説明

粘着型光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】光学フィルムに粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムであって、初期および長時間経過後のいずれの段階においても、リワーク性と耐久性を満足できる粘着型光学フィルムを提供すること。
【解決手段】光学フィルムに、下塗り層を介して、粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムにおいて、粘着剤層が、ベースポリマーとして、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよびガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する粘着剤により形成されており、かつ、下塗り層は、ポリマー類を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着型光学フィルムに関する。さらには当該粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどが挙げられる。
【0002】
特に、光学フィルムが液晶光学補償層を有する場合には、表示コントラスト及び表示色の視角特性を改善するための光学補償フィルムとして有用であり、さらに、偏光子を積層したものは、光学補償機能付き楕円偏光板として有用である。なかでも、液晶光学補償層が、ディスコティック液晶化合物が配向されたディスコティック液晶層の場合に有用である。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ等は、その画像形成方式から液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光板が貼着されている。また液晶パネルには偏光板の他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
【0004】
前記光学フィルムを液晶セルに貼り付ける際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムと液晶セル、また光学フィルム間の接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられた粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。
【0005】
前記粘着剤に要求される必要特性としては、(1)光学フィルムを液晶パネル表面に貼り合わせる際、貼り合わせ位置を誤ったり、貼合せ面に異物が噛み込んだりしたような場合にも光学フィルムを液晶パネル表面から糊残りなく剥離し、再度貼り合わせ(リワーク)が可能であること、(2)環境促進試験として通常行われる加熱および加湿等による耐久試験に対して粘着剤に起因する不具合が発生しないこと、等が挙げられる。また、リワーク性に関しては、画像表示装置としての使用の役割を終えるときに、環境対策、例えば、リサイクルや廃棄等の観点から、光学フィルムを液晶セル等から容易に剥離できることが望まれる。従って、リワーク性に関しては、長時間経過後(例えば、製造して1年後)にリサイクルする際にも問題なくリワークできることが望まれる。
【0006】
前記リワーク性と耐久性を満足できる粘着型光学フィルムとして、光学フィルム上に、ポリアミン化合物により形成されたアンカー層(下塗り層)を介して、アミノ基と反応する官能基を含有するベースポリマーを有する粘着剤により形成された粘着剤層を積層したものが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、前記粘着剤層中の粘着剤と、アンカー層中のポリアミン化合物が、アンカー層中において混合反応層を形成し、その混合反応層の厚みがアンカー層全体の厚みの50%以上になるように設計されており、アンカー層と粘着剤層の密着性が良好である。そのため、特許文献1の粘着型光学フィルムでは、粘着型光学フィルムを製造した直後(初期)のリワーク性は良好ではある。しかし、特許文献1の粘着型光学フィルムであっても、長時間経過後のリワーク性(例えば、製造して1年後のリワーク性)が十分ではない。
【0007】
また、粘着型光学フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤として、A1−B−A2(但し、ガラス転移温度が100℃以上のメタクリル酸アルキルエステル系重合体(A)セグメントA1、A2と、ガラス転移温度が−20℃以下のアクリル酸アルキルエステル系重合体(B)セグメント)からなるアクリル系トリブロック共重合体を含有する、化学的に架橋していない粘着剤を用いることが提案されている(特許文献2)。当該粘着剤を用いた粘着型光学フィルムは、前記リワーク性と耐久性に優れることが記載されてはいる。しかし、前記粘着剤は、架橋剤を含有しないことから、架橋工程を省略でき、生産性に優れることを特徴としているため、粘着剤層と光学フィルムとの密着性が十分ではなく、リワーク性は初期段階から悪いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4007920号明細書
【特許文献2】国際公開2008/065982号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光学フィルムに粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムであって、初期および長時間経過後のいずれの段階においても、リワーク性と耐久性を満足できる粘着型光学フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究したところ、下記粘着型光学フィルムにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、光学フィルムに、下塗り層を介して、粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムにおいて、
粘着剤層が、ベースポリマーとして、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよびガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する粘着剤により形成されており、かつ、
下塗り層は、ポリマー類を含有することを特徴とする粘着型光学フィルム、に関する。
【0013】
前記粘着型光学フィルムにおいて、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは総モノマー単位の50重量%以上がアクリル酸アルキルエステルであり、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントは総モノマー単位の15重量%以上がメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0014】
前記粘着型光学フィルムにおいて、粘着剤が含有するベースポリマーが、B−A−Bのトリブロック共重合体(但し、Aは(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント、Bは(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを示す)であることが好ましい。
【0015】
前記粘着型光学フィルムにおいて、下塗り層のポリマー類が、末端に1級アミノ基を有するポリマーであることが好ましい。また、末端に1級アミノ基を有するポリマーは、末端に1級アミノ基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。また、末端に1級アミノ基を有するポリマーにおける1級アミノ基は、ポリエチレンイミン系材料に由来するものであることが好ましい。
【0016】
前記粘着型光学フィルムにおいて、下塗り層が、ポリマー類100重量部に対して、酸化防止剤0.01〜500重量部を含有することが好ましい。
【0017】
前記酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、イオウ系およびアミン系の酸化防止剤から選ばれるいずれか少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
前記粘着型光学フィルムは、前記光学フィルムが、透明基材フィルムの片面に液晶光学補償層を有しており、当該液晶光学補償層に、下塗り層を介して、粘着剤層が設けられているものに好適できる。当該液晶光学補償層は、ディスコティック液晶層である場合に好適である。また、前記光学フィルムは、液晶光学補償層が形成されない側の、透明基材フィルムの片面には偏光子が積層されているものを好適に用いることができる。
【0019】
また本発明は、前記粘着型光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粘着型光学フィルムでは、粘着剤層に用いる粘着剤として、低いガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントと高いガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有する特定のブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いている。当該ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、それ自体で粘着剤として要求される粘着性と凝集性を発現する。従って、当該ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、官能基を導入したり、架橋剤と併用して用いることは必要ではないが、一方、当該ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、光学フィルムに対する密着性が悪く、リワーク性を満足していない。
【0021】
本発明の粘着型光学フィルムでは、上記のブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いた粘着剤層を、下塗り層を介して設けることで、粘着剤層の形成に、一般的な官能基を有する架橋型のアクリル系粘着剤を用いた場合よりも、リワーク性を向上させている。特に、長時間経過後のリワーク性(例えば、製造して1年後のリワーク性)を向上させている。
【0022】
通常、リワーク性の観点から、粘着剤層と光学フィルムの密着性を向上させるために下塗り層を設けることが行なわれているが、当該下塗り層と粘着剤層との密着性は、特許文献1に記載のように、下塗り層と粘着剤層の双方の官能基を反応させることにより行なわれる。従って、下塗り層に粘着剤層を設けて密着性を向上させる場合には、粘着剤層には、下塗り層中の官能基と反応性を有する官能基を有する粘着剤が好ましく用いられる。本発明では、意外なことに、ブロック共重合体またはグラフト共重合体を粘着剤層に用いた場合には、当該ブロック共重合体またはグラフト共重合体が化学的に架橋しておらず、また下塗り層の官能基と反応性を有する官能基を有しない場合であっても、当該粘着剤層と下塗り層とを組み合わせることで、粘着剤層と下塗り層との密着性が向上している。特に、下塗り層に、末端に1級アミノ基を有するポリマーを用いた場合には、光学フィルムと下塗り層の密着性、下塗り層と粘着剤層の密着性が向上し、リワーク性が向上する。これは、本発明の粘着型光学フィルムでは、下塗り層と粘着剤層が混合層を形成し、混合層中において下塗り剤中のポリマー類と粘着剤層中の粘着性ポリマー(ブロック共重合体またはグラフト共重合体)との物理的架橋が形成されて密着性を発現しているためであると推察される。特に、下塗り層に、末端に1級アミノ基を有するポリマーのなかでも、末端に1級アミノ基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合には、当該ポリマーには構成モノマーとして、メタクリル酸メチルやメタクリル酸などの高いガラス転移温度を示す成分が含まれているため、粘着剤層中のベースポリマー(ブロック共重合体またはグラフト共重合体)中のガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体(B)セグメント(高いガラス転移温度を示すセグメント)との凝集による物理的架橋が形成されていると考えられる。即ち、本発明の粘着型光学フィルムが、粘着剤層として従来の官能基を有するアクリル系ポリマーの架橋物を用いた粘着型光学フィルムよりも大幅に光学フィルムと粘着剤層の密着性が向上しているのは、本発明の粘着型光学フィルムでは、粘着剤層と下塗り層の密着性が、従来の粘着型光学フィルムのように官能基含有成分の化学架橋によるものではなく、より強固な物理架橋が形成しているのはないかと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の粘着型光学フィルムの一例の断面図である。
【図2】本発明の粘着型光学フィルムの一例の断面図である。
【図3】本発明の粘着型光学フィルムの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を、図面を参照しながら説明する。本発明の粘着型光学フィルムは、例えば、図1に示すように、光学フィルムAの片面に、下塗り層Bを介して、粘着剤層Cが設けられている。図1では、光学フィルムAの片面に下塗り層Bを介して、粘着剤層Cが設けられているが、他の片面に、粘着剤層Cと同じまたは異なる粘着剤層を、下塗り層Bと同じまたは異なる下塗り層を介して、または介することなく設けることができる。
【0025】
図2では、本発明の粘着型光学フィルムは、光学フィルムAが、透明基材フィルムA11の片面に、液晶光学補償層(例えば、ディスコティック液晶層)A13を有する場合であり、当該液晶光学補償層A13上には、下塗り層Bを介して、粘着剤層Cが設けられている。図2では、透明基材フィルムA11と液晶光学補償層A13との間に配向膜A12を設ける場合を例示しているが、配向膜A12の代わりに、透明基材フィルムA11の片面を、ラビング処理したものを用いることができる。
【0026】
図3は、図2の粘着型光学フィルムにおいて、液晶光学補償層A13が形成されない側の、透明基材フィルムA11の片面には偏光子A14、次いで、透明保護フィルムA15が積層されているものを用いた場合である。図3では、透明基材フィルムA11は、偏光子A14の透明保護フィルムも兼ねている。
【0027】
以下に本発明の粘着型光学フィルムの各構成について詳細に説明する。
【0028】
本発明の粘着剤層の形成には、ベースポリマーとして、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよびガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する粘着剤が用いられる。
【0029】
また、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントのガラス転移温度は0℃以下であり、通常の使用温度において被着体への濡れ性と粘着剤としての柔軟性を付与して、本発明の粘着剤層に接着力を発現させる。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントのガラス転移温度は−20℃以下が好ましく、より好ましくは−30℃以下であり、通常、ガラス転移温度は、−70℃以上である。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントのガラス転移温度は−20℃以下であると、低温条件下での耐久性が優れる点で好ましい。
【0030】
前記(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントのガラス転移温度は40℃以上であり、通常の使用温度において凝集力を付与して、本発明の粘着剤層に優れた粘着特性と耐久性を発現させる。(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントのガラス転移温度は80℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、通常、ガラス転移温度は、150℃以下である。(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントのガラス転移温度は80℃以上であると、高温条件下での耐久性が優れる点で好ましい。
【0031】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよび(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するものを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントをA、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントをBとしてはそれぞれ示すと、ブロック共重合体としては、例えば、A−B、で表されるジブロック共重合体;A−B−A、B−A−B、で表されるトリブロック共重合体;さらには、テトラブロック共重合体、それ以上にA、Bを組み合わせたものを例示できる。また、グラフト共重合体としては、AまたはBを主鎖として、主鎖とは異なるセグメントを側鎖とするものが挙げられる。なお、A、Bが2つ以上ある場合には、各A、Bは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
本発明の粘着剤のベースポリマーとしては、前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることができるが、ガラス転移温度と分子量を制御しやすい点からブロック共重合体が好ましく、ブロック共重合体のなかでも、B−A−B、で表されるトリブロック共重合体を用いることが、より粘着特性とバルク物性を制御しやすい点から好ましい。
【0033】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の重量平均分子量は、50,000〜300,000であり、耐久性とリワーク性の両方の観点から、60,000〜250,000であることが好ましく、70,000〜230,000であることがより好ましく、70,000〜200,000であることがさらに好ましい。分子量が50,000より小さい場合は、粘着剤の凝集力が不十分であり、光学フィルムを貼り合わせて用いた場合に耐久性に劣る。また、分子量が300,000より大きい場合は、被着体が粘着剤で濡れるのに時間を要するため、製品の保管中に濡れが進行して接着力が上昇し、リワークすることが困難となる。
【0034】
ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜1.5であり、高温での凝集力が高く、耐久性に優れる観点から、1.0〜1.4であることが好ましく、1.0〜1.3であることがより好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの主モノマー単位である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位の主成分として、総モノマー単位の90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有し、ガラス転移温度が0℃以下を満足するものであれば、モノマー単位の種類や成分組成は特に制限されないが、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは、アクリル酸アルキルエステルを主モノマー単位とすることが好ましい。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは、総モノマー単位の50重量%以上、さらには60重量%以上、さらには70重量%以上がアクリル酸アルキルエステルであるのが、ガラス転移温度を制御するうえで好ましい。前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントにおける主モノマー単位に係るアクリル酸アルキルエステルとしては、前記例示のなかでも、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等のアルキル基の炭素数が1〜9のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0037】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体における、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの重量比は、安定した接着力と耐久性を得る点から、50%〜95%が好ましく、60%〜85%であることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの重量比が50%より少ない場合は、接着力が低くなりやすい。また、(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントの重量比が95%より多い場合には、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントの割合が少ないために、凝集力が低下し光学フィルム用粘着剤として用いた場合に耐久性の点で好ましくない。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントの主モノマー単位である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位の主成分として、総モノマー単位の90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有し、ガラス転移温度が40℃以上を満足するものであれば、モノマー単位の種類や成分組成は特に制限されないが、総モノマー単位の15重量%以上、さらには20重量%以上、さらには30重量%以上がメタクリル酸アルキルエステルであるのが、ガラス転移温度を制御するうえで好ましい。前記(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントにおける主モノマー単位に係るメタクリル酸アルキルエステルとしては、前記例示のなかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のアルキル基の炭素数が1〜2のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0040】
なお、前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体における、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントの重量比は、上記の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント以外の割合である。
【0041】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントには、各セグメントの総モノマー単位の10重量%以下の範囲であれば、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他のモノマー単位が含まれてもよい。前記他のモノマー単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するビニル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系モノマー等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせても挙げることができる。
【0042】
前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の製造方法は、前記(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体が得られる限りにおいて特に限定されることなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位であるモノマーをリビング重合する方法が採用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6−93060号公報)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等の鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報)、原子移動ラジカル重合方法(ATRP)(Macromol. Chem. Phys. 201,1108〜1114頁(2000年)等が挙げられる。またグラフト共重合体を得る方法としては、特許第4228026号明細書等に記載の方法が挙げられる。
【0043】
上記の製造方法のうち、有機アルミニウム化合物を除触媒とするアニオン重合方法による場合は、重合途中の失活が少ないため失活成分であるホモポリマーの混入が少なく、その結果、得られる粘着剤の透明性が高い。また、モノマーの重合転化率が高いため、製品中の残存モノマーが少なく、光学フィルム用粘着剤として使用する際、貼り合わせ後の気泡の発生を抑制することができる。さらに、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、光学フィルム用粘着剤に用いた場合に耐久性を高める効果がある。そして、比較的緩和な温度条件下でリビング重合が可能であることから、工業的に生産する場合に、環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が少なくて済む利点がある。
【0044】
上記の有機アルミニウム化合物の存在下でのアニオン重合方法としては、例えば、有機リチウム化合物、および下記一般式(1):
AlR (1)
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基またはN,N−二置換アミノ基を表すか、またはRが前記したいずれかの基を表し、RおよびRは一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を表す。)で表される有機アルミニウム化合物の存在下に、必要に応じて、反応系内に、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4等のエーテル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジル等の含窒素化合物をさらに用いて、(メタ)アクリル酸エステルを重合させる方法等を採用することができる。
【0045】
上記有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム等のアルキルリチウムおよびアルキルジリチウム;フェニルリチウム、m−トリルリチウム、p−トリルリチウム、キシリルリチウム、リチウムナフタレン等のアリールリチウムおよびアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、トリチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウムおよびアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム、n−プロポキシリチウム、イソプロポキシリチウム、n−ブトキシリチウム、sec−ブトキシリチウム、tert−ブトキシリチウム、ペンチルオキシリチウム、ヘキシルオキシリチウム、ヘプチルオキシリチウム、オクチルオキシリチウム、フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウム等のリチウムアルコキシドが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、上記一般式で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリs−ブチルアルミニウム、トリt−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジエチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジイソブチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、ジ−n−オクチル(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、ジ−n−オクチル(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム等のジアルキルフェノキシアルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、n−オクチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等のアルキルジフェノキシアルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、メトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム、tert−ブトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、tert−ブトキシビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、tert−ブトキシ〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等のアルコキシジフェノキシアルミニウム、トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のトリフェノキシアルミニウム等を挙げることができる。これらの有機アルミニウム化合物の中でも、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウム等が、取り扱いの容易であり、また、比較的緩和な温度条件下で失活なくアクリル酸エステルの重合を進行させることができる点で特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
なお、本発明の粘着剤層を形成する粘着剤には、前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の他に、必要に応じて、イソシアネート化合物等の架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などとしても良い。
【0048】
下塗り層は、ポリマー類および酸化防止剤を含有する下塗り剤により形成される。前記ポリマー類の材料は粘着剤層と光学フィルム(例えば、液晶光学補償層)のいずれにも良好な密着性を示し、凝集力に優れる皮膜を形成するものが望ましい。
【0049】
前記ポリマー類としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類が挙げられる。ポリマー類の使用形態は溶剤可溶型、水分散型、水溶解型のいずれでもよい。例えば、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミド等や水分散性樹脂(エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、(メタ)アクリル系エマルジョンなど)が挙げられる。また、水分散型は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等の各種の樹脂を乳化剤を用いてエマルジョン化したものや、前記樹脂中に、水分散性親水基のアニオン基、カチオン基またはノニオン基を導入して自己乳化物としたもの等を用いることができる。またイオン高分子錯体を用いることができる。
【0050】
かかるポリマー類は粘着剤層に、例えば、イソシアネート系化合物を含む場合には、イソシアネート系化合物と反応性を有する官能基を有するものが好ましい。前記ポリマー類としては、分子中にアミノ基を含むポリマー類が好ましい。特に、末端に1級アミノ基を有するものが好ましく用いられ、イソシアネート系化合物との反応により、より強固に密着して耐久性が向上する。末端に1級アミノ基を有するポリマーは、末端に1級アミノ基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0051】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、ポリエチレンイミン系、ポリアリルアミン系、ポリビニルアミン系、ポリビニルピリジン系、ポリビニルピロリジン系、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。これらのなかでもポリエチレンイミン系が好ましい。ポリエチレンイミン系材料としては、ポリエチレンイミン構造を有しているものであればよく、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸エステルへのエチレンイミン付加物および/またはポリエチレンイミン付加物が挙げられる。特に、末端に1級アミノ基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルである、ポリアクリル酸エステルへのエチレンイミン付加物および/またはポリエチレンイミン付加物が好適である。
【0052】
ポリエチレンイミンは、特に制限されず、各種のものを使用できる。ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、特に制限されないが、通常、100〜100万程度である。例えば、ポリエチレンイミンの市販品の例としては、株式会社日本触媒社製のエポミンSPシリーズ(SP−003、SP006、SP012、SP018、SP103、SP110、SP200等)、エポミンP−1000等が挙げられる。これらのなかでも、エポミンP−1000が好適である。
【0053】
ポリアクリル酸エステルへのエチレンイミン付加物および/またはポリエチレンイミン付加物のポリアクリル酸エステルは、後述のアクリル系粘着剤のベースポリマー(アクリル系ポリマー)を構成するアルキル(メタ)アクリレートおよびその共重合モノマーを常法に従ってエマルジョン重合することにより得られる。共重合モノマーとしては、エチレンイミン等を反応させるためにカルボキシル基等の官能基を有するモノマーが用いられる。カルボキシル基等の官能基を有するモノマーの使用割合は、反応させるエチレンイミン等の割合により適宜に調整する。また、共重合モノマーとしては、スチレン系モノマーを用いるのが好適である。また、アクリル酸エステル中のカルボキシル基等に、別途合成したポリエチレンイミンを反応させることにより、ポリエチレンイミンをグラフト化した付加物とすることもできる。例えば、市販品の例としては、株式会社日本触媒社製のポリメントNK−380、が挙げられる。
【0054】
またアクリル系重合体エマルジョンのエチレンイミン付加物および/またはポリエチレンイミン付加物等を用いることができる。例えば、市販品の例としては、株式会社日本触媒社製のポリメントSK−1000、が挙げられる。
【0055】
上記の他に、末端に1級アミノ基を有するポリマーとしては、ポリアクリル酸エステル中のカルボキシル基又は水酸基を過剰のジイソシアネートと反応させ、さらに過剰のジアミンと反応させて末端に1級アミノ基を導入したものが挙げられる。また、末端に1級アミノ基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルは、前記(メタ)アクリル酸エステルと、末端に1級アミノ基を有するモノマーを共重合することにより得られる。末端に1級アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート及びアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
また、下塗り層には上記ポリマー類の他に、必要に応じて、また、本発明の目的を逸脱しない範囲で酸化防止剤等の各種添加剤を適宜に使用することもできる。
【0057】
下塗り層が含有する酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、イオウ系およびアミン系の酸化防止剤が挙げられ、これらから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0058】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、単環フェノール化合物として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−メチルフェノール、2,6−ジイソプロピル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−オクチル−4−n−プロピルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−n−オクチルフェノール、2−イソプロピル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチル−6−t−オクチルフェノール、2−イソブチル−4−エチル−6−t−ヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−4−n−ブチル−6−イソプロピルフェノール、スチレン化混合クレゾール、DL−α−トコフェロール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどを、2環フェノール化合物として、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2´−ブチリデンビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,6−ジオキサオクタメチレンビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2´−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などを、3環フェノール化合物として、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4−t−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどを、4環フェノール化合物として、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを、リン含有フェノール化合物として、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)ニッケルなどを挙げることができる。
【0059】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、テトラトリデシル−4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)−ジホスファイト、4,4´−イソプロピリデン−ジフェノールアルキルホスファイト(ただし、アルキルは炭素数12〜15程度)、4,4´−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4´−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス[4,4´−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)]ホスファイト、トリス(1,3−ジステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル・4,4´−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びフェニルビスフェノール−A−ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0060】
硫黄系酸化防止剤としては、ジアルキルチオジプロピオネート及びアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルを用いることが好ましい。ここで使用されるジアルキルチオジプロピオネートとしては、炭素数6〜20のアルキル基を有するジアルキルチオジプロピオネートが好ましく、またアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルとしては、炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルが好ましい。この場合に多価アルコールエステルを構成する多価アルコールの例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートなどを挙げることができる。このようなジアルキルチオジプロピオネートとしては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート及びジステアリルチオジプロピオネートなどを挙げることができる。一方、アルキルチオプロピオン酸の多価アルコールエステルとしては、例えば、グリセリントリブチルチオプロピオネート、グリセリントリオクチルチオプロピオネート、グリセリントリラウリルチオプロピオネート、グリセリントリステアリルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリブチルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリオクチルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリラウリルチオプロピオネート、トリメチロールエタントリステアリルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラブチルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラオクチルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
【0061】
アミン系酸化防止剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンエタノールの重縮合物、N,N´,N´´,N´´´−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N´−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス−(1,2,6,6−ペンタメチル−4−ペピリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,1´−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、(ミックスト2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β´,β´−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト[1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β´,β´−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル]−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ポリ[6−N−モルホリル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミド]、N,N´−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの縮合物、[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなどを挙げることができる。
【0062】
下塗り層が、ポリマー類および酸化防止剤を含有する場合、通常、ポリマー類100重量部に対して、酸化防止剤0.01〜500重量部を含有する。酸化防止剤の使用割合が0.01重量部未満では、酸化防止剤としての効果を期待できない。一方、500重量部を超える場合には、投錨性や外観の点で好ましくない。酸化防止剤の使用割合は、投錨性や外観を重視する場合には、好ましくは0.1〜300重量部、さらに好ましくは1〜100重量部である。
【0063】
また下塗り層の形成にあたっては、前記ポリマー類に加えて、架橋剤を含有することができる。例えば、アミノ基を含むポリマー類と反応する化合物を混合して架橋して、下塗り層の強度を向上させることができる。アミノ基を含むポリマー類と反応する化合物としては、エポキシ化合物等を例示できる。
【0064】
本発明の粘着型光学フィルムの製造は、例えば、光学フィルム(例えば、液晶光学補償層)に、下塗り層を形成し、さらに粘着剤層を形成することにより行う。
【0065】
下塗り層の形成は、例えば、前記ポリマー類および酸化防止剤を含有する下塗り剤の溶液を、コーティング法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法を用いて、塗布、乾燥し、下塗り層を形成させる。下塗り層の厚みとしては10〜5000nm程度、さらには50〜500nmの範囲にあることが好ましい。下塗り層の厚みが薄くなると、バルクとしての性質を有さず、十分な強度を示さなくなり、十分な密着性が得られない場合がある。また、厚すぎると光学特性の低下を招くおそれがある。なお、下塗り層の塗布量(固形分)は、1平方メートル当たり0.1〜5立方センチメートルであることが好ましい。さらには、0.1〜1立方センチメートル、さらには0.1〜0.5立方センチメートルとするのが好ましい。
【0066】
粘着剤層の形成は、前記下塗り層上に積層することにより行う。形成方法としては、特に制限されず、粘着剤(溶液)を塗布し乾燥する方法、粘着剤層を設けた離型シートにより転写する方法等が挙げられる。塗布法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0067】
離型シートの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体等が挙げられる。離型シート4の表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理が施されていても良い。
【0068】
粘着型光学フィルムには、帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を用いることもできる。帯電防止剤は、各層に含有させることができ、また、別途、帯電防止層を形成することができる。帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電ポリマー系;酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などが挙げられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。これは、帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗布工程に際して有機溶剤による光学フィルム基材の変質を抑える点で好ましい。
【0069】
前記光学フィルムとしては、各種のものを例示できる。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどが挙げられる。
【0070】
本発明の光学フィルムとしては、例えば、図2に示すように、光学フィルムAが、透明基材フィルムA11の片面に、液晶光学補償層(例えば、ディスコティック液晶層)A13を有するものが挙げられる。
【0071】
透明基材フィルムとしては、各種の透明材料を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物なども前記透明基材フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。
【0072】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0073】
透明基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性などの点より1〜500μm程度である。特に、5〜200μmが好ましい。
【0074】
また、透明基材フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。従って、Rth=(nx−nz)・d(ただし、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明基材フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)はほぼ解消することができる。厚み方向位相差(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0075】
透明基材フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーやノルボルネン系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。
【0076】
液晶光学補償層の形成は、例えば、重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーが用いられる。これら重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーは、透明基材フィルム上に塗布後、配向、硬化(固化)することにより、液晶光学補償層を形成することができる。前記重合性液晶モノマーを用いる場合には、通常、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。
【0077】
前記光学補償層としては、ディスコティック液晶層が挙げられる。ディスコティック液晶層は、重合性不飽和基を有するディスコティック液晶化合物の配向、硬化により形成されたものである。ディスコティック液晶層は、光学補償層として有用であり、視野角、コントラスト、明るさ等を向上させうる。ディスコティック液晶化合物は、重合性不飽和基を有しており、当該化合物が配向され、かつ硬化されることによりディスコティック液晶層が形成されている。ディスコティック液晶層は、ディスコティック液晶化合物が傾斜配向しているものが好適である。ディスコティック液晶層の厚さは、通常、0.5〜10μm程度である。
【0078】
ディスコティック液晶化合物とは、負の屈折率異方性(一軸性)を有するものであり、例えば、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されている、ベンゼン誘導体や、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどが挙げられ、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶と呼ばれるものが含まれる。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、本発明において、ディスコティック液晶化合物は、熱、光等で硬化反応する重合性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる)を有するものである。なお、ディスコティック液晶層は、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、重合性不飽和基の反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0079】
またディスコティック液晶化合物は、種々のディスコティック液晶化合物、および他の低分子化合物やポリマーとの反応により、もはや液晶性を示さなくなったディスコティック液晶の反応生成物等のように、分子自身が光学的に負の一軸性を有する化合物全般を意味する。
【0080】
ディスコティック液晶の配向処理には、透明基板フィルム表面をラビング処理したり、または配向膜を用いる。配向膜としては、無機物斜方蒸着膜、或いは特定の有機高分子膜をラビングした配向膜が挙げられる。アゾベンゼン誘導体からなるLB膜のように光により異性化を起こし、分子が方向性を持って均一に配列する薄膜などもある。有機配向膜としては、ポリイミド膜や、アルキル鎖変性系ポバール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、など疎水性表面を形成する有機高分子膜が挙げられる。その他、無機物斜方蒸着膜として、SiO斜方蒸着膜が挙げられる。
【0081】
ディスコティック液晶化合物は、傾斜配向させるが、その手段としては、例えば、透明基材フィルムに、配向膜を形成し、次いで、ディスコティック液晶化合物(重合性液晶化合物)を塗布し、傾斜配向状態にし、その後、紫外光等の光照射や熱により固定化する等の方法を用いることができる。また、他の配向基材上にディスコティック液晶を傾斜配向させた後、透明支持体上に光学的に透明な接着剤又は感圧性接着剤を利用して転写することにより形成することも可能である。
【0082】
かかるディスコティック液晶層としては、特開平8−95032号公報、特許第2767382号明細書に記載のものが好適に用いられる。このようなディスコティック液晶の傾斜配向層をセルロース系高分子フィルム上に形成させたものとして富士写真フィルム社製のワイドビューフィルムがある。
【0083】
上記以外の液晶光学補償層は、例えば、ネマチック液晶性モノマーおよび/またはポリマーにより形成することができる。
【0084】
また本発明の光学フィルムは、図3に示すように、液晶光学補償層A13が形成されない側の、透明基材フィルムA11の片面には偏光子A14、次いで、透明保護フィルムA15が積層されているものを用いることができる。
【0085】
偏光子A14は、接着剤を用いて、透明基材フィルムA11に貼り合せられる。なお、図3では、透明基材フィルムA11は、偏光子A14の透明保護フィルムを兼ねているが、透明基材フィルムA11には、偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有する偏光板を積層することもできる。
【0086】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0087】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0088】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムは、透明基材フィルムと同様の材料を用いることができる。また厚みについても同様である。
【0089】
なお、透明基材フィルムと透明保護フィルムは、同じポリマー材料を用いても良く、異なるポリマー材料等を用いても良い。
【0090】
前記偏光子と、透明基材フィルムおよび透明保護フィルムとは、通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。なお、偏光子と、透明基材フィルムおよび透明保護フィルムとの貼り合せにあたり、透明基材フィルムおよび透明保護フィルムには活性化処理を施すことができる。活性化処理は各種方法を採用でき、たとえばケン化処理、コロナ処理、低圧UV処理、プラズマ処理等を採用できる。活性化処理は、透明基材フィルムが、特にトリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂等の場合に有効である。
【0091】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0092】
また、前記偏光板を積層した光学フィルムの他に、本発明の粘着型光学フィルムに使用される光学フィルムとしては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられ光学層を積層することができる。例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0093】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0094】
本発明の粘着型光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着型光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着型光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0095】
液晶セルの片側又は両側に粘着型光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。
【0097】
実施例および比較例に用いたブロック共重合体またはグラフト共重合体は、常法により乾燥精製した薬品を用い、以下に示す製造例によって得た。その際、得られたブロック共重合体およびグラフト共重合体の分子量、分子量分布、組成、各ブロックのガラス転移温度、重合転化率の分析は、以下の方法によって実施した。
【0098】
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定:
装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
カラム:東ソー社製TSKgel GMHXL、G4000HXLおよびG5000HXLを直列に連結
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0099】
(2)プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)分光法による共重合体における各共重合成分の含有量の測定:
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置(JNM−LA400)
溶媒:重クロロホルム
1H−NMRスペクトルにおいて、3.6ppm、および、4.0ppm付近のシグナルは、それぞれ、メタクリル酸メチル単位のエステル基(−O−CH)、および、アクリル酸n−ブチル単位のエステル基−O−CH−CH−CH−CH)に帰属され、その積分値の比によって共重合成分の含有量を求めた。
(3)ガラス転移温度(Tg)の算出:
ガラス転移温度は、共重合体の製造に用いたモノマーと各モノマーの割合から、FOXの式から算出した理論値である。
【0100】
製造例1
(ブロック共重合体1の合成)
2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4g、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム6.37mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液3.68gを加えた。続いて、これにメタクリル酸メチル(以下、MMAと略す)51.5gを加え、室温にて60分撹拌した。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル(以下、nBAと略す)240gを2時間かけて滴下した。次に、MMA51.5gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノール3.50gを添加して重合反応を停止した。得られた反応液をメタノール中に注ぎ、沈澱物を濾過により回収し、乾燥させることにより、トリブロック共重合体1を340g得た。
【0101】
H−NMR測定とGPC測定の結果、上記トリブロック共重合体1は、PMMA−PnBA−PMMAのトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は7.9×10であり、数平均分子量(Mn)は6.2×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.27であった。なお、PMMA−PnBA−PMMAは、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸n−ブチル−ポリメタクリル酸メチルを表す。トリブロック共重合体1のモノマー単位の重量比は、nBA/MMA=70/30であった。
【0102】
製造例2
(ブロック共重合体2の合成)
製造例1において、nBAの代わりに、アクリル酸2−エチルへキシル(以下、2EHAと略す)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてトリブロック共重合体2を得た。
【0103】
H−NMR測定とGPCの結果、上記トリブロック共重合体2は、PMMA−P2EHA−PMMAのトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は9.2×10であり、数平均分子量(Mn)は7.3×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.26であった。なお、PMMA−P2EHA−PMMAは、ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸2−エチルへキシル−ポリメタクリル酸メチルを表す。トリブロック共重合体2のモノマー単位の重量比は、2EHA/MMA=69/31であった。
【0104】
製造例3
(ブロック共重合体3の合成)
窒素置換した500L反応器に、アクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、nBA80.9kgおよびアクリル酸t−ブチル(以下、tBAと略す)2.1kgを仕込み、続いて臭化第一銅580gを仕込んで攪拌を開始した。その後、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル583gをアセトニトリル7.3kgに溶解させた溶液を仕込み、75℃で30分間保持した後、ペンタメチルジエチレントリアミン70gを加えた。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えて3時間経過後、トルエン82.5kg、塩化第一同400g、ペンタメチルジエチレントリアミン70g、およびMMA35.6kgを加えた。反応終了後、トルエン120kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。得られたアクリル系ブロック共重合体の溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.6kg加え、反応器内を窒素置換し、150℃で4時間撹拌し、tBAのt−ブチル基をカルボキシル基に変換して、トリブロック共重合体3を得た。
【0105】
H−NMR測定とGPCの結果、上記トリブロック共重合体3は、PMMA−P[nBA/AA]−PMMAのトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は1.8×10であり、数平均分子量(Mn)は1.3×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.38であった。なお、PMMA−P[nBA/AA]−PMMAは、ポリメタクリル酸メチル−[アクリル酸n−ブチルとアクリル酸の共重合体]−ポリメタクリル酸メチルを表す。トリブロック共重合体3のモノマー単位の重量比は、nBA/AA/MMA=69/2/29であった。
【0106】
製造例4
(グラフト共重合体4の合成)
冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた反応容器に、室温にてトルエン233g、nBA100g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gを入れ、窒素置換を行った後、55℃に昇温し6時間重合反応を行ない、ポリアクリル酸n−ブチルの溶液を得た。このポリアクリル酸n−ブチルの固形分100部に対して、末端基にメタクリロイル基を有するメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亜合成化学工業(株)製)50部を加え、トルエンを溶媒として通常の溶液重合を行い、グラフト共重合体4を得た。
【0107】
H−NMR測定とGPCの結果、上記グラフト共重合体4は、重量平均分子量(Mw)は2.2×10であり、数平均分子量(Mn)は1.7×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.29であった。なお、モノマー単位の重量比は、nBA/MMA=67/33であった。
【0108】
製造例5
(トリブロック共重合体5の合成)
2Lの三口フラスコに三方コックを付け内部を窒素で置換した後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4g、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム6.37mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液3.68gを加えた。続いて、これにMMA46.4gとアクリル酸メチル(以下、MAと略す)5.1gを加え、室温にて60分撹拌した。引き続き重合液の内部温度を−30℃に冷却し、nBA192gとMA48gの混合液を2時間かけて滴下した。次に、MMA46.4gとMA5.1gを加え、一晩室温にて撹拌後、メタノール3.50gを添加して重合反応を停止した。得られた反応液をメタノール中に注ぎ、沈殿物を濾過により回収し、乾燥させることにより、トリブロック共重合体5を334g得た。
【0109】
H−NMR測定とGPC測定の結果、上記トリブロック共重合体5は、P[MMA/MA]−P[nBA/MA]−P[MMA/MA]のトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は12.1×10であり、数平均分子量(Mn)は9.3×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.30であった。なお、P[MMA/MA]−P[nBA/MA]−P[MMA/MA]は、[メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体]−[アクリル酸n−ブチルとアクリル酸メチルの共重合体]−[メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体]を表す。トリブロック共重合体5のモノマー単位の重量比は、nBA/MA/MMA=56/17/27であった。
【0110】
実施例1
<粘着剤層の形成>
製造例1で得られたトリブロック共重合体1をトルエンに溶解して固形分濃度30%の粘着剤溶液を調製した後、当該粘着剤溶液を離型処理を施したポリエステルフィルム(厚さ38μm)からなるセパレータ上に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように、リバースロールコート法により塗布し、155℃で3分間加熱処理して、溶剤を揮発させ、粘着剤層を得た。
【0111】
<光学フィルム>
富士写真フイルム社製のワイドビュー(WV)フィルムを用いた。WVフィルムは、透明基材フィルムであるセルロース系高分子フィルム上に、ディスコティック液晶分子が傾斜配向しているディスコティック液晶層を有していた。
【0112】
なお、WVフィルムを、ディスコティック液晶分子の傾斜配向層に分離し、王子計測機器社製のKOBRA−21ADHにて、λ=590nmにおける特性を測定した。面内の最大屈折率をnx、面内の最大屈折率を有する方向に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした。厚みをdとした。透明支持体は、Δnd=(nx−ny)×d=12nm、Rth=(nx−nz)×d=100nmであった。一方、傾斜配向層は、光軸が傾斜している方向に−50°〜50°まで入射角を変えて位相差を測定した結果、Δnd=30nm、Rth=150nm、平均傾斜角θ=17°であった。
【0113】
前記WVフィルムの透明基材フィルム側を、ケン化処理した後、そのケン化処理面と、厚さ20μmのポリビニルアルコール系偏光子(日東電工(株)製,SEG−5424WL)とをポリビニルアルコール系接着剤により、貼り合わせた。一方、偏光子の他面には、前記同様のポリビニルアルコール系接着剤により、透明保護フィルム(トリアセチルセルロースフィルム,厚さ80μm)を貼り合せて、偏光板を有する光学フィルム(光学補償層付き偏光板)を作成した。
【0114】
<下塗り剤の調製>
末端に1級アミノを有するアクリル酸エステル((株)日本触媒製,ポリメントNK380)をトルエンに固形分が2%になるように希釈した溶液に、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製,イルガノックス1010)を、前記溶液の固形分100部に対して、1部添加した下塗り剤を調製した。
【0115】
<粘着型光学フィルムの作製>
上記光学補償層付き偏光板のディスコティック液晶層の表面に、上記の下塗り剤を、バーコーターを用いて、塗布、乾燥して、塗布量0.2立方センチメートルの下塗り層(厚さ80nm)を形成した。次いで、下塗り層に、上記粘着剤層を形成した離型シートを貼り合せ、粘着型光学フィルムを作製した。
【0116】
実施例2
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の代わりに製造例2で得られたトリブロック共重合体2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0117】
実施例3
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の代わりに製造例3で得られたトリブロック共重合体3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0118】
実施例4
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の代わりに製造例4で得られたグラフト共重合体4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0119】
実施例5
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の代わりに製造例5で得られたトリブロック共重合体5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0120】
比較例1
実施例1において、粘着型光学フィルムの作製にあたり、下塗り層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0121】
比較例2
<アクリル系粘着剤の調製>
ベースポリマーとして、nBA:MMA=70:30(重量比)のランダム共重合体6からなる重量平均分子量165万のアクリル系ポリマー(重合開示剤として、モノマー100部に対して、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.3部を使用して合成)を含有する酢酸エチル溶液(固形分15.5%)を用いた。
【0122】
<粘着型光学フィルムの作製>
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の溶液の代わりに、上記で得られたランダム共重合体6の溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0123】
比較例3
(ブロック共重合体7の合成)
製造例1において、MMAの代わりに、メタクリル酸n−ブチル(以下、nBMAと略す)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてトリブロック共重合体7を得た。
【0124】
H−NMR測定とGPCの結果、上記トリブロック共重合体7は、PnBMA−PnBA−PnBMAのトリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は1.2×10であり、数平均分子量(Mn)は9.2×10であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.30であった。なお、PnBMA−PnBA−PnBMAは、ポリメタクリル酸n−ブチル−ポリアクリル酸n−ブチル−ポリメタクリル酸n−ブチルを表す。トリブロック共重合体5のモノマー単位の重量比は、nBA/nBMA=70/30であった。
【0125】
<粘着型光学フィルムの作製>
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の代わりに上記で得られたトリブロック共重合体7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0126】
参考例1
<アクリル系粘着剤の調製>
ベースポリマーとして、nBA:アクリル酸4−ヒドロキシブチル(以下、4HBAと略す)=99:1(重量比)のランダム共重合体8からなる重量平均分子量165万のアクリル系ポリマー(重合開示剤として、モノマー100部に対して、2,2´‐アゾビスイソブチロニトリル0.3部を使用して合成)を含有する酢酸エチル溶液(固形分15.5%)を用いた。上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、架橋剤として、ジベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)製,ナイパーBMT40SV)0.3部と、トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製,タケネートD110N)0.02部と、アセトアセチル基含有シランカップリング剤(綜研化学(株)製,A‐100)0.2部を配合し、粘着剤溶液(固形分12%)を調製した。
【0127】
<粘着型光学フィルムの作製>
実施例1において、粘着剤層の形成にあたり、製造例1で得られたトリブロック共重合体1の溶液の代わりに、上記で得られたランダム共重合体8を含有する粘着剤溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着型光学フィルムを作製した。
【0128】
上記で得られた粘着型光学フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0129】
(粘着剤層と光学フィルム基材との密着性)
上記粘着型光学フィルムを25mm×150mmの大きさにカットし、これの粘着剤層面と、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム表面にインジウム−酸化錫を蒸着させた蒸着フィルムの蒸着面とが接するよう貼り合わせた後、20分間以上、23℃/60%RHの環境下で放置した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部を手で剥離し、粘着剤がポリエチレンテレフタレートフィルム側に付着しているのを確認した上で、島津製作所製の引っ張り試験機AG−1を用いて180°方向に300mm/分の速度で剥離した際の応力(N/25mm)を測定(25℃)した。
【0130】
(接着力とリワーク性)
上記粘着型光学フィルムを25mm幅に裁断し、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製,1737)に2kgローラーで1往復圧着して貼り付けた。かかるサンプルを23℃で1時間養生したものと(初期)、1年間養生したもの(1年後)について、それぞれ引張り試験機にて、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定した。また、その引き剥がした後のガラス表面の状態を下記基準で目視にて評価した。なお、上記評価は50回行い、接着力はその平均値である。
◎:糊残りなく剥離可能(接着力:20N/25mm未満)
○:糊残りなく剥離可能だが重剥離(接着力:20N/25mm以上)
△:糊残り発生(0〜5枚/50枚)。
×:糊残り発生(6枚以上/50枚)。
【0131】
【表1】

トリブロック共重合体中の各(共)重合体セグメントのガラス転移温度は、
PMMA:105℃、
PnBA:−45℃、
P2EHA:−55℃、
P[MMA/MA]:92℃、
P[nBA/MA]:−36℃、
PnBMA:20℃、である。
【符号の説明】
【0132】
A 光学フィルム
B 下塗り層
C 粘着剤層
A11 透明基材フィルム
A12 配向膜
A13 液晶光学補償層(ディスコティック液晶層)
A14 偏光子
A15 透明保護フィルム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムに、下塗り層を介して、粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムにおいて、
粘着剤層が、ベースポリマーとして、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントおよびガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する粘着剤により形成されており、かつ、
下塗り層は、ポリマー類を含有することを特徴とする粘着型光学フィルム。
【請求項2】
(メタ)アクリル系重合体(A)セグメントは総モノマー単位の50重量%以上がアクリル酸アルキルエステルであり、(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントは総モノマー単位の15重量%以上がメタクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする請求項1記載の粘着型光学フィルム。
【請求項3】
粘着剤が含有するベースポリマーが、B−A−Bのトリブロック共重合体(但し、Aは(メタ)アクリル系重合体(A)セグメント、Bは(メタ)アクリル系重合体(B)セグメントを示す)であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着型光学フィルム。
【請求項4】
下塗り層のポリマー類が、末端に1級アミノ基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項5】
末端に1級アミノ基を有するポリマーが、末端に1級アミノ基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項4記載の粘着型光学フィルム。
【請求項6】
末端に1級アミノ基を有するポリマーにおける1級アミノ基が、ポリエチレンイミン系材料に由来するものであることを特徴とする請求項4または5記載の粘着型光学フィルム。
【請求項7】
下塗り層が、ポリマー類100重量部に対して、酸化防止剤0.01〜500重量部を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項8】
酸化防止剤が、フェノール系、リン系、イオウ系およびアミン系の酸化防止剤から選ばれるいずれか少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の粘着型光学フィルム。
【請求項9】
光学フィルムが、透明基材フィルムの片面に液晶光学補償層を有しており、当該液晶光学補償層に、下塗り層を介して、粘着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粘着型光学フィルム。
【請求項10】
液晶光学補償層が、ディスコティック液晶層であることを特徴とする請求項9記載の粘着型光学フィルム。
【請求項11】
光学フィルムは、液晶光学補償層が形成されない側の、透明基材フィルムの片面には偏光子が積層されていることを特徴とする請求項9または10記載の粘着型光学フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の粘着型光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−175247(P2011−175247A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9043(P2011−9043)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】