説明

粘着性ハイドロゲル及び粘着性ハイドロゲル製造用組成物

【課題】粘着性が向上したハイドロゲルを提供することを課題とする。
【解決手段】非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルであって、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体が、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15〜15重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性ハイドロゲル及び粘着性ハイドロゲル製造用組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、粘着性が向上した粘着性ハイドロゲル及び粘着性ハイドロゲル製造用組成物に関する。本発明の光ゲル化用組成物は、生体に貼付するサージカルテープ、カテーテルや点滴用のチューブ/心電図電極/その他センサー類の固定用テープ、湿布剤、創傷被覆剤、人工肛門等の固定用テープ、電気治療器用導子/磁気治療器固定用粘着材/経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体に貼付して用いる粘着材、建材/電子材料等の工業用粘着材として好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは皮膚に対して低刺激性であり、また蒸れを低減できるため、人肌に優しい素材である。更に、粘着性・導電性が付与できるため生体に貼付する心電図用電極や創傷被覆剤等の幅広い分野で利用されている。
【0003】
ハイドロゲルを粘着剤として使用する場合、使用時に剥離することのないような粘着力が求められる。皮膚に対して用いる場合は様々な屈曲部に柔軟に対応し、更に複雑な動作に追従できるだけの粘着力が要求される。反面、粘着力が強すぎると剥離の際に強い痛みを伴うため、良好な粘着剤とはいい難い。そのためハイドロゲルでは使用時と剥離時の粘着力のバランスを考慮する必要がある。
【0004】
上述のような粘着力に関する問題を解決すべく、様々な粘着性ハイドロゲルが報告されている。例えば、特開2003−96431号公報(特許文献1)には、アクリルアミドを架橋させて得られるハイドロゲルにポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を添加してなる高粘着ゲルが記載されている。
【特許文献1】特開2003−96431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような粘着力改良型ゲルは、低周波パッドや汎用生体電極等の一般的用途に対しては十分使用できる粘着力である。しかし、ホルター電極、サージカルテープ、長時間精密診断用テープ等の用途には満足した粘着性能が得られるとは言い難い。特に、長時間の使用になると皮膚の伸長や屈曲に追従できずに端部からめくれたり、剥がれ落ちたりすることが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むことで、従来のポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を添加したハイドロゲルに比べ、約1.5倍以上に粘着力が向上したハイドロゲルを提供できることを意外にも見い出し本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルであって、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体が、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15〜15重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルが提供される。
【0008】
また、本発明によれば、非イオン性重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体とを含み、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15〜15重量部含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着性ハイドロゲルによれば、従来のハイドロゲルより、粘着力を約1.5倍以上に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の粘着性ハイドロゲルは、非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体とを含む。
【0011】
非イオン性重合性単量体とは、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を1つ有する非イオン性重合性単量体であれば特に制限されない。更に、水溶性を有することが好ましい。水溶性を有するとは100gの水に10g以上溶解することを意味する。また、非イオン性とは、遊離の酸又は塩基の状態の重合性単量体の1重量%の水溶液が4〜9のpHを示すことを意味する。
【0012】
具体的な非イオン性重合性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、ビニルピロリドン、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等のビニルアミド誘導体、アリルアルコール等が挙げられる。これら非イオン性重合性単量体は、単独または複数使用することが可能である。
【0013】
これらの中で、アクリルアミド誘導体は、重合反応性が良好であり、粘着性ハイドロゲル中の他の成分との親和性も良好なことから、好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0014】
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を2つ以上有しさえすれば特に限定されない。具体的には、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これら架橋性単量体は、単独または複数使用することが可能である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0015】
上記非イオン性重合性単量体と架橋性単量体とが重合・架橋することで高分子マトリックスが形成される。この高分子マトリックスの粘着性ハイドロゲル全体に占める割合は、10〜40重量%であることが好ましく、15〜35重量%であることがより好ましい。
【0016】
更に、高分子マトリックス製造の際の架橋性単量体の割合は、使用する非イオン性重合性単量体種や架橋性単量体種によっても異なるが、一般的に非イオン性重合性単量体100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、0.05〜0.25重量部であることがより好ましい。形状安定性をもたせるために、架橋性単量体は0.01重量部以上が好ましく、また粘着力を維持できる程度の柔軟性を与えるために0.5重量部以下が好ましい。
【0017】
粘着性ハイドロゲルに含まれる水の含有量は、ゲルが周りの環境により吸湿したり、乾燥したりすることで経時的に物性の変化、特に膨潤や収縮を防ぐために、非イオン性重合性単量体100重量部に対して50〜300重量部が好ましい。更に、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体の易溶解性、また水分のブリードや乾燥による変化を抑制するために、75〜150重量部がより好ましい。
【0018】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等が使用可能である。これら多価アルコールは、単独または複数使用することが可能である。
【0019】
これら多価アルコールの中で、ハイドロゲルを実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状の多価アルコールを使用することが好ましい。このような好ましい多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、グリセリン等が挙げられる。
【0020】
多価アルコールの含有量は、非イオン性重合性単量体100重量部に対して150〜350重量部であることが好ましく、200〜300重量部であることがより好ましい。多価アルコールの添加量が150〜350重量部の場合は、得られたゲル体の乾燥による物性変化が小さく、高い粘着力が得られるため好ましい。
【0021】
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体は、アクリル酸とメタクリル酸との共重合比率が9:1〜1:9であることが好ましい。
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体の含有量は、非イオン性重合性単量体100重量部に対して0.15〜15重量部であることが好ましい。含有量が0.15重量部未満の場合は、目的とする粘着力が得られ難く、逆に15重量部を超える場合はゲルが硬くなりすぎ結果的に粘着力の低下を引き起こすことになるため好ましくない。より好ましい含有量は、1〜10重量部である。
本発明で添加されるアクリル酸とメタクリル酸との共重合体は、例えばラジカル重合、レドックス反応、光照射等の方法により製造できる。また、共重合体としては、日本純薬社製ジュリマーAC−20H、AC−20Lや、日本触媒社製FL−200等の市販品が使用できる。
【0022】
更に、粘着性ハイドロゲルに電解質を添加することにより導電性のゲルが得られる。例えば、導電性のゲルの用途が心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極である場合は、比抵抗が0.1〜10kΩ・cmであることが好ましい。
【0023】
電解質としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属やマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物、炭酸、硫酸、リン酸等の鉱酸塩、有機塩、アンモニウム塩等が使用可能である。この内、生体電極である場合は、中性〜弱酸性であるものが好ましい。
【0024】
電解質の含有量は、電極として使用する場合には低インピーダンス化することが必要であり、その際、水、多価アルコール及び高分子マトリックスの合計量100重量部に対して0.05重量部以上が好ましい。また、添加する電解質を均一に配合液中に溶解させるには10重量部以下であることが好ましい。より好ましい含有量は、2〜8重量部である。
【0025】
粘着性ハイドロゲルは、必要に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、防腐剤、殺菌剤、防徴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)が挙げられる。
【0026】
更に、本発明では、上記粘着性ハイドロゲル製造用の組成物が提供される。
上記組成物は、非イオン性重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体とを含んでいる。特に、この組成物は、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15〜15重量部含んでいる。
【0027】
非イオン性重合性単量体の組成物全体に占める割合は、10〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。架橋性単量体、水及び多価アルコールの添加割合は、非イオン性重合性単量体100重量部に対して、それぞれ、0.01〜0.5重量部、50〜300重量部及び150〜350重量部であることが好ましく、0.05〜0.25重量部、75〜150重量部及び200〜300重量部であることがより好ましい。
なお、上記共重合体は、高分子マトリックスと架橋していてもいなくてもよい。
【0028】
粘着性ハイドロゲル製造用組成物には、必要に応じて重合開始剤が含まれていてもよい。
重合開始剤の種類は特に限定されないが、加熱により重合・架橋させる場合は、アゾビスシアノ吉草酸やアゾビスアミジノプロパン2塩酸塩等のアゾ重合開始剤、硫酸第1鉄やピロ亜硫酸塩等の還元剤と過酸化水素やペルオキソ2硫酸塩等の過酸化物からなるレドックス開始剤を用いることができる。また、光の照射によって重合させる場合は、アゾ系、アセトフェノン系をはじめとする公知の光重合開始剤を用いることができる。また、これらの重合開始剤の複数を混合し、光の照射と加熱を同時に行なうことで重合・架橋させてもよい。レドックス開始剤を用いる場合、加熱をしなくても反応を行なうことが可能であるが、残存モノマーの低減化や、反応時間の短縮のため、加熱を行なうことが好ましい。
【0029】
また、電子線やガンマ線等の放射線を照射することによる重合・架橋も可能である。
上記種々の重合法の内、製造工程が簡素であり、非常に経済的であると同時に、安定した物性のゲル体を得ることが可能であることから光照射による重合が好ましい。
【0030】
光重合開始剤の濃度は、重合反応を十分に行い、残存モノマー量を低減するために、非イオン性重合性単量体100重量部に対して0.01重量部以上であることが好ましく、反応後の残開始剤による変色(黄変)や、臭気を防ぐためには1重量部以下であることが好ましい。
更に、上記他の添加剤を粘着性ハイドロゲル製造用組成物に含ませてもよい。
【0031】
本発明の粘着性ハイドロゲルは、粘着性ハイドロゲル製造用組成物に光を照射及び/又は加熱することにより得ることができる。
例えば、樹脂フィルム等のベースフィルムの上に前記組成物を滴下し、その上面に樹脂フィルム等のトップフィルムを被せて組成物を押し広げ、一定の厚みに制御する。この状態で光(紫外線)照射及び/又は加熱により重合・架橋させて一定の厚みの粘着性ハイドロゲルを得ることができる。
【0032】
ベースフィルムは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙又は樹脂フィルムをラミネートした紙等のフィルムを使用することができる。また、これらフィルムのゲルシートと接する面はシリコーンコーティング等の離型処理がなされていることが好ましい。
【0033】
ベースフィルムを離型紙として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、紙、樹脂フィルムをラミネートした紙等のフィルムの表面に離型処理を施したものが好適に用いられる。特に、二軸延伸したPETフィルムや、OPP等が好ましい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0034】
ベースフィルムを離型紙でなく、粘着剤のバッキング材(裏打材)として使用する場合は、ベースフィルムは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の離型処理されていない樹脂フィルムが挙げられる。特に、ポリウレタンフィルムは柔軟性があり、水蒸気透過性を有するものも存在することから特に好ましい。但し、ポリウレタンフィルムは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取扱が困難なため、キャリアとしてポリオレフィンや紙等がラミネートされていることが好ましい。ゲル生成工程は、これらキャリアフィルムをつけたままで行うことが好ましい。
【0035】
トップフィルムとしては、基本的にベースフィルムと同じ材質ものを使用することが可能であるが、光を遮蔽しない材質のフィルムを選択することが好ましい。また、前記のバッキング材に使用するフィルムは、トップフィルムとして使用しない方がよい。特に、バッキング材に使用するフィルムが、紫外線等の照射により劣化の可能性がある場合は、直接紫外線が照射される側に位置することになるため好ましくない。
【0036】
組成物を連続的に重合・架橋させ、生成したハイドロゲルをロール状に巻き取る場合は、ベースフィルムかトップフィルムかの何れかが柔軟性を有していることが好ましい。柔軟性が無いフィルムを両面に使用する場合、巻皺が発生する危険性が高いため好ましくない。柔軟性を有するフィルムは、ロール巻の内面、外面何れに使用してもよく、外面に配置することが好ましい。
【0037】
上記他の添加剤の内、薬効成分を添加する方法としては、あらかじめ組成物に溶解又は分散させ、重合・架橋する方法と、一旦生成した粘着性ハイドロゲルに後から添加する方法が挙げられる。これらの内、前者の方法は、ラジカル重合反応を伴うゲル生成時に、薬効成分がラジカルに攻撃され、薬効を失う場合があるため、後者の方法による薬効成分添加の方がより好ましい。
【0038】
本発明の粘着性ハイドロゲルは、生体に貼付するサージカルテープ、カテーテルや点滴用のチューブ/心電図電極/その他センサー類の固定用テープ、湿布剤、創傷被覆剤、人工肛門等の固定用テープ、電気治療器用導子/磁気治療器固定用粘着材/経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体に貼付して用いる粘着材、建材/電子材料等の工業用粘着材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の各性質の評価方法を下記する。
(90°粘着力測定)
サンプルを20mm×100mmの短冊状に切り出し、この試験片をベークライト板に貼り付け、サン科学社製レオメーターにセットする。この後、JIS−Z0237に準じて、300mm/分の速度で90°方向に剥離する際の力を粘着力とする。
【0040】
(比抵抗測定)
サンプルを20mm×200mmの角型に切り出し、この試験片の両面にステンレス板を貼り合せ、ステンレス板間に1kHz、10Vp−pの電流を流した時のインピーダンスを測定する。得られたインピーダンス(I)と、試験片の面積(S)及び厚み(d)から以下の式により、比抵抗を算出する。
比抵抗(Ω・cm)=I(Ω)÷d(cm)×S(cm2
【0041】
実施例1
非イオン性重合性単量体としてアクリルアミドを100重量部、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.15重量部、多価アルコールとしてグリセリン293.5重量部、電解質として塩化ナトリウムを12.5重量部、粘着付与剤として共重合比7:3のアクリル酸とメタクリル酸との共重合体(日本純薬社製ジュリマーAC−20H)を3.5重量部と、溶媒として水を90重量部混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル製造用組成物を得た。
【0042】
次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製商品名イルガキュア2959)を0.5重量部加え更に攪拌溶解した。なお、以下の実施例及び比較例において、グリセリンの量を変化させることで、全量が500重量部になるように調整した。
【0043】
次に、ガラス上に置いたシリコン処理を施した厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上のポリカーボネート製型枠(130mm×130mm、厚さ1.0mm)に組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度50mW/cm2の紫外線ランプで紫外線を60秒照射して取りだし、型枠より切り出してサンプルとした。
得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を非イオン性重合性単量体100重量部に対して1.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を非イオン性重合性単量体100重量部に対して7.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を日本純薬社製ジュリマーAC−20Lとし、この共重合体を非イオン性重合性単量体100重量部に対して3.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0047】
実施例5
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を日本純薬社製ジュリマーAC−20Lとし、この共重合体を非イオン性重合性単量体100重量部に対して1.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0048】
実施例6
共重合比8:2のアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を使用したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
上記共重合体は、以下のようにして作製した。すなわち、アクリル酸モノマーとして三菱化学社製「アクリル酸」と、メタクリル酸モノマーとして共栄社化学社製「ライトエステルA」を使用した。共重合体を得るために、上記アクリル酸モノマー4gとメタクリル酸モノマー16gを秤量し、イオン交換水を加えて全量を95gとした。次に、その液を冷却管を取り付けた三つ口丸底フラスコに入れ攪拌した。続いて、4%の過硫酸カリウム水溶液2gと、2%のピロ亜硫酸ナトリウム水溶液3gを三つ口丸底フラスコに添加し、ウォーターバスで60℃に加温しながら3時間反応させて、共重合比8:2の共重合体を得た。なお、液温は三つ口丸底フラスコに取り付けたアルコール温度計で測定した。
【0049】
実施例7
共重合比2:8のアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を使用したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
上記共重合体は、以下のようにして作製した。すなわち、アクリル酸モノマーとして三菱化学社製「アクリル酸」と、メタクリル酸モノマーとして共栄社化学社製「ライトエステルA」を使用した。共重合体を得るために、上記アクリル酸モノマー16gとメタクリル酸モノマー4gを秤量し、イオン交換水を加えて全量を95gとした。次に、その液を冷却管を取り付けた三つ口丸底フラスコに入れ攪拌した。続いて、4%の過硫酸カリウム水溶液2gと、2%のピロ亜硫酸ナトリウム水溶液3gを三つ口丸底フラスコに添加し、ウォーターバスで60℃に加温しながら3時間反応させて、共重合比2:8の共重合体を得た。なお、液温は三つ口丸底フラスコに取り付けたアルコール温度計で測定した。
【0050】
実施例8
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を非イオン性重合性単量体100重量部に対して5.0重量部添加し、電解質を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
共重合比7:3のアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を非イオン性重合性単量体100重量部に対して17.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
共重合体の代わりに、ポリアクリル酸(日本純薬社製ジュリマーAC−10H)を非イオン性重合性単量体100重量部に対して1.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0054】
比較例4
共重合体の代わりに、比較例3のポリアクリル酸を非イオン性重合性単量体100重量部に対して3.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0055】
比較例5
共重合体の代わりに、比較例3のポリアクリル酸を非イオン性重合性単量体100重量部に対して7.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0056】
比較例6
共重合体の代わりに、ポリアクリル酸(日本純薬社製ジュリマーAC−10L)を非イオン性重合性単量体100重量部に対して1.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0057】
比較例7
共重合体の代わりに、比較例6のポリアクリル酸を非イオン性重合性単量体100重量部に対して3.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0058】
比較例8
共重合体の代わりに、比較例6のポリアクリル酸を非イオン性重合性単量体100重量部に対して7.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0059】
比較例9
共重合体の代わりに、ポリメタクリル酸(日本純薬社製ジュリマーAC−30H)を非イオン性重合性単量体100重量部に対して3.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0060】
比較例10
共重合体の代わりに、比較例9のポリメタクリル酸を非イオン性重合性単量体100重量部に対して7.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0061】
比較例11
共重合体の代わりに、ポリビニルピロリドン(BASF社製Colloidon K−90)を非イオン性重合性単量体100重量部に対して3.5重量部添加したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。得られたサンプルの90°粘着力と比抵抗を測定し、結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
上記結果から、実施例1〜8はベークライトに対する90°粘着力が750g以上と高い値を示した。それに対して、比較例1のようにアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を添加しないハイドロゲルの粘着力は360gと低い値であった。
【0064】
一方、比較例2のようにアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を17.5重量部添加した場合、粘着力は低下した。
また、ポリアクリル酸のみまたはポリメタクリル酸のみを添加した比較例3〜10では550g〜600gまでと実施例に比べ低くなった。
【0065】
他の水溶性高分子であるポリビニルピロリドンを添加した比較例11では粘着力が非常に低い値となった。
これらの結果より、ポリアクリル酸・ポリメタクリル酸共重合体を適量添加することで、従来の水溶性高分子の添加により向上した粘着力の1.5〜2倍程度向上させることができる。
なお、実施例及び比較例で使用した原料の使用量を表2にまとめて示す。
【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルであって、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体が、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15〜15重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲル。
【請求項2】
前記非イオン性重合性単量体が、アクリルアミド誘導体からなる請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項3】
前記高分子マトリックス中に電解質を更に含み、電解質が、水、多価アルコール及び高分子マトリックスの合計100重量部に対して、0.05〜10重量部含まれる請求項1又2に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項4】
非イオン性重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体とを含み、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体を、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15〜15重量部含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物。

【公開番号】特開2007−112972(P2007−112972A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357942(P2005−357942)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】