説明

粒状シリコーン消泡剤組成物及び粉末洗剤組成物

【課題】洗濯時(すなわち洗浄時からすすぎ時まで)の泡を効率よく抑制し、さらに洗剤組成物中での保存安定性に優れた粒状シリコーン消泡剤組成物と、これを含有してなる粉末洗剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)シリコーン消泡剤、(B)担体物質、(C)有機ワックス類、ならびに(D)35℃以上の融点を有するポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび35℃以上の融点を有するシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方、を含有することを特徴とする粒状シリコーン消泡剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗剤組成物、特に粉末洗剤組成物に適した粒状シリコーン消泡剤組成物及び粉末洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本国内においてはパルセーター型洗濯機が主流であり、洗濯時に発生する泡は、洗濯効率上、特に問題とはなっていなかった。むしろ適度に泡立つ方がより良い洗浄効果があるとの洗濯習慣より、適度に泡立つ洗剤が家庭の主婦には好まれる傾向にあった。しかし、近年、全自動洗濯機の普及に伴い、所定のプログラム時間内で確実にすすぎが完了するような低起泡性ですすぎ性のよい洗剤が求められるようになってきた。
【0003】
また更に、近年乾燥機付きの洗濯機(洗濯乾燥機)の普及が広がりつつあるが、この洗濯乾燥機はドラム型のものが多く、洗濯時に泡が発生すると洗濯効率が悪くなり洗浄効果が低下したり、洗濯機のフタから泡があふれ出したりするため、泡の発生を抑制した洗剤が要望されている。
【0004】
洗濯時に発生する泡を抑制する消泡剤としてはシリコーン消泡剤が知られているが、シリコーン消泡剤を粉末洗剤に直接添加すると、添加直後には消泡効果を発揮するが、しばらく貯蔵すると洗剤中に含まれるアルカリ剤の影響にて消泡性能が著しく低下することが知られている。そのため、シリコーン消泡剤の造粒・被覆処理を行った後、洗剤成分と混合することも行なわれているが、高温で保管するとシリコーン消泡剤の滲みだしを抑えることはできず消泡性能の低下を防止することはできない。
【0005】
そこで、特許文献1ではシリコーン消泡剤、担体粒子、水不溶の脂肪酸または脂肪アルコールからなる粒状消泡剤組成物が、特許文献2ではシリコーン消泡剤、担体粒子、脂肪酸とグリセロールのモノエステルからなる粒状消泡剤組成物が、特許文献3ではゼラチン化された水膨張性の親水性でんぷんにシリコーン消泡剤を吸着させた粒状消泡剤組成物がそれぞれ提案されているが、いずれも水溶性が乏しいため、水温が低い場合には消泡剤成分が水中に放出されず、十分な消泡効果が得られなかったり、効果が発揮されるまでに長時間要したりし、また溶け残りとして衣服に付着する問題もある。
【特許文献1】特開昭62−27496号公報
【特許文献2】特開昭62−27497号公報
【特許文献3】特開昭62−57616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、洗濯時(すなわち洗浄時からすすぎ時まで)の泡を効率よく抑制し、さらに洗剤組成物中での保存安定性に優れた粒状シリコーン消泡剤組成物と、これを含有してなる粉末洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討を行った結果、シリコーン消泡剤、担体物質、有機ワックス類、所定の構造を有し35℃以上の融点を有するポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび所定の構造を有し35℃以上の融点を有するシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方、を含有してなる粒状シリコーン消泡剤組成物が、洗濯時に効率よく消泡効果を発揮し、洗剤組成物中での保存安定性にも優れることを見出し本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(A)シリコーン消泡剤、
(B)担体物質、
(C)有機ワックス類、および
(D)下記一般式(I):
【0009】
【化1】


[式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Rは下記一般式(III):
−R−O−(RO)−R (III)
(式中、R及びRのおのおのは2価炭化水素基であり、Rは水素原子または1価の有機基であり、dは1以上の整数であり、ただし、d≧2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される基であり、aは0または1であり、bはb≧0を満たす整数であり、cはc≧0を満たす整数であり、ただし、a+c≧1であり、上記一般式(I)中にRが複数含まれる場合、Rは同一でも異なっていてもよい]
で示される35℃以上の融点を有するポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび下記一般式(II):
【0010】
【化2】


[式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Rは同一または異種の2価炭化水素基であり、Rは2価炭化水素基であり、eはe≧1を満たす整数であり、fはf≧1を満たす整数であり、gはg≧1を満たす整数であり、ただし、f≧2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい]
で示される35℃以上の融点を有するシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方
を含有することを特徴とする粒状シリコーン消泡剤組成物、ならびに、この粒状シリコーン消泡剤組成物を含有することを特徴とする粉末洗剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物は、洗濯時の泡を効率よく抑制し、さらに洗剤組成物中での保存安定性に優れているので、洗剤組成物、特に粉末洗剤組成物に用いられる粒状シリコーン消泡剤として有用なものである。本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物を含有してなる粉末洗剤組成物は洗濯時に効率よく泡の発生を抑制し、長期間貯蔵しても消泡効果が低下しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明において、粘度は25℃においてオストワルド粘度計により測定した値である。
【0013】
[(A)成分]
(A)成分は、シリコーン消泡剤である。このシリコーン消泡剤は特に限定されるものではないが、オルガノポリシロキサンと微粉末シリカとからなるシリコーンオイルコンパウンド、または該シリコーンオイルコンパウンドと25℃にて液状のポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとからなるシリコーン混合物が好ましい。(A)成分のシリコーン消泡剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
(シリコーンオイルコンパウンド)
・オルガノポリシロキサン
上記オルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、10〜100,000mm2/sであることが好ましく、消泡性、作業性の面から、より好ましくは50〜50,000mm2/sである。上記オルガノポリシロキサンとしては、例えば、平均組成式(IV):
SiO(4−h)/2 (IV)
(式中、Rは独立に水酸基または非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、hは1.9〜2.2の数である)
で表されるものが挙げられる。
【0015】
この一般式(IV)において、Rで表される非置換または置換の1価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が1〜20のものであり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;スチリル基などのアラルキル基;あるいはこれらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが挙げられるが、消泡性及び経済性の面から、全Rの90〜100モル%がメチル基であることが好ましい。
【0016】
上記一般式(IV)中のhは、1.9〜2.2の数であることが必要である。hが1.9未満である場合には、上記オルガノポリシロキサンは粘度が高くなりやすいため作業性や乳化特性が低下することがある。hが2.2より大きい場合には、上記オルガノポリシロキサンの分子量が小さくなり、得られる組成物は十分な消泡性を発揮しないことがある。
【0017】
上記一般式(IV)で表されるオルガノポリシロキサンの好ましい具体例としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサンコポリマー、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、α,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0018】
・微粉末シリカ
微粉末シリカは公知のものでよく、親水性シリカおよび疎水性シリカのいずれでもよい。微粉末シリカは、BET法による比表面積が100m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは150〜500m2/gである。微粉末シリカは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。前記親水性シリカとしては、例えば、沈降シリカ、ゲルシリカ等の湿式シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカ等の乾式シリカが挙げられる。その具体例としては、アエロジル(登録商標)(商品名、日本アエロジル(株)製)、ニプシル、ニプジェル(ともに、商品名、東ソー・シリカ(株)製)、サイリシア(登録商標)(商品名、富士シリシア化学(株)製)等が挙げられる。前記疎水性シリカとしては、例えば、親水性シリカの表面を有機シリル基を有する化合物で疎水化処理して得られる微粉末シリカが挙げられる。該疎水化処理は従来公知の方法によって、すなわち、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で親水性シリカを処理することによって行うことができる。
【0019】
・シリコーンオイルコンパウンドの調製
シリコーンオイルコンパウンドは、例えば、上記オルガノポリシロキサンと微粉末シリカとを所定量混合し、室温(25℃)〜200℃の温度で処理した後、必要に応じて低沸点留分を除くことによって製造することができる。このシリコーンオイルコンパウンドには、例えば、特公平4−42043号公報、特開平5−261206号公報等に記載のように、さらに無機質アンモニウム塩、有機ケイ素化合物、シロキサン樹脂などを消泡持続性、高温特性、希釈安定性などの向上のために添加してもよい。
【0020】
なお、微粉末シリカの添加量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して2〜30質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3〜20質量部の範囲である。2質量部未満の場合には得られる組成物の消泡性能が劣ることがあり、30質量部を超える場合にはシリコーンオイルコンパウンドは粘度が増加して作業性が悪くなることがある。
【0021】
(シリコーン混合物)
・ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン
また、上記シリコーンオイルコンパウンドに25℃にて液状のポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンを加え、シリコーン混合物としてもよい。このポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。このポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンの25℃における粘度は、水系への乳化分散作用および作業性の点で10〜10,000mm2/sであることが好ましいが、より好ましくは100〜7,000mm2/sである。このポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(V):
【0022】
【化3】


[式中、R10は同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、R11は下記一般式(VI):
−R12−O−(R13O)−R14 (VI)
(式中、R12及びR13のおのおのは2価炭化水素基であり、R14は水素原子または1価の有機基であり、Lは1以上の整数であり、ただし、L≧2のとき、R13は同一でも異なっていてもよい。)
で表される基であり、iは0または1であり、jはj≧0を満たす整数であり、kはk≧0を満たす整数であり、ただし、i+k≧1であり、上記一般式(V)中にR11が複数含まれる場合、R11は同一でも異なっていてもよい]
で示され、25℃にて液状であるものが挙げられる。
【0023】
上記一般式(V)において、R10で表される非置換または置換の1価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が1〜20のものであり、具体的には、例えば、Rで表される非置換または置換の1価炭化水素基として具体的に例示したものが挙げられる。特に、消泡効果及び経済性の観点から、全R10の90〜100モル%がメチル基であることが好ましい。
【0024】
上記一般式(V)において、乳化分散作用及び作業性の面から、jは5〜300の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜200の整数であり、kは0〜50の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜30の整数である。
【0025】
上記一般式(VI)において、R12およびR13で表される2価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が2〜6のものであり、R12の具体例としてはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の分岐を有しないアルキレン基が挙げられ、R13の具体例としてはエチレン基、およびメチルエチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(VI)において、R14で表される1価有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基、アセチル基、イソシアノ基等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(VI)において、Lは1〜100の整数であることが好ましいが、より好ましくは5〜80の整数である。
【0028】
上記一般式(V)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンの好ましい具体例としては、
【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】


等が挙げられる。
【0033】
・調製
このポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンは、シリコーンオイルコンパウンドの水中への分散性を高めるためのものであり、その添加量はシリコーンオイルコンパウンド100質量部に対して多くとも200質量部とする必要があるが、より好ましくは180質量部以下である。該添加量が200質量部超えると、得られる組成物の消泡効果が低下することがある。
【0034】
なお、所定量のシリコーンオイルコンパウンドとポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンとを15〜60℃の温度で、例えば、プロペラミキサー、アンカーミキサー、パドルミキサー、ゲートミキサー、ホモミキサー、ラインミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー、ホモディスパー等の撹拌混合機によって均一に混合することによってシリコーン混合物を調製することが好ましい。
【0035】
[(B)成分]
(B)成分の担体物質は、その表面に(A)成分のシリコーン消泡剤、(C)成分の有機ワックス類、並びに(D)成分のポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン及びシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方を付着させて粒状物として取り扱えるようにするためのものである。(B)成分の担体物質は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。(B)成分は公知のものでよく、その例としては、ゼオライト、粒状のトリポリリン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、化工でんぷん、デキストリン、粘土鉱物等が挙げられる。
【0036】
[(C)成分]
(C)成分は、有機ワックス類であり、(A)成分のシリコーン消泡剤が(B)成分の担体物質に付着しやすくする作用、及び洗剤に含まれるアルカリ成分による消泡性能低下を防止する作用を担うものである。(C)成分は、一種単独で用いてもよいが、二種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。(C)成分の有機ワックス類は一般的に公知のものでよく、その例としては、分子量が2000〜40000のポリエチレングリコールおよび炭素原子数が8以上の高級脂肪酸、高級アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等が挙げられるが、好ましくは分子量が3000〜30000のポリエチレングリコールならびに炭素原子数が10以上の高級脂肪酸、高級脂肪族アルコールおよびそれらのエステル類であり、より好ましくは分子量が3000〜20000のポリエチレングリコールならびに炭素原子数が12以上の高級脂肪酸、高級アルコールおよびそれらのエステル類である。
【0037】
[(D)成分]
(D)成分は、下記一般式(I)で示される35℃以上の融点を有するポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび下記一般式(II)で示される35℃以上の融点を有するシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方であり、(A)成分のシリコーン消泡剤と(C)成分の有機ワックス類との相互作用を強くさせ、長期保存中のシリコーン消泡剤の滲みだしを抑制し、消泡効果の低下を防止するだけでなく、シリコーン消泡剤を均一に水中へ分散させる効果を付与するものである。上記ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび上記シロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のおのおのは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン)
一般式(I):
【0039】
【化8】


[式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Rは下記一般式(III):
−R−O−(RO)−R (III)
(式中、R及びRのおのおのは2価炭化水素基であり、Rは水素原子または1価の有機基であり、dは1以上の整数であり、ただし、d≧2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される基であり、aは0または1であり、bはb≧0を満たす整数であり、cはc≧0を満たす整数であり、ただし、a+c≧1であり、上記一般式(I)中にRが複数含まれる場合、Rは同一でも異なっていてもよい]
【0040】
一般式(I)において、Rで表される非置換または置換の1価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が1〜20のものであり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;スチリル基などのアラルキル基;あるいはこれらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基などで置換した基、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが挙げられるが、消泡性及び経済性の面から、全R1の90〜100モル%がメチル基であることが好ましい。
【0041】
上記一般式(III)において、RおよびRで表される2価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が2〜6のものであり、Rの具体例としてはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の分岐を有しないアルキレン基が挙げられ、Rの具体例としてはエチレン基、およびメチルエチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。上記ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンが35℃以上の融点を有するためには、R全体の80〜100モル%がエチレン基であることが望ましい。
【0042】
さらに、上記一般式(III)において、dが20より小さいと上記ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンの融点が低くなりやすいため、dは20以上の整数であることが好ましく、より好ましくは20〜200の整数であり、更により好ましくは25〜100の整数である。
【0043】
上記一般式(III)において、Rで表される1価有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基、アセチル基、イソシアノ基等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(I)において、bは5〜200の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜150の整数であり、cは0〜100の整数であることが好ましく、より好ましくは1〜50の整数である。
【0045】
上記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンは、例えば、常法に従って、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンと分子鎖末端にアリル基などの脂肪族不飽和基を有するポリオキシアルキレン化合物とを白金等の触媒の存在下、付加反応することによって得られる。
【0046】
該ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンの好適な例としては、
【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】


等が挙げられる。
【0051】
(シロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体)
一般式(II):
【0052】
【化13】


[式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Rは同一または異種の2価炭化水素基であり、Rは2価炭化水素基であり、eはe≧1を満たす整数であり、fはf≧1を満たす整数であり、gはg≧1を満たす整数であり、ただし、f≧2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい]
【0053】
上記一般式(II)において、Rで表される非置換または置換の1価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が1〜20のものであり、具体的には、例えば、Rで表される非置換または置換の1価炭化水素基として具体的に例示したものが挙げられる。特に、消泡効果および経済性の観点から、全Rの90〜100モル%がメチル基であることが好ましい。
【0054】
上記一般式(II)において、R及びRで表される2価炭化水素基は、好ましくは炭素原子数が2〜6のものであり、Rの具体例としてはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の分岐を有しないアルキレン基が挙げられ、Rの具体例としてはエチレン基、およびメチルエチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基等が挙げられる。上記ブロック共重合体が35℃以上の融点を有するためには、R全体の90〜100モル%がエチレン基であることが望ましい。
【0055】
さらに、上記一般式(II)において、fが20より小さいと上記ブロック共重合体の融点が低くなりやすいため、fは20以上の整数であることが好ましく、より好ましくは20〜200の整数であり、更により好ましくは25〜100の整数である。
【0056】
上記一般式(II)において、eは1〜150の整数であることが好ましく、より好ましくは5〜100の整数である。作業性を考慮してgは1〜100の整数であることが好ましいが、より好ましくは3〜50の整数である。
【0057】
上記一般式(II)で示されるシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体は、例えば、常法に従って、α、ω−ジハイドロジェンオルガノシロキサンと分子鎖両末端にアリル基などの脂肪族不飽和基を有するポリオキシアルキレン化合物とを白金等の触媒の存在下、付加反応することによって得られる。
【0058】
該シロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の好ましい例としては、
【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
【化16】


等が挙げられる。
【0062】
[粒状シリコーン消泡剤組成物]
本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物において、各成分の好ましい配合量は、例えば、(A)成分のシリコーン消泡剤:100質量部に対して、
(B)成分の担体物質:50〜2000質量部、より好ましくは100〜1000質量部、
(C)成分の有機ワックス類:5〜600質量部、より好ましくは30〜500質量部、並びに
(D)成分の上記ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび上記共重合体のどちらか一方または両方:5〜500質量部、より好ましくは10〜300質量部
である。
【0063】
本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物の製造方法は、公知の造粒方法、例えば、押し出し造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法が挙げられる。好ましくは、(A)シリコーン消泡剤を(B)担体物質に混合しながら添加し、次いで(C)有機ワックス類と(D)ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよびシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方とを加熱下で混合し、押し出し造粒法にて造粒物を得る方法や、撹拌混合造粒機により各成分を加熱下で撹拌造粒する方法が挙げられる。該温度としては、これらの成分の種類にもよるが、混合物が撹拌しやすいように適度に軟化する温度であればよく、例えば、30〜100℃が挙げられる。本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物が所望の範囲内の粒径分布を有するようにするために、上記で造粒された組成物を目開きがより大きい第一の篩にかけて篩下画分を得、該篩下画分を目開きがより小さい第二の篩にかけて篩上画分を得、該篩上画分を本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物として用いてもよい。該第一の篩としては、例えば、JIS Z 8801-1に規定の目開き2800〜710μmの篩を用いることができる。該第二の篩としては、例えば、同規格の目開き600〜150μmの篩を用いることができる。本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物の平均粒径は、流動性、水分散性、消泡性の観点から、好ましくは100〜2000μm、より好ましくは150〜1500μmである。なお、本発明において、平均粒径は、レーザー回折法等により体積基準の累積平均径として求めることができる。
【0064】
[粉末洗剤組成物]
さらに、本発明は低起泡性の粉末洗剤組成物を提供する。粉末洗剤組成物が洗剤成分および本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物を含有し、かつ、洗剤として有効に機能する限り、粉末洗剤組成物の構成成分は特に限定されるものではない。洗剤成分としては、例えば、界面活性剤、洗剤ビルダー等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン化合物、ベタイン化合物等が挙げられる。洗剤ビルダーとしては、例えば、ゼオライト、炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0065】
また、本発明の粉末洗剤組成物には、その他成分として、過ホウ酸塩、過炭酸塩等の漂白剤成分;カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の再付着防止剤;リパーゼ、プロテアーゼ等の酵素;蛍光増白剤;柔軟化剤;香料等を添加してもよい。
【0066】
本発明の粉末洗剤組成物において、各成分の好ましい配合量は、例えば、
アニオン界面活性剤:10〜60質量部、
洗剤ビルダー:20〜100質量部、
ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤:合計で0〜50質量部、
その他成分:添加する場合は1〜10質量部、
本発明の粒状シリコーン消泡剤組成物:0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
[(A)シリコーン消泡剤]
・シリコーンオイルコンパウンド(1)
疎水性オルガノポリシロキサンとして粘度が1,000mm2/sであるジメチルポリシロキサン100質量部、および微粉末シリカとして親水性湿式シリカ(商品名:Nipsil HD-2、東ソー・シリカ(株)社製、BET比表面積:300m2/g)10質量部を、窒素ガス雰囲気下、150℃で3時間、加熱混合してシリコーンオイルコンパウンド(1)を得た。
・シリコーンオイルコンパウンド(2)
疎水性オルガノポリシロキサンとして粘度が5,000mm2/sであり、全シロキサン単位に対してCH3SiO3/2単位を1モル%含有する分岐状のジメチルポリシロキサン100質量部、および微粉末シリカとして親水性ヒュームドシリカ(商品名:AEROSIL200、日本アエロジル(株)社製、BET比表面積:200m2/g)をヘキサメチルジシラザンで表面処理して調製した表面疎水化処理シリカ5質量部を、窒素ガス雰囲気下、160℃で3時間、加熱混合してシリコーンオイルコンパウンド(2)を得た。
・シリコーン混合物(3)
シリコーンオイルコンパウンド(1)100質量部、および下記式:
【0069】
【化17】


で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(4)(粘度:2000mm/s)40質量部をTKホモミキサー(プライミクス株式会社製)にて混合することによりシリコーン混和物(3)を得た。
【0070】
[(D)上記一般式(I)で示される35℃以上の融点を有するポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび上記一般式(II)で示される35℃以上の融点を有するシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方]
・ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(5)(融点:48℃)
【0071】
【化18】


・ポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(6)(融点:45℃)
【0072】
【化19】


・シロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体(7)(融点:46℃)
【0073】
【化20】

【0074】
[粒状シリコーン消泡剤組成物]
表1に示した各成分(単位:質量部)をハイビスミックス(プライミクス株式会社製)に入れ、60〜80℃の温度で撹拌混合し、押し出し造粒機(不二パウダル株式会社製)にて粒状とし、更にパワーミル(不二パウダル株式会社製)にて整粒した。得られた粒子をJIS Z 8801-1に規定の18メッシュのふるい(目開き850μm)にかけた。得られた篩下画分を更に同規格の36メッシュのふるい(目開き425μm)にかけることにより、篩上画分として、粒径がおよそ425〜850μmの範囲に分布する平均粒径700μmの粒状シリコーン消泡剤組成物を得た。
【0075】
【表1】

【0076】
[粉末洗剤組成物]
・直鎖アルキル(C12〜C13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム 25質量部
・ラウリル硫酸ナトリウム 10質量部
・ポリオキシエチレンアルキル(C12〜C13)エーテル 5質量部
・ゼオライト 25質量部
・炭酸ソーダ 10質量部
・ケイ酸ソーダ 15質量部
・硫酸ソーダ 5質量部
・粒状シリコーン消泡剤組成物1〜8のいずれか1つ 0.8質量部
・水 4.2質量部
からなるかさ密度0.7g/cm3の粉末洗剤組成物を、これらの成分をパワーミル(不二パウダル株式会社製)にて混合することにより、調製した。ただし、比較例4ではいずれの粒状シリコーン消泡剤組成物も添加しなかった。
【0077】
上記で調製した粉末洗剤組成物の洗濯時の泡立ちとすすぎ性を下記のとおり評価した。
【0078】
[泡立ちの評価]
下記の条件にて洗濯を行い、洗濯7分後の泡高さを測定した。結果を表2に示す。
・洗濯条件
洗濯機: 東芝 銀河2.2kg
水量: 30リットル
粉末洗剤組成物の量: 25g
衣料: 1kg(綿シャツ600g、T/Cワイシャツ400g、それぞれ3日間着用したもの)
【0079】
[すすぎ性の評価]
上記方法で洗濯後、下記の条件ですすぎを行い、すすぎ2回後の泡の残存量を次の基準に従い評価した。結果を表2に示す。
・すすぎ条件
注水量:20リットル/分
すすぎ時間: 3分/1回
・すすぎ性の評価基準
A : 液面に泡が残っていない
B : 液面全体の1/4未満に泡が残っている
C : 液面全体の1/4以上3/4未満に泡が残っている
D : 液面全体の3/4以上に泡が残っている
【0080】
粉末洗剤組成物を40℃で3週間貯蔵し、再度、泡立ちの評価とすすぎ性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2からわかるように本発明の粒状シリコーン消泡剤を配合してなる粉末洗剤組成物は低起泡性ですすぎ時の泡切れもよく、長期間貯蔵しても消泡効果の低下がほとんどない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーン消泡剤、
(B)担体物質、
(C)有機ワックス類、ならびに
(D)下記一般式(I):
【化1】


[式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Rは下記一般式(III):
−R−O−(RO)−R (III)
(式中、R及びRのおのおのは2価炭化水素基であり、Rは水素原子または1価の有機基であり、dは1以上の整数であり、ただし、d≧2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される基であり、aは0または1であり、bはb≧0を満たす整数であり、cはc≧0を満たす整数であり、ただし、a+c≧1であり、上記一般式(I)中にRが複数含まれる場合、Rは同一でも異なっていてもよい]
で示される35℃以上の融点を有するポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサンおよび下記一般式(II):
【化2】


[式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、Rは同一または異種の2価炭化水素基であり、Rは2価炭化水素基であり、eはe≧1を満たす整数であり、fはf≧1を満たす整数であり、gはg≧1を満たす整数であり、ただし、f≧2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい]
で示される35℃以上の融点を有するシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のどちらか一方または両方
を含有することを特徴とする粒状シリコーン消泡剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の粒状シリコーン消泡剤組成物を含有することを特徴とする粉末洗剤組成物。

【公開番号】特開2008−24760(P2008−24760A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196374(P2006−196374)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】