説明

粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート

【課題】ベースフィルムとして可塑剤を含む塩化ビニル樹脂基材を使用しても、塩化ビニル樹脂中の可塑剤の移行による粘着力の低下が少なく、耐久性が損なわれないアクリル系粘着剤組成物及びそれを用いた装飾用粘着シートの提供。
【解決手段】(a)C4〜C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体40〜90重量%、(b)少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体2〜15重量%、(c)酢酸ビニル0.5〜30重量%および(d)アクリル酸メチル5〜20重量%からなるアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、架橋剤として金属キレート架橋剤0.1〜0.8重量部を配合してなる耐可塑剤性粘着剤組成物、および塩化ビニル系樹脂フィルムに、前記耐可塑剤性粘着剤組成物から形成される粘着層が積層されている装飾用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾フィルム等に使用する塩化ビニル基材に粘着層を形成した場合に、可塑剤による経時後の粘着力低下が少ないアクリル系溶剤型粘着剤組成物及び該粘着剤組成物を用いてなる装飾用粘着シートに関する。
尚、粘着剤は感圧性接着剤とも呼ばれ、本発明における粘着シートとは、いわゆる粘着加工品であり、シートの他、フィルム、テープ、ラベル等と呼ばれることもある。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の用途に様々な粘着剤組成物が用いられている。アクリル系粘着剤は、耐候性、耐久性、耐熱性、透明性等に優れていることから広く使用されている。
その中で溶剤型アクリル系粘着剤、特に架橋型のアクリル系粘着剤は、粘着力制御が容易なことから、粘着テープや粘着シートにおいて幅広く用いられている。
しかし、これらのアクリル系粘着剤を塩化ビニル樹脂基材の表面に塗布または貼付して使用する場合、塩化ビニル樹脂は可塑剤移行性の強い樹脂である為、塩化ビニル樹脂基材又は被着体から可塑剤が移行し、粘着力の低下により耐久性が損なわれるといった問題が発生していた。
【0003】
そこで、このような装飾フィルム等に使用する塩化ビニル樹脂基材に塗布または貼付して使用しても、塩化ビニル樹脂中の可塑剤による経時後の粘着力低下が起きないアクリル系粘着剤が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に開示されている粘着剤では、15N/inch以上の強粘着力の物性要求を満足することはできない。
【特許文献1】特開平5−43863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アクリル系共重合体を含有する粘着剤であって、ベースフィルムとして可塑剤を含む塩化ビニル樹脂基材を使用しても、塩化ビニル樹脂中の可塑剤の移行による粘着力の低下が少なく、耐久性が損なわれないアクリル系粘着剤組成物及びそれを用いた装飾用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、粘着剤組成物中に含まれるアクリル系共重合体の単量体組成および架橋剤種を限定することにより、エージング後とエージング前の粘着シートの対数減衰率をコントロールでき、上記目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
第1の発明の耐可塑剤性粘着剤組成物は、下記単量体(a)〜(d)からなるアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、金属キレート架橋剤0.1〜0.8重量部を配合してなることを特徴とする。
(a)C4〜C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量:40〜90重量%
(b)少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体:2〜15重量%
(c)酢酸ビニル:0.5〜30重量%
(d)アクリル酸メチル:5〜20重量%
【0006】
第2の発明の装飾用粘着シートは、塩化ビニル系樹脂フィルムに、第1の発明の耐可塑剤性粘着剤組成物から形成される粘着層が積層されていることを特徴とする。
第3の発明の装飾用粘着シートは、第2の発明の装飾フィルム用粘着シートであって、粘着層の粘着力が15N/inch以上であり、且つエージング後の粘着力保持率が80%以上であることを特徴とする。
【0007】
第4の発明の装飾用粘着シートは、第2または第3の発明の装飾フィルム用粘着シートであって、剛体振り子型物性試験器を用いて測定される、エージング後の粘着シート粘着層の23℃における対数減衰率(Δ´)を、エージング前の粘着シート粘着層の23℃における対数減衰率(Δ)で割った値(Δ´/Δ)が0.75以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物を用いることで、ベースフィルムとして可塑剤を含む塩化ビニル樹脂基材を使用しても、可塑剤の移行による粘着力の低下が少ない粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明の耐可塑剤性粘着剤組成物について説明する。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、架橋剤として金属キレート架橋剤0.1〜0.8重量部を配合してなる。
そして、アクリル系共重合体(A)は、C4〜C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a)と、少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体(b)と、酢酸ビニル(c)と、アクリル酸メチル(d)とを共重合してなるものである。アクリル系重合体(A)は、一種類のみが含まれていてもよく、また、二種類以上が含まれていてもよい。
【0010】
C4〜C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a)とは、アルキル基が4〜8個の炭素原子を含有するアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートを意味する。C4〜C8のアルキル基は、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基であり、これらのアルキル基は直鎖状でも分枝鎖状でもよい。単量体(a)の例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アクリル系共重合体(A)中の単量体(a)の組成比は、単量体全量、即ち単量体(a)〜(d)の合計重量を基準(100重量%)として、40〜90重量%であり、60〜90重量%であることが好ましい。単量体(a)の組成比が40重量%より少ない場合には、粘着シートとした際のタックが低下し易く、被着体からの浮き、剥がれが起こり易い。90重量%より多い場合には、粘着剤組成物の凝集力が低下し、粘着シートとした際の粘着力のコントロールが難しくなる。
【0011】
また、少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体(b)は、ラジカル重合性不飽和基の他に少なくとも1個のカルボキシル基を有する単量体である。単量体(b)の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
アクリル系共重合体(A)中の単量体(b)の組成比は、単量体全量、即ち単量体(a)〜(d)の合計重量を基準(100重量%)として、2〜15重量%であり、4〜10重量%であることが好ましい。単量体(b)の組成比が2重量%より少ない場合には、エージング前の粘着力や凝集力が低くなる傾向にある。15重量%より多い場合には、タックや基材密着が低下し易い。
【0012】
アクリル系共重合体(A)中の酢酸ビニル(c)の組成比は、単量体全量、即ち(a)〜(d)の合計重量を基準(100重量%)として、0.5〜30重量%であり、2〜20重量%であることが好ましい。酢酸ビニル(c)の組成比が0.5重量%より少ない場合には、エージング後の粘着力の低下が大きくなる傾向にある。30重量%より多い場合には、タックや基材密着が低下し易い。
【0013】
アクリル系共重合体(A)中のアクリル酸メチル(d)の組成比は、単量体全量、即ち(a)〜(d)の合計重量を基準(100重量%)として、5〜20重量%であり、5〜10重量%であることが好ましい。アクリル酸メチル(d)の組成比が5重量%より少ない場合には、粘着力や凝集力が低くなる傾向にある。20重量%より多い場合には、タックや基材密着が低下し易い。
【0014】
さらに、アクリル系共重合体(A)は、上記単量体(a)、(b)、(c)、(d)と、これらの単量体と共重合可能で、且つカルボキシル基を有しないその他の単量体を共重合してなるものでもよい。その他の単量体の例としては、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルヘキシル)−メチルアクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0015】
アクリル系共重合体(A)を重合する際に用いられる有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が用いられる。またこれら重合溶媒は2種類以上混合して用いても良い。
アクリル系共重合体(A)を重合する際に用いられる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ系重合開始剤等のラジカル重合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体組成物の組成や反応条件等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0016】
さらに、アクリル系共重合体(A)を重合する際には、連鎖移動剤を使用することもできる。
使用し得る連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸ノニル、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセン等が挙げられる。特に、チオグリコール酸エステル類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンを使用した場合には、得られる共重合体が低臭気となり好ましい。なお、連鎖移動剤を使用する場合には、重合させる全単量体の合計100重量部に対して、0.001〜3重量部程度の範囲で使用される。なお、重合反応は、通常40〜100℃の温度条件下で、2〜8時間かけて行われる。
【0017】
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、30〜150万であることが好ましい。重量平均分子量が30万未満では、粘着層に十分な凝集力が得られない。150万を超えると、凝集力が高いため、塩化ビニル系樹脂フィルムとの密着性が低下し、十分な粘着力が得られない。より好ましくは、50〜100万である。
【0018】
本発明の耐可塑剤性粘着剤組成物には、架橋剤として金属キレート架橋剤を配合する。金属キレート架橋剤以外の架橋剤では、エージング後の粘着力の低下が大きく、80%以上の粘着力保持率を達成できない。
金属キレート架橋剤としては、多価金属のアセチルアセトン配位化合物又はアセト酢酸エステル配位化合物が挙げられ、多価金属としては、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、チタン、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等が挙げられる。中でもアルミニウムのアセチルアセトン配位化合物又はアセト酢酸エステル配位化合物が、粘着剤のポットライフの面から好ましい。
【0019】
金属キレート架橋剤は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して0.1〜0.8重量部、好ましくは0.14〜0.3重量部を配合される。金属キレート架橋剤の配合量が0.1重量部未満では、凝集力が低下し、装飾用粘着シートの粘着層としたときに十分な物性を得られない。0.8重量部を超えると、塩化ビニル系樹脂フィルムへの密着性や粘着力が低下し、装飾用粘着シートの粘着層としたときに十分な物性を得られない。よりである。
金属キレート架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、金属キレート架橋剤が所定量用いられていれば、金属キレート架橋剤以外の架橋剤を併用してもよい。金属キレート架橋剤以外の架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物またはアジリジン化合物等が挙げられる。
【0020】
アクリル系共重合体(A)に架橋剤を配合する方法は、特に限定されるものではない。
本発明の粘着剤組成物には、有機溶剤、および本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、従来アクリル系粘着剤に慣用されている各種添加成分を含有させることができる。各種添加成分を含有させる場合には、本発明の粘着剤組成物は、アクリル系重合体(A)に各種添加剤等を配合した後、架橋剤を混合することにより製造される。
【0021】
次に、本発明の装飾用粘着シートについて説明する。
本発明の装飾用粘着シートは、塩化ビニル系樹脂フィルムに、本発明の耐可塑剤性粘着剤組成物から形成される粘着層が積層されている粘着シートであり、塩化ビニル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に本発明の粘着剤組成物を塗布・乾燥することによって得ることができる。粘着層の乾燥時の厚さは、1μm〜200μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。
剥離性の基材としては、上記非剥離性の基材の少なくとも一方の面にシリコーン化合物等を塗布してなるものが挙げられる。尚、剥離性の基材は、セパレーター、離型紙ともいう。
【0022】
本発明の粘着剤組成物を塩化ビニル系樹脂フィルム上に塗布する方法、即ち、粘着シート(粘着加工品)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の種々の方法を採用することができる。該方法としては、例えば、粘着剤組成物を塩化ビニル系樹脂フィルムに直接、塗布する方法、離型紙に粘着剤組成物を塗布、乾燥して粘着層を形成したのち、粘着層上に塩化ビニル系樹脂フィルムを積層する、いわゆる転写方法等が挙げられる。
粘着剤組成物を離型紙または塩化ビニル系樹脂フィルムに塗布する際に用いる塗布装置は、通常使用されている塗布装置であり特に限定されるものではないが、例えば、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング、ブレードコーターなどが挙げられる。また、乾燥温度は、特に限定されるものではない。乾燥時に、例えばアクリル系共重合体(A)が有する官能基と、架橋剤とが反応して、架橋構造が形成される。
【0023】
本発明の装飾用粘着シートにおいて、粘着層の粘着力は15N/inch以上であり、且つエージング後の粘着力保持率は80%以上であることが好ましい。
また、剛体振り子型物性試験器を用いて測定される、エージング後の粘着シート粘着層の23℃における対数減衰率(Δ´)を、エージング前の粘着シート粘着層の23℃における対数減衰率(Δ)で割った値(Δ´/Δ)が、0.75以上であることが好ましい。対数減衰率が、上記範囲外になると、粘着力の低下が大きくなり、エージング前の粘着力の80%以上を保持できなくなる。対数減衰率を上記範囲にするには、特定のアクリル系共重合体(A)と架橋剤を適宜選択すればよい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、部とは重量部、%とは重量%をそれぞれ意味するものとする。
(実施例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に2−エチルへキシルアクリレート72部、アクリル酸メチル17.8部、酢酸ビニル6部、アクリル酸4部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、酢酸エチル120部、ベンゾイルパーオキサイド0.42部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを65部添加して、不揮発分濃度35%、重量平均分子量Mw60万のアクリル系共重合体の溶液を得た。得られたアクリル系共重合体溶液100重量部に、金属キレート架橋剤としてアルミニウムトリス(アセチルアセテート)0.08部を添加して均一に撹拌し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着組成物を市販のセパレーター上に乾燥塗膜厚さが25μmになるように塗布し、100℃−2分間で乾燥させ、この粘着層面と表1に示す基材を貼り合わせて粘着シートを作成した。
【0025】
(実施例2)
アルミニウムトリス(アセチルアセテート)[金属キレート架橋剤]の添加量を0.08部から0.12部に変更した以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
(実施例3)
アルミニウムトリス(アセチルアセテート)[金属キレート架橋剤]の添加量を0.08部から0.055部に変更し、エポキシ系架橋剤としてN,N,N,・,N・−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン0.007部をさらに添加した以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0026】
(実施例4)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器にイソブチルアクリレート39.8部、2−エチルへキシルアクリレート44部、アクリル酸メチル6部、酢酸ビニル2部、アクリル酸8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、酢酸エチル100部、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.13部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを85部添加して、不揮発分濃度35%、重量平均分子量Mw50万のアクリル系共重合体の溶液を得た。得られたアクリル系共重合体溶液100重量部に、金属キレート架橋剤としてアルミニウムトリス(アセチルアセテート)0.08部を添加して均一に撹拌し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着組成物を用い、実施例1と同様に粘着シートを作成した。
【0027】
(比較例1)
アルミニウムトリス(アセチルアセテート)[金属キレート架橋剤]の代わりに、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートL」、不揮発分濃度75%)1.6部を添加した以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
(比較例2)
アルミニウムトリス(アセチルアセテート)[金属キレート架橋剤]の代わりに、架橋剤としてN,N,N,・,N・−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン0.021部を添加した以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
(比較例3)
アルミニウムトリス(アセチルアセテート)[金属キレート架橋剤]の添加量を0.08部から0.025部に変更した以外は、実施例1と同様に粘着剤組成物を調製し、粘着シートを作成した。
【0028】
(比較例4)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に2−エチルヘキシルアクリレート70部、酢酸ビニル27.8部、アクリル酸2部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、酢酸エチル130部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.65部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中で、この反応溶液を還流温度で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルを55部添加して、不揮発分濃度35%、重量平均分子量Mw55万のアクリル系共重合体の溶液を得た。得られたアクリル系共重合体溶液100重量部に、金属キレート架橋剤としてアルミニウムトリス(アセチルアセテート)0.08部を添加して均一に撹拌し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着組成物を用い、実施例1と同様に粘着シートを作成した。
【0029】
〔粘着シートの物性測定〕
実施例、比較例で得られた粘着シートについて、23℃−50%RHの雰囲気下で7日間熟成後、以下に示す試験を行った。結果を表1に示す。
〔エージング条件〕
実施例、比較例で得られた粘着シートについて、23℃−50%RHの雰囲気下で7日間熟成後、70℃−DRYの雰囲気下で7日間経時させる。
【0030】
〔対数減衰率〕
粘着シートを構成する粘着層の対数減衰率を下記条件で測定した。
測定装置:剛体振り子型物性試験器(RPT−3000W,エー・アンド・デイ社製)
フレーム種類:FRB−300
測定部形状:丸棒型シリンダーエッジ,RBP020
測定温度:−70〜150℃
昇温速度:4℃/min
測定間隔:10秒
【0031】
〔粘着力〕
JIS Z 0237に準じて引張試験機によって300mm/分の引張速度で180°の角度で剥離した際の荷重(N/inch)を測定した。(被着体:ステンレス)
〔粘着力保持率(%)〕
{(エージング後の粘着力)/(エージング前の粘着力)}×100
〔保持力〕
荷重1Kg/25mm2,40℃(被着体:ステンレス)JIS Z 0237に従い、落下するまでの時間、又はズレを測定した。(時間又は、mm)
【0032】
【表1】

【0033】
基材A;可塑剤DOP20%含有カレンダー塩化ビニル樹脂基材(100μm)
基材B;高分子可塑剤20%含有カレンダー塩化ビニル樹脂基材(100μm)
基材C;可塑剤DOP30%含有キャスト塩化ビニル樹脂基材(100μm)
基材D;高分子可塑剤20%含有キャスト塩化ビニル樹脂基材(50μm)
【0034】
表1から、比較例1で得られた粘着シートでは、一部基材において粘着保持率が80%以上のものがあるが、可塑剤の移行性の強い可塑剤DOPを使用した基材に対しては粘着保持率が80%以下である。それに対し、実施例1〜4で得られた本発明の粘着シートでは、粘着力が15(N/inch)以上、且つ塩ビ基材の種類によらずエージング後の粘着力保持率が80%以上であり、粘着性能の劣化を抑えることができるのがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)〜(d)からなるアクリル系共重合体(A)100重量部に対して、架橋剤として金属キレート架橋剤0.1〜0.8重量部を配合してなることを特徴とする耐可塑剤性粘着剤組成物。
(a)C4〜C8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体:40〜90重量%
(b)少なくとも1個のカルボキシル基を有するラジカル重合性単量体:2〜15重量%
(c)酢酸ビニル:0.5〜30重量%
(d)アクリル酸メチル:5〜20重量%
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂フィルムに、請求項1記載の耐可塑剤性粘着剤組成物から形成される粘着層が積層されていることを特徴とする装飾用粘着シート。
【請求項3】
粘着層の粘着力が15N/inch以上であり、且つエージング後の粘着力保持率が80%以上であることを特徴とする請求項2記載の装飾用粘着シート。
【請求項4】
剛体振り子型物性試験器を用いて測定される、エージング後の粘着シート粘着層の23℃における対数減衰率(Δ´)を、エージング前の粘着シート粘着層の23℃における対数減衰率(Δ)で割った値(Δ´/Δ)が、0.75以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の装飾用粘着シート。


【公開番号】特開2006−199843(P2006−199843A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13762(P2005−13762)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】