説明

粘着製品及び転写具

【課題】セキュリティ性を有効に維持しつつ糊切れ性能や止着箇所の仕上がりを良好なものとし得る粘着製品を提供する。
【解決手段】粘着剤層をフィルムの表面に粘着剤100を間欠的に配置してなるパターン塗工を施したものとし、粘着剤層を介して白封筒Fを封緘した状態から折返し片F1を剥離させる剥離動作を行った際に、折返し片F1或いは開口部近傍F2の表層部を粘着剤層の表面に付着させ白封筒Fを厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封筒などの紙類を止着するための粘着製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、事務用途において基材に粘着剤層を設けた粘着製品が多く用いられている。このような粘着製品は大きく二つの種類のものに分かれている。一方のものは、基材と粘着剤層とが予め止着された状態として、基材を支持体として紙類等に貼り付ける態様の粘着製品である。このようなものの具体例として、粘着テープやシールといったものを挙げることができる。他方のものは、基材が粘着剤層に対して剥離可能に設けられたように構成し、粘着剤層を介して二つの被着体を止着し得るものである。このようなものの具体例として、いわゆる「テープ糊」として市販されている感圧転写式粘着テープ(以下、感圧転写テープと記す)を挙げることができる。このような感圧転写テープは一般にロール状に巻かれた状態で転写具に装着され、所望の長さのみ好適に転写し得る状態で取り扱われる。
【0003】
上述したどちらの粘着製品についても、止着力とともに最も重要な要素として大きく挙げられる事は、取り扱う際の糊切れ性能である。この糊切れ性能を向上させる有効な手法としては、粘着剤層を基材状に間欠的に塗布する、所謂パターン塗工といった手法が、特に感圧転写テープにおいて広く用いられている。またパターン塗工のさらなる長所として、粘着剤層を転写する際に粘着剤の隙間から空気が逃げることにより粘着剤層と被着体との間に空気が入り気泡や皺となって見た目が悪くなるということを効果的に回避しているという点が挙げられる。
【0004】
しかし、このパターン塗工の欠点として、基材状に粘着剤を全面塗布したものに比べて粘着剤の塗布面積率並びに塗布量が低下するため止着性能が低下してしまう事が挙げられる。
【0005】
そのため、粘着剤を基材に全面塗布しつつ、糊切れ性能を向上させる方法も開発されている。例えば、基材上に全面塗布された粘着剤層を凹凸を有するエンボス状とすることにより、粘着剤層の厚みの薄い部分において糊切れし易く構成しているものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、粘着製品に対して求められる性能は、粘着製品の用途によって大きく異なる。これまで、粘着剤を被着体に全く残さず且つ被写体を損傷せずに隔離させるという性能を満たす粘着製品も多く開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−271041号公報(例えば、表1、表2を参照)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「コクヨ 2005オフィスサプライズ編」、コクヨ株式会社、平成16年12月、p.674
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような被着体を損傷させないことを目的とする場合とは全く別の考え方として、例えば被着体を紙類とした場合、粘着製品或いは粘着剤を紙類から剥がそうとする剥離動作を行った際に、紙の表層を確実に損傷させることが要求される場合がある。
【0010】
具体的に例を挙げて説明すると、個人情報に関する書類等、重要な書類を封筒に入れて送付する場合、個人情報の保護や機密保持といったセキュリティ上の観点から、送付先の人物に当該封筒が第三者によって開封されたか否かを明確に識別できるように封緘する必要がある。詳細には、粘着剤層を剥がそうとすれば封筒の表面が損傷する様に封筒を止着・封緘することが絶対条件となる。加えて、ノートや日記帳、或いは出版物などの製本においても粘着製品を用いて各頁を綴じているが、製本後頁の入れ替えや挿入などの操作が不可能なものとすることが内容の偽造や捏造を防止するという観点から重要である。このような場合においても製本後頁と頁とが分離されたという痕跡を頁すなわち紙類に残しておけば偽造や捏造を防止し得るものとなる。
【0011】
以下本明細書において、このような紙類の表面を損傷した状態を紙破と記載する。また、粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し紙類が厚み方向に破断することを紙破現象と記載することとする。
【0012】
すなわち、粘着製品が被着体に止着された後に剥離動作によって剥がされたという痕跡を紙類に明確に残すための性能として、紙破という考え方を新たに挙げることができる。
【0013】
しかし、上述したような従来の粘着製品では強度に乏しい紙を紙破し得ることはあるものの、通常使用する種々の紙類を紙破することは想定しておらず、特に、重要な書類を保管する際に用いられるような上質紙や、上質紙よりもさらに表面強度が高い白封筒のような厚手の紙を確実に紙破し得るという視点に立って止着力を設定しているものではないため、上述のような重要な書類を封筒に入れて封緘する用途等には使用者が安心して使用できないのが現状である。
【0014】
加えて、通念上重要な書類を封緘する場合はその見た目についても、例えば止着・封緘箇所に皺や気泡が形成されることなく好適に仕上げるという考え方から、粘着製品には紙破させるに足る止着性能や糊切れ性能の他に、止着箇所に気泡や皺を形成し難いといった性能も要求される。
【0015】
そこで本発明は、このような不具合に着目したものであり、セキュリティ性を有効に維持しつつ糊切れ性能や止着箇所の仕上がりを良好なものとし得る粘着製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る粘着製品は、粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなる基材とを有し、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類と他の部材とを止着させ得る粘着製品であって、前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、前記粘着剤層を介して前記紙類と前記他の部材とを止着させた状態から前記紙類と前記他の部材とを剥離させる剥離動作を行った際に、前記紙類の表層部を前記粘着剤層の表面に付着させ前記紙類を厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする。
【0017】
ここで、粘着剤としてはアクリル系、ゴム系、シリコン系、ロジン系、ウレタン系等、種々のものを用いることができる。また、前記他の部材は粘着剤に止着し得るものであればよく、勿論前記紙類と同種のものであっても、前記紙類とは別の紙であっても、紙以外のものであってもよい。さらに、基材と粘着剤層とは止着されているか否かを問わない。具体的には、基材が粘着剤層に対して例えば剥離し得るように構成しているものとして、前記紙類及び前記他の部材とは別異の構成要素となっている感圧転写テープを挙げることができる。また、シールや粘着テープといったものは、本発明に係る粘着製品のなかで、基材であるテープ本体が粘着剤層に剥離不能に構成されているものに該当する。
【0018】
このようなものであれば、粘着剤層が紙類と他の部材との間に間欠的に配置されることにより、紙類と他の部材とを止着される際に粘着剤が存在しない箇所から余分な空気を含ませることなく好適に止着を行うことができる。そして剥離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、当該粘着製品が一旦は止着されたという痕跡を必然的に紙類に残すことができる。そしてこのような粘着製品を例えば封筒の封緘等に用いれば、見た目良く且つ正確に封筒を封緘し得るものとなるとともに、封筒が開封された痕跡を確実に残し得るセキュリティ性の高い封緘を行うことができる。また当該粘着製品を製本用途に使用すれば、製本後の偽造や捏造を有効に防止し得るものとなる。
【0019】
そして、本発明に係る粘着製品は紙類の中でも事務用途並びに出版用途等、広範に使用されている上質紙に対して紙破現象を起こし得るように構成しているものであれば望ましい。さらには上質紙よりも強度が高く一般に重要書類を保管或いは送付する際に用いられる白封筒に対して紙破現象を起こし得るように構成しているものであれば望ましい。
【0020】
本発明に係る粘着製品を構成する粘着製品としては上述の通り種々のものを用いることができるが、スクリーン印刷やグラビア印刷等の種々の方法で粘着剤を正確且つ効率的に塗工し得る粘着剤としては、アクリル系粘着剤を挙げることができる。
【0021】
そしてアクリル系粘着剤のなかでも製造工程や保管時に必要な耐熱性や耐候性に優れ、さらには凝集力、粘着力に優れたものとして、以下に示すアクリル系トリブロック共重合体を含むものが考えられる。具体的には、アクリル系トリブロック共重合体は、式A−B−Aまたは式A−B−C(式中、A、BおよびCはそれぞれ異なる重合体ブロックを表し、Aはメタクリル酸アルキルエステル単位からなり、Bはアクリル酸アルキルエステル単位からなり、Cはアクリル酸アルキルエステル単位またはメタクリル酸アルキルエステル単位からなる)で表されるトリブロック共重合体である。
【0022】
詳述すると、凝集力に優れた粘着剤層を得るため、均一性を向上させ、耐熱性および耐候性に優れた粘着剤組成物を得るという観点から、前記アクリル系トリブロック共重合体において重合体ブロックA、BおよびCのうち少なくとも1つは前記アクリル酸アルキルエステル単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単位からなることがより好ましく、重合体ブロックA、BおよびCの全てがアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステル単位からなることがさらに好ましく、特に重合体ブロックAがメタクリル酸アルキルエステルからなり、重合体ブロックBがアルキル酸アルキルエステルからなり、重合体ブロックCがメタクリル酸アルキルエステルまたはアクリル酸アルキルエステルからなることが好ましい。これらの特に好ましいアクリル系トリブロック共重合体の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリアクリル酸エチルなどの式A−B−AまたはA−B−Cの構造で示されるトリブロック共重合体を挙げることができる。これらのうち、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリメタクリル酸メチルの構造で示されるトリブロック共重合体であることがより望ましい。
【0023】
前記トリブロック共重合体中の重合体ブロックA、重合体ブロックBおよび重合体ブロックCの重量平均分子量は、必ずしも限定されないが、一般的にはそれぞれ3,000〜500,000の範囲であることが好ましく、3,000〜300,000の範囲であることが好ましい。またトリブロック共重合体全体の重量平均分子量は、必ずしも限定されないが、一般的には10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、30,000〜500,000の範囲であることがより好ましく、40,000〜200,000の範囲であることがさらに好ましい。
【0024】
前記アクリル系粘着剤は、上述したトリブロック共重合体のみからなっていてもよいが、所望に応じ適宜他の成分が配合されていてもよい。アクリル系粘着剤に任意に配合されていてもよい成分としては、特に制限されないが、上述したトリブロック共重合体との相容性がよく、均一性を向上させ、耐熱性および耐候性により優れた粘着剤を得るという観点から、アクリル系ジブロック共重合体、粘着付与剤などが挙げられる。
【0025】
アクリル系ジブロック共重合体について詳述すると、下記一般式(I)
X−Y (I)
(式中、Xは、炭素数が1〜4のアルキル基、または環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表し;Yは、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位および/または炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表す)で示され、重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)が1000〜8000であり、重合体ブロックXの質量と重合体ブロックYの質量との割合がX/Yの質量比において1/99〜10/90の範囲内であるジブロック共重合体を挙げることができる。
【0026】
また、前記重合体ブロックXが炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなり、かつ、重合体ブロックYが炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位から主としてなるジブロック共重合体であることが好ましい。
【0027】
すなわち、本発明において採用するジブロック共重合体は前記一般式(I)で示されるX−Y型のジブロック共重合体であり、一般式(I)中、Xは、炭素数が1〜4のアルキル基、または環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表し、またYは、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルおよび/または炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表すが、粘着性能という観点から、重合体ブロックXが炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなり、かつ、重合体ブロックYが炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる前記一般式(I)記載のジブロック共重合体であることが好ましい。
【0028】
前記重合体ブロックXにおいて、炭素数が1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等を挙げることができ、また、環構造を有するアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、イソボルニル基等を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよく、かかる置換基の例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等のアミノ基;塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子等を挙げることができる。
【0029】
前記炭素数が1〜4のアルキル基、または環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位を構成する単量体としては、必ずしも限られるものではないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸トリフルオロメチル等を挙げることができ、これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0030】
重合体ブロックXが、炭素数が5以上であり、環構造を有しないアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロックである場合には、重合体ブロックXのガラス転移温度(Tg)が低くなるため、粘着剤配合成分として用いる場合、凝集力、耐熱性を損なうため好ましくない。このため、重合体ブロックXのガラス転移温度(Tg)としては、+50℃以上であることが好ましく、+70℃以上であることがより好ましい。
【0031】
前記一般式(I)中のXで示される重合体ブロックは、前記メタクリル酸アルキルエステル単位のみを含有することができるが、本発明の効果を損なわない範囲の少割合(重合体ブロックXの総量に対して通常20質量%以下)であれば、炭素数が1〜4のアルキル基または環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位を含有することがでる。かかる他の単量体単位としては、例えば、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル等の炭素数が5以上のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸トリメチルシリルなどのアルキルエステル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸トリメチルシリルなどのアルキルエステル以外のアクリル酸エステル;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトンなどのモノマーに由来する構成成分を含有していてもよい。
【0032】
また、重合体ブロックYにおいて、前記炭素数が1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソノニル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基等を挙げることができる。また、炭素数が5〜20のアルキル基としては、例えば、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ステアリル基等を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよく、かかる置換基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等のアミノ基;塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子等を挙げることができる。
【0033】
前記炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位を構成する単量体としては、必ずしも限られるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル等を挙げることができ、これらは1種または2種以上で使用することができる。また、前記炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位を構成する単量体としては、必ずしも限られるものではないが、例えば、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−メトキシペンチル、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)ペンチル、メタクリル酸パ−フルオロペンチル、メタクリル酸2−トリメトキシシリルペンチル等を挙げることができ、これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0034】
重合体ブロックYが、炭素数が1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位からなる重合体ブロックである場合には、重合体ブロックYのガラス転移温度(Tg)が高くなるため、粘着剤配合成分として用いる場合、硬質化して粘着力が低下してしまうため好ましくない。このため、重合体ブロックYのガラス転移温度(Tg)としては、+50℃未満であることが好ましく、+10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましい。
【0035】
前記一般式(I)中のYで示される重合体ブロックは、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルおよび/または炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位のみを含有することができるが、本発明の効果を損なわない範囲の少割合(重合体ブロックYの総量に対して20質量%以下)であれば、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルおよび/または炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位を含有することができる。かかる単量体単位としては、例えば、炭素数が21以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数が1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル;炭素数が21以上のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸トリメチルシリルなどのアルキルエステル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸トリメチルシリルなどのアルキルエステル以外のアクリル酸エステル;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマ−;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトンなどのモノマーに由来する構成成分を含有していてもよい。
【0036】
前記一般式(I)で示されるジブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、分子側鎖中または分子主鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、トリメトキシシリル基などの官能基を有していてもよい。
【0037】
上述のようなX−Yで示されるジブロック共重合体は、「硬質ブロック」と「軟質ブロック」とからなるものであるが、例えば100℃以上の温度域で流動性を有する液体状であるものが、取扱い性が非常に良好であり、そのような観点から、前記一般式(I)を満足するジブロック共重合体中、重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)は1,000〜8,000であることが必要であり、粘着物性に優れた粘着剤組成物を得るという観点から、2,000〜6,000であることが好ましく、3,000〜5,000であることがより好ましい。重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)が8,000より大きい場合には、得られるジブロック共重合体は、餅状の形態となるため製造上の取扱い性が低下したり、トリブロック共重合体などの他成分との配合工程において取扱い性が悪化するため好ましくない。またジブロック共重合体を含有する組成物の溶融時の粘度が高くなるため、粘着剤組成物として用いる上でも好ましくない。一方、重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)が1,000より小さい場合には、凝集力が大きく低下するため、粘着剤の配合成分として用いるのに好ましくない。
【0038】
また、前記一般式(I)で示されるジブロック共重合体では、重合体ブロックの総質量を基準とした場合におけるXで示される重合体ブロックの総質量の割合が小さすぎると、得られるブロック共重合体の凝集力が小さくなり、粘着剤組成物として用いる場合、得られる粘着剤組成物は保持力(せん断クリープ強度)等の粘着特性が低下する傾向がある。逆にXで示される重合体ブロックの総質量の割合が大きすぎると、粘着剤組成物として用いた場合、得られるブロック共重合体は粘着特性(特に粘着力)が不足気味となる傾向がある。これらの点から、本発明のジブロック共重合体中に含まれる重合体ブロックXの質量と重合体ブロックYの質量との割合は、X/Yの質量比において1/99〜10/90の範囲内であることが必要であり、好ましくは5/95〜10/90の範囲内である。
【0039】
また、前記ジブロック共重合体において、粘着剤配合成分として用いた場合に凝集力に優れたものとする観点から、重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.5以下であることが好ましく、1.01〜1.3であることがより好ましい。
【0040】
さらに、タック、粘着力、保持力などの向上・調節を容易なものとするため、前記アクリル系粘着剤が、粘着付与剤を含むものであることが好ましい。配合可能な粘着付与剤としては、特に限定されないが、例えば、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステルなどのロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどを主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂、クマロン−インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等を挙げることができ、これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0041】
なお、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体および粘着付与剤の配合比は、粘着製品の具体的な用途、被着体の種類などに応じて適宜選択することができ特に制限されないが、凝集力、粘着力に優れ、また、塗工性が良好となる点から、ジブロック共重合体100質量部に対し、他の重合体が10〜10,000質量部、粘着付与剤が0〜10,000質量部であることが好ましく、ジブロック共重合体100質量部に対し、他の重合体が10〜5,000質量部、粘着付与剤は0〜5,000質量部であることがより好ましい。
【0042】
そして、本発明に係る粘着製品を製造する過程において、上述したアクリル系粘着剤を基材上へ塗工する上述した種々の印刷方法のうち、何れの方法を採用するにせよ、紙破現象を起こし得るように構成しつつ粘着剤を基材に、より正確且つ効率的に塗工するためには、粘着剤層の厚み寸法を10〜100μmに設定することが好ましい。ここで、厚み寸法が10μm以下であると基材に確実に塗工し難いものとなり、厚み寸法が100μm以上となると、粘着剤の塗布量が嵩んでしまいコストが高いものとなってしまうか場合によっては粘着剤の凝集力が低下することによって剥離動作の際に粘着剤が凝集破壊を起こして紙破し得ないものとなってしまう。そして、上述した塗布の容易性並びに製造コストを考慮すると、好ましい厚み寸法としては15〜80μmに、最も好ましい厚み寸法としては30〜60μmに設定することが望ましい。
【0043】
また、紙破現象を起こしつつ糊切れ性能を良好なものとするためには、前記粘着剤層を前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものとし、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を18〜94%に設定することが望ましい。ここで、塗布面積率が18%以下であると紙類を止着する力が弱まり、紙破現象を起こすことができず例えば界面剥離を起こしてしまうものとなり、塗布面積率が94%以上であると空隙部を介して離間している粘着剤部同士が互いに接しやすくなり、十分な糊切れ性能が得られないものとなってしまう。そして、上述した止着力並びに糊切れ性能をさらに考慮すると、好ましい塗布面積率としては53〜75%に設定することがより望ましい。
【0044】
そして粘着製品を使用する際に紙類と粘着剤層との間に皺や気泡が形成されてしまうことを有効に回避するためには、空隙部を前記粘着剤層の略全面に亘って当該粘着剤層の側面に開放するように構成することが望ましい。また、粘着剤層の厚みを均一化し且つ粘着剤層を紙類或いは他の部材に対して押圧する際の応力を集中させ、好適に止着させるためには、粘着剤部を複数の粘着剤ブロックを有するものとし、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05〜75平方ミリとすれば望ましい。ここで、粘着剤ブロックの面積が0.05平方ミリ以下であると基材上に設けることが困難となり、75平方ミリ以上であると、例えば巾寸法25mm以下の帯状に調節されて使用される殆どの粘着製品にとって長手方向に3mm以上連続して塗布されるものとなり、使用時の糊切れ性能が著しく劣るものとなってしまう。そして、望ましく設けた粘着剤ブロックの具体例として、粘着剤ブロックを格子形状としたものや、円形状のドット状としたもの等、種々の形状を設定することができる。
【0045】
特に、基材が前記粘着剤層に対して剥離可能に設けられたものとした場合、粘着剤層を紙類と他の部材とに介在させて止着する一連の動作において、まず粘着剤層が基材に支持された状態で紙類又は他方の部材のうち何れか一方に対して押圧する1回目の止着動作を行った後、基材を粘着剤層から剥離させて当該粘着剤層を他方に対して押圧する2回目の止着動作を行うが、この2回目の止着動作によって既に1回目の止着動作によって止着された側と粘着剤層とが再び押圧されることとなる。そのため通常は1回目の止着動作によって止着される側と粘着剤層とが強く止着されることとなる。そこで、粘着剤部の形状を、当該粘着剤部が基材に支持される底面の面積を頂面の面積よりも広く設定した形状とすれば、2回目の止着動作で止着される底面の面積をより広く設定したものとなり、止着面積をより広く設定して止着力を向上させ、ひいては粘着剤層全体の止着力を向上させることができる。また、粘着剤層において粘着剤部の底面の面積を広く設定するように確実に塗布するためには、アクリル系粘着剤が、加熱下に容易に溶融して高い流動性を有するとともに、塗工後の収縮が少なく正確な塗工を実現し得るホットメルト型粘着剤としての特性を有することが望ましい。
【0046】
そして、本発明に係る粘着製品は、前記基材をシール本体或いは粘着テープ本体として、粘着剤層を剥離不能に設けることによりシールや粘着テープ等として使用することが望ましい。
【0047】
特に、本発明に係る粘着製品は、基材に対して粘着剤層を剥離可能に設けることにより、感圧転写粘着テープ等として好適に使用することができる。ここで、粘着剤層を剥離可能に設けるためには、基材として例えばポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチックフィルム、グラシン紙等の紙、金属箔等を採用したものを挙げることができる。また、剥離効果を有さないものの表面に剥離効果を付与するためシリコン樹脂やフッ素樹脂等からなる剥離層を設けた基材を採用してもよい。そして、上述の感圧転写粘着テープを、転写具に採用することにより使用者にとって好適に使用し得るものとすることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、粘着剤層を基材上に間欠的に配置することにより、粘着剤層を紙類或いは他の部材へ、所望の箇所のみ止着させる際の糊切れ性能を向上させるのみならず、粘着剤層が紙類と他の部材との間に間欠的に配置されることにより、紙類と他の部材とを止着する際に粘着剤が存在しない箇所から余分な空気を含ませることなく好適に止着を行うことができる。そして剥離動作により粘着剤が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって紙類が厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、当該粘着製品が止着された痕跡を必然的に紙類に残すことができる。そしてこのような粘着製品を封筒の封緘等に用いれば、見た目良く且つ正確に封筒を封緘し得るものとなるとともに、封筒が開封された痕跡を確実に残し得るセキュリティ性の高い封緘を行うことができる。また当該粘着製品を製本用途に使用すれば、製本後頁と頁とが分離されたという痕跡を頁すなわち紙類に必然的に残し得るものとなるため、製本後の偽造や捏造を有効に発見し得るか或いは未然に防止し得るものとなる。
【0049】
そして当該粘着製品を具備する転写具であれば、使用者にとって信頼性の高い粘着性品並びに当該粘着製品を具備するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る転写具の外観図。
【図2】同実施形態に係る転写具の構成を示す平面図。
【図3】同実施形態に係る感圧転写テープの構成を模式的に示す図。
【図4】同上。
【図5】同実施形態に係る動作説明図。
【図6】同実施形態に係る粘着剤の塗工パターンを示す平面図。
【図7】同上。
【図8】同上。
【図9】同上。
【図10】同実施形態に係る粘着剤の構成を模式的に示す図。
【図11】同実施形態の変形例に係る粘着製品を示す外観図。
【図12】本発明の一実施例に係る実物剥離試験の評価基準を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の一実施の形態に係る粘着製品たる感圧転写テープ1を具備する転写具Aについて図面を参照して説明する。
【0052】
この転写具Aは、図1及び図2に示すように、感圧転写テープ1を収納するカートリッジCと、カートリッジCを装着し、感圧転写テープ1を好適に送出し得る転写具本体A1と、後述する粘着剤100を白封筒に転写する際に転写具本体A1との間に白封筒Fを把持し得るアームA2とを具備しているものである。そして図1は、転写具本体A1とアームA2とによって白封筒Fの折返し片F1を把持しながら、例えば白封筒Fをスライド移動させることにより、後述する基材たるフィルム12の表面上にドット形状に塗布された後述する粘着剤100を折返し片F1の端辺に沿って転写している状況を示している。なお、粘着剤100が折返し片F1に押圧転写された後は、折返し片F1を白封筒Fの開口端を介して折返し、粘着剤100が折返し片F1と破線で示す開口端付近F2との間に介在した状態でさらに押圧することによって折返し片F1と開口端付近F2とが止着され、白封筒Fが確実に封緘された状態となる。
【0053】
ここで、転写具Aに装着されている本実施形態に係る粘着製品たる感圧転写テープ1は、粘着剤100を有する後述する粘着剤層10を介して紙類と他の部材たる折返し片F1と開口端付近F2とを止着させた状態から折返し片F1と開口端付近F2とを剥離させる剥離動作を行った際に、紙類たる折返し片F1と開口端付近F2の何れか一方の表層部を前記粘着剤層の表面に付着させ前記一方を厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とするものである。また白封筒Fは、通常事務用途において使用されている上質紙P(図示せず)よりも表面強度が優れているものであるため、感圧転写テープ1は勿論上質紙P(図示せず)に対しても確実に紙破現象を起こし得るものである。
【0054】
以下、感圧転写テープ1の具体的な構造並びに構成について転写具Aの構造を踏まえて詳述する。
【0055】
転写具Aにおいては図2に示すように、転写具本体A1とカートリッジCは概ね半割構造をなしており、カートリッジCの一部が露出することによってカートリッジCのみを好適に取り替え得る構造となっている。すなわち、カートリッジCは、消耗部品である感圧転写テープ1と、送出機構部品の一部である巻き出しスプールSP1、巻き取りスプールSP2、転写ヘッドH等を交換部品として、当該詰め替えカートリッジCに付帯させた状態で新品と交換するようにしている。なお転写具本体A1は、送出機構部品の一部である非交換部品を保持している。
【0056】
感圧転写テープ1は、図3及び図4に示すように、後に詳述するアクリル系粘着剤たる粘着剤100を有してなる粘着剤層10と、粘着剤10を支持してなる基材たるフィルム12とを有し、前記粘着剤層10をフィルム12の表面に粘着剤100を間欠的に配置してなるものとしている。そして、図3はフィルム12の表面上に図1並びに図6に対応した例えば直径1.5mmの平面視円形状のドットたる後述するドットブロック110によって構成される「ドット」パターンに塗工した態様を模式的に示し、図4は図7に対応した例えば1辺が1.3mmの平面視正方形の後述する格子ブロック111によって構成される「格子」パターンに塗工した態様を模式的に示している。なお、フィルム12上に塗工し得る他のパターンについては後に詳述する(図6、図7、図8及び図9)。
【0057】
フィルム12は、本実施形態において例えば粘着剤100に対して剥離可能なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなるものであるが、当該ポリエチレンテレフタレートに限定されるものではなく、アクリル系粘着剤たる粘着剤100に対して剥離し得るものであればよい。なお、アクリル系粘着剤に対して剥離性を有するものとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチックフィルム、グラシン紙等の紙、金属箔等を挙げることができる。また、剥離効果を有さないものの表面に剥離効果を付与するためシリコン樹脂やフッ素樹脂等からなる剥離層を設けたものを挙げることができる。
【0058】
粘着剤層10は、紙破現象を起こすに足る止着力を有しつつ本発明に係る紙類及び他の部材すなわち本実施形態に係る折返し片F1と開口部近傍F2との間に皺や気泡を形成することを有効に回避するため、フィルム12の表面上に粘着剤100を間欠的に配置することによって構成されている。詳細には、粘着剤100からなる粘着剤部11と、当該粘着剤部11の間に介在する空隙部13とを構成するように、フィルム12の表面上に粘着剤100をパターン塗工してなるものである。本実施形態において、フィルム12の表面上に塗工される粘着剤層10の厚みを30μmに設定している。また、当該厚み寸法において、粘着剤部11が占有する塗布面積率を53〜75%に設定している。そして、粘着剤層の厚み寸法は例えば60μmに設定したものであっても同様の特性を示すものとすることができる。なお、フィルム12の表面上に図3、図4のようにパターン塗工を施す方法としては、スクリーン印刷やグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷やグラビア印刷等の既存の印刷方法を用いることができる。
【0059】
粘着剤部11は、図3においては円形状の粘着剤ブロックたるドットブロック110から、図4においては格子形状の粘着剤ブロックたる格子ブロック111から構成している。また粘着剤部11において、フィルム12に接している側の面を底面11aとし、白封筒Fの折返し片F1に接する側の面を頂面11bと設定している。そして、個々のドットブロック110、格子ブロック111の底面110a、111aの面積を頂面110b、111bの面積よりも大きく設定することにより、粘着剤部11の底面11aの面積を頂面11bの面積よりも広く設定している。
【0060】
ドットブロック110、格子ブロック111についてそれぞれ詳述すると、図3に示すドットブロック110は底面110aの面積を例えば0.05〜9平方ミリの平面視形状に設定することにより、止着箇所に凹凸が形成されることを有効に回避しつつ押厚時に好適に応力集中させて均等に粘着剤層10を押圧し得るようにしている。また、図4に示す格子ブロック111は、感圧転写テープ1が実際に転写される方向、即ち、フィルム12の長手方向に対して傾斜する方向に、底面111a並びに頂面111bを構成する各辺が延びるように構成することにより、個々の格子ブロック111が斜め方向から剥離され、好適に転写され得るように構成しているものである。
【0061】
空隙部13は、図3及び図4に示すように、各粘着剤ブロックたるドットブロック110、格子ブロック111の間に介在する空間を示しており、同図に示すように、粘着剤層10の略全面に亘って当該粘着剤層10の側面に開放するように空隙部13を構成している。言い換えれば、粘着剤層10の略全面を側面に対して連通させて構成している。
【0062】
ここで、本実施形態に係る感圧転写テープ1において、上述の通り粘着剤部11の底面11aの面積を頂面11bの面積よりも大きく設定することにより、粘着剤層10の止着力を向上させたものとしている。以下、感圧転写テープ1を転写する過程を図5に模式的に示しながら具体的に説明する。図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、転写具Aを用いて白封筒Fの折返し片F1の端辺に沿って粘着剤100を転写し、白封筒Fを封緘する一連の過程を示している。詳述すると、転写具Aによって粘着剤100を転写する際、折返し片F1に粘着剤100が転写されるとともにドットブロック110の頂面110bが折返し片F1に付着した状態で転写ヘッドHにより押圧される1回目の押圧動作が行われる(図5(a))。そして頂面110bが折返し片F1に付着した状態で折り返されて(図5(b))、図示下側に位置する開口部近傍F2と底面110aが接し、例えば図示上側から2回目の押圧動作がなされる(図5(c))。このとき、既に折返し片F1に付着していた頂面110bは再び押圧されることによりさらに確実に折返し片F1に付着するとともに、各ドットブロック110が圧縮されることにより空隙部13の体積が減少するが空隙部13は粘着剤層10の側面に対して開放されて構成しているため、圧縮された空隙部13に存在する空気は粘着剤層10の側方から流れ出すことにより、当該空気が粘着剤層10と折返し片F1或いは開口部近傍F2との間に残され気泡や皺が形成させることを有効に回避している。そして、ドットブロック110の底面110aは、この一連の動作によって1回しか押圧されないこととなるが、上述の通り底面110aの面積を頂面110bの面積より大きく設定することにより、予め底面110aすなわち粘着剤部11の底面11a側の止着力が大きくなるように設定しているため、粘着剤部11の底面11a側と頂面11b側とが折返し片F1並びに開口部近傍F2にバランス良く止着し、折返し片F1と開口部近傍F2とを確実に止着し得るものとなっている。なお、図5においてドットブロック110を図示して説明したが勿論、格子ブロック111についても同様の効果を奏し得るものとなっている。
【0063】
そして、このように確実に折返し片F1と開口部近傍F2とを止着し得るアクリル系粘着剤たる粘着剤100をフィルム12の表面上に塗工する塗工パターンを図6、図7、図8及び図9に挙げる。なお同図に挙げる各パターンについて、枠線を除いて黒色で示した部分を粘着剤部11とし、白色となっている箇所を空隙部13とする。そして、図示上下方向から上下方向が感圧転写テープ1の長手方向すなわち転写具Aによって転写される方向とする。なお、以下に示す塗工パターンにおける塗布面積率は18〜94%である。
【0064】
図6は、図1並びに図3に示した直径1.5mmの円形状のドットからなる「ドット」パターンのほか、当該「ドット」パターンと同様の作用を示す直径1mmの円形状ドットからなる「ドット細」、直径2mmの円形状ドットからなる「ドットφ2」及び直径2mmの円形状のドットの周囲を例えば面積0.017平方ミリの微細なドットで覆う「ドットφ2+メッシュ」パターンを示している。これらのパターンは塗布面積率を高く設定しているにも拘わらず高い糊切れ性を実現し得るものである。
【0065】
図7は、図4に示した「格子」パターンのほか、各粘着剤ブロックの成す角度が異なる一辺が1.3mmの菱形のドットが0.3mm間隔に整列した「平格子」パターンを示している。これらのパターンは各粘着剤部11がフィルム12から良好に剥離され得る特性を有している。
【0066】
図8は、格子パターンの変形パターンとして、巾2mmのイチョウ型ドットからなる「イチョウ」、寸法1×1.7mmの長方形が0.3mm間隔に整列した「レンガ」、対向辺の寸法が1mmの正六角形からなる「細六角」パターンを示している。このように格子パターンに変形を加えることにより高い意匠性を有するパターンを構成することも可能である。なお、「レンガ」、「細六角」パターンは格子ブロック111を小さく設定することにより上述の「ドット」パターンのように高い糊切れ性能を実現している。
【0067】
図9では、「ドット」パターン及び「格子」パターンの特性を併せ持つように粘着剤部11を構成する主たる粘着剤ブロック当たりの面積を本実施形態において最小限である0.05平方ミリに設定し、各粘着剤ブロックを格子状に近い形状に配列させた「タイヤ」パターン、そして粘着剤部11を構成する各粘着剤ブロック当たりの面積を最大限に設定した「大波」パターン及び「横スジ」パターンを示している。ここで、「大波」パターン及び「横スジ」パターンにおける転写具Aによって転写される方向すなわち図示縦方向における粘着剤ブロックの寸法を2mm、としそれぞれ1mm間隔に設定しており、「横スジ」に至っては同寸法を3mmとし、それぞれ0.2mm間隔に設定している。そのため、例えば感圧転写テープ1の巾寸法を例えば25mmに設定した場合の各粘着剤ブロックの底面の面積は75平方ミリとなる(表4(後述))が、勿論、本実施形態は感圧転写テープ1の巾寸法を限定するものではない。
【0068】
続いて、本実施形態において粘着剤100として採用しているアクリル系粘着剤の組成について図10(a)、図10(b)及び図10(c)に模式的に図示して説明する。
【0069】
粘着剤100は、図10(a)に模式的に示すように、ジブロック共重合体101:100重量部と、トリブロック共重合体102:100重量部と、第一粘着付与剤103:40〜60重量部と、第二粘着付与剤104:200重量部とを混合したホットメルト系の粘着剤である。
【0070】
ジブロック共重合体101は、図10(b)に示すように、例えば炭素数1〜5のアルキル基又は環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸エステルを重合させてなる硬質ブロック101aと、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル又は炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを重合させてなる軟質ブロック101bとを重合させてなるアクリル系ジブロック共重合体であるが、本実施形態においてはクラレ社製LAポリマー#1114を採用している。
【0071】
トリブロック共重合体102は、図10(c)に示すように、軟質ブロック102bの両端に硬質ブロック102aをそれぞれ重合させたものである。硬質ブロック102aはメタクリル酸アルキルエステルを重合させてなるものであり、軟質ブロック102bはアクリル酸アルキルエステルを重合させてなるものである。そして、本実施形態においてはクラレ社製LAポリマー#2140を採用している。
【0072】
第一粘着付与剤103及び第二粘着付与剤104としては例えば、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステルなどのロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどを主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂、クマロン−インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等を挙げることができ、これらは1種または2種以上でも使用することができる。本実施形態において、第一粘着付与剤103としてはアクリル系粘着付与剤である東亜合成社製アルフォンUP−1000を採用している。また、第二粘着付与剤としてはロジンエステル系粘着付与剤である荒川化学社製スーパーエステルA115を採用している。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る粘着製品たる感圧転写テープ1は、基材たるフィルム12の表面に粘着剤100を間欠的に配置してなる所謂パターン塗工を施すことにより粘着剤層10を構成しているため、折返し片F1へ粘着剤層10を転写する際の糊切れ性能を向上させているのみならず、白封筒Fに対して皺や気泡を形成せず好適に止着・封緘を行うことができる。そして剥離動作を行った際に白封筒Fの表層部を粘着剤層10の表面に付着させ白封筒Fを厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成しているため、剥離動作により粘着剤100が紙類から剥がされた際には紙破現象が起こることによって白封筒Fが厚み方向に破断された修復不可能な状態となるため、感圧転写テープ1によって白封筒Fが一旦は止着されたという痕跡を必然的に白封筒Fに残すことができる。すなわち、見た目にも良く且つ正確に白封筒Fを封緘して、セキュリティ性の高い封緘を行い得るものとすることができる。勿論、本実施形態に用いた白封筒Fは、一般に事務用として広範に使用される上質紙よりも表面強度が高いものであるため上質紙P(図示せず)に対しても好適に紙破現象を行い得るものとすることができる。
【0074】
勿論、粘着剤100としては種々のものを用いることができるが、当該粘着製品たる感圧転写テープ1の製造工程において粘着剤層10をフィルム12上に塗工する方法として、スクリーン印刷やグラビア印刷等の一般的な印刷方法を採用することを考えると、紙破現象を確実に起こし得るのみならず、正確且つ効率的な塗工を可能にするために、粘着剤100にアクリル系粘着剤を採用している。
【0075】
アクリル系粘着剤の具体的な構成として、クラレ社製LAポリマー#1114:100重量部と、クラレ社製LAポリマー#2140:100重量部と、東亜合成社製アルフォンUP−1000:40〜60重量部と、荒川化学社製スーパーエステルA115:200重量部とを混合したアクリル系粘着剤を採用しており、製造工程において上述した一般的な印刷方法によって好適にフィルム12上に粘着剤100を塗工し得るホットメルト型粘着剤としての特性も有している。
【0076】
そして上述のようなアクリル系粘着剤を採用することにより粘着剤100を塗工することによる粘着剤層10の厚み寸法を30〜60μmとしているが、15〜80μmであれば好適に塗工することができ、白封筒Fを紙破するための厚み寸法としては10〜100μmであればよい。
【0077】
そして、粘着剤100を間欠的に塗工することによって粘着剤部11と空隙部13とが形成されるが、フィルム12の表面積に対する粘着剤部11が占める塗布面積率を53〜75%に設定すれば、感圧転写テープ1は紙破現象を実現しつつ糊切れ性能の高いものとなるが、紙破し得る止着力と糊切れ性能を担保するための塗布面積率として、18〜94%に設定することができる。
【0078】
また空隙部13を粘着剤層10の略全面に亘って当該粘着剤層10の側面に開放するように、言い換えれば空隙部13が粘着剤層10の側方に連通するように構成しているため、粘着剤層10と白封筒Fとの間に気泡や皺が構成されることをより有効に回避し得るものとなっている。
【0079】
粘着剤部11の具体的な構成として複数の粘着剤ブロックたるドットブロック110並びに格子ブロック111を有するものとし、フィルム12の表面に占める占有面積を感圧転写テープ1の巾寸法を25mmとした場合、それぞれ0.05〜75平方ミリに設定している塗工パターンを採用することにより、止着箇所に粘着剤層10による凹凸が形成されることを有効に回避しつつ好適に応力集中させて確実に白封筒Fを止着し得るものとしている。
【0080】
また、本実施形態に係る感圧転写テープ1において、粘着剤部11を構成する粘着剤ブロックたるドットブロック110並びに格子ブロック111の形状を、底面110a、111aの面積を頂面110b、111bの面積よりも広く設定した形状としているため、粘着剤層10によって白封筒Fを止着する一連の動作において、通常は1回目の止着動作によって止着される側すなわち折返し片F1と粘着剤層10とが強く止着されることとなるが、2回目の止着動作で止着される底面110a、111aの面積をより広く設定したものとすれば底面110a、111aと開口部近傍F2との止着力を向上させ、ひいては粘着製品たる感圧転写テープ1の止着力を向上させることができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0082】
例えば上記実施形態においては基材たるフィルム12は粘着剤層10に対して剥離し得るように構成することにより、本発明に係る先着製品を感圧転写テープ1として転写具Aに用い得る構成としていたが、粘着剤層に対して基材を剥離不能に設けたものであってもよい。
【0083】
すなわち、基材が本発明に係る他の部材を兼ねることにより、本発明の粘着製品を例えば図11(a)に示すシール2や同図(c)に示す粘着テープ3として利用することも可能である。
【0084】
詳述すると、図11(a)は基材たるシール本体22の裏面に粘着剤層20を剥離不能に設けたシール2を示している。そしてシール2は通常粘着剤層20に対して剥離可能に構成されるシール台紙Dに支持されており、使用する際にはシール台紙Dからシール2を剥離させて使用するものである。そして、粘着剤層20は複数のドットブロック210からなる粘着剤部21と空隙部23とによって構成されているため上記実施形態と同様、止着箇所に気泡や皺を形成し難いものとなっている。そして、シール2は台紙Dから剥離する際、周辺部22aの裏面に配置された粘着剤層21とシール本体22の裏面に配置された粘着剤層とを好適に離間させ得ることにより、糊切れ性能の高いシール2とすることができる。
【0085】
また、粘着テープ3は、例えば事務用途や製本用途に好適に使用し得るものである。当該粘着テープ3についても粘着剤層30によって、上述したように止着箇所に皺や気泡を形成し難いものとなるとともに、所望の長さのみ粘着テープ本体32を裁断する際の糊切れ性能が高いものとなる。このようなものであれば、粘着テープ3を製本用途に採用した場合、製本後の頁の入れ替え等の偽造や捏造が行われた場合に、頁を紙破することによってその痕跡を確実に残し得るものとなるため、当該偽造や捏造を有効に発見或いは未然に防ぐことができる。
【0086】
その他、各部の具体的構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【実施例】
【0087】
続いて、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0088】
1:パターン塗工適性試験
まず本発明の実施例及び比較例に係る粘着剤を用いてグラビア印刷或いはスクリーン印刷によるパターン塗工適性を調査した。以下、実施例及び比較例について説明する。
実施例1、2
上記実施形態において示したアクリル系粘着剤のうち、クラレ社製LAポリマー#2140:100重量部と、東亜合成社製アルフォンUP−1000:50重量部と、クラレ社製LAポリマー#1114:100重量部と、荒川化学社製スーパーエステルA115:200重量部とを混合したアクリル系粘着剤を採用した。そしてスクリーン印刷及びグラビア印刷によるパターン塗工によって製造された感圧転写テープをそれぞれ実施例1及び実施例2とした。
比較例1
粘着剤としてSIS(新田ゼラチン株式会社製 H2155−01)を用い、グラビア印刷によるパターン塗工によって製造された感圧転写テープを比較例1とした。
比較例2〜5
粘着剤としてアクリル系エマルジョン型粘着剤(サイデン化学株式会社製 サイビノール AT−21)、アクリル溶剤系粘着剤(綜研化学株式会社製 SKダイン701)、SIS粘着剤(比較例1と同様のSIS系粘着剤35重量部をトルエン65重量部に溶解させたもの、塗工後に乾燥・製膜)並びにUVシロップ(帝国インキ製造株式会社製 UV TAC−00326)を用い、スクリーン印刷によるパターン塗工によって製造された感圧転写テープをそれぞれ比較例2、比較例3、比較例4並びに比較例5とした。
【0089】
<試験方法>
以上に示した粘着剤並びに印刷方法により、粘着剤の塗布厚30μm及び60μm、塗布面積率が約63%である「ドット」パターン(図6)に塗工し、塗工後の仕上がりを目視によって判断した。なお、グラビア印刷及びスクリーン印刷の詳細については既存の方法を採用しているため詳細な説明は省略するものとする。
【0090】
<試験結果>
パターン塗工適性試験の結果を表1に示す。同表に示すように、アクリル系粘着剤を用いた実施例ではスクリーン印刷及びグラビア印刷を問わず、実施例1及び実施例2についてパターン塗工適性が認められた。また、比較例についても、比較例1、比較例2、比較例5についてパターン塗工適性が認められた。そして、上記各実施例並びに比較例について、粘着剤の塗布厚を30μmで上記試験を行ったものについても、塗布厚を60μmに設定して上記試験を行ったものについても、結果に差異が表れることなく表1と同じ結果を示した。
【0091】
【表1】

2:実物剥離試験
次に、上述のパターン塗工適性試験によってパターン塗工適性が認められた実施例及び比較例に係る感圧転写テープに加え、現在市販されている転写具に採用されている感圧転写テープを用いて比較例6〜12とし、紙類に対する剥離試験、すなわち紙類に対する紙破現象の有無を調査した。以下、比較例6〜12について説明する。
比較例6
ヘルマ社製転写具(商品名:HERMA Transfer Permanent Glue Dispenser)に装着されている感圧転写テープを用いた。なお、当該感圧転写テープは基材に対してパターン塗工がされているものである。
比較例7、8
トンボ社製転写具(商品名:テープのり ピットテープMS12)に装着されている感圧転写テープを用いた。ここで、当該感圧転写テープは基材に対して粘着剤が粘面塗布されているものであり、全面塗布された状態で供試したものを比較例7とした。また、上記パターン塗工適性試験に採用された塗工パターンにおける粘着剤の配置と略同様の部位に位置する粘着剤のみが粘着力を示すように粘着剤層を部分的に不活性化させた(以下、部分不活化と記す)ものを比較例8とした。
比較例9、10
プラス社製転写具(商品名:テープのり テープグルーR 強粘着タイプ TG−210)に装着されている感圧転写テープを用いた。ここで、当該感圧転写テープは基材に対して粘着剤が粘面塗布されているものであり、全面塗布された状態で供試したものを比較例9とした。また、当該比較例9に部分不活化処理を施したものを比較例10とした。
比較例11、12
コクヨ株式会社製転写具(商品名:プリットローラー タ−M460)に装着されている感圧転写テープを用いた。ここで、当該感圧転写テープは基材に対して粘着剤が粘面塗布されているものであり、全面塗布された状態で供試したものを比較例11とした。また、当該比較例11に部分不活化処理を施したものを比較例12とした。
【0092】
<試験方法>
上述した実施例及び比較例をまずステンレス板に転写した後、基材を剥離させ、この状態において比較例8、10、12に対して部分不活化処理を施した。
部分不活化処理後、各実施例及び比較例に対し市販の白封筒(商品名:オキナ株式会社製ホワイト封筒WP2270(角形2号A4判))を短冊状に裁断した紙片を貼り付け、さらに10mm/sの速度で1Kgローラを1往復させ、40分後に0.8mm/sの速さで180°の方向に紙片を引っ張ることにより剥離動作を行った。そして結果の評価は、「紙破」:粘着剤層の表面に紙片の表層部分を付着させて剥離(図12(a))、「界面剥離」:粘着剤層と紙片との界面において剥離(同図(b))、「凝集剥離」:粘着剤が紙類とステンレス板との両方に付着した状態で剥離(同図(c))、「ナキワカレ」粘着剤層が紙類とステンレス板との両方に付着した状態で剥離(同図(d))、の何れかに分類して行った。
【0093】
<試験結果>
【0094】
【表2】

実物剥離試験の結果を表2に示す。同表に示すように、実施例1及び実施例2並びに比較例8のみが白封筒からなる紙片を紙破し得るものであった。しかし、比較例8に部分不活化処理を施した比較例9については紙破を示さなかったため、パターン塗工を施したものの中で紙破し得る特性を示したものは実施例1及び実施例2のみであった。なお、紙破を示さなかったものについては何れも界面剥離を示した。そして、実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2、比較例5について、粘着剤の塗布厚を30μmで上記試験を行ったものについても、塗布厚を60μmに設定して上記試験を行ったものについても、結果に差異が表れることなく表2と同じ結果を示した。
【0095】
3:紙破可能塗布厚測定試験
上述の実施例1及び実施例2に用いた粘着剤を上記実施形態に示した各塗工パターンにおいて紙破現象を起こし得る塗布厚の範囲を調査した。
【0096】
<試験方法>
上述した実施例1及び実施例2に用いた粘着剤を図6、図7、図8及び図9に示した塗工パターンである「ドット」、「ドットφ2」、「ドットφ2+メッシュ」、「格子」、「平格子」、「イチョウ」、「レンガ」、「細六角」、「タイヤ」及び「大波」パターンで種々の厚み寸法に塗工したものをそれぞれ上記実物剥離試験と同様の試験方法により剥離試験を行い、各塗工パターンについて、紙破(図12(a))を示した厚み寸法の上限並びに下限を図3に示した。
【0097】
<試験結果>
【0098】
【表3】

表3に示すように、「タイヤ」パターンで14.8μmの厚み寸法で粘着剤を塗布したものにおいて紙破現象を示した一方で、「レンガ」パターンでは79.9μmの厚み寸法においても紙破を示した。よって、本実施例において、粘着剤層が15〜80μmの範囲で塗布されたものについては白封筒を紙破し得るということが表3から示すことができる。加えて、表3に示した以外の塗工パターンについては、実施例1及び実施例2に示した粘着剤を用いれば、他の塗工パターンについて、10〜100μm程度の厚み寸法の範囲において白封筒を紙破し得る粘着製品を構成し得るものと考えられる。そして、白封筒を紙破するための最適な厚み寸法は、例えば表3において大部分の塗工パターンにおいて紙破を示している30〜60μmの範囲であると考えることができる。
【0099】
4:各塗工パターンの面積率並びに占有面積測定
次に、図6、図7、図8及び図9に示した塗工パターンである「ドット」、「ドット細」、「ドットφ2」、「ドットφ2+メッシュ」、「格子」、「平格子」、「イチョウ」、「レンガ」、「細六角」、「タイヤ」、「大波」及び「横スジ」パターンに「格子」パターンの変形パターンとして一辺が3mmの正方形を0.1mm間隔で配置した「格子大」パターン(図示せず)を加えて、粘着剤部が占める単位面積当たりの面積率(%)と、感圧転写テープの巾寸法を25mmとした場合における、粘着剤部を構成する主たる粘着剤ブロックが基材上に占める面積、すなわち占有面積を調査し、表4に示した。
【0100】
【表4】

表4に示した各塗工パターンは実施例1及び実施例2に係る粘着剤を用いて塗布することが可能なパターンであるが、「タイヤ」パターンの面積率から、塗布面積率が18%以上の塗工パターンであれば、紙破し得る粘着製品を構成し得るということが分かった。また同じく「タイヤ」パターンから、主たる粘着剤ブロックの占有面積が0.05平方ミリ以上で有れば確実に塗工でき且つ紙破し得るということも分かった。さらに、実施例に示した粘着剤は「格子大」(93.7%)や「横スジ」(93.8%)といった高い面積率を有する塗工パターンであっても隣接する粘着剤ブロック同士を独立させて塗工し得るということが分かった。そして、占有面積についてはフィルム巾を25mmに設定した場合、75平方ミリまで面積の広い粘着剤ブロックに関しても塗布しうるということが分かった。なお、具体的なデータは示していないが「ドット細」、「格子大」、「横スジ」といった塗工パターンにおいても、表3に示した結果から十分に白封筒を紙破し得る塗工パターンであると考えることができる。
【符号の説明】
【0101】
1…感圧転写粘着テープ、粘着製品(感圧転写テープ)
10…粘着剤層
100…粘着剤、アクリル系粘着剤(粘着剤)
101…アクリル系ジブロック共重合体(ジブロック共重合体)
102…アクリル系トリブロック共重合体(トリブロック共重合体)
103…粘着付与剤(第一粘着付与剤)
104…粘着付与剤(第二粘着付与剤)
11…粘着剤部
11a…底面
11b…頂面
110…粘着剤ブロック(ドットブロック)
111…粘着剤ブロック(格子ブロック)
12…基材(フィルム)
13…空隙部
2…シール、粘着製品(シール)
20…粘着剤層
200…粘着剤、アクリル系粘着剤(粘着剤)
210…粘着剤ブロック(ドットブロック)
22…基材、他の部材(シール本体)
23…空隙部
3…粘着テープ、粘着製品(粘着テープ)
30…粘着剤層
32…基材、他の部材(粘着テープ本体)
A…転写具
F…紙類、他方の部材(白封筒)
P…紙類(上質紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなる基材とを有し、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類と他の部材とを止着させ得る粘着製品であって、
前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、
前記粘着剤層を介して前記紙類と前記他の部材とを止着させた状態から前記紙類と前記他の部材とを剥離させる剥離動作を行った際に、前記紙類の表層部を前記粘着剤層の表面に付着させ前記紙類を厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする粘着製品。
【請求項2】
前記紙類が上質紙であって、当該上質紙に対して紙破現象を起こし得るように構成している請求項1記載の粘着製品。
【請求項3】
前記紙類が白封筒であって、当該白封筒に対して紙破現象を起こし得るように構成している請求項1又は2記載の粘着製品。
【請求項4】
前記粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項1、2又は3記載の粘着製品。
【請求項5】
前記アクリル系粘着剤が、式A−B−Aまたは式A−B−C(式中、A、BおよびCはそれぞれ異なる重合体ブロックを表し、Aはメタクリル酸アルキルエステル単位からなり、Bはアクリル酸アルキルエステル単位からなり、Cはアクリル酸アルキルエステル単位またはメタクリル酸アルキルエステル単位からなる)で表されるトリブロック共重合体を含むものである請求項4記載の粘着製品。
【請求項6】
前記アクリル系粘着剤が、下記一般式(I)
X−Y (I)
(式中、Xは、炭素数が1〜4のアルキル基、または環構造を有するアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表し;Yは、炭素数が1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位および/または炭素数が5〜20のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなる重合体ブロックを表す)で示され、重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)が1000〜8000であり、重合体ブロックXの質量と重合体ブロックYの質量との割合がX/Yの質量比において1/99〜10/90の範囲内であるジブロック共重合体を含むものである請求項4又は5記載の粘着製品。
【請求項7】
前記重合体ブロックXが炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位から主としてなり、かつ、重合体ブロックYが炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位から主としてなることを特徴とする請求項6記載の粘着製品。
【請求項8】
前記重合体ブロックXの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5以下であることを特徴とする請求項7記載の粘着製品。
【請求項9】
前記アクリル系粘着剤が粘着付与剤を含むものである請求項4、5、6、7又は8記載の粘着製品。
【請求項10】
前記粘着剤層の厚み寸法を10〜100μmに設定している請求項4、5、6、7、8又は9記載の粘着製品。
【請求項11】
前記粘着剤層の厚み寸法を15〜80μmに設定している請求項4、5、6、7、8、9又は10記載の粘着製品。
【請求項12】
前記粘着剤層の厚み寸法を30〜60μmに設定している請求項4、5、6、7、8、9、10又は11記載の粘着製品。
【請求項13】
前記粘着剤層が前記アクリル系粘着剤からなる粘着剤部と当該粘着剤部の間に介在する空隙部とを有するものであり、前記粘着剤部が占有する塗布面積率を18〜94%に設定している請求項10、11又は12記載の粘着製品。
【請求項14】
前記塗布面積率を53〜75%に設定している請求項13記載の粘着製品。
【請求項15】
当該空隙部を前記粘着剤層の略全面に亘って当該粘着剤層の側面に開放するように構成している請求項13又は14記載の粘着製品。
【請求項16】
前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05〜75平方ミリに設定している請求項13、14又は15記載の粘着製品。
【請求項17】
前記基材が前記粘着剤層に対して剥離可能に設けられたものであって、
前記粘着剤部の形状を、当該粘着剤部が基材に支持される底面の面積を頂面の面積よりも広く設定した形状としている請求項13、14、15又は16記載の粘着製品。
【請求項18】
前記アクリル系粘着剤が、ホットメルト型粘着剤である請求項17記載の粘着製品。
【請求項19】
シールや粘着テープ等として使用される粘着製品であって、
前記基材であるシール本体或いは粘着テープ本体に前記粘着剤層を剥離不能に設けていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の粘着製品。
【請求項20】
感圧転写粘着テープ等として使用される粘着製品であって、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設けていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の粘着製品。
【請求項21】
請求項20に記載の粘着製品を具備してなる転写具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−174085(P2011−174085A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97032(P2011−97032)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2005−17537(P2005−17537)の分割
【原出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】