説明

粘性流体の移送における残量低減方法及びシステム

【課題】 この発明は、容器内から粘性流体を取り出す場合における残量を可及的に少なくすることを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、粘性流体を供給する方法において、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出、ポンプ出口以降の圧力変化の検出、又はエレベーターポンプの下降量の変化の検出の中の少なくとも1つを具備させることにより粘性流体の残量を検出し、該検出の出力により切り替えを指示することを特徴とした粘性流体の移送における残量低減方法により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器(例えばドラム缶)に収容されている接着剤などの粘性流体を使用場所(例えば自動ガン、手動ガン又は定量吐出装置)に移送し、前記容器内が空になり、他の容器に移す際に、空になった容器の残留接着剤などを可及的に少なくすることを目的とした粘性流体の移送における残量低減方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来前使用のドラム缶の粘性流体がなくなってから、後使用のドラム缶の中身を使用するが、前使用のドラム缶内残留接着剤は可及的に少ない方が良いけれども、残留量を正確に認知することは至難とされていた。そこで安全の為に残留粘性流体が多少多目に残っている間に、前使用のドラム缶からの取り出しを終了させて、後使用のドラム缶に取り換えていたので、残留接着剤が15kg以上になることは珍しくなかった。
【特許文献1】特開2001−263222
【特許文献2】特開平9−67547
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の装置によれば、ドラム缶内の接着剤の残留量は、使用者の勘に頼っていたので、一定の残留量とすることは至難であった。即ち、残留粘性流体が過少に過ぎると、吸込みに際し、空気を吸入する為に、前記粘性流体中に気泡を含むことになり、接着不良その他の問題点を生じるおそれがあった。
【0004】
前記問題点を解決する為に、残留流体が多少多目の間に容器を取り換えることにすれば、気泡が混入するおそれは少ないが、結果的に不使用の粘性流体(残留粘性流体)が多量となり、実質不経済となる問題点があった。即ち、残留粘性流体を定量的に明らかにするのは至難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
然るにこの発明は、容器内の粘性流体量が少なくなると、その移送中に、ポンプシャフトの上昇下降スピードに変化を生じること、ポンプ出口以降の圧力に変動を来すこと及びエレベーターポンプの下降量に変化を生じるなどの知見を得たので、前記3点中少なくとも1点を検知(測定)することにより、前記従来の問題点を解決したのである。
【0006】
即ち方法の発明は、粘性流体を供給する方法において、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出、ポンプ出口以降の圧力変化の検出、又はエレベーターポンプの下降量の変化の検出の中の少なくとも1つを具備させることにより粘性流体の残量を検出し、該検出の出力により切り替えを指示することを特徴とした粘性流体の移送における残量低減方法であり、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出、ポンプ出口以降の圧力変化の検出及びエレベーターポンプの下降量の変化の検出を行うものである。
【0007】
またシステムの発明は、粘性流体を供給するシステムにおいて、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出手段、ポンプ出口以降の圧力変化の検出手段及びエレベーターポンプの下降量変化の検出手段の少なくとも1つの検出手段を設け、又は2つ或いは3つの検出手段を組み合せたことを特徴とする粘性流体の移送における残量低減システムであり、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出手段は、ポンプシャフト部に近接スイッチを取り付けて検出したものであり、ポンプ出口以降の圧力変化の検出手段は、ポンプ出口以降部に圧力センサーを取り付けたものであり、エレベーターポンプの下降量変化の検出手段は、エレベーターポンプへ変位センサーを取り付けて検出したものである。
【0008】
前記発明において、容器内の粘性流体が少なくなると、ポンプの空打ちによって、ポンプシャフトの上下降スピードに変化を生じる。そこで、ポンプシャフト部に近接スイッチを取付けて、ポンプシャフトの上昇、下降のスピードを検出すると、正常時と、異常時のデータが鮮明に区分されるので、前記異常に移った際には、直ちに切り替えバルブを切り替えて、粘性流体の取り出し容器を、前容器から、後容器に切り替える。このようにすれば、移動変化を検出することで、移送量変化を直ちに捕えることにより、最も簡単な方法で最も正確に現場保存をすることができる。
【0009】
また前容器に粘性流体の残量が少なくなると、前記ポンプシャフトの上昇下降の不良と相俟って、吐出される粘性流体量に差異を生じ、圧力変化となって現われる。従って、ポンプの吐出圧力変化を検出することによっても残量の少ないことを知ることができる。
【0010】
前記発明の粘性流体(例えば接着剤)は、例えば自動車のフロントガラスなどの接着剤として使用するのであるが、前記フロントガラスの周縁部へ同一幅で、同一厚さの同一量を塗布できなければならないと共に、全接着剤は同質でなければならない。例えば空気が入ったり、供給流動圧に差異があると、前記塗布幅又は塗布厚さが同一にならない為に、気密はもとより水密を損するおそれがある。そこで、接着作業中に送られる接着剤は同量、同圧、かつ同質でなければならない。
【0011】
然るに移送系は完全に制御されていても、容器(例えばドラム缶)の中に残留する接着剤の量が少なくなると、前記同量、同圧、同質のバランスが崩れ、結果的に同量、同圧、同質を維持することができなくなるおそれがある。
【0012】
そこでこの発明は、容器内の接着剤量が少なくなって、同量、同圧移送ができなくなる直前に空容器から充実容器に切り替えることにより、移送系における条件の変化を皆無にし、前記同量、同圧、同質条件を維持しようとするものである。
【0013】
この発明のような型式の移送ポンプ装置においては、残留する接着剤量が少なくなると、必ずポンプシャフトの上昇、下降スピードの変化、ポンプ出口以降の接着剤の圧力変化、又はエレベーターポンプの下降量の変化を生じるとの知見を得た。
【0014】
前記三つの変化は、容器に残留している接着剤の状態により何れが早く現われるか不明であるが、必ず現われるので、前記三つの変化を捕える手段を施しておき、その中で一番早い変化を捕えて、切替バルブを切り替えるようにすれば、前記粘性流体の同量、同圧、同質の条件は確実に確保されることが明らかになった。即ち前記三つの変化は必ず現われるが、容器内底部の状況(例えばドラム缶においては内装袋の状態)により遅速がある。従って最も早い変化により対処すれば、少なくとも切替バルブ以後は正常状態を確実に保っているからである。然し乍ら、前記三つの変化の遅速差異は小さいので、1つの手段だけでも相当の効果を期待できる。
【0015】
例えば、残留接着剤の量が少なくなって、前記三つのセンサーに検知されるのは、少なくともセンサーの設置位置又はセンサーに変化を伝えるもの(例えばポンプのプランジャー)が異常を示す時であるから、既移送分(例えば切替バルブより下流側の移送パイプ中)は、同量、同圧、同質を保っていたことになるからである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、粘性流体の移送に際し、ポンプシャフトの上昇、下降、スピードの変化、ポンプ出口以降の圧力変化、又はエレベーターポンプの下降量の変化の何れか1つ(又は全部)を検知して、空になる容器からの粘性流体の移送を中止し、次の容器と切り替えるので、粘性流体の移送量等に変化を及ぼす直前に切り替えることができる。従って、粘性流体は同量、同圧、同質であって、しかも最少残留量で切り替えることができる効果がある。
【0017】
即ち使用状態に悪影響を与えるおそれなく、残留流体(廃棄流体)を最少限に止め得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明は、容器内の粘性流体(以下「接着剤」という)を吸い上げ、押し出す移送装置において、ポンプシャフトの上昇、下降スピードの変化を検出する為に、ポンプシャフト部へ近接スイッチを取り付けると共に、ポンプの出口付近に接着剤の圧力を測定する圧力センサーを設置する。
【0019】
次にエレベーターポンプに変位センサーを取付けて、下降量変化をモニターする。前記各検出器の出力は、夫々コンピュータに入力し、予め測定してある標準数値と比較し、その差が設定値以上になったことを検出した場合には、その出力を切替バルブの駆動部に入力し、切替バルブを空になる方の容器から、充実した容器に切り替え、接着剤の移送を継続する。
【実施例1】
【0020】
この発明の実施例を図1、2、3、4に基づいて説明すると、台板11上へ、所定の間隔をおいて、リフトチューブ12、12を立設し、リフトチューブ12、12のピストンロッド13、13の上端部へタイバー14を固定して、フォロアプレート16を昇降させるエレベーター15を構成する。前記フォロアプレート16は、二本のタイロッド17、17でタイバー14に支持され、タイバー14と、フォロアプレート16の間に、エアーモータ18及びヒーテッドポンプ19などの送液装置20が設置してある(図1)。
【0021】
前記タイバー14の一側にブラケット10を固定し、このブラケット10へ変位センサー9を固定する。前記変位センサー9は、前記リフトチューブ12の蓋12a面に、例えばアルミテープ(図示してない)を貼着し、前記変位センサー9から発射したレザー光線を前記アルミテープで反射させて、両地点の距離を測定している。従って、その測定値を比較すれば、フォロアプレート16の下降量を正確に測定できるので、該測定値に変化があれば、直ちに検知することができる。
【0022】
次に、ポンプシャフト1に近接スイッチ2を取付ける。このようにすると、ドラム缶3内の残留接着剤が1回分より少なくなると、ポンプは空打ちになるので、ポンプシャフト1の上昇、下降スピードが変化する。この変化を、前記近接スイッチ2で認識し、その出力により空缶の方のバルブ4を閉め、実缶の方のバルブ5を開ける(図5)。
【0023】
またポンプ出口以降部6に圧力センサー7を取り付ける。このようにすると、ドラム缶内の接着剤が少なくなると、吐出接着剤の圧力が低下する。従って圧力低下により生じた出力信号により、切り替え用のバルブ4を閉じ、バルブ5を開けば、自動切り替えができる(図3、5)。
【0024】
前記三つのセンサーは、夫々特性を示すもので、全部又は複数取り付けて、前記センサーの最初の検出により、バルブを自動切り替えすれば、接着剤の残量を最少限に保つことができる。実験の結果によれば、残留接着剤量は、5kg以下となり、大幅に低減したことが認められた。
【0025】
また図5は、この発明のフロー図であって、各バルブの開閉は加圧空気で行っている。各ドラム缶3、3aから送り出される接着剤は、矢示32、32aのように、ヒーティングテフロン(登録商標)ホース33、33aを通過し、バルブ4、又は5を経て、高圧用ボールバルブ34、34aを通過し、定量ポンプ35、35aにより、必要とする箇所へ送られる。図中2、2は、近接スイッチである。
【0026】
前記において、ドラム缶3の接着剤が空になったならば、ドラム缶3aに切り替えて、接着剤の供給に支障がないようにしている。例えば、No.1のドラム缶3が空になってから、No.2のドラム缶3aに切り替えるけれども、No.1のドラム缶内の接着剤の残量が少なくなると、空気が入り、接着に支障が生じるおそれがあるので、前記のように、空気が入る直前に切り替えることが好ましい。そこで空気の入る直前の時機を正確に検出すべく研究し、この発明を完成したものである。
【0027】
前記実施例におけるヒーテッドポンプ19の動作を図4(a)(b)について説明すると、ロッド21が矢示22のように、図4(b)→(a)に上昇すると(エアー圧により上昇、図示してない)、チェックバルブ23は閉から開となって、ロッド21からロッド24を引いた体積と同じ量の材料が矢示25のように吐出される。同様にロッド24からプランジャーロッド26を引いた体積と同じ量の材料が下室27へ矢示28のように入ることになる。この場合にチェックバルブ29は閉から開になる。従って、ロッド21の昇降により、接着剤などの材料を間欠的に給送することができる。
【0028】
前記において、ロッド21、プランジャーロッド26は、矢示22、22aのように昇降する。図中30は、プランジャーロッド26の下端に固定したプライマープレートで、プランジャーロッド26の上昇時に、弁座31の下面を塞ぐようにしてある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施例の一部を省略し、一部破切した正面図。
【図2】同じく一部を省略した側面図。
【図3】(a)同じく圧力センサーの取付けを示す図、(b)同じく変位センサーの取付けを示す図。
【図4】(a)同じくポンプ移送を示す拡大断面図、(b)同じくポンプ移送を示す拡大断面図。
【図5】同じく接着剤取り出しのフローチャート。
【符号の説明】
【0030】
1 ポンプシャフト
2 近接スイッチ
3、3a ドラム缶
4、5 バルブ
6 ポンプ出口以降部
7 圧力センサー
8 エレベーターポンプ
9 変位センサー
10 ブラケット
11 台板
12 リフトチューブ
13 ピストンロッド
14 タイバー
15 エレベーター
16 フォロアプレート
17 タイロッド
18 エアモータ
19 ヒーテッドポンプ
20 送液装置
21、24 ロッド
26 プランジャーロッド
27 下室
23、39 チェックバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体を供給する方法において、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出、ポンプ出口以降の圧力変化の検出、又はエレベーターポンプの下降量の変化の検出の中の少なくとも1つを具備させることにより粘性流体の残量を検出し、該検出の出力により切り替えを指示することを特徴とした粘性流体の移送における残量低減方法。
【請求項2】
ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出、ポンプ出口以降の圧力変化の検出及びエレベーターポンプの下降量の変化の検出を行うことを特徴とした請求項1記載の粘性流体の移送における残量低減方法。
【請求項3】
粘性流体を供給するシステムにおいて、ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出手段、ポンプ出口以降の圧力変化の検出手段及びエレベーターポンプの下降量変化の検出手段の少なくとも1つの検出手段を設け、又は2つ或いは3つの検出手段を組み合せたことを特徴とする粘性流体の移送における残量低減システム。
【請求項4】
ポンプシャフトの上昇、下降スピード変化の検出手段は、ポンプシャフト部に近接スイッチを取り付けて検出したことを特徴とする請求項3記載の粘性流体の移送における残量低減システム。
【請求項5】
ポンプ出口以降の圧力変化の検出手段は、ポンプ出口以降部に圧力センサーを取り付けたことを特徴とする請求項3記載の粘性流体の移送における残量低減システム。
【請求項6】
エレベーターポンプの下降量変化の検出手段は、エレベーターポンプへ変位センサーを取り付けて検出したことを特徴とする請求項3記載の粘性流体の移送における残量低減システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−322359(P2006−322359A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145217(P2005−145217)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(505182904)パイルスジャパン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】