説明

粘着剤シートおよび表示装置

【課題】表示装置のタッチパネルと透明保護板の間に配置される粘着剤シートであって、打ち抜き加工性が良好で、かつタッチパネルと透明保護板との密着後に気泡が発生しない粘着剤シートを提供する。
【解決手段】表示装置のタッチパネルと透明保護板との間に配置される、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤シートであって、アスカーC硬度が15〜50、かつソーダガラス板に対する初期密着力が8N/25mm以上であることを特徴とする、粘着剤シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置のタッチパネルと透明保護板を密着するために用いられる粘着剤シート、および該粘着剤シートを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、タブレットPC、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行の端末などの電子機器に用いられる表示装置として、近年、液晶表示パネルや有機EL表示パネルなどの表示パネルと透明保護板との間に一定の空隙を設けてタッチパネルが配置された表示装置が普及している。
【0003】
上記表示装置におけるタッチパネルと透明保護板との間の空隙の存在は、光の散乱を起こし、コントラストや輝度を低下させるという問題がある。そこで、タッチパネルと透明保護板との空隙に、光硬化樹脂や熱硬化樹脂を充填し硬化する方式(例えば特許文献1〜4)、あるいはタッチパネルと透明保護板とを粘着剤シートで密着する方式(例えば特許文献5〜9)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−174417号公報
【特許文献2】特開2005−55641号公報
【特許文献3】特開2007−297582号公報
【特許文献4】特開2008−281997号公報
【特許文献5】特開2004−212521号公報
【特許文献6】特開2008−169331号公報
【特許文献7】特開2008−266473号公報
【特許文献8】特開2009−98324号公報
【特許文献9】特開2009−155503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した樹脂の充填硬化方式は、タッチパネルと透明保護板との間に、光硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を充填させた後、樹脂を光(紫外線等)や熱で硬化させるために、樹脂が硬化するときの硬化収縮によってタッチパネルの変形を招くという問題、あるいは無溶剤硬化型樹脂組成物を用いた場合、樹脂組成物が高粘度となるために充填時に気泡が混入しやすいという問題がある。
【0006】
一方、上記した粘着剤シートで密着する方式は、樹脂の充填硬化方式に対して、タッチパネルの変形は回避可能であるが、気泡が発生しやすいという問題がある。特に透明保護板のタッチパネル側に画像表示部と外周との境界を縁取りするための加飾層(黒色印刷層)が設けられている場合、この加飾層の段差部に気泡が発生し易いという問題があった。
【0007】
また、粘着剤シートを構成する粘着剤には、熱硬化型と光硬化型(紫外線等の活性エネルギー線硬化型)が知られているが、熱硬化型粘着剤はその製造時において、離型フィルム(離型PETフィルムが一般的)に熱硬化型粘着剤組成物を塗工して熱硬化するときに熱によって離型フィルムにしわが発生したり変形したりする場合があり、それによって均一な塗膜が得られないと言う問題がある。厚みが均一でない粘着剤シートを用いて表示パネルと透明保護板とを貼り合わせた場合、気泡が混入するという問題が生じる。
【0008】
また、粘着剤シートを構成する粘着剤としてゴム系やエラストマー系の粘着剤が知られているが、これらの粘着剤は加熱溶融工程や成形加工後の冷却工程が必要であり生産性が劣るという問題がある。
【0009】
上記の表示装置に用いられる粘着剤シートは、通常、表示装置の画面サイズに合わせて枚葉に打ち抜き加工される。また、タッチパネルと透明保護板との間の空隙を埋めて密着する必要性から、比較的厚みの大きい粘着剤シート(例えば厚みが50μm以上の粘着剤シート)が用いられている。
【0010】
比較的厚みの大きい粘着剤シートは、打ち抜き加工時にしばしば以下のような問題が発生した。例えば、切断部が再付着して分離できないという問題、打ち抜き刃に粘着剤が付着するという問題、打ち抜きされた枚葉粘着剤シートの端部が変形し平面性が悪化するという問題が発生した。上記の平面性の悪化は、表示装置に適用したときに気泡が発生するという不都合を招くことがある。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑みて、表示装置のタッチパネルと透明保護板の間に配置される粘着剤シートであって、打ち抜き加工性が良好で、かつタッチパネルと透明保護板との密着後に気泡が発生しない粘着剤シートを提供することにある。本発明の他の目的は、本発明の粘着剤シートを用いた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1)表示装置のタッチパネルと透明保護板との間に配置される、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤シートであって、アスカーC硬度が15〜50、かつソーダガラス板に対する初期密着力が8N/25mm以上であることを特徴とする、粘着剤シート。
2)前記粘着剤がウレタン系粘着剤またはアクリル系粘着剤である、前記1)の粘着剤シート。
3)前記粘着剤がウレタン系粘着剤である、前記2)の粘着剤シート。
4)前記粘着剤がカルボキシル基を有する成分を含まない、前記1)〜3)のいずれかの粘着剤シート。
5)厚みが50〜1000μmである、前記1)〜4)のいずれかの粘着剤シート。
6)表示パネル、タッチパネル、透明保護板がこの順に配置された表示装置であって、前記1)〜5)のいずれかの粘着剤シートを介して、前記タッチパネルと前記透明保護板が密着されてなる表示装置。
7)前記透明保護板のタッチパネル側の面に加飾層が設けられている、前記6)の表示装置。
【発明の効果】
【0013】
表示装置のタッチパネルと透明保護板との密着に本発明の粘着剤シートを用いることによって、気泡発生を抑制することができる。特に、本発明の粘着剤シートは、透明保護板に加飾層が設けられている場合の気泡発生を有効に抑制することができる。
更に、本発明の粘着剤シートは、打ち抜き加工性が良好である。具体的には、本発明の粘着剤シートを打ち抜き加工するに際し、打ち抜き後の切断部の再付着がなく打ち抜き片(枚葉粘着剤シート)の分離をスムーズに行うことができ、打ち抜き片(枚葉粘着剤シート)の平面性(端部の盛り上がりがない)が良好であり、更に打ち抜き刃への糊(粘着剤)付着が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の粘着剤シートによってタッチパネルと透明保護板とを密着した表示装置の一例を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の粘着剤シートは、表示装置のタッチパネルと透明保護板との間に配置され、タッチパネルと透明保護板を密着するための粘着剤シートである。特に、タッチパネル側に加飾層が設けられた透明保護板とタッチパネルを密着する場合に本発明の粘着剤シートは有効である。
【0016】
図1は、表示パネル3、タッチパネル5、透明保護板1がこの順に配置された表示装置の一例の模式断面図であって、本発明の粘着剤シート2によってタッチパネル5と透明保護板1とが密着された態様である。透明保護板1のタッチパネル5側の面の外周周縁には画像表示領域を縁取りするための加飾層(例えば黒色印刷層)4が設けられている。
【0017】
上記表示装置の表示パネルとしては、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等が挙げられる。タッチパネルとしては、ITO膜のような透明導電膜が積層された透明導電性部材で構成される静電容量方式のタッチパネル等が挙げられる。透明保護板としては、ガラス板、プラスチック樹脂板(例えばアクリル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、ポリエステル樹脂板等)が挙げられる。透明保護板の厚みは、0.3〜3mm程度が一般的であり、より詳細には0.5〜2mmの範囲である。
【0018】
透明保護板に設けられる加飾層は、例えば、表示パネルの画像表示領域に相当する領域を縁取りするための着色層であり、透明保護板の外周に印刷等によって設けられるものである。加飾層は光を透過させないことが好ましく、そのため加飾層の色は黒色であることが好ましく、また厚みも比較的大きいことが好ましい。
【0019】
上記観点から加飾層の厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、特に15μm以上が好ましい。上限は40μm程度である。
【0020】
上記したように透明保護板に加飾層が設けられている場合、粘着剤シートを介してタッチパネルと透明保護板とを密着したときに、加飾層の段差部に気泡が発生しやすくなる。特に、加飾層の厚みが上記のように比較的大きくなると、気泡発生が助長される。
【0021】
上記のタッチパネルと透明保護板とを粘着剤シートを介して密着したときの気泡発生の問題は、粘着剤シートの初期密着力を8N/25mm以上とすることで改良することが分かった。ここで、初期密着力とは、粘着剤シートをソーダガラス板に貼り合わせてから5分後の密着力である。
【0022】
一般的に粘着剤シートは貼り合わせ後の時間経過とともに密着力は上昇する傾向にあるが、上記した本発明の課題解決には初期密着力が重要であることを見いだした。
【0023】
本発明の粘着剤シートの初期密着力は、10N/25mm以上が好ましく、11N/25mm以上がより好ましく、特に12N/25mm以上が好ましい。上限は50N/25mm程度である。
【0024】
一方、粘着剤シートの密着力(粘着力)が大きくなると、打ち抜き加工性は一般的に低下する傾向にある。特に、粘着剤シートの厚みが大きくなると上記傾向は顕著になる。
【0025】
本発明の粘着剤シートは、比較的大きい初期密着力と良好な打ち抜き加工性とを兼ね備えた粘着剤シートであり、良好な打ち抜き加工性は、粘着剤シートのアスカーC硬度を15〜50とすることによって達成することを見いだした。
【0026】
粘着剤シートのアスカーC硬度が、15未満であると打ち抜き加工性が悪化し、逆に50を越えると密着力が低下して、初期密着力を8N/25mm以上に保持することが難しくなる。
【0027】
本発明の粘着剤シートのアスカーC硬度は、18以上が好ましく、20以上がより好ましく、更に21以上が好ましく、特に22以上が好ましい。上限は45以下が好ましく、40以下がより好ましく、特に35以下が好ましい。
【0028】
本発明の粘着剤シートは粘着剤をシート状に形成したものであり、例えば剥離シート(離型フィルム)上に粘着剤を塗工することによって粘着剤シートを得ることができる。この場合、剥離シートは加工工程、取り扱い工程、あるいは物流工程で本発明の粘着剤シートを保護するために使用するものであり、表示装置に本発明の粘着剤シートを適用するときには除去されるものである。
【0029】
本発明の粘着剤シートの厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、更に120μm以上であることが好ましく、特に150μm以上であることが好ましい。厚みの上限は1000μm程度である。
【0030】
上記のように粘着剤シートの厚みを大きくすることによって、前述した透明保護板の加飾層端部の段差を十分に埋めることができ、更に表示装置のタッチパネルと透明保護板との間の空隙を隙間無く埋めることができる。
本発明の粘着剤シートを構成する粘着剤は活性エネルギー線硬化型粘着剤である。活性エネルギー線硬化型粘着剤の中でも、アクリル系活性エネルギー線硬化型粘着剤および/またはウレタン系活性エネルギー線硬化型粘着剤が好ましく、特にウレタン系活性エネルギー線硬化型粘着剤が好ましい。
【0031】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、上記したように厚みが比較的大きい粘着剤シートを均一に生産性よく製造することができる。後述するように、特に無溶剤型粘着剤とすることによって更に生産性が向上し、加えて粘着剤シート中には実質的に溶剤残留が存在しないので、取り扱い性や環境衛生の観点から好ましい。
【0032】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、電子線や紫外線等の活性エネルギー線によって硬化する粘着剤である。以下、本発明に用いられる活性エネルギー線硬化型粘着剤について、詳細に説明する。
【0033】
粘着剤シートを構成する粘着剤として好ましく用いられるアクリル系活性エネルギー線硬化型粘着剤は、下記のアクリル系活性エネルギー線硬化性組成物を硬化することによって得られる。
【0034】
かかるアクリル系活性エネルギー線硬化性組成物としては、アクリル系ポリマー、重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマー、並びに重合開始剤を含む組成物が挙げられる。
【0035】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル)をモノマー主成分とする(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを用いることができる。また、アクリル系ポリマーとして、前記モノマーと水酸基を有するモノマーを共重合したポリマーを用いることができる。また更に、アクリル系ポリマーとして、側鎖に重合性官能基(エチレン性不飽和基)を有する重合性ポリマーを用いることができる。アクリル系ポリマーの重量平均分子量としては1万〜100万の範囲が適当であり、2万〜80万の範囲が好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。
【0036】
アクリル系ポリマーの使用量は、アクリル系活性エネルギー線硬化性組成物100質量%に対して30〜99質量%の範囲が好ましい。
【0037】
重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート化合物やビニル化合物が挙げられ、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニルなどが挙げられる。
【0038】
重合性オリゴマーとしては、ウレタン系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマーなどが挙げられる。
【0039】
重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの使用量(重合性モノマーと重合性オリゴマーを併用する場合は両者の合計量)は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、1〜30質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましい。
【0040】
重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン系、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のヒドロキシアルキルフェノン系、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等のアミン系が挙げられる。
【0041】
重合開始剤の使用量は、重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマー(重合性モノマーと重合性オリゴマーを併用する場合は両者の合計量)の100質量部に対して0.05〜10質量部の範囲が好ましく、0.1〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0042】
上述したアクリル系活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して得られた粘着剤および粘着剤シートは、カルボキシル基を有する成分を実質的に含まないことが好ましい。粘着剤シートがカルボキシル基を有する成分を含むと、タッチパネルを構成する透明導電層が腐食するという問題が発生することがある。
【0043】
アクリル系活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して得られた粘着剤および粘着剤シートがカルボキシル基を有する成分を実質的に含まないとは、アクリル系活性エネルギー線硬化性組成物を構成する、アクリル系ポリマー、重合性モノマー、および重合性オリゴマーは、分子中にカルボキシル基を有していないことを意味する。
【0044】
上記のアクリル系活性エネルギー線硬化型粘着剤の初期密着力は、アクリル系ポリマーの重量平均分子量や重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの使用量を調整することによって制御することができる。具体的には、アクリル系ポリマーの重量平均分子量を大きくすることによって、あるいは重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの使用比率を小さくすることによって初期密着力を大きくすることができる。
一方、アクリル系活性エネルギー線硬化型粘着剤のアスカーC硬度は、アクリル系ポリマーのガラス転移点(Tg)の調整、あるいは多官能の重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの使用量を調整することによって制御することができる。例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移点(Tg)は、−80〜10℃の範囲であることが好ましいが、この範囲内でTgが比較的高めのアクリル系ポリマーを用いることによってアスカーC硬度を大きくすることができる。また、多官能の重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーの使用比率を大きくすることによってもアスカーC硬度を大きくすることができる。
【0045】
粘着剤シートを構成する粘着剤として特に好ましく用いられるウレタン系活性エネルギー線硬化型粘着剤について、以下に詳細に説明する
かかるウレタン系活性エネルギー線硬化型粘着剤は、少なくともウレタンポリマーを含有するウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を硬化せしめることによって得られたものであることが好ましい。
【0046】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物に含有するウレタンポリマーは、重合性ウレタンポリマーを少なくとも含むことが好ましい。かかる重合性ウレタンポリマーとしては、分子中にエチレン性不飽和基を有するものが好ましい。ここでエチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。
【0047】
重合性ウレタンポリマーの重量平均分子量は、粘着シートの初期密着力を大きくするという観点から、20000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、特に35000以上が好ましい。重量平均分子量を大きくすることによって初期密着力を大きくすることができる。ウレタンポリマーの重量平均分子量の上限は、後述の活性エネルギー線硬化性組成物の粘度上昇を抑制して良好な塗工性を確保するという観点から60000以下が好ましく、55000以下がより好ましく、特に50000以下が好ましい。
【0048】
ウレタン系活性エネルギー線硬化型粘着剤シートのアスカーC硬度を15以上とするには、分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(A)を少なくとも用いることが好ましい。上記重合性ウレタンポリマー中のエチレン性不飽和基数は3〜6個の範囲が好ましく、3〜5個の範囲がより好ましく、更に3〜4個の範囲が好ましく、特に3個であることが好ましい。重合性ウレタンポリマー中のエチレン性不飽和基の数が上記の範囲を超えて多くなると、得られた粘着剤シートの初期密着力が小さくなり、8N/25mm以上を満足しない場合がある。
【0049】
上記重合性ウレタンポリマー(A)の中でも、分子の両末端のみにそれぞれ1個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマーが好ましく、具体的には、分子の一方の末端に1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ他方の末端に2〜3個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(A1)、分子の両末端のみにそれぞれ2〜3個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(A2)が挙げられる。
上記重合性ウレタンポリマー(A)は、側鎖にはエチレン性不飽和基は有しないことが好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマーを用いると、得られた粘着剤シートの初期密着力が小さくなり、8N/25mm以上を満足しない場合がある。
【0050】
重合性ウレタンポリマー(A)に加えて、分子中に2個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(B)を用いることが好ましく、これによって粘着剤シートのアスカーC硬度が高くなりすぎるのを抑制して初期密着力の低下を緩和することができる。
上記重合性ウレタンポリマー(B)としては、分子に両末端のみにそれぞれ1個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマーが好ましい。
重合性ウレタンポリマー(A)と重合性ウレタンポリマー(B)の含有比率(モル比)は、1:9〜9:1の範囲が好ましく、2:8〜8:2の範囲がより好ましく、更に3:7〜7:3の範囲が好ましい。
【0051】
粘着剤シートのアスカーC硬度を15〜50の範囲に維持しながら、初期密着力の8N/25mm以上への調整を比較的容易にするという観点から、上記重合性ウレタンポリマー(A)に加えて、分子中にヒドロキシル基を有するウレタンポリマー(C)を用いることが好ましい。
【0052】
上記のウレタンポリマー(C)としては、分子の少なくとも一方の末端にヒドロキシル基を有するものが好ましく、特に分子の一方の末端にヒドロキシル基有しかつ他方の末端に1〜2個のエチレン性不飽和基を有するウレタンポリマー(C1)が好ましい。
【0053】
上記のウレタンポリマー(C)がエチレン性不飽和基を有する場合、エチレン性不飽和基は側鎖には有しないことが好ましい。
【0054】
重合性ウレタンポリマー(A)と重合性ウレタンポリマー(C)の含有比率(モル比)は、1:9〜9:1の範囲が好ましく、2:8〜8:2の範囲がより好ましく、更に3:7〜7:3の範囲が好ましい。
【0055】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタンポリマーとして上記した重合性ウレタンポリマー(A)、重合性ウレタンポリマー(B)およびウレタンポリマー(C)を含有することが好ましい。
【0056】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物が、重合性ウレタンポリマー(A)と、重合性ウレタンポリマー(B)および/またはウレタンポリマー(C)を含有する場合、これらの合計量は、ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、特に60質量%以上が好ましい。上限は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、特に85質量%以下が好ましい。ここで、ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量とは、有機溶剤以外の全成分を意味するもので、常温で液体の重合性モノマー(例えば反応性希釈剤として用いられるような低分子量のモノマー)は固形分に含まれる。
【0057】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタンポリマーとして上記の重合性ウレタンポリマー(A)、重合性ウレタンポリマー(B)、およびウレタンポリマー(C)以外の他のウレタンポリマーを含むことができる。この場合、他のウレタンポリマーの含有比率は、ウレタンポリマー総量100質量%に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、特に10質量%以下が好ましい。
【0058】
また、ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物は、ウレタンポリマー以外のポリマー、例えばアクリル系ポリマー、エステル系ポリマー、シリコン系ポリマー等を含有することができる。上記のウレタンポリマー以外のポリマーの含有量は、ウレタンポリマー100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、特に10質量部以下であることが好ましい。
【0059】
重合性ウレタンポリマー(A)は、例えば、分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と、イソシアネート基と反応しうる官能基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等)とエチレン性不飽和基を有する化合物(b)とを反応させることによって得ることができる。
【0060】
具体的には、上記重合性ウレタンポリマー(A1)は、分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と、イソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を1個有する化合物(b1)およびイソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を2〜3個有する化合物(b2)とを反応させることによって得ることができる。
【0061】
また、上記重合性ウレタンポリマー(A2)は、分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と、イソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を2〜3個有する化合物(b2)とを反応させることによって得ることができる。
【0062】
分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)は、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させて合成することができる。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられるが、これらの中でもポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびポリカプロラクトンポリオールが好ましく、特にポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールを原料として得られたウレタンポリマーは、高湿下での密着力を低下させることなく維持することができるので好ましい。
【0063】
上記ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールをエステル化反応させて得ることができる。かかる多価カルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、乳酸、ダイマー酸等が挙げられ、中でもアジピン酸、セバシン酸、ピロリメット酸、ダイマー酸が好ましい。
【0064】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等を用いることができ、中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の2官能アルコールが好ましい。
【0065】
上記ポリエーテルポリオールは多価アルコールをエーテル化反応させて得ることができる。ここで用いる多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオールの製造に用いる多価アルコールと同様のものを用いることができる。
【0066】
上記ポリカプロラクトンポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール,1,9−ノナンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド,もしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等公知慣用の多価アルコールのε−カプロラクトン付加物等が挙げられる。
【0067】
上記ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールの合成に用いられる多価アルコールとホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは前記多価アルコールとジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0068】
分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレプレポリマー(a)の合成に用いられるイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
【0069】
イソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を1個有する化合物(b1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特にヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。
イソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を2〜3個有する化合物(b2)としては、例えば、2−ヒドロキエチルジ(メタ)アクリレート、1−ヒドロキプロピルジ(メタ)アクリレート、1−ヒドロキブチルジ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチルジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキペンチルジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有の2官能(メタ)アクリレート化合物、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0070】
重合性ウレタンポリマー(B)は、例えば、上記の分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と、上記のイソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を1個有する化合物(b1)とを反応させることによって得ることができる。
【0071】
ウレタンポリマー(C)は、例えば、上記の分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と、イソシアネート基と反応しうる官能基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等)とヒドロキシル基を有する化合物(c)とを反応させることによって得ることができる。
【0072】
具体的には、ウレタンポリマー(C1)は、例えば、上記の分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と、イソシアネート基と反応しうる官能基とヒドロキシル基を有する化合物(c)と、上記イソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を1個有する化合物(b1)もしくは上記イソシアネート基と反応しうる官能基とエチレン性不飽和基を2個有する化合物(b2)とを反応させることによって得ることができる。
【0073】
イソシアネート基と反応しうる官能基とヒドロキシル基を有する化合物(c)としては、例えば、例えば多価カルボン酸、オキシカルボン酸、多価アルコール等が挙げられる。
【0074】
上記の多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ダイマー酸、エタン−1,1,2−トリカルボン酸、ヘキサン−2,3,5−トリカルボン酸等公知慣用の有機酸が好適に用いられるが、他の成分との相溶性の面からジカルボン酸が好ましい。
【0075】
上記のオキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、トリオキシ酪酸、トリオキシ吉草酸、トリオキシヘキサン酸、グルコン酸等公知慣用の有機酸が好適に用いられる。
【0076】
上記の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールを好ましく用いることができる。中でも、他の成分との相溶性や吸水安定性の面から1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール等のジオールが特に好ましい。
【0077】
上記した重合性ウレタンポリマー(A)と重合性ウレタンポリマー(B)の2種、あるいは更にウレタンポリマー(C)を加えた3種を同時に合成することができる。例えば、分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と反応させる化合物(b1)、化合物(b2)、および化合物(c)の仕込み比率を調整することによって、あるいは仕込み順序や仕込み時間を調整することによって、上記2種あるいは3種を同時に合成することができる。
【0078】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物には、更に重合性モノマー含有させることが好ましい。かかる重合性モノマーとしては、1官能もしくは2官能の重合性モノマーが好ましく用いられ、粘着剤の初期密着力を高くすると言う観点から1官能の重合性モノマー化合物がより好ましく用いられる。
【0079】
上記1官能の重合性モノマーの中でも、粘着剤の初期密着力を高くすると言う観点から更に、イ)酸素原子含有複素環を有する重合性モノマー、ロ)フェニルオキシ基を有する重合性モノマー、あるいはロ)ヒドロキシル基を有する重合性モノマーが好ましく用いられる。
【0080】
上記のイ)酸素原子含有複素環を有するモノマーとしては、フルフリル、モルホリン、カプロラクタン等の酸素原子含有複素環を有するモノマーが挙げられ、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)クリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0081】
上記のロ)フェニルオキシ基を有するモノマーとしては、例えば、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
上記のハ)ヒドロキシ基を含有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物における重合性モノマーの合計使用量は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、1〜50質量%の範囲が好ましく、2〜40質量%の範囲がより好ましく、特に5〜30質量%の範囲が好ましい。
【0083】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物には、更に重合開始剤を含有させることが好ましい。かかる重合開始剤としては市販のものを広く使用することができるが、以下に示すような重合開始剤が好ましく用いられる。例えば、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン系、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のヒドロキシアルキルフェノン系、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等のアミン系が挙げられる。
【0084】
重合開始剤の使用量は、ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、0.05〜5質量%の範囲が適当であり、0.1〜3質量%の範囲が好ましい。
【0085】
上述したウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して得られた粘着剤シートは、カルボキシル基を有する成分を実質的に含まないことが好ましい。粘着剤シートがカルボキシル基を有する成分を含むと、タッチパネルを構成する透明導電層が腐食するという問題が発生することがある。
【0086】
ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して得られた粘着剤シートがカルボキシル基を有する成分を実質的に含まないとは、ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を構成する、ウレタンポリマー、重合性モノマー、および必要に応じて用いられるウレタンポリマー以外のポリマーは、分子中にカルボキシル基を有していないことを意味する。
【0087】
上記したウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物およびアクリル系活性エネルギー線硬化性組成物(以下、両者を総称して単に活性エネルギー線硬化性組成物という)は、実質的に有機溶剤を含まない、いわゆる、無溶剤型であることが好ましい。ここで、活性エネルギー線硬化性組成物が実質的に有機溶剤を含まないとは、活性エネルギー線硬化性組成物100質量%に含まれる有機溶剤の量が5質量%以下であることを意味し、好ましくは有機溶剤量が3質量%以下であり、より好ましくは有機溶剤量が1質量%以下であり、特に好ましくは有機溶剤を全く含まないことである。
【0088】
上記有機溶剤は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸ブチル、エタノール、メタノールなどの揮発性の高い有機溶剤を対象とし、特に、沸点が130℃以下の有機溶剤を対象とする。
【0089】
上記有機溶剤には、液状の重合性モノマー(例えば反応性希釈剤として用いられるような低分子の(メタ)アクリレートモノマー等)は含まれない。
【0090】
前述の活性エネルギー線硬化性組成物を無溶剤型とすることで、製造工程における安全性や環境性が改善され、また、得られた粘着剤の残存溶剤の大幅な低減が図られる。また、無溶剤型とすることで、粘着シート作製時の乾燥工程を省略することができるので、生産プロセスが短縮され、生産性が向上するので好ましい。
【0091】
活性エネルギー線硬化性組成物には、黄変防止のために、酸化防止剤や光安定剤を含有させることが好ましい。
【0092】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましく用いられる。光安定剤としては、立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が好ましく用いられる。
【0093】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、ジエチル〔(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ホスフェート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−sec−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−ネオペンチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル)イソシアヌル酸、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、p−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重縮合物、p−クロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの重縮合物、p−クレゾールとジビニルベンゼン重縮合物のイソブチレン反応物、などが挙げられる。
【0094】
上記化合物の中でも、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレン−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のプロピオネート化合物が好ましく用いられる。
【0095】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスホナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスホナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリスリールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリールジホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライル(オクタデシルホスファイト)、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトール ホスファイトポリマー、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトなどが挙げられる。
【0096】
これらの中でも、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト等のトリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、モノフェニルジアルキルホスファイトが好ましく用いられる。
【0097】
本発明に用いることができる、立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体について説明する。係る単量体における立体障害ピペリジル基とは、ピペリジル基の2位と6位にそれぞれ1乃至2個のアルキル基を有するものであり、エチレン性不飽和基とは、アクリル基(アクリロイル基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、クロトノイル基、ビニル基、アリル基等であり、エチレン性不飽和基が立体障害ピペリジル基の1位および/または4位に、直接もしくは酸素原子やイミノ基等の連結基を介して結合した化合物である。
【0098】
本発明に好ましく用いられる立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体は、下記一般式(1)および(2)で表すことができる。
【0099】
【化1】

【0100】
(式中、R は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはシアノ基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0101】
【化2】

【0102】
(式中、R12〜R15はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、R16は水素原子またはシアノ基を表し、R17〜R20はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子またはイミノ基を表す。)。
【0103】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0104】
前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
【0105】
上記した化合物の中でも、一般式(1)で表される化合物が好ましく、特に4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが好ましく用いられる。
【0106】
上記したヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、および立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体の、それぞれの含有比率は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して0.05〜5質量%の範囲が好ましく、0.1〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0107】
活性エネルギー線硬化性組成物には、更に重合禁止剤を含有させることができる。かかる重合禁止剤としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール等を用いることができる。
【0108】
また、活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて上記以外の各種添加剤、たとえば、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色防止剤、顔料、粘着性付与剤(タッキファイヤー)等を含有させることができる。
【0109】
上述した活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤シートは、上記した活性エネルギー線硬化性組成物を所定の厚みに成形もしくは塗工した後、活性エネルギー線を照射して硬化せしめることによって製造される。具体的には、剥離シート(例えば離型PETフィルム等)に、上記した活性エネルギー線硬化性組成物を所定の厚みに塗工した後、活性エネルギー線を照射して硬化せしめることによって、粘着剤シートが製造される。
【0110】
上記活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などが挙げられるが、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性エネルギー線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができるので好ましい。
【0111】
活性エネルギー線を照射するときには、低酸素濃度の雰囲気下で照射を行なうことが好ましい。これによって、得られた粘着剤シートの黄変を抑制することができ、また効率よく硬化させることができる。
【0112】
活性エネルギー線を照射するときの酸素濃度は、3000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、特に500ppm以下が好ましい。酸素濃度の下限は、経済的な観点から50ppm程度である。
【0113】
酸素濃度を低下させる方法としては、窒素ガスなどの不活性ガスを注入して酸素と置換する方法が好ましく用いられる。この場合、活性エネルギー線照射装置内に外気が進入しないように可能な限り密閉化して、その中で窒素ガス等の不活性ガスを吹き付けて酸素濃度低下させることが好ましい。
【0114】
また、低酸素濃度の雰囲気下で活性エネルギー線を照射する方法として、剥離シート(例えば離型PETフィルム等)上に塗工された活性エネルギー線硬化性組成物上に別の剥離シート(例えば離型PETフィルム等)を積層して酸素を遮断した状態で活性エネルギー線を照射する方法も好ましく用いることができる。
【0115】
また、本発明の粘着剤シートは、せん断弾性率が0.5MPa以下が好ましく、0.4MPa以下がより好ましく、特に0.3MPa以下が好ましい。せん断弾性率の下限は0.05MPa以上が好ましく、0.08MPa以上がより好ましく、特に0.1MPa以上が好ましい。
【実施例】
【0116】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例における測定方法と評価方法を以下に示す。
【0117】
1)初期密着力の測定
本実施例で作製した粘着剤シートを幅25mmに切断し、一方の離型PETフィルムを剥離した後、厚み100μmポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせて24時間経過したものを測定用試料とした。
環境温湿度23±2℃、50±5%RHにて、上記測定用試料のもう一方の離型PETフィルムを剥離して、厚み1.8mmのソーダガラス板上にポリエチレンテレフタレートフィルムに保持された粘着剤シートを貼り付け、重量が2kgのゴムローラを1往復させて圧着した。圧着して5分間経過後に、テンシロンRTM−100(オリエンテック社製)を用いて剥離速度300mm/分で180度剥離試験を行った。測定は5回行い、最大値と最小値を除いた3回の測定データを平均した。上記ガラス板は、メチルエチルケトンで洗浄後、更にエチルアルコールで洗浄したものを使用した。
【0118】
2)アスカーC硬度の測定
合計厚みが約6mmとなるように粘着剤シートを積層して測定試料を作製した。測定は、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に準じて、アスカーC硬度計(高分子計測器(株)のデジタルゴム硬度計DD2−C型)を用いて、環境温湿度23±2℃、50±5%RHにて行った。測定は5回行い、最大値と最小値を除いた3回の測定データを平均した。
【0119】
3)気泡発生の評価
本実施例で作製された粘着シートを用いて、図1に示す表示装置のタッチパネルと透明保護板(厚み0.7mmのガラス板の周辺に加飾層を有する)とを密着した後、透明保護板の加飾層(厚みが20μm黒色印刷層)付近に気泡が発生しているかどうかを観察し以下の基準で評価した。この表示装置の画像表示領域の面積は300cm(20cm×15cm)である。
○;気泡の発生がない。
×;気泡が発生している。
【0120】
4)打ち抜き加工性の評価
本実施例で作製した粘着剤シート(粘着剤シートの両面に離型PETフィルムを積層したもの)を金型で22cm×17cmの枚葉サイズに100枚打ち抜きしたときの状況を下記A)、B)の点を主に観察し、下記基準で評価した。
A)切断部の再付着がなく容易に分離できるかどうか。
B)打ち抜きされた枚葉粘着剤シートの端部が変形せずに平面性が保たれているかどうか。
○;100枚中、分離できない枚数が10枚未満、かつ打ち抜きされた枚葉粘着剤シートの端部が変形している枚数が10枚未満である場合。
△;100枚中、分離できない枚数が10枚以上20枚未満、または打ち抜きされた枚葉粘着剤シートの端部が変形している枚数が10枚以上20枚未満である場合。
×;100枚中、分離できない枚数が20枚以上、または打ち抜きされた枚葉粘着剤シートの端部が変形している枚数が20枚以上である場合。
【0121】
5)重量平均分子量の測定方法
ウレタンポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。測定にはWALTERS GPC−150C Plus(日本WALTERS社製)を用い下記条件にて測定した。
・検出器:WALTERS 2410
・溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム:HR4 2本、HR4E 1本(7.5mm×300mm)
・温度:40℃
・濃度:0.2%
・注入量:100μl
・流速:1.0m/m
・n数:3。
【0122】
<ウレタンポリマー1の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を装備したフラスコに、ポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン(株)製「エクセノール3020」、数平均分子量3200)97.98質量部、ジラウリル酸ジブチルすず0.11質量部を仕込んだ。次に窒素ガスを吹き込みながら系内を70℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート7.38質量部を加え、3時間攪拌しながら保温した。こうして分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)を合成した。引き続き、酸素ガス、窒素ガスを吹き込みながら、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.551質量部、グリセリンジアクリレート0.153質量部、1,3−ブタンジオール0.047質量部を順次加えて、3時間攪拌しながら保温して30分ごとの分子量測定の結果、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.5で一定であることを確認し反応を終了し、ウレタンポリマー1(重量平均分子量41500)を得た。このウレタンポリマー1は、分子の一方の末端に2個のエチレン性不飽和基を有しかつ他方の末端に1個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(A1)と、分子の両末端にそれぞれ1個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(B)と、分子の一方の末端にヒドロキシル基を有しかつ他方の末端に1個のエチレン性不飽和基を有するウレタンポリマー(C1)とを、3:5:2(モル比)の割合で含む。
【0123】
<ウレタンポリマー2の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を装備したフラスコに、「クラレポリオールP−3010」[クラレ(株)製のポリエステルポリオール(ジオールタイプ、数平均分子量3000)]91.86質量部、ジラウリル酸ジブチルすず0.11質量部を仕込んだ。次に窒素ガスを吹き込みながら系内を70℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート8.65質量部を加え、3時間攪拌しながら保温した。こうして分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a2)を合成した。引き続き、酸素ガス、窒素ガスを吹き込みながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.27質量部と、1,3−ブタンジオール0.42質量部を順次加え、3時間攪拌しながら保温して30分ごとの分子量測定の結果、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.5で一定であることを確認し反応を終了し、ウレタンポリマー2(重量平均分子量22000)を得た。このウレタンポリマー2は、分子の両末端にそれぞれ1個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(B)と、分子の一方の末端にヒドロキシル基を有しかつ他方の末端に1個のエチレン性不飽和基を有するウレタンポリマー(C1)とを、4:6(モル比)の割合で含む。
【0124】
<ウレタンポリマー3の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を装備したフラスコに、「エクセノ−ル3020」[旭硝子ウレタン(株)製のポリプロピレングリコール(数平均分子量3200)]97.98質量部、ジラウリル酸ジブチルすず0.11質量部を仕込んだ。次に窒素ガスを吹き込みながら系内を70℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート8.65質量部を加え、3時間攪拌しながら保温した。こうして分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a3)を合成した。引き続き、酸素ガス、窒素ガスを吹き込みながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.9質量部と、1,3−ブタンジオール0.7質量部を順次加え、3時間攪拌しながら保温して30分ごとの分子量測定の結果、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.5で一定であることを確認し反応を終了し、ウレタンポリマー3(重量平均分子量24000)を得た。このウレタンポリマー3は、分子の一方の末端にヒドロキシル基を有しかつ他方の末端に1個のエチレン性不飽和基を有するウレタンポリマー(C1)である。
【0125】
<ウレタンポリマー4の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を装備したフラスコに、「エクセノ−ル3020」[旭硝子ウレタン(株)製のポリプロピレングリコール(数平均分子量3200)]97.98質量部、ジラウリル酸ジブチルすず0.11質量部を仕込んだ。次に窒素ガスを吹き込みながら系内を70℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート8.65質量部を加え、3時間攪拌しながら保温して、分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーa4を得た。このウレタンプレポリマーa4の200質量部を撹拌機、温度計、還流冷却器を装備したフラスコに仕込み、系内温度を80℃まで昇温し、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.69部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.22部を加え、3時間攪拌しながら保温してIR測定の結果、イソシアネート基が消失したことを確認し反応を終了し、ウレタンポリマー4(重量平均分子量24000)を得た。このウレタンポリマー4は、分子の両末端にそれぞれ1個のエチレン性不飽和基を有する重合性ウレタンポリマー(B)である。
【0126】
<ウレタンポリマー5の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を装備したフラスコに、「クラレポリオールP−3010」[クラレ(株)製のポリエステルポリオール(ジオールタイプ、数平均分子量3000)]91.86部、ジラウリル酸ジブチルすず0.11部を仕込んだ。次に窒素ガスを吹き込みながら系内を70℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート8.65部を加え、3時間攪拌しながら保温した。こうして分子の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a2)を合成した。引き続き、酸素ガス、窒素ガスを吹き込みながら、1,3−ブタンジオール1.4部を加え、3時間攪拌しながら保温して30分ごとのGPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1.5で一定であることを確認し反応を終了し、ウレタンプレポリマー5(重量平均分子量22000)を得た。このウレタンポリマー5は、分子の両末端にヒドロキシル基を有するウレタンポリマーである。
【0127】
(実施例1)
以下の要領で粘着剤シートを作製した。
<無溶剤型のウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
前記ウレタンポリマー1を90質量部、重合性モノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレートを14質量部、フェノキシエチルアクリレートを10質量部、重合開始剤としてヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)「イルガキュアー184」)を0.7質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を1質量部、リン系酸化防止剤としてトリフェニルホスファイトを0.5質量部、立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体として4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンを0.5質量部加えて均一に混合することにより、無溶剤型のウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0128】
<粘着剤シートの作製>
上記の活性エネルギー線硬化性組成物を、離型PETフィルム(東レフィルム加工(株)製のセラピール(登録商標))上に、スリットダイコーターで塗工した後、窒素ガスの吹き付けによって酸素濃度が300ppmの状態で、メタルハライドランプを用いて紫外線照射(積算光量1500mJ/cm)して粘着剤層を形成し、更に粘着剤層上に離型PETフィルム(東レフィルム加工(株)製のセラピール(登録商標))を積層して粘着剤シートを作製した。得られた粘着剤シートの厚みは175μm(離型PETフィルムは含まない)であった。
【0129】
(比較例1)
<無溶剤型のウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
前記ウレタンポリマー2を82質量部、重合性モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートを7質量部、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸を6質量部、重合開始剤としてヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)「イルガキュアー184」)を1質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を1質量部、リン系酸化防止剤としてトリフェニルホスファイトを0.5質量部、立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体として4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンを0.5質量部加えて均一に混合することにより、無溶剤型のウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0130】
<粘着剤シートの作製>
上記の無溶剤型ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして粘着剤シートを作成した。
【0131】
(比較例2)
比較例1の無溶剤型ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の調製において、ウレタンポリマー2をウレタンポリマー3に変更する以外は、比較例1と同様にして無溶剤型ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、更に比較例1と同様にして粘着剤シートを作製した。
【0132】
(比較例3)
<無溶剤型のウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
前記ウレタンポリマー4を30質量部、前記ウレタンポリマー5を30質量部、重合性モノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレートを20質量部、スチレンをを20質量部、重合開始剤としてヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)「イルガキュアー184」)を1質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を1質量部、リン系酸化防止剤としてトリフェニルホスファイトを0.5質量部、立体障害ピペリジル基とエチレン性不飽和基とを有する単量体として4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンを0.5質量部加えて均一に混合することにより、無溶剤型のウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0133】
<粘着剤シートの作製>
上記の無溶剤型ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして粘着剤シートを作成した。
【0134】
<評価>
上記で作製したそれぞれの粘着剤シートについて、初期密着力、アスカーC硬度、気泡の発生、および打ち抜き加工性を評価した。その結果を表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
本発明の実施例は、初期密着力が8N/25mm以上であり、かつアスカーC硬度が15〜50の範囲内であるので、気泡の発生がなく、かつ打ち抜き性が良好である。
【0137】
一方、比較例1は初期密着力が8N/25mm未満であり、気泡が発生した。比較例2はアスカーC硬度が15未満であり、打ち抜き性が劣っている。比較例3はアスカーC硬度が50を越えて大きすぎるために初期密着力が小さくなりすぎて気泡の発生がある。
【0138】
また、比較例1、2は、ウレタン系活性エネルギー線硬化性組成物中の重合性モノマーとしてカルボキシル基を有するモノマー(2−アクリロイロキシエチル−コハク酸)を含んでいるので、タッチパネルの透明導電膜を腐食させた。
【符号の説明】
【0139】
1 透明保護板
2 本発明の粘着剤シート
3 表示パネル
4 透明保護板の加飾層
5 タッチパネル
6 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置のタッチパネルと透明保護板との間に配置される、活性エネルギー線硬化型粘着剤からなる粘着剤シートであって、アスカーC硬度が15〜50、かつソーダガラス板に対する初期密着力が8N/25mm以上であることを特徴とする、粘着剤シート。
【請求項2】
前記粘着剤がウレタン系粘着剤またはアクリル系粘着剤である、請求項1の粘着剤シート。
【請求項3】
前記粘着剤がウレタン系粘着剤である、請求項2の粘着剤シート。
【請求項4】
前記粘着剤がカルボキシル基を有する成分を含まない、請求項1〜3のいずれかの粘着剤シート。
【請求項5】
厚みが50〜1000μmである、請求項1〜4のいずれかの粘着剤シート。
【請求項6】
表示パネル、タッチパネル、透明保護板がこの順に配置された表示装置であって、請求項1〜5のいずれかの粘着剤シートを介して、前記タッチパネルと前記透明保護板が密着されてなる表示装置。
【請求項7】
前記透明保護板のタッチパネル側の面に加飾層が設けられている、請求項6の表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−131846(P2012−131846A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282590(P2010−282590)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】