説明

粘着フィルム又はシート

【課題】初期粘着力が適正で、且つ、粘着力の経時的昂進が充分に抑制され、若干の熱履歴を受けたり、長期間貯蔵しても、適度な粘着力を適正な範囲に維持でき、然も、所望により粘着フィルム又はシートに高度の透明性を付与できる物品表面保護用粘着フィルム又はシートを提供する。
【解決手段】エチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)と融点115℃以上の高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)との混合樹脂からなる粘着フィルム又はシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度な初期粘着力を有し、且つ、その粘着力の経時昂進が抑制され、適正な一定の粘着力を長期間にわたって持続することができる粘着フィルム又はシートに関する。本発明の粘着フィルム又はシートは、物品の表面を保護する用途に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
粘着フィルム又はシートは、従来から、合成樹脂板、化粧板、金属板及び塗装鋼板等の製品の表面を、塵の付着、汚れ及び傷から保護するための表面保護用フィルムとして、又、窓ガラス表面の保護用フィルムとして、自動車の焼付塗装時やプリント基板のハンダ浸積時の表面保護用フィルムとして、更には、液晶表示装置、プラズマ表示装置や有機薄膜EL装置の構成部材である液晶パネル板、反射板、位相差板、プリズムシート、導光板、偏光板、プラズマ表示パネル板、有機蛍光体薄膜、透明電極或いはフレキシブルプリント基板やリジッドプリント基板等の精密電子部品の表面保護用フィルムとして広く用いられている。
【0003】
そして一般的に粘着フィルム又はシートには、基材層と粘着層との間の接着は強く、一方、被着体表面と粘着層との間では、自然に自己剥離したり或いは極軽い振動や衝撃で脱落したりすることが無く、然も、開封剥離時には被着体表面に粘着物質を残すことなく、スムーズに剥離できるよう該表面との間では適度な粘着強度を保有することが求められる。
従来、このようなフィルム、シートの粘着層にはエチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・不飽和エステル共重合体が多く用いられている。
【0004】
例えば、特開平8−170056号公報には、高密度ポリエチレンから成る基材層の片面に、酢酸ビニル含有量が18〜26質量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体から成る粘着層を積層した表面保護フィルムが開示されている。
【0005】
エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン・不飽和エステル共重合体は、被着体に対し一般に良好な初期粘着力(接着力)を有する。
しかしながら、経時的に粘着力が昂進する欠点があり、特に、常温で被着体と貼り付けられた状態で運搬、保管されることに留まらず、様々な熱履歴を受けた場合などには、粘着力の昂進が著しく進行し、粘着力が強すぎることに起因して使用剥離の際屡々問題が生じた。
【0006】
エチレン・酢酸ビニル共重合体のこのような接着力の経時的昂進を抑制するための対策も既に一部提案され、例えば、特開2002−226814号公報には、エチレン・酢酸ビニル共重合体に実質的に非結晶性のプロピレン系樹脂を配合した樹脂組成物を粘着性樹脂として用いることが提案されている。
【0007】
上記樹脂組成物は、従来品に比べると粘着力の経時的昂進を可成りの程度抑制でき、ある程度効果はみられるが、未だその改善効果は充分ではなく、当業界からはより一層の改善が要望されていた。
【0008】
更に、該樹脂組成物の初期接着力はやや高く、然も経時的昂進を完全には抑制できないため、用途によっては接着力が強すぎて使用が制限される場合もあり得る。
又、最近、表面保護用等の粘着フィルム、シートには透明性が求められる場合も多く、この要件を満たす粘着フィルム、シートが求められる傾向も強くなってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、上記初期粘着力が適正で、且つ、粘着力の経時的昂進が充分に抑制され、若干の熱履歴を受けたり長期間貯蔵しても、適度な粘着力をほぼ一定に維持でき、然も、所望により粘着フィルム又はシートに高度の透明性を付与できる粘着性組成物を得るため鋭意研究を重ねた。
その結果、意外にも、エチレン・酢酸ビニル重合体等のエチレン・不飽和エステル共重合体に高融点で高結晶性のエチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂を特定量配合した混合樹脂、即ち樹脂組成物が上記の要件を満たすことを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明の目的は、初期粘着力が適正な範囲にあり、且つ、粘着力の経時的昂進が充分に抑制された樹脂組成物からなる粘着フィルム又はシートを提供することにある。
又、本発明の他の目的は、透明性に優れた粘着フィルム又はシートを提供することにある。
更に、又、本発明の別の目的は、物品の表面保護に好適に用いられる粘着フィルム又はシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、エチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)と融点115℃以上の高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)との混合樹脂からなる粘着フィルム又はシートが提供される。
【0012】
前記樹脂(A)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなることが好ましい。
【0013】
又、前記樹脂(B)は、融点130℃以上の立体特異性プロピレン重合体からなることが粘着昂進の制御、表面保護フィルムとしての適度な粘着性と機械的強度、透明性のバランスが取れたフィルムまたシートを提供できるので好ましい。
【0014】
更に、樹脂(B)が上記プロピレン重合体又は共重合体の場合、その混合樹脂は、前記樹脂(A)5〜80量%と前記樹脂(B)95〜20質量%からなることが好ましい。なお、ここで(A)と(B)の合計が100質量%である。
【0015】
又、更に、前記樹脂(B)が、密度940〜965kg/m の高密度ポリエチレンからなる態様のものは、粘着昂進の制御、表面保護フィルムとしての適度な粘着性と機械的強度、透明性のバランスが取れたフィルム又はシートを提供できるので好ましく、この場合は、前記混合樹脂は、樹脂(A)10〜70質量%と樹脂(B)90〜30質量%とからなることが好ましい。なお、ここで(A)と(B)の合計が100質量%である。
【0016】
殊に、本発明の粘着フィルム又はシートに於いては、前記混合樹脂層が、(B)樹脂中に(A)樹脂が均質溶解した連続相の間に、薄葉層状の(A)樹脂相が幾重にも重なって存在する微細組織構造態様のものが粘着昂進の進行を抑える傾向が強くなり又透明性にも優れる点で好ましい。
【0017】
又、前記混合樹脂には、更に粘着付与剤が含有されている態様が好ましい。
【0018】
本発明に於いては、更に、上記フィルム、シートからなる表面保護フィルム又はシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の粘着フィルムに於ける混合樹脂層の好適な微細組織構造を示した電子写真図である(混合樹脂層のMD方向断面電子顕微鏡写真)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態について詳細且つ具体的に説明する。
既に述べたとおり、本発明の粘着フィルム又はシートは、粘着層がエチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)と融点115℃以上の高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)との混合樹脂からなる点が構成上の特徴で有る。
【0021】
「エチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)」
本発明のフィルム又はシートに於ける粘着層で必須樹脂成分として用いる樹脂(A)を構成するエチレン・不飽和エステル共重合体としては、エチレンと、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステルとの共重合体、或いは、エチレンと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸の炭素数20程度までのアルキルエステルとの共重合体を挙げることが出来、より具体的には、エチレンと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸nブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を例示することが出来る。
【0022】
更に、上記2元系共重合体の他、エチレンに上記不飽和エステルを2種以上共重合させた多元系共重合体であっても良く、更に、不飽和エステル共重合体が本来有する、例えば、柔軟性、弾力性、ヒートシール性等の諸特性を実質的に変更させない限りにおいて、他の極性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸や一酸化炭素等を、少量共重合させたものでも良い。
【0023】
本発明に於いては、これらの内でもエチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸低級アルキルエステル共重合体が好ましく、特に、エチレン・酢酸ビニル共重合体及びチューブラー重合法で製造されたエチレン・(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル共重合体が好ましい。
【0024】
又、本発明では上記エチレン・不飽和エステルの中でも不飽和エステル単位含量が3〜46重量%、特に好ましくは7〜33重量%のものを用いることが好ましい。
不飽和エステル単位含量が上記範囲にある場合は高結晶性樹脂(B)、特にプロピレン系(共)重合体、との相溶性が良く、又、得られる粘着性組成物の機械物性、耐熱性、柔軟性も優れている。
【0025】
更に、本発明で用いるエチレン・不飽和エステル共重合体は、得られる組成物の粘着シール強度、更には、加工性等の観点から、そのメルトフローレート(190℃、2160g荷重:JIS K7210−99準拠、190℃、2160g荷重)が2〜50g/10分の範囲にあることが好ましく、特に好ましくは3〜20g/10分である。
【0026】
上記のようなエチレン・不飽和エステル共重合体は、エチレンと不飽和エステルとを高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。
例えば、通常のオートクレーブ法による高圧ラジカル重合プロセスによって製造されるランダム性良好な共重合体を使用することが出来るが、前述のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の場合は、チューブラー法による高圧ラジカル重合プロセスによって製造される共重合体が特に好適に用いられる。
【0027】
「高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)」
本発明の粘着フィルム又はシートに於ける混合樹脂層にはもう一つの必須樹脂成分として、融点115℃以上の高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)が用いられるが、このような重合体又は共重合体樹脂として、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン等の立体特異重合ポリプロピレン、高結晶性プロピレン系共重合体等を例示することができる。
本発明で好ましく使用される融点115℃以上の高密度ポリエチレンには、エチレン単独重合体の他、エチレンを主体とし、これに炭素数3〜12のαオレフィン等を共重合したものも含まれ、一般に中圧法(30〜70気圧、Phillips法、Standard法等)、低圧法(常圧又はわずかな加圧;Ziegler法等)等の製法で製造される。
又、本発明に於いては、その密度が940〜965kg/m、特に、946〜960kg/mのものが好適に用いられ、特に、粘着層の初期粘着力を適正な範囲に保持し、且つその経時的昂進を抑制するという観点から、その曲げ弾性率(JIS K7171に準拠して測定)が1000MPa以下、より好ましくは600〜900MPaの範囲にあるものが好ましい。
後記の実施例、比較例から明瞭に理解できるように、密度が940を下回るポリエチレン、例えば、低密度ポリエチレンでは、本発明の目的である粘着強度の昂進抑制を達成することができない。
【0028】
前記高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)(JIS K7210準拠 190℃ 2160g荷重)は0.5〜20g/10分、特に1〜15g/10分が好ましい。
【0029】
本発明においてプロピレン系(共)重合体(B)とはプロピレンの単独重合体又はプロピレン成分を50モル%以上含むプロピレンと他の単量体との共重合体を意味する。
本発明では、このプロピレン系(共)重合体(B)として、融点115℃以上のものを使用するが、好ましくは融点130℃以上、より好ましくは135℃以上のプロピレン系(共)重合体が利用される。融点の上限は特に限定されないが例えば165℃の結晶性を有するプロピレン系(共)重合体を用いることが可能である。
このような、結晶性プロピレン系(共)重合体の典型例として、アイソタクチックポリプロピレン等の立体特異性重合体を挙げることができる。
例えば、本発明に用いるプロピレン系(共)重合体(B)としては融点130℃以上の結晶性プロピレン単独重合体(ポリプロピレンホモポリマー)、プロピレンを主体とするランダム共重合体、ブロック共重合体、より具体的には、プロピレン成分を50モル%以上、好ましくは80モル%以上含み、プロピレン以外の他の単量体成分を50モル%未満、特に20モル%以下の割合で含むランダム共重合体、ブロック共重合体を挙げることができる。
前記他のモノマー成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素原子数2,4〜20、特に好ましくは炭素数2或いは4〜8のα−オレフィン類等を挙げることができる。
【0030】
本発明においては前記プロピレン(共)重合体(B)の中でも、特に示差走査熱量計(DSC)で測定した融点での吸熱ピークから得られる潜熱量(融解熱量)(JIS K7122に準拠して測定)が10〜120J/g、特に30〜110J/gの範囲にあるものが好ましい。
又、前記プロピレン(共)重合体(B)がプロピレン共重合体の場合には、ランダム共重合体がより好ましい。
【0031】
又、前記プロピレン(共)重合体(B)のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210に準拠、230℃ 2160g荷重)は1〜60g/10分、特に2〜30g/10分が好ましい。
【0032】
「粘着性混合樹脂」
本発明では、前記エチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)と融点115℃以上の高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)との混合樹脂を粘着性樹脂層として用いるが、その配合割合は、樹脂(A)を5〜80質量%、樹脂(B)を95〜20質量%の割合で配合することが好ましい。なお、ここで(A)と(B)の合計は100質量%である。
前記樹脂(B)成分の配合が20質量%を下回るものは本発明が目的とする粘着樹脂組成物に於ける粘着力経時昂進抑制効果を有効に奏することができない。
一方、95質量%を上回るものは、被着体の種類によっては初期粘着力が不足して、表面保護膜としての効果を充分に奏することができない不都合を生じる。
更に、前記樹脂(B)成分がエチレン系(共)重合体である場合、その配合割合は、樹脂(A)を10〜70質量%、樹脂(B)を30〜90質量%、好ましくは(A)30〜60質量%、(B)70〜40質量%、更に好ましくは(A)30〜50質量%、(B)70〜50質量%の割合で配合することが好ましい。
又、前記(B)成分がプロピレン系(共)重合体である場合は、樹脂(A)10〜75質量%、樹脂(B)90〜25質量%、好ましくは(A)30〜50質量%、(B)70〜50質量%の割合が特に好ましい。
【0033】
更に、本発明のフィルム、シートに於いては、前記粘着性混合樹脂層が以下に述べる特定の微細組織構造を有していることが特に好ましい。
即ち、その微細組織構造とは、前記(B)樹脂中に(A)樹脂が均質溶解した連続相の間に、薄葉層状の(A)樹脂相が幾重にも重なって存在する態様の構造であって、フィルム、シートのMD方向断面から見た電子顕微鏡写真図である添付図1に示されているように、(A)、(B)樹脂均一溶解層(連続層)の間に微小間隔を隔てて(B)樹脂層がラメラ状に幾重にも重畳積層され、あたかもミルフィーユ(mille・feuille;napoleon)パイ菓子のような構造である。
このような微細組織構造の粘着性層を有するフィルム、シートは、粘着力の経時昂進が有効に抑制され、適正な一定粘着力の長期持続性に顕著に優れる。
【0034】
本発明のフィルム、シートの粘着性混合樹脂(樹脂組成物)層には、更に、その初期の接着性を向上させるために粘着付与剤を配合してもよく、その配合量は(A)、(B)樹脂成分合計100質量部に対して0〜30質量部、特に0〜20質量部が好ましい。
【0035】
前記粘着性混合樹脂に添加される粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系や脂環族系等の石油系樹脂、ピネン樹脂、クマロンインデン系樹脂やテルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂や重合ロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂やキシレン系樹脂、あるいはそれらの水添系樹脂などを例示することができる。
又、粘着付与剤とオレフィン樹脂とのブレンド物も市販されており、これらを使用しても構わない。
【0036】
更に、前記粘着性混合樹脂には、該組成物の特性を損なわない限度に於いて、他種樹脂を更に配合しても差し支えない。
このような樹脂として、例えば、エチレンと(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸との共重合体であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸イソブチル等のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒重合ポリエチレン等のポリエチレン類やエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン等、炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である低結晶性エチレン系樹脂類、ポリブテン等のブテン系樹脂、4−メチル−1−ペンテンのようなオレフィン系樹脂等の樹脂類を挙げることができる。
【0037】
これら樹脂は2種以上配合されても良い。
これら他種樹脂は、前記粘着組成物の物性を損なわない範囲、例えば前記(A)、(B)樹脂成分合計100質量部に対し0〜99質量部程度迄加えることができるが、特に0〜49量部が好ましい。
更に、本発明の粘着性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤、顔料等の適当な添加剤を配合することができる。
【0038】
本発明の粘着性混合樹脂(樹脂組成物)は前記(A)と(B)樹脂成分及び必要により他の添加剤等を同時あるいは逐次的にドライブレンドまたはメルトブレンドすることにより得られる。
ドライブレンドにはヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ミキサーを用いることが出来る。
又メルトブレンドする場合は1軸、あるいは2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの混練装置を用い、140〜230℃程度の温度で溶融混練すればよい。
【0039】
本発明においては前記(A)と(B)樹脂成分の混合状態は特に制限されないが、既に述べた通り、前記(A)と(B)樹脂成分が少なくとも部分的に非相溶であり、前記(A)(B)相溶成分中に(B)成分がラメラ層状に分散していることが望ましい。
本発明によって得られる樹脂組成物は、フィルムにした場合、一般的に要求される初期粘着力である0.3〜100g/25mm、特に好ましくは0.5〜30g/mmの初期粘着力を有し、また粘着昂進の割合が75%以下、好ましくは65%以下、特に好ましくは45%以下と極めて小さく、経時で安定した粘着力(接着力)を得ることが出来る。
【0040】
本発明の粘着フィルム又はシートは、上記粘着性混合樹脂をフィルム又はシート状に成形し、単層のフィルム又はシート形態で用いて良い。
更に、基材に積層した態様で用いることも出来る。
【0041】
前記基材としては、特に限定されないが、例えば、延伸又は未延伸の、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンやエチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系等のプロピレン系ポリマー、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンや線状低密度、超低密度ポリエチレン等のエチレン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体などのオレフイン系ポリマーの1種または2種以上を用いてなる各種熱可塑性樹脂フィルム又はシート、紙、金属箔、不織布等が用いられる。
本発明において基材を用いる場合は、これらの中で特にポリプロピレンあるいはポリエチレン等のエチレン系ポリマーからなる基材が好ましい。
ポリプロピレンあるいはポリエチレン等のエチレン系ポリマーからなる基材を用いた場合、粘着層との層間接着性が良好で、また、透明性に優れたフィルム又はシートが得られる。
【0042】
基材に熱可塑性フィルムを使用する場合には、劣化防止等を目的に、例えば酸化防止剤や紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、その他、例えばカーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタンの如き充填剤や顔料等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0043】
基材層の厚さは1〜500μm程度であり、好ましくは10〜200μmであるが、これに限定されるものではない。
【0044】
粘着剤層の形成は、たとえば、粘着剤の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する溶液コート法や、それに準じセパレータ基材上に塗布、形成した粘着剤層を移着転写する方法、粘着剤層形成材を支持基材上に押出し形成塗布するホットメルトコーティング法、基材と粘着剤層を二層または三層以上の多層にて共押出し、フィルム化する方法、基材上に粘着剤層を単層で押出ラミネートする方法、または、接着層と粘着剤層を二層で押出ラミネートする方法、粘着剤層とフィルムやラミネート層等の支持基材形成材とをサーマルラミネートする方法などの、公知の粘着シートの製造方法に準じて行うことができる。
【0045】
これらの製造方法のなかでも、熱可塑性樹脂からなる基材層とともに粘着剤層を、インフレーション法やTダイ法による二層又は三層以上の多層による共押出し成形する方法が好ましい。
【0046】
本発明において、単層粘着フィルム、シートの場合はその厚さは5〜300μm、さらには10〜200μmとするのが好ましい。
又、基材層面に形成する場合、その粘着剤層としての厚さは接着力などに応じて適宜に決定されるが、一般には1〜250μm、さらには5〜100μmとするのが好ましい。
【0047】
本発明の粘着フィルム又はシートは、初期粘着力が表面保護フィルム用途として特に適正と言われる範囲、即ち、後に述べるとおり、初期粘着力が0.5〜30g/25mmの範囲にあり、且つ、粘着力の経時的昂進が充分に抑制され(好ましくは粘着昂進率が65%以下)、若干の熱履歴を受けても、長期間貯蔵しても、その適度な粘着力を適正な範囲に維持できる。
然も、本発明においては前記(A)、(B)樹脂及びその配合割合を適宜選択特定することにより該フィルム又はシートに更に高度の透明性を付与できる。
このため、本発明の粘着フィルム又はシートは、例えば、合成樹脂板、化粧板、金属板及び塗装鋼板等の製品表面保護用、又、窓ガラス表面保護用、自動車の焼付塗装時やプリント基板のハンダ浸積時の表面保護用、更には、液晶表示装置、プラズマ表示装置や有機薄膜EL装置の構成部材である液晶パネル板、反射板、位相差板、プリズムシート、導光板、偏光板、プラズマ表示パネル板、有機蛍光体薄膜、透明電極、フレキシブルプリント基板、リジッドプリント基板等の精密電子部品の表面保護用のフィルム又はシートとして特に好適に用いられる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0049】
「混合樹脂(樹脂組成物)の原料樹脂」
(1)エチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)として使用する樹脂
(A1)エチレン・酢酸ビニル共重合体:
酢酸ビニル含量;24質量%(JIS K7192−1999)
MFR4g/10分(JIS K7210−1999,190℃,2160g荷重)
(A2)エチレン・酢酸ビニル共重合体:
酢酸ビニル含量;10質量%(JIS K7192−1999)
MFR3g/10分(JIS K7210−1999,190℃,2160g荷重)
(A3)エチレン・酢酸ビニル共重合体:
酢酸ビニル含量;14質量%(JIS K7192−1999)
MFR3.5g/10分(JIS K7210−1999,190℃,2160g荷重)
(A4)エチレン・アクリル酸n−ブチル共重合体:
アクリル酸n−ブチル含量;17質量%(JIS K7192−1999)
MFR 7g/10分(JIS K7210−1999,190℃,2160g荷重)、チューブラー重合法により製造されたもの
(A5)エチレン・酢酸ビニル共重合体:酢酸ビニル含量;
酢酸ビニル含量;10質量%(JIS K7192−1999)
MFR 9g/10分(JIS K7210−1999,190℃,2160g荷重)
(2)エチレン系またはプロピレン系高結晶質(共)重合体(B)として使用する樹脂
(B1)高密度ポリエチレン:
商品名ハイゼックス3300F(プライムポリマー社製品)
密度950kg/m、 融点;132℃、曲げ弾性率780MPa、
MFR 1.1g/分(JIS K7210−1999,190℃,2160g荷重)
(B2)プロピレン系共重合体
融点139℃、DSC吸熱ピークから得られる潜熱量(吸熱量)(JIS K7122に準拠)86J/g、MFR7.3g/10分(JIS K7210−1999,230℃,2160g荷重)である結晶性のプロピレン・α―オレフィン共重合体;商品名 プライムポリプロF327(プライムポリマー社製品)
(B3)ポリプロピレン重合体
融点161℃、DSC吸熱ピークから得られる潜熱量(吸熱量)(JIS K7122に準拠)110J/g、MFR(JIS K7210−1999,230℃,2160g荷重);3.0g/10分(JIS K7210−1999,230℃,2160g荷重)の結晶性のホモポリプロピレン樹脂;商品名 プライムポリプロF113G(プライムポリマー社製品)
【0050】
「評価項目及び方法」
以下に示す評価においては、測定バラツキの影響を少なくするため、測定を5回行い、最大値と最小値を除外した3回分の測定値を平均した。
・剛性(ループスティフネス)
東洋精機(株)製ループテスターを用い、スパン100mm、幅25mm、押込距離15mmで測定した。
・光学特性
ヘイズ=JIS K7136に準拠
グロス=JIS K7105に準拠
全光線透過率=JIS K7361に準拠
・粘着特性
アクリル板への粘着性
JIS Z0237に準拠し、粘着剤組成物の試料フィルムとアクリル板を2kgの手動式ローラーで2往復圧着により張り合わせ、引取り速度:300mm/minでの180度引きはがし粘着力によって以下のようにして初期粘着力、経時粘着力及び粘着昂進の評価をおこなった。
・初期粘着力;貼り合せた試験板を恒温恒湿内(23℃×50%RH(相対湿度))に30分放置後測定した。
・経時粘着力(エージング後の粘着力)
粘着特性評価用に作成した試験片をオーブンに入れ、下記に記載した所定の時間、温度にてエージングを行った。
オーブンから取出したサンプルを恒温恒湿内(23℃×50%RH)に放置し、30分後に粘着力を測定した。
エージング条件−1 :オーブン温度40℃×24時間
エージング条件−2 :オーブン温度60℃×3時間
エージング条件−3 :オーブン温度40℃×3日
エージング条件−4 :オーブン温度60℃×1日
エージング条件−5 :オーブン温度60℃×7日
・粘着昂進
昂進率(%)=[(経時粘着力−初期粘着力)/初期粘着力]×100
数値が大きいほど粘着力の経時変化が大きく、初期粘着力の保持ができないことを表す。
【0051】
なお、以下の実験において、基材を使用する場合はポリエチレンを利用しているが、ポリプロピレンでも同様な結果を得ることができる。ここでは、基材の代表例としてポリエチレンを使用した結果を示す。
「実施例1」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部と高密度ポリエチレン(B1)58質量部を65mmφ押出機により200℃で溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を押出キャスト成形装置(65mmφ)を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)製の離型フィルム上に押出し、これを所定サイズのフィルム状に裁断し、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて表1で示す各評価項目について性能を評価した。
結果を表1に示した。
【0052】
「実施例2」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)38質量部と高密度ポリエチレン(B1)52質量部を混合し、更に(A1)と(B1)の合計量90質量部に、粘着性付与剤[水素添加芳香族炭化水素樹脂(環球法軟化点90℃)を13質量%含有するエチレン・酢酸ビニル共重合体(A3)を10質量部添加して実施例1と同様の装置、条件で溶融混練し、粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例1と同様にして押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例1と同様に性能評価した。
結果を表1に示した。
【0053】
「比較例1」
実施例1の高密度ポリエチレン(B1)に替えて低密度ポリエチレン[密度 923kg/m;融点 110℃;MFR4.5g/10分、DSC測定による吸熱量;141J/g、商品名ミラソン16SPO、プライムポリマー社]を用い、この低密度ポリエチレン58質量部とエチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部を混合し、実施例1と同様の装置、条件で溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例1と同様に押出キャスト成形装置を用いて押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例1と同様に性能評価した。
結果を表1に示した。
【0054】
「比較例2」
比較例1で用いた低密度ポリエチレンをPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例1と同様に性能評価した。
結果を表1に示した。
【0055】
「比較例3」
実施例1の組成物の酢酸ビニル総含有量10重量%と同じ酢酸ビニル含有量を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体(A5)をPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例1と同様に性能評価した。
結果を表1に示した
【0056】
【表1】

【0057】
「実施例3」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部と高密度ポリエチレン(B1)58質量部とを65mmφ単軸押出機にて、200℃で溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、多層押出キャスト成形装置(40mmφ×3)を用いて、低密度ポリエチレン(比較例1で使用したミラソン16SPO)を基材層、上記組成物を粘着層として、PET製の離型フィルム上に押出し、これを所定サイズのフィルム状に裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(フィルム構成:低密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン/粘着樹脂組成物=20/20/20μm 総厚み;60μm)
この試料フィルムを用いて性能を評価した。
評価結果を表2に示した。
【0058】
「比較例4」
実施例3の粘着性樹脂組成物の代わりにエチレン・酢酸ビニル共重合体(A5)を用いた以外は実施例3と同様にして、試料フィルムを得た(フィルム構成:低密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン/エチレン・酢酸ビニル共重合体(A5)=20/20/20μm、総厚み;60μm、)
この試料フィルムを用いて表2に示した項目の性能を評価した。
評価結果を表2に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
尚、実施例3で得られたフィルムは光学性にも優れており、比較例4のフィルムとほぼ同等の透明性を有していた。
また、長時間エージングしても浮きやアクリル板への汚染も目視で確認されなかった。
更に実施例3で得られたフィルムは基材層と粘着層がしっかりと接着されており、容易に剥離しなかった。
【0061】
表1、2から、本発明の上記態様の粘着フィルムは、被表面保護物品(この場合アクリル板)に対する初期粘着性が適正な強度を有し、その粘着性の昂進性は従来品に比べて著しく低く抑制されることが判る。
【0062】
「実施例4」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部とプロピレン系共重合体(B2)58質量部とを65mmφ単軸押出機にて、200℃で、溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を押出キャスト成形装置(40mmφ)を用い、PET製の離型フィルム上に押出し、これを所定サイズのフィルム状に裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて表3に示した項目について性能を評価した。
評価結果を表3に示した。
【0063】
「実施例5」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部とポリプロピレン重合体(B3)58質量部とを、実施例4と同様の装置、条件で溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様に性能評価した。
結果を表3に示した。
【0064】
「実施例6」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)36質量部とエチレン・酢酸ビニル共重合体(A2)14質量部及びプロピレン系共重合体(B2)50質量部とを実施例4と同様の装置、条件で溶融混練して粘着性樹脂組成物(組成物中の酢酸ビニル総含有量10質量%)を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様に性能評価した。
結果を表3に示した。
【0065】
「実施例7」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A3)70質量部とプロピレン系共重合体(B2)30質量部とを、実施例1と同様の装置、条件で溶融混練して粘着性樹脂組成物(組成物中の酢酸ビニル総含有量10質量%)を得た。
そして、この樹脂組成物を押出成形し、所定サイズのフィルムに裁断して試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様に性能評価した。
結果を表3に示した。
【0066】
「比較例5」
実施例4のプロピレン系共重合体(B2)に替えて比較例1と同じ低密度ポリエチレン(商品名ミラソン16SPO、プライムポリマー社製品)を用い、この低密度ポリエチレン58質量部とエチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部を混合し、実施例4と同様の装置、条件で溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様に性能評価した。
結果を表3に示した。
【0067】
「比較例6」
比較例5で用いた低密度ポリエチレンを 実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;90μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様に性能評価した。
結果を表3に示した。
【0068】
【表3】

比較例6において、エージング後にフィルムの一部で浮きが観察された。
【0069】
「実施例8」
エチレン・アクリル酸ブチル共重合体(A4)42質量部とプロピレン系共重合体(B2)58質量部とを混合し、実施例4と同様の装置、条件で溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;60μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様にその性能を評価した。
結果を表4に示した。
【0070】
「実施例9」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)40質量部とプロピレン系共重合体(B2)60質量部とを混合し、この混合組成物100質量部に対して更に粘着性付与剤[水素添加芳香族炭化水素樹脂;環球法軟化点115℃]を0.3質量部添加して実施例4と同様の装置、条件で溶融混練し、粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;60μm)。
この試料フィルムを用いて実施例4と同様にその性能を評価した。
結果を表4に示した。
【0071】
「実施例10」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)14質量部とプロピレン系共重合体(B2)86質量部とを65mmφ単軸押出機で、200℃で、溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、この樹脂組成物を実施例4と同様にしてPET製の離型フィルム上に押出し、所定サイズのフィルムに裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(総厚み;60μm)。
この試料フィルムを用いて性能評価した。
評価結果を表4に示した。
【0072】
【表4】

【0073】
「実施例11」
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A1)42質量部とプロピレン系共重合体(B2)58質量部とを、65mmφ単軸押出機にて、200℃で、溶融混練して粘着性樹脂組成物を得た。
そして、多層押出キャスト成形装置(40mmφ×3)を用いて、比較例5で使用した低密度ポリエチレン(商品名ミラソン16SPO)を基材層、上記組成物を粘着層とし、PETフィルムを離型フィルムとして用いて押出し、これを所定サイズのフィルム状に裁断後、離型フィルムを剥がして試料フィルムを得た(フィルム構成:低密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン/粘着樹脂組成物=20/20/20μm、総厚み;60μm)
この試料フィルムを用いて性能を評価した。
評価結果を表5に示した。
【0074】
「比較例7」
実施例11の粘着性樹脂組成物の代わりにエチレン・酢酸ビニル共重合体(A5)を用いた以外は実施例11と同様にして、試料フィルムを得た(フィルム構成:低密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン/エチレン・酢酸ビニル共重合体(A5)=20/20/20μm 総厚み;60μm、)
この試料フィルムを用いて性能を評価した。
評価結果を表5に示した。
【0075】
【表5】

尚、実施例11、比較例7のフィルムはいずれも基材層と粘着層が強固に接着されており、いずれも手で層間を剥離することが困難であった。
又、実施例4〜11、のエージング後のサンプルにおいて、アクリル板上に粘着組成物からの汚染が見られず、アクリル板の透明性を維持していた。
また、比較例6で見られたようなエージング後のフィルムの浮きも見られなかった。
【0076】
表3、4、5から、本発明のこの態様の粘着フィルム、あるいは積層粘着フィルムは、被表面保護物品(この場合アクリル板)に対する初期粘着性が充分実用的な適正強度を有し、その粘着性の昂進性は従来品に比べて著しく低く抑制され、更に、光学性も、従来品に比較して同等もしくは優れていることが判る。
【0077】
実施例1〜11の微細組織構造を以下の要領で観察した。
実施例で得られた試料フィルムからMD方向に薄い切片を作製し、酸化オスミオウム(OsO)で染色後、カーボン蒸着で前処理を行った。前処理された切片試料を走査型電子顕微鏡(STEM)で観察した。電子顕微鏡は、日立走査型電子顕微鏡S−4700(透過電子検出器つき)を使用し、加圧電圧は20KVで行った。
観察の結果、混合樹脂層がエチレン系又はプロピレン系(共)重合体(B)の樹脂中にエチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)が均質溶解した連続層の間に、薄葉層状の(A)樹脂層が幾重にも重なって存在する微細組織構造を有していることが分かった。参考に実施例7の顕微鏡写真を図1として添付する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和エステル共重合体樹脂(A)と融点115℃以上の高結晶質エチレン系又はプロピレン系重合体又は共重合体樹脂(B)との混合樹脂からなる粘着フィルム又はシート。
【請求項2】
前記樹脂(A)が、エチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる請求項1記載のフィルム又はシート。
【請求項3】
前記樹脂(B)が、融点130℃以上の立体特異性プロピレン重合体からなる請求項1記載のフィルム又はシート。
【請求項4】
前記混合樹脂が、前記樹脂(A)5〜80質量%と前記樹脂(B)95〜20質量%とからなる請求項3に記載のフィルム又はシート。
【請求項5】
前記樹脂(B)が、密度940〜965kg/mの高密度ポリエチレンからなる請求項1記載のフィルム又はシート。
【請求項6】
前記混合樹脂が、前記樹脂(A)10〜70質量%と前記樹脂(B)90〜30質量%とからなる請求項5記載のフィルム又はシート。
【請求項7】
前記フィルム又はシートの混合樹脂層が、前記(B)樹脂中に(A)樹脂が均質溶解した連続相の間に、薄葉層状の(A)樹脂相が幾重にも重なって存在する微細組織構造を有していることを特徴とする請求項1記載のフィルム又はシート。
【請求項8】
前記混合樹脂に、更に粘着付与剤が含有されている請求項1記載のフィルム又はシート。
【請求項9】
請求項1〜8に記載のフィルム、シートを用いてなる表面保護フィルム又はシート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−275212(P2009−275212A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91404(P2009−91404)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【分割の表示】特願2009−512761(P2009−512761)の分割
【原出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】