説明

粘着テープ

【課題】良好な手切れ性を有しつつも繊維屑の発生が抑制された粘着テープを提供する。
【解決手段】基材10の一面側に粘着剤層20が設けられてなる粘着テープであって、前記基材が、テープ長手方向に延在する経糸と、該経糸に交差する方向に延在する緯糸とが織成されてなり、該緯糸には熱融着性を有する繊維が含有され、該繊維が前記経糸を構成する繊維に熱融着されていることを特徴とする粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一面側に粘着剤層が設けられてなる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材どうしを接合する用途や、複数の部材を結束して一纏めにするような用途において基材の一面側に粘着剤層が設けられてなる粘着テープが広く用いられている。
中でも、テープ長手方向に延在する経糸と、該経糸に交差する緯糸とが織成されてなる基材を有する粘着テープは、樹脂フィルムを基材に採用している粘着テープに比べるとハサミやカッターナイフなどを用いることなく指先で摘んで引裂くだけでテープ幅方向に比較的真っ直ぐに切断することができ部材の接合や結束といった作業を容易に実施することができることから広く利用されている。
【0003】
このような引裂きの容易さについては“手切れ性”などと呼ばれ、粘着テープの特性を表す一つの指標にもなっており、下記特許文献1においては、手切れ性に優れたポリエステル繊維について検討がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−31566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように経糸と緯糸とが織成されてなる基材を採用することで手切れ性に優れ、部材の接合や結束といった作業時における効率の向上を図ることができる一方でこのような基材を有する粘着テープを用いると、基材を構成している糸から繊維屑が発生し周囲に飛散するような問題を生じさせるおそれを有する。
例えば、乗用車などの車両においては、コネクターなどの装着された複数の電線を結束して一纏りにさせたワイヤーハーネスと呼ばれる電装品が搭載されており、このワイヤーハーネスの結束用にも上記のような基材が採用された粘着テープが利用されたりしているが、このような用途において粘着テープから繊維屑が発生すると当該繊維屑がコネクター内に入り込んで端子間での接触不良を生じさせるおそれを有する。
【0006】
なお、繊維屑の発生については、ワイヤーハーネスの結束に用いられる場合においてのみ問題になるものではなく、種々の用途において問題を発生させるおそれを有することから対策が求められているが、これまで有効な手立てが確立されてはいない。
即ち、従来、良好な手切れ性を有しつつも繊維屑の発生が抑制された粘着テープの提供が困難になっており、本発明は、このような問題を解決することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、繊維屑の発生要因について検討を行ったところ、切口において経糸による拘束の解かれた緯糸が粘着テープから脱離して繊維屑の主要因になっていることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、前記課題を解決するための粘着テープに係る本発明は、基材の一面側に粘着剤層が設けられてなる粘着テープであって、前記基材が、テープ長手方向に延在する経糸と、該経糸に交差する方向に延在する緯糸とが織成されてなり、該緯糸には熱融着性を有する繊維が含有され、該繊維が前記経糸を構成する繊維に熱融着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着テープは、緯糸に熱融着性を有する繊維が含有されており、該繊維が前記経糸を構成する繊維に熱融着されていることから、当該粘着テープの切口において緯糸が脱離することが抑制され得る。
従って、本発明によれば良好な手切れ性を有しつつも繊維屑の発生が抑制された粘着テープが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】粘着テープの構成を示す概略断面図。
【図2】比較例1の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【図3】比較例2の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【図4】比較例3の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【図5】比較例4の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【図6】比較例5の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【図7】実施例1の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【図8】実施例2の粘着テープの基材の切断端部を示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、図1、2を参照しつつ、本実施形態に係る粘着テープについて説明する。
【0011】
この図1は、本実施形態の粘着テープの断面構造を模式的に示した断面図である。
この図にも示すように、本実施形態に係る粘着テープ1は、基材10と、該基材10の一面側に設けられた粘着剤層20との2層構成を有している。
前記基材10には、良好なる手切れ性を前記粘着テープ1に発揮させるべく、テープ長手方向に延在する経糸と、該経糸に直交する方向に交差する緯糸とが織成された繊維シートが採用されている。
【0012】
前記経糸、及び、前記緯糸は、その構成材料が特に限定されるわけではないが、前記緯糸には熱融着性を有する繊維(以下、「熱融着性繊維」ともいう)が含有されており、且つ、前記基材10において、経糸を構成している繊維に前記熱融着性繊維を熱融着させていることが本実施形態の粘着テープ1からの繊維屑の発生を抑制させる上で重要である。
【0013】
このことについて説明すると、経糸と緯糸との間に何等接着性を有していない場合には、テープ幅方向に横断するように粘着テープ1を切断した場合に切口に最も近い部分の緯糸が脱落し、この緯糸に続いて2番目に近い緯糸も脱落することになる。
そして、次々と緯糸が脱落して多量の繊維屑を発生させることになる。
しかも、緯糸が脱落すると、この緯糸が脱落した領域においては経糸が拘束されない状態になるため当該経糸によって切口付近に毛羽立ちを生じさせるおそれも有する。
【0014】
一方で本実施形態に係る粘着テープ1は、基材10の緯糸に熱融着性繊維が備えられており、しかも、当該熱融着性繊維を経糸を構成する繊維に熱融着させていることから切口における緯糸の脱落や、経糸の毛羽立ちといった問題の発生を抑制させることができる。
【0015】
なお、緯糸や経糸は、短繊維を紡績した紡績糸であっても、複数の長繊維からなる撚糸やフラットヤーンであってもよい。
さらには、単繊維(モノフィラメント)からなる緯糸や経糸も採用が可能である。
緯糸や経糸を複数の繊維で構成させる場合には、これらを構成する全ての繊維が熱融着性を有している必要はなく、その内の少なくとも1以上の繊維が熱融着性を有していればよい。
また、経糸と緯糸との両方に熱融着性繊維を備えさせる場合には、採用する繊維、太さ、材質等を共通させる必要はなく、経糸と緯糸とで採用する熱融着性繊維を異ならせていてもよい。
さらには、緯糸どうしの間、経糸どうしの間でも熱融着性繊維を異ならせても良い。
【0016】
また、本実施形態の粘着テープは、熱融着性繊維を備えていない緯糸を一部に採用することも可能である。
即ち、基材10を2種類の緯糸を用いた構成とし、該緯糸の一方を複数の繊維の内の一部又は全部に熱融着性繊維が用いられてなるマルチフィラメント糸とし、他方を熱融着性繊維を全く含んでいないマルチフィラメント糸とするような態様も本発明が意図する範囲のものである。
しかし、熱融着性繊維を有する緯糸の間に、熱融着性繊維を含んでいない緯糸が過度に存在すると、本発明の効果を大きく低下させてしまうおそれを有する。
したがって、基材10における緯糸のピッチなどにもよるが、通常、熱融着性繊維を含んでいない緯糸を設ける場合には、5本に1本の割合以上で熱融着性繊維を有する緯糸を設けることが好ましく、3本に1本以上の割合以上で熱融着性繊維を有する緯糸を設けることが特に好ましい。
この熱融着性繊維を有する縦糸や緯糸は、加熱することによって含有する熱融着性繊維でその糸を構成している全ての繊維を一体化させることができるような割合で熱融着性繊維を含有させることが好ましい。
【0017】
上記のような熱融着性繊維としては、通常、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂繊維を採用することができる。
また、樹脂繊維の中でも、芯鞘構造を有し、芯部(中心部)に比べて融点の低い熱可塑性樹脂で鞘部(外周部)が形成されている熱融着性繊維が緯糸や経糸に好適に用いられ得る。
【0018】
なお、前記基材10としては、通常、上記のような経糸と緯糸とが平織りされてなるものを採用することができるが、要すれば、経糸と緯糸とが綾織、或いは、朱子織されたものであってもよい。
【0019】
なお、このような基材10は、適宜、前記粘着剤層20を形成させる際に粘着剤の裏抜けを防止するための裏抜け防止処理や、粘着剤層との界面接着力を向上させるためのアンカーコート処理を施して粘着テープ1の形成に利用することができる。
また、当該粘着テープ1をロール状に巻回した状態で製品化するような場合であれば、前記基材10に自背面処理を施しておくことも可能である。
【0020】
また、前記粘着剤層20を形成させるための粘着剤としては、一般的な、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤などを採用することができるが、有機溶剤を用いることなく基材表面に塗布することができ、局所排気等の装置に過度の負担を掛けることなく粘着テープ1の製造環境を良好なものとし得る点において水系エマルジョンタイプの粘着剤を用いることが好ましい。
【0021】
このような水系エマルジョンタイプ粘着剤としては、各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0022】
本実施形態に係る粘着テープ1は、前記基材10の緯糸に熱融着性繊維が備えられており、該熱融着性繊維が前記経糸を構成する繊維に熱融着されていることから、例えば、前記粘着剤層20の表面を、前記基材10の表面(粘着テープの背面)に直接接着させて当該粘着テープをロール状に巻き重ね、使用時に外側から粘着テープを引き剥がして利用するような一般的な態様で使用されるのに際して基材20の経糸や緯糸が切断されて毛羽立ちが生じたり、基材20が厚み方向に凝集破壊される、所謂“層割れ”という現象を起したりし難くなっている点においても優れているといえる。
【0023】
また、緯糸に備えられた熱融着性繊維が経糸に熱融着されていることで、基材20の表面に他の部材が触れた場合でも擦過傷などを生じさせ難く、仮に、傷が付いた場合でも繊維が脱離し難く繊維屑の発生が抑制されることになる。
【0024】
このようなことから、本実施形態に係る粘着テープ1は、他部材との接触機会が多く、且つ、繊維屑の発生防止に対する要望が特に強い車両用のワイヤーハーネスにおける結束用テープとして好適なものであるといえる。
【0025】
本実施形態に係る粘着テープを車両用のワイヤーハーネスにおける結束用テープとして利用するような場合においては、例えば、繊維本数20〜70本の全体太さ56〜84dtexの経糸が60〜180本/インチの打込本数で設けられ、且つ、繊維本数30〜395本の全体太さ167dtex以下の緯糸が60〜108本/インチの打込本数で設けられた、厚み100〜200μm、目付け50〜100g/m2の平織りされた基材を採用することが好ましい。
なお、緯糸における熱融着性繊維の割合は、30質量%以上であることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態に係る粘着テープを車両用のワイヤーハーネスにおける結束用テープとして利用するような場合においては、JIS L 1096 A法による長さ方向における引張強さが50N/インチ以上、伸び率が20%以上となる基材を採用することが好ましく、JIS L 1096 D法による幅方向における引裂強さが0.5N以上となる基材を採用することが好ましい。
【0027】
また、本実施形態に係る粘着テープを車両用のワイヤーハーネスにおける結束用テープとして利用するような場合においては、前記粘着剤層20は、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を用いて20〜50μmの厚みとすることが好ましい。
さらに、粘着テープにおける自背面粘着力が5〜8N/19mm幅、巻戻し力が3〜7N/19mm幅となるように、粘着剤の材料選択、及び/又は、前記基材20の自背面処理による調整が行われることが好ましい。
【0028】
ワイヤーハーネス用途においては、通常、難燃性が求められることから、前記粘着剤層20は、難燃剤を含有する粘着剤によって形成されることが好ましく、前記難燃剤としては、リン系、シリコーン系、金属水酸化物系などのノンハロゲン系難燃剤を採用することが燃焼時における腐食性ガスの発生やオゾン層破壊物質の発生防止を図る上において好ましい。
【0029】
なお、本実施形態においては、繊維屑がコネクター内に侵入した際に端子間での接触不良を発生させるおそれがあること、優れた作業性が求められており、手切れ性が良好であることが強く求められていること、並びに、振動によって擦過傷などを生じやすく基材に繊維シートを用いることで繊維屑を発生させ易いことなどから本発明の粘着テープの好適な実施態様としてワイヤーハーネスの結束用テープを例示しているが、本発明の粘着テープは、上記のような用途に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(比較例1〜5、実施例1〜2)
各比較例、及び、実施例の粘着テープを表1に示す基材を用いて作製した。
なお、経糸は全てポリエステル樹脂製の熱融着性繊維で構成した。
また、実施例1、2は、緯糸の3本に1本を経糸と同等の糸(全て熱融着性ポリエステル樹脂繊維使用品)とした。
また、それ以外の緯糸は、一般的なポリエステル樹脂製繊維で構成した。
なお、表1の「緯糸」の太さやフィラメント数は、この熱融着性ポリエステル樹脂繊維を使用していない糸についてのものである。
また、基材は、下記に示すような経糸と緯糸とを平織りにした後に熱を加え、熱融着性繊維を含有する経糸及び緯糸については、全ての繊維を含有する熱融着性繊維によって一体化させてあたかもモノフィラメントのような状態にし、しかも、これらの糸を、接する他の糸に熱融着させて作製したものである。
ただし、比較例1は、全てアセテート繊維からなるもので、熱融着性繊維は、経糸、緯糸の全てにおいて用いられていない。
【0031】
【表1】

【0032】
比較例1においては、有機溶剤を含有するアクリル系粘着剤で、その他の比較例、実施例においては水エマルジョンタイプの実質的に有機溶剤を含有していないアクリル系粘着剤で上記表1に示す基材の片面に粘着剤層を形成させて粘着テープを作製した。
この粘着テープの特性を下記表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
(繊維屑の発生)
各実施例、比較例の粘着テープに用いた基材を緯糸方向に(経糸と交差する方向に)手で引き裂いた端部の様子を顕微鏡で観察した。
その結果を、図2〜8に示す。
なお、写真上下方向に延在する糸が経糸で該経糸に直交する横方向に延在する糸が緯糸である。
また、図7、8において符号「A」で示した緯糸が熱融着性を有する繊維で構成されたものである。
この写真からも明らかなように、実施例の粘着テープに用いた基材以外では、切断した端部において緯糸を構成している繊維が脱落しているのに対し、実施例の粘着テープに用いた基材においては、切断した端部からの繊維の脱落が見られない。
このことからも、本発明によれば繊維屑の発生が抑制され得ることがわかる。
【符号の説明】
【0035】
1:粘着テープ、10:基材、20:粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面側に粘着剤層が設けられてなる粘着テープであって、
前記基材が、テープ長手方向に延在する経糸と、該経糸に交差する方向に延在する緯糸とが織成されてなり、該緯糸には熱融着性を有する繊維が含有され、該繊維が前記経糸を構成する繊維に熱融着されていることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
車両用ワイヤーハーネスの結束に用いられる請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記経糸にも熱融着性を有する繊維が含有されている請求項1又は2記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229351(P2012−229351A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99369(P2011−99369)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】