニウム、硼素及びアルミニウム並びにそれらの組合せよりなる群から選択されるが、ここで、炭素は、環員の少なくとも50%を構成するものとする。さらに具体的にいうと、Cp配位子は、置換及び非置換のシクロペンタジエニル配位子及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子よりなる群から選択でき、その例としては、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル及び他の構造が挙げられるが、これらに限定されない。このような配位子のさらなる例としては、シクロペンタジエニル、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンズインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントリンデニル、3,4−ベンゾフルオレニル、9−フェニルフルオレニル、8−H−シクロペンタアセナフチレニル、7H−ジベンゾフルオレニル、インデノ[1,2−9]アントレン、チオフェノインデニル、チオフェノフルオレニル、それらの水素化種(例えば、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル、又は「H4Ind」)、それらの置換種及びそれらの複素環式種が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明に有用なメタロセンは、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、テトラヒドロインデニル及びそれらの置換種よりなる群から選択される同一の又は異なるCp環を1個又は2個(さらに特定の実施形態では2個)有するものから選択できる。
【0041】
明細書及び特許請求の範囲全体にわたって記載するときに、メタロセン触媒化合物の金属原子「M」は、一実施形態では第3〜12族原子及びランタニド族原子よりなる群から選択でき;さらに特定の実施形態では第3〜10族原子よりなる群から選択でき、さらに特定の実施形態ではSc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir及びNiよりなる群から選択でき;さらに特定の実施形態では第4、5及び6族原子よりなる群から選択でき、さらに特定の実施形態ではTi、Zr、Hf原子から選択でき、さらに特定の実施形態ではZrであることができる。金属原子「M」の酸化状態は、一実施形態では0〜+7の範囲にあり;さらに特定の実施形態では、+1、+2、+3、+4又は+5であり;さらに特定の実施形態では+2、+3又は+4である。金属原子「M」に結合する基は、特に示さない限り、以下に式及び構造で説明する化合物が電気的に中性であるようなものである。Cp配位子は、金属原子Mと共に少なくとも1個の化学結合を形成して「メタロセン触媒化合物」となる。これらのCp配位子は、置換/引き抜き反応に対してさほど影響を受けやすくないという点で、触媒化合物に結合する脱離基とは区別される。
【0042】
本発明の一態様では、本発明の1種以上のメタロセン触媒成分は次式(I)によって表される:
CpACpBMXn (I)
(式中、Mは上記の通りであり;それぞれのXはMに化学的に結合し;それぞれのCp基はMに化学的に結合し;nは0〜4の整数であり、特定の実施形態では1又は2のいずれかである。)。
【0043】
式(I)においてCpA及びCpBで表される配位子は、同一の又は異なるシクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子であってよく、そのいずれか又は両方はヘテロ原子を含有することができ、また、そのいずれか又は両方は基Rで置換されていてよい。一実施形態では、CpA及びCpBは、シクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル及びそれぞれの置換種よりなる群から独立して選択される。
【0044】
独立に、式(I)の各CpA及びCpBは、非置換であっても置換基Rのいずれか一つ又はその組合せで置換されていてもよい。式(I)で使用されるような置換基R並びに式(Va−d)で表される環置換基の例としては、水素基、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アシル、アロイル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボモイル、アルキルカルバモイル及びジアルキルカルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ及びそれらの組合せよりなる群から選択される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
式(I)〜(V)に関連するアルキル置換基Rの具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、メチルフェニル及びt−ブチルフェニル基など(それらの全ての異性体、例えば第三ブチル、イソプロピルなどを含む。)が挙げられるが、これらに限定されない。見込まれる他の基としては、置換アルキル及び置換アリール、例えば、フルオルメチル、フルオルエチル、ジフルオルエチル、ヨードプロピル、ブロムヘキシル、クロルベンジル、及びトリメチルシリル、トリメチルゲルミル、メチルジエチルシリルなどを含めてヒドロカルビル置換有機金属基;及びトリス(トリフルオルメチル)シリル、メチルビス(ジフルオルメチル)シリル、ブロムメチルジメチルゲルミルなどを含めてハロカルビル置換有機金属基;及び例えばジメチル硼素を含めて二置換硼素基;及びジメチルアミン、ジメチルホスフィン、ジフェニルアミン、メチルフェニルホスフィンを含めて二置換第15族元素基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、フェノキシ、硫化メチル及び硫化エチルを含めて第16族元素基が挙げられる。他の置換基Rとしては、オレフィン、例えば、限定されないが、ビニル末端配位子、例えば3−ブテニル、2−プロペニル、5−ヘキセニルなどを含むオレフィン系不飽和置換基が挙げられる。一実施形態では、少なくとも2個のR基(一実施形態では隣接する2個のR基)が結合して炭素、窒素、酸素、燐、珪素、ゲルマニウム、アルミニウム、硼素及びそれらの組合せよりなる群から選択される3〜30個の原子を有する環構造を形成する。また、1−ブタニルのような置換基Rは、元素Mに対する結合を形成し得る。
【0046】
X基の例としては、アルキル、アミン、ホスフィン、エーテル、カルボキシレート、ジエン、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基;弗素化炭化水素基(例えば、−C65(ペンタフルオルフェニル))、弗素化アルキルカルボン酸イオン(例えば、CF3C(O)O-)、ヒドリドイオン及びハロゲンイオン並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。X配位子の他の例としては、アルキル基、例えば、シクロブチル、シクロヘキシル、メチル、ヘプチル、トリル、トリフルオルメチル、テトラメチレン、ペンタメチレン、メチリデン、メチオキシ、エチオキシ、プロポキシ、フェノキシ、ビス(N−メチルアニリド)、ジメチルアミド、ジメチルホスフィド基などが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、2個以上のXは縮合環又は環系の一部分をなす。所定の実施形態では、Xは、C1〜C6アルキル、C6アリール、C7〜C12アルキルアリール、弗素化C1〜C6アルキル、弗素化C6アリール、弗素化C7〜C12アルキルアリール、塩素及び弗素よりなる群から選択できる。
【0047】
本発明の他の態様では、メタロセン触媒成分は、その構造が式(II)で表されるように、CpA及びCpBが少なくとも1個の架橋基(A)によって互いに架橋した式(I)のものを含む:
CpA(A)CpBMXn (II)
【0048】
式(II)で表されるこれらの架橋化合物は、「架橋メタロセン」として知られている。式(II)におけるCpA、CpB、M、X及びnは、式(I)について上で定義したとおりである;また、ここで、それぞれのCp配位子はMに化学的に結合し、そして(A)はそれぞれのCpに化学的に結合する。架橋基(A)の例としては、少なくとも1個の第13〜16族原子、例えば、限定されないが、炭素、酸素、窒素、珪素、アルミニウム、硼素、ゲルマニウム及び錫原子並びにそれらの組合せのうち少なくとも1個を含有する2価の炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない;また、ヘテロ原子は、中立の原子価を満足するようにC1〜C12アルキル又はアリールで置換されていてもよい。また、架橋基(A)は、ハロゲン基及び鉄を含めて、上で定義した(式(I)について)置換基Rを含有することもできる。架橋基(A)の具体例は、C1〜C6アルキレン、置換C1〜C6アルキレン、酸素、硫黄、R'2C=、R'2Si=、−Si(R')2Si(R'2)−、R'2Ge=、R'P=(ここで、「=」は2つの化学結合を表す。)によって表されるがこれらに限定されず、ここで、R'は、独立して、ヒドリド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、ヒドロカルビル置換有機金属、ハロカルビル置換有機金属、二置換硼素、二置換第15族原子、置換第16族原子及びハロゲン基よりなる群から選択される;また、2個以上のR'は一緒になって環又は環系を形成することができる。一実施形態では、式(II)の架橋メタロセン触媒成分は2個以上の架橋基(A)を有する。
【0049】
架橋基(A)の他の例としては、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ジフェニルメチレン、1,2−ジメチルエチレン、1,2−ジフェニルエチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、ジメチルシリル、ジエチルシリル、メチルエチルシリル、トリフルオルメチルブチルシリル、ビス(トリフルオルメチル)シリル、ジ(n−ブチル)シリル、ジ(n−プロピル)シリル、ジ(i−プロピル)シリル、ジ(n−ヘキシル)シリル、ジシクロヘキシルシリル、ジフェニルシリル、シクロヘキシルフェニルシリル、t−ブチルシクロヘキシルシリル、ジ(t−ブチルフェニル)シリル、ジ(p−トリル)シリル及びSi原子がGe又はC原子で置換された対応部分;ジメチルシリル、ジエチルシリル、ジメチルゲルミル及びジエチルゲルミルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
別の実施形態では、架橋基(A)は、例えば4〜10員環(さらに特定の実施形態では5〜7員環)を含む環であってもよい。この環員は、上で列挙した元素から選択でき、特定の実施形態ではB、C、Si、Ge、N及びOの一つ以上から選択できる。架橋部分として又はその一部分として存在できる環構造の例は、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン及び1個又は2個の炭素原子がSi、Ge、N及びOの少なくとも1個(特に、Si及びGe)で置換された対応する環であるが、これらに限定されない。環とCp基との間の結合配置は、シス、トランス又はその組合せであることができる。
【0051】
環状架橋基(A)は、飽和でも不飽和でもよく及び/又は1個以上の置換基を有していてよく及び/又は1個以上の他の環構造に縮合していてよい。存在するならば、この1個以上の置換基は、一実施形態ではヒドロカルビル(例えば、メチルのようなアルキル)及びハロゲン(例えば、F、Cl)よりなる群から選択される。上記環状架橋部分が縮合していてよい1個以上のCp基は、飽和でも不飽和でもよく、且つ、4〜10(特に5、6又は7)員環(特定の実施形態ではC、N、O及びSよりなる群から選択される)を有するもの、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルよりなる群から選択できる。さらに、これらの環構造は、例えばナフチル基の場合のように、それら自体が縮合していてもよい。さらに、これらの(縮合していてよい)環構造は1個以上の置換基を有することができる。例えば、これらの置換基の例は、ヒドロカルビル(特にアルキル)基及びハロゲン原子である。
【0052】
式(I)及び(II)の配位子CpA及びCpBは、一実施形態では互いに異なっていてよく、別の実施形態では同一であってよい。
【0053】
本発明のさらに別の態様では、メタロセン触媒成分は、架橋された一配位子メタロセン化合物(例えば、モノシクロペンタジエニル触媒成分)を含む。この実施形態では、少なくとも1種のメタロセン触媒成分は、次式(III)で表される架橋「半サンドイッチ」メタロセンである:
CpA(A)QMXn (III)
式中、CpAは上で定義したとおりであり、且つ、Mに結合し;(A)はQ及びCpAに結合する架橋基であり;また、Q基からの原子はMに結合し;nは0、1又は2の整数である。上記式(III)において、CpA、(A)及びQは縮合環系を形成することができる。式(III)のX基及びnは、式(I)及び(II)において上に定義したとおりである。一実施形態では、CpAは、シクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、それらの置換種及びそれらの組合せよりなる群から選択される。
【0054】
式(III)において、Qは、ヘテロ原子含有配位子であって、その結合原子(金属Mと結合する原子)が一実施形態では第15族原子及び第16族原子よりなる群から選択され、さらに特定の実施形態では窒素、燐、酸素又は硫黄原子よりなる群から選択され、さらに特定の実施形態では窒素及び酸素から選択される。Q基の例としては、アルキルアミン、アリールアミン、メルカプト化合物、エトキシ化合物、カルボキシレート(例えば、ピバレート)、カルバメート、アゼニル、アズレン、ペンタレン、ホスホイル、ホスフィニミン、ピロリル、ピロゾリル、カルバゾリル、ボラベンゼン及びMと結合することができる第15族及び第16族原子を含む他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明のさらに別の態様では、少なくとも1種のメタロセン触媒成分は、次式(IVa)で表される、架橋されていない「半サンドイッチ」メタロセンであることができる:
CpAMQqn (IVa)
式中、CpAは、(I)においてCp基について定義したとおりであり、且つ、Mに結合する配位子であり;それぞれのQは、独立にMに結合し;Xは、(I)において上記した脱離基であり;nは0〜3の範囲にあり、一実施形態では0又は3であり;qは0〜3の範囲にあり、一実施形態では0又は3である。一実施形態では、CpAは、シクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、それらの置換種及びそれらの組合せよりなる群から選択される。
【0056】
式(IVa)において、Qは、ROO-、RO−、R(O)−、−NR−、−CR2−,−S−、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2、−H並びに置換及び非置換のアリール基よりなる群から選択され、ここで、Rは、C1〜C6アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C6アルキルアミン、C6〜C12アルキルアリールアミン、C1〜C6アルコキシ、C6〜C12アリールオキシなどよりなる群から選択される。Qの例としては、C1〜C12カルバメート、C1〜C12カルボキシレート(例えば、ピバレート)、C2〜C20 アリル及びC2〜C20ヘテロアリル部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
他の方法で説明すると、上記「半サンドイッチ」メタロセンは、例えば、米国特許第6,069,213号に記載されるように、式(IVb)のように説明できる:
CpAM(Q2GZ)Xn (IVb)
又は
T(CpAM(Q2GZ)Xnm
式中:
M、CpA、X及びnは、上で定義したとおりであり;
2GZは、多座配位子単位(例えば、ピバレート)を形成し、ここで、Q基の少なくとも一つはMとの結合を形成し、しかもそれぞれのQは、独立して、−O−、−NR−、−CR2−及び−S−よりなる群から選択されるものと定義され;Gは炭素又は珪素のいずれかであり;Zは、R、−OR、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2及びヒドリドよりなる群から選択されるが、ただし、Qが−NR−であるときには、Zは、−OR、−NR2、−SR、−SiR3、−PR2よりなる群から選択されるものとし;また、Qについての中立の原子価はZによって満足されるものとし;それぞれのRは、独立して、C1〜C10ヘテロ原子含有基、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、C6〜C12アルキルアリール、C1〜C10アルコキシ及びC6〜C12アリールオキシよりなる群から選択され;
nは、特定の実施形態では1又は2であり;及び
Tは、C1〜C10アルキレン、C6〜C12アリーレン及びC1〜C10ヘテロ原子含有基並びにC6〜C12複素環式基よりなる群から選択される架橋基であり;ここで、それぞれのT基は、隣接する「CpAM(Q2GZ)Xn」基を架橋し、且つ、CpA基に化学的に結合する。
mは1〜7の整数であり;さらに特定の実施形態では、mは2〜6の整数である。
【0058】
本発明の他の態様では、少なくとも1種のメタロセン触媒成分は、特に式(Va)、(Vb)、(Vc)及び(Vd)で説明できる:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

式(Va)〜(Vd)において、Mは、第3族〜第12族原子よりなる群から選択され、さらに特定の実施形態では第3族〜第10族原子よりなる群から選択され、さらに特定の実施形態では第3〜第6族原子よりなる群から選択され、さらに特定の実施形態では第4族原子よりなる群から選択され、さらに特定の実施形態ではZr及びHfよりなる群から選択され、;さらに特定の実施形態ではZrであり;
(Va−i)及び(Va−ii)において、Qは、ハロゲンイオン、アルキル、アルキレン、アリール、アリーレン、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、アルキルアミン、ホスフィン、アルキルホスフィン、置換アルキル、置換アリール、置換アルコキシ、置換アリールオキシ、置換アミン、置換アルキルアミン、置換ホスフィン、置換アルキルホスフィン、カルバメート、ヘテロアリル、カルボキシレート(好適なカルバメート及びカルボキシレートの例としては、酢酸トリメチル、酢酸トリメチル、酢酸メチル、p−トルエート、ベンゾエート、カルバミン酸ジエチル及びカルバミン酸ジメチルが挙げられるが、これらに限定されない。)、弗素化アルキル、弗素化アリール及び弗素化カルボン酸アルキルよりなる群から選択され;
qは1〜3の範囲の整数であり;
それぞれのR*は、独立して:一実施形態ではヒドロカルビル及びヘテロ原子含有ヒドロカルビルよりなる群から選択され;別の実施形態ではアルキレン、置換アルキレン及びヘテロ原子含有ヒドロカルビルよりなる群から選択され;さらに特定の実施形態ではC1〜C12アルキレン、C1〜C12置換アルキレン及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素よりなる群から選択され;さらに特定の実施形態ではC1〜C4アルキレンよりなる群から選択され;また、式(Vb−d)における別の実施形態では両方のR*基は同一であり;
Aは、式(II)における(A)について上記した通りであり、特に、一実施形態では、−O−、−S−、−SO2−、−NR−、=SiR2、=GeR2、=SnR2、−R2SiSiR2−、RP=、C1〜C12アルキレン、置換C1〜C12アルキレン、2価C4〜C12環状炭化水素並びに置換及び非置換のアリール基よりなる群から選択され;さらに特定の実施形態ではC5〜C8環状炭化水素、−CH2CH2−、=CR2及び=SiR2よりなる群から選択され;ここで、Rは、一実施形態では、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、フルオルアルキル及びヘテロ原子含有炭化水素よりなる群から選択され;また、Rは、さらに特定の実施形態では、C1〜C6アルキル、置換フェニル、フェニル及びC1〜C6アルコキシよりなる群から選択され;また、Rは、さらに特定の実施形態では、メトキシ、メチル、フェノキシ及びフェニルよりなる群から選択され;
Aは、さらに別の実施形態では存在しなくてもよいが、この場合には、それぞれのR* は、R1〜R12について定義したとおりであり;
それぞれのXは式(I)において上記した通りであり;
nは0〜4の整数であり、別の実施形態では1〜3であり、さらに別の実施形態では1又は2であり;及び
1〜R12 は、独立して:一実施形態では、水素基、ハロゲン基、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12フルオルアルキル、C6〜C12フルオルアリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体よりなる群から選択され;さらに特定の実施形態では水素基、弗素基、塩素基、臭素基、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、C1〜C6フルオルアルキル、C2〜C6フルオルアルケニル、C7〜C18フルオルアルキルアリールよりなる群から選択され;さらに特定の実施形態では、水素基、弗素基、塩素基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル及び4−t−ブチルフェニル基よりなる群から選択され;ここで、隣接するR基は、飽和した、部分的に飽和した又は完全に飽和した環を形成することができる。
【0059】
(Va)によって表されるメタロセン触媒成分の構造は、例えば、米国特許第5,026,798号及び米国特許第6,069,213号に開示されるようなダイマー又はオリゴマー構造を含め、例えば、米国特許第5,703,187号及び米国特許第5,747,406号に開示されるような多くの形態をとることができる。
【0060】
(Vd)で表されるメタロセンの特定の実施形態では、R1及びR2は、置換されていても置換されていなくてもよい共役6員炭素環系を形成する。
【0061】
ここでの記載と一致するメタロセン触媒成分の例としては、
シクロペンタジエニルジルコニウムXn
インデニルジルコニウムXn
(1−メチルインデニル)ジルコニウムXn
(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
(1−プロピルインデニル)ジルコニウムXn
(2−プロピルインデニル)ジルコニウムXn
(1−ブチルインデニル)ジルコニウムXn
(2−ブチルインデニル)ジルコニウムXn
(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
テトラヒドロインデニルジルコニウムXn
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
シクロペンタジエニルジルコニウムXn
ペンタメチルシクロペンタジエニルチタンXn
テトラメチルシクロペンチルチタンXn
1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニルジルコニウムXn
ジメチルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(2−メチルインデニル)(フルオレニル)ジルコニウムXn
ジフェニルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルゲルミル(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)(3−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(1,2,3,4−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムXn
イソプロピリデンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
イソプロピリデン(3−メチルシクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
メソエチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(2−プロピル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(2−イソプロピル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(2−ブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(2−イソブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
ジフェニル(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(1−インデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(2−プロピルインデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(2−ブチルインデニル)ジルコニウムXn
ジフェニルシリルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
ジフェニルシリルビス(2−プロピルインデニル)ジルコニウムXn
ジフェニルシリルビス(2−ブチルインデニル)ジルコニウムXn
ジメチルゲルミルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
ジフェニルシリル(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムXn
ジフェニルシリルビス(インデニル)ジルコニウムXn
シクロトリメチレンシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
シクロテトラメチレンシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
シクロトリメチレンシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
シクロトリメチレンシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
シクロトリメチレンシリルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
シクロトリメチレンシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
シクロトリメチレンシリルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(N−t−ブチルアミド)チタンXn
ビス(シクロペンタジエニル)クロムXn
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(n−ドデシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(n−ペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1,3−ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1−エチル−2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1−エチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1−プロピル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1−イソブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1−プロピル−3−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(1,3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムXn
ビス(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムXn
ビス(インデニル)ジルコニウムXn
ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムXn
シクロペンタジエニルインデニルジルコニウムXn
ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ビス(n−ペンチルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
(n−プロピルシクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ビス[(2−トリメチルシリルエチル)シクロペンタジエニル]ハフニウムXn
ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ビス(2−n−プロピルインデニル)ハフニウムXn
ビス(2−n−ブチルインデニル)ハフニウムXn
ジメチルシリルビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ジメチルシリルビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ビス(9−n−プロピルフルオレニル)ハフニウムXn
ビス(9−n−ブチルフルオレニル)ハフニウムXn
(9−n−プロピルフルオレニル)(2−n−プロピルインデニル)ハフニウムXn
ビス(1−n−プロピル−2−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
(n−プロピルシクロペンタジエニル)(1−n−プロピル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロプロピルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロブチルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンチルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロヘキシルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロヘプチルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロオクチルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロノニルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロデシルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロウンデシルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(s−ブチルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−オクチルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−デシルアミド)チタンXn
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−オクタデシルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロプロピルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロブチルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンチルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロヘキシルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロヘプチルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロオクチルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロノニルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロデシルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロウンデシルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(s−ブチルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−オクチルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−デシルアミド)チタンXn
メチルフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−オクタデシルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロプロピルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロブチルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンチルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロヘキシルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロヘプチルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロオクチルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロノニルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロデシルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロウンデシルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(s−ブチルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−オクチルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−デシルアミド)チタンXn
ジフェニルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(n−オクタデシルアミド)チタンXn及びそれらの誘導体が挙げられ、
ここで、nの値は1、2又は3である。「それらの誘導体」とは、一実施形態では式(Va−d)について上記したような任意の置換物又は環形成物を意味し;特に、金属「M」(Cr、Zr、Ti又はHf)をCr、Zr、Hf及びTiよりなる群から選択される原子で置換したものを意味し;「X」基をC1〜C5アルキル、C6アリール、C6〜C10アルキルアリール、弗素、塩素又は臭素のいずれかで置換したものを意味する。
【0062】
上記メタロセン触媒成分は、それらの構造異性体又は光学異性体又は鏡像異性体(ラセミ混合物)を包含するものとし、また、一実施形態では純粋な鏡像異性体であることができる。
【0063】
ここで使用するときに、ラセミ異性体及び/又はメソ異性体を有する、非対称的に置換された、単一の架橋メタロセン触媒成分それ自体は、少なくとも2種の異なる架橋メタロセン成分を構成しない。
【0064】
本発明に有用な「メタロセン触媒成分」は、ここで説明する任意の「実施形態」の任意の組合せを含むことができる。
【0065】
粒度分布が改善された本発明の担体材料
本発明の多種遷移金属触媒は、粒度分布が改善された本発明の担体材料をさらに含む。メタロセンのような単一部位触媒のための担体、その担体の担持方法、その担体の改質及び活性化方法は、例えば、1 Metallocene−Based Polyolefins 173−218(J.Scheirs及びW.Kaminsky著,John Wiley & Sons,Ltd.2000)で検討されている。ここで使用するときに、用語「担体」又は「キャリヤー」は、区別なく用いるものとし、本発明の担体材料を指す。
【0066】
粒度分布が改善された本発明の担体材料は、一般に、約6のD90/D10比を有する。所定の実施形態では、本発明の担体材料は、約5未満のD90/D10比を有し、所定の実施形態では約4.5未満である。所定の実施形態では、本発明の担体材料は、約60ミクロン未満のD90を有し、所定の実施形態では約55ミクロン未満のD90を有し、所定の実施形態では約50ミクロン未満のD90を有し、所定の実施形態では約45ミクロン未満のD90を有する。所定の実施形態では、本発明の担体材料は、約30ミクロン未満のD50を有し、所定の実施形態では約25ミクロン未満のD50を有する。所定の実施形態では、本発明の担体材料は、約5ミクロン未満のD10、所定の実施形態では約8ミクロン未満のD10、所定の実施形態では約10ミクロン未満のD10を有する。所定の好ましい実施形態では、本発明の担体材料は約30未満のD50と、約6未満のD90/D10比を持つ粒度分布とを有する。
【0067】
試料担体材料についてのD10、D50及びD90値は、市販の従来の粒度分析器を使用することによって算出できる。好適な粒度分析器の例は、英国ウスターシャー州のMalvern Instruments社からMastersizer S long benchという商品名で市販されている。上記粒度分析器と共に使用できる好適なソフトウェアの例は、Malvern社から市販されており、Mastersizer Seriesソフトフェア Version 2.19と呼ばれている。Malvern粒度分析器を使用して特定の試料についてのD10、D50及びD90値を生成することは、「Getting Started,MAN 0101,Issue 1.3(1997年8月)」というタイトルのMalvernのマニュアル、特に7.6頁に記載されている。この開示は参照によって含める。
【0068】
粒度分布が改善された本発明の担体材料として使用するのに好適であり得る材料の例としては、無機酸化物及び無機塩化物、特に、タルク、クレー、シリカ、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、酸化鉄、ボリア、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、二酸化チタン、リン酸アルミニウムゲル、ガラスビーズのような材料、並びに重合体、例えばポリ塩化ビニル及び置換ポリスチレン、官能化又は架橋有機担体、例えば、ポリスチレンジビニルベンゼンポリオレフィン又は高分子化合物、並びにそれらの混合物、並びにグラファイトが、その様々な形態のいずれかで挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の担体材料はシリカを含む。特に好ましい実施形態では、本発明の担体材料は、1.5〜2.0cm3/gの範囲の細孔容量及び280〜350m2/gの表面積を有し、D90が約44ミクロンであり、D50が約25ミクロンであり、D10が約10ミクロンである、IneosからES−757という商品名で市販されている合成非晶質二酸化珪素を含む。
【0069】
本発明の担持多種遷移金属触媒における、粒度分布が改善された本発明の担体材料を使用すると、とりわけ、ポリオレフィンのような重合体生成物を製造する重合方法において多種遷移金属触媒の生産性を向上させることを含めて、多くの利益が得られると考えられる。さらに、本発明の触媒において本発明の担体を使用すると、フィルム外観の評価及び当該重合体生成物のゲルカウントに望ましい影響を与えるとも考えられる。理論に制限されることを望まないが、本発明の担体の改善された粒度分布は、活性剤(例えば、トリメチルアルミニウムなど)の多種遷移金属触媒への吸収を改善することができる。これは、特に、このような吸収が表面積に依存すると考えられるからである。さらに、本発明の触媒は多種遷移金属触媒成分を含むので、本発明の担体の改善された粒度分布は、触媒上でのそれぞれの成分(例えば、1種以上のメタロセン触媒成分と1種以上の非メタロセン触媒成分)の分布を改善させることができる。
【0070】
本発明の担体は、該触媒系の他の成分とあらゆる方法で接触できる。一実施形態では、本発明の担体材料と活性剤とを接触させて該活性剤と該担体材料とに結合を形成させる(例えば、「結合活性剤」)。別の実施形態では、触媒成分と本発明の担体材料とを接触させて「結合触媒成分」を形成させることができる。さらに他の実施形態では、本発明の担体材料と、活性剤及び触媒成分とを一緒に、又は当該材料と各成分とを部分的に任意の順序で接触させることができる。該成分は、溶液、スラリー若しくは固体状態又はそれらのいくつかの組合せのような任意の好適な手段で接触でき、そして所望の化学的/物理的変化をもたらすのに望ましい任意の温度にまで加熱できる。
【0071】
本発明の所定の実施形態では、本発明の担体材料、特に無機担体又はグラファイト担体は、ハロゲン化方法又は、例えば、所定の化学種と担体材料とを化学結合、イオン相互作用若しくは他の物理的若しくは化学的相互作用のいずれかによって会合させるような他の好適な方法などによって予備処理できる。1種以上の触媒成分と本発明の担体材料とを同時接触(又は「同時固定」)させることは本発明の範囲内にある。触媒成分の同時固定の例としては、2種以上の同一の又は異なるメタロセン触媒成分、1種以上のメタロセンとチーグラー・ナッタ型触媒、1種以上のメタロセンとクロム又は「フィリップス」型触媒、1種以上のメタロセンと第8〜10族金属含有触媒及びこれらの組合せのいずれかと1種以上の活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、共担持の組合せとしては、メタロセンA/メタロセンA;メタロセンA/メタロセンB;メタロセン/チーグラー・ナッタ;メタロセン/第8〜10族金属含有触媒;メタロセン/クロム触媒;メタロセン/チーグラー・ナッタ/第8〜10族含有触媒;メタロセン/クロム触媒/第8〜10族含有触媒、これらのいずれかと活性剤及びそれらの組合せが挙げられる。
【0072】
本発明の所定の実施形態では、粒度分布が改善された本発明の担体材料は、本発明の多種遷移金属触媒で使用する前に脱水できる。シリカを600℃で脱水するための手順の例が米国特許第5,525,678号に示されている。
【0073】
本発明の担体材料を非極性炭化水素希釈剤と混合させて担体スラリーを形成させることができるが、これは混合中に撹拌し、随意に加熱してもよい。
【0074】
各種非極性炭化水素希釈剤を使用して担体スラリーを形成させることができるが、ただし、選択される任意の非極性炭化水素は、好ましくは、関連する全ての反応温度では液体の状態のままであり、しかも、非メタロセン触媒成分を形成させるために使用される成分は、好ましくは、非極性炭化水素に少なくとも部分的に可溶である。従って、非極性炭化水素希釈剤は、たとえ所定の実施形態においてこれらの成分が炭化水素に部分的にしか可溶でないにしても、ここでは「溶媒」とみなされる。
【0075】
好適な非極性炭化水素の例としては、C4〜C10直鎖又は分岐アルカン、シクロアルカン及び芳香族化合物が挙げられる。より具体的には、非極性アルカンは、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、ノナン又はデカン;非極性シクロアルカン、例えばシクロヘキサン;又は芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン又はエチルベンゼンであることができる。また、異なる非極性炭化水素の混合物も使用できる。
【0076】
担体スラリーは、担体粒子と非極性炭化水素溶媒との混合中及びその混合後に加熱できるが、ただし、触媒成分と担体スラリーとを混合した時点で、該スラリーの温度は、触媒のいずれもが不注意にも失活しない程度に十分に低い温度であることが好ましい。つまり、担体スラリー(例えば、シリカスラリー)の温度は、好ましくは、90℃よりも低い温度、例えば、25〜70℃又は別の実施形態では40〜60℃に維持される。
【0077】
活性剤
ここで使用するときに、用語「活性剤」とは、担持された又は担持されていない任意の化合物又は該化合物の組合せであって、触媒化合物(例えば、チーグラー・ナッタ、メタロセン、第8〜10族含有触媒など)を該触媒成分から陽イオン種を作り出すことなどによって活性化させることができるものと定義される。典型的には、これは、少なくとも1個の脱離基(上記式におけるX基)を該触媒成分の金属中心から引き抜くことを伴う。こうして、本発明の触媒成分は、このような活性剤を使用してオレフィン重合の方向に活性化される。このような活性剤の具体例としては、ルイス酸、例えば、環状又はオリゴマー状のポリ(酸化ヒドロカルビルアルミニウム)、アルキルアルミニウム化合物及び所謂非配位イオン性活性剤(「NCA」)(或いは「イオン化性活性剤」又は「化学量論的活性剤」)又は中性のメタロセン触媒成分をオレフィン重合に対して活性なメタロセン陽イオンに変換させることができる任意の他の化合物が挙げられる。
【0078】
特に、アルモキサン(例えば、「MAO」)、変性アルモキサン(例えば、「TIBAO」)のようなルイス酸、及び活性剤としてアルキルアルミニウム化合物及び/又はイオン化性活性剤(中性又はイオン性)、例えば、ここで説明した所望のメタロセンを活性化するためのトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼素及び/又はトリスペルフルオルフェニル硼素メタロイド先駆物質を使用することは、本発明の範囲内にある。MAO及び他のアルミニウム系活性剤は、当該技術分野において周知である。イオン化性活性剤は、当該技術分野において周知である。これらの活性剤は、触媒成分(例えば、メタロセン)と共に又は触媒成分とは別に、本発明の担体材料と会合又は結合できるが、これについては、Gregory G.Hlatky,Heterogeneous Single−Site Catalysts for Olefin Polymerization 100(4)CHEMICAL REVIEWS 1347−1374(2000)に記載されている。
【0079】
本発明の方法で使用できる触媒先駆物質化合物用の活性剤として利用できるアルミニウムアルキル化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
中性イオン化性活性剤の例としては、第13族原子三置換化合物、特に、三置換の硼素、タリウム、アルミニウム、ガリウム及びインジウム化合物並びにそれらの混合物が挙げられる。これら3個の置換基は、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、ハロゲン化アルキル、アルコキシ及びハロゲン化物よりなる群から選択される。一実施形態では、これら3個の基は、ハロゲン、単環式又は多環式(ハロ置換を含む)アリール、アルキル及びアルケニル化合物並びにそれらの混合物よりなる群から独立に選択される。別の実施形態では、これら3個の基は、1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基及び3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含む)並びにそれらの組合せよりなる群から選択される。さらに他の実施形態では、これら3個の基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、ナフチル及びそれらの混合物よりなる群から選択される。さらに他の実施形態では、これら3個の基は、1〜4個の炭素原子を有する高ハロゲン化アルキル、高ハロゲン化フェニル及び高ハロゲン化ナフチル並びにそれらの混合物よりなる群から選択される。「高ハロゲン化」とは、その水素の少なくとも50%が弗素、塩素及び臭素よりなる群から選択されるハロゲン基で置換されることを意味する。
【0081】
別の実施形態では、中性の三置換第13族元素化合物は硼素化合物である。他の好適な中性イオン化性活性剤は、米国特許第6,399,532 B1号、米国特許第6,268,445 B1号及び19 ORGANOMETALLICS 3332−3337(2000)及び17 ORGANOMETALLICS 3996−4003(1998)に記載されている。
【0082】
例示として、イオン性のイオン化性活性剤の例としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、例えば、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)硼素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)硼素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)硼素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)硼素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオルメチルフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)硼素など;N,N−ジアルキルアニリニウム塩、例えば、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)硼素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)硼素、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)硼素など;ジアルキルアンモニウム塩、例えば、ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)硼素など;及びトリアリールホスホニウム塩、例えば、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)硼素、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)硼素、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)硼素など並びにそれらのアルミニウム均等物が挙げられる。
【0083】
さらに他の実施形態では、アルキルアルミニウムを複素環式化合物とともに含む活性剤を使用できる。この複素環式化合物の環は、少なくとも1種の窒素、酸素、及び/又は硫黄原子を含むことができ、一実施形態では少なくとも1個の窒素原子を含むことができる。複素環式化合物は、一実施形態では4員環以上、別の実施形態では5員環以上を含むことができる。
【0084】
活性剤としてアルキルアルミニウムと共に使用するための複素環式化合物は、非置換であってよいし、複数の置換基の一つ又は当該置換基の組合せで置換されていてもよい。好適な置換基の例としては、ハロゲン、アルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリール置換アルキル基、アシル基、アロイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボモイル基、アルキルカルバモイル基若しくはジアルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、直鎖、分岐若しくは環状のアルキレン基又はそれらの任意の組合せが挙げられる。また、これらの置換基は、ハロゲン、特に弗素若しくは臭素、又はヘテロ原子などで置換されていてもよい。炭化水素置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル又はフェニル基など(それらの全ての異性体、例えばt−ブチル、イソプロピルなどを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。置換基の他の例としては、フルオルメチル、フルオルエチル、ジフルオルエチル、ヨードプロピル、ブロムヘキシル又はクロルベンジルが挙げられる。
【0085】
一実施形態では、複素環式化合物は非置換である。別の実施形態では、この複素環式化合物の一以上の位置がハロゲン原子又はハロゲン原子含有基、例えばハロゲン化アリール基で置換されている。一実施形態では、ハロゲンは、塩素、臭素及び弗素よりなる群から選択される。
【0086】
活性剤として好適であり得る複素環式化合物の例としては、置換及び非置換のピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピロリン、ピロリジン、プリン、カルバゾール及びインドール、フェニルインドール、2,5−ジメチルピロール、3−ペンタフルオルフェニルピロール、4,5,6,7−テトラフルオルインドール又は3,4−ジフルオルピロールが挙げられる。
【0087】
一実施形態では、上記複素環式化合物をアルキルアルミニウム又はアルモキサンと混合して、触媒成分(例えば、メタロセン)との反応により、活性な重合触媒を生成する活性剤化合物を生じさせる。アルキルアルミニウムの例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリイソオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
好適であり得る他の活性剤としては、WO98/07515に記載されたもの、例えば、トリス(2,2’,2”−ノナフルオルビフェニル)フルオルアルミネートが挙げられる。本発明は、活性剤の組合せ、例えば、アルモキサンとイオン化性活性剤の組合せを使用することをさらに意図する。他の好適な活性剤としては、アルミニウム/硼素錯体、過塩素酸塩、過沃素酸塩及び沃素酸塩(それらの水和物を含む);リチウム(2,2’−ビスフェニルジトリメチルシリケート)・4THF;シリリウム塩と、非配位性の相溶性陰イオンとの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。また、電離放射線、電気化学的酸化などを使用するような活性化方法も、中性のメタロセン型触媒化合物又はその先駆物質を、オレフィンを重合させることができるメタロセン型陽イオンにするのを目的とする活性化方法として意図される。メタロセン型触媒化合物のための他の活性剤又は活性化方法は、例えば、米国特許第5,849,852号、同5,859,653号及び同5,869,723 号並びにWO98/32775に記載されている。
【0089】
一般に、活性剤と触媒成分は、一実施形態では1000:1〜0.1:1、さらに特定の実施形態では300:1〜1:1、さらに特定の実施形態では150:1〜1:1、さらに特定の実施形態では50:1〜1:1の活性剤対触媒成分のモル比で混合されるが、ここで、所望の範囲は、ここに記載した任意の上限モル比と任意の下限モル比との任意の組合せを包含し得る。当該活性剤が環状又はオリゴマー状のポリ(酸化ヒドロカルビルアルミニウム)(例えば、「MAO」)である場合には、活性剤対触媒成分のモル比は、一実施形態では2:1〜100000:1、別の実施形態では10:1〜10000:1、さらに特定の実施形態では50:1〜2000:1の範囲にある。活性剤が中性又はイオン性のイオン化性活性剤、例えば、硼素アルキル及び硼素アルキルのイオン塩である場合には、活性剤対触媒成分のモル比は、一実施形態では0.5:1〜10:1、さらに特定の実施形態では1:1〜5:1の範囲にある。
【0090】
気相重合方法
本発明の担持多種遷移金属触媒を使用してポリオレフィン組成物を作製する。担持2種金属触媒組成物を使用する本発明の所定の実施形態では、これらの触媒組成物を使用してバイモーダルポリオレフィン組成物、例えば、二峰分子量分布を有する組成物を作製することができる;特定の実施形態では、ここで説明する2種金属触媒を単一の重合反応器内で使用してバイモーダルポリオレフィン組成物を作製することができる。本発明の担持多種遷移金属触媒を上記の通りに製造したら、当該組成物を使用して各種方法を実施できる。使用できる様々な手法のなかでは、ここで特許請求された発明に従って方法を改変した米国特許第5,525,678号に示された方法が挙げられる。勿論、その装置、プロセス条件、反応体、添加剤及び他の材料は、所定の方法において、所望の組成物及び形成される重合体の特性に応じて異なるであろう。
【0091】
特に、一実施形態では、本発明の方法は、2〜30個の炭素原子、さらに特定の実施形態では2〜10個の炭素原子、さらに特定の実施形態では2〜6個炭素原子を有する1種以上のオレフィン単量体の気相重合方法を含む。本発明は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−イソブテン、イソブチレン及び3−メチル−1−ブテンのうち2種以上のオレフィン単量体の重合に特によく適している。
【0092】
本発明の方法に有用な他の単量体としては、エチレン系不飽和単量体、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役ジエン又は非共役ジエン、ポリエン、ビニル単量体及び環状オレフィンが挙げられる。本発明に有用な単量体としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の方法の好ましい実施形態では、エチレンの共重合体が製造され、この場合、エチレンと共に、共単量体(4〜15個の炭素原子、さらに特定の実施形態では4〜12個の炭素原子、さらに特定の実施形態では4〜8個炭素原子を持つ少なくとも1種のα−オレフィンを有する)が気相方法で重合される。本発明の方法の別の実施形態では、エチレンを少なくとも2種の異なる共単量体であって、随意にその1種がジエンであってよいものと共に重合させて三元共重合体を形成させることができる。本発明の方法の別の実施形態では、水素及びエチレン単量体を重合させることができる。
【0094】
典型的には、気相重合方法においては連続サイクルが採用され、この場合、反応器系の当該サイクルの一部分において、循環ガス流れ(さもなければ、再循環流れ又は流動性媒体として知られている)は、重合の熱によって反応器内で加熱される。この熱は、当該反応器の外部にある冷却システムによって、当該サイクルの他の部分で再循環組成物から取り除かれる。一般に、重合体を製造するための気体流動床方法では、1種以上の単量体を含有するガス状流れは、反応条件下で触媒の存在下に流動床を介して連続的に循環する。このガス状流れは、流動床から取り出され、冷却され、そして気体又は気体と液体との混合物として反応器に再循環される。同時に、当該反応器から重合体生成物が取り出され、そして重合した単量体を交換するために新たな単量体が添加される。
【0095】
随意に、凝縮性の不活性成分を添加して反応器からの熱除去能力を増大させてもよい。所定の実施形態では、好適な凝縮性不活性成分は、約4〜約7個の炭素原子を有する飽和炭化水素を含むことができる。
【0096】
気相方法における反応器の圧力は、一実施形態では100psig(690kPa)から500psig(3448kPa)まで、さらに特定の実施形態では200psig(1379kPa)から400psig(2759kPa)まで、さらに特定の実施形態では250psig(1724kPa)から350psig(2414 kPa)まで変更できる。
【0097】
気相方法における反応器の温度は、一実施形態では30℃〜120℃、さらに特定の実施形態では60℃〜115℃、さらに特定の実施形態では70℃〜110℃、さらに特定の実施形態では85℃〜100℃で又は以下でさらに示すように変更できる。
【0098】
本発明の所定の実施形態では、当該方法は、カルボン酸金属塩、例えばステアリン酸アルミニウム又は他の金属−脂肪酸化合物を反応器に導入し及び/又は反応器に導入する前にカルボン酸金属塩と本発明の担持多種遷移金属触媒とを接触させることによって操作できる。
【0099】
本発明の所定の実施形態では、本発明の多種遷移金属触媒は、重合反応器への導入前に又はその場で、当該技術分野において知られている任意の好適な手段によって活性化できる。当該触媒系は、特定の実施形態では、乾燥(希釈剤なし)状態で反応器に供給される。別の実施形態では、当該触媒系は、0.01重量%〜100重量%の鉱油又はシリコーン油を含む希釈剤(例えば、C3〜C15炭化水素)に懸濁され、そして反応器に供給される。
【0100】
本発明の気相方法は、本発明の多種遷移金属触媒(粒度分布が改善された本発明の担体材料、触媒成分及び活性剤を含む)と単量体とを所望の配置の反応容器内で接触させてポリオレフィンを形成させることを含む。一実施形態では、この接触を最初の反応容器で行い、続いて形成された重合体を第2、第3などといった別の反応容器に移して、随意に同一の又は異なる単量体を添加し、そして随意に同一の又は異なる触媒成分、活性剤などを添加することによってさらに重合させることができる。本発明の特定の実施形態では、本発明の担持多種遷移金属触媒と単量体とを単一の反応容器(又は「反応器」)内で接触させ、続いて完成したポリオレフィン樹脂を分離する。
【0101】
本発明の重合方法を達成するために、再循環ガス流れの組成がガスクロマトグラフィーで測定される。エチレン分圧は、約100psia(690kpaa)〜約250psia(1720kpaa)の範囲の値に調節される。本発明の所定の実施形態では、水素対エチレンのモル比は、約0.007〜約0.016の範囲にあることができる。
【0102】
アルキルアルミニウム化合物又は当該化合物の混合物、例えば、トリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムを、反応器に、一実施形態では10重量ppm〜500重量ppmの速度で(エチレン供給速度に対して百万分の一の重量のアルキルアルミニウム供給速度)、さらに特定の実施形態では50重量ppm〜400重量ppm、さらに特定の実施形態では60重量ppm〜300重量ppm、さらに特定の実施形態では80重量ppm〜250重量ppm、さらに別の実施形態では75重量ppm〜150重量ppmの速度で供給でき、ここで、所望の範囲は、任意の上限値と任意の下限値との任意の組合せを含むことができる。アルキルアルミニウムは、一般式AlR3(式中、それぞれのRは同一であり又は異なり、独立してC1〜C10アルキルから選択される。)によって表すことができる。
【0103】
また、別の実施形態では、反応器に水を0.01重量ppm〜200重量ppmの速度で(エチレン供給速度に対して百万分の一の重量の水供給速度)、別の実施形態では0.1重量ppm〜150重量ppm、さらに別の実施形態では0.5重量ppm〜100重量ppm、さらに別の実施形態では1重量ppm〜60重量ppm、さらに特定の実施形態では5重量ppm〜40重量ppmの速度で供給することもでき、ここで、所望の範囲は、ここで説明した任意の上限値と任意の下限値との任意の組合せを含むことができる。
【0104】
随意に、再循環ガス系に酸素を導入してもよい。所定の実施形態では、随意に、酸素を再循環ガス系にエチレン供給速度に対して約0.01〜約1.0重量ppmの量の速度で供給してもよい。この酸素は、防汚剤として機能することができ、且つ、例えば、再循環ガス冷却器や流動床分配板の汚れを低減させたり、なくしたりすることができる。随意に、他の化合物を随意の防汚剤として使用してもよい。
【0105】
バイモーダル重合体生成物及びそれから作製されたフィルム
ここに記載した方法により、ここに記載した本発明の担持多種遷移金属触媒を使用して製造された重合体は、様々な製品及び最終用途、例えば、フィルム、パイプ及び管、電線被覆並びに他の用途に使用できる。本発明の方法によって製造された重合体としては、直鎖低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0106】
説明した方法を使用して作製できる重合体は、様々な組成、特徴及び特性を有することができる。本発明の担持多種遷移金属触媒の利点のうち少なくとも一つは、利用される方法が所望の一連の特性を有する重合体組成物を形成するように調節できるということである。例えば、本発明の担持多種遷移金属触媒が2種金属触媒を含む所定の実施形態では、米国特許第5,525,678号におけるバイモーダル重合体組成物と同一の特性を有する重合体を形成することができることが予期される。
【0107】
本発明の方法によって製造された重合体、典型的にはエチレン系重合体は、一実施形態では0.860g/cm3〜0.970g/cm3、さらに特定の実施形態では0.880g/cm3〜0.965g/cm3、さらに特定の実施形態では0.900g/cm3〜0.960g/cm3、さらに特定の実施形態では0.905g/cm3〜0.955g/cm3、さらに特定の実施形態では0.910g/cm3〜0.955g/cm3の範囲にある密度、さらに特定の実施形態では0.915g/cm3を超える密度、さらに特定の実施形態では0.920g/cm3を超える密度、さらに特定の実施形態では0.925g/cm3を超える密度を有する。別の実施形態では、本発明の方法によって製造された重合体は、約0.940g/cm3〜約0.960g/cm3の範囲の密度を有する。
【0108】
担持多種遷移金属触媒と本発明の方法とを使用することによって得られる重合体は、一実施形態では0.350 〜0.900g/cm3、別の実施形態では0.420 〜0.800g/cm3、さらに別の実施形態では0.430 〜0.500g/cm3、さらに別の実施形態では0.440 〜0.60g/cm3の嵩密度を有するが、ここで、所望の範囲は、ここで説明した任意の嵩密度上限値と任意の嵩密度下限値を含むことができる。
【0109】
本発明の方法によって製造された重合体は、一実施形態では5〜100、さらに特定の実施形態では10〜80、さらに特定の実施形態では15〜60、さらに特定の実施形態では20〜50の分子量分布(例えば、重量平均分子量対数平均分子量(Mw/Mn))を有する。
【0110】
説明した方法によって作製される重合体は、一実施形態では0.01dg/分〜100dg/分、さらに特定の実施形態では0.01dg/分〜50dg/分、さらに特定の実施形態では0.02dg/分〜20dg/分、さらに特定の実施形態では0.03dg/分〜2dg/分、さらに特定の実施形態では0.03dg/分〜1dg/分の範囲のメルトインデックス(MI)(ASTM D−1238,190/2.16で測定したときのI2)を有するが、ここで、所望の範囲は、任意の上限I2値と任意の下限I2値との任意の組合せを含むことができる。
【0111】
本発明の方法によって作製された重合体は、一実施形態では0.01〜50dg/分、別の実施形態では0.1〜30、さらに特定の実施形態では0.5〜20、さらに特定の実施形態では3〜15、好ましい具体例では約4〜約15、他の好ましい具体例では5〜15の範囲のHLMI(ASTM−D−1238,190/21.6で測定されるときのI21)値を有するが、ここで、所望の範囲は、任意の上限I21値と任意の下限I21との任意の組合せである。
【0112】
説明した方法によって作製された重合体は、一実施形態では20〜500、さらに特定の実施形態では30〜300、さらに特定の実施形態では60〜200、さらに特定の実施形態では約70〜約200のメルトインデックス比(MIR又はI21/I2)を有する。別の表現を使うと、説明した方法によって作製された重合体は、一実施形態では40を超える、さらに特定の実施形態では50を超える、さらに特定の実施形態では60を超える、さらに特定の実施形態では65を超える、さらに特定の実施形態では70を超えるメルトインデックス比を有する。
【0113】
本発明の所定の実施形態によって製造された重合体は、一実施形態では150ミクロンを超える、さらに特定の実施形態では150〜2000ミクロンの範囲、さらに別の実施形態では150〜1000ミクロンの範囲、さらに特定の実施形態では300〜800ミクロンの範囲にある所定の平均粒度又はAPS(標準的なふるいを使用することによって決定される)を有することができる。通常、微粒子(例えば、125μm未満の寸法を有する粒子)が5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満まで存在する。
【0114】
重合体生成物を作製する際には、ここで説明した方法から重合体材料の顆粒が形成される。随意に、1種以上の添加剤をこの重合体生成物に配合することができる。所定の好ましい実施形態では、本発明の重合体を他の任意の重合体とブレンドし及び/又は同時押出することができる。他の重合体の例としては、従来のチーグラー・ナッタ及び/又はメタロセン型触媒作用を経て製造された直鎖低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
重合体と1種以上の添加剤(この1種以上の添加剤は、上記のように他の重合体を含んでいてよい)とのブレンドを製造する物理的方法について、好ましくは十分な混合を行って、最終生成物に転化する前に均一なブレンドが製造されることを確保する。添加剤とポリオレフィンとをブレンドする一方法は、これらの成分をタンブラーその他の物理的ブレンド手段で接触させることである(この場合、ポリオレフィンは反応体顆粒の状態にある)。次いで、所望ならば、押出器で溶融ブレンドを行うことができる。これらの成分をブレンドする他の方法は、反応体生成物と添加剤とを押出器、ブラベンダー又は任意の他の溶融ブレンド手段、好ましくは押出器で直接溶融ブレンドすることである。好適な押出器の例としては、Farrel及び神戸製鋼所が作製したものが挙げられる。ここで説明した本発明の重合体組成物の測定された特性に影響を及ぼすことは予期されないものの、実施例に記載した本発明の重合体組成物の密度、流動学的性質及び他の特性は、添加剤と重合体組成物とをブレンドした後に測定される。
【0116】
添加剤の例としては、フルオロエラストマー、ポリエチレングリコール及びポリカプロラクトンのような加工助剤、酸化防止剤、核剤、酸捕捉剤、可塑剤、安定剤、腐食防止剤、発泡剤、他の紫外線吸収剤、例えば連鎖停止酸化防止剤など、消光剤、耐電防止剤、スリップ剤、顔料、染料及び充填剤並びに過酸化物のような硬化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
特に、酸化防止剤及び安定剤、例えば、有機ホスフィット、ヒンダードアミン及びフェノール系酸化防止剤は、本発明の重合体生成物中に、一実施形態では0.001〜2重量%、別の実施形態では0.01〜1重量%、さらに別の実施形態では0.05 〜0.8重量%存在することができる;別の言い方をすると、全重合体組成物の1〜5000重量ppm、さらに特定の実施形態では100〜3000ppm存在することができる。好適な有機ホスフィットの例としては、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(IRGAFOS 168)及びジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリットジホスフィット(ULTRANOX 626)が挙げられるが、これらに限定されない。ヒンダードアミンの例としては、ポリ[2−N,N’−ジ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ヘキサンジアミン−4−(1−アミノ−1,1,3,3−テトラメチルブタン)シムトリアジン](CHIMASORB 944);セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(TINUVIN 770)が挙げられるが、これらに限定されない。フェノール系酸化防止剤の例としては、ペンタエリトリチルテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX 1010);イソシアヌル酸1,3,5−トリ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル(IRGANOX 3114);亜リン酸トリス(ノニルフェニル)(TNPP);及びオクタデシル−3,5−ジ−(t)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(IRGANOX 1076)が挙げられるが、これらに限定されない。;他の添加剤としては、ステアリン酸亜鉛及びオレイン酸亜鉛のようなものが挙げられる。
【0118】
随意に、本発明の重合体生成物中に充填剤も含むことができる。充填剤は、一実施形態では該組成物の0.01〜5重量%、別の実施形態では0.1〜2重量%、さらに別の実施形態では0.2〜1重量%、最も好ましくは0.02〜0.8重量%を占めることができる。望ましい充填剤としては、二酸化チタン、炭化珪素、シリカ(及び他の沈降又は非沈降シリカ酸化物)、酸化アンチモン、炭酸鉛、亜鉛白、リトポン、ジルコン、コランダム、スピネル、アパタイト、バライト粉、硫酸バリウム、マグネサイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ドロマイト、炭酸カルシウム、タルク及びイオンであるMg、Ca又はZnとAl、Cr又はFe及びCO3及び/又はHPO4との水和又は非水和ヒドロタルサイト化合物;クォーツ粉、塩酸炭酸マグネシウム、ガラス繊維、クレー、アルミナ並びに他の金属酸化物及び炭酸塩、金属水酸化物、クロム、燐及び臭素化難燃剤、三酸化アンチモン、シリカ、シリコーン並びにそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの充填剤は、特に、当該技術分野において周知の他の任意の充填剤と多孔質充填剤と担体とを含むことができる。
【0119】
全体で、充填剤、酸化防止剤及び他の当該添加剤は、好ましくは、本発明のポリエチレン組成物中に2重量%未満、好ましくは1重量%未満、最も好ましくは全組成物の0.8重量%未満まで存在する。
【0120】
本発明の方法によって製造された重合体及びそのブレンドは、フィルム、シート及び繊維の押出及び同時押出並びに吹込成形、射出成形及び回転成形のような成形操作に有用である。フィルムとしては、収縮フィルム、ラップ、ストレッチフィルム、シール用フィルム、延伸フィルム、スナック用包装、重質袋、買い物袋、加熱及び冷凍食品用包装、ケーブル被覆及び電線被覆、医療用包装、工業用ライナー、膜などとして食品接触及び非食品接触用途に有用な同時押出又は積層によって形成されたインフレートフィルム又はキャストフィルムが挙げられる。繊維としては、フィルター、おむつ用生地、医療用衣類、地盤用シートなどを作るために織物又は非織布の形態で使用するための溶融紡糸、溶液紡糸及び溶融吹込繊維操作が挙げられる。押出物品としては、医療用チューブ、電線被覆及びケーブル被覆、ジオメンブレン並びにポンドライナーが挙げられる。成形物品としては、ボトル、タンク、大きな中空物品、硬質食品容器及び玩具などの形の単層及び多層構成物が挙げられる。
【0121】
より具体的にいうと、本発明の方法によって作製された重合体は、フィルムを作製するのに有用である。このフィルムは、任意の所望の厚さ又は組成のもの、一実施形態では1〜100ミクロン、さらに特定の実施形態では2〜50ミクロン、さらに特定の実施形態では5〜30ミクロン、最も好ましい実施形態では5〜25ミクロンのものであることができ;且つ、一実施形態ではエチレンとC3〜C10オレフィンとの共重合体、特定の実施形態ではエチレンとC3〜C8α−オレフィンとの共重合体、さらに特定の実施形態ではエチレンとC4〜C6α−オレフィンとの共重合体を含むことができる。このフィルムを作製するために使用される樹脂は、所望のフィルム特性を妨げない限りにおいて、他の添加剤、例えば、当該技術分野において周知の顔料、酸化防止剤、充填剤などとブレンドできる。
【0122】
本発明の方法によって作製された重合体から作ることができるフィルムは、一実施形態では100未満のゲルカウント、別の実施形態では60未満のゲルカウント、別の実施形態では50未満のゲルカウント、さらに別の実施形態では40未満のゲルカウント、さらに別の実施形態では30未満のゲルカウント、さらに他の実施形態では20未満のゲルカウント、最も好ましい実施形態では10未満のゲルカウントを有することができる。ここで述べるときに、「ゲルカウント」とは、25ミクロンフィルム1平方メートル当たり300μmを超える寸法を有するゲルの総数であると定義される。特定の重合体生成物についてのゲルカウントの決定については、以下でさらに説明する。
【0123】
別の言い方をすれば、当該フィルムは、一実施形態では+20を超える、別の実施形態では+30を超える、さらに別の実施形態では+40を超えるフィルム外観等級(「FAR値」)を有することができる。「フィルム外観等級」とは、所定の樹脂を標準的な運転指針の下で押出し、そして得られたフィルムについて表面欠陥を肉眼的に試験する内部試験である。当該フィルムと標準的なフィルムの基準集合とを比較し、オペレーターの評価に基づきFARの等級が割り当てられる。この評価は、相当な経験を有するオペレーターによって実行される。FAR基準フィルムは、−50から+50までの範囲について利用できる。+20及びそれよりも良好なFAR等級は、顧客が商業的に容認できるものであると見なされる。
【0124】
本発明の重合方法によって製造された重合体を使用してフィルムを作製する本発明の所定の実施形態では、得られた本発明のペレット化重合体組成物(添加剤を有する又は添加剤を有しない)を、フィルム形成用の任意の好適な手段:フィルムブローイング又はフィルムキャスティング及び、例えば、PLASTICS PROCESSING(Radian Corporation,Noyes Data Corp.1986)に記載されるような一軸又は二軸延伸を達成するための全てのフィルム成形方法によって処理加工する。特に好ましい実施形態では、本発明の重合体組成物は、FILM EXTRUSION MANUAL,PROCESS,MATERIALS,PROPERTIES(TAPPI,1992)に記載されるようなフィルムに成形できる。さらに具体的に言うと、本発明のフィルムはインフレートフィルムであることができ、これに関する方法は、例えば、FILM EXTRUSION MANUAL,PROCESS,MATERIALS,PROPERTIES pp.16−29に概略的に記載されている。
【0125】
ここで説明したポリエチレン組成物のために任意の望ましい条件下で稼働する、HDPE(0.940グラム/cm3を超える密度)の押出に好適な任意の押出器を使用して本発明のフィルムを製造することができる。このような押出器は当業者に周知である。このような押出器としては、一実施形態では30〜150mm、別の実施形態では35〜120mmの範囲のスクリュー径を有し、且つ、一実施形態では100〜1500lbs/時間、別の実施形態では200〜1000lbs/時間の生産量を有するものが挙げられる。一実施形態では、溝つき供給押出器が使用される。この押出器は、 一実施形態では80:1〜2:1、別の実施形態では60:1〜6:1、さらに別の実施形態では40:1〜12:1、さらに別の実施形態では30:1〜16:1のL/D比を有することができる。
【0126】
単層又は多層ダイを使用することができる。一実施形態では50〜200mmの単層ダイが使用され、別の実施形態では90〜160mmの単層ダイ、さらに別の実施形態では100〜140mmの単層ダイが使用されるところ、当該ダイは、一実施形態では0.6〜3mm、別の実施形態では0.8〜2mm、さらに別の実施形態では1〜1.8mmの公称ダイギャップを有し、ここで、所望のダイは、ここに記載した任意の実施形態の任意の組合せによって説明できるものとする。特定の実施形態では、ここで要求される有利な比処理量は、特定の実施形態では、50mm溝つき供給押出器において21:1のLIDで維持される。
【0127】
押出器の区域、押出器のネック及びアダプターにわたる温度は、一実施形態では150℃〜230℃、別の実施形態では160℃〜210℃、さらに別の実施形態では170℃〜190℃の範囲にある。ダイにわたる温度は、一実施形態では160℃〜250℃、別の実施形態では170℃〜230℃、さらに別の実施形態では180℃〜210℃の範囲にある。
【0128】
本発明をさらによく理解するために、代表的ないくつかの実施形態に関する次の実施例を与える。このような実施例は、決して本発明の範囲を限定し又は規定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0129】
例1
次の例では、担持多種遷移金属触媒の3つの試料を調製した。2つの試料は比較試料であり、1つの試料は本発明の担持多種遷移金属触媒を構成する。これら試料の特定の性質を表1に示している。
【0130】
比較試料触媒1の製造
比較試料の触媒(ここでは、比較試料触媒組成物No.1という。)を次の通りに製造した。約2000ポンドの無水イソヘキサンを、窒素パージされ撹拌されたジャケット付き反応容器に移した。ジャケットの温度を54℃に設定した。
【0131】
慣用のシリカを準備し(Davison 955)したが、これは、典型的には次の特性を有する:
平均粒度:40ミクロン
表面積:300m2/グラム
多孔度:1.6cm3/グラム
10:10ミクロン
50:40ミクロン
90:90ミクロン
90/D10:9.0。
【0132】
この慣用のシリカを窒素雰囲気下に875℃で乾燥させた。次いで、この脱水した慣用シリカの約750ポンドを、一定の撹拌下で無水イソヘキサンと混合した。シリカとヘキサンのスラリーが約40℃の温度に達したら、ジブチルマグネシウムの15重量%ヘプタン溶液(FMC社によって供給)約525ポンドをこのスラリーに35分間にわたり添加した。次いで、このスラリーを54℃でさらに60分間混合した。
【0133】
ブタノール(41.1ポンド)をイソヘキサンで希釈して65重量%溶液を形成させた。このブタノールのイソヘキサン予備希釈溶液をこのスラリーを含有する容器に30分にわたり添加し、次いで、このスラリーを一定に撹拌しつつ54℃の温度で60分間保持した。
【0134】
四塩化チタン(61.5ポンド)をイソヘキサンで希釈して70重量%溶液を形成させた。次いで、この四塩化チタンのイソヘキサン予備希釈溶液を、このスラリーを含有する容器に45分間にわたり添加した。この溶液の添加後に、このスラリーを54℃の温度で60分間放置した。
【0135】
次いで、MAO−メタロセン混合物をスラリーに添加した。この混合物は、窒素パージした別個の撹拌容器で調製されたものである。まず、この容器に、30重量%メチルアルミノキサン(MAO)のトルエン溶液(アルバマール社によって供給)約975ポンドを周囲温度で入れた。次いで、18.5ポンドの二弗化ビス−n−ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムのトルエン溶液を一定に撹拌しながらMAO溶液に添加した。MAO/メタロセン混合物の混合を少なくとも30分間続行した。
【0136】
次いで、このMAO/メタロセン混合物を第1反応容器(予め調製したチタン反応スラリーを含む)に3時間にわたってスプレーノズルによって添加した。このMAO/メタロセン添加の終了後に、この第1反応容器内でさらに1時間撹拌を続行した。次いで、比較試料の触媒を含む、得られた混合物を、揮発性成分が3重量%未満になるまで、真空を適用しつつ70℃のジャケット温度で乾燥させた。次いで、比較試料の触媒を、表1で特定する条件下で、気相反応器内で実施する重合に使用してポリエチレン重合体組成物を形成させた。
【0137】
比較試料触媒No.2の製造
第2の比較試料の触媒(ここでは、比較試料触媒組成物No.2という)を次の通りに製造した。約1100ポンドの無水イソヘキサンを、窒素パージされ撹拌されたジャケット付き反応容器に移した。ジャケットの温度を54℃に設定した。
【0138】
慣用のシリカを準備した(Davison 955シリカ:比較試料触媒No.1の製造の際に使用したのと同様であるが、ただし、比較試料触媒No.2を製造するために使用したDavison 955シリカの試料を窒素ではなく、875℃の空気中で脱水したもの)。この脱水した慣用シリカの約400ポンドを、次いで一定の撹拌下で無水イソヘキサンと混合した。シリカとヘキサンのスラリーが約40℃の温度に達したら、ジブチルマグネシウムの15重量%ヘプタン溶液(FMC社によって供給)約280ポンドをこのスラリーに60分間にわたり添加した。次いで、このスラリーを54℃でさらに60分間混合した。
【0139】
ブタノール(21.9ポンド)をイソヘキサンで希釈して65重量%溶液を形成させた。このブタノールのイソヘキサン予備希釈溶液をこのスラリーを含有する容器に30分にわたり添加し、次いで、このスラリーを一定に撹拌しつつ54℃の温度で60分間保持した。
【0140】
四塩化チタン(36.1ポンド)をイソヘキサンで希釈して70重量%溶液を形成させた。次いで、この四塩化チタンのイソヘキサン予備希釈溶液を、このスラリーを含有する容器に45分間にわたり添加した。この溶液の添加後に、このスラリーを54℃の温度で60分間放置した。
【0141】
次いで、MAO−メタロセン混合物をスラリーに添加した。この混合物は、窒素パージした別個の撹拌容器で調製されたものである。まず、この容器に、30重量%メチルアルミノキサン(MAO)のトルエン溶液(アルバマール社によって供給)約520ポンドを周囲温度で入れた。次いで、15.7ポンドの二弗化ビス−n−ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムのトルエン溶液を一定に撹拌しながらMAO溶液に添加した。MAO/メタロセン混合物の混合を少なくとも30分間続行した。
【0142】
次いで、このMAO/メタロセン混合物を第1反応容器(予め調製したチタン反応スラリーを含む)に3時間にわたってスプレーノズルによって添加した。このMAO/メタロセン添加の終了後に、この第1反応容器内でさらに1時間撹拌を続行した。次いで、比較試料の触媒を含む、得られた混合物を、揮発性成分が3重量%未満になるまで、真空を適用しつつ70℃のジャケット温度で乾燥させた。次いで、比較試料の触媒を、表1で特定する条件下で、気相反応器内で実施する重合に使用してポリエチレン重合体組成物を形成させた。
【0143】
本発明の触媒組成物の製造
続いて、本発明の触媒組成物の試料(試料触媒組成物No.3)を次の通りに製造した。約1100ポンドの無水イソヘキサンを、窒素パージされ撹拌されたジャケット付き反応容器に移した。ジャケットの温度を54℃に設定した。
【0144】
粒度分布が改善したシリカを準備し(Ineos ES−757)したが、これは、典型的には次の特性を有する:
平均粒度:25ミクロン
表面積:300m2/グラム
多孔度:1.6cm3/グラム
10:10ミクロン
50:25ミクロン
90:44ミクロン
90/D10:4.4。
【0145】
次いで、Ineos ES−757シリカを875℃の空気中で乾燥させた。脱水したIneos ES−757シリカの約400ポンドを一定の撹拌下で無水イソヘキサンと混合した。Ineos ES−757シリカとイソヘキサンのスラリーが約40℃の温度に達したら、15重量%ジブチルマグネシウムのヘプタン溶液(FMC社によって供給)約280ポンドを150分間にわたってこのスラリーに添加した。次いで、このスラリーを54℃でさらに60分間混合した。
【0146】
ブタノール(21.9ポンド)をイソヘキサンで希釈して65重量%溶液を形成させた。このブタノールのイソヘキサン予備希釈溶液をこのスラリーを含有する容器に30分にわたり添加し、次いで、このスラリーを一定に撹拌しつつ54℃の温度で60分間保持した。
【0147】
四塩化チタン(39.2ポンド)をイソヘキサンで希釈して70重量%溶液を形成させた。次いで、この四塩化チタンのイソヘキサン予備希釈溶液を、このスラリーを含有する容器に45分間にわたり添加した。この溶液の添加後に、このスラリーを54℃の温度で60分間放置した。
【0148】
次いで、MAO−メタロセン混合物をスラリーに添加した。この混合物は、窒素パージした別個の撹拌容器で調製されたものである。まず、この容器に、30重量%メチルアルミノキサン(MAO)のトルエン溶液(アルバマール社によって供給)約520ポンドを周囲温度で入れた。次いで、14.1ポンドの二弗化ビス−n−ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムのトルエン溶液を一定に撹拌しながらMAO溶液に添加した。MAO/メタロセン混合物の混合を少なくとも30分間続行した。
【0149】
次いで、このMAO/メタロセン混合物を第1反応容器(予め調製したチタン反応スラリーを含む)に3時間にわたってスプレーノズルによって添加した。このMAO/メタロセン添加の終了後に、この第1反応容器内でさらに1時間撹拌を続行した。次いで、本発明の試料触媒を含む、得られた混合物を、揮発性成分が3重量%未満になるまで、真空を適用しつつ70℃のジャケット温度で乾燥させた。次いで、本発明の試料触媒を、表1で特定する条件下で、気相反応器内で実施する重合に使用してポリエチレン重合体組成物を形成させた。
【0150】
流動床重合
重合を連続気相流動床反応器内で実行した。この流動床は重合体顆粒から構成される。エチレン及び水素のガス状供給流れと液状共単量体とを混合T字型配置で互いに混合し、そして反応器の床の上流にある再循環ガスラインに導入した。1−ブテンの単量体を共単量体として使用した。エチレン、水素及び共単量体の個々の流量を、一定の組成目標を維持するように制御した。エチレン濃度を、約175psiaの一定のエチレン分圧を維持するように制御した。水素を、約0.011の水素対エチレンモル比を維持するように制御した。同様に、1−ブテンの反応器への流量対エチレンの当該流量の比をエチレン1ポンド当たり約0.013ポンドの1−ブテンで制御した。酸素を防汚剤として反応器に供給したときに、この供給物は、100万ポンドのエチレン当たり0.25ポンドの酸素であった。全てのガスの濃度をオンラインガスクロマトグラフィーで測定して再循環ガス流れ中での比較的一定の組成を確保した。
【0151】
固体触媒を、キャリヤーとして精製窒素を使用して流動床に直接注入した。トリメチルアルミニウム(TMA)をチーグラー・ナッタ触媒用の助触媒として再循環ガスに注入した。その流量を、一定のTMA対エチレン質量流量比を維持するように調節した。成長しつつある重合体粒子の反応床は、構成供給物の連続流れと、反応区域を通る再循環ガスとによって流動状態に維持される。1〜3ft/秒の見掛けガス速度を使用してこれを達成した。反応器を約270psigの全圧力で稼働させた。一定の反応器流動床温度を維持するために、再循環ガスの温度を上又は下に連続的に調節して、重合による発熱の速度のあらゆる変化に対応する。
【0152】
流動床を、粒状生成物の形成速度に等しい速度で床の一部分を取り出すことによって一定の高さに維持した。この生成物は、一定容量のチャンバーに一連の弁を解して半連続的に取り出される。吐出中に生成物と共に取り出される反応器ガスは、フレア部にガス抜きされ、反応器には再循環されない。この生成物をパージして混入炭化水素を除去し、そして加湿窒素の少量の流れで処理していかなる微量の残留触媒及び残留助触媒も不活性化させる。
【0153】
触媒活性は、基準としてチタンを使用して、触媒のチタン含有量を生成物中に見出される残留チタン含有量で割ることによって算出できる。生成物のチタン含有量は、較正X線蛍光技術を使用して決定した。直線関係を使用して、重合実施の間のエチレン分圧及び反応器滞留時間のあらゆる差に対して触媒活性を修正した。
【0154】
樹脂の特性
重合体の特性は、次の試験方法によって決定した:
1.メルトインデックス:ASTM D−1238−条件E。樹脂を1500重量ppmのI−1010、1500重量ppmのI−168及び500重量ppmのステアリン酸亜鉛(ZnSt)と溶融ブレンドし(配合し)、ペレット化し、そして5分カットを使用したASTM D−1238−190℃/2160グラムに従い、Goettfertプラストマー装置型式011.5/2001で測定した。
2.密度:ASTM D−105。樹脂を1500重量ppmのI−1010、1500重量ppmのI−168及び500重量ppmのZnStと溶融ブレンドし、ペレット化し、ASTM 4703−03に従って40時間の調節時間で圧縮成形し、ASTM D1505−03に従って密度勾配カラムで測定した。
3.嵩密度:樹脂を7/8インチ直径の漏斗を介して400ccの一定容量のシリンダーに注ぐ。嵩密度を400ccで割った樹脂の重量として測定してg/ccで表される値を得る。
4.動的レオロジー:樹脂を1500重量ppmのI−1010、1500重量ppmのI−168及び500重量ppmのZnStと溶融ブレンドし、ペレット化し、25mmの直径及び2.0mmの厚さのディスクにプレスした。測定は、Rheometrics SR 5000で、25mmのプレート、1.5mmのダイギャップ(200℃)及び0.1〜100rad/秒の周波数で行った。
5.フローインデックス:樹脂を1500重量ppmのI−1010、1500重量ppmのI−168及び500重量ppmのZnStと溶融ブレンドし、ペレット化し、Goettfertプラストマー装置型式011.5/2001で主としてASTM D−1238−190℃/21600グラム時間方法に従って測定した。ASTM−D1238−190℃/21600の例外は、10dg/分未満のフローインデックスを有する樹脂のために全1インチの進行を使用することと、樹脂が最初の測定の前にプラストマーの状態にある全時間が、ASTMの手順で特定された6.5〜7.5分ではなく7〜10分であることである。
6.XRF:ASTM手順D 6247−98(2004再認可)。較正基準を、米国ケンタッキー州レキシントンのエレメンタル・アナリシス社によって金属含有量について独立して分析された実際の製造によるバイモーダルHDPE材料から調製した。
7.GPC:重合体溶液を、約250重量ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、ろ過済み1,2,4−トリクロルベンゼンで調製した。同じ溶媒をSEC溶離剤として使用した。重合体溶液を、SEC溶離剤の適切な容量に所望量の乾燥重合体を1.0〜1.5 mg/mLの範囲の濃度を生じさせるように溶解させることによって調製した。試料の小瓶に蓋をして、空気乾燥器に2時間にわたり160℃で放置した。使用した器具は、溶媒の屈折率と分別した重合体を含有する溶媒の屈折率との差を測定するWaters示差屈折計を備えたWaters Alliance 2000ゲル透過クロマトグラフィーであった。この装置を、145℃、1.0mL/分の公称流量及び300μLの公称注入容量で使用した。3つのPolymer Laboratories(PL)gel Mixed−Bカラムを使用した。
カラムのセットの分離効率を、試料について予想される分子量(MW)の範囲を反映する一連の狭いMWDポリスチレン基準物と、当該カラムセットの排除限界とを使用して較正した。約580〜10000000のMpを範囲とする少なくとも10種の個々のポリスチレン基準物を使用して検量線を作成した。ポリスチレン基準物は、米国マサチューセッツ州アマーストのポリマー・ラボラトリーズ社から又は同等の供給元から得た。内部整合性を確保するために、流量をそれぞれの校正物質の実施に対して修正して、流量マーカーに対して一般的なピーク位置を与えて(明確なインジェクトピークにして)から、それぞれのポリスチレン基準物に対する保持容量を決定した。また、このようにして割り当てられたフローマーカーのピーク位置を使用して、試料を分析したときに流量を修正した。
検量線(logMp v.保持容量)を、それぞれのポリスチレン基準物についてDRIシグナルにおけるピークでの保持容量を記録し、このデータのセットを二次多項に設定することによって作成した。ポリスチレン基準物を、Viscotec 3.0ソフトフェアを使用してグラフ化した。試料を、WaveMetrics社のIGOR Pro及びViscotec 3.0ソフトフェアを用い、更新された較正定数を使用して分析した。
【0155】
それぞれの触媒を流動床反応器で評価したが、この場合、滞留時間を約4から6時間まで変化させた。それぞれの実験を、同一の連続気相流動床反応器を使用して実施した。この反応器の流動床は重合体顆粒から構成されていた。それぞれの実験の間に、エチレン及び水素のガス状供給流れを反応器の床の上流にある再循環ガスラインに導入した。また、ブテン共単量体も反応器の床の上流にある再循環ガスラインに導入した。エチレン及び水素の個々の流れを、一定の組成目標を維持するように制御した。ガス濃度をオンラインクロマトグラフィーで測定した。
【0156】
ゲルカウント試験の手順
重合体組成物のゲル含有量をOCS法で試験した。使用した装置は、Optical Control Systems GmbH(OCS)型式ME−20押出器と、OCS型式CR−8キャストフィルムシステムと、OCS型式FS−5ゲルカウンターとから構成されていた。
【0157】
ME−20押出器は、3/1の圧縮比を有する3/4インチの標準的なスクリューと、25/1のL/Dとから構成される。このものは、供給区域と、圧縮区域と、計量区域とを備える。この押出器は、全て、固体状態の対照と、スクリュー用の可変周波数AC駆動と、5個の加熱区域(胴部について3個、溶融温度及び圧力の測定区域について1個、ダイについて1個備える)とを使用する。このダイは、ほぼ20ミルのダイギャップを有する、「フィッシュテール」デザインの4インチの固定リップダイである。
【0158】
このキャストフィルムシステムは、二重ステンレス鋼クロムめっき・研磨チルロールと、精密機械加工エアナイフと、ゲルカウンターを介してフィルムを引っ張るゴム製ニップロールと、トルク駆動式巻き取りロールとを備える。当該ニップロールは、チルロールとは別に駆動し、且つ、速度又は張力によって制御される。また、チルロール用の冷却/加熱循環システムも備えられ、エチレングリコールを利用する。鋼製SSレールと、フィルム破損センサーと、他の要素も備えられている。
【0159】
ゲルカウンターは、デジタル式2048ピクセルラインカメラと、ハロゲン系ライン照明装置と、画像処理用コンピュータと、Windows(登録商標) NT4ソフトフェアとから構成される。このカメラ/照明装置は、チルロールとニップロールとの間にあるキャストフィルムシステム上に搭載され、且つ、フィルムについて50ミクロンの解像度のために設けられる。これは、見ることのできる最も小さな欠陥が50ミクロン×50ミクロンの寸法であることを意味する。OCSキャストフィルムシステムは、ゲルの測定について見込まれる最も高い品質で且つ最もバラツキのないフィルムを与えるように設計される。
【0160】
ペレット試料を、一定の押出器温度(供給区域については180℃、残り全ての区域については190℃)及び40℃の一定のチルロール温度で流す。押出器の速度とチルロールの速度は、それぞれの試料について最適なフィルムを与えるために、試料間で幾分変更しなければならなかった。
【0161】
このゲルカウンターを、50〜100ミクロンで始まり100ミクロンの間隔で増大する10種の異なる寸法の部類、完全に球状の形状で始まりさらに楕円形の形状に増大する4種の異なる形状の部類及び2つの検出レベル(ゲルについて1つ及び黒点について一つ)でセットアップした。使用されるゲル検出レベル又は感度は、通常、35に設定される。
【0162】
カメラのセットアップパラメーターを決定したら、押出器を第1試料で(典型的には約20分)又は試験条件が定常状態若しくは「平衡」になったのが明らかになるまでパージした。これは、「y」軸上のゲルカウント数と「x」軸上の時間とのトレンドラインのチャートを見ることによって行った。続いて、4〜9平方メートルのフィルム、典型的には25μmゲージのフィルムで試験を実施した。上記のように、「ゲルカウント」とは、300μmを超える寸法を有するゲルの、25ミクロンフィルム1平方メートル当たりの総数であると定義される。
【0163】
以下の表1では、ゲルカウントの結果を300μmを超えるゲルの、フィルム1平方メートル当たりの総数として報告している。
【0164】
【表1】

【0165】
上記例の結果は、図1及び2にさらに示されている。ここで、図1を参照すると、試料触媒組成物3(本発明の担持多種遷移金属触媒)から製造された重合体は、比較試料触媒組成物No.1及び2から製造されたものと比較して、さらに狭い粒度分布を示している;この狭い粒度分布は、改善された本発明の担体の狭い粒度分布に起因するものと考えられる。また、図2を参照すると、試料触媒組成物3から製造された重合体は、比較試料触媒組成物No.1及び2から製造されたものと比較して、ゲルカウントの減少を示している;これも、改善された本発明の担体の狭い粒度分布に起因するものであると考えられる。
【0166】
特定の実施形態を参照することによって本発明を説明し、また例示してきたが、当業者であれば、本発明は、ここには例示されていない多くの異なる変形例に適することを認めるであろう。そのため、本発明の範囲を決定する目的のためには、専ら特許請求の範囲を参照すべきである。さらに、本発明の所定の特徴は、上限値のセットと下限値のセットとにより記載されている。特に示さない限り、これらの限界値の任意の組合せによってできる範囲が本発明の範囲内にあることを認める必要がある。
【0167】
特に示さない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる成分、特性、反応条件などの量を表す全ての数字は、本発明が得ようとする所望の特性に基づく近似値及び測定誤差などであると理解すべきであり、且つ、報告した有効数字の数に照らし及び通常の周辺技術を適用することによって解釈すべきである。本発明の広い範囲を示すこれらの数値範囲及び値が近似値であるにもかかわらず、示した数値は可能な限り正確に報告している。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の重合方法に従って製造された代表的な重合体を含めて所定の代表的な重合体の粒度分布を比較例と共に示すグラフ図である。
【図2】本発明の重合方法に従って製造された代表的な重合体を含めて所定の代表的な重合体によって示されるゲルカウントを比較例と共に示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持多種遷移金属触媒組成物であって、
(a)非メタロセン触媒成分及びメタロセン触媒成分よりなる群から選択される少なくとも2種の触媒成分と、
(b)30ミクロン未満のD50を有し、しかもD90/D10比が6未満の粒度分布を有する担体材料と、
(c)活性剤と
を含む、担持多種遷移金属触媒組成物。
【請求項2】
前記担体材料がシリカを含む、請求項1に記載の担持触媒組成物。
【請求項3】
前記非メタロセン触媒成分が、第4及び第5族元素のハロゲン化物、酸化物、オキシハロゲン化物、アルコキシド並びにそれらの混合物よりなる群から選択される非メタロセン遷移金属化合物を含むチーグラー・ナッタ触媒成分である、請求項1又は2に記載の担持触媒組成物。
【請求項4】
前記活性剤がアルミニウムを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の担持触媒組成物。
【請求項5】
所定の単量体と請求項1〜4のいずれかに記載の担持触媒組成物の1種又は全てとをマルチモーダルポリオレフィン組成物を形成させるのに十分な時間にわたって接触させることを含む、ポリオレフィンの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によって作製された重合体生成物。
【請求項7】
請求項6に記載の重合体生成物の押出ペレット。
【請求項8】
請求項6に記載の重合体生成物から作製されたフィルム。
【請求項9】
30未満のゲルカウントを有する請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
10未満のゲルカウントを有する請求項8に記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−507104(P2009−507104A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529076(P2008−529076)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/031273
【国際公開番号】WO2007/030260
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】