説明

粘着フィルム

【課題】インフレーション製膜装置で、平滑面を有する光学部材やプラスチック表面へ比較的低強度で貼り合わせ、使用時には容易に再剥離できる粘着フィルムを提供する。
【解決手段】JIS−K7112に準拠した密度が0.915〜0.935g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが0.5〜7g/10分を有する高圧法低密度ポリエチレンからなる背面層11、着色顔料を0.0001〜1.0質量%添加された背面層と同じ高圧法低密度ポリエチレンからなる中間層13、及びメタロセン系触媒の存在下で製造されたJIS−K7112に準拠した密度が0.870〜0.910g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが1.0〜10g/10分を有するエチレン・α−オレフィン共重合体からなる粘着層19からなることを特徴とする粘着フィルム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関し、さらに詳しくは、金属、ガラス、プラスチックなどの成形品、加工品、塗装物等、特に表面粗度の低い被着面に対して粘着させることで、被着面の傷や汚れを防護し、使用時には容易に剥離することができる粘着フィルムに関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「EVA」は「エチレン−酢酸ビニル共重合体」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「HDPE」は「高密度ポリエチレン」、及び「MFR」は「メルトフローレート」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、粘着とは広義の接着に属し、粘着と接着は同義語である。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)表面に機能、装飾や艶を有する被着体では、使用時まで表面を防護するために粘着フィルムが仮着され、運搬や保管などの後、粘着フィルムを剥離して使用される。例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板や、各種銘板、光学部材などの様々な被着体がある。従来、被着体には、意匠性などが付与された場合や、表面に凹凸がある場合や、また汚れ防止加工処理が施されている場合が多く、プラスチックフィルムに粘着剤を塗布した粘着フィルムを用いるのが一般的である。また、粘着フィルムは通常、数百〜数千mの長さをロール状に巻き上げた巻取状態で製造され、後加工、保管、流通される。この粘着フィルムを巻取状からの巻き戻す際に、基材層と隣接する粘着層の間の剥離性が悪いと、巻き戻しにくく、甚だしい場合には粘着層が接する基材層側の表面に移行し残存したり、粘着フィルムが破断してしまう。このために、粘着フィルムには、被着体表面に対する適度の粘着性、表面を傷付けない程度の柔軟性、耐食性および環境に対する抵抗性を必要とする。また、粘着フィルムは大量に消費され、使用後は剥離されて廃棄されるので安価に製造でき、かつ、使用後に焼却処理しても環境負荷の低いことも要求される。さらに、これらの物性が経時や温度によって変化が少なく、塗装板の加工時にも伸び、スクラッチ、機械的強度、耐熱性も必要である。屋内屋外暴露や高温保存下においては、その粘着強度が経時変化によって上昇(粘着昂進性という)し、剥離が困難となる場合があった。特に、表面が平滑な被着体に対して適度な粘着強度と安定した剥離性を有し、粘着強度の経時変化(粘着昂進性)の少なく、また、粘着フィルムは通常、インフレーションフィルムなどの溶融押し出し法で製造されるが、製造の際に、未溶融や組成物の練り込みムラなどから発生する異物(フィッシュアイという)の発生し、著しく外観が悪くなり、仮着した際にも泡が混入したり、粘着力が劣化したりする。
従って、粘着フィルムは、被着体表面に対する適度の粘着性、表面を傷付けない程度の柔軟性、経時や温度による伸び、スクラッチ、機械的強度、耐熱性、耐食性などの物性が維持され、環境に対する抵抗性、使用後に焼却処理しても環境負荷の低いことが要求される。さらに、フィッシュアイの発生が少なく、安価に製造でき、屋内屋外暴露や高温保存下でも粘着昂進性が少なく、被着体からの容易に剥離できる粘着フィルムが求められている。特に、平滑面を有する光学部材や、鏡面状のプラスチック表面を保護するフィルムは比較的低強度で貼り合わせ、使用時には容易に再剥離できる粘着フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58−51823号公報
【特許文献2】特開2005−170985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、共押出法を使用する多層粘着性フィルムは、粘着層にEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)を用いた弱粘着タイプが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、粘着層にエラストマーを用いた強粘着タイプが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、いずれの粘着性樹脂も、加工時の熱安定性が低かったり、フィルムとしての加工が難しいなどの課題が多かった。またこれら樹脂の共通課題として、経時的に強度が上昇していく粘着昂進性や、未溶融や練り込みムラなどから発生する異物であるフィッシュアイが発生する懸念されるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、従来のインフレーション製膜装置を用いても、平滑面を有する光学部材や鏡面状のプラスチック表面へ比較的低強度で貼り合わせ、使用時には容易に再剥離できる粘着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる粘着フィルムは、背面層、中間層及び粘着層からなる粘着フィルムにおいて、前記背面層のJIS−K7112に準拠した密度が0.915〜0.935g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが0.5〜7g/10分を有する高圧法低密度ポリエチレンであり、前記中間層が着色顔料を0.0001〜1.0質量%添加された背面層と同じ高圧法低密度ポリエチレンであり、前記粘着層がメタロセン系触媒の存在下で製造されたJIS−K7112に準拠した密度が0.870〜0.910g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが1.0〜10g/10分を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であり、前記粘着フィルムの総厚みが30〜100μmの多層インフレーションフィルムであるように、したものである。
請求項2の発明に係わる粘着フィルムは、上記粘着層とJIS−B−0601に準拠した算術平均粗さRaが0.01μm以下のアクリル板面との、JIS−Z−0237に準拠した接着強度が0.02〜0.2N/25mmであるように、したものである。
請求項3の発明に係わる粘着フィルムは、上記粘着フィルムにおいて、0.1〜0.3mm2未満のフィッシュアイが20個/m2以下、0.3〜0.5mm2未満のフィッシュアイが5個/m2以下、0.5〜1.0mm2未満のフィッシュアイが1個/m2以下、1.0mm2以上のフィッシュアイが0.1個/m2以下であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる粘着フィルムは、光学部材又はプラスチック板の表面保護に使われるように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明によれば、被着体表面に対する適度の粘着性、表面を傷付けない程度の柔軟性、経時や温度による伸び、スクラッチ、機械的強度、耐熱性、耐食性などの物性を有し、環境に対する抵抗性、使用後に焼却処理しても環境負荷の低く、さらに、フィッシュアイの発生が少なく、安価に製造でき、屋内屋外暴露や高温保存下でも粘着昂進性が少なく、被着体からの容易に剥離できる効果を奏する。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、平滑面を有する光学部材や、鏡面状のプラスチック表面を保護するフィルムは比較的低強度で貼り合わせ、使用時には容易に再剥離できる効果を奏する。
請求項3の本発明によれば、請求項1〜2の効果に加えて、フィッシュアイの発生が少なく、外観に優れる効果を奏する。
請求項4の本発明によれば、請求項1〜3の効果を有し、光学部材又はプラスチック板の表面保護に使用できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の1実施例を示す粘着フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
本願発明の粘着フィルム10は、図1に示すように背面層11、中間層13及び粘着層19から構成される。背面層11は、JIS−K7112に準拠した密度が0.915〜0.935g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが0.5〜7g/10分を有する高圧法低密度ポリエチレンである。中間層13は、着色顔料を0.0001〜1.0質量%添加された背面層と同じ高圧法低密度ポリエチレンである。粘着層19は、メタロセン系触媒の存在下で製造されたJIS−K7112に準拠した密度が0.870〜0.910g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが1.0〜10g/10分を有するエチレン・α−オレフィン共重合体である。そして、粘着フィルム10の総厚みは30〜100μmの多層インフレーションフィルムである。なお、ASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートは、190℃、2160g荷重の条件で10分間の流出量である。
【0012】
本願発明によれば、次のような効果を奏することができる。本願発明の粘着フィルム10は、エチレン・α−オレフィン共重合体を粘着層19に採用することでEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)には無い耐熱安定性を示し、また各種エラストマー系で問題となるフィッシュアイ異物も少なくすることが出来る。更にはベース基材として機能している背面層11及び中間層13の低密度ポリエチレンとの親和性も高く、汎用性も高いことからコスト的にもメリットを発現できる。また本発明においては中間層13へ着色顔料を所定量添加している。これは被着体に対して保護用としての粘着フィルム10が付着されていることを示すのと同時に、表裏の判別を行う時の目印としても使用するためである。このように、本願発明の粘着フィルム10は、これまで課題となっていた経時的な粘着昂進性、剥離性、フィッシュアイ異物、コストを解決できる。平滑面を有する光学部材の表面およびプラスチック板の表面保護に使用できる。
【0013】
(LDPE)背面層11、中間層13の主成分には高圧法低密度ポリエチレンを用いる。背面層11、中間層13で使用する高圧法LDPE(低密度ポリエチレン)は、JIS−K7112に準拠した密度が0.915〜0.935g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが0.5〜7g/10分を有するポリエチレンで、オートクレーブ法にて高圧重合されたものが好ましい。スリップ剤、アンチブロック剤などは添加されていないものが好ましい。酸化防止剤の添加は必須であるが種類は問わない。
【0014】
(密度)密度が0.915g/cm3以下であると粘着フィルム10としての剛性が保てず、またインフレーション製膜時の製膜安定性に影響を与えてしまう。また密度が0.935g/cm3以上であると剛性が高くなるものの、製膜時にシワ、タルミが発生してしまう可能性が高い
【0015】
(MFR)メルトフローレート(MFRとも略す)が0.5g/10分以下であると製膜時の樹脂圧力が高くなり、滞留樹脂も多くなるためフィッシュアイ異物が増加する恐れがある。また7.0g/10分以上であるとインフレーション製膜法自体に影響を与えてしまう。
【0016】
(エチレン・α−オレフィン共重合体)本発明の粘着層19はメタロセン系触媒の存在下で製造されたJIS−K7112に準拠した密度が0.870〜0.910g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが1.0〜10g/10分を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を使用する。スリップ剤、アンチブロック剤などは添加されていないが、酸化防止剤は入っている。
【0017】
(密度)密度が0.870g/cm3以下であると粘着性が高く、製膜時のシワ発生につながり、粘着昂進も懸念される。また密度が0.910g/cm3以上であると粘着性が発現しにくい。
【0018】
(MFR)メルトフローレート(MFRとも略す)が1.0g/10分以下であると製膜時の樹脂圧力が高くなる。特に、エチレン・α−オレフィン共重合体は樹脂圧力が高くなる傾向が有り好ましくない。また10g/10分以上であると中間層との流れムラ、合流ムラを起こしてしまう。
【0019】
(着色顔料)中間層13の主成分の高圧法低密度ポリエチレンに添加する着色顔料としては、青色顔料としてはシアニンブルー(フタロシアニンブルー)が一般的に用いられるが、特に限定されるものではなく、コバルトブルー(アルミン酸コバルトCoO・nAl23)、マンガニーズブルー(マンガン酸バリウムと硫酸バリウムBaMnO4・BaSO4)、セルリアンブルー(錫酸コバルトCuO・nSnO2)、ウルトラマリン(Na2Al6Si6244)など)などがある。また、緑色顔料としてはシアニングリーン(フタロシアニングリーン)が一般的に用いられる。他にエメラルドグリーン(酢酸亜ヒ酸銅(Cu(C2322)・3Cu(AsO22)、グリーンゴールド(ニッケルの錯塩)、コバルトグリーン(酸化亜鉛ZnOと酸化コバルトCoO)、マラカイト(塩基性炭酸銅:CuCO3・Cu(OH)2)などがある。また、黄色顔料としてはアゾ系黄などが用いられる。他にオーレオリンなどがある。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)背面層11、中間層13及び粘着層19として、下記の樹脂組成物を用いて、3種3層のインフレーション共押出製膜機を用いて、160℃で、第1層として背面層11組成物層を10μm、第2層として中間層13組成物を30μm、第3層として粘着層19組成物を10μmとなるように押し出して、3層からなる総厚50μmの薄青色の粘着フィルム10を製造した。
<背面層11組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
<中間層13組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
・青色顔料としてシアニンブルー(フタロシアニンブルー)0.001部
<粘着層19組成物>
・メタロセン触媒から合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体(密度=0.898g/cm3、MFR=3.5g/10分) 100部
【0022】
(実施例2)下記の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層からなる総厚50μmの薄青色の粘着フィルム10を製造した。
<背面層11組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
<中間層13組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
・青色顔料としてシアニンブルー(フタロシアニンブルー)0.001部
<粘着層19組成物>
・メタロセン触媒から合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体(密度=0.880g/cm3、MFR=3.5g/10分)100部
【0023】
(実施例3)下記の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層からなる総厚50μmの薄黄色の粘着フィルム10を製造した。
<背面層11組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
<中間層13組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
・黄色顔料としてアゾ系黄 0.003部
<粘着層19組成物>
・メタロセン触媒から合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体(密度=0.898g/cm3、MFR=3.5g/10分)100部
【0024】
(比較例1)下記の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層からなる総厚50μmの薄青色の粘着フィルム10を製造した。
<背面層11組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
<中間層13組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
・青色顔料としてシアニンブルー(フタロシアニンブルー)0.001部
<粘着層19組成物>
・メタロセン触媒から合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体(密度=0.917g/cm3、MFR=4.0g/10分)100部
【0025】
(比較例2)下記の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、3層からなる総厚50μmの薄青色の粘着フィルム10を製造した。
<背面層11組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
<中間層13組成物>
・高圧法LDPE(密度=0.924g/cm3、MFR=3.8g/10分)100部
・青色顔料としてシアニンブルー(フタロシアニンブルー)0.001部
<粘着層19組成物>
・メタロセン触媒から合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体(密度=0.865g/cm3、MFR=15.0g/10分)100部
しかしながら、粘着層19組成物のサージングが激しく、製造できなかった。
【0026】
(評価方法)評価は、初期粘着強度、保存後の粘着強度、フィッシュアイ個数で行った。
【0027】
(初期粘着強度;試験方法)厚み3mmで算術平均粗さRa=0.008μmのアクリル板(メタクリル板)に、実施例1〜3及び比較例1の粘着フィルム10をJIS Z0237に規定されたゴムロール(重さ2kg、幅45mm、ロール径95mm、ゴム硬度80±5Hs)を用い、1往復圧着し、1時間後の剥離強度を300mm/minの引張り速度で測定し、初期粘着強度とした。
【0028】
(保存後の粘着強度;試験方法)上記の初期粘着強度;試験方法で得られた実施例1〜3及び比較例1の粘着フィルム10を、アクリル板(メタクリル板)に貼り付けた状態で、23℃×7日間及び50℃×7日間保存し、保存後の剥離強度(粘着強度)を測定した。なお、50℃×7日保存のものは、23℃で1時間冷却した後、剥離強度を300mm/minの引張り速度で測定した。初期粘着強度及び保存後の粘着強度の結果を表1及び表2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
(フィッシュアイ;試験方法)1m幅×100m(100m2)の実施例1〜3及び比較例1の粘着フィルム10を作成し、FUTEC異物検査装置MaxEye.F(CCDカメラ)から各サイズにおける異物検査を行った。検知した異物の個数を検査面積(100m2)にて割った数をフィッシュアイ個数とした。その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
(評価結果)実施例1〜3の粘着フィルムでは、経時的なエア抱き、トンネリングも無く綺麗に貼り合わすことができた。いずれも適正な初期粘着強度であり、23℃及び50℃における保存後の粘着強度も粘着亢進性が認められず、容易に剥離することもできた。
しかしながら、比較例1の粘着フィルムでは、アクリル板への粘着は認められず、貼り合せることができなかった。また、フィッシュアイ個数は、実施例1〜3の粘着フィルムでは、0.1〜0.3mm2未満のフィッシュアイが0.04〜0.11個/m2、0.3〜0.5mm2未満のフィッシュアイが0.01〜0.03個/m2、0.5〜1.0mm2未満、及び1.0mm2以上のフィッシュアイは検出されず、良好な外観であった。
比較例1の粘着フィルムのフィッシュアイ個数も良かったが、前述の如くアクリル板への粘着は認められず、貼り合せることができず、粘着フィルムの用途には使用できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の粘着フィルムの主なる用途としては、建材、日用品、ステーショナリー、家電製品、自動車、例えばディスプレーなどの光学部材や、製品や部材の表面に粘着させて、運搬、保管、加工等の塗装面の傷や汚れを防護し、使用時には剥離することができるものである。しかしながら、被着面に粘着することで、運搬、保管、加工等の塗装面の傷や汚れを防護し、使用時には剥離することを必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
10:粘着フィルム
11:背面層
13:中間層
19:粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面層、中間層及び粘着層からなる粘着フィルムにおいて、前記背面層のJIS−K7112に準拠した密度が0.915〜0.935g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが0.5〜7g/10分を有する高圧法低密度ポリエチレンであり、前記中間層が着色顔料を0.0001〜1.0質量%添加された背面層と同じ高圧法低密度ポリエチレンであり、前記粘着層がメタロセン系触媒の存在下で製造されたJIS−K7112に準拠した密度が0.870〜0.910g/cm3かつASTM─D−1238に準拠したメルトフローレートが1.0〜10g/10分を有するエチレン・α−オレフィン共重合体であり、前記粘着フィルムの総厚みが30〜100μmの多層インフレーションフィルムであることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
上記粘着層とJIS−B−0601に準拠した算術平均粗さRaが0.01μm以下のアクリル板面との、JIS−Z−0237に準拠した接着強度が0.02〜0.2N/25mmであることを特徴とする請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項3】
上記粘着フィルムにおいて、0.1〜0.3mm2未満のフィッシュアイが20個/m2以下、0.3〜0.5mm2未満のフィッシュアイが5個/m2以下、0.5〜1.0mm2未満のフィッシュアイが1個/m2以下、1.0mm2以上のフィッシュアイが0.1個/m2以下、であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項4】
光学部材又はプラスチック板の表面保護に使われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−280749(P2010−280749A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132981(P2009−132981)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】