説明

粒状材料あるいは粉体材料の散布装置

【課題】本発明は散布管の下方に受け板を配置することで地面に均一に散布することを実現可能とする粒状材料あるいは粉体材料の散布装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】車体25上に配置され、散布材料を収納可能に構成されたホッパ部3と、このホッパ部3と連通状に設けられると共に、車体25の進行方向に対して左右方向に移動可能に構成された散布管11と、この散布管11の下方に、水平面と所定の角度をなして配置された受け板5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状材料あるいは粉体材料の散布装置に関する。詳しくは肥料や農薬等の粒状材料あるいは粉体材料を均一に散布することができる散布装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の散布装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
具体的には、特許文献1に記載された散布装置は、図7に示すように、フレームと、このフレームによって支持され、かつ被散布材料を収容するホッパ101と、作動時に上方に延在する回転軸線の回りで回動自在となった樋状散布手段102を具備する。
【0003】
この樋状散布手段102の一方の供給端部側の付近で被散布材料が投入され、また、樋状散布手段102の他方の放出端部側で被散布材料が散布される排出手段が設けられる。この排出手段は、ホッパ101内がシャフト103によって貫通され、このシャフト103の両側部分、すなわち、ハウジング104の両側方には互いにピッチが逆とされた螺旋ブレード105、106が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−271715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された散布装置では、液圧モータによるシャフトの駆動回転でハウジング104内より樋状散布手段で左右方向への往復動に変換しながら被散布材料の散布を行うものである。
【0006】
しかしながら、例えば肥料、あるいは農薬等の被散布材料を散布する場合には、トラクターや軽トラックなどの自走車に散布装置を搭載して農地に散布される。このような場合には、被散布材料の質量が軽いために樋状散布手段102から地面に落下するまでの間に風で飛散することで均一に散布することが困難である。
【0007】
また、樋状散布手段の左右方向への往復動は個別に設けられた液圧モータでシャフトの駆動回転が行われるために肥料、あるいは農薬等の被散布材料の散布を行う場合には、トラクターの走行速度に応じての左右方向への往復速度を調整することが機構的に複雑となる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、散布材料を均一に散布することを実現可能とする粒状材料あるいは粉体材料の散布装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る粒状材料あるいは粉体材料の散布装置は、車体上に配置され、散布材料を収納可能に構成されたホッパ部と、該ホッパ部と連通状に設けられると共に、前記車体の進行方向に対して左右方向に移動可能に構成された散布管と、該散布管の下方に、水平面と所定の角度をなして配置された受け板とを備える。
【0010】
また、本発明に係る粒状材料あるいは粉体材料の散布装置は、車体と、該車体上に配置され、散布材料を収納可能に構成されたホッパ部と、該ホッパ部と連通状に設けられると共に、前記車体の進行方向に対して左右方向に移動可能に構成された散布管と、該散布管の下方に、水平面と所定の角度をなして配置された受け板とを備える。
【0011】
ここで、ホッパ部内に収納された散布材料は車体の進行方向に対して左右方向に移動可能に構成された散布管の内部を通って排出されることとなる。なお、ここでの散布材料は粒状材料(例えば肥料等)や粉体材料(例えば農薬等)を意味している。
【0012】
また、散布管の下方に、水平面と所定の角度をなして配置された受け板によって、散布管より排出される散布材料が受け止められ、その後地面に散布されることとなり、風の影響を受けることなく確実に散布することが可能となる。更に、散布材料が受け板で受け止められた後に地面に散布されることで、散布材料の均一散布も実現することとなる。
【0013】
また、受け板が高さ調整自在に構成されることによって、散布する地面の高さに応じて常に一定の高さを保持することが可能となる。このことによって、より一層風の影響を受けることなく確実に散布することが可能となり、また、より一層散布材料の均一散布が可能となる。
【0014】
また、受け板が水平面となす角度を調整可能に構成されることによって、散布管から排出される散布材料を受け止めて、地面に散布する際の落下速度を調整することが可能となる。このことによって、より一層風の影響を受けることなく確実に散布することが可能となり、また、より一層散布材料の均一散布が可能となる。
【0015】
また、散布管の左右方向の移動速度が、車体の進行速度に応じて制御可能に構成されることによって、車体の走行速度に応じて地面に均一に散布材料を散布することが可能となる。
【0016】
また、ホッパ部と散布管の間に、筒状体の内部にスクリュー羽根を配置して構成された送り出し部が設けられることによって、ホッパ部内に収納された散布材料が確実に散布管内部を通って排出されることとなる。
【0017】
また、スクリュー羽根の回転速度が、車体の進行速度に応じて制御可能に構成されることによって、車体の進行速度に応じてホッパ部内に収納された散布材料の排出量を調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒状材料あるいは粉体材料といった散布材料の均一散布が実現することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の一例を説明するための正面模式図である。
【図2】本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の一例を説明するための背面模式図である。
【図3】本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の送り出し部の一例を説明するための一部断面模式図である。
【図4】本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の左右振幅機構の一例を説明するための模式図である。
【図5】本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の受け板の高さ及び角度調整機構の一例を説明するための模式図である。
【図6】本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置による散布状態を説明するための模式図である。
【図7】従来の散布装置の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0021】
図1は本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の一例を説明するための正面模式図、図2は本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の一例を説明するための背面模式図である。更に、図3は本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置の送り出し部の一例を説明するための一部断面模式図である。
【0022】
本実施の形態では、トラクターや軽トラックに牽引される車体25上に搭載される散布装置1を例に挙げて説明を行う。なお、車体25はトラクターや軽トラックとの連結のための連結部2が設けられている。
【0023】
ここで示す散布装置1は、ホッパ部3と、このホッパ部3の下部に配置された送り出し部4と、この送り出し部4の下方に配置された受け板5を備える。
【0024】
ここで、ホッパ部3は中空の箱状をなしており、その内部に肥料等の粒状材料や農薬等の粉体材料(以下、粒状材料と粉体材料をまとめて「散布材料」と称する)を収納できる様に構成されている。なお、ホッパ部3の上端には開閉自在な蓋部6が設けられており、上方から散布材料の投入が可能となる。
【0025】
また、ホッパ部3の下部は狭窄状に形成されると共に、その下端が送り出し部4と連通状に連結されて構成されている。
【0026】
この送り出し部4は、円筒状の水平ダクト10内に螺旋状のスクリュー羽根7が内包されると共に、その一端がホッパ部3の下端開口部14に連通状に連結され、他端に吐出口8が開口されて構成されている。
【0027】
また、それぞれのホッパ部3に設けられた送り出し部4のスクリュー羽根7は、それぞれの水平ダクト10との間に渡設された駆動軸38に互いに吐出口8側へ送り出されるように周設されている。
【0028】
ここで、駆動軸38は車体25の進行速度に応じて駆動回転する機構とされている。
【0029】
具体的には、図3に示すように、車軸16に歯車17が設けられると共に、駆動軸38に平行して回転軸20が配置されている。この回転軸20には車軸16に取り付けられた歯車17の相対する位置に伝動歯車18が取り付けられると共に、歯車17と伝動歯車18とが伝動チェーン19で連結されて構成されている。また、駆動軸38と回転軸20には互いに噛み合う連動歯車39が取り付けられている。
これにより、車軸16の歯車17と回転軸20の伝動歯車18とが伝動チェーン19との連結で回転し、連動歯車39により駆動軸38が回転することとなり、上述の様に、駆動軸38が車体25の進行速度に応じて駆動回転することとなる。
【0030】
また、送り出し部4の吐出口8の下方に散布管11が配置されている。この散布管11の上端開口部13はロート状に形成されると共に、送り出し部4の吐出口8に左右振幅可能な状態で連通状に臨ませて構成されている。更に、散布管11には透明状のホース15が接続されている。
【0031】
この様な構成の送り出し部4及び散布管11によって、ホッパ部3内に投入された散布材料は水平ダクト10の一端から、その内包されるスクリュー羽根7で吐出口8まで順次搬送され、この吐出口8から排出される散布材料は散布管11内に連通状に投入されることとなる。
【0032】
ここで、散布管11は、車体25の走行速度に応じて左右方向へ往復回動を繰り返す機構とされている。
【0033】
具体的には、図4に示すように、車体25上に立設された支持台26に伝動歯車18Aが回転自在な状態で取り付けられている。また、車軸16に取り付けられた歯車17Aと伝動歯車18Aは相対する様に設けられており、伝動チェーン19Aで連結されて構成されている。
【0034】
更に、伝動歯車18Aの回転軸20Aには伝動歯車18Aと連動する回転体21が取り付けられている。
【0035】
また、左右側の散布管11間には、その両端が散布管11に外挿されたリング22が配置されたロッド23が横架されている。更に、ロッド23の略中央位置には、略直角形状に折曲形成されたリンク部材24の一端が枢支ピン37Aによって連結枢支されている。
【0036】
また、リンク部材24のコーナー部分は車体25上に立設された支持棒部(図示せず。)に枢支ピン37Bで連結枢支されている。更にリンク部材24の他端と回転体21の円周縁との間とが変換ロッド28で連結枢支されて構成されている。
【0037】
この様な構成の散布管の往復回動を繰り返す機構とすることによって、車体25がトラクター等により牽引されることで車軸16が回転することとなる。そして、車軸16が回転することで歯車17Aが回転し、この歯車17Aと伝動チェーン19Aで連結された伝動歯車18Aが回転することとなる。
【0038】
ここで、伝動歯車18Aの回転軸20Aに取り付けられた回転体21が回転することで、この回転体21の円周縁に連結枢支された変換ロッド28が直線運動に変換されることになる。
【0039】
更に、変換ロッド28の直進運動によって、変換ロッド28にその他端が連結枢支されたリンク部材24が左右方向に回動することとなる。このリンク部材24の回動によって、リンク部材24の一端に連結枢支されたロッド23が左右方向に往復運動を行うこととなり、変換ロッド28の直進運動がロッド23の往復運動に変換されることになる。
【0040】
このようにして、ロッド23の左右方向への往復運動によって、ロッド23の両側端に係留された散布管11は左右方向への振幅運動を行うこととなる。
【0041】
また、図5に示すように、散布管11の下方に受け板5が配置されている。この受け板5の背面側の車体25には高さ調整用棒部29が鉛直状に立設されている。更に、高さ調整用棒部29には高さ調整部30が外挿されている。
【0042】
この高さ調整部30は、高さ調整用棒部29に外挿されて上下摺動可能とされると共に、蝶ネジ部36で適宜高さに係止することができる環状体31と、この環状体31に対して水平状に突設された受け板支持部32とから構成されている。
【0043】
また、受け板5の裏面の略中央には、高さ調整部30の受け板支持部32の先端部とを枢支ピン37Cにより連結枢支するための連結部33が突設されている。
【0044】
更に、受け板5の裏面の連結部33の上方位置には、円弧形状の受け板回動調整板34が突設され、その長手方向中央に沿ってネジ係留用長穴35が開口されている。
【0045】
ここで、ネジ係留用長穴35に位置する受け板回動調整板34には、このネジ係留用長穴35に挿通させた状態で蝶ネジ部36Aが螺着されている。
【0046】
この蝶ネジ部36Aを緩めた状態でネジ係留用長穴35を適宜回動させて蝶ネジ部36Aで受け板回動調整板34を締め付けることで、受け板5を任意の傾斜に固定することが可能となる。
【0047】
このように、受け板5は高さ調整部30では肥料や農薬等を散布するうねの高さに応じて高さ保持と傾斜調整を同時に行うことで、地面への落下速度の調整維持が可能となる。
【0048】
なお、本実施例では2個のホッパ部が配置された例を詳述するものであるが、必ずしも2個のホッパ部とする必要性は無く、例えば1個、あるいは3個のホッパ部を配置した構成であっても構わない。
【0049】
なお、本発明の「車体」とは、本実施例におけるトラクターや軽トラックにより牽引される自走不能な車体の他に、軽トラックやトラクター等にように自走可能な車体も含まれることは勿論のことである。
【0050】
また、本発明に係る散布装置は、本実施例における車体の駆動を利用せずに、電動モータ等の他の駆動源によって散布材料を排出し、かつ散布管の往復作動を行い、それ自体での散布を可能とする場合も考えられる。
【0051】
また、受け板の高さ調整及び傾斜角度調整機構は必ずしも本実施例で詳述した機構とする必要性はなく、容易に高さ調整及び傾斜角度調整が行える機構であればいかなる機構であっても構わない。
【0052】
以上の構成よりなる本発明を適用した粒状材料あるいは粉体材料の散布装置を利用する際には、先ず、ホッパ部3に散布する肥料、あるいは農薬等の散布材料を投入する(図6参照)。
【0053】
ホッパ部3への散布材料の投入が完了すると、牽引車(図示せず)を走行させることとなるが、牽引車の走行に伴って、ホッパ部3の下部に配置される送り出し部4の駆動軸38が回転することとなる。
【0054】
これにより、水平ダクト10内のスクリュー羽根7が回転し、ホッパ部3内に収納された散布材料Bが送り出されて吐出口8より排出される。更に、吐出口8より排出された散布材料Bは散布管11内を通って受け板5上に排出される。
【0055】
この場合に、牽引車の走行速度に応じて車軸(図示せず。)と連動されるロッド23が左右方向への往復運動を繰り返すことでロッド23の両側端に係留される散布管11も同様に左右方向への振幅を繰り返すこととなる。これにより、受け板5の開放幅を限度として散布管11より散布材料Bが受け板5上に均一に排出されることとなる。
【0056】
ここで、受け板5は畑地に設けられたうねCの高さに応じて、あるいは散布材料の質量や散布時の風の状況に応じて受け板5の高さと傾斜角度を調整する。これにより受け板5の開放側より肥料、あるいは農薬等の散布材料が滑落し、風等に影響を受けることなくうねC上に均一に散布することが可能となる。
【0057】
また、車体25の走行速度に応じて散布材料の排出量及び散布管11の左右方向への振幅速度が変化する。
例えば速度が速い場合には散布材料の排出量及び振幅回数が多くなり、また速度が遅い場合には散布材料の排出量及び振幅回数が少なく、その結果うねC上に散布材料を均一に散布することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 散布装置
2 連結部
3 ホッパ部
4 送り出し部
5 受け板
6 蓋部
7 スクリュー羽根
8 吐出口
10 水平ダクト
11 散布管
13 上端開口部
14 下端開口部
15 ホース
16 車軸
17、17A 歯車
18、18A 伝動歯車
19、19A 伝動チェーン
20 回転軸
21 回転体
22 リング
23 ロッド
24 リンク部材
25 車体
26 支持台
28 変換ロッド
29 高さ調整用棒部
30 高さ調整部
31 環状体
32 受け板支持部
33 連結部
34 受け板回動調整板
35 ネジ係留用長穴
36、36A 蝶ネジ部
37、37A、37B、37C 枢支ピン
38 駆動軸
39 連動歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に配置され、散布材料を収納可能に構成されたホッパ部と、
該ホッパ部と連通状に設けられると共に、前記車体の進行方向に対して左右方向に移動可能に構成された散布管と、
該散布管の下方に、水平面と所定の角度をなして配置された受け板とを備える
粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。
【請求項2】
前記受け板は、高さ調整自在に構成された
請求項1に記載の粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。
【請求項3】
前記受け板は、水平面となす角度を調整可能に構成された
請求項1または請求項2に記載の粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。
【請求項4】
前記散布管の左右方向の移動速度は、前記車体の進行速度に応じて制御可能に構成された
請求項1、請求項2または請求項3に記載の粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。
【請求項5】
前記ホッパ部と前記散布管の間に、筒状体の内部にスクリュー羽根を配置して構成された送り出し部が設けられた
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。
【請求項6】
前記スクリュー羽根の回転速度は、前記車体の進行速度に応じて制御可能に構成された
請求項5に記載の粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。
【請求項7】
車体と、
該車体上に配置され、散布材料を収納可能に構成されたホッパ部と、
該ホッパ部と連通状に設けられると共に、前記車体の進行方向に対して左右方向に移動可能に構成された散布管と、
該散布管の下方に、水平面と所定の角度をなして配置された受け板とを備える
粒状材料あるいは粉体材料の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55220(P2012−55220A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201008(P2010−201008)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(598146964)
【Fターム(参考)】