説明

精製方法および精製した共役ポリマー

非常に少ない金属含有量を備える導電性ポリマーを含むポリマーを精製するために、金属錯化剤が用いられる。プロセスには、溶液中のポリマーを金属錯化剤を含む溶媒系へ沈殿させる工程が含まれる。ニッケルおよびマグネシウムなどの金属の検出不能なレベルを含む、非常に低いレベルを達成することができる。純度の高いポリマーは、電子工学および光起電力への適用に使用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2006年9月1日に出願された米国仮特許出願第60/841,550号の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府の支援の表明
本出願の対象物は一部、連邦政府が米国科学財団助成金番号NSF CHE 0415369の元で出資しており、政府は本出願において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
導電性ポリマー、すなわちそのバックボーンに共役を有するポリマーは、OLED、PLED、光電池、トランジスタ、センサーなどを含む多くの商業的応用に使用できる。例えばポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリピロール、およびポリチオフェンを含む「The Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、 Wiley, 1990, 頁298-300(非特許文献1)を参照;米国特許第6,602,974号、McCullough et al.(特許文献1)および第6,166,172号、McCullough et al.(特許文献2)、ならびに「The Chemistry of Conducting Polythiophenes」、Richard D. McCullough, Adv. Mater. 1998, 10, No.2, 頁93-116(非特許文献2)および「Handbook of Conducting Polymers」 第2版 1998, 9章、McCullough et al.,「Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives」、頁225-258(非特許文献3)も参照されたい。多くの場合、商業的応用では、これらのポリマーが金属不純物を含まないようにしなければならない。例えば、ニッケルおよびマグネシウム不純物が典型的な問題となる。しかしながら、精密な作業にも関わらず材料中に強固に残存する可能性のあるマグネシウムおよびニッケルを含む大量の金属が、これらのポリマーを調製する際に使用され得ることから、これは課題となっている。導電性ポリマーは不純物を集めてトラップすることができ、溶解されにくい。しかしながら、大規模な精製は経済的ではない。金属不純物は、特性を変更し低減する可能性があり、通常データの解釈に混乱をもたらし得る。多くの場合、ポリマーの特性またはポリマーを用いるデバイスを報告する際には、ポリマーを調製するのに用いた精製方法に留意すべきである。例えば米国特許出願公開第2004/0250849号、Chen et al.(特許文献3);Erwin et al,「Effects of Impurities on the Optical Properties of Poly-3-hexylthiophene Thin Films」Thin Solid Films, 409 (2002) 198-205(非特許文献4)を参照されたい。金属不純物の問題は特に、ポリチオフェンおよびレジオレギュラー(regioregular)ポリチオフェンの開発に関連する。
【0004】
特に電子工学への適用のためのポリマー、ならびに電流、電場、および光との相互作用に関与するポリマーを精製するための、可変性で、安価で、簡便な、商業的に有益な方法が、一般的に必要とされている。ポリマーは、電子工学グレード、すなわち高い流動性能を実現する高品質および高純度である必要がある。関連する適用には、RFIDチップ、太陽電池、FET、OLED、およびPLEDを含む有機エレクトロニクスへの適用が含まれる。商業スケールは、kg単位のバッチで可能であるべきである。例えば、手作業と商業スケールの両方でポリマーを調製する必要があり、この場合、金属の総含量は50 ppm未満であり、マグネシウムとニッケルの含量はそれぞれ検出不能な程度であり、鉄の量も50 ppmを下回るまで減少させる。
【0005】
米国特許第6,894,145号(特許文献4)は、抽出に基づく1つのアプローチを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,602,974号、McCullough et al.
【特許文献2】米国特許第6,166,172号、McCullough et al.
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0250849号、Chen et al.
【特許文献4】米国特許第6,894,145号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「The Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、 Wiley, 1990, 頁298-300
【非特許文献2】「The Chemistry of Conducting Polythiophenes」、Richard D. McCullough, Adv. Mater. 1998, 10, No.2, 頁93-116
【非特許文献3】「Handbook of Conducting Polymers」 第2版 1998, 9章、McCullough et al.,「Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives」、頁225-258
【非特許文献4】Erwin et al,「Effects of Impurities on the Optical Properties of Poly-3-hexylthiophene Thin Films」Thin Solid Films, 409 (2002) 198-205
【発明の概要】
【0008】
概要
ポリマーを精製する方法、精製ポリマーを使用する方法、精製ポリマー、および精製ポリマーから作製したデバイスを、本明細書で提供する。
【0009】
1つの態様は、以下の工程を含む方法を提供する:(i)可溶性導電性ポリマーと第一の溶媒系とを含む第一の溶液を提供する工程、(ii)少なくとも1つの金属錯化剤と、導電性ポリマーを沈殿させるよう適合させた第二の溶媒系とを含む第二の溶液を提供する工程、(iii)第一の溶液と第二の溶液を混合して導電性ポリマーを沈殿させる工程、(iv)沈殿した導電性ポリマーを単離する工程。
【0010】
別の態様は、以下の工程を含む方法である:可溶性ポリチオフェンを含む第一の溶液を提供する工程、少なくとも1つの金属錯化剤を含む第二の溶液を提供する工程、第一の溶液と第二の溶液を混合してポリチオフェンを沈殿させる工程、および沈殿したポリチオフェンを単離する工程。
【0011】
別の態様は、以下の工程を含む方法である:可溶性レジオレギュラーポリチオフェンを含む第一の溶液を提供する工程、少なくとも1つの金属錯化剤を含む第二の溶液を提供する工程、第一の溶液と第二の溶液を混合してレジオレギュラーポリチオフェンを沈殿させる工程、沈殿したレジオレギュラーポリチオフェンを単離する工程。
【0012】
別の態様は、以下の工程を含む方法である:可溶性導電性ポリマーと第一の溶媒系とを含む第一の溶液を提供する工程、(i)ニッケルホスフィン化合物と配位子交換を受けることができる少なくとも1つの薬剤と、(ii)導電性ポリマーを沈殿させるよう適合させた第二の溶媒系とを含む第二の溶液を提供する工程、第一の溶液と第二の溶液を混合して導電性ポリマーを沈殿させる工程、および沈殿した導電性ポリマーを単離する工程。
【0013】
本明細書に記載の態様の1つまたは複数の利点には、デバイスに用いる場合により良いポリマー特性とより良い性能、比較的可溶性のポリマー、良好な分析データ、および比較的高い流動性が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】精製が必要な1つの金属を含有するポリチオフェンポリマーに対する、HCl処理によるニッケルチオフェン結合の切断を図示する。
【図2】1つの金属錯化剤に対するニッケルホスフィン触媒の配位子交換を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
概論
本明細書に引用する全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0016】
第一の態様は、以下の工程を含む方法を提供する:
可溶性導電性ポリマーと第一の溶媒系とを含む第一の溶液を提供する工程、 少なくとも1つの金属錯化剤と、導電性ポリマーを沈殿させるよう適合させた第二の溶媒系とを含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合して導電性ポリマーを沈殿させる工程、
沈殿した導電性ポリマーを単離する工程。
【0017】
別の態様は、複素環ポリマーとして可溶性導電性ポリマーを提供する。
【0018】
なお別の態様は、ポリチオフェンとして可溶性導電性ポリマーを提供する。
【0019】
なお別の態様は、レジオレギュラーポリチオフェンまたはレジオレギュラーポリチオフェンを含むブロックコポリマーとして、導電性ポリマーを提供する。
【0020】
なお別の態様は、レジオレギュラーポリチオフェンホモポリマーまたはコポリマーとして導電性ポリマーを提供する。
【0021】
なお別の態様は、3-置換ポリチオフェンとして導電性ポリマーを提供する。
【0022】
なお別の態様は、3-アルキルまたは3-アルコキシ置換ポリチオフェンとして導電性ポリマーを提供する。
【0023】
別の態様は、ニッケルおよびマグネシウム化合物を使用して導電性ポリマーを調製するさらなる工程を提供する。
【0024】
なお別の態様は、グリニヤールメタセシス重合を使用して導電性ポリマーを調製するさらなる工程を提供する。
【0025】
なお別の態様は、チオフェンモノマーの重合によって導電性ポリマーを調製するさらなる工程を提供する。
【0026】
別の態様は、第一の溶媒系が少なくとも1つの有機溶媒を含むことを提供する。
【0027】
なお別の態様は、第一の溶媒系が少なくとも1つの有機溶媒および酸を含むことを提供する。
【0028】
なお別の態様は、第一の溶媒系が少なくとも1つのエーテル溶媒を含むことを提供する。
【0029】
別の態様は、第一の溶液が精製前に少なくとも1,000 ppmのニッケルおよびマグネシウム総含量を含むことを提供する。
【0030】
別の態様は、第二の溶液が実質的に水ではないことを提供する。
【0031】
別の態様は、金属錯化剤が、少なくとも2つの結合基を持つキレート化合物を含むことを提供する。
【0032】
なお別の態様は、金属錯化剤が、少なくとも2つの窒素結合基を持つキレート化合物を含むことを提供する。
【0033】
なお別の態様は、金属錯化剤が、少なくとも2つのオキシム基を含むキレート化合物を含むことを提供する。
【0034】
なお別の態様は、金属錯化剤がグリオキシム化合物を含むことを提供する。
【0035】
なお別の態様は、金属錯化剤がジメチルグリオキシムを含むことを提供する。
【0036】
なお別の態様は、金属錯化剤がクラウンエーテルを含むことを提供する。
【0037】
なお別の態様は、金属錯化剤が、複数の酸素原子を含む化合物を含むことを提供する。
【0038】
なお別の態様は、錯化剤が、窒素原子を含むポリマーを含むことを提供する。
【0039】
なお別の態様は、錯化剤が、側基に窒素原子を含むポリマーを含むことを提供する。
【0040】
なお別の態様は、錯化剤がアクリルアミドまたはピリジン官能基を含むことを提供する。
【0041】
別の態様は、第一の溶液が少なくとも2つの金属錯化剤を含むことを提供する。
【0042】
別の態様は、金属錯化剤の量が第二の溶液100 mL中少なくとも約0.1 gであることを提供する。
【0043】
なお別の態様は、金属錯化剤の量が第二の溶液100 mL中少なくとも約0.5 gであることを提供する。
【0044】
なお別の態様は、金属錯化剤の量が第二の溶液100 mL中少なくとも約1.0 gであることを提供する。
【0045】
別の態様は、添加する工程を約15℃〜約40℃で実施することを提供する。
【0046】
別の態様は、添加する工程後、撹拌を少なくとも1時間実施することを提供する。
【0047】
別の態様は、単離する工程が、濾過、抽出、および乾燥を含むことを提供する。
【0048】
別の態様は、単離したポリマーが、元素分析において残灰を含まないことを提供する。
【0049】
別の態様は、単離したポリマーがICP-MSニッケル分析で1 ppm未満を与えることを提供する。
【0050】
なお別の態様は、単離したポリマーがICP-MSマグネシウム分析で1 ppm未満を与えることを提供する。
【0051】
なお別の態様は、単離したポリマーがICP-MSマグネシウム分析とICP-MSニッケル分析の両方で1 ppm未満を与えることを提供する。
【0052】
なお別の態様は、単離したポリマーがICP-MSニッケルまたはマグネシウム分析で20 ppm未満を与えることを提供する。
【0053】
なお別の態様は、単離したポリマーが50 ppm未満の金属総含量を与えることを提供する。
【0054】
別の態様は、混合する工程を、単離する工程の前に一度だけ実施することを提供する。
【0055】
別の態様は、単離する工程の前に、二相分離工程、液体抽出工程、固体抽出工程のいずれも含まないことを提供する。
【0056】
第二の態様は、以下の工程を含む方法を提供する:
可溶性ポリチオフェンを含む第一の溶液を提供する工程、
少なくとも1つの金属錯化剤を含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合してポリチオフェンを沈殿させる工程、および
沈殿したポリチオフェンを単離する工程。
【0057】
第三の態様は、以下の工程を含む方法を提供する:
可溶性レジオレギュラーポリチオフェンを含む第一の溶液を提供する工程、
少なくとも1つの金属錯化剤を含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合してレジオレギュラーポリチオフェンを沈殿させる工程、
沈殿したレジオレギュラーポリチオフェンを単離する工程。
【0058】
第四の態様は、以下の工程を含む方法を提供する:
可溶性導電性ポリマーと第一の溶媒系とを含む第一の溶液を提供する工程、
(i)ニッケルホスフィン化合物と配位子交換を受けることができる少なくとも1つの薬剤と、(ii)導電性ポリマーを沈殿させるよう適合させた第二の溶媒系とを含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合して導電性ポリマーを沈殿させる工程、
沈殿した導電性ポリマーを単離する工程。
【0059】
別の態様は、第一、第二、第三、または第四の態様に従う方法によって調製した精製ポリマーを提供する。
【0060】
なお別の態様は、第一、第二、第三、または第四の態様に従う方法によって調製した精製ポリマーを含むデバイスを提供する。
【0061】
別の態様は、可溶性導電性ポリマーを提供し、この可溶性導電性ポリマーの金属総含量は約50 ppmまたはそれ未満である。
【0062】
なお別の態様は、可溶性導電性ポリマーを提供し、この可溶性導電性ポリマーの金属総含量は約50 ppmまたはそれ未満であり、このポリマーは可溶性ポリチオフェンである。
【0063】
なお別の態様は、可溶性導電性ポリマーを提供し、この可溶性導電性ポリマーの金属総含量は約50 ppmまたはそれ未満であり、このポリマーは可溶性レジオレギュラーポリチオフェンである。
【0064】
別の態様は、第一の態様のポリマーがブロックコポリマーであることを提供する。
【0065】
なお別の態様は、第一の態様のポリマーが、ポリチオフェンセグメントを含むブロックコポリマーであることを提供する。
【0066】
なお別の態様は、第一の態様のポリマーが元素分析において残灰をもたらさないことを提供する。
【0067】
なお別の態様は、第一の態様のポリマーがICP-MSニッケル分析で1 ppm未満を与えることを提供する。
【0068】
なお別の態様は、第一の態様のポリマーがICP-MSマグネシウム分析で1 ppm未満を与えることを提供する。
【0069】
なお別の態様は、第一の態様のポリマーが、ICP-MSマグネシウム分析およびICP-MSニッケル分析でそれぞれ1 ppm未満を与えることを提供する。
【0070】
別の態様は、可溶性導電性ポリマーの精製ポリマーを含むデバイスを提供し、この可溶性導電性ポリマーの金属総含量は約50 ppmまたはそれ未満である。
【0071】
第一の溶液
第一の溶液は、可溶性導電性ポリマーを溶解するように適合され、1つまたは複数の化合物を不均一または均一な形態で含む第一の溶媒系を含むことができる。
【0072】
導電性ポリマーのための溶媒は、当技術分野で公知であり、有機溶媒、水性溶媒、および溶媒の混合物を含む。特に、THFなどのエーテルを使用することができる。開環メタセシス重合反応に用いる溶媒を使用することができる。
【0073】
第一の溶液は、必要に応じた1つまたは複数の作業工程を含むポリマー合成反応から得た溶液であり得る。所望の場合、溶媒の量を変化させることができ、例えば沈殿前にポリマーを濃縮するため、例えば蒸発によって溶媒の量を減少させることができる。
【0074】
特に、酸性の作業工程を用いて第一の溶液を提供することができる。
【0075】
いくつかの場合、第一の溶液は真溶液ではない場合があるが、むしろポリマーは分散を形成し、本明細書の目的に対して、これは真溶液として同等に機能し、本明細書では真溶液と見なされる。
【0076】
可溶性導電性ポリマー
可溶性導電性ポリマーを含む電気的に導電性のポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる「The Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、Wiley, 1990, 頁298-300に記載され、これにはポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、およびポリフルオレンが含まれる。この参考文献はまた、ブロックコポリマー形成を含むポリマーの混合と共重合を記載している。可溶性導電性ポリマーは、例えば重合環を含む複素環ポリマーであり得、当技術分野で公知のように環内に窒素または硫黄原子がある。
【0077】
高分子半導体は、例えばその全体が参照により本明細書に組み入れられる「Organic Transistor Semiconductors」、Katz et al., Accounts of Chemical Research, vol. 34, no.5, 2001, 頁365-367を含む頁359に記載されている。
【0078】
可溶性導電性ポリマーは、当技術分野で公知である。多くの場合、溶解性を与えるために側基で官能化または誘導体化されている共役したバックボーン構造が存在する。例えば2004年9月24日に出願された仮特許出願第60/612,641号、Williams et al. (「HETEROATOMIC REGIOREGULAR POLY (3-SUBSTITUTEDTHIOPHENES) FOR PHOTOVOLTAIC CELLS」)および2005年9月26日に出願された正規の米国特許出願第11/234,373号は、その全体が参照により本明細書に組み入れられ、これには、ポリマーの記載、図、および特許請求の範囲が含まれる。
【0079】
さらに2004年9月24日に出願された仮特許出願第60/612,640、Williams et al. (「HETEROATOMIC REGIOREGULAR POLY(3-SUBSTITUTEDTHIOPHENES) FOR ELECTROLUMINESCENT DEVICES」)および2005年9月26日に出願された正規の米国特許出願第11/234,374号は、その全体が参照により本明細書に組み入れられ、これには、ポリマーの記載、図、および特許請求の範囲が含まれる。
【0080】
2004年11月17日に出願された仮特許出願第60/628,202号、Williams et al. (「HETEROATOMIC REGIOREGULAR POLY (3-SUBSTITUTEDTHIOPHENES) AS THIN FILM CONDUCTORS IN DIODES WHICH ARE NOT LIGHT EMITTING」)および2005年11月16日に出願された正規の米国特許出願第11/274,918号は、その全体が参照により本明細書に組み入れられ、これには、ポリマーの記載、図、および特許請求の範囲が含まれる。
【0081】
側基を有するレジオレギュラーポリチオフェンを含む、合成方法、ドーピング、およびポリマー特性決定は、例えばその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,602,974号、McCullough et al.および第6,166,172号、McCullough et al.に提供される。さらなる記載は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる「The Chemistry of Conducting Polythiophenes」、Richard D. McCullough, Adv. Mater. 1998, 10, No.2, 頁93-116およびそこに引用される参考文献の記事に見出すことができる。当業者が使用可能な別の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる「the Handbook of Conducting Polymers」, 第2版、1998, 9章、McCullough et al., 「Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives」、頁225-258である。この文献は、29章、「Electroluminescence in Conjugated Polymers」、頁823-846にも記載があり、この全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0082】
ポリチオフェンは、例えば、Roncali, J., Chem. Rev. 1992, 92, 711;Schopf et al., Polythiophenes: Electrically Conductive Polymers, Springer: Berlin, 1997に記載されている。
【0083】
ブロックコポリマーは、例えば、「Block Copolymers, Overview and Critical Survey」、Noshay and McGrath, Academic Press, 1977に記載されている。例えば、この文書では、A-Bジブロックコポリマー(5章)、A-B-Aトリブロックコポリマー(6章)、および-(AB)n-マルチブロックコポリマー(7章)が記載されており、これは本発明においてブロックコポリマータイプの基礎をなすことができる。
【0084】
ポリチオフェンを含むさらなるブロックコポリマーは、例えばその全体が参照により組み入れられるFrancois et al., Synth. Met. 1995, 69, 463-466;Yang et al., Macromolecules 1993, 26, 1188-1190;Widawski et al., Nature (London), vol. 369, June 2, 1994, 387-389;Jenekhe et al., Science, 279, March 20, 1998, 1903-1907;Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 6855-6861;Li et al., Macromolecules 1999, 32, 3034-3044;Hempenius et al., J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 2798-2804に記載されている。
【0085】
一つの態様において、導電性ポリマーは3-置換ポリチオフェンである。別の態様において、導電性ポリマーは3-アルキルまたは3-アルコキシ置換ポリチオフェンである。
【0086】
狭いまたは広い分子量分布、つまり多分散性指標、例えば1.5またはそれ未満などを有するポリマーを用いることができる。分子量の制御を与えるリビング条件下で、ポリマーを調製することができる。重量平均分子量は例えば、約5,000〜約100,000または約5,000〜約25,000であり得る。
【0087】
一つの態様において、精製方法は、ニッケルおよびマグネシウム化合物を使用して導電性ポリマーを調製する工程を含むことができる。
【0088】
一つの態様において、精製方法は、グリニヤール開環メタセシス重合(GRIM)を含む開環メタセシス重合を使用して導電性ポリマーを調製する工程を含むことができる。
【0089】
一つの態様において、精製方法は、チオフェンモノマーの重合によって導電性ポリマーを調製する工程を含むことができる。
【0090】
所望の場合、少なくとも2つの可溶性導電性ポリマーまたはそれらの混合物を用いることができる。
【0091】
遷移金属、または通常もしくはそうでなければ望まない量の遷移金属を含む金属、または例えばマグネシウム、ニッケル、パラジウム、および白金を通常含む金属で調製されたポリマーが、通常使用される。
【0092】
第二の溶液
第二の溶液は、ポリマー沈殿に適合可能であり、第二の溶媒系を含むことができる。その溶媒中ではポリマーが、あったとしても僅かな溶解性しか有さない溶媒を選択することができ、ポリマーに対して非溶媒、または沈殿状況おいて非溶媒と称することができる。非溶媒の混合物を用いることができる。溶媒は、金属錯化剤に対して良好な溶解性を提供するよう適合されるべきである。メタノールおよびエタノールなどのアルコールを用いることができる。
【0093】
金属錯化剤
金属錯化剤は、第二の溶媒系に溶解され、精製が必要なポリマー内の1つまたは複数の金属と結合できる限り、特に制限されない。それは、比較的低い分子量化合物であるオリゴマー、またはポリマーであり得る。それは、2、3、4、5、または6つの結合基といった複数の結合基を含むキレート化合物であり得る。それは、バックボーン内または側基内に結合基を有するポリマーであり得る。金属錯化剤は、炭素、水素、および極性とルイス塩基特性を与える窒素または酸素といったヘテロ原子を含むことができる。金属錯化剤は、遷移金属の錯体化において公知であるように、例えば配位結合を与えることができる。
【0094】
1つの態様において、金属錯化剤は下記のように表すことができる:
X1 - R - X2
式中、X1およびX2は、同じであっても異なってもよく、金属と錯体形成できる基を表す。スペーサー基Rは、2つの結合基が確実に一つの金属原子に多重結合を与える位置にあるように補助する。例えば、R基はC2、C3、またはC4基であってよい。R基は、メチルまたはエチルなどのアルキルのような基でさらに誘導体化され得る。一つの態様において、XlおよびX2は=N(OH)であり得る。
【0095】
一つの態様において、例えば金属錯化剤は、少なくとも2つの結合基を持つキレート化合物を含む。一つの態様において、金属錯化剤は、少なくとも2つの窒素結合基を持つキレート化合物を含む。一つの態様において、金属錯化剤は、少なくとも2つのオキシム基を含むキレート化合物を含む。一つの態様において、金属錯化剤はグリオキシム化合物を含む。一つの態様において、金属錯化剤はジメチルグリオキシムを含む。
【0096】
一つの態様において、金属錯化剤にはクラウンエーテルが含まれる。例えばクラウンエーテルは、それぞれ例えばカリウムまたはナトリウムと錯体形成する18-クラウン-6エーテルまたは15-クラウン5エーテルであり得る。エーテル環のサイズは、特定の金属と錯体形成するよう調整することができる。クリプタンドおよびホストゲストタイプの錯化剤と同様に、例えば18-クラウン-6または12-クラウン-4など他のクラウンエーテルを使用することができる。
【0097】
一つの態様において、金属錯化剤は、複数の酸素原子を含む化合物を含む。
【0098】
金属錯化剤は、オリゴマーまたはポリマーであり得る。一つの態様において、錯化剤には、窒素原子または酸素原子を含むポリマーが含まれる。一つの態様において、錯化剤には、側基に窒素原子を含むポリマーが含まれる。一つの態様において、錯化剤にはアクリルアミドまたはピリジン官能基が含まれる。例には、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)およびポリ(N-ビニルピリジン)が含まれる。別の例は、ポリ(アクリル酸)などのポリマーを含むカルボン酸である。
【0099】
一つの態様において、第二の溶液は少なくとも2つの金属錯化剤を含む。金属錯化剤の混合物を用いることができる。いくつかの場合、1つの錯化剤を第一の金属に対して選択することができ、第二の錯化剤を第二の金属に対して用いることができ、かつさらなる金属錯化剤を伴ってもよい。
【0100】
複数の錯化剤による同時のまたは経時的な方法を用いることができる。したがって、錯化剤を1つの溶媒系に混合して、全てを一工程でポリマーに曝露することができる。または、複数の第二の溶液を一つずつ用いる経時的なプロセスで、ポリマーを精製することができる。
【0101】
別の態様において、混合する工程では、第一の溶液と第二の溶液を一回だけ混ぜて導電性ポリマーを沈殿させ、その後ポリマーを単離する。
【0102】
別の態様では、ポリマーを単離する前に、二相分離工程、液体抽出工程、固体抽出工程のいずれも含まない。
【0103】
錯化剤の量または濃度は、所望のレベルまで金属不純物を低減できる限り、特に制限はない。例えば、錯化剤のうちどれだけの部分が金属に結合するかを考慮することができる。例えば一つの態様において、金属錯化剤の量は第二の溶液100 mL中少なくとも約0.01 gである。例えば一つの態様において、金属錯化剤の量は第二の溶液100 mL中少なくとも約0.1 gである。一つの態様において、金属錯化剤の量は第二の溶液100 mL中少なくとも約0.5 gである。一つの態様において、金属錯化剤の量は第二の溶液100 mL中少なくとも約1.0 gである。
【0104】
本発明の態様は理論によって制限されることはないが、図1および2は、特にポリチオフェンおよびレジオレギュラーポリチオフェンの態様に関連し得るいくつかの反応を図示する。場合によっては、ニッケル触媒を使用してポリチオフェンを調製する。図1では、一端にニッケル錯体を有するポリマーを示し、HClがポリマー鎖からニッケル触媒を切断することを示す。これは、末端基に金属を含まないポリマーを提供することができる。例えば、末端基はHおよびBrであり得る。図2では、ニッケル錯体が次に、金属錯化剤との配位子交換を受ける。
【0105】
さらなる態様は以下を提供する:
1)エタノールおよびメタノールに可溶性のニッケル錯体を形成するニッケルに対する錯化剤には、ジメチルグリオキシム、エリオクロムブラックT、二座および四座アミン、ビピリジン、およびテルピリジンが含まれる;
2)エタノールまたはメタノールに可溶性のマグネシウム錯体を形成するマグネシウムに対する錯化剤には、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、およびクリプタンドが含まれる;
3)水に可溶性のニッケルおよびマグネシウム錯体の両方を形成する錯化剤には、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)、グリシン、およびニトリロ酢酸が含まれる;
4)鉄除去(例えば3-アルキルチオフェンの酸化的重合から)のための錯化剤には、1,10-フェナントロリン、カテコール、およびサリチル酸が含まれる;
5)メタノールおよびエタノールに可溶性の高分子錯化剤には、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルピリジン)が含まれ、水に可溶性の高分子錯化剤には同様に、ポリ(アクリルアミド)およびポリ(ビニルアルコール)が含まれる。

【0106】
除去すべき金属量と比較して、錯化剤の量を、例えば3倍過剰または10倍過剰など大過剰であるように選択することができる。
【0107】
ポリマー試料中のマグネシウムの理論上の含有量は、精製前は、例えば約10重量%〜約15重量%であり得る。従来のメタノール抽出のみの後、マグネシウム含有量は、およそ500〜600 ppmであり得る。しかしながら、ジメチルグリオキシムでさらに洗浄することにより、マグネシウム含有量を約150 ppm〜約200 ppmまで減少させることができる。15-c-5クラウンエーテルで洗浄することにより、マグネシウム含有量を検出限界以下(10 ppm未満)まで減少させることができる。
【0108】
ポリマー中のニッケルの理論上の含有量は、精製前は、例えば約500 ppm〜約1,000 ppmであり得る(高分子量ポリマーを設計する場合、ニッケルの存在量がより少ない可能性もある)。従来のメタノール抽出のみの後は、ニッケル含有量はおよそ500 ppm〜約900 ppmであり得る(通常、メタノール抽出のみではほとんどニッケル含有量は減少しない)。ジメチルグリオキシムで洗浄することにより、ニッケル含有量を検出限界以下(例えば10 ppm未満)まで減少させることができる。
【0109】
マグネシウム塩は、メタノールに比較的可溶性であり、ニッケル塩はより可溶性が低く、そのためニッケル含有量を低減するためには、錯化剤による精製が非常に重要である。
【0110】
添加工程
ポリマーの沈殿を促進する温度、濃度、撹拌(stirring)または撹拌(agitation)、および注入の速度といった実験条件下で、第一の溶液を第二の溶液へ添加することによって、ポリマーを沈殿させることができる。
【0111】
ポリマーを容易に単離できるように粒子サイズを制御することができる。例えば、粒子サイズを小さくすると、ポリマーの洗浄に対して表面積が大きくなり、良好な精製が得られる。しかしながら、これはポリマーの単離をより困難にする場合もある。
【0112】
一つの態様において、沈殿は一回のみ実施される。
【0113】
単離工程
当技術分野で公知の方法を、ポリマーの単離に使用することができる。これらには例えば濾過が含まれる。
【0114】
所望の場合、抽出などのさらなる精製を用いることができる。
【0115】
一つの態様において、単離工程の前に、二相分離工程、液体抽出工程、固体抽出工程のいずれも含まない。
【0116】
精製ポリマー
本明細書に記載する方法に従い、精製をより迅速に行うことができる。大量のポリマーを溶解することができる。精製ポリマーは、有機溶媒中への比較的高い溶解性を提供することができる。結果として、例えばポリマーの分子量が大きい程、所与の溶媒に対して溶解し得る。可溶化に必要な実験的条件は、より簡易であってよい。例えばMALDI-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)などの質量スペクトル解析を含む、より良好な分析データもまた得ることができる。
【0117】
精製ポリマーは、より良好な流動性および光起電力性能を提供することができる。
【0118】
精製ポリマーの特性を決定して、金属含有量を判定することができる。特に、ニッケルおよびマグネシウムの含有量を検討することができる。金属総含量は、50 ppmもしくはそれ未満、または40 ppmもしくはそれ未満、または30 ppmもしくはそれ未満、または20 ppmもしくはそれ未満、または10 ppmもしくはそれ未満、または1 ppmもしくはそれ未満であり得る。
【0119】
例えば一つの態様において、単離したポリマーは、元素分析において残灰を含まない。
【0120】
別の態様において、単離したポリマーはICP-MSニッケル分析で1 ppm未満を与える。
【0121】
別の態様において、単離したポリマーはICP-MSマグネシウム分析で1 ppm未満を与える。
【0122】
別の態様において、単離したポリマーはICP-MSマグネシウム分析とICP-MSニッケル分析の両方で1 ppm未満を与える。
【0123】
別の態様において、単離したポリマーはICP-MSニッケルまたはマグネシウム分析で20 ppm未満を与える。
【0124】
別の態様において、単離したポリマーはICP-MSニッケルまたはマグネシウム分析で10 ppm未満を与える。
【0125】
適用およびデバイス
精製ポリマーは、比較的良好な光学的および電気的な特性を示すことができる。それらはまた、比較的良好な熱安定性および酸化安定性を提供することができる。
【0126】
例えばOLED、PLED、トランジスタ、電界効果トランジスタ、光電池、センサー、静電気消散コーティング、および導電性ポリマーが使用されている他のデバイスに、本ポリマーを用いることができる。
【0127】
特に、電界効果トランジスタ、正孔注入層および正孔輸送層が、重要な適用である。高い流動性を有するポリマーを調製することができる。
【0128】
ポリマーを層になるよう形成して、当技術分野で公知のように電極および中間層と共に使用することができる。
【0129】
他のポリマーと共にポリマーブレンドを調製することができる。
【0130】
実用実施例
非制限的な実用実施例もまた提供される。
【0131】
実用実施例1:ジメチルグリオキシム
ニッケルを含まないレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成のための基本手順:
乾燥した100 mL三つ口フラスコを窒素でフラッシングし、2,5-ジブロモ-3-ヘキシルチオフェン(9.8 g、30 mmol)および無水THF(300 mL)を加えた。ジエチルエーテル(Et2O)中t-ブチルマグネシウムクロライド(15 mL、30 mmol)の2M溶液をシリンジを介して添加し、反応混合物を60分間穏やかに還流した。反応混合物を室温まで冷却させ、この時点でNi(dppp)Cl2(0.3 g、0.54 mmol)を反応混合物へ添加した。室温で20分間重合を進行させ、次いで3 ml HCl(37重量%)および10 mlエタノールで反応混合物をクエンチングした。5分間撹拌した後、200 mlエタノールに溶解した3 gのジメチルグリオキシムを入れたビーカーに、溶液を注いだ。沈殿したポリマーを含む反応混合物を室温で2時間撹拌し、その後シンブル(thimble)を通して濾過した。シンブル内に収集されたポリマーを、エタノールを用いるソックスレー抽出によって4〜8時間精製した。ポリマーを真空で24時間乾燥させた。1H NMR、MALDI-TOF-MS、元素分析、およびICP-MSによって、ポリマーの特性を決定した。元素分析は、灰分が存在しないことを示した(灰分はマグネシウムおよびニッケル塩などの無機不純物から生じる)。精製ポリマーのICP-MS分析は、ニッケルが含まれない(Ni<1 ppm)ことおよび50〜200 ppmのマグネシウム含有量を示した。
【0132】
(表1)メタノール抽出のみで精製したレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)(PHT-MeOH)およびジメチルグリオキシムで精製したレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)(PHT-DMG)の元素分析

【0133】
(表2)メタノール抽出のみで精製したレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)(PHT-MeOH)およびジメチルグリオキシムで精製したレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)(PHT-DMG)の金属含有量

* ICP-MS分析から決定
【0134】
実用実施例2:クラウンエーテル
ニッケルおよびマグネシウムを含まないレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成のための基本手順:
乾燥した100 mL三つ口フラスコを窒素でフラッシングし、2,5-ジブロモ-3-ヘキシルチオフェン(9.8 g、30 mmol)および無水THF(300 mL)を加えた。ジエチルエーテル(Et2O)中t-ブチルマグネシウムクロライド(15 mL、30 mmol)の2M溶液をシリンジを介して添加し、反応混合物を60分間穏やかに還流した。反応混合物を室温まで冷却させ、この時点でNi(dppp)Cl2(0.3 g、0.54 mmol)を反応混合物へ添加した。室温で20分間重合を進行させ、次いで3 ml HCl(37重量%)および10 mlエタノールで反応混合物をクエンチングした。5分間撹拌した後、200 mlエタノールに溶解した3 gのジメチルグリオキシム(ニッケルに対する錯化剤)および3 mlの15-クラウン-5(マグネシウムに対する錯化剤)を入れたビーカーに、溶液を注いだ。沈殿したポリマーを含む反応混合物を室温で2時間撹拌し、その後シンブルを通して濾過した。シンブル内に収集されたポリマーを、エタノールを用いるソックスレー抽出によって4〜8時間精製した。ポリマーを真空で24時間乾燥させた。1H NMR、MALDI-TOF-MS、元素分析、およびICP-MSによって、ポリマーの特性を決定した。元素分析は、灰分が存在しないことを示した(灰分はマグネシウムおよびニッケル塩などの無機不純物から生じる)。精製ポリマーのICP-MS分析は、ニッケルおよびマグネシウムが含まれないことを示す(Ni、Mg<1 ppm)。
ICP-MS=誘導結合プラズマ質量分析法
【0135】
実用実施例3:高分子錯化剤
(表3)ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)による精製におけるレジオレギュラーポリ(3-ヘキシルチオフェン)のICP-MS


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性導電性ポリマーと第一の溶媒系とを含む第一の溶液を提供する工程、
少なくとも1つの金属錯化剤と、導電性ポリマーを沈殿させるよう適合させた第二の溶媒系とを含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合して導電性ポリマーを沈殿させる工程、
沈殿した導電性ポリマーを単離する工程
を含む方法。
【請求項2】
可溶性導電性ポリマーが複素環ポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
可溶性導電性ポリマーがポリチオフェンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
導電性ポリマーが、レジオレギュラー(regioregular)ポリチオフェンまたはレジオレギュラーポリチオフェンを含むブロックコポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
導電性ポリマーが3-置換ポリチオフェンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ニッケルおよびマグネシウム化合物を使用して導電性ポリマーを調製する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
グリニヤールメタセシス重合を使用して導電性ポリマーを調製する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第一の溶媒系が少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第一の溶液が、精製前に少なくとも1,000 ppmのニッケルおよびマグネシウム総含量を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
金属錯化剤が、少なくとも2つの結合基(binding group)を持つキレート化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
金属錯化剤が、少なくとも2つの窒素結合基を持つキレート化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
金属錯化剤が、少なくとも2つのオキシム基を含むキレート化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
金属錯化剤がグリオキシム化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
金属錯化剤がジメチルグリオキシムを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
金属錯化剤がクラウンエーテルを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
金属錯化剤が、複数の酸素原子を含む化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
錯化剤が、窒素原子を含むポリマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
金属錯化剤の量が第二の溶液100 mL中少なくとも約0.1 gである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
金属錯化剤の量が第二の溶液100 mL中少なくとも約0.5 gである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
単離したポリマーが元素分析において残灰を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項21】
単離したポリマーがICP-MSニッケル分析で1 ppm未満を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
可溶性ポリチオフェンを含む第一の溶液を提供する工程、
少なくとも1つの金属錯化剤を含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合してポリチオフェンを沈殿させる工程、
沈殿したポリチオフェンを単離する工程
を含む方法。
【請求項23】
可溶性レジオレギュラーポリチオフェンを含む第一の溶液を提供する工程、
少なくとも1つの金属錯化剤を含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合してレジオレギュラーポリチオフェンを沈殿させる工程、
沈殿したレジオレギュラーポリチオフェンを単離する工程
を含む方法。
【請求項24】
可溶性導電性ポリマーと第一の溶媒系とを含む第一の溶液を提供する工程、
(i)ニッケルホスフィン化合物と配位子交換を受けることができる少なくとも1つの薬剤と、(ii)導電性ポリマーを沈殿させるよう適合させた第二の溶媒系とを含む第二の溶液を提供する工程、
第一の溶液と第二の溶液を混合して導電性ポリマーを沈殿させる工程、
沈殿した導電性ポリマーを単離する工程
を含む方法。
【請求項25】
請求項1、22、23、または24記載の方法により調製された精製ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−502790(P2010−502790A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526944(P2009−526944)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077456
【国際公開番号】WO2008/063731
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】