説明

精製モモ樹脂及びその製造方法

【課題】モモ樹脂であって、その固有の香りはするが、不快な臭気がなく、食品添加物として用いるのに適した精製モモ樹脂とその効率的な製造方法の提供。
【解決手段】水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物を原料として得られる精製モモ樹脂。原料を水と混合し、水浸漬時間を0〜12時間に留め、原料混合水を加熱して原料を溶解させ、不純物を除去した後乾燥して精製モモ樹脂を製造する方法。桃の樹液の未精製固形物を粉砕してから水と混合する方法を採ることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製したモモ樹脂とその製造方法に関する。詳しくは、不純物を除去してあり、かつ、食品添加物として用いるのに適した無臭のモモ樹脂とその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モモ樹脂(ピーチガムとも呼ばれている。)は、桃の木(Prunus persica)の樹液から得られる多糖類を主成分とするガム類で、旧厚生省令第50号「既存添加物名簿に関する省令」リストの第415番に記載されている食品添加物である。モモ樹脂は、ガム類の中では低粘度であり、これまでにアラビアガムの代替品としての利用が検討されている。
【0003】
したがって、本発明において「モモ樹脂」とは、桃の樹液を原料として、これから不純物を除去したものをいう。また、本発明において「精製モモ樹脂」とは、桃の樹液を原料として、これから不純物を除去したモモ樹脂であって不快な臭気を有さないものをいう。
【0004】
本発明者らの知見によれば、桃の木から採取した直後の樹液は、全くの無味・無臭である。また、本来のモモ樹脂は、かすかにモモ樹脂固有の香りはするが、不快な臭気は有さない状態(本発明において、この状態を「無臭」という。)のものである。しかしながら、従来から知られているモモ樹脂は、独特の不快な臭気を有し、かつ、茶褐色を呈している。そのため、従来のモモ樹脂を食品添加物などとして用いるには少なくとも不快な臭気を除去する必要があるが、未だ適当な脱臭方法が見いだされておらず、この不快な臭気があるために、食品分野でのモモ樹脂の用途開発は進んでいない。
【0005】
モモ樹脂の臭気に関する本発明者らの見解は、以下のとおりである。
モモ樹脂の原料である桃の樹液は、現状では、主として中国において1年に1度収穫されているが、採取する場所や収穫時期によって水分含量がばらばらであり、表面が濡れていたり、柔らかいものもある。現在は、桃の木からしみ出たこれらの樹液を、水分含量などを調整することなく、自然乾燥によって乾燥させ、固形化している。その結果、水分含量の多い樹液固形物が作られることが多い。また、収穫した桃の樹液固形物は出荷されるまで常温の倉庫内に保管されている。そのため、保管中の樹液固形物に菌が付着し、付着した菌が増殖して後日のモモ樹脂製造工程においてさらに繁殖し、これが臭気の原因になっているものと考えられる。その上、一度発生した不快な臭気は容易には除去し得ない。
【0006】
すなわち、従来のモモ樹脂の製造方法は、上記のようにして得た桃の樹液固形物を原料とし、これを水に浸漬して膨潤させ、加熱して完全に溶解して不純物を除去した後、乾燥・粉末化などの工程を経てモモ樹脂として製了している。この従来の製造方法では、水浸漬の工程で、桃の樹液固形物を水に浸漬した状態で4〜5日間ほど室温下(冬期は5℃くらい、夏期は40℃近くになる。)に放置している。そのため、この間に桃の樹液固形物に付着している菌が増殖して臭気が発生するものと考えられる。
【特許文献1】特開10−150930号公報
【0007】
なお、特許文献1には、未精製の桃樹脂を水に溶解し、酸を加えて酸性とし、活性炭と接触させることによって桃樹脂を脱臭・脱色させて桃樹脂を精製する方法について開示されている。しかし、この精製方法は、上記従来の方法によって得た桃の樹液固形物を原料としているため、臭気を完全に除去できず、しかも、工程が煩雑であるため、実用化には至っていない。
【0008】
本発明者らは、特に無味・無臭のモモ樹脂の開発を志向し、上記の知見と考察に基づいて種々試験・研究を続けた結果、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の状況に鑑み、本発明は、モモ樹脂固有の香りはするが、不快な臭気がなく、食品添加物として用いるのに適した精製モモ樹脂とその効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明のうち特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物である。
【0011】
また、同じく請求項2に記載する発明は、水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物を原料として得られる精製モモ樹脂である。
【0012】
また、同じく請求項3に記載する発明は、水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物を原料とし、原料を水と混合し、水浸漬時間を0〜12時間に留め、原料混合水を加熱して原料を溶解させ、不純物を除去した後乾燥して精製モモ樹脂を製造する方法である。
【0013】
また、同じく請求項4に記載する発明は、請求項3に記載の製造方法において、原料である桃の樹液の未精製固形物を粉砕してから水と混合して精製モモ樹脂を製造する方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らは、モモ樹脂の製造に際し、原料である桃の樹液の未精製固形物を水分含量20重量%以下に調整することによって無臭のモモ樹脂を容易に得ることができることを初めて見いだした。また、本発明者らは、桃の樹液の固形物を水分含量20重量%以下に調整すると、保存中における菌の増殖を抑えることができると共に粉砕効率(粉砕歩留)が良くなり、かつ、粉砕した後でもさらさらの状態を維持できるが、水分含量が20重量%を越えると、保存中における菌の増殖を抑えることができない上、粉砕し難くなり、粉砕効率が低下し、しかも、粉砕した後くっついて塊状になりやすいことを初めて見いだした。
【0015】
すなわち、本発明では、請求項1及び請求項2に記載するように、桃の樹液の未精製固形物であって水分含量20重量%以下に調整してあるものを原料として用いるので、たとえ原料に菌が付着していても増殖しておらず、そのため、モモ樹脂の製造工程において臭気を発生することがない。その結果、本発明によれば、食品添加物として用いるのに適した無臭のモモ樹脂(精製モモ樹脂)を容易に製造することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の精製モモ樹脂の製造方法によれば、水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液固形物を原料として用いると共に、その原料を水と混合し、水浸漬時間を設けないか又は設けたとしても12時間以内に留め、原料混合水を加熱して原料を溶解させるので、たとえ原料に菌が付着していたとしても、菌が増殖し始める前に死滅させることができ、その結果、無臭のモモ樹脂を容易に製造することができる。さらに、請求項4に記載の精製モモ樹脂の製造方法によれば、請求項3に記載の精製モモ樹脂の製造方法において、原料である桃の樹液固形物を水と混合する前に細かく粉砕するので、原料の膨潤・溶解が容易となり、水浸漬時間や原料混合水の加熱時間を大幅に短縮できる。そのため、たとえ原料に菌が付着していたとしても、菌が増殖し始める前に確実に死滅させることができ、その結果、無臭のモモ樹脂をきわめて容易に製造することができる。
【0017】
本来モモ樹脂は、増粘性、水溶性、光沢性、接着性、可食性、乳化性などを備えているが、従来のモモ樹脂は独特の不快な臭気を有していたため、食品用としては使用できなかった。しかし、本発明によって得られる精製モモ樹脂は、モモ樹脂固有の香りはするが、従来の不快臭がないため、食品添加物、たとえば、食品用の増粘剤、光沢剤、ほぐし剤、乳化剤、接着剤、賦形剤などとして用いることができる。このように、本発明はモモ樹脂の用途を大きく拡げることができる画期的な技術である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法では、精製モモ樹脂の原料として、桃の木から収穫した樹液を乾燥させ、水分含量20重量%以下、好ましくは15重量%以下に調整してある桃の樹液固形物を用いる。桃の樹液の乾燥方法は特に限定することなく、自然乾燥、ドラム乾燥、ベルト乾燥など食品に適用できる全ての乾燥方法を用いてよいが、樹液の収穫後はできるだけ迅速に乾燥処理することが好ましい。樹液固形物の水分含量は、乾燥方法に応じて適宜の水分計を用いて計測する。桃の樹液固形物の水分含量が20重量%を越えていると、付着した菌が樹液固形物の保存中に増殖して、得られるモモ樹脂の悪臭の原因となるので注意しなければならない。また、桃の樹液固形物の水分含量が20重量%を越えていると、粉砕効率が低下し、しかも、粉砕して粉末化してもすぐ塊状に固化してしまうので、精製モモ樹脂の原料として不適である。
【0019】
得られた桃の樹液固形物は、出荷まで常温下の倉庫内に保管することでよい。特に規定はしないが、高温多湿状態での保管は避けるべきである。
【0020】
本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法では、水分含量20重量%以下、好ましくは水分含量15重量%以下に調整してある桃の樹液固形物を原料として用いると共に、その原料を水と混合し、原料を溶解して不純物を除去するが、その場合の水浸漬時間は0〜12時間に留める必要がある。本発明において、桃の樹液固形物を「水に浸漬する(水浸漬)」とは、桃の樹液固形物を加熱しないで水と混合し続ける状態のことをいう。水浸漬時間を設けると、桃の樹液固形物が膨潤して溶解しやすくなるが、反面、付着していた菌が増殖しやすくなり、臭気が発生しやすくなる。そのため、本発明では、原料である桃の樹液固形物を水と混合し、原料混合水(桃の樹液固形物を混合した状態の水)を加熱して原料を溶解させるが、その前に、水浸漬時間を全く設けないか、又は、水浸漬時間を設けたとしても12時間以内に留める必要がある。
【0021】
本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法において、水浸漬時間を設けないときは、原料である桃の樹液固形物を水と混合した後その原料混合水をただちに加熱して原料を溶解させる。加熱の方法は限定されないが、加圧加熱が好ましい。
【0022】
本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法において、原料である桃の樹液固形物を水と混合した後、水浸漬時間を設けるときは、これを12時間以内に留める。すなわち、原料である桃の樹液固形物を水と混合した後12時間を越えないうちにその原料混合水を加熱して原料を溶解させる。加熱の方法は限定されないが、加圧加熱が好ましい。
【0023】
本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法では、原料である桃の樹液固形物を粉砕してから水と混合することが好ましい。桃の樹液固形物を水と混合する前に粉末状に粉砕すると、桃の樹液固形物が膨潤・溶解しやすくなるので、水浸漬時間を設けたとしても短時間で済ますことができる。また、原料混合水の加熱条件を緩和することができる。このように、原料を水と混合する前に粉砕すると、精製モモ樹脂の製造がいっそう容易となり、臭気の発生を確実に防止できると共に、品質の安定した精製モモ樹脂を製造することができる。
【0024】
本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法では、原料である桃の樹液固形物を混合する水か又は原料混合水に、アルコ−ル、アセトンなどの有機溶媒、漂白効果が得られる次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの還元剤、殺菌・静菌作用を有する加工助剤、又はこれらの混合物を添加しても差し支えない。アルコールはモモ樹脂の殺菌に効果があり、過酸化水素などはモモ樹脂の脱色に有効である。なお、当然のことながら、これらの添加物は、製品である精製モモ樹脂中に残存させないようにする必要がある。
【0025】
また、本発明に係る精製モモ樹脂の製造方法では、原料混合水を加熱する際に、酸剤又はアルカリ剤を添加して、原料の・膨潤・溶解を促進させる方法を採ってもよい。添加する酸剤又はアルカリ剤は食品に使用できるものであれば特に限定されず、たとえば、アルカリ剤として、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど、酸剤として、クエン酸、リン酸、酒石酸、リン酸などが使用できる。また、酸剤又はアルカリ剤を添加した場合は、加熱後、常法により中和・脱塩してこれらを除去する。
【0026】
桃の樹液固形物を十分に溶解させた後、その溶液から夾雑物などの不純物を除去する。不純物を除去する方法は特に限定されないが、フィルタープレスによる濾過、減圧濾過、遠心分離によって分離・除去する方法などが好ましい。
【0027】
不純物を除去した後の溶液は、濃度が薄い場合は適宜に濃縮した後、殺菌工程を経て乾燥させる。殺菌は、たとえば105〜110℃で30分間程度加熱すればよい。また、乾燥の方法は特に限定はないが、フリーズドライ、ドラムドライ、スプレイドライなど各種の乾燥法を採ることができる。好ましくは、水分含量12重量%以下に乾燥させ、粉末化して粉体のサイズを揃えて精製モモ樹脂として製了する。
【0028】
以下、試験例及び実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明の全説明において「%」の表示は、特に断らない限り、重量割合を示す。
【0029】
《試験例1》
<原料の水分含量による粉砕効率の確認試験>
(1)試験方法
水分含量をそれぞれ10%、15%、20%、25%及び30%に調整してある5種類の桃の未精製樹液固形物(A〜E)を各300g用意した。これら桃の樹液固形物を粉砕し、8メッシュサイズ以下の重量を測定すると共に、それぞれの性状を観察した。その結果は表1に示すとおりである。
【0030】
(2)試験結果の所見
表1から、水分含量が20重量%以下の桃の樹液固形物は、粉砕効率が良く、しかも、粉砕後の粉末の性状が良好であることが確認された。
【0031】
【表1】

【0032】
《試験例2》
<原料の水分含量による臭気発生状況の確認試験その1>
(1)試験方法
イ)水分含量をそれぞれ10%、15%、20%、25%及び30%に調整してある5種類の桃の未精製樹液固形物(F〜J)を用意した。これら桃の樹液固形物を25℃の温度条件下で保存して保存1日後、1週間後、1カ月後、6カ月後に各200gずつ秤取し、それぞれの臭気を確認した。臭気の確認は以下の方法で行なった。
ロ)保存後の桃の樹液固形物をそれぞれ粉砕し、800gの水と混合した後、ただちに加圧加熱して溶解させ、その溶液から不純物を除去した後、それぞれの溶液の臭気を官能評価により測定した。その結果は表2に示すとおりである。
ハ)また、得られたモモ樹脂の溶液は、官能評価の後、それぞれフリーズドライによって乾燥させて粉末化した。得られたモモ樹脂の粉末を20重量%濃度で純水に再溶解させ、再び溶液の臭気を測定した。その結果は表3に示すとおりである。
なお、官能評価はこの種の試験に熟練したパネラー5名によって行なった。表2、表3にはパネラー全員の意見が一致した評価を示している。
【0033】
(2)試験結果の所見
表2から、水分含量が20重量%以下の桃の樹液固形物は、25℃で6カ月間保存した後で溶液にしても臭気を生じないことが確認された。また、表3から、表2において臭気が感じられなかったモモ樹脂溶液は、乾燥させてから再度溶解しても、すなわち、実際にモモ樹脂として使用する場合においても臭気を生じないことが確認された。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
《試験例3》
<水浸漬工程の所要時間と温度によるモモ樹脂の臭気発生状況の確認試験>
(1)試験方法
水分含量20重量%に調整してある桃の樹液固形物1000gを細かく粉砕し、水4000gと混合して、桃の樹液固形物の混合水(原料混合水)を作成した。この原料混合水を1000gずつ5つに分けて、それぞれ室温10℃、20℃、30℃、40℃、50℃の環境下で保存した。保存6時間後、12時間後、24時間後及び3日間後に250gずつ原料混合水を抜き取り、加圧加熱して完全に溶解させ、不純物を除去してモモ樹脂として製了した後、それぞれの臭気を官能評価により測定した。官能評価は、試験例2と同様の方法で実施した。その結果は表4に示すとおりである。
【0037】
(2)試験結果の所見
表4から、モモ樹脂から臭気を発生させないようにするには、原料として水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液固形物を使用すると共に、原料の水浸漬時間を12時間以内に留める必要があることが確認された。なお、10℃で保存したときは、水浸漬時間が24時間以内であれば臭気は発生しないことも確認された。
【0038】
【表4】

【実施例1】
【0039】
<桃の樹液固形物の製造例>
桃の木から収穫した樹液を、乾燥機に入れて75℃で24時間処理し、固形物とした。得られた桃の樹液固形物の水分含量を赤外線水分計を用いて測定したところ、「10%」であった。なお、以下の実施例1〜実施例5では、全て本実施例で得られた桃の樹液固形物(水分含量10%のもの)を使用している。
【実施例2】
【0040】
<桃の樹液固形物の水溶解方法の例1>
固形のままの桃の樹液固形物(以下Aという。)500gと8メッシュサイズに粉砕した桃の樹液固形物(以下Bという。)500gを、それぞれ水4500gに加え、ただちに加熱して水温を90℃まで上昇させ、達温後8時間保持した。その後、両溶液の状況を確認したところ、Aの溶液では直径1cm以上の固形物の溶け残りが多数存在していた。Bの溶液では大きな溶け残りは存在しないものの、粒状の溶け残りが多数存在していた。遠心分離によって両溶液から溶け残りを分離し、それぞれの溶け残りの重量を測定したところ、無水換算で、Aの溶液では約40%、Bの溶液では約25%の溶け残り存在が確認された。
【実施例3】
【0041】
<桃の樹液固形物の水溶解方法の例2>
固形のままの桃の樹液固形物(以下Aという。)500gと8メッシュサイズに粉砕した桃の樹液固形物(以下Bという。)500gを、それぞれ水4500gに加え、ただちに加熱して水温を90℃まで上昇させ、達温後4時間保持した後、さらに加圧加熱して110℃達温で1時間保持した。その結果、Bの溶液では溶け残りが消滅し、桃の樹液固形物がほぼ完全に溶解した。そこで、以後はBの溶液から、遠心分離と濾過によって不純物を取り除き、105℃で30分間加熱殺菌し、スプレイドライによって乾燥させ、精製モモ樹脂I−Bを得た。また、Aの溶液については、さらに120℃で5時間加圧加熱したところ、溶け残りはほぼ完全に消滅した。そこで、以後はAの溶液もBの溶液と同様に処理して、精製モモ樹脂I−Aを得た。得られた精製モモ樹脂の性状は表5に示す。
【実施例4】
【0042】
<桃の樹液固形物の酸添加又はアルカリ添加による水溶解方法の例>
8メッシュサイズに粉砕した桃の樹液固形物500gを、水4000gに加えて原料混合水イ、ロ、ハを作成し、その後、以下のように処理した。
原料混合水イは、塩酸を加えてpH2.0に調整した後、加水して5000gにした。 原料混合水ロは、水を500g加えて5000gにした。
原料混合水ハは、水酸化ナトリウムを加えてpH12.0に調整した後、加水して5000gにした。
各原料混合水をただちに加熱し、90℃達温後、60分間加熱し、その後冷却した。その結果、原料混合水イと同ハでは桃の樹液固形物はほぼ完全に溶解し、溶液イと溶液ハが得られたが、原料混合水ロでは粒状の溶け残りが見られた。そこで、溶液イには水酸化ナトリウムを、溶液ハには塩酸を加えて中和した後、それぞれ遠心分離と濾過によって不純物を取り除き、UF膜とRO膜処理によって濃縮、脱塩した。その後、得られた濃縮液を105℃で30分間殺菌処理した後スプレイドライによって乾燥させ、精製モモ樹脂II−イと精製モモ樹脂II−ハを得た。得られた精製モモ樹脂の性状は表5に示す。
【実施例5】
【0043】
<桃の樹液固形物の水溶解方法の例3>
固形のままの桃の樹液固形物(以下Aという。)500gと8メッシュサイズに粉砕した桃の樹液固形物(以下Bという。)500gを、それぞれ水4500gに加え、そのまま8時間浸漬した。その結果、Bの原料混合水では桃の樹液固形物は十分に膨潤したが、Aの原料混合水では桃の樹液混合物の中心まで水がしみ込んでおらず、膨潤が不十分であることが確認された。そこで、Aの膨潤液を110℃で1時間加熱したところ、桃の樹液固形物はほぼ完全に溶解した。Bの膨潤液は、そのまま、遠心分離と濾過によって不純物を取り除き、105℃で30分間殺菌処理した後スプレイドライによって乾燥させ、精製モモ樹脂IIIとして製了した。その性状は表5に示す。Aの溶解液も、遠心分離と濾過によって不純物を取り除き、105℃で30分間殺菌処理した後スプレイドライによって乾燥させ、精製モモ樹脂として製了した。
本実施例の製法では、水浸漬時間を設けたので、実施例3のように予備加熱(90℃で4時間保持)することなく、原料を膨潤・溶解させ、不純物を除去することができた。
【0044】
<実施例の総合所見>
以上の各実施例の結果は表5に示すが、、表5に示す色と味の点から、精製モモ樹脂I−B、同II−イ、同IIIの製造方法を用いることが好ましいことが理解される。しかし、上記各実施例で製造した全ての精製モモ樹脂は、従来問題とされてきた臭気を全く有さず、食品用の添加物としてきわめて適したものである。
【0045】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳しく説明したとおり、本発明によれば、無臭のモモ樹脂を容易に作ることができる。本発明によって得られた無臭のモモ樹脂(精製モモ樹脂)は、食品添加物、例えば、食品用の増粘剤、光沢剤、ほぐし剤、乳化剤、接着剤、賦形剤などとして用いることができる。このように、本発明は、モモ樹脂の用途を大きく拡げることができる画期的な技術である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物。
【請求項2】
水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物を原料として得られる精製モモ樹脂。
【請求項3】
水分含量20重量%以下に調整してある桃の樹液の未精製固形物を原料とし、原料を水と混合し、水浸漬時間を0〜12時間に留め、原料混合水を加熱して原料を溶解させ、不純物を除去した後乾燥して精製モモ樹脂を製造する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法において、原料である桃の樹液の未精製固形物を粉砕してから水と混合して精製モモ樹脂を製造する方法。






































【公開番号】特開2007−274990(P2007−274990A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107036(P2006−107036)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(306007864)ユニテックフーズ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】