説明

粘着性材料用成形ノズルおよびバンド式乾燥装置

【課題】汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料等の粘着性材料を円滑に成形することができる粘着性材料用成形ノズルおよびその粘着性材料用成形ノズルを備えたバンド式乾燥装置を提供する。
【解決手段】汚泥1を輸送する汚泥輸送配管9に接続された末広ノズル14Aであって、汚泥輸送配管9と末広ノズル14Aの接続部における流路断面積S1が流出口における流路断面積S2の40〜200%となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料等の粘着性材料を成形するために用いる粘着性材料用成形ノズルおよびその粘着性材料用成形ノズルを備えたバンド式乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の粘着性材料の有効利用等を図る場合、先ずは汚泥等の粘着性材料を乾燥させる処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そこで、そのような汚泥等の粘着性材料の乾燥処理のために、海産物等の乾燥に利用されている多段バンド式乾燥装置を用いることが考えられる。多段バンド式乾燥装置は、特許文献2や特許文献3等に記載されているが、海産物等の被乾燥物を搬送する網目状のコンベアベルト(バンド)を上下方向に複数段備えており、それらのバンドで搬送されている被乾燥物に対して熱風や温風を送風することで、被乾燥物を乾燥するようになっている。
【0004】
そして、そのような多段バンド式乾燥装置に汚泥等を供給する方法としては、特許文献4、5に記載されているように、ローラーによる圧密で汚泥等を紐状に成形して供給する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−050458号公報
【特許文献2】特開平02−069135号公報
【特許文献3】実開平06−031479号公報
【特許文献4】特開2008−020172号公報
【特許文献5】国際公開第2002/037978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4、5のように、ローラーによって汚泥等を圧密した場合、汚泥等が粘着性材料(高粘性高付着性材料)であるために、ローラーに付着して自重ではローラーから離脱しなくなる。この対策として、ローラーの溝に合わせたスクレーパを取り付けることが考えられるが、スクレーパ上で塊状になってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料等の粘着性材料を円滑に成形することができる粘着性材料用成形ノズルおよびその粘着性材料用成形ノズルを備えたバンド式乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0009】
[1]粘着性材料を輸送する輸送配管に接続される末広ノズルからなる粘着性材料用成形ノズルであって、前記輸送配管と末広ノズルの接続部における末広ノズルの流路断面積が、末広ノズルの流出口における末広ノズルの流路断面積の40〜200%となっていることを特徴とする粘着性材料用成形ノズル。
【0010】
[2]前記末広ノズルの流出口における末広がり幅と、前記末広ノズルの流路長さとの比が0.25〜1.00であることを特徴とする前記[1]に記載の粘着性材料用成形ノズル。
【0011】
[3]前記末広ノズルの流出口に、粘着性材料を棒状に成形する機能を持つ成形機構が組み込まれていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の粘着性材料用成形ノズル。
【0012】
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の粘着性材料用成形ノズルを備えていることを特徴とするバンド式乾燥装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料等の粘着性材料を円滑に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態におけるバンド式汚泥乾燥装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態における汚泥成形ノズルを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における汚泥成形ノズルを示す図である。
【図4】比較のための汚泥成形ノズルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、粘着性材料として汚泥を乾燥する場合を例にして述べる。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における多段バンド式乾燥装置(多段バンド式汚泥乾燥装置)を示す図である。
【0017】
図1に示すように、この実施形態における多段バンド式汚泥乾燥装置10は、乾燥装置本体11の内部に複数段のバンド(ここでは、1段目バンド12と2段目バンド13)を備えているとともに、脱水汚泥1が貯留されている汚泥貯留槽7から汚泥輸送ポンプ8と汚泥輸送配管9によって供給されてきた汚泥を所定の形状(幅広形状)に成形する汚泥成形ノズル14と、乾燥後の汚泥を排出する乾燥汚泥排出装置15を備えている。温風は、温風発生熱交換器19で未利用排熱などと熱交換して所定の温度とし、乾燥装置本体11に送風されて、1段目バンド12および2段目バンド13で搬送されている汚泥2を乾燥するようになっている。その際、汚泥2からの臭気をできるだけ抑制しながら乾燥するためには、170〜240℃の温風によって汚泥2の表面に殻を形成させるようにする。なお、温風は、大半は循環ファン18によって温風発生熱交換器19と乾燥装置本体11内を循環され、一部は空気導入ファン17によって大気から導入され、一部は図示しない排気処理装置によって排気される。
【0018】
そして、図2は、汚泥成形ノズル14を1段目バンド12に対して垂直に向けて、成形された汚泥(成形汚泥)2が1段目バンド12に載っていく状態を示している。その際に、円形の汚泥輸送配管9で輸送されてきた汚泥1を汚泥成形ノズル14で幅広形状(偏平形状)の汚泥2に成形する必要があるので、そのためには、汚泥を汚泥成形ノズル14内で適切に分散させて、流出口断面において概ね均一な流速で汚泥を流出させることが求められる。
【0019】
なお、汚泥成形ノズル14の1段目バンド12に対する角度は垂直である必要はなく、水平でもかまわない。
【0020】
以下に、この汚泥成形ノズル14の具体的な構造について述べる。
【0021】
汚泥成形ノズル14としては、図4(a)に正面図、図4(b)に側面図を示すような、方形ノズル14Xを用いることが考えられる。ここで、方形ノズルとは、ノズルの流入口からノズルの流出口までノズルの流路断面が同一の矩形断面になっているノズルである。
【0022】
しかし、方形ノズル14Xを用いた場合は、輸送配管9の内径に対して方形ノズル14Xの縦横比が大きいと、方形ノズル14X内での汚泥の分散が不十分となり、方形ノズル14Xからの流出が不均一になってしまうという問題がある。
【0023】
これに対して、図3は、本発明の一実施形態における汚泥成形ノズル14Aを示す図である。図3(a)に正面図、図3(b)に側面図を示すように、この実施形態における汚泥成形ノズル14Aは、汚泥輸送配管9に直交するように接続された末広ノズルである。ここで、末広ノズルとは、図3(a)に示すように、ノズルの流入口(輸送配管9との接続部)からノズルの流出口に向かってノズルの流路幅が徐々に広くなっているノズルを意味している。
【0024】
そして、この末広ノズル14Aにおいては、図3(a)、(b)に示すように、汚泥輸送配管9の内径をDとして、流入口の流路幅をc(c≒D)、流入口の流路厚をy、流出口の流路幅をd(d>c)、流出口の流路厚をx、流路長さをa、流路の末広がり幅をb(=(d−c)/2)、流路の末広がり角度をθ(=tan−1(b/a))とした時に、流入口における流路断面積S1(=c×y)が流出口における流路断面積S2(=d×x)の40〜200%となっている。
【0025】
すなわち、この末広ノズル14Aにおいては、流路断面積比S1/S2が下記の(1)式を満たしている。
0.4≦S1/S2≦2.0 ・・・・・(1)
【0026】
ちなみに、流路断面積比S1/S2が0.4未満の場合には、末広ノズル14A内で、汚泥1の流路長さ方向の速度成分が大きくなって、汚泥1が流路幅方向に分散しにくくなる。この問題は、末広ノズル14Aの末広がり角度θを小さくすることで対応可能であるが、この場合、末広がり角度θが小さい分だけ、流路長さaを長くすることが必要となり、末広ノズル14Aが大型になって重量およびコストが増加するとともに、末広ノズル14A内の圧力損失が増加して汚泥輸送ポンプ8の動力が増大する。
【0027】
一方、流路断面積比S1/S2が2.0を超えている場合には、流入口の流路厚yが流出口の流路厚xに比べてかなり大きいことから、末広ノズル14Aが大型になって重量およびコストが増加する。また、流入口から流出口に向かって流路厚みが大きく狭まっていくことを意味しているので、末広ノズル14A内に偏流が生じ易くなる。この結果、末広ノズル14A内の圧力損失が増加して汚泥輸送ポンプ8の動力が増大したり、あるいは、粘着性材料で埋まらない空間にガスが滞留して、ノズルを腐食したりする恐れがある。
【0028】
これに対して、流路断面積比S1/S2が0.4〜2.0(より好ましくは0.6〜1.5)の場合には、汚泥成形ノズル14内で汚泥1を適切に分散させて、流出口断面において概ね均一な流速で汚泥を流出することができる。
【0029】
なお、末広ノズル14Aにおいては、流路の末広がり幅bと流路長さaの比b/a(末広がり傾斜)が下記の(2)式を満たすことが好ましい。
0.25≦b/a≦1.00 ・・・・・(2)
【0030】
ここで、末広がり傾斜b/aが0.25未満の場合には、流路長さaが長くなり過ぎて、末広ノズル14A内の圧力損失が増加して汚泥輸送ポンプ8の動力が増大することがある。
【0031】
一方、末広がり傾斜b/aが1.00を超えている場合には、末広がり角度θ(=tan−1(b/a))が45°を超えていることになり、角度θが急で汚泥1が流路幅方向に広がらず、適切に分散しないことがある。
【0032】
したがって、末広がり傾斜b/aは0.25〜1.00であることが好ましい。
【0033】
そして、末広ノズル14Aの流出口近傍に、幅広の板形状に成形された汚泥をさらに幅方向に分割して棒状に成形する機能を持つ成形機構を組み込んでもよい。例えば、末広ノズル14Aの流出口において、幅方向に所定の間隔で、ピアノ線を厚さ方向に張るようにしてもよい。
【0034】
このようにして、この実施形態においては、多段バンド式汚泥乾燥装置10に供給する成形汚泥2を円滑に成形することができる。
【0035】
なお、この実施形態では、末広ノズル14Aの流出口の形状は長方形にしているが、長円形であってもよい。ただし、長方形の方が幅方向に均一な厚さの成形汚泥が得られるので好ましい。
【0036】
また、この実施形態では、複数段のバンドを備えているが、本発明は、1段のみのバンドの場合にも同様に実施することができる。
【0037】
また、この実施形態では、汚泥を乾燥する場合を例にして述べたが、本発明は、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料などの他の粘着性材料を乾燥する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 汚泥(脱水汚泥)
2 汚泥(成形汚泥)
7 汚泥貯留槽
8 汚泥輸送ポンプ
9 汚泥輸送配管
10 多段バンド式汚泥乾燥装置
11 乾燥装置本体
12 1段目バンド
13 2段目バンド
14 汚泥成形ノズル
14A 汚泥成形ノズル(末広ノズル)
14X 汚泥成形ノズル(方形ノズル)
15 乾燥汚泥排出装置
17 空気導入ファン
18 循環ファン
19 温風発生熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性材料を輸送する輸送配管に接続される末広ノズルからなる粘着性材料用成形ノズルであって、前記輸送配管と末広ノズルの接続部における末広ノズルの流路断面積が、末広ノズルの流出口における末広ノズルの流路断面積の40〜200%となっていることを特徴とする粘着性材料用成形ノズル。
【請求項2】
前記末広ノズルの流出口における末広がり幅と、前記末広ノズルの流路長さとの比が0.25〜1.00であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性材料用成形ノズル。
【請求項3】
前記末広ノズルの流出口に、粘着性材料を棒状に成形する機能を持つ成形機構が組み込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着性材料用成形ノズル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘着性材料用成形ノズルを備えていることを特徴とするバンド式乾燥装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−5932(P2012−5932A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142448(P2010−142448)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】