説明

粘着シート

【課題】高い平滑性と保管安定性、及び加工性に優れた粘着シート及びそれを用いた粘着型支持部材を提供する。
【解決手段】本発明の粘着シート1は、剥離処理した剥離処理面2aを備えた剥離フィルム2と、該剥離処理面2a上に形成した粘着層3とを少なくとも備えた粘着シート1であって、剥離フィルム2と粘着層3との引張せん断力が、15mm□において1.5kgf/225mm以上3.0kgf/225mm以下にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの保護膜などを積層するのに用いることができる粘着シート及びこの粘着シートに支持体を積層してなる粘着型支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイや光ディスクなどの光学部材などの保護膜を積層するのに用いることができる粘着シートの需要が高まっている。このような粘着シートは、光学部材の特性に影響を与えないよう、光学的な歪みや欠陥が極めて少く、光学的に高い平滑性のものが求められる。
【0003】
しかしながら、粘着シートは、保管するため巻取体としたり、所望の形状に裁断したり、被着体へ貼合したりする場合において、カールや裁断時の衝撃、工程用剥離フィルムの剥離などにより、粘着層に応力がかかり、粘着層が変形し、光学部材の性能を損ねるといった不具合があった。
【0004】
また、粘着シートは、温度や湿度による寸法変化の大きい、偏光フィルムや位相差フィルム、硬化性樹脂組成物の硬化層等の支持体と組み合わせて用いられることが多く、線膨張係数の大きな支持体や残留応力をもった支持体を貼り合せた状態にて粘着シートを保管した場合、支持体の寸法変化に起因して粘着層と工程用剥離フィルム界面に応力がかかり、光学的特性を損ねる恐れがあった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、硬化前の貯蔵弾性率が10〜10Paであり、硬化後の貯蔵弾性率が10〜1011Paである硬化性の接着剤層を備えたことを特徴とする光ディスク製造用シートが開示されている。このシートは、硬化前の貯蔵弾性率を特定の範囲内とすることで、圧力を印加するだけで保護層を接着することができると共に、接着剤層をあらかじめ均一な層厚で形成し、かつその均一な層厚を保持することが可能であり、さらに、硬化後の貯蔵弾性率を特定の範囲内とすることで、光ディスクに反り等の問題を生じさせることなく、耐押し跡性を付与することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2004−319045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の発明は、粘着剤層の貯蔵弾性率を調整することにより、均一な層厚と、保護層に押し跡が付き難い光ディスク製造用シートを提供するものであるが、一般的に、粘着層には剥離フィルムが積層され、使用時に該剥離フィルムを剥離して使用するものである。剥離フィルムの剥離工程において、粘着層と剥離フィルムとの界面にかかる応力によって剥離フィルムと粘着層とにズレが生じることがあり、また、保管時において、粘着層と剥離フィルムとに微小剥離が生じることがあり、作業性や保管安定性に必ずしも満足できるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、作業性及び保管安定性に優れた粘着シートを提供し、さらには、その粘着シートに支持体を積層してなる粘着型支持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、粘着シートにおいて、剥離フィルムと粘着層との引張せん断力が15mm×15mm□において1.5kgf/225mm以上3.0kgf/225mm以下に収めることで、高い保管安定性と優れた作業性を有する粘着シートを得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の粘着シートは、剥離処理した剥離処理面を備えた剥離フィルムと、該剥離処理面上に形成した粘着層とを少なくとも備えた粘着シートであって、該剥離フィルムと粘着層との引張せん断力が、15mm□において1.5kgf/225mm以上3.0kgf/225mm以下にあることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の粘着シートは、高い平滑性と保管安定性及び作業性に優れるという利点があるため、ディスプレイやブルーレイディスクなどの光ディスク保護膜用途等、粘着シートに対して光学的に高い平滑性が求められる用途に好適に用いることができる。
また、本発明の粘着シートは、線膨張係数や残留応力の大きな支持体と積層させても、支持体自身の寸法変化や残留応力の開放に追随して粘着シートの寸法変化が起こり難いため、例えば、光学フィルムなどを支持体として積層すれば、寸法変化の少ない粘着型光学フィルムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の粘着シートを模式的に表した断面図である。
【図2】剥離フィルムと粘着層との界面の引張せん断力を測定する方法の一例を示した概略図である。
【図3】剥離フィルムの粘着層からの180°剥離強度を測定する方法の一例を示した概略図である。
【図4】図1の粘着シートに支持体を積層した粘着型支持部材の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(粘着シート1)
本発明の一実施形態の粘着シート1は、図1に示すように、剥離処理した剥離処理面2aを備えた剥離フィルム2と、該剥離処理面2aに形成した粘着層3とを少なくとも備え、剥離フィルム2と粘着層3との引張せん断力が、15mm□において1.5kgf/225mm以上3.0kgf/225mm以下の物性を備えたことを特徴とする。
【0014】
(引張せん断力)
粘着シート1は、引張せん断力を上記範囲に収めることによって、高い平滑性と保管安定性、及び優れた作業性を両立させることが可能となる。
このように本発明においては、上記物性を備えることが重要であり、剥離フィルムと粘着層との引張せん断力が15mm□において1.5kgf未満であると、粘着シートをハーフカットした場合や枚葉シートとして保管した場合、特に、粘着層に線膨張係数や残留応力の大きい支持体を設けた場合、粘着層と剥離フィルムとの界面にかかる応力によって、粘着層と剥離フィルムとの界面でズレを起こしやすく好ましくない。3.0kgfを超えると、保持力が高すぎて剥離フィルムの剥離除去工程において作業性を損ねることや、粘着層に支持体を設けた場合に、残留応力や環境変化等による寸法変化を緩和しきれず、粘着層と剥離フィルムとの界面に微小剥離が起こりやすくなり好ましくない。
なお、引張せん断力とは、図2に示すように、粘着層5及び剥離フィルム6からなる粘着シート4(150mm長さ、15mm巾)の粘着層5に支持体7(150mm長さ、15mm巾)を、15mm巾×15mm長で重ねて積層した短冊状の試験片を作成し、引張試験機にて支持体7と粘着シート4とを相対する方向に速度5mm/分で引っ張り、引き剥がす際にかかる応力を示す。
【0015】
(引張せん断力にかかる物性)
引張せん断力は、主に、粘着層と剥離フィルムとの界面凝集力に支配されており、これを調整することにより、剥離フィルムと粘着層との引張せん断力を調整することができる。
保管や作業時に粘着層が予期せぬ微小剥離を起こすのは、打ち抜き、裁断等の作業や保管時の粘着シートのカール、積層した支持体の湿熱環境変化による寸法変化や残留応力等により、粘着層と剥離フィルムとの界面に大きな応力がかかり、その応力を開放するために、粘着層が引き剥がし方向に変形するためである。従って微小剥離による剥離痕を改善するためには、変形応力をせん断方向にある程度緩和させればよい。
そのため、粘着層は、保持力や耐久性を維持できる範囲において架橋度を調整して粘着層のせん断貯蔵弾性率を下げ、剥離フィルム界面凝集力を下げることにより、応力を緩和することができる。
また、剥離フィルムの組成も引張せん断力に大きく影響を与える。剥離強度は、主に離型フィルム中の離型剤の構造及び添加量によるところが大きく、そのため、せん断方向の界面凝集力を小さくするためには、フィラー等を添加して滑り性をよくすればよい。
【0016】
(180°剥離強度)
粘着シート1は、剥離フィルム2の粘着層3からの180°剥離強度が、剥離速度50mm/分において、100mN/50mm幅以上500mN/50mm幅以下であることが好ましく、特に150mN/50mm幅以上300mN/50mm幅以下が好ましい。
180°剥離強度が100mN/50mm幅以上であれば、裁断、打抜等の2次加工工程において、粘着層と剥離フィルム界面が浮き難く、また、保管時において、粘着シートにカール等の曲げ歪みがかかったり、粘着層に積層した支持体の湿熱環境変化による寸法変化によって微小剥離が徐々に起こったりした場合でも、粘着シートの平滑性が損なわれたりするのを抑えられる。また、500mN/50mm幅以下であれば、粘着層から剥離フィルムを剥離する際に引っ掛りが起こらない。
【0017】
なお、180°剥離強度とは、図3に示すように、粘着シート8を、長さ200mm、巾50mmの短冊状の試験片とした上で、粘着層9の剥離フィルム10を有する面とは反対側の面にガラス等の平坦な板材11を積層し、剥離フィルム10の一端を180°の角度で引き剥がし、剥離フィルム10と粘着層9及び板材11とを相対する方向に引張したときにかかる応力を示す。
【0018】
(180°剥離強度にかかる物性)
粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は、主に、剥離界面となる粘着層及び剥離フィルムの変形応力と、剥離時にかかる圧着応力とに支配されており、これらを調整することにより、剥離フィルムと粘着層との180°剥離強度を調整することができる。
【0019】
変形応力は、剥離強度の速度依存性へ主に影響を与える因子であり、剥がす速度が遅い場合は粘着層のずり変形の影響が大きく、高速になる程引張の影響が大きくなる。
引張応力によって粘着層が引き伸ばされて変形が起こると、かかる力の一部が吸収されるため、剥離にかかる力が大きくなり、このため高速で剥離する程剥離強度が大きくなる。
従って、接着剤としての十分なタックや、所望の被着体に対する接着性能が維持される範囲において、粘着層の架橋度及び高凝集成分添加量を調整し、見かけ上粘着層を硬く、変形しにくくすることにより、剥離強度の速度依存性は小さくなる傾向となる。
粘着層の変形のしやすさに対して剥離フィルムは一般的に十分硬いため、影響は小さいものの、剥離フィルムの離型処理面にも同様の傾向が見られる。
【0020】
また、圧着応力は任意の剥離速度において剥離強度に影響を与える因子であり、粘着層から剥離フィルムを引き剥がす際、剥離フィルムは折り曲がる為、粘着層と剥離フィルムとが完全に分離する点において、この原理により圧着応力が発生する。これは剥離角度(剥がし方)の影響もあるものの、工程用剥離フィルムの厚みやコシによっても調整可能であり、すなわち剥離フィルムを薄く、軟質にする程小さくなる傾向となる。
【0021】
さらに、剥離フィルムの組成も当然剥離強度に大きく影響を与える。剥離強度は、主に離型処理面中の離型剤の構造及び添加量によるところが大きいが、剥離速度依存性を小さくするためには、十分な剥離性をもつだけの離型剤の配合量を維持した範囲において、架橋剤や高硬度成分の添加量を増やして硬くし、変形しにくくすることが好ましい。
【0022】
(剥離フィルム2)
剥離フィルム2は、特に限定するものではないが、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系のキャストフィルム、延伸フィルムや離型紙などを用いることができ、この一面にシリコーンなどの離型剤を塗布などして剥離処理面2aを形成したものが好ましい。
剥離フィルム2の厚みとしては、10μm〜250μm、特に38μm〜100μmとすることが好ましい。
【0023】
剥離フィルム2は、塗布する離型剤の成分を調整し、上記した物性を満たすようにするのが好ましい。
離型剤は、アルキド樹脂組成物等、離型性を付与できるものであれば限定せず用いることができる。
離型剤の塗工方式としては、グラビアコーティング、ロールコーティング、ロッドコーティング、ナイフコーティング、ブレードコーティング、スクリーンコーティング、ダイコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング等既知の方式などを用いることができる。
【0024】
(粘着層3)
粘着層3を構成するベースポリマー(主剤)としては、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系などのポリマーを挙げることができ、その性状(形態)は、液状体、高粘性体、エラストマー状体などの各種性状のものを用いることができる。このようなベースポリマーを適宜選択し、粘着層3を形成することができる。
【0025】
(ベースポリマー)
上記ベースポリマーの中でも、アクリル系、特に(メタ)アクリル酸エステル重合体(共重合体を含む)をベースポリマーとして用い、これを架橋して粘着層3を形成するのが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル重合体を合成するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート等が挙げられる。これら主モノマーに、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、イタコン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、無水マレイン酸等の架橋性モノマーや、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、スチレン、フッ素アクリレート、シリコーンアクリレートなどの高凝集モノマーや官能基含有モノマーを適宜添加することができる。
【0027】
これらのモノマーを用いた重合処理としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の重合方法が採用可能であり、その際に重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いることによりアクリル酸エステル共重合体を得ることができる。
【0028】
(架橋剤)
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。
【0029】
エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリンなどを挙げることができる。アジリジン系架橋剤の例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2メチルアジリジン)プロピオネートなどを挙げることができる。
【0030】
これら架橋剤の含有量は、貯蔵せん断弾性率が下記に示した範囲内に入るよう適宜調整すればよいが、ベースポリマーの架橋性基導入量に対して、0.5〜2等量の範囲であることが好ましい。
架橋剤が0.5等量以上であれば、粘着層の凝集力が不十分となったり、変形が起こり易く保管安定性に劣ったりすることがなく、裁断等2次加工時に時端面に粘着層のはみ出しが起こりにくく好ましい。また2.0等量以内であれば、粘着剤が硬くなりすぎて接着力が低下したり、応力緩和性が損なわれて積層シートにカールが発生したり、相溶性の低下による白化等の不具合が起こったりするなどの問題がなく好ましい。
【0031】
(架橋モノマー)
上記架橋剤の代わりに架橋モノマーを使用することもでき、架橋モノマーとしては、アクリル系架橋モノマーを用いるのが好ましく、中でも、単官能(メタ)アクリレートよりは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、若しくは、単官能〜4官能(メタ)アクリレートの2種以上が混合してなる混合物が好ましい。
【0032】
単官能(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸、メタタクリル酸及びクロトン酸等の(メタ)アクリル酸類、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプオピルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートおよびジシクロペンタンジエンアクリレート等を挙げることができる。
【0033】
2官能(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレート等を挙げることができる。
【0034】
3官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート等のトリアクリレートや、それらのトリメタクリレートなどを挙げることができる。
【0035】
4官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等を挙げることができる。
【0036】
なお、架橋モノマーは、以上例示した(メタ)アクリレートに限定されるものではなく、例えば有機官能基を含有した(メタ)アクリレートモノマー等も好適に用いることが可能である。
【0037】
架橋モノマーの含有量は、下記貯蔵せん断弾性率を所定範囲内に入るように調整すればよいが、ベースポリマー100質量部に対して、0.5〜25質量部の範囲で、ベースポリマーの分子量が低ければ多く、高ければ少なくなるように適宜調整すれば良い。
【0038】
(架橋開始剤)
上記架橋モノマーを使用した場合において、各種架橋開始剤として、光開始剤あるいは熱重合開始剤を用いることが可能であり、特に光開始剤が好ましい。光開始剤としては、開裂型の光開始剤及び水素引抜型の光開始剤のいずれを用いることもでき、中でも水素引抜型光開始剤が好ましい。水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、イソブチルチオキサンソンやなどのいずれかもしくはその誘導体、或いはこれらの二種類以上の組み合わせからなる混合成分を用いることができる。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。また、水素引抜型と開裂型とを種々の割合で併用してもよい。
【0039】
光開始剤の添加量は、特に制限されるものではなく、一般的にはベースポリマー100質量部に対し0.1〜5質量部の割合の範囲内で調整するのがよい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0040】
(他の添加剤)
上記成分のほか、必要に応じて、近赤外線吸収特性を有する顔料や染料などの色素、粘着付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズなどの各種の添加剤を適宜配合することもできる。
【0041】
(粘着層3の物性)
粘着層3の物性は、粘着層2を構成するベースポリマーと、架橋剤とを適宜選択し、これらを含有する粘着剤組成物を周波数1Hzにおけるせん断貯蔵弾性率の100℃における値が1万Pa以上、好ましくは2万Pa以上、及び10万Pa以下、好ましくは5万Pa以下となるように架橋度を調整することが好ましい。
1万Pa以下では、粘着層の凝集力が弱く、保管時に工程用剥離フィルム界面でズレが生じ、被着体に貼合した場合にクリープが発生しやすいなど保管安定性に劣り好ましくない。10万Pa以上では、凝集力が高く応力緩和性に劣り、粘着シートを屈曲した場合や、線膨張係数(や残留応力)の大きな支持体を設けた場合等にかかる応力が開放されず、剥離フィルムと粘着層界面に剥離が生じやすく好ましくない。
【0042】
(積層構成)
また、粘着シート1は、図4に示すように、粘着層3上に、支持体12を設けた粘着型支持部材13とすることができ、例えば、支持体としては、液晶表示装置等の画像表示装置に用いる、偏光板、位相差フィルム、拡散フィルム等の各種光学フィルムやポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリイミド、ウレタンアクリレートを主成分とするUV硬化樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物など硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂フィルムなどの基材フィルム等を挙げることができる。これらフィルムなどを多層に積層してもよい。
また、剥離フィルムと粘着層との引張せん断力及び剥離強度を本発明に記載した範囲に収める事によって、特に線膨張係数が150ppm/℃以上の寸法変化の大きい支持体を用いても、保管安定性に優れた積層体を提供する事が出来る。
【0043】
(製造方法)
粘着シート1の製造法としては、例えば、重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いて、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの重合方法により、各種(メタ)アクリル酸エステル重合体を得て、該重合体を架橋・製膜することで製造する方法を挙げることができる。これらの中でも溶液重合により、各種(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得て、該重合体を含有する上記粘着剤組成物を、剥離フィルム上に目的の厚さになるように製膜し、溶剤を乾燥させて架橋することで製造する方法が好ましい。
粘着型支持部材は、例えば、上記のように製造した粘着シートに支持体を貼り合せることにより製造することができる。
【0044】
(用途)
粘着シート1は、ディスプレイや光ディスクなどの光学部材等に保護膜などを貼付するのに好適に用いることができ、特に、高い平滑性の求められるブルーレイディスクにおいて、保護膜を積層するために用いるのが好適である。
また、粘着層3の剥離フィルム2が位置する面とは反対側の面に、支持体を積層して粘着型支持部材とすることができ、寸法変化の少ない粘着型光学フィルムとして用いることができる。
【0045】
(用語の説明)
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば、厚さに関して言えば、狭義では100μm未満のものをフィルムと称することがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0046】
本発明では、「モノマー」と記載した場合でも「オリゴマー」を包含するものとする。「オリゴマー」とは、JIS−K6900による定義では「1種又はそれ以上の種類の原子または原子団(構成単位)の少数が互いに繰り返し連結されたものを含む分子からなる物質」とされ、また、高分子大辞典によれば「この定義は、必ずしも絶対的な重合度や分子量でポリマーとオリゴマーを区別するものではない」とされている。一般的にモノマーとオリゴマーの区別は不明確であり、分子中に構成単位の繰り返しがあってもモノマーと呼称する場合もあるから、本発明では、モノマーとオリゴマーとは区別せず、モノマーにオリゴマーを包含するものとする。
【0047】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
アクリル酸ブチル70質量部、アクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸メチル18質量部及びアクリル酸2質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加え粘着主剤溶液を調整した。
この粘着主剤溶液1kgに対して、架橋剤としてエポキシ化合物(綜研化学社製E−5XM)を1g加え粘着層溶液とした。続いて剥離フィルムとしてシリコーンにて離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(ニッパ製PET75−HSPX、厚み75μm)の離型処理面に、前記粘着層溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるよう塗布、乾燥させた後、その上に、UV硬化樹脂組成物を紫外線照射にて硬化させて得たアクリル樹脂フィルム(線膨張係数160ppm/℃、厚み80μm)を積層し、この状態で温度23℃湿度60%環境下1週間養生して粘着剤を架橋させ、粘着シートを作製した。
なお、UV硬化樹脂組成物の樹脂組成は、ウレタンアクリレート50質量部、トリシクロデカンジアクリレート30質量部、フェノキシエチルアクリレート20質量部、光重合開始剤(イルガキュア184)2質量部である。
この粘着層の貯蔵せん断弾性率G’は100℃において40000Paであり、この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は105mN/50mm幅、引張せん断力は1.6kg/225mmであった。
【0050】
(実施例2)
エポキシ架橋剤を、イソシアネート架橋剤(旭化成 デュラネートTPA−100)0.1gに変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。この粘着層の貯蔵せん断弾性率G’は100℃において30000Paであり、この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は110mN/50mm幅、引張せん断力は1.5kg/225mmであった。
【0051】
(実施例3)
アクリル酸ブチル90質量部、アクリル酸メチル7質量部、アクリル酸3質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加えて粘着主剤溶液を調整し、該粘着主剤溶液1kgに対して、架橋剤としてイソシアネート化合物(綜研化学製 TD−75)を1.5g加え粘着層溶液としたものを用い、剥離フィルムとしてダイヤホイルMRF−75(厚さ50μ)を用いた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
この粘着層の貯蔵せん断弾性率G’は100℃において43000Paであり、この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は157mN/50mm幅、引張せん断力は2.5kg/225mmであった。
【0052】
(比較例1)
剥離フィルムとして、ニッパ製PET50−A3(厚さ50μm)を用いた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は90mN/50mm幅、引張せん断力は1.4kg/225mmであった。
【0053】
(比較例2)
剥離フィルムとして、パナック製NP−75B(厚さ75μm)を用いた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は160mN/50mm幅、引張せん断力は3.4kg/225mmであった。
【0054】
(比較例3)
剥離フィルムとして、ニッパ製PET75−SR(S)(厚さ75μm)を用いた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は119mN/50mm幅、引張せん断力は1.3kg/225mmであった。
【0055】
(比較例4)
剥離フィルムとして、東セロ製O2−BU(厚さ75μm)を用いた以外は実施例2と同様にして粘着シートを作製した。
この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は250mN/50mm幅、引張せん断力は4.0kg/225mmであった。
【0056】
(比較例5)
アクリル酸ブチル63質量部、アクリル酸メチル35質量部、ヒドロキシエチルアクリレート2質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加え粘着主剤溶液を調整し、該粘着主剤溶液1kgに対して、架橋剤としてイソシアネート化合物(綜研化学製 TD−75)を5g加え粘着層溶液としたものを用いた以外は実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
この粘着層の貯蔵せん断弾性率G’は100℃において23000Paであり、この粘着シートの粘着層と剥離フィルムとの180°剥離強度は126mN/50mm幅、引張せん断力は3.7kg/225mmであった。
【0057】
[評価]
(保管安定性)
実施例及び比較例の粘着シートを15cm×20cmに打ち抜いて一週間静置保管した後、外観を目視で確認し、端部に剥離フィルムと粘着層との剥離痕やズレによる欠陥が観察されたものを×、外観が変化しないものを○と評価した。
【0058】
(作業性)
実施例及び比較例の粘着シートを剥離フィルムから剥離速度2m/分にて剥離して剥離後の粘着層の外観を目視で確認し、面状態に変化のないものを○、剥離痕による面荒れが残ったものを×と評価した。
【0059】
【表1】

【0060】
(結果)
実施例1〜3は、保管安定性、作業性ともに優れたものであった。比較例1〜5は、保管安定性、作業性のいずれか又は両方が劣るものであった。
【符号の説明】
【0061】
1粘着シート 2離型フィルム 3粘着層 12支持体 13粘着型支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離処理した剥離処理面を備えた剥離フィルムと、該剥離処理面上に形成した粘着層とを少なくとも備えた粘着シートであって、
剥離フィルムと粘着層との引張せん断力が、15mm□において1.5kgf/225mm以上3.0kgf/225mm以下であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
剥離フィルムの粘着層からの180°剥離強度が、剥離速度50mm/分において、100mN/50mm幅以上500mN/50mm幅以下である請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むベースポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物からなる請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着層は、架橋後において、100℃での1Hzにおけるせん断貯蔵弾性率が、1万Pa以上10万Pa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シートにおいて、粘着層の剥離フィルムが位置する面とは反対側の面に、線膨張係数が150ppm/℃以上の支持体を設けてなる粘着型支持部材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シートからなる光学部材用粘着シート。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シートからなる光ディスク用粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−235857(P2010−235857A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87244(P2009−87244)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】