説明

粘着シート及びその製造方法

【課題】貼付する際に発生する空気溜まりを容易に除去することができると共に、外観及び粘着力が良好な粘着シートを提供する。
【解決手段】基材シートと、少なくともその一方の表面に設けられた粘着剤層を有する粘着シートであって、上記粘着剤層において、(1)基材シート表面に直接に、又は該表面に所定の厚さで設けられた粘着剤基層上に、複数のストライプ状凸状部が所定の間隔をあけて該基材シートの端縁部まで連続して平行に形成されていること、及び(2)隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部が、島状に存在していること、を特徴とする粘着シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、貼付する際に発生する空気溜まりを容易に除去することができると共に、外観及び粘着力が良好な粘着シート、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートは、一般に、基材シートと、その表面に形成された粘着剤層と、通常その上に設けられる剥離シートとから構成されている。そして、使用の際は、剥離シートを剥がし、粘着剤層が被着体に接するように貼付することが行われている。
しかしながら、この粘着シートの面積がある程度広い場合、粘着剤層と被着体との間に空気の溜まりが残留しやすく、この空気の溜まりの部分が、いわゆる「ふくれ」となって、貼付された粘着シートの表面側に膨出物が生じ、粘着シートをきれいに貼付することができにくいという問題があった。そのため、一旦貼付したものを剥がし、貼付をやりなおす方法や、ガラスなどの被着体に貼付する場合には、界面活性剤含有水溶液で被着面を濡らし、粘着シートを貼付し乾燥させる方法など、煩雑な処置が採られていた。
そこで、このような問題を解決するために、例えば、可撓性のある基材と、該基材の一方の面に形成された筆記層と、前記基材の他方の面に形成された粘着層とから成り、前記粘着層はその層表面から突出する多数の小凸部又は細凸条が形成されてなるホワイトボード用シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
このような粘着剤層を設けることにより、サイズの大きなシートであっても、他の部材に容易に貼付でき、しかも貼付した際に、被着体と粘着剤層との間に空気が入ったり、被着体からガスが発生したりしても、小凸部以外の部分と被着体との隙間から、気体が抜けるため、いわゆる「ふくれ」が発生することがない。しかしながら、マーキングシートにおいては、柔軟な基材が用いられるため、このような形状の粘着剤層を有すると、粘着剤層の凹凸を拾って、基材シートの表面に凹凸が現われ、外観が悪くなるという欠点があった。
一方、基材シート上に粘着剤層が設けられた粘着シートにおいて、該粘着剤層はその表面から外方に突出する多数の凸状体を有し、且つ高さの異なる多数の凸状体が混在している、粘着シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この粘着シートにおいては、凸状体によって形成される粘着剤層表面の凹凸によって、空気抜けが容易に確保される上、軽い圧力で押し付ければ、高さの高い凸状体の頂上部を主体に被着体に接触して仮接着による位置決めができ、さらに強く押し付ければ、高さの低い凸状体も被着体に接触して、高さの低い凸状体も含めて被着体との十分の接着部分が得られるので、十分に強固な本接着が可能である。しかしながら、凸状体の高さが不規則であるため、基材シートの表面に凹凸が現われ、外観が悪くなるという欠点があった。
【特許文献1】特開平10−138691号公報
【特許文献2】特開2004−115766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、貼付する際に発生する空気溜まりを容易に除去することができると共に、外観及び粘着力が良好な粘着シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記の好ましい性質を有する粘着シートを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層の表面に、複数のストライプ状凸状部を形成すると共に、隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部を島状に存在させることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]基材シートと、少なくともその一方の表面に設けられた粘着剤層を有する粘着シートであって、上記粘着剤層において、
(1)基材シート表面に直接に、又は該表面に所定の厚さで設けられた粘着剤基層上に、複数のストライプ状凸状部が所定の間隔をあけて該基材シートの端縁部まで連続して平行に形成されていること、及び
(2)隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部が、島状に存在していること、
を特徴とする粘着シート、
[2]隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の島状凸状部が、所定の個数を一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在する上記[1]項に記載の粘着シート、
[3]粘着剤基層の厚さが、1〜60μmである上記[1]又は[2]項に記載の粘着シート、
[4]複数のストライプ状凸状部が、被着体と接する部分の幅100〜3000μm及び高さ2〜40μmである上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の粘着シート、
[5]隣り合うストライプ状凸状部の被着体と接する部分の間隔が、115〜3000μmである上記[1]〜[4]項のいずれかに記載の粘着シート、
[6]隣り合った各ストライプ状凸状部間に島状に存在する複数の独立した不連続の凸状部が、高さ2〜60μmであって、ストライプ状凸状部の高さとの差0〜35μmである上記[1]〜[5]項のいずれかに記載の粘着シート、
[7]複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部が、3個一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在する上記[2]〜[6]項のいずれかに記載の粘着シート、
[8]複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部として、同一形状の2個の直方体又は四角錐台形状物を、ストライプ状凸状部に対して平行に、かつ所定の間隔をあけて並列に位置させると共に、1個の直方体又は四角錐台形状物を、その中心線と上記2個の直方体又は四角錐台形状物の間隙における中心線とが一致するように、かつ該2個の直方体又は四角錐台形状物から、所定の間隔をあけて位置させたものを、3個一組として繰り返しパターン状に規則的に存在させる、上記[7]項に記載の粘着シート、及び
[9]上記[1]〜[8]項のいずれかに記載の粘着シートの製造方法であって、表面に形状転写面を有する剥離処理層が設けられた剥離シートの該剥離処理層上に、粘着剤層を形成したのち、この粘着剤層に基材シートを貼合することを特徴とする粘着シートの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、貼付する際に発生する空気溜まりを容易に除去することができると共に、外観及び粘着力が良好な粘着シート、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の粘着シートは、基材シートと、その表面及び/又は裏面に設けられた粘着剤層を有し、かつ上記粘着剤層には、特定の形状を有する凸状部が形成されている。
[粘着剤層]
(形状)
当該粘着剤層においては、(1)基材シート表面に直接に、又は該表面に所定の厚さで設けられた粘着剤基層上に、複数のストライプ状凸状部が所定の間隔をあけて該基材シートの端縁部まで連続して平行に形成されており、そして、(2)隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部が、島状に存在している。
図1及び図2は、それぞれ当該粘着剤層の形状を説明するための一例の断面模式図及び平面模式図であって、基材シート1の表面に、粘着剤層2が形成されており、該粘着剤層2は、必要に応じて設けられる粘着剤基層2a上に、複数のストライプ状凸状部2bが基材シート1の端縁部まで連続して平行に形成されていると共に、隣り合った各ストライプ状凸状部2b間に、複数の独立した不連続の凸状部2cが島状に存在していることを示している。
【0007】
本発明の粘着シートにおいて、基材シート表面に必要により設けられる粘着剤基層2aの厚さは端縁部から粘着剤のはみ出しを防ぐ観点から、70μm以下が好ましく、1〜60μmがより好ましい。
また、基材シート1表面に直接に、又は上記粘着剤基層2a上に設けられる複数のストライプ状凸状部2bにおいては、その凸部表面は、当該粘着シートの被着体に対する粘着性の観点から平坦であることが好ましく、したがって、ストライプ状凸状部としては、縦断面が方形の形状を有する凸状体(直方体)、あるいは縦断面が台形の形状を有する凸状体が好ましい。
なお、本発明においては、ストライプ状凸状部及び後述の独立した不連続の凸状部の形状に関する説明において、これらの凸状部が上記直方体などのようにエッジ部を有する場合、該エッジ部が、粘着剤層形成時において、不可避的に丸みを帯びる場合があり、したがって該エッジ部が丸みを帯びたものも、その形状に包含されるものとする。
なお、図1及び図2においては、ストライプ状凸状部は直方体形状である。
本発明において、上記ストライプ状凸状部は、空気溜まりの除去性、粘着性、外観などの観点から、被着体と接する部分の幅が100〜3000μm程度であることが好ましく、125〜2000μmであることがより好ましい。また、基材シート表面又は粘着剤基層表面からの高さは2〜40μm程度であることが好ましく、5〜35μmであることがより好ましい。
さらに、隣り合うストライプ状凸状部の被着体と接する部分の間隔は、基材シート表面の外観の観点から、115〜3000μm程度であることが好ましく、125〜2000μmであることがより好ましい。
この複数のストライプ状凸状部は、粘着剤の塗布性の観点から、該粘着剤の塗布方向に対して平行に形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明の粘着シートは、前述で説明したような複数のストライプ状凸状部が、所定の間隔をあけて平行に形成していると共に、隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部が島状に存在することを特徴とするものである。このように、ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部が島状に存在することにより、良好な空気溜まりの除去性を維持すると共に、被着体との粘着性及び外観が良好なものとなる。
本発明においては、上記複数の独立した不連続の島状凸状部は、空気溜まりの除去性、粘着性、外観、形成性などの観点から、所定の個数、好ましくは1〜5個を一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在することが好ましい。
この独立した不連続の島状凸状部の形状としては特に制限はなく、様々な形状の凸状部を挙げることができる。具体的には、縦断面が、三角形、四角形(方形)、台形などの多角形、逆U字、半球などの形状を有する凸状体、さらには円柱、角柱(三角柱、四角柱など)、円錐、角錐(三角錐、四角錐など)などが挙げられる。これらの中で、縦断面が台形となる四角錐台が好ましい。なお、図1及び図2においては、複数の独立した不連続の島状凸状部2cは円柱であり、そして1個一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在している例が示されている。
【0009】
本発明の粘着シートにおいては、隣り合った各ストライプ状凸状部間に島状に存在する複数の独立した不連続の凸状部は、基材シート表面又は粘着剤基層表面からの高さが、2〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。この高さが2μm未満では十分なエア抜け性を有することが困難であり、一方60μmを超えると凸状部の形状を維持することが困難となり、好ましくない。
また、上記独立した不連続の凸状部の高さと、前述したストライプ状凸状部の高さとの差(前者の高さ−後者の高さ)は、−10〜50μmであることが好ましい。この差が−10μm未満では基材表面に凹形状が発生して外観が損われ、50μmを超えると基材表面に凸形状が発生して外観が損われるため、好ましくない。したがって、該差は、より好ましくは0〜35μmである。特に、仮接着による貼り直しが可能であるなど、貼付適性の観点から、独立した不連続の凸状部の高さを、ストライプ状凸状部の高さよりも高くすることが望ましく、該差は2〜35μmであることがさらに好ましい。
本発明の粘着シートにおいては、複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部は、エア抜け性、外観、接着面積のバランスの観点から、3個一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在することが好ましい。
【0010】
具体的には、複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部として、同一形状の2個の直方体又は四角錐台形状物を、ストライプ状凸状部に対して平行に、かつ所定の間隔をあけて並列に位置させると共に、1個の直方体又は四角錐台形状物を、その中心線と上記2個の直方体又は四角錐台形状物の間隙における中心線とが一致するように、かつ該2個の直方体又は四角錐台形状物から、所定の間隔をあけて位置させたものを、3個一組として繰り返しパターン状に規則的に存在させたものを、好ましく挙げることができる。
図3は、当該粘着剤層の形状における好ましい態様の一例を説明するための平面模式図、図4は、上記図3に対応する粘着剤層の形状を示す部分斜視模式図であって、基材シート1の表面に、粘着剤層2が形成されており、該粘着剤層2は、必要に応じて設けられる粘着剤基層2a上に、複数のストライプ状凸状部2bが基材シート1の端縁部まで連続して平行に形成されていると共に、隣り合った各ストライプ状凸状部2b間に、複数の独立した不連続の凸状部が島状に存在していることを示している。
図3及び図4においては、上記複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部として、同一形状の2個の直方体形状物2c−1及び2c−2を、ストライプ状凸状部2bに対して平行に、かつ所定の間隔をあけて並列に位置させると共に、1個の直方体形状物2c−3を、その中心線と上記2個の直方体形状物2c−1及び2c−2の間隙における中心線とが一致するように、かつ該2個の直方体形状物2c−1及び2c−2から、所定の間隔をあけて位置させたものを、3個一組(円で囲んだ部分)として繰り返しパターン状に規則的に存在させたことを示している。
【0011】
隣り合った各ストライプ状凸状部2b間に、独立した不連続の島状に存在する凸状部が図3及び図4に示す形状である場合、該凸状部のサイズや位置の好ましい値は、空気溜まりの除去性、被着体に対する粘着性及び外観などの観点から、以下に示すとおりである。
2c−1及び2c−2は、同一形状の直方体形状物であり、被着体と接する部分の幅は、それぞれ50〜1400μmであることが好ましく、80〜700μmであることがより好ましい。高さは、それぞれ2〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。また、被着体と接する部分の長さは、それぞれ50〜5000μmであることが好ましく、100〜3000μmであることがより好ましい。
さらに、隣り合う2bと、2c−1の被着体と接する部分との間隙、及び隣り合う2bと、2c−2の被着体と接する部分との間隙は、それぞれ5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。2c−1及び2c−2それぞれの被着体と接する部分の間隙は、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。
一方、2c−3の被着体と接する部分の幅は、50〜2900μmであることが好ましく、100〜1900μmであることがより好ましい。また、被着体と接する部分の長さは、50〜5000μmであることが好ましく、100〜3000μmであることが好ましい。隣り合う2bと、2c−3の被着体と接する部分との間隙は、5〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。また、2c−1又は2c−2の被着体と接する部分と、2c−3の被着体と接する部分との間隙は、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。
【0012】
このような形状の粘着剤層を有する本発明の粘着シートは、下記の効果を奏する。
(1)粘着剤層と被着体との間に空気が溜まっても、容易に取り除くことができる。
(2)ストライプ状凸状部間に形成される、独立した不連続の島状凸状部を該ストライプ状凸状部よりも突出させることにより、位置合わせ及び貼り直しが容易となる。
(3)基材シートが凹んで外観が悪くなるのを抑制することができる。
(4)接着面積の減少による粘着力の低下が少ない。
(5)被着体からガスが発生しても、容易に抜けるので、耐ブリスター性が良好である。
【0013】
(粘着剤)
当該粘着剤層の形成に用いられる粘着剤としては特に制限はなく、従来粘着シートの粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤などを用いることができる。また、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋型または非架橋型のいずれであってもよい。
【0014】
[基材シート]
本発明の粘着シートに用いる基材シートとしては、特に制限はなく、従来粘着剤層を有する粘着シートなどの基材シートとして慣用されている各種のプラスチックシートや紙類などを用いることができる。上記材料の表面には印刷、印字、蒸着、スパッタリング等の装飾層や、ハードコート、汚染防止コート、光沢度調整コート等の機能層が形成されてもよい。
このプラスチックシートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、各種オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂;ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の成分を含む熱可塑性エラストマー及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるシートを挙げることができる。
【0015】
また、これらプラスチックシートは、その上に設けられる粘着剤層、印刷層やインク受理層などの層との密着性を向上させるために、所望により酸化法や凹凸化法などの表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けるプライマー処理を施すこともできる。
紙類としては、上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙などが用いられる。基材シートに紙類を用いる場合、坪量は、通常40〜120g/m2の範囲で選定される。
また、基材シートにプラスチックシートを用いる場合、その厚さは特に制限はないが、通常20〜500μm、好ましくは30〜300μmの範囲で選定される。
【0016】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートの製造方法としては、基材シート表面に、前記の形状を有する凸状部を設けた粘着剤層を形成し得るのであれば、いかなる方法も用いることができる。例えば基材シート表面に、平坦な粘着剤層を直接設けたのち、該粘着剤層をエンボスロールと接触させて、所定の形状を有する凸状部を形成させる方法などを用いることができるが、以下の本発明の方法に従えば、効率よく目的の粘着シートを製造することができる。
本発明の粘着シートの製造方法は、表面に形状転写面を有する剥離処理層が設けられた剥離シートの該剥離処理層上に、粘着剤層を形成したのち、この粘着剤層に基材シートを貼合することにより、前述した本発明の粘着シートを製造することを特徴とする。
本発明の方法においては、まず、剥離シート用基材に、エンボスロールなどを用いる従来公知の方法により、所定の形状を形成し、さらに剥離処理剤を塗布することによって形状転写面を設ける。次いで、形状転写面が設けられた剥離シートの剥離処理層上に、粘着剤層を従来公知の方法により形成し、剥離シート付粘着剤層を作製する。次に、この剥離シート付き粘着剤層に基材シートを貼合することにより、該粘着剤層を基材シートに転写する。このようにして、所定の形状を有する凸状部が設けられた粘着剤層をもつ本発明の粘着シートを製造することができる。使用する際には、該剥離シートを剥がし、粘着剤層を被着体に当接し、スキージや指などで圧をかけながら貼ることにより、空気が抜け出し、空気溜まりが発生することがないので、容易に密着性よくきれいに貼付することができる。また、貼付後の粘着シートは、基材シート表面に凹みなどが生じたり、凹凸構造が浮き出たりして、外観が損なわれることもない。
【0017】
(剥離シート)
本発明の製造方法において用いられる上記剥離シートとしては、例えば上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し、厚さ0.05〜5μmの剥離剤層を設けたものなどが挙げられる、この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常10〜250μm程度であり、好ましくは20〜200μm程度である。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた粘着シートの性能は、以下に示す要領に従って評価した。
(1)エア抜け性(空気溜まり消失性試験)
50mm×50mmに裁断し、剥離シートを剥がした粘着シートを直径15mmの円形の空気溜まりができるようにメラミン塗装板に貼り、その粘着シートをスキージにより圧着して、下記の基準に従って評価した。
○:空気溜まりが消失した
×:空気溜まりが消失しなかった
(2)接着面積
粘着シートを切断し、切断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって所定の寸法を測定し、下記の計算式に基づいて接着面積(%)を求めた。
【数1】

(3)外観
50mm×50mmに裁断し、剥離シートを剥がした粘着シートをメラミン塗装板に貼り、スキージで圧着した後、30cm離れて目視したときの外観を下記の基準に従って評価した。
◎:基材表面に外観を損なうような凹凸形状が認められないもの
○:基材表面に凹凸形状がわずかに認められるが目立たないもの
△:基材表面に凹凸形状が明らかに認められるもの
×:外観を損なっているもの
××:外観を著しく損なっているもの
(4)貼り直し性
50mm×50mmに裁断し、剥離シートを剥がした粘着シートをメラミン塗装板に貼り、直ちに手で引き剥がして、下記の基準に従って評価した。
◎:容易に引き剥がすことができるもの
○:容易ではないが基材を損傷せずに引き剥がすことができるもの
【0019】
実施例1
110g/m2の上質紙にポリエチレンを30μmラミネートし、前記ポリエチレン側にエンボスロールを用いて所定の形状の凹部を形成し、さらにシリコーン樹脂を厚さ0.1μm塗布することによって、形状転写面を有する剥離シートを形成した。
次いで、この剥離シートの剥離処理層上に、アクリル系粘着剤[日本合成化学工業社製、「コーポニールN−2147」100質量部、日本ポリウレタン工業社製「コロネートL」1質量部含有]により、粘着剤層を形成したのち、この粘着剤層に、厚さ80μmのポリプロピレン合成紙[ユポ・コーポレーション社製、商品名「ユポSGS80」]を貼合した。これにより、前記図3、図4に示す形状の凸状部が設けられた粘着剤層を有する剥離シート付き粘着シートを作製した。この粘着シートの性能評価結果を第1表に示す。
【0020】
実施例2〜13
実施例1と同様にして、所定の形状転写面を有する剥離シートを形成したのち、この剥離シートの剥離処理層上に、実施例1と同じアクリル系粘着剤により、粘着剤層を形成し、次いでこの粘着剤層に厚さ80μmのポリプロピレン合成紙「ユポSGS80」(前出)を貼合し、前記図3、図4に示す形状の凸状部が設けられた粘着剤層を有する各剥離シート付き粘着シートを作製した。なお、図3及び図4においては、粘着剤層の凸状部は直方体形状を有しているが、実施例9及び12の凸状部は、縦断面が側辺の傾斜角45°である台形の形状を有するものであり、その他の実施例は直方体形状である。各粘着シートの性能評価結果を第1表に示す。
【0021】
比較例1〜3
独立した不連続の島状凸状部を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして各剥離シート付き粘着シートを作製した。各粘着シートの性能評価結果を第1表に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
[注]
凸状部のサイズ、位置は、図3及び図4に示す符号を用いて説明する。
w :2b(被着体と接する部分)の幅
h :2bの高さ
bw :隣り合う2b(被着体と接する部分)の間隙
B1w:2c−3(被着体と接する部分)の幅
B2w:2c−1、2c−2(被着体と接する部分)の幅
h :2c−1、2c−2、2c−3の高さ
l :2c−1、2c−2、2c−3(被着体と接する部分)の長さ
wl :2c−1又は2c−2(被着体と接する部分)と、2c−3(被着体と接する部分)との間隙
bw :2c−1及び2c−2(被着体と接する部分)の間隙
[A−B1]bw:隣り合う2bと2c−3(被着体と接する部分)との間隙
[A−B2]bw:隣り合う2bと2c−1(被着体と接する部分)との間隙、及び隣り合う2bと2c−2(被着体と接する部分)との間隙
h:(2c−1、2c−2の高さ)−(2bの高さ)
h:2aの厚さ
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の粘着シートは、貼付する際に発生する空気溜まりを容易に除去し得ると共に、外観、粘着力及び耐ブリスター性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の粘着シートにおける粘着剤層の形状を説明するための一例の断面模式図である。
【図2】図1に対応する粘着剤層の形状を説明するための平面模式図である。
【図3】本発明の粘着シートにおける粘着剤層の好ましい態様の一例を説明するための平面模式図である。
【図4】図3に対応する粘着剤層の形状を示す部分斜視模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1 基材シート
2 粘着剤層
2a 粘着剤基層
2b ストライプ状凸状部
2c、2c−1、2c−2、2c−3 独立した不連続の島状凸状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、少なくともその一方の表面に設けられた粘着剤層を有する粘着シートであって、上記粘着剤層において、
(1)基材シート表面に直接に、又は該表面に所定の厚さで設けられた粘着剤基層上に、複数のストライプ状凸状部が所定の間隔をあけて該基材シートの端縁部まで連続して平行に形成されていること、及び
(2)隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の凸状部が、島状に存在していること、
を特徴とする粘着シート。
【請求項2】
隣り合った各ストライプ状凸状部間に、複数の独立した不連続の島状凸状部が、所定の個数を一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在する請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
粘着剤基層の厚さが、1〜60μmである請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
複数のストライプ状凸状部が、被着体と接する部分の幅100〜3000μm及び高さ2〜40μmである請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
隣り合うストライプ状凸状部の被着体と接する部分の間隔が、115〜3000μmである請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
隣り合った各ストライプ状凸状部間に島状に存在する複数の独立した不連続の凸状部が、高さ2〜60μmであって、ストライプ状凸状部の高さとの差0〜35μmである請求項1〜5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部が、3個一組として、繰り返しパターン状に規則的に存在する請求項2〜6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
複数の独立した不連続の島状に存在する凸状部として、同一形状の2個の直方体又は四角錐台形状物を、ストライプ状凸状部に対して平行に、かつ所定の間隔をあけて並列に位置させると共に、1個の直方体又は四角錐台形状物を、その中心線と上記2個の直方体又は四角錐台形状物の間隙における中心線とが一致するように、かつ該2個の直方体又は四角錐台形状物から、所定の間隔をあけて位置させたものを、3個一組として繰り返しパターン状に規則的に存在させる、請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の粘着シートの製造方法であって、表面に形状転写面を有する剥離処理層が設けられた剥離シートの該剥離処理層上に、粘着剤層を形成したのち、この粘着剤層に基材シートを貼合することを特徴とする粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−96816(P2009−96816A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266615(P2007−266615)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】