説明

粒状薬剤製造法

【課題】有害ウイルス、有害菌類、有害虫類或いは有害鳥獣類を捕殺駆除出来る効果を持続できる粒状薬剤を提供し、従来撒布時に問題であった飛散等の公害を防止した粒状薬剤の提供。
【解決手段】天然ゼオライトなどの吸着材の空隙或いは表面に高濃度薬液(殺虫剤、殺菌剤、忌避剤、抗ウイルス剤)を浸透含浸付着せしめ、その表面を緩慢溶出可能な薬液(ビニルアルコールなど)を含む掩覆材で被覆し、水による薬液溶出スピードを調整し、且つ粘着性を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農畜産業等における有害ウイルス、有害菌類、害虫駆除或いは鳥獣類撃退等の効果を持続的に維持可能とする粒状薬剤の製造に関する。
【技術の背景】
【0002】
従来、農業畜産において有害ウイルス或いは有害菌類がその生産物に悪影響を及ぼす例は多々あり、その影響により生産性低下による食料生産効率低下と食料自給率向上推進の障害ともなっている。また鳥獣類も農産物に食害を与えその被害は甚大である。これらの例としては、農業における長期降雨による根腐れ病或いは馬鈴薯栽培で多発するそうか病があげられ、畜産業においては近年世界的に流行し大問題となっている口蹄疫ウイルス或いは鳥ウイルス等への持続的対策が必要とされている。また、害虫類駆除においては、農畜産業のみに関わらず建築物で散見されるシロアリ対策、公園砂場などでのエキノコックスや樹木、芝等に寄生する根きり虫等駆除が問題となるケースが極めて多い。以上これら有害物を総括して以下有害物という。これらの有害物対策として、液状、粉状、粒状の薬液を撒布して駆除効果を上げる方法が一般的であって、これらの薬剤は短期的駆除或いは予防対策として採用されることがほとんどであった。しかし、これらの方法は、屋外で使用されることが多く降雨に左右され短期間で効果減衰或いは飛散し、その目的とする有害物駆除効果が失効することが問題点であった。そのために、繰り返しの薬品散布が必要であり、実作業における人権費、薬剤消費量が莫大となり、有効な効果を継続的に発現するためには、きめ細かな撒布等の作業を繰り返し必要とするケースが一般的であった。本発明者は、これらの事実に鑑み、持続的効果を発揮できる薬剤であって、作業性に配慮した多用途に合わせた製品を提供することにより、これらの背景の問題を鋭意解決した。
さらに、薬剤散布においては、液状薬剤での撒布はその時の天候に左右される場合がほとんどであり、例えば雨天、強風等の天候下では薬液散布作業が出来ないことが多く、また、このような天候下では多大な薬液ロスが発生し飛散による公害問題も引き起こす危険性が高く、且つ薬液ロスによる金銭的負担も大きかった。また、薬剤に弱粘着性を保持せしめることにより有害物の移動を制限捕捉し、薬効雰囲気中に取り込んで死滅させる発想はなかった。これらの事実を勘案し、有害物を少ない薬液で効果的に死滅或いは駆除できる新規な撒布薬剤の提供が臨まれていた。
【非特許文献1】「日本獣医師会雑誌 55:575−579:2002年」
【非特許文献2】「多孔質吸着材ハンドブック:2005年:(株)フジ・テクノシステム」
【非特許文献3】[農業学事典:2001・3朝倉書房]
【非特許文献4】[植物病害虫の事典:2002朝倉書房]
【非特許文献5】[農業便覧:農漁村文化協会]
【非特許文献6】[日本農業害虫大事典:2002・5日本農村教育協会]
【非特許文献7】[天敵大辞典;1997創森社]
【非特許文献8】[吸着技術便覧1999エヌ・ティ・エヌ社]
【非特許文献9】[粘着技術ハンドブック1999日刊工業新聞]
【非特許文献10】[新訂紙パルプ事典:全国紙パルプ協会]
【非特許文献11】[炭・木酢液の利用事典:1996養賢堂]
【非特許文献12】[鳥獣の防ぎ方:2000家の光協会]
【非特許文献13】[]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、[技術の背景]にて提起した従来から行われてきた液状、粉状、粒状の薬剤を単に撒布して駆除効果を上げる方法の問題点を勘案し、新規な材料の提供により課題解決を図ることとした。
本発明者は、従来の農畜産業等での殺ウイルス或いは殺菌用薬品散布作業及びその効果について、屋外撒布作業において撒布中或いは直後に降雨となった場合、薬液流失の確率が極めて高く薬品効果を発揮できないことが極めて多い事実があり、撒布の再作業を行う必要が生じることが多発していると知見した。又、農業関係での土壌中有害虫駆除に於いても同様のことが発生し、又薬品の直接撒布は土壌吸収に限界があり降雨等での流失ロス率が高いことを知見し、その結果、薬品の効果を発揮するための使用量増加は、河川汚染問題や生態系への影響が多大であり、且つ、農畜産業での生産価格のコストダウンのためには、撒布作業工数を減ずる必要も急務であることも知見した。また、近年、農業における鳥獣被害も増加傾向にあり被害を最小限に食い止めるための忌避剤も開発されているが効果が持続的に継続できる薬剤が求められており、そのために本発明者は吸着付着可能な物質に効果の期待できる薬液(以下薬液という)を吸着せしめ、持続性効果のあるものを提供することを課題とした。これらの実情を鑑みて、本発明者は、上記のように各種用途に合わせて薬液を吸着できる物質(以下吸着材という)に吸着せしめ、さらに溶出遅延剤と一体化することにより作業性に配慮した、且つ目的に合わせて薬液がタイムリーに溶出するように加工した有害物質の死滅駆除効果を持続的に発揮できる粒状材料(以下粒剤という)を提供するための有効な製造方法開発を課題とした。
【発明が解決するための手段】

【発明の効果】
【0004】
本発明の効果は、以下の通りである。
本発明による請求項1について詳細を説明する。
請求項1は、粒剤を製造するに際し、吸着材(1)、薬液(2)、造粒材(3)を使用し、吸着材(1)に薬液(2)を強制含浸させ、その周囲を薬液保有の造粒材(3)をもって被覆する製造方法である。本方法は、吸着材(1)粒度によりその製造過程が多少異なるが、それらの例を製造工程図として[図1]に示した。その製造した粒剤(13)は、外的要因に影響されにくく、突如の豪雨や長期降雨などで流失しにくく、薬液を徐々に溶出し長期的に効果を発揮できることが肝要であり、薬液(2)を吸着材(1)内部へ強制的に且つ短時間で包含させ、その周囲を水分の存在で粘着性を発揮する造粒材(3)をもって吸着剤を掩覆して製造する。さらに、造粒材(3)について詳しく述べると、水の存在で徐々に溶出することが好ましいことはすでにのべた。当該本製造に適用できる造粒材(3)は、ポリビニール系、ポリ乳酸系、酸化澱粉系、或いは天然物である粘土、ガラマイトなどの溶解度を調節できるもので、且つ公害問題を起こさないものであることが好ましい。その理由は、有害物の死活は水分の存在で左右されることは周知ことであり、本発明での造粒材(3)は雨水等により溶出した粒剤成分が粘着性をもっており、有害物を捕捉し、薬液の流失、飛散防止効果を発揮せしめ、さらに粒剤が持つ粘着性をもって有害物を捕捉する効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明を実施するための最良の形態は次の通りである。
(1)本発明は、吸着材(1)に薬液(2)を吸着工程(6)にて吸収せしめ薬液(1)を吸収させた後に1以上の薬液含有物を薬液混合済み造粒材(3)にて掩覆するように造粒工程(12)で薬液含有物を包含せしめ造粒製造し、目的とする粒剤(13)を得ることを基本とする。
(2)本発明において吸着剤(1)を使用することはすでに述べた。使用可能な吸着剤(1)としては、天然ゼオライト、活性炭、炭化物、シリカゲル、セラミックハイドロキシルアバタイト、バイオマス系などのその内部に微細空隙をもつものが吸着剤例として挙げられるが水分吸着可能な材料ならば使用可能である。これらの吸着材(1)のそれぞれが有する微細空隙の大きさ、量は異なるが薬液含浸において内部空気部と薬液を置換させ保持せしめる本発明の目的で合致していれば使用できる。
(3)次に薬液については、使用する対象物により異なるのでここでは詳細説明はしないが、例えば塩素化合物、ヨウド系化合物、木酢液、その他有機化学系薬液など液状或いは水相溶性のあるもの使用可能である。特に配慮しなければならないのは、生態系への影響、環境汚染への配慮、価格面である。この点に配慮して有害物対象により有効な薬液を選択しなければならない。鳥獣類忌避剤についても同様である。
(4)造粒材(3)は、粒剤が有害物排除を効果的に行うために重要であり、複数の薬液(2)を同時に保有せしめることが可能であり、水により時間経過とともに徐々に溶解し薬液を放出するもの、安価なものであれば本発明の目的に合致している。例としては、ポリビニールアルコール系、ポリ乳酸系、酸化澱粉系などが例として挙げられる。
(5)次に製造形態について詳しく説明する。吸着材(1)が保有する空隙部(14)に薬液(2)含浸の吸着工程(6)は、低温でも可能であるが吸着材(1)を50℃以上に加熱し、薬液に浸漬後減圧することにより空隙内の空気と薬液を置換せしめる方法が最も短時間で工程を終了できる。特に、薬液(2)が粘性のある場合には薬液粘性を低減化できるので効果がある。本方法は大量の薬液(2)を保持させ最終的に粒材(製品)(13)効果持続性を持たせる方法である。天然ゼオライトを例とすれば、天然ゼオライト試料1000gに対し薬液(2)100g以上の空隙部(14)内置換が可能であることを知見している。吸着工程終了後、余分な薬液を自然滴下法により滴下しなくなるまで除去する。この工程まで終了したものを別途製造した薬液(2)を含むゲル化材をもって中間物製造工程(10)にて被覆し、次いで、その表面を掩覆材(11)にて掩覆し、さらに必要に応じて乾燥して粒剤(製品)(13)とする。
(6)造粒工程は、中間物の表面に掩覆材(11)を皮膜状に塗布掩覆し、二重構造の粒体とする方法である。その構成を[図2]に示した。その皮膜厚みは、1ミクロン以上あればよく、使用目的によって皮膜厚みを変えて製造する。即ち、本発明による粒剤(製品)(13)の皮膜厚みは特に制約される範囲外の事項である。
(7)次に吸着材(1)が微小粒状或いは粉状の場合には、吸着工程を経た微小粒状吸着材(1)を造粒材(3)をもって好ましくは1mm以上の小径1次造粒物として製造し、その後さらに造粒材(3)によりさらに大きな径の造粒物を製造することも可能である。この場合には造粒材(3)として粘土等の天然粘性を発現するもの、澱粉系のものなどを多用するとコスト面でも有効である。
(8)(4)に述べたように、当該製造法にて製造した粒剤(13)は、徐々に土中の水分或いは雨によりから微少の粘着性薬液を溶出し、急激な溶出、環境内での滞留、乾燥時の非溶出を繰り返し、必要なときだけ溶出し、その溶出物に粘性があるが故に土中に滞留しやすくより有害物除去に効果も大きい。
(9)このようにして製造した製品は、造粒物撒布方式で殺菌・殺ウイルス或いはそれらの事前防除対象物、地域、場所に撒布することで効果を上げることが出来る。
【実施例1】
【0006】
以下当該発明の粒剤に関する製造技術実施例を説明する。
先ず、使用する吸着材(1)としては、粒径3〜5mmの天然ゼオライト(北海道ゼオライト(株)製)であって[図2]のごとく内部に無数の微細空隙部(14)を有するものを使用した。当該天然ゼオライトは、原石を北海道仁木町で採掘し北海道ゼオライト(株)の焼成用キルン内にて400〜450℃で焼成し、内部空隙部(14)の水分子を飛散させたものである。本品はイオン交換機能を有し、イオン交換により土中などの有益成分或いは余剰無機質を交換し活性水素を放出できる機能も合わせ持つものである。焼成した天然ゼオライトの空隙部(14)の水置換量は、表面付着水も含めての同時測定では、対天然ゼオライト100gに対し水18グラムであった。ゼオライトの空隙部(14)に浸透し内部の空気と置換した水量はゼオライト100gに対し11gであることが想定できる。即ち、大量の水を保有できる吸着材であり同量の薬液と置換可能であることを証明している。また、本発明者が天然ゼオライトを吸着材(1)として採用した別の理由は、天然物であり本目的である薬液長期放出達成後に当該天然ゼオライトがイオン交換機能を有することから肥料成分など有益成分が雨などでの流失防止効果を期待できる土壌改良剤として認められているからである。
次に、最終製品である粒剤(13)は薬液保持量が多いことが望ましいことから、薬液を含んだゲル状物をもって中間物製造工程(10)材料2の表面を掩覆するように塗布する。ゲル化剤としては動物性たんぱく質からなるゼラチン、海草成分である寒天、植物性ペクチンなどがあるが、好ましくはゲル化物の強度が必要なことから本実施例ではゼラチンを採用した。ゼラチンは食品添加物でもあり分解により有害物質を出すこともなく酸性、アルカリ性に関わらず固化できることが可能であり、薬液(2)は直接混和するか、油成分ではエマルジョン化剤、例えば界面活性剤によりエマルジョン化し、その後に混合するかすることにより容易にゲル化可能な液状混和物が出来る。
次に、最終被覆に関わる掩覆材(11)としては、植物或いは動物に悪影響がなく、且つ水溶解度の調節が容易な低分子ポリビニールアルコール製品(デンカ(株)製品)であって、100℃以下で化学的に安定なもの使用した。
次に、薬液(12)としては、本実施例においては口蹄疫ウイルス駆除用粒剤製造を対象としたテーマを選択したことから、口蹄疫ウイルスが酸性雰囲気に弱く、pH6以下の領域で死滅することがわかっており、因みにアルカリ側では、pH13以上の雰囲気が必要あることがわかっていることを参考にした。ただ、極めて伝染力が強く常にウイルス撲滅の環境を保持していることが課題である。即ち、本発明のように長期間効果を発揮できる薬剤が望まれていた。これらのことを勘案し、その薬液としては、薬液(2)として木炭製造に際して生ずる燻煙から抽出した50%木酢水液(以下薬液Aという)を採用した。この原液はpH3であり極めて強い酸性を有し、粘度は略水に近い特性を持ち口蹄疫ウイルス駆除には適していることが証明されている。しかし、これまでは薬液Aが液状であるために使用する場合には従来どおり噴霧による撤布方式しかなかった。
本発明者は、以上の材料を新規な製造技術により製品として供した。以下その製造技術を説明する。[図1]は製造に関する手順を示しており、[図2]は製造工程での製品製造までの材料の変化構成を示している。
先ず、天然ゼオライト5mm品10kgを減圧容器に入れその上から薬液A(18)を液面が天然ゼオライト面を越えるように充填し50℃に加熱し、昇温後軽く減圧する。減圧の程度は吸着材(1)の径により判断し、その際に天然ゼオライト表面から大量の気泡が発生することにより天然ゼオライト内部の空隙部(14)空気が薬液Aと置換されてゆくことが判明した。その量は約5kgに達し、50℃に温度を上げることにより天然ゼオライト内部の空気が膨張し薬液Aと置換し易くなり短時間での処理が可能となる。気泡の発生がなくなった状態で置換終了の判断が出来る。このようにして薬液含有粒材を製造した。
次に、中間物製造工程について詳細に述べる。上記薬液を含んだ天然ゼオライトをさらに表面を薬液含有ゲル化可能物にて掩覆することにより得る。薬液含有ゲル化可能物は、薬液Aにゼラチンを溶解し製造した。濃度50%の木酢水溶液である薬液Aを70℃に加温し、次いでゼラチン粉末を少量ずつ攪拌しながら加え液状化し、全体が透明になった段階でとめて液状薬液含有ゲル化可能物を製造した。次いで薬液A含浸後の天然ゼオライトを投入し、表面が薬液含有ゲル化可能物で掩覆されるように塗布し、冷却放置後ゲル化固化させる。この作業において冷却放置前に表面に微細粉末を付着させるとさらに粒体相互の接合を避けることが出来る。微細粉末としては、炭酸カルシユウウム、タルク、ガラマイトなど天然鉱物系のものが好ましい。
液温25℃の濃度50%の木酢水液100ccに粉末ゼラチン5gを少量ずつ投入分散後温度50℃迄昇温して完全に溶解せしめたてから薬液Aを含んだ天然ゼオライトを投入混合後、直ちに粒状中間物製造工程により中間物を製造する。中間物製造は、ドラム回転式装置に微細粉上にゲル化前の中間物を一定間隔、一定量を落下せしめ、その後急速冷却することで製造する。ゼラチンがドラム回転式装置上で回転しながら固化し、冷却とともに全く常温で粘性のない中間物ができる。この中間物は、このままでも使用できるが、緩溶出を目的として表面を造粒材(3)にて掩覆し表皮を形成することが好ましい。造粒材(3)はデンカ(株)製ポリビニールアルコールを使用した。
次にポリビニールアルコールは水との相溶性に優れており、その固化物は水を媒介して徐々に溶解する事は周知のことである。
次に、ポリビニールアルコール1000gを水を500ccに溶解し、完全に溶解してポリビニール溶液を作成した。その後中間物を造粒機に投入し、前記ポリビニールアルコール溶液を滴下しながら表皮を形成し、その後乾燥して粒材(13)を製造した。本発明での木酢液溶出度合いは、表皮を形成するポリビニールアルコールの水に対する溶解度及びけん化度により調整が可能であり、本実施例では、銘柄B−17(けん化度88、平均重合度1700)を使用した。本発明による粒剤(13)の実用に関し、水による経時間溶出による水のpH変化を測定した。その結果、口蹄疫ウイルス殺撲滅効果の領域を持続できることが明確となった。その結果を表1に示した。
【表1】

以下、参考として、薬液の水溶出試験方法を下記に示す。
本件に関しては、特にJISに規定された試験方法がないので、使用現場に則した方法を採用した。
1000gの薬品含有粒剤(製品)を下部に細孔を配置した容器に充填し、その上部から50cc/分のスピードで20℃の水を水滴状にして撒布した。この操作を5分間継続し、底部に溜まった薬液量を含む水の水素イオン濃度を測定した。
さらに、24時間放置した後、同一条件を以って同様の試験を継続した。
結果を表1に示した。その結果、口蹄疫ウイルス殺撲滅効果を発揮できる水素イオン濃度の酸性側上限がpH6とすれば、30日以上の効果を示した。
【実施例2】
【0007】
粒状鳥獣類用忌避剤の製造について[実施例2]として記載する。
実施例1に述べたような製造法により忌避粒剤とするか忌避剤を内部に秘めた疑似餌を製造し、それを撒布し鳥獣が食し胃内部で溶出することにより効果を発揮するようにした方法であって、食した鳥獣は忌避材効果でその後その地域に出没しない方法である。有害鳥獣が撒布現場に近寄らなくなる学習能力を利用して効果を発揮する方法である。本疑似餌は殺害を目的とするものではなく飽くまでも人間にとり有害と思われる鳥獣を排除する目的である。当該忌避剤は上記の目的をもって製造した。
次に本実施例は環境問題となっている「カラス」を対象とした忌避剤の製造についてとして説明する。カラスがいやがる忌避剤としては、エチル化ルビトール[ペンタン−1,2ジカルボン酸ビス]を採用した。この忌避剤を実施例1同様に吸着材(1)に吸着させる。吸着材(1)としては、無害物質である天然ゼオライト(北海道ゼオライト製)2mm品を使用した。第一の作業として忌避剤xxxを十分に材料1に含浸させる。次いで、別途ゼラチン500gを2000ccの温水に溶解した後、その溶液にカラスが好む乾燥肉粉末200gを混合分散し、次いで、このゼラチン溶液をもって前記忌避剤を含んだ天然ゼオライトを掩覆した後冷却し流動性をなくし全体を固化体とした。この芯部に忌避剤を含んだ、且つ表面をカラスが好む肉粉末入ゼラチンで掩覆した中間物をそのまま製品とするか、さらに肉粉末を混入した70℃ポリビニールアルコール掩覆剤溶液をもって掩覆し冷却固化し、これにより表面のべたつき或いはゼラチンの強度不足をカバーしたものの2種類とした。カラスがこの粒剤を食することは実証されており、食した後にカラスの胃内部で容易にポリビニールアルコール皮膜、ゼラチン層が溶解し天然ゼオライトに含まれた忌避剤が溶出する。このようにして製造した忌避剤はカラスの学習能力から肉粉末相当品の他の材料とすることも可能であり効果が期待できる。忌避材の形状、色彩等についての規定はなく、時折交換する方法も長期的対策として必要である。同様に、はと、鹿、あらい熊、猪など被害を受ける場合の忌避材として同様の方法で製造した製品を提供できる。
【実施例3】
【0008】
土中に生息する害虫は多種多様であり、その種類は限りがないほど多い。本実施例では、植物の根に食害を与える土中に生息する幼虫類の駆除剤についての実施例を記載する。
本実施例としての駆除剤の対象は、コガネムシの幼虫で根きり虫といわれ植物生育或いは果実生育上大きな被害を与えることが極めて多い害虫である。農業生産者にとり被害を最小限にとどめることは至難の業であることは周知のことであり、特に、薬液撒布は、開花、結実、収穫における薬害問題があり、減農薬が求められる昨今では極力薬液使用量を制限せざるを得ないのが実情である。無農薬、減農薬の傾向からも薬液飛散、流亡は環境汚染としての問題であった。
本発明者は、当該発明に従い、チャバネコガネムシの幼虫である根きり虫を駆除できる粒状除虫剤を提供し効果を確認した。チャバネコガネムシの仲間は多く、これらコガネムシは成虫、幼虫ともに害虫であり、植栽した野菜、芝、樹木などが毎年大きな被害を受けていることを勘案し本駆除剤の提供をした。チャバネコガネムシ幼虫は、イチイ、ハスカップなどの根部近辺に生息し根を切り養分を奪う害虫である。チャバネコガネムシが寄生した木は根を切られ養分を奪われ生育不全、結実不良、枯死などの現象をし、特に結実不良は収穫に多大の被害を与えることから問題であった。この幼虫は土中を生息範囲としておりこれまでは主として液状薬液を定期的に撒布する方法が採用されてきた。しかし、天候に左右されることが多く、特に雨天での薬液流亡が問題となっていた。その対策として溶出する粒状除虫剤の製造及び提供する判断をした。その製造方法について以下記載する。
殺虫剤オルトラン希釈液1000ccを容器にとりその中に5mm径の天然ゼオライト5000gを投入した。天然ゼオライトは保有する空隙部内のネットにより除去し殺虫剤を含んだ材料1が得られた。次いで、ゼラチン100gを50℃殺虫剤オルトラン希釈液1000ccに溶解し、この薬液含有ゼオライトを50℃殺虫剤オルトラン希釈液に浸漬後余分な液を除いてから冷却する。この際急速冷却が好ましく10℃以下の温度が好ましい。このようにして製造した中間物表面は強度が不足していることから、実施例1、2同様にポリビニールアルコール溶液を塗布し皮膜を形成して製品とした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】粒剤製造工程図
【図2】粒剤製造変化図
【符号の説明】
【0009】
1 吸着材
2 薬液
3 造粒材
4 昇温
5 減圧
6 吸着工程
7 常温・常圧化
8 余剰薬液除去工程
9 溶解混合工程
10 中間物製造工程
11 掩覆材
12 造粒工程
13 粒剤(製品)
14 空隙部
15 薬液充填空隙部
16 薬液含有ゲル化部
17 掩覆材部
18 50%木酢液(薬液A)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材の空隙或いは表面に高濃度薬液を浸透含浸付着せしめ、その表面を緩慢溶出可能な薬液を含む掩覆材で被覆し、水による薬液溶出スピードを調整し、且つ粘着性を付与したことにより有害ウイルス、有害菌類、有害虫類を捕殺し、さらに有害鳥獣類の忌避効果を発揮する粒状薬剤製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−25725(P2012−25725A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180587(P2010−180587)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.オルトラン
【出願人】(596147563)
【出願人】(510220356)
【Fターム(参考)】