説明

粘着剤および表面保護フィルム

【課題】本発明は、優れた帯電防止性を有し、被着体への汚染性がほとんどない帯電防止用粘着剤、および表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】共重合体(A)と、化学式(1)で表されるアニオンとカチオン(B)からなるイオン性化合物とを含む粘着剤であって、
前記共重合体(A)が、活性水素基を含有する単量体(C)0.1〜10重量%と、アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)1〜40重量%とを含む単量体の共重合体であり、かつ前記共重合体(A)のガラス転移温度が−85〜0℃であることを特徴とする粘着剤、および基材フィルム上にこの粘着剤を用いた粘着剤層が形成されてなる表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止機能を有し、表面保護フィルム用に好適な粘着剤および表面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、表面保護フィルムは偏光板や導光板等の光学部材、プラスチック板、家電製品、電子機器、さらには自動車等の被保護体表面に保護フィルム側に塗布された粘着剤を介して貼り合わされ、被保護体の加工、搬送時に生じる傷や汚れを防止するために広く利用されている。
【0003】
表面保護フィルムは、一般的に粘着剤層の保護を目的として剥離ライナーが粘着剤層に貼り合わされており、使用に際しては剥離ライナーを剥離して被保護体に貼り付けられる。また、表面保護フィルムは保護が不要になった段階で被保護体から剥離して除去される。
しかし、剥離ライナーや被保護体から表面保護フィルムを剥離する際に発生する静電気が表面保護フィルムに帯電し、電子機器や光学部材などに欠損を与える等の悪影響や、ほこりやゴミが付着し外観不良が発生する等、剥離帯電が問題となっていた。
【0004】
上記問題を解決するために、粘着剤に低分子の界面活性剤を添加することで帯電防止する方法(特許文献1参照)が開示されている。しかし、かかる方法は、添加した低分子の界面活性剤が粘着剤層と被着体の界面に移行(いわゆる「ブリード」ともいう)し易く、表面保護フィルムに使用した場合、ブリードした界面活性剤により被保護体に汚染が生じ電子機器や光学部材等では使用できないといった問題や、粘着剤本来の粘着性能が低下して被保護体から欠落してしまう等の問題がある。
【0005】
また、アクリル粘着剤にポリエーテルポリオール化合物とアルカリ金属塩を組み合わせた帯電防止剤を配合することで帯電防止する方法(特許文献2参照)が開示されている。しかしながら、この方法はアクリル粘着剤と帯電防止剤の相溶性に劣るため、帯電防止剤のブリードに伴う汚染が生じる。また、ポリオールは高水酸基価のために吸湿しやすく、被保護体に貼着後、高湿条件下に長期間曝されると、フィルムの周辺端部に極めて小さい気泡がスジ状に連なった状態で発生してしまう等粘着剤の耐湿熱性が低下する問題があった。
【0006】
そこで、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリマー性有機塩を含有する帯電防止性感圧粘着剤(特許文献3参照)が開示されているが、帯電防止剤がポリマーで分子量が高いため、帯電防止効果を得る為には、アクリル粘着剤に10重量%以上添加する必要が有る。その結果、多量に添加した帯電防止剤の影響で、耐湿熱性が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−165460号公報
【特許文献2】特開平6−128539号公報
【特許文献3】特表2004−536940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた帯電防止性を有し、被着体への汚染性がほとんどない帯電防止用粘着剤、および表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す粘着剤により上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明の粘着剤は、共重合体(A)と、下記化学式(1)で表されるアニオンとカチオン(B)からなるイオン性化合物とを含む粘着剤であって、
前記共重合体(A)が、活性水素基を含有する単量体(C)0.1〜10重量%と、アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)1〜40重量%とを含む単量体の共重合体であり、かつ前記共重合体(A)のガラス転移温度が−85〜0℃であることを特徴とする。
化学式(1)
【化1】

【0011】
また、本発明は上記においてカチオン(B)が下記一般式(2)〜(5)からなる群より選択される一種以上のカチオンを含むことを特徴とする。
【化2】

【0012】
[式(2)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一または異なった水素または炭素数1から12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]
[ 式(3)中のR4は、炭素数2から20 の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一または異なった、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[式(4)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9 、R10、およびR 11 は、同一または異なった水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[式(5)中のXは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R 12、R13、R14 、およびR14は、同一または異なった炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しX が硫黄原子の場合、R12 はない。]。
【0013】
また、本発明は上記においてイオン性化合物が、共重合体(A)100重量部に対して0.01〜15重量部用いることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は上記においてアルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)が、平均付加モル数1〜16のアルキレンオキサイド単位を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は基材フィルム上に、上記記載の粘着剤からなる粘着剤層が形成されてなることを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、適度な粘着力を有し、基材に対する密着性が良く、優れた帯電防止性を有し、再剥離性も良好な粘着剤を提供でき、偏光板や波長板等の光学部材、プラスチック板、家電製品、電子機器、さらには自動車等の製品に有利に利用可能な表面保護フィルムを提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明を実施するための形態を挙げてさらに詳しく説明する。本発明の粘着剤は、下記化学式(1)で表されるアニオン構造を必須とするイオン性化合物と特定の共重合体とを含むことを特徴としている。
化学式(1)
【化3】

【0018】
一方、上記アニオンと類似した構造をもつビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンは優れた導電性を有することが知られているが、上記化学式(1)で表されるアニオンは、上記ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンと異なり分子中に炭素原子を含まず、分子サイズが小さいため、粘着剤に添加した際には粘着剤中を移動しやすく、特に優れた導電性を示す。
【0019】
また、イオン性化合物を構成するカチオン(B)としては、下記一般式(2)〜(5)で表される有機カチオンを用いることが好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
[一般式(2)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一または異なった水素または炭素数1から12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]、
[一般式(3)中のR4は、炭素数2から20 の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一または異なった、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[一般式(4)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9 、R10、およびR 11 は、同一または異なった水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]、
[一般式(5)中のXは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R 12、R13、R14 、およびR14は、同一または異なった炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しX が硫黄原子の場合、R12 はない。]。
【0022】
一般式(2)で表されるカチオンとしてはピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピぺリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−オクチルピぺリジニウムカチオン、1−メチル−1−ラウリルピぺリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−オクチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ラウリルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンが挙げられる。
【0023】
一般式(3)で表されるカチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0024】
一般式(4)で表されるカチオンとしてはピラゾリウムカチオン、ビラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0025】
一般式(5)で表されるカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0026】
本発明のイオン性化合物の添加量は、共重合体(A)100重量部に対して0.01〜15重量部が好ましく、0.02〜10重量部がより好ましい。0.01重量部未満では、帯電防止機能が不足する恐れがある。また15重量部を超えるとイオン性液体がブリードし粘着物性が低下する恐れがある。また、イオン性化合物は単独、または複数組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
共重合体(A)は、活性水素基を含有する単量体(C)0.1〜10重量%と、アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)1〜40重量%と、単量体(C)と、単量体(D)以外の単量体(E)(以下、単量体(E)という。)とを含む単量体の共重合体である。また、前記共重合体(A)のガラス転移温度(以下、Tgとも表記する)は−85℃〜0℃である。Tgが−85℃未満では、粘着剤として必要な凝集力が得られず、0℃を越えると、粘着剤として必要な濡れ性に劣るからである。
なお、上記のTg(℃)は、共重合体を構成する各単量体から得られる単独重合体のガラス転移温度をもとにして、以下の数式(1)(FOXの式)により理論的に算出した値である。
1/(Tg+273) =Σ(Wn/Tgn+273) 数式(1)
(ここに温度は絶対温度である。)
Wn:単量体nの重量%
Tgn:単量体nからなる単独重合体のガラス転移温度
Tg:共重合体のガラス転移温度
【0028】
活性水素基を含有する単量体(C)は、活性水素基として、例えばアミノ基、アミド基、ヌクレンイミド基、エポキシ基、ヒドロキシル基が挙げられる。一方、カルボキシル基またはスルホネート基は好ましくない。これらの中でも架橋の制御が容易なためヒドロキシル基が好ましい。
【0029】
ヒドロキシル基を含有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコールなどが挙げられる。これらの中でもヒドロキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
アミノ基を含有する単量体としては、アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
アミド基を含有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
ヌクレンイミド基を含有する単量体としては、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンヌクレンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンヌクレンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンヌクレンイミド等が挙げられる。
【0033】
エポキシ基を含有する単量体としてはグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
活性水素基を含有する単量体(C)の使用量は、0.1〜10重量%が好ましく、1〜8重量%がより好ましく、2〜6重量%がさらに好ましい。
【0035】
アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)のアルキレンオキサイド鎖としては、オキシアルキレン単位の平均付加モル数は1〜16が好ましく、1〜10がより好ましい。なお、オキシアルキレン単位の平均付加モル数が16より大きくなると共重合体中のオキシアルキレン鎖の結晶性が高くなり、帯電防止性を阻害して好ましくない。
【0036】
アルキレンオキサイド鎖としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどがあげられる。
エチレンオキサイド鎖を含有する単量体としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
プロピレンオキサイド鎖を含有する単量体としては、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの単量体は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0038】
本発明に共重合体(A)にアルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)を使用する目的は、イオン性化合物とアルキレンオキサイドとの間に錯体を形成させ、より効率的に導電性を発現させるためである。よって、アルキレンオキサイド鎖の役割は非常に大きく、単に錯体形成の場を与えるだけでなく、イオン化合物の移動媒体としての働きも同時に担っている。言い換えると、本発明における導電性は、イオン化合物の量とアルキレンオキサイド鎖を有する単量体の含有量によって大きく変動する。
【0039】
共重合体(A)を構成する単量体の合計を100重量%とした場合、アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)は、1〜40重量%が好ましく、5〜35重量%がより好ましい。
【0040】
単量体(E)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル鎖の炭素数は1〜14が好ましく、より好ましくは炭素数が4〜14のものであり、具体的には、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また単量体(E)としては、スチレンなどのビニル系単量体を使用することもできる。
【0041】
本発明においては、凝集力及び架橋度を上げるために、硬化剤を使用することができる。
本発明の硬化剤としては、共重合体(A)中に含まれる活性水素基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有するものが好ましい。前記硬化剤としてポリイソシアネート化合物や多官能エポキシ化合物を挙げることができる。
【0042】
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0045】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0046】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0047】
また上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体や、イソシアヌレート環を有する3量体等も使用することができる。
【0048】
さらには、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。またポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のうちのいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。そして、ポリオールとジイソシアネートとの反応生成物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0049】
本発明に用いられるポリイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)が好ましい。
【0050】
公知の多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を分子内に複数個有する化合物であればよい。具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0051】
上述の硬化剤は、それぞれ単独および併用して使用することができる。そして柔軟性を重視する用途で使用する場合は、ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましく、耐熱性を要求される場合は、多官能エポキシ化合物を使用することが好ましい。ポリイソシアネート化合物を使用する際は、共重合体(A)100重量部に対して硬化剤を0.1〜30重量部用いることが好ましく、0.3〜20重量部用いることがより好ましく、0.5〜15重量部用いることがさらに好ましい。
また、多官能エポキシ化合物を使用する際は、共重合体(A)100重量部に対して、硬化剤を0.1〜5重量部用いることが好ましい。
【0052】
本発明で得られる帯電防止粘着剤には、さらに必要に応じて、他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂を併用することもできる。また、用途に応じて、粘着付与剤、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、リン酸エステル等の添加剤を配合しても良い。なお、イオン性化合物以外の帯電防止剤を、被着体を汚染しない程度に少量用いることもできる。
【0053】
本発明の表面保護フィルムは、基材フィルム上に上述の粘着剤からなる粘着剤層が形成されているものである。また粘着剤層の表面を剥離シートで被覆しておくこともできる。
表面保護フィルムは、基材フィルムや剥離シートに粘着剤を塗布し、形成された粘着剤層に剥離シートや基材フィルムを貼り合せることで製造できる。
【0054】
本発明で、基材フィルムとは、プラスチックフィルム、紙、布、発泡体等を意味する。
【0055】
プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、処理ポリオレフィンフィルム、未処理ポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
【0056】
本発明の粘着剤は、乾燥・硬化した際に2〜200μm程度の厚みになるように基材等に塗布することが好ましい。2μm未満だとイオン導電性が乏しくなり、200μmを越えると表面保護フィルムの製造、取り扱いが難しくなる。また粘着剤の塗布は公知の塗工機を用いることができる。
このようにして粘着剤層の表面抵抗値が1011Ω/□以下、剥離耐電圧が±0.5kV以内の帯電防止粘着フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」をそれぞれ示すものとする。また、実施例等における評価は以下の方法により測定した。
【0058】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度Tg(℃)は、共重合体を構成する各単量体から得られる単独重合体のガラス転移温度をもとにして、以下の数式(1)(FOXの式)により理論的に算出した値である。
1/(Tg+273) =Σ(Wn/Tgn+273) 数式(1)
(ここに温度は絶対温度である。)
Wn:単量体nの重量%
Tgn:単量体nからなる単独重合体のガラス転移温度
Tg:共重合体のガラス転移温度
共重合体のガラス転移温度(Tg)の算出にあたり、単独重合体のガラス転移温度として、下記の値を使用した。
2−エチルヘキシルアクリレート:−70℃
ブチルアクリレート:−52℃
メチルメタクリレート:105℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート:−15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート:−32℃
アクリルアマイド:71℃
2−メトキシエチルアクリレート:−50℃
エトキシジエチレングリコールアクリレート:−67℃
メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイド9mol):−60℃
【0059】
<合成例1>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%〔表1に記載の「55」重量%の内の50重量%の意味;以下同様〕、ブチルアクリレート50重量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート50重量%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド9mol)50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−61℃、不揮発分39%、粘度4000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0060】
<合成例2>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%、ブチルアクリレート33重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレート50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−64℃、不揮発分40%、粘度5000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0061】
<合成例3>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%、ブチルアクリレート50重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレート50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−65℃、不揮発分40%、粘度6500mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0062】
<合成例4>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%、ブチルアクリレート全量、4−ヒドロキシブチルアクリレート50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−66℃、不揮発分40%、粘度6000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0063】
<合成例5>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート20重量%、ブチルアクリレート20重量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート20重量%、2−メトキシエチルアクリレートの全量、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、酢酸エチルで希釈し、Tg−58℃、不揮発分39%、粘度7000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0064】
<合成例6>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%、ブチルアクリレート48重量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート50重量%、アクリルアマイドの全量、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−61℃、不揮発分40%、粘度8000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0065】
<合成例7>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を、窒素雰囲気下約80℃にて7時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−68℃、不揮発分40%、粘度4000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0066】
<合成例8>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%、ブチルアクリレート50重量%、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイド9mol)50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg−65℃、不揮発分40%、粘度6000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0067】
<合成例9>
表1に示す組成比の単量体から構成される共重合体(A)を以下の要領で得た。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、反応槽に2−エチルヘキシルアクリレート50重量%、ブチルアクリレート50重量%、メチルメタクリレート50重量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート50重量%、2−メトキシエチルアクリレートの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りの単量体の全量、および酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却、トルエンで希釈し、Tg8℃、不揮発分39%、粘度4000mPa・sの共重合体溶液を得た。
【0068】
【表1】

【0069】
表1中、単量体の種類を下記の略号で示した。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
AM:アクリルアマイド
MMA:メチルメタクリレート
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
2MEA:2−メトキシエチルアクリレート
EDEGA:エトキシジエチレングリコールアクリレート
MPEGMA400:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド9mol)
【0070】
<実施例1>
合成例1で得られた共重合体溶液の不揮発分40部に対して、イオン性化合物として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.8部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を剥離シートに乾燥塗膜20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させた後、形成されつつある粘着剤層にポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を積層し、この状態で室温にて3日間経過させ、試験用粘着シートを得た。
該粘着シートを用いて、以下に示す方法に従って、粘着力、表面抵抗値、剥離帯電圧、再剥離性、透明性の評価を行った。
【0071】
<粘着力>
試験用粘着テープの剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ0.4mmのガラス板に23℃−50%RHにて貼着し、JIS Z−0237に準じてロール圧着した。圧着から24時間経過後、万能引張試験機にて剥離強度(剥離角度180°、剥離速度300mm/min;単位mN/25mm幅)を測定した。
【0072】
<表面抵抗値>
試験用粘着テープの剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層表面の表面抵抗値を表面抵抗値測定装置(三菱化学株式会社製ハイレスターUP 型番HCP−HT450)を用いて測定した(Ω/□)。
【0073】
<剥離帯電圧>
試験用粘着テープを幅45mm、長さ200mmのサイズにカットし、セパレーターを剥離して、幅50mm、長さ110mmの偏光板にラミネーターで貼り合わせる。23℃−50%RHに24時間放置した後、剥離帯電圧測定装置に固定し、剥離角度180°、剥離速度30m/minになるように剥離する。このときに発生する偏光板表面の電位を所定の位置に固定してある電位測定装置[Hugle Electronics社製 Static monitor model 7500]にて測定した。測定は、23℃−50%RHにて行った。
【0074】
<再剥離性>
試験用粘着テープの剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した後、60℃−95%RHの条件下に24時間放置し、23℃−50%RHにて冷却した後、ガラス板から剥離し、ガラス板への粘着剤層の移行および汚染性を目視で評価した。具体的には、剥離後の状態を以下の4段階で評価した。
被着体への粘着剤層の移行が全くなく、汚染もないもの ◎
被着体への粘着剤層の移行または汚染がごくわずかにあるもの ○
被着体への粘着剤層の移行または汚染が部分的にあるもの △
粘着剤層が完全に移行または汚染しているもの ×
【0075】
<透明性>
試験用粘着テープの剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した後、60℃−95%RHの条件下に24時間放置し、23℃−50%RHに冷却した後、以下の基準で目視評価した。
無色透明なもの ◎
ごく僅か曇っているもの ○
白濁、凝集物が見られるもの △
透明でないもの ×
【0076】
<実施例2〜6>
合成例2〜6で得られた共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。さらに、実施例1と同様にして、試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0077】
<実施例7〜10>
合成例4で得られた共重合体を用いて、表2に示すイオン性化合物をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。さらに、実施例1と同様にして、粘着シートを作製し、評価を行った。
【0078】
<実施例11>
合成例6で得られた共重合体を用いて、イオン性化合物として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド0.3部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。さらに、実施例1と同様にして、試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0079】
<実施例12>
合成例6で得られた共重合体を用いて、イオン性化合物として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド7.0部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。さらに、実施例1と同様にして、試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0080】
<比較例1>
イオン性化合物を配合しない以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。この得られた粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0081】
<比較例2>
合成例7で得られた共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。この得られた粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0082】
<比較例3>
合成例8で得られた共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。この得られた粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0083】
<比較例4>
合成例9で得られた共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。この得られた粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0084】
<比較例5>
合成例2で得られた共重合体を用いて、イオン性化合物としてテトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレートを2.0部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。さらに、実施例1と同様にして、試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0085】
<比較例6>
合成例2で得られた共重合体を用いて、イオン性化合物としてリチウムビスフルオロスルホニルイミドを2.0部配合した以外は、実施例1と同様にして粘着剤を得た。さらに、実施例1と同様にして、試験用粘着シートを作製し、評価を行った。
【0086】
【表2】

【0087】
表2中、イオン性化合物の種類を下記の略号で示した。
EMImFSI:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド
MPPyFSI:1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビスフルオロスルホニルイミド
MPPiFSI:1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビスフルオロスルホニルイミド
OMPyrFSI:1−オクチル−3−メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド
OMImFSI:1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニルイミド
Bu4NBH4:テトラブチルアンモニウムテトラヒドロボレート
LiFSI:リチウムビスフルオロスルホニルイミド
【0088】
表2に示すように、比較例1〜6は、帯電防止性能、粘着性、再剥離性、透明性すべてを満足することはできなかった。
一方、実施例1〜12は優れた帯電防止性能を有し、かつ粘着性、再剥離性、透明性に優れた結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上から、本発明の帯電防止機能を有する粘着剤および表面保護フィルムは、高い帯電防止能のみならず、優れた粘着性、再剥離性、透明性を併せ持ち、各種帯電防止用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と、下記化学式(1)で表されるアニオンとカチオン(B)からなるイオン性化合物とを含む粘着剤であって、
前記共重合体(A)が、活性水素基を含有する単量体(C)0.1〜10重量%と、アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)1〜40重量%とを含む単量体の共重合体であり、かつ前記共重合体(A)のガラス転移温度が−85〜0℃であることを特徴とする粘着剤。
化学式(1)
【化1】

【請求項2】
カチオン(B)が下記一般式(2)〜(5)からなる群より選択される一種以上のカチオンを含むことを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【化2】

[式(2)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一または異なった水素または炭素数1から12の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]
[式(3)中のR4は、炭素数2から20 の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一または異なった、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(4)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9 、R10、およびR 11 は、同一または異なった水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(5)中のXは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、R 12、R13、R14 、およびR14は、同一または異なった炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しX が硫黄原子の場合、R12 はない。]
【請求項3】
前記イオン性化合物が、共重合体(A)100重量部に対して0.01〜15重量部用いることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
アルキレンオキサイド鎖を含有する単量体(D)が、平均付加モル数1〜16のアルキレンオキサイド単位を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の粘着剤。
【請求項5】
基材フィルム上に、請求項1〜4いずれか記載の粘着剤からなる粘着剤層が形成されてなる特徴とする表面保護フィルム。

【公開番号】特開2011−37929(P2011−37929A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183947(P2009−183947)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】