説明

粗悪な酸含有原油用変換触媒、当該触媒の製造方法及び当該触媒の利用

本発明は、粗悪な酸含有原油を変換する触媒に関する。当該触媒は、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%のメソポア材料と、1〜60重量%のモレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜70重量%のクレーとを含む。上記メソポア材料は、アルカリ土類酸化物、シリカ及びアルミナを含み、酸化物の重量パーセントに基づいた、無水の化学式(0〜0.3)NaO・(1〜50)MO・(6〜58)Al・(40〜92)SiOで表されるアモルファス材料であり、Mは、Mg、Ca及びBaから選択される1以上である。上記メソポア材料は、比表面積が200〜400m/gであり、細孔容積が0.5〜2.0ml/gであり、平均細孔直径が8〜20nmであり、最確細孔サイズが5〜15nmである。本発明において規定される上記触媒は、全酸価が0.5mgKOH/gより高い原油の触媒的変換、並びに原油中の有機酸、残留炭素及び金属類の除去に適しており、非常に有益な経済的利益を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油を変換するための触媒材料、及び当該触媒材料の製造方法、並びに、粗悪な酸含有原油の触媒的変換における、その触媒材料から作製された触媒の利用に関する。より具体的には、本発明は、水素不在で、粗悪な酸含有原油を触媒的に変換するための触媒材料及び当該触媒材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油に対する必要性の増加に伴い、原油は持続的に探索されており、軽質原油の供給源は、徐々に減少し、重く且つ粗悪な酸含有原油の割合が増加している。世界の原油の質は、一般に、重く、粗悪になる傾向にあり、硫黄含有量が高く、全酸価が高く、金属含有量が高く、残留炭素が多い原油の産出量が急速に増加している。粗悪な酸含有原油の世界産出量は、2010年に、現在の16%から20%へ増加すると予測されている。このような背景から、粗悪な酸含有原油を接触分解装置によって処理することは、我々が対応しなければならない問題である。
【0003】
粗悪な酸含有原油は、水素含有量が低く、Ni、V等の金属含有量が高く、縮合芳香族化合物の含有量が高く、S及びNの含有量が高く、高密度で、コンラドソン炭素数が高いため、当該原油をクラッキングすることは困難である。上記粗悪な酸含有原油をクラッキングすることが困難であるため、このような原油を処理するための接触分解装置は、大量のスラリーの放出を強いられ、その結果、液体生成物(液化ガス、ガソリン、ディーゼル油)の全収率は減少する。Ni及びV含有量が高くなると、生成物における水素含有量は大きく増加し、当該触媒を大きく破壊させる。
【0004】
上記触媒活性のバランスを維持するため、上記触媒の単位消費量は確実に増加する。その上、金属不活性化剤の付加も、上記望ましい効果の達成を困難にする。よって、このような粗悪な酸含有原油は、当該原油の水素/炭素比を増加させ、金属含有量及びコンラドソン炭素数を減少させるために、処理前に性能を高める若しくは前処理をすることが望ましい。
【0005】
原油の上記性質を改善し、コンラドソン炭素数及び金属含有量を減少させることを目的として、非触媒的前処理プロセスは、高いコンラドソン炭素数及び金属含有量を有する原油を、流動接触分解装置における脱金属及び脱炭素領域の中へ導入し、不活性の流動可能な固体粒子と接触させる工程を含む。少なくとも480℃で2秒未満の接触時間の条件において、上記原油の高沸点成分及び金属類は、不活性の流動可能な固体粒子上に堆積する。これら粒子は、燃焼領域の中へ再循環させられ、可燃堆積物は除去される。可燃堆積物が焼き払われる不活性粒子は、脱金属及び脱炭素領域の中へ再循環させ、原油と再度接触させる。上記プロセスで処理された上記原油は、FCCの原料油として使用することができる。
【0006】
最近、粗悪な酸含有原油の上記プロセスは、徐々に注目が高まっている。世界市場における高酸性原油の量は、徐々に増加している。2005年において、高酸性原油の世界生産量は、原油の全生産量の5.5%を占めた。原油における酸性物質は、無機酸、フェノール、メルカプタン、脂肪族カルボン酸、ナフテン酸等である。ナフテン酸は、原料酸化物における最重要の酸性酸化物であり、酸性酸化物の約90重量%を占める。調査によれば、0.5mgKOH/gの全酸価を有する原油は、精製設備に対して重大な腐食作用をもたらすことが示されている。よって、0.5mgKOH/gより高い全酸価を有する原油は、高酸価原油と呼ばれる。原油の処理の間、原油中のナフテン酸は鉄と直接反応し、それによって、煙管、熱交換器及び他の精製設備の腐食をもたらす。加えて、ナフテン酸は、ペトロラタム設備上の保護膜FeSと反応し、当該金属設備において新しい表面を露出させ、新しく腐食させ得る。ガソリン、ディーゼル油及び灯油等の通常の石油製品に対して、それらの品質指数における上記酸価が常に要求される。高過ぎる酸価は、最終顧客に対しても、同様の腐食問題をもたらすであろう。
【0007】
上記資料及び特許において導入されたプロセスは、物理的吸着プロセス、熱処理、熱クラッキングプロセス、及び触媒的水素化プロセスを更に含む。しかしながら、これらのプロセスは、実際の利用には適用されていない。
【0008】
物理的吸着プロセス、即ち、吸着材の存在下、酸含有原油若しくはその留分を、250〜350℃において熱処理し、原油における酸含有化合物を吸着させ、移動させる。ここで、上記吸着材は、不要な、接触分解触媒とすることができる。代わりに、アルカリ土類金属炭酸塩及びアルカリ土類金属硫化物の沈殿を生成させるため、原油とアルカリ土類金属酸化物の混合物を100℃〜300℃に加熱して、当該アルカリ土類金属酸化物を、原油中の有機酸若しくは硫化物と反応させる。分離後、ナフテン酸及び硫化物が除去された原油が得られる。
【0009】
触媒的水素化プロセス、即ち、ナフテン酸をCO、CO、HO、低分子量の石油炭化水素に分解し、原油の全酸価を2.6mgKOH/gから0.15mgKOH/gへと減少させるため、2〜3MPaの水素分圧、反応温度が250℃の条件下で、酸含有原油を、担体がアルミナである、Ni−Mo若しくはNi−Co水素化精製触媒を使用することによって水素化処理する。触媒的水素化プロセスは、より優れた脱酸効果を有するが、高圧及び高温に耐久性のある装置と水素ガスが必要である。よって、上記装置は、装置及び技術に関する大規模な投資を要求する。水素ガス不存在下において、高酸価原油は、原油の当該全酸価を4.0mgKOH/gから1.8mgKOH/gへと減少させるため、285〜345℃で、Ni−Mo若しくはNi−CO水素化精製触媒で処理することができる。
【0010】
熱処理及び熱クラッキング処理(触媒的熱的クラッキングを含む)として、例えば、米国特許第5891325号には、多段熱反応によって原油の全酸価を減少させるプロセスが開示されている。上記プロセスにおける熱反応は、複数の段階を含み、熱反応の各段階では、特定の温度及び圧力において、一部の石油酸を分解し、揮発性の有機酸、石油炭化水素及び不揮発性の石油炭化水素を生成させる。上記反応が実行される一方で、上記プロセスは、不活性ガスで上記反応系を掃除させ、揮発性成分を集め、有機酸のほとんどを、CaO、Ca(OH)、CaCO、MgO等のIIA 族金属の塩基性塩で中和して、揮発性石油炭化水素を生成することを更に含む。そして、上記揮発性石油炭化水素及び不揮発性石油炭化水素は、互いに混合され、石油酸が除去された原油が得られる。
【0011】
中国特許出願公開第1827744号明細書には、全酸価が高い原油の処理方法が開示されている。当該方法は、上記前処理後の全酸価が0.5mgKOH/gより高い原油を予備加熱する工程と、流動接触分解装置の中へそれを注入して触媒と接触させる工程と、接触分解反応条件下で反応させ、上記原油中のナフテン酸を炭化水素及びCOへクラッキングさせる工程と、反応後の石油ガスと上記触媒とを分離する工程とを含む。ここで、当該石油ガスは、次の分離システムへ供給され、一方、反応した触媒は、ストリッピング及び再生後、循環的に使用することができる。
【0012】
今のところ、粗悪な酸含有原油は、通常、酸度が低い原油と混合することによって処理される。通常、混合した上記原油の全酸価は、酸含有原油の混合比がある範囲に限定されるように、0.5mgKOH/g以下であることが要求される。より高い、酸含有原油の全酸価、密度及び残留炭素は、その処理をより困難にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5891325号
【特許文献2】中国特許出願公開第1827744号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、粗悪な酸含有原油、特に、全酸価が0.5mgKOH/gより高い原油を、高付加価値のある製品を生産するために、直接接触分解することができる触媒、当該触媒の製造方法、及び当該触媒を使用することによって当該原油を変換する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明における、粗悪な酸含有原油を変換するための上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%のメソポア材料と、1〜60重量%のモレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜70重量%のクレーとを含む。
【0016】
好ましくは、上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、5〜40重量%のメソポア材料と、10〜50重量%のモレキュラーシーブと、10〜70重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜60重量%のクレーとを含む。より好ましくは、上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、10〜40重量%のメソポア材料と、20〜40重量%のモレキュラーシーブとを含む。
【0017】
本発明に用いられる上記触媒は、上記メソポア材料を含み、当該メソポア材料は、アルカリ土類酸化物、シリカ及びアルミナを含むアモルファス材料であり、且つ当該酸化物の重量%に基づいた、(0〜0.3)NaO・(1〜50)MO・(6〜58)Al・(40〜92)SiOの無水の化学式で示される。
【0018】
好ましくは、上記メソポア材料は、上記酸化物の重量%に基づいた、(0〜0.2)NaO・(2〜30)MO・(6〜35)Al・(60〜92)SiOの無水の化学式で示される。Mは、Mg、Ca及びBaから選択される1以上であり、好ましくはMg及び/又はCaである。上記メソポア材料は、200〜400m/gの比表面積、0.5〜2.0ml/g(好ましくは1.0〜2.0ml/g)の細孔容積、8〜20nm(好ましくは10〜20nm)の細孔直径、及び5〜15nm(好ましくは10〜15nm)の最確細孔サイズ(most probable pore size) を有する。
【0019】
好ましくは、無水形の上記メソポア材料は、酸化物の重量%に基づいて、0.1〜0.2重量%のNaOと、60〜85重量%のSiOと、6〜20重量%のAlとを含む。好ましくは、無水形の上記メソポア材料は、酸化物の重量%に基づいて、5〜30重量%のMOを含む。
【0020】
上記モレキュラーシーブは、ホージャサイト、βゼオライト、MFI構造を有するモレキュラーシーブ、及びモルデナイトからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。上記耐熱性無機酸化物は、アルミナ、シリカ及びアモルファスシリカ−アルミナからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。上記クレーは、カオリン、ハロサイト、モンモリロナイト、珪藻岩、エンデライト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト及びベントナイトからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0021】
本発明で規定される上記メソポア材料の製造方法は、室温から85℃の温度範囲で、アルミニウム源、シリカ源及びアルカリ土類溶液を中和してゲルを形成する工程と、酸又はアルカリを用いて当該ゲルの最終的なpHを7〜9に調整する工程と、室温から90℃の温度範囲で1〜10時間熟成を行う工程と、生じた固形沈殿のアンモニウム交換によって不純物イオンを除去して、アンモニウム交換したゲルを得る工程とを含む方法、又は更に乾燥工程及び焼成工程を行う方法である。
【0022】
本発明で規定される上記メソポア材料の製造方法において、上記アルミニウム源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上である。上記シリカ源は、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルケイ素及びシリカからなる群から選択される1種以上である。上記酸は、硫酸、塩酸及び硝酸からなる群から選択される1種以上である。上記アルカリは、アンモニア水、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される1種以上である。
【0023】
本発明で規定される上記触媒の製造方法は、耐熱性無機酸化物及び/又はそれらの前駆体及び水の全て若しくは一部を混合及びスラリー化する工程と、クレーを添加若しくは添加しない工程と、上記メソポア材料を加える工程と、上記モレキュラーシーブを加える工程と、得られたスラリーを乾燥する工程と焼成する工程とを含む。
【0024】
ここで、上記メソポア材料を添加する前に酸を加え、上記クレー添加の前若しくは後に、上記スラリーのpHを1〜5に調整し、当該スラリーを、30〜90℃の温度で0.1〜10時間熟成し、熟成工程後、残りの耐熱性無機酸化物及び/又はそれらの前駆体を加える。上記メソポア材料は、上述した、アルカリ土類酸化物、シリカ及びアルミナを含むアモルファス材料であり、ここで、それぞれの成分は、上記メソポア材料で前述したような任意の含有量を有する。
【0025】
それぞれの成分の上記量によって、最終的な触媒は、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%のメソポア材料と、1〜60重量%のモレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜70重量%のクレーとを含む。好ましくは、上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、5〜40重量%のメソポア材料と、10〜50重量%のモレキュラーシーブと、10〜70重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜60重量%のクレーとを含む。より好ましくは、上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、10〜40重量%のメソポア材料と、20〜40重量%のモレキュラーシーブとを含む。
【0026】
上記触媒及びその製造方法の有益な効果は、以下のように示される。
【0027】
本発明で規定される上記触媒は、アルカリ土類酸化物、シリカ及びアルミナを含み、且つ200〜400m/gの比表面積と、0.5〜2.0ml/gの細孔容積と、8〜20nmの平均細孔直径を有するメソポア材料を含む。アルカリ土類酸化物が存在することによって、粗悪な酸含有原油における有機酸の触媒的分解を促進する上で有利となる。一方、高い比表面積、大きい細孔容積及びメソポア直径は、粗悪な酸含有原油における、重金属キレート錯体及び樹脂の浸入及び吸着、並びに重金属及びコークスの堆積によって生じる、上記触媒活性中心における失活の減少において有利である。よって、本発明で規定される上記触媒は、粗悪な酸含有原油を接触分解して高付加価値のある製品を生産することに直接使用することができる。同時に、ガソリン、ディーゼル油等のような反応生成物の酸価若しくは酸性度は、高い酸価若しくは酸性度に起因した、当該生成物の精製をしなくても製品要件を満足する。
【0028】
本発明において規定される、粗悪な酸含有原油を触媒的に変換するための上記方法は、上記原油を前処理及び予熱する工程と、流動接触分解装置の中へ導入する工程と、上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させる工程と、反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離する工程とを含む方法である。ここで、上記反応したガス及びオイルは、次の分離システムの中へ供給する。そして、上記触媒は、ストリッピング及び再生後に再利用する。上記触媒の成分及びその含有量は、上述した通りである。上記メソポア材料は、アルカリ土類金属酸化物、シリカ及びアルミナを含むアモルファス材料であり、それぞれの成分の含有量は、メソポア材料で上述したような任意の値である。
【0029】
本発明において規定される、原油の触媒的変換方法の有益な効果は、以下に示される。
【0030】
本発明において規定される上記方法で使用される上記触媒は、アルカリ土類酸化物、シリカ及びアルミナを含み、且つ200〜400m/gの比表面積と、0.5〜2.0ml/gの細孔容積と、8〜20nmの平均細孔直径を有するメソポア材料を含む。アルカリ土類酸化物が存在することによって、粗悪な酸含有原油における有機酸の触媒的分解を促進する上で有利となる。一方、高い比表面積、大きい細孔容積及びメソポア直径は、粗悪な酸含有原油における、重金属キレート錯体及び樹脂の浸入及び吸着、並びに重金属及びコークスの堆積によって生じる、上記触媒活性中心における失活の減少において有利である。よって、本発明で規定される上記方法は、粗悪な酸含有原油を接触分解して高付加価値のある、きれいなガソリン及び軽質オレフィン製品を生産することに直接使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明において規定される上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%のメソポア材料と、1〜60重量%のモレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜70重量%のクレーを含む。好ましくは、上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、5〜40重量%のメソポア材料と、10〜50重量%のモレキュラーシーブと、10〜70重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜60重量%のクレーとを含む。より好ましくは、上記触媒は、当該触媒の全量に基づいて、10〜40重量%のメソポア材料と、20〜40重量%のモレキュラーシーブとを含む。
【0032】
上記メソポア材料は、アルカリ土類金属酸化物、シリカ及びアルミナを含み、且つ当該酸化物の重量%に基づいた、(0〜0.3)NaO・(1〜50)MO・(6〜58)Al・(40〜92)SiO、好ましくは(0〜0.2)NaO・(2〜30)MO・(6〜35)Al・(60〜92)SiOの無水の化学式で示されるアモルファス材料である。好ましくは、上記無水のメソポア材料は、上記酸化物の重量%に基づいて、0.1〜0.2重量%のNaOと、60〜85重量%のSiOと、6〜20重量%のAlとを含む。好ましくは、上記無水のメソポア材料は、上記酸化物の重量%に基づいて、5〜30重量%のMOを含む。
【0033】
上記アルカリ土類金属Mは、Mg、Ca及びBaから選択される1以上であり、好ましくはMg及び/又はCaである。
【0034】
本発明において規定される上記触媒では、上記モレキュラーシーブは、ホージャサイト、βゼオライト、MFI構造を有するモレキュラーシーブ、及びモルデナイトからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物のような、クラッキング触媒の活性成分として通常用いられる、マクロポアモレキュラーシーブ及びメソポアモレキュラーシーブからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0035】
上記ホージャサイトは、HY、REY、REHY、USY、REUSY、DASY、DOSY及びREDASYからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であり、REY、REHY、REUSY、REDASY、及びDOSYの希土類元素の(REに基づいた)含有量は、0.5〜20重量%である。
【0036】
更には、上記ホージャサイトは、Ba、Ca、Fe、Mg、P、Sr、Sn、Sb、Ti、Zn及びZrからなる群から選択される1以上の元素で修飾された、HY、REY、REHY、USY、REUSY、DASY、DOSY及びREDASYからなる群から選択された1種又は2種以上の混合物である。ここで、REY、REHY、REUSY、REDASY及びDOSYの希土類元素の(REに基づいた)含有量は、0.5〜20重量%である。
【0037】
MFI構造を有する上記モレキュラーシーブは、ZSM−5及びZRPシリーズのモレキュラーシーブからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0038】
更には、MFI構造を有する上記モレキュラーシーブは、RE、P、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Mn、Ga及びSnからなる群から選択される1以上の元素で修飾された、ZSM−5及びZRPシリーズのモレキュラーシーブからなる群から選択された1種又は2種以上の混合物である。
【0039】
上記βゼオライトは、RE、P、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、Zn及びSnからなる群から選択された1以上の元素で修飾されたβゼオライトである。
【0040】
本発明において規定される上記触媒では、上記耐熱性無機酸化物は、アルミナ、シリカ及びアモルファスのシリカ−アルミナからなる群から選択される1以上のような、クラッキング触媒におけるマトリックス及びバインダー成分としての1以上の耐熱性無機酸化物である。これらの耐熱性無機酸化物は、当業者においてよく知られている。
【0041】
上記クレーは、カオリン、ハロサイト、モンモリロナイト、珪藻岩、エンデライト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト及びベントナイトのような、クラッキング触媒の活性成分としてのクレーから選択される1種又は2種以上の混合物であり、好ましくは、カオリン、ハロサイト及びモンモリロナイトから選択される1種又は2種以上の混合物である。これらのクレーは、当業者においてよく知られている。
【0042】
本発明において規定される、上記触媒の製造方法では、耐熱性無機酸化物及び/又はそれらの前駆体の全て又は一部を、熟成工程の前に加えることができる。より良い磨耗抵抗力を有する触媒を得るため、耐熱性無機酸化物及び/又はそれらの前駆体の全て又は一部を熟成工程の前に加えることが好ましく、残りの耐熱性無機酸化物及び/又はそれらの前駆体を熟成工程後に加える。ここで、最初に加える部分と後で加える部分とは、最初に加える耐熱性無機酸化物と後で加える耐熱性無機酸化物との重量比が触媒中1:0.1〜10、好ましくは1:0.1〜5とすることができる。
【0043】
本発明において規定される上記触媒の製造方法では、上記クレーは、熟成工程の前若しくは後に加えられる。上記クレーを加える順番は、上記触媒の能力には影響しない。
【0044】
本発明において規定される上記触媒の製造方法では、上記メソポア材料を加える前で、上記クレーを加える前若しくは後に、酸を更に加えて、スラリーのpHを1〜5に調整する。その後、当該スラリーを、30〜90℃で0.1〜10時間熟成させる。上記酸は、溶解性の無機酸及び有機酸からなる群から選択される1以上であり、好ましくは、塩酸、硝酸、リン酸及び炭素分子数が1〜10のカルボン酸からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。上記酸の量は、スラリーのpHを1〜5、好ましくは1.5〜4の範囲にできるような量である。
【0045】
上記熟成温度は、30〜90℃の範囲であり、好ましくは40〜80℃の範囲である。熟成は、0.1〜10時間、好ましくは0.5〜8時間で十分である。
【0046】
本発明において規定される上記触媒の製造方法では、上記耐熱性無機酸化物の前駆体は、上記触媒製造の間に上記耐熱性無機酸化物を形成することができる1以上の物質を意味する。例えば、アルミナの前駆体は、アルミナ水和物及び/又はアルミナゾルから選択することができ、上記アルミナ水和物は、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウム三水和物及びアモルファス水酸化アルミニウムからなる群から選択される1以上である。シリカの前駆体は、シリカゾル、シリカゲル及び水ガラスからなる群から選択される1以上とすることができる。アモルファスシリカ−アルミナの前駆体は、シリカ−アルミナゾル、シリカゾルとアルミナゾルとの混合物、シリカ−アルミナゲルからなる群から選択される1以上とすることができる。これらの耐熱性無機酸化物の前駆体は、当業者においてよく知られている。
【0047】
それぞれの成分の量によって、本発明において規定される上記触媒の製造方法における最終的な触媒は、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%のメソポア材料と、1〜60重量%のモレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜70重量%のクレーとを含む。好ましくは、本発明において規定される上記触媒の製造方法における最終的な触媒は、当該触媒の全量に基づいて、5〜40重量%のメソポア材料と、10〜50重量%のモレキュラーシーブと、10〜70重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜60重量%のクレーとを含む。より好ましくは、本発明において規定される上記触媒の製造方法における最終的な触媒は、10〜40重量%のメソポア材料と、20〜40重量%のモレキュラーシーブとを含む。
【0048】
本発明の触媒の製造方法において、上記スラリーを乾燥する方法及び条件は、当業者においてよく知られている。例えば、乾燥は、空気乾燥、ベーキング、強制空気乾燥又は噴霧乾燥であり、噴霧乾燥が好ましい。乾燥温度は、室温〜400℃、好ましくは100〜350℃の範囲とすることができる。噴霧乾燥を行い易くするため、乾燥前の上記スラリーの固形分量は、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。
【0049】
上記スラリーの乾燥後における上記焼成条件は、当業者においてよく知られている。通常、上記スラリーの乾燥後における焼成温度は、400〜700℃の範囲であり、好ましくは450〜650℃の範囲である。上記焼成は、少なくとも0.5時間、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは0.5〜10時間で十分である。
【0050】
本発明において規定される上記触媒の製造方法では、本発明の上記メソポア材料の製造方法は、室温から85℃の温度範囲で、アルミニウム源、シリカ源及びアルカリ土類溶液を中和してゲルを形成する工程と、酸又はアルカリを用いて当該ゲルの最終的なpHを7〜9に調整する工程と、室温から90℃の温度範囲で1〜10時間熟成を行う工程と、生じた固形沈殿のアンモニウム交換によって不純物イオンを除去して、アンモニウム交換したゲルを得る工程を含み、又は更に乾燥工程及び焼成工程を含む方法である。
【0051】
上記アルミニウム源は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であり、上記シリカ源は、水ガラス、ケイ酸ナトリウム、テトラエチルケイ素及びシリカからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であり、上記酸は、硫酸、塩酸及び硝酸からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であり、上記アルカリは、アンモニア水、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0052】
沈殿物(乾燥ベース):アンモニウム塩:HO=1:(0.1〜1):(10〜30)の重量比に従って、ここで使用される上記アンモニウム交換は、室温〜100℃の温度範囲において上記固形沈殿物を1〜3回交換し、それぞれ0.3〜1時間、当該沈殿物のナトリウム含有量(乾燥ベース)が0.2重量%よりも低くなるまで行われる。上記交換で使用されるアンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムである。
【0053】
上記メソポア材料は、上記触媒の製造の間にゲル形態で加えてもよく、乾燥した若しくは焼成した固体の形態で加えてもよい。加えて、上記メソポア材料の添加方法は、触媒の性能には影響しない。
【0054】
本願において規定される、粗悪な酸含有原油を触媒的に変換する方法では、上述した、触媒的変換触媒が使用される。上記方法は、上記原油を前処理及び予熱する工程、流動接触分解装置の中へ導入する工程、上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させる工程、並びに反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離する工程を含む。ここで、上記反応したガス及びオイルは、その後の分離システムの中へ供給される。そして、上記触媒は、ストリッピング及び再生後に再利用される。
【0055】
上記変換方法において、上記接触分解反応は、450〜650℃の反応温度、0.1〜0.8MPaの反応圧力、5〜25h−1の重量空間速度、並びに1〜30の上記原油に対する触媒の重量比の条件で行われる。好ましくは、上記接触分解は、480〜600℃の反応温度、0.1〜0.5MPaの反応領域での絶対圧力、10〜20h−1の空間速度、及び3〜15の上記原油に対する触媒の重量比の条件で行われる。
【0056】
本発明において規定される上記方法では、好ましい解決方法は、前処理された上記原油を100〜280℃に予熱する工程と、上記触媒と接触した状態になるように流動接触分解装置の中へ導入し、触媒的な接触分解反応条件下で反応させる工程とを含む。
【0057】
上記前処理は、以下のことを意味する。
【0058】
上記原料油が、酸含有原油である場合、強酸性原油における、接触分解触媒に対して毒作用効果を有する金属、及び接触分解触装置の動作において悪影響を及ぼす水が、電気脱塩プロセスによって、強酸性原油から部分的に除去される。脱塩した上記原油は、加熱され、接触分解装置へ供給され、再生した触媒と接触した状態となり、再生した触媒と反応する。
【0059】
上記発明において規定される方法において、原油の上記電気脱塩は、専門的な当業者にとって良く知られた方法である。通常の運転方法は、電気脱塩の要件を満たす水を、乳化破壊剤(demulsifying agent)及び/又は脱金属化剤(demetalization agent)と混合して、加熱し、その後、加熱した強酸性原油と混合する。混合した上記流れは、電気脱塩用の第一段階の脱塩器に供給され、水と油とが分離される。次に、分離された上記油は、乳化破壊剤及び/又は脱金属化剤を含む水と混合され、熱交換器を経て加熱され、その後、第二段階の脱塩器に供給される。水及び脱塩した原油は、第二段階の脱塩器で分離される。
【0060】
本発明において規定される上記方法では、上記原油は、全酸価が0.5mgKOH/gより高く、重金属のニッケル及びバナジウムの全量が10ppmより高く、硫黄分が1000ppmより高く、コンラドソン(conradson) 炭素数が3重量%より高い。
【0061】
固有の因子K値は、オイル製品の、平均沸点と相対密度との関数である。特定の関数関係は、以下のように規定される。
K=(1.216T1/3)/d15.615.6
ここで、Tはオイル製品の平均沸点の絶対温度であり、dは、オイル製品の相対密度である。アルカン類は、約12.7の最高のK値を示す。11〜12であるナフテン類のK値は、2番目に高く、芳香族類は10〜11の最小K値を示す。よって、固有の因子K値は、オイル製品の化学的特性を示し得る。
【0062】
酸含有原油では、パラフィンベースの原油は、通常50重量%より多くアルカン類を含んでおり、密度が低く、ワックス含有量が高く、硫黄及び樹脂含有量が低く、固有の因子K値が12.0より高いことを特徴としている。ナフテンベースの原油は、ナフテン及び芳香族含有量が高く、流動点が低く、硫黄、樹脂及びアスファルテン含有量が通常高く、固有の因子K値が11.5未満であることを特徴としている。中間体ベース(intermediate-base) の原油の性質は、それらの間に位置し、それらの固有の因子K値は、11.5〜12.0の範囲にある。
【0063】
異なる特性を有する原油に関しては、2つの処理方法が好ましい。全酸価が0.5mgKOH/gより高く、固有の因子K値が12.5未満である原油には、上記処理方法は、前処理した上記原油を予熱する工程と、接触分解器へ導入する工程と、請求項1〜7の何れか1つによる上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させる工程と、反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離する工程とを含む。ここで、反応したガス及びオイルは、分離システムへ供給され、異なる蒸留範囲を有する生成物を製造する。また、ディーゼル油の全て若しくは一部は、更なる反応のために反応系に戻される。上記触媒は、ストリッピング及び再生後に再利用される。
【0064】
全酸価が0.5mgKOH/gより高く、固有の因子K値が12.1より高い原油には、上記処理方法は、前処理した上記原油を予熱する工程と、接触分解器へ導入する工程と、上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させる工程と、反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離する工程とを含む。ここで、反応したガス及びオイルは、分離システムへ供給され、異なる蒸留範囲を有する生成物を製造する。上記触媒は、ストリッピング及び再生後に再利用される。上記触媒におけるモレキュラーシーブは、Y型モレキュラーシーブ、MFI構造を有するモレキュラーシーブ及び任意でβモレキュラーシーブを含む。ここで、モレキュラーシーブの全量に基づいて、Y型モレキュラーシーブの量は10〜80重量%であり、MFI構造を有する上記モレキュラーシーブの量は10〜90重量%であり、上記βモレキュラーシーブの量は0〜25重量%である。
【0065】
上記本発明において規定される原油の変換方法では、上記接触分解器は、流動床反応器、ライザー反応器、並流順流搬送ライン反応器(cocurrent downflow conveying line reactor) 及び移動床反応器からなる群から選択される1種又は2種以上の組合せである。上記ライザー反応器は、等直径(equal diameter)ライザー反応器、等線速度(equal linear speed)ライザー反応器、及び可変直径(variable diameter) ライザー反応器からなる群から選択される1種以上である。上記流動床反応器は、固定式流動床反応器、粒子流動床反応器、固定床気泡反応器(fixed fluidized bed reactor) 、乱流床反応器(turbulent bed reactor) 、高速流動床反応器、輸送流動床反応器(transport fluidized bed reactor) 及び濃密相流動床(dense phase fluidized bed) からなる群から選択される1種以上である。
【0066】
本発明において規定される、上記触媒及び原油の変換方法は、全酸価が0.5mgKOH/gより高く、コンラドソン炭素数が3重量%より高い粗悪な酸含有原油又はそれらの液体留分を、直接接触分解して、高付加価値のある製品を製造することに適している。一方、ガソリン、ディーゼル油等の反応生成物の酸価若しくは酸性度は、高い酸価若しくは酸性度に起因した、当該生成物の精製をしなくても製品要件を満足する。好ましくは、全酸価が1mgKOH/gより高く、コンラドソン炭素数が5重量%より高く、Ni含有量が10ppより高く、Fe含有量が10ppmより高く、Ca含有量が10ppmより高い原油は、本発明で規定される上記触媒で直接処理することができ、非常に有益な経済的利益を有する。
【0067】
以下の実施例は、本発明を更に説明するために設けているが、本発明はこれらによってのみ限定されるものではない。上記メソポア材料の無水の化学式は、X線蛍光分光分析を用いたそれらの元素組成を決定し、その後換算することによって求めた。
【実施例】
【0068】
実施例及び比較例で使用した原料は、以下の通りである。
【0069】
塩酸(Beijing Chemical Worksから入手、化学的に純粋、濃度:36〜38重量%)
水ガラス(sodium water glass)(市販品、SiO含有量:26.0重量%、3.2のモジュール)
ハロサイト(Suzhou Kaolin Company から入手、固形分濃度:74.0重量%)
擬ベーマイト(Shandong Aluminium Plantからの工業製品、固形分濃度:62.0重量%)
アルミナゾル(Sinopec Catalyst Company Qilu Division製、Al含有量:21.5重量%)
DASYモレキュラーシーブ(固形分濃度:92.0重量%)、ZSP−2モレキュラーシーブ(固形分濃度:97.8重量%)、REHYモレキュラーシーブ(固形分濃度:88.0重量%)、βモレキュラーシーブ(固形分濃度:95.2重量%)、DOSYモレキュラーシーブ(固形分濃度:93.5重量%)、Sinopec Catalyst Company Qilu Division製。
【0070】
〔実施例1〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒におけるメソポア材料の製造方法のみならず、当該メソポア材料についても示す。
【0071】
4重量%(SiO基準)の水ガラス溶液1750gをビーカーに加えた。攪拌下、4重量%(Al基準)のアルミン酸ナトリウム溶液350gと、4重量%(Al基準)の硫酸アルミニウム溶液150gと、4重量%(CaO基準)の塩化カルシウム溶液250gとを上記水ガラス溶液に同時に加え、その後80℃に加熱して4時間熟成させた。アンモニウムイオン交換を行い、ゲル状態のメソポア材料(N1と省略する)を得た。
【0072】
<アンモニウムイオン交換>
沈殿物(乾燥ベース):アンモニウム塩:HO=1:0.8:15の重量比に従って、沈殿物のアンモニウムイオン交換を、NHCl溶液を用いて60℃で2回、それぞれ0.5時間行い、含まれるナトリウムイオンを除去した。各交換後、洗浄濾過を行った。
【0073】
次に、N1を120℃で15時間乾燥し、600℃で3時間焼成することによってメソポア材料(G1と省略する)が得られた。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.2NaO・9.8CaO・19.8Al・70.2SiOであり、非表面積、細孔容積等の物理化学的なパラメータを表1に示す。
【0074】
〔実施例2〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒におけるメソポア材料の製造方法のみならず、当該メソポア材料についても示す。
【0075】
4重量%(CaO基準)の塩化カルシウム溶液125gを2.5重量%(Al基準)の硫酸アルミニウム溶液400gに加えた。攪拌下、上記混合した溶液を、5重量%(SiO基準)水ガラス溶液1700gに加え、80℃に加熱し、4時間熟成させた。アンモニウムイオン交換は、実施例1の方法に従って行い、ゲル状態のメソポア材料(N2と省略する)を得た。次に、N2を120℃で15時間乾燥し、600℃で3時間焼成することによってメソポア材料(G2と省略する)が得られた。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.1NaO・5.1CaO・9.8Al・85.0SiOであり、非表面積、細孔容積等の物理化学的なパラメータを表1に示す。
【0076】
〔実施例3〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒におけるメソポア材料の製造方法のみならず、当該メソポア材料についても示す。
【0077】
4重量%(MgO基準)の硫酸マグネシウム溶液500gをビーカーに加えた。攪拌下、5重量%(SiO基準)の水ガラス溶液1300gを上記硫酸マグネシウム溶液に加え、3重量%(Al基準)のアルミン酸ナトリウム溶液500gを更にその中に加えた。上記混合溶液を80℃に加熱し、4時間熟成させた。アンモニウムイオン交換は、実施例1の方法に従って行い、ゲル状態のメソポア材料(N3と省略する)を得た。次に、N3を120℃で15時間乾燥し、600℃で3時間焼成することによってメソポア材料(G3と省略する)が得られた。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.1NaO・21.5MgO・12.3Al・66.1SiOであり、非表面積、細孔容積等の物理化学的なパラメータを表1に示す。
【0078】
〔実施例4〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒におけるメソポア材料の製造方法のみならず、当該メソポア材料についても示す。
【0079】
5重量%(SiO基準)の水ガラス溶液1210gをビーカーに加えた。攪拌下、5重量%(Al基準)のアルミン酸ナトリウム溶液400gと、5重量%(Al基準)の硫酸アルミニウム溶液300gと、1重量%(BaO基準)の硝酸バリウム溶液450gとを上記水ガラス溶液に加え、80℃に加熱し、4時間熟成させた。アンモニウムイオン交換は、実施例1の方法に従って行い、ゲル状態のメソポア材料(N4と省略する)を得た。次に、N4を120℃で15時間乾燥し、600℃で3時間焼成することによってメソポア材料(G4と省略する)が得られた。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.1NaO・4.5BaO・34.8Al・60.6SiOであり、非表面積、細孔容積等の物理化学的なパラメータを表1に示す。
【0080】
〔実施例5〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒におけるメソポア材料の製造方法のみならず、当該メソポア材料についても示す。
【0081】
4重量%(MgO基準)の硫酸マグネシウム溶液750gをビーカーに加えた。攪拌下、4重量%(SiO基準)の水ガラス溶液1600gを上記硫酸マグネシウム溶液に加え、4重量%(Al基準)のアルミン酸ナトリウム溶液150gを更にその中に加えた。次に、上記混合物を80℃に加熱し、4時間熟成させた。アンモニウムイオン交換は、実施例1の方法に従って行い、ゲル状態のメソポア材料(N5と省略する)を得た。次に、N5を120℃で15時間乾燥し、600℃で3時間焼成することによってメソポア材料を100重量%含む変換触媒(G5と省略する)が得られた。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.1NaO・29.8MgO・6.2Al・63.9SiOであり、非表面積、細孔容積等の物理化学的なパラメータを表1に示す。
【0082】
〔実施例6〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒におけるメソポア材料の製造方法のみならず、当該メソポア材料についても示す。
【0083】
1重量%(BaO基準)の硝酸バリウム300gを、3重量%(Al基準)の硫酸アルミニウム溶液200gに加えた。攪拌下、上記混合溶液を、5重量%(SiO基準)の水ガラス溶液1800gに加え、80℃に加熱し、4時間熟成させた。アンモニウムイオン交換は、実施例1の方法に従って行い、ゲル状態のメソポア材料(N6と省略する)を得た。次に、N6を120℃で15時間乾燥し、600℃で3時間焼成することによってメソポア材料(G6と省略する)が得られた。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.1NaO・3.1BaO・6.1Al・90.7SiOであり、非表面積、細孔容積等の物理化学的なパラメータを表1に示す。
【0084】
【表1】

〔実施例7〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0085】
塩酸1.7Lを脱カチオン化水8.0kgで希釈した。水ガラス(sodium water glass)7.7kgを脱カチオン化水8.0kgで希釈した。攪拌下、希釈した水ガラスを上記希釈塩酸溶液へゆっくりと加え、SiO濃度が7.8重量%であり、pHが2.8であるシリカゾルが得られた。
【0086】
ハロサイト3.4kgを上記シリカゾルに加え、1時間攪拌して、カオリンを十分に分散させた。
【0087】
DASYモレキュラーシーブ3.8kgと、実施例1で作製したメソポア材料G1 2.0kg(乾燥ベース)とを、脱カチオン化水12.5kgへ加えた。次に、上記溶液をホモジナイザーで十分分散させ、希塩酸でpHを3.5に調整した。上記モレキュラーシーブと上記メソポア材料との混合スラリーを上記シリカゾル−クレースラリーに加え、0.5時間攪拌して、固形分濃度が20.8重量%であり、pHが2.9である触媒スラリーを得た。上記スラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄し、乾燥し、焼成することによって、20重量%のメソポア材料と、35重量%のDASYモレキュラーシーブと、25重量%のカオリンと、20重量%のSiOバインダーとからなる触媒(C1と省略する)を得た。
【0088】
〔比較例1〕
この比較例では、メソポア材料を含まない比較触媒、並びにその製造方法について示す。
【0089】
触媒は、実施例7の方法に従って作製した。メソポア材料を加えず、ハロサイト6.1kgを加えたことが実施例7の方法とは異なり、35重量%のDASYメソポア材料と、45重量%のカオリンと、20重量%のSiOバインダーとからなる比較触媒(CB1と省略する)を得た。
【0090】
〔比較例2〕
この比較例では、V含有メソポア材料の比較触媒、並びにその製造方法について示す。
【0091】
メソポア材料は実施例1に従って作製した。塩化カルシウムをシュウ酸バナジウムに置き換えたことが実施例1とは異なり、バナジウム含有メソポア材料(GB1と省略する)を得た。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.2NaO・9.8V・19.8Al・70.2SiOであった。
【0092】
触媒は、実施例7の方法に従って作製した。G1をバナジウム含有メソポア材料GB1に置き換えたことが実施例7の方法とは異なり、20重量%のバナジウム含有メソポア材料と、35重量%のDASYメソポア材料と、25重量%のカオリンと、20重量%のSiOバインダーとを含む比較触媒(CB2と省略する)を得た。
【0093】
〔比較例3〕
この比較例では、TiO含有メソポア材料の比較触媒、並びにその製造方法について示す。
【0094】
メソポア材料は、実施例1の方法に従って作製した。塩化カルシウムを四塩化チタンに置き換えたことが実施例1とは異なり、チタン含有メソポア材料(GB2と省略する)を得た。そのサンプルの元素分析重量化学式は、0.2NaO・9.8TiO・19.8Al・70.2SiOであった。
【0095】
触媒は、実施例7の方法に従って作製した。G1をバナジウム含有メソポア材料GB2と置き換えたことが実施例7の方法とは異なり、20重量%のチタン含有メソポア材料と、35重量%のDASYメソポア材料と、25重量%のカオリンと、20重量%のSiOバインダーとを含む比較触媒(CB3と省略する)を得た。
【0096】
〔実施例8〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0097】
ハロサイト2.7kgを脱カチオン化水15kgへ加え、スラリー化した。擬ベーマイト3.2kgをその中に加え、塩酸を用いてpHを2に調整した。均一攪拌後、上記混合物を70℃に保持して1時間熟成を行った。そのとき、アルミナゾル2.3kgを加え均一に攪拌し、熟成工程の前及び後で加えた耐熱性無機酸化物の前駆体によって、熟成工程の前及び後で加えた耐熱性無機酸化物の重量比を1:0.25とすることができた。
【0098】
DASYモレキュラーシーブ2.0kgと、ZSP−2モレキュラーシーブ0.72kgと、実施例2に従って作製したメソポア材料G2 3.0kg(乾燥ベース)とを、脱カチオン化水12.5kgへ加えた。次に、上記溶液をホモジナイザーで十分に分散させ、希塩酸でpHを3.5に調整した。上記モレキュラーシーブと上記メソポア材料とを混合した上記スラリーを、上記アルミナ−クレースラリーへ加え、0.5時間攪拌して、固形分濃度が24.0重量%である触媒スラリーを得た。上記スラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄し、乾燥し、焼成することによって、30重量%のメソポア材料と、18重量%のDASYモレキュラーシーブと、7重量%のZSP−2モレキュラーシーブと、20重量%のカオリンと、25重量%のAlバインダーとからなる触媒(C2と省略する)を得た。
【0099】
〔実施例9〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0100】
ハロサイト3.4kgを脱カチオン化水15kgへ加え、スラリー化した。擬ベーマイト3.2kgをその中に加え、塩酸を用いてpHを2に調整した。均一攪拌後、上記混合物を70℃に保持して1時間熟成を行った。そのとき、アルミニウムゾル4.7kgを加え均一に攪拌し、熟成工程の前及び後で加えた耐熱性無機酸化物の前駆体によって、熟成工程の前及び後で加えた耐熱性無機酸化物の重量比を1:0.5とすることができた。
【0101】
DASYモレキュラーシーブ1.1kgと、ZSP−2モレキュラーシーブ2.1kgとを、脱カチオン化水6.0kgへ加えた。次に、上記溶液をホモジナイザーで十分に分散させた。上記モレキュラーシーブスラリーを、上記アルミナ−クレースラリーに加えた。実施例2に従って作製した、ゲル状態のメソポア材料N2 1.5kg(乾燥ベース)を加え、0.5時間攪拌し、固形分濃度が21.2重量%である触媒スラリーを得た。上記スラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄し、乾燥し、焼成することによって、15重量%のメソポア材料と、10重量%のDASYモレキュラーシーブと、20重量%のZSP−2モレキュラーシーブと、25重量%のカオリンと、30重量%のAlバインダーとからなる触媒(C3と省略する)を得た。
【0102】
〔実施例10〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0103】
ハロサイト4.1kgを脱カチオン化水20kgへ加え、スラリー化した。擬ベーマイト4.8kgをその中に加え、塩酸を用いてpHを2に調整した。均一攪拌後、上記混合物を70℃に保持して1時間熟成を行った。
【0104】
REHYモレキュラーシーブ2.3kgと、βモレキュラーシーブ1.1kgと、実施例3に従って作製したメソポア材料G3 1.0kg(乾燥ベース)を、脱カチオン化水7.5kgへ加えた。次に、上記溶液をホモジナイザーで十分に分散させ、希塩酸でpHを3.5に調整した。上記モレキュラーシーブスラリーを上記アルミナ−クレースラリーに加え、0.5時間攪拌し、固形分濃度が24.3重量%である触媒スラリーを得た。上記スラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄し、乾燥し、焼成することによって、10重量%のメソポア材料と、20重量%のREHYモレキュラーシーブと、10重量%のβモレキュラーシーブと、30重量%のカオリンと、30重量%のAlバインダーとからなる触媒(C4と省略する)を得た。
【0105】
〔実施例11〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0106】
DOSYモレキュラーシーブ3.2kgを脱カチオン化水6.0kgへ加えた。次に、上記溶液をホモジナイザーで十分に分散させた。実施例3に従って作製した、ゲル状態のメソポア材料N3 4.0kg(乾燥ベース)と、アルミナゾル14.0kgとを加え、均一に攪拌することによって、固形分濃度が17.8重量%である触媒スラリーを得た。上記スラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄し、乾燥し、焼成することによって、40重量%のメソポア材料と、30重量%のDOSYモレキュラーシーブと、30重量%のAlバインダーとからなる触媒(C5と省略する)を得た。
【0107】
〔実施例12〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0108】
ハロサイト4.1kgを脱カチオン化水20kgへ加え、スラリー化した。擬ベーマイト4.0kgをその中に加え、塩酸を用いてpHを2に調整した。均一攪拌後、上記混合物を70℃に保持して1時間熟成を行った。
【0109】
DASYモレキュラーシーブ2.2kgと、実施例4に従って作製したメソポア材料G4 2.5kg(乾燥ベース)とを、脱カチオン化水8.0kg加えた。次に、上記溶液をホモジナイザーで十分に分散させ、希塩酸でpHを3.5に調整した。上記モレキュラーシーブと上記メソポア材料とを混合した上記スラリーを、上記アルミナ−クレースラリーへ加え、0.5時間攪拌し、固形分濃度が24.2重量%である触媒スラリーを得た。上記スラリーを250℃で噴霧乾燥し、洗浄し、乾燥し、焼成することによって、25重量%のメソポア材料と、20重量%のDASYモレキュラーシーブと、30重量%のカオリンと、25重量%のAlバインダーとからなる触媒(C6と省略される)を得た。
【0110】
〔実施例13〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0111】
触媒を、実施例12の方法に従って作製した。G4を、実施例5に従って作製したG5に置き換えたことが、実施例12とは異なり、25重量%のメソポア材料と、20重量%のDASYモレキュラーシーブと、30重量%のカオリンと、25重量%のAlバインダーとからなる触媒(C7と省略される)を得た。
【0112】
〔実施例14〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の製造方法のみならず、当該触媒についても示す。
【0113】
触媒を、実施例12の方法に従って作製した。G4を、実施例6に従って作製したG6に置き換えたことが、実施例12とは異なり、25重量%のメソポア材料と、20重量%のDASYモレキュラーシーブと、30重量%のカオリンと、25重量%のAlバインダーとからなる触媒(C8と省略される)を得た。
【0114】
〔実施例15〕
この実施例では、本発明において規定される上記触媒の触媒能力について示す。
【0115】
触媒C1に金属混入させ、混入量は、それぞれFe6000ppm、Ni9000ppm、及びCa3000ppmであった。混入させた上記触媒は、100%水蒸気と共に8時間熟成した。
【0116】
小スケールの固定式流動層装置において、上記触媒の分解能力を、表2に示す粗悪な酸含有原油2を用いて検討した。ここで、反応温度は500℃であり、触媒/オイル重量比は5であり、重量空間速度は20h−1であった。上記反応条件及び結果を表3に示す。
【0117】
〔比較例4〜6〕
以下の比較例では、比較触媒の触媒能力について示す。
【0118】
混入及び熟成を実施例15の方法に従って行い、触媒の触媒能力を評価した。本発明で規定される触媒C1を、比較例1〜3における比較触媒CB1、CB2及びCB3に置き換えたことが実施例15とは異なる。反応条件及び結果を表3に示す。
【0119】
〔実施例16〜17〕
以下の実施例では、本発明において規定される触媒の触媒能力について示す。
【0120】
触媒C2及びC3を、100%水蒸気と共に17時間熟成した。小スケールの固定式流動層装置において、上記触媒の分解能力を、表2に示す粗悪な酸含有原油1を用いて検討した。反応条件及び製品分布を表4に示す。
【0121】
〔実施例18〜19〕
以下の実施例では、本発明において規定される触媒の触媒能力について示す。
【0122】
触媒C4及びC5にそれぞれ金属混入させ、混入量は、それぞれFe8000ppm、Ni12000ppm、及びCa4000ppmであった。混入させた上記変換触媒は、100%水蒸気と共に8時間熟成した。小スケールの固定式流動層装置において、上記触媒の分解能力を、表2に示す粗悪な酸含有原油3を用いて検討した。ここで、反応温度は500℃であり、触媒/オイル重量比は6であり、重量空間速度は20h−1であった。上記反応条件及び結果を表5に示す。
【0123】
〔実施例20〜22〕
以下の実施例では、本発明において規定される触媒の触媒能力について示す。
【0124】
触媒C6、C7及びC8にそれぞれ金属混入させ、混入量は、それぞれFe6000ppm、Ni9000ppm、及びCa3000ppmであった。混入させた上記変換触媒は、100%水蒸気と共に8時間熟成した。小スケールの固定式流動層装置において、上記触媒の分解能力を、表2に示す粗悪な酸含有原油4を用いて検討した。ここで、反応温度は520℃であり、触媒/オイル重量比は8であり、重量空間速度は16h−1であった。上記反応条件及び結果を表6に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

表3,4,5及び6に従って、本発明において規定される上記触媒は、高付加価値のある製品を直接生産するために、全酸価が0.8mgKOH/gより高く、樹脂含有量が16.6重量%より高く、金属含有量が高い粗悪な酸含有原油を接触分解することに直接使用し得ることを理解することができる。一方、ガソリン、ディーゼル油等の反応生成物の酸価若しくは酸性度は、高い酸価若しくは酸性度に起因した当該生成物の精製をしなくても製品要件を満足する。よって、上記触媒は、非常に有益な経済的利益を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗悪な酸含有原油を変換する触媒であって、
当該触媒は、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%のメソポア材料と、1〜60重量%のモレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と0〜70重量%のクレーとを含み、
上記メソポア材料は、アルカリ土類酸化物、シリカ及びアルミナを含む、酸化物の重量パーセントに基づいた、無水の化学式(0〜0.3)NaO・(1〜50)MO・(6〜58)Al・(40〜92)SiOで表されるアモルファス材料であり、
Mは、Mg、Ca及びBaから選択される1以上であり、
上記メソポア材料は、200〜400m/gの比表面積と、0.5〜2.0ml/gの細孔容積と、8〜20nmの平均細孔直径と、5〜15nmの最確細孔サイズとを有することを特徴とする触媒。
【請求項2】
上記メソポア材料は、上記酸化物の重量パーセントに基づいた、無水の化学式(0〜0.2)NaO・(2〜30)MO・(6〜35)Al・(60〜92)SiOで表されることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
上記アルカリ土類金属Mは、Mg及びCaからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のメソポア材料。
【請求項4】
上記触媒の全量に基づいて、5〜40重量%のメソポア材料と、10〜50重量%のモレキュラーシーブと、10〜70重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜60重量%のクレーとを含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
上記触媒の全量に基づいて、10〜40重量%のメソポア材料と、20〜40重量%のモレキュラーシーブとを含むことを特徴とする請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
上記モレキュラーシーブは、ホージャサイト、βゼオライト、MFI構造を有するモレキュラーシーブ、及びモルデナイトからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
上記耐熱性無機酸化物は、アルミナ、シリカ及びアモルファスシリカ−アルミナからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であり、
上記クレーは、カオリン、ハロサイト、モンモリロナイト、珪藻岩、エンデライト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルジャイト、ハイドロタルサイト及びベントナイトからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
請求項1に記載の触媒の製造方法であり、
耐熱性無機酸化物及び/又はその前駆体の全部若しくは一部と水とを混合してスラリー化する工程と、
クレーを添加若しくは添加しない工程と、
上記メソポア材料を添加する工程と、
上記モレキュラーシーブを添加する工程と、
得られたスラリーを乾燥する工程と、
焼成する工程と、
を含み、
上記メソポア材料を添加する前に酸を加え、
上記クレーを添加する前若しくは後にスラリーのpHを1〜5に調整し、
上記スラリーを30〜90℃の温度で0.1〜10時間熟成し、
残りの耐熱性無機酸化物及び/又はその前駆体を上記熟成する工程後に加え、
上記各成分の量は、最終的な触媒が、当該触媒の全量に基づいて、1〜50重量%の上記メソポア材料と、1〜60重量%の上記モレキュラーシーブと、5〜98重量%の耐熱性無機酸化物と、0〜70重量%の上記クレーとを含むような量であることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
耐熱性無機酸化物の一部及び/又はその前駆体は、熟成工程の前に加えられ、
当該残りの耐熱性無機酸化物及び/又はその前駆体は、熟成工程の後に加えられ、
最初に加える部分と後で加える部分とは、最初に加える耐熱性無機酸化物と後で加える耐熱性無機酸化物との重量比が触媒中1:0.1〜10であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか1項に記載の触媒的変換触媒を使用した、粗悪な酸含有原油を触媒的に変換する方法であり、
上記原油を前処理及び予備加熱する工程と、
接触分解装置へ導入する工程と、
請求項1〜7の何れか1項に記載の上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させる工程と、
反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離する工程と、
を含む方法であり、
反応したガス及びオイルは、次の分離システムの中へ供給し、
上記触媒を、ストリッピング及び再生後に再利用することを特徴とする方法。
【請求項11】
上記前処理した原油を、100〜250℃に予備加熱し、接触分解装置へ供給し、上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
全酸価が0.5mgKOH/gより高く、固有の因子K値が12.5より低い、上記前処理した原油を予備加熱し、
接触分解装置へ供給し、上記触媒と接触させ、接触分解反応条件下で反応させ、
反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離し、
反応したオイルを上記分離システムへ供給し、異なる蒸留範囲を有する生成物を生成させ、
ディーゼル油の全て若しくは一部を、更に反応させるため上記反応系に戻し、
上記触媒を、ストリッピング及び再生後に再利用することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
全酸価が0.5mgKOH/gより高く、固有の因子K値が12.1より高い、上記前処理した原油を予備加熱し、
接触分解装置へ供給し、上記触媒と接触させて、接触分解反応条件下で反応させ、
反応したオイル及びガスとコークス化した触媒とを分離し、
反応したオイル及びガスを、上記分離システムへ供給し、異なる蒸留範囲を有する生成物を生成させ、
上記触媒を、ストリッピング及び再生後に再利用し、
上記触媒におけるモレキュラーシーブは、Y型モレキュラーシーブ、MFI構造を有するモレキュラーシーブ及び任意でβモレキュラーシーブを含み、
モレキュラーシーブの全量に基づいて、Y型モレキュラーシーブの量は10〜80重量%であり、MFI構造を有する上記モレキュラーシーブの量は10〜90重量%であり、上記βモレキュラーシーブの量は0〜25重量%であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
上記接触分解を、450〜650℃の反応温度、0.1〜0.8MPaの反応圧力、5〜25h−1の重量空間速度、1〜30の上記原油に対する触媒の質量比で行うことを特徴とする請求項10〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記接触分解を、480〜600℃の反応温度、0.1〜0.5MPaの反応領域における絶対圧力、10〜20h−1の重量空間速度、3〜15の上記原油に対する触媒の質量比で行うことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記原油は、全酸価が1.0mgKOH/gより高く、重金属ニッケル及びバナジウムの全含有量が10ppmより高く、硫黄含有量が1000ppmより高く、コンラドソン炭素数が5重量%より高いことを特徴とする請求項11、12又は13に記載の方法。

【公表番号】特表2011−509178(P2011−509178A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541682(P2010−541682)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000032
【国際公開番号】WO2009/092282
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】