説明

粒状浴用剤組成物

【課題】微細な炭酸ガスの泡を多量に発生して、入浴後に優れた温まり感をもたらす粒状浴用剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)並びに(B):
(A)有機酸、水溶性バインダー及び4〜30質量%の非イオン界面活性剤を含む造粒物、並びに
(B)炭酸塩
を含有する粒状浴用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸塩と有機酸を配合した浴用剤は、浴水中で炭酸ガスの泡を発生し、当該炭酸ガスによる血行促進効果が得られることから、優れた浴用剤として広く知られている。このような浴用剤においては、浴水中で発生した炭酸ガスの濃度を高める手段として、浴槽の底部付近で浴用剤を溶解させるために、その形態を粒状ではなく、比較的大型の錠剤型とすることが多い。
【0003】
浴用剤の他の形態である粒状発泡性浴用剤は、打錠等の特殊な製造技術を必要としないこと、一般に溶解時間が短いこと等から、使用状態や好みにより錠剤型と使い分けられており、種々の研究がなされている。例えば、発泡性と保存安定性のために特定の含有量で油性成分を配合して、一定の平均粒子径範囲の顆粒とする技術(特許文献1)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−62319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、オフィスのIT化の進歩等に伴い、一年を通じて冷え性等の不調に悩まされるヒトの数が増加傾向にあることも相まって、粒状浴用剤においても入浴後における温まり感の更なる向上が期待されている。
【0006】
従って、本発明の課題は、斯かる実情に鑑み、入浴後に優れた温まり感をもたらす粒状浴用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく種々検討した結果、炭酸塩と有機酸に特定量の非イオン界面活性剤を含有させて造粒物とし、当該造粒物と炭酸塩とを組み合せて用いれば、浴水中で発生する炭酸ガスの泡を極めて微細なものにすることができ、浴水中に多量の炭酸ガスが溶解して入浴後に優れた温まり感が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)並びに(B):
(A)有機酸、水溶性バインダー及び4〜30質量%の非イオン界面活性剤を含む造粒物、並びに
(B)炭酸塩
を含有する粒状浴用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粒状浴用剤組成物によれば、微細な炭酸ガスの泡が多量に発生するため、浴水中に多量の炭酸ガスが溶け込み、入浴後に優れた温まり感をもたらすことができる。また、本発明の粒状浴用剤組成物は、浴水に投入後直ちに優れた溶解性を示すため、溶け残りを充分に抑制でき、使用感も好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の粒状浴用剤組成物に含まれる成分(A)は、(a1)有機酸、(a2)水溶性バインダー及び(a3)4〜30質量%の非イオン界面活性剤を含有する造粒物である(以下、造粒物(A)ともいう)。
【0010】
本発明で用いる(a1)有機酸としては、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸及びシュウ酸等の室温(25℃)で固体の有機酸が好ましい。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合せて用いてもよい。なかでも、浴水中での溶解性及び製造時や使用時のハンドリング性の観点から、フマル酸、コハク酸及び酒石酸が好ましい。特に、(a1)有機酸全量を100質量%としたときのフマル酸の含有量は、40質量%以上が好ましく、60〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%が特に好ましい。
【0011】
造粒物(A)中の(a1)有機酸の含有量は、炭酸ガス発生量の点から40〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。また、(a1)有機酸の吸油能は、特に造粒物(A)中に油性成分を配合した場合に、油性成分を安定化して微細発泡を良好に進行させる観点から、吸油能が0.02mL/g以上のものが好ましく、0.05mL/g以上のものがより好ましい。吸油能とは、後述する実施例に記載の方法により決定される値である。なお、吸油能の上限は、粒子強度の観点から1.0mL/g以下であることが望ましい。
【0012】
本発明で用いる(a2)水溶性バインダーは、前述した(a1)有機酸と後述する特定量の(a3)非イオン界面活性剤と共に用いられることで、造粒物の溶解性を制御して泡のより一層の微細化や発泡性に有効に作用すると共に、造粒物の強度をも高める。また、有機酸が水溶性バインダーによって被覆されることで、保存中に造粒物(A)中の有機酸と主に造粒物外に存在する炭酸塩とが接触して反応することが抑制され、炭酸ガスの発生により包装容器が膨張する等の問題が発生するのを防止し、保存安定性を向上させることができる。
【0013】
(a2)水溶性バインダーとしては、熱可塑性のものが好ましく、このような熱可塑性の(a2)水溶性バインダーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェノールエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。
【0014】
また、(a2)水溶性バインダーの数平均分子量は、粉末化を行う際の粘度調整とハンドリング性の観点から、ポリスチレンを標準としたGPC法で、4,000〜20,000が好ましく、6,000〜13,000がより好ましく、7,000〜9,000がさらに好ましい。水溶性バインダーとして、ポリエチレングリコールの分子量を測定する場合には、溶媒として水/エタノールを用いた。
【0015】
また、上記(a2)水溶性バインダーを用いる場合には、数平均分子量の異なる水溶性バインダーを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
造粒物(A)中の(a2)水溶性バインダーの含有量は、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。前記下限値以上であると、造粒したときの粒子強度が高くなり、製造時の輸送過程で造粒物が壊れ難くなる。前記上限値以下であると、浴水中での造粒物(A)の溶解性が向上し、微細発泡性が高められ充分な量の炭酸ガスが浴水中に溶け込んで、入浴後における温まり感が促進される。
【0017】
本発明で用いる(a3)非イオン界面活性剤は、造粒物(A)中に2〜30質量%含まれ、好ましくは3〜27質量%含まれ、より好ましくは5〜25質量%含まれる。(a3)非イオン界面活性剤を上記範囲内の量で含むことにより、(a2)水溶性バインダーとも相まって、造粒物(A)の浴水中での良好な溶解性を発揮させながら、微細な炭酸ガスの泡の発生を向上させることができる。そのため、浴水中に充分な量の炭酸ガスが溶け込んで、入浴後における優れた温まり感を充分に実感させることができ、且つ造粒物の溶け残りもない。
【0018】
上記(a3)非イオン界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。非イオン界面活性剤は1種単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせて用いることにより、上記効果をさらに向上させることができるため好ましい。
【0019】
特に、微細な炭酸ガスの泡を大量に発生させ浴水中に充分な量の炭酸ガスが溶け込む点から、少なくともHLB6〜20の非イオン界面活性剤、より好ましくはHLB8〜19の非イオン界面活性剤、特に、HLB10〜18の非イオン界面活性剤を用いるのが好ましい。造粒物(A)中の非イオン界面活性剤全量を100質量%としたときのHLB6〜20の非イオン界面活性剤の含有量は、30〜100質量%が好ましく、40〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%がさらに好ましい。
【0020】
ここで、HLBは、界面活性剤の親水性と疎水性のバランスを表すのに通常使用される値であり、当分野において慣用される川上式等の幾つかの計算式により、求めることができる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(Mw/M0)
Mw:親水基の分子量
M0:疎水基の分子量
【0021】
上記(a3)非イオン界面活性剤の中でも、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が好ましい。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤と、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤を組み合わせることが殊更好ましい。このようにすることで、非イオン界面活性剤の上記効果のうち、特に微細な炭酸ガスの泡の発生が著しく向上するため、浴水中への炭酸ガスの溶解を充分に促進し、入浴後における温まり感の促進効果をもたらす点で非常に好ましい。
【0022】
尚、本発明における造粒物(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記以外の成分を適宜配合することができる。そのような成分としては、油性成分、崩壊助剤、肌感触向上剤、消泡剤、酸化防止剤、分散剤、防菌・防黴剤、色素、生薬類等が挙げられる。
【0023】
上記油性成分としては、具体的には、分子量が100以上でありClogP値が4〜18である脂肪酸エステルである、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソアミル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、リノール酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル等が挙げられる。また、分子内に脂肪酸エステル構造を有するトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、トリカプリル酸グリセリル等の脂肪酸グリセリド類;イソステアリン酸ポリグリセリル−2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2等の脂肪酸ポリグリセリド類;大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸グリセリル等のグリセリド類等も挙げられる。分子量が100以上でありClogP値が4〜18である脂肪酸エステル以外の油性成分としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、スクアレン、ジオクチルシクロヘキサン、ブリスタン等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール等の高級アルコール類;ハッカ油、ジャスミン油、ショウ脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、テレピン油、ケイ皮油、ベルガモット油、ミカン油、ショウブ油、パイン油、ラベンダー油、ベイ油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラーオール、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン、テルペン系化合物等の精油;シリコーン油類等が挙げられる。
【0024】
上記油性成分は、造粒物の保形性を保つ点や染み出し等製造時に生じる問題の点から、造粒物(A)中の2.5質量%未満、好ましくは、2質量%未満、特に好適には1質量%未満、さらに好適には0.5質量%未満であることが好ましい。殊更、油性成分は造粒物(A)中に含有しないことが最も好ましい。
【0025】
なお、特に、造粒物(A)中の(a3)非イオン界面活性剤の含有量と油性成分の含有量との比率(油性成分/非イオン界面活性剤)が、好ましくは0〜1.0、さらに好ましくは0〜0.5であると、製造時の問題を抑制しつつ、入浴後における温まり感の促進効果をもたらす点で非常に有効である。
【0026】
殊更に、(a3)非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを含有する場合、造粒物(A)中のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルの含有量と油性成分との比率(油性成分/ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル)が、好ましくは0〜4.0、さらに好ましくは0〜1.0、特に好ましくは0〜0.5であると、製造時の問題を抑制しつつ、入浴後における温まり感の促進効果をもたらす点で非常に有効である。
【0027】
造粒物(A)中に、さらに、崩壊助剤を配合することにより、造粒物(A)の崩壊性を向上させ、浴水中での造粒物(A)の溶解性を向上させることができる。崩壊助剤としては、常温(20℃)で固体の糖類や無機塩が好ましい。
【0028】
糖類としては、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、トレハロースが挙げられる。
【0029】
無機塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酸化マグネシウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムが挙げられるが、無機塩として炭酸塩を含んでいてもよいが、その場合は、造粒物(A)中の15質量%未満、好ましくは、保存安定性の点から2質量%未満、特に好適には1質量%未満、さらに好適には0.5質量%未満であることが好ましい。殊更、炭酸塩は造粒物(A)中に含有しないことが保存安定性の観点から最も好ましい。
【0030】
崩壊助剤の粒径は、造粒物(A)を製造する際の造粒性、泡の微細化、発泡性、及び浴水中での溶解性の観点から、平均粒径が1μm〜100μmであるものを用いることが好ましく、特に押出し造粒にて造粒する場合には、平均粒径が3μm〜50μmであるものを用いることがより好ましく、平均粒径が5μm〜30μmであるものを用いることがさらに好ましい。上記に示す粒径よりも大きい場合には、好適な粒度になるまで事前に解砕することが好ましい。なお、崩壊助剤の平均粒径は実施例に記載の測定方法により決定される。
【0031】
造粒物(A)中の崩壊助剤の含有量は、溶解性の観点から、0.1質量%〜15量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0032】
造粒物(A)の嵩密度は、本発明の浴用剤組成物を浴水に投与した際に、微細な炭酸ガスの発泡性を確保する観点から、700g/L以下であり、400〜700g/Lが好ましく、450〜650g/Lがより好ましい。本発明の嵩密度は、後述する(A)成分の製造時に圧密しすぎないことで達成できると考えられる。なお、(A)成分の造粒物の嵩密度はJIS K 3362により規定された方法により決定される。
【0033】
さらに、造粒物(A)の平均粒径は、粉立ち、造粒物の溶解性及び沈降性の観点から、100〜1500μmが好ましく、400〜1200μmが好ましく、600〜900μmが好ましい。なお、造粒物(A)の平均粒径は実施例に記載の測定方法により決定される。
【0034】
本発明の浴用剤組成物中の造粒物(A)の含有量は、炭酸ガスの浴水への溶解量、炭酸ガス発生量及び微細な炭酸ガスの泡を得る点から、30〜80質量%が好ましく、さらに35〜75質量%、特に40〜70質量%が好ましい。
【0035】
本発明の粒状浴用剤組成物に含まれる成分(B)の炭酸塩としては、炭酸ジアルカリ金属塩である炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等;炭酸水素塩である炭酸水素ナトリウム等;二価以上の金属の炭酸塩である炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、微細な炭酸ガスの泡を発生させる点から、炭酸ジアルカリ金属塩を50〜100質量%含有するのが好ましく、さらに75〜100質量%含有するのが好ましく、またさらに80〜100質量%含有するのが好ましく、特に85〜100質量%含有するのが好ましい。炭酸ジアルカリ金属塩としては、炭酸ナトリウムが特に好ましく、炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。更に微細な炭酸ガスの泡を発生させる点から、炭酸水素塩を50質量以下%含有する炭酸塩が好ましい。さらに、成分(B)の炭酸塩中の炭酸水素塩の含有量は、より好ましくは0〜50質量%であり、さらに好ましくは0.01〜25質量%である。
【0036】
成分(B)の炭酸塩の平均粒径は、泡の微細化、泡の持続時間、沈降性等の点から、100〜750μmが好ましく、さらに200〜500μm、特に250〜400μmであるのが好ましい。なお、成分(B)の炭酸塩の平均粒径は実施例に記載の測定方法により決定される。
【0037】
本発明の粒状浴用剤組成物中の成分(B)である炭酸塩の含有量は、炭酸ガス発生量及び微細な炭酸ガスの泡を得る点から、20〜70質量%が好ましく、さらに25〜60質量%、特に30〜50質量%が好ましい。
【0038】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、通常浴用剤に用いられている成分を添加することができる。
【0039】
本発明の粒状浴用剤組成物では、成分(A)及び成分(B)がそれぞれ独立の粒子状態で存在するものである。ここで「独立の粒子状態で存在する」とは、それぞれ独立した別個の粒子状態の成分(A)及び成分(B)が混在した状態で存在することを意味するものであり、粒状浴用剤中では、成分(A)及び成分(B)が混在しており、一般的に粉状や顆粒状と呼ばれるものである。
【0040】
本発明の粒状浴用剤組成物は、通常の造粒手段、すなわち、成分(A)に用いる各成分を適宜混合した後に、押出造粒機や転動造粒機にて造粒することにより、造粒物(A)を製造し、さらに粒状の(B)炭酸塩及びその他の浴用剤組成物原料(C)を混合することにより製造できる。
【0041】
本発明の粒状浴用剤組成物は、その0.01質量%水溶液の25℃におけるpHが5〜7、特に5.5〜6.5であることが好ましい。pHが5〜7であれば、発生した炭酸ガスが浴水中に溶け込み易く、入浴後に優れた温まり感等をもたらす効果が高められるからである。
【0042】
本発明の粒状浴用剤組成物は、浴水中に溶解した際に微細な炭酸ガスの泡が大量に発生する。微細な泡の発生は、浴水180リットル中に40〜60gの本発明の入浴剤組成物を溶解した際に、発生した炭酸ガスの泡により、浴水が速やかに白濁することから確認できる。この微細発泡の程度は、後述する実施例に記載の方法で測定する。
【0043】
本発明の粒状浴用剤組成物は、浴水に溶解し、炭酸ガスの泡を発生させて使用する。特に、炭酸ガスの泡が生じているうちに入浴するのが好ましい。すなわち、成分(A)有機酸、水溶性バインダー及び4〜30質量%の非イオン界面活性剤を含む造粒物、並びに成分(B)炭酸塩を含有する粒状浴用剤組成物を浴水に投入して発泡を開始せしめ、発泡中又は発泡後浴水中に泡が残存している浴水に、身体の少なくとも一部を浸漬する方法であれば、本発明の効果が特に顕著に奏される。なお、本発明の浴用剤組成物は風呂等の全身浴はもちろん、足浴、腕浴等の部分浴としても使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
<粒径>
粒径については、以下の2つの方法により測定した。
(1)造粒物(A)及び炭酸塩の粒径は、JIS K 8801の標準篩(目開き2000〜125μm)を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる重量分率からメジアン径を算出した。
より詳細には、目開き125μm、180μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μm、1400μm、2000μmの9段の篩と受け皿を用いて、受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの粒子を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(HEIKO製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、5分間振動させたあと、それぞれの篩及び受け皿上に残留した該粒子の質量を測定し、各篩上の該粒子の質量割合(%)を算出した。
【0046】
(2)崩壊助剤の平均粒径測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用い、該粒子を溶解させない溶媒に分散させて測定したメジアン径を平均粒径とした。尚、実施例に用いたフマル酸及び崩壊助剤の平均粒径測定には、溶媒としてアセトンを用いた。
【0047】
<吸油能>
有機酸の吸油能測定は以下の方法で行った。吸収量測定器(あさひ総研製S410)に粉末を45g投入し、駆動羽根200rpmで回転させた。ここに油性成分及び非イオン界面活性剤を溶解した50℃混合液(花王(株)製エキセパールIPP 50質量%、花王(株)製エキセパールO−DM 15質量%、花王(株)製ルナックBA 5質量%、花王(株)製エマルゲン306P 10質量%、日光ケミカルズ(株)製ニッコールGO―440V 20質量%)を、液供給速度2mL/minで滴下し、最大トルクとなる点を見極めた。この最大トルクとなる点の70%のトルクとなる点での液添加量を粉末投入量で除算し、吸油能とした。
【0048】
[実施例1〜10、比較例1〜3]
表1〜2に示す成分(A)に用いる成分を混合後押出造粒機にて嵩密度(500g/L〜600g/L)、平均粒径(700〜900μm)の造粒物を造粒し、(B)成分、さらに他の成分を混合して、粒状発泡性浴用剤を製造した。得られた各浴用剤について、下記方法に従って評価を行った。なお、用いたフマル酸の吸油能は0.082mL/g、ブドウ糖の平均粒径は20μm、炭酸塩の平均粒径は290μmであった。結果を表1〜2に示す。
【0049】
《微細発泡の程度(濁度)》
浴槽に40℃180Lのお湯を入れ、浴用剤組成物を投入し、充分に攪拌して、直径5cmの円形の黒色ゴム板を浴水に沈め、肉眼で完全に見えなくなる深度をにごり度(濁度)とし測定した。深度の数値(cm)が小さいほど、より微細な泡が生じていることを示す。
【0050】
《入浴後の温まり度合い》
20〜40才の女性合計10名のパネラーにより評価した。浴槽に40℃180Lのお湯を入れ、浴用剤組成物を投入した後、速やかにパネラーを入浴させ、入浴直後の温まり感を下記の基準で評価し、10名の平均値を評価点とした。
5:温まる。
4:やや温まる。
3:さら湯と同等。
2:さら湯と比べてやや温まらない。
1:さら湯と比べて温まらない。
【0051】
《浴底溶け残り》
浴槽に40℃180Lのお湯を入れ、浴用剤組成物を投入して、充分に攪拌し、投入後から4分経過した時点での浴底の溶け残りを下記の基準で評価し、10名の平均値を評価点とした。
5:溶け残り多量に有り。
4:溶け残りが少々ありザラツキが気になる。
3:溶け残りが少々あるが気になる程ではない。
2:溶け残りがほとんど無い。
1:溶け残りが全く無い。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1〜2によれば、本発明の浴用剤組成物を用いれば、浴底での溶け残りもなく、微細な炭酸ガスの泡が大量に発生して、浴後の優れた温まり感を実感することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)並びに(B):
(A)有機酸、水溶性バインダー及び4〜30質量%の非イオン界面活性剤を含む造粒物、並びに
(B)炭酸塩
を含有する粒状浴用剤組成物。
【請求項2】
造粒物(A)が更に油性成分を含有し、或いは油性成分を含有せず、造粒物(A)中の非イオン界面活性剤の含有量と油性成分の含有量との比率(油性成分/非イオン界面活性剤)が、0〜4.0である請求項1に記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項3】
成分(A)中の非イオン界面活性剤が、少なくともHLB6〜20の非イオン界面活性剤を含む請求項1又は2に記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項4】
非イオン界面活性剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる請求項1〜3のいずれかに記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項5】
成分(A)中の有機酸が、フマル酸、コハク酸及び酒石酸から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の粒状浴用剤組成物。
【請求項6】
成分(B)が、炭酸ジアルカリ金属塩を50質量%〜100質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の粒状浴用剤組成物。

【公開番号】特開2012−131740(P2012−131740A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285331(P2010−285331)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】