説明

精製水を製造するための水処理方法

【課題】人工透析液に使用する精製水を得るため逆浸透処理を行なう前の原料水について、エンドトキシンを予め低減して逆浸透膜により濾過の効率を向上させる。
【解決手段】被処理水を逆浸透膜からなる逆浸透処理装置4を通過させて精製水を製造するための水処理方法において、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極11と、作用電極11と0.05ないし1.0mmの間隙を以って対向する対極13とを有し、前記間隙を前記被処理水の流路とする電解装置2を設け、水の電解が発生する電圧未満の電圧を前記作用電極11と対極13間に印加して被処理水の電解を行ない、含有するエンドトキシンが1000単位/L以下にされた被処理水を前記逆浸透処理装置4に送給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精製水たとえば人工透析器に使用する精製水を、水道水などの原水から製造するための水処理方法に関するものであって、特にエンドトキシンを良好に除去できる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシンはグラム陰性桿菌の細胞膜外壁を構成するリボ多糖であり、溶菌や菌体の破壊によって溶出して細菌毒素として作用する。グラム陰性桿菌であれば大腸菌のような一般的な細菌も上記のような毒作用の原因となり、人工透析の透析液などを介してエンドトキシンが体内に入ると悪寒、発熱、敗血症などを発生させることがある。また発熱を起こさない量のエンドトキシンでも炎症性サイトカインが生成し、長期の人工透析患者においてはこれにより発生した蛋白質の蓄積により、透析アミロイド症の原因となる。
【0003】
人工透析の透析液は原液を精製水で稀釈して作製されるが、この稀釈のための精製水は水道水などの原水を処理して得ている。一般の水道水は殺菌処理を受けているため菌類は1L当たり100以下と少なく飲料用には適しているが、エンドトキシンは通常10000単位/L程度含まれており医療用としては不適当である。透析用水としては10単位/L以下であること、望ましくは0まで低減することが求められている。このため透析用水は逆浸透処理により精製して作製するのが一般的であり、逆浸透膜は水分子のみを通過させるので、エンドトキシンなどは除去される。さらに逆浸透処理をする前に、原水中の微生物や微粒子をフィルターで除去したり、イオン交換樹脂の層を通過させて軟水化などの処理をしたり、活性炭により塩素などを除去するなどの前処理を組み合わせることが多い。
【0004】
しかしながら、このように逆浸透膜以外に種々の手段を併用してもエンドトキシンが完全に無い精製水を製造することは困難なのが実情であり、このため特別な手段をさらに併用することが提案されている。たとえば特開2007−237062号公報(特許文献1)には、逆浸透処理後の精製水をさらに電気再生式純水装置で処理することにより、エンドトキシンを完全に除去できるとしている。この電気再生式純水装置はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した樹脂をアニオン交換膜、カチオン交換膜で隔てられた充填室に充填し、これと平行して設けた電極間に通電するものである。これによりイオン交換樹脂の充填室から処理済みの精製水を取り出すことができる。
【0005】
また特開2007−252396号公報(特許文献2)にも逆浸透膜処理水を電気式脱イオン水製造装置を通すことにより、精製水中の微生物やエントドキシンを除去する方法が開示されている。引用文献2によると電気式脱イオン水製造装置は、カチオン交換膜とアニオン交換膜で区画される脱塩室にイオン交換体を充填し、この脱塩室の両側に濃縮室を設け、これらの脱塩室と濃縮室を陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室の間に配置したものであり、電圧を印加しながら精製水を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−237062号公報
【特許文献2】特開2007−252396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の特開2007−237062号公報や特開2007−252396号公報に記載の方法においては、脱イオン作用と電解による殺菌作用によって系内に細菌が繁殖するのを防止するので、エンドトキシンの無い精製水を得ることができるとしている。しかし逆浸透膜で濾過された精製水は水分子のみである筈のところ、多くの場合にエンドトキシンが含有しているのが実情である。
【0008】
逆浸透膜による濾過の効率は原水の水質の影響を受け、原水中にエンドトキシン量が多いと、濾過水のエンドトキシンも増加し、またエンドトキシンを阻止する率を向上させようとすると濾過の効率が低下する。このためエンドトキシン含有量が10単位/L以下の精製水を得ようとすると処理した原水の10%程度しか精製水が得られないのが一般的である。このようなことから本発明は逆浸透処理を行なう前の原料水に対して処理を行うことにより、逆浸透膜による濾過の効率を向上させてエンドトキシンの少ない精製水を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記課題を解決するものであって、被処理水を逆浸透膜からなる逆浸透処理装置を通過させて精製水を製造するための水処理方法において、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極と、作用電極と0.05ないし1.0mmの間隙を以って対向する対極とを有し、前記間隙を前記被処理水の流路とする電解装置を設け、水の電解が発生する電圧未満の電圧を前記作用電極と対極間に印加して被処理水の電解を行ない、含有するエンドトキシンが1000単位/L以下にされた被処理水を前記逆浸透処理装置に送給することを特徴とする精製水を製造するための水処理方法である。
【0010】
ここにおいて、電解装置により電解が行なわれた被処理水は貯水槽に貯められ、逆浸透処理装置には前記貯水槽から被処理水が送給されることも特徴とする。
またさらに、作用電極に印加する電解電圧は、Ag/AgCl基準電極に対して1.2〜2.5Vであることも特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
水道水には通常10000単位/L程度のエントドキシンが存在するが、本発明によれば逆浸透処理前の処理水を1000単位/L以下に低減することが可能であり、これにより逆浸透膜による濾過の効率を向上させてエンドトキシンの少ない精製水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水処理方法に使用する装置の配置図である。
【図2】本発明の水処理方法に使用する装置の配置図である。
【図3】本発明に使用する電解装置を示す軸方向に平行な断面図である。
【図4】図3におけるA−A´矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水処理方法は、基本的には被処理水を逆浸透膜からなる逆浸透処理装置を通過させて精製水を製造するものであるが、電解装置を付加してこれにより処理された水を逆浸透処理装置に送給することを特徴点としている。逆浸透処理装置については特に限定するものではなく、逆浸透モジュールとこれに処理水を高圧で供給するポンプから成っている。逆浸透モジュールとしては平面膜モジュール、スパイラルモジュール、管型モジュールのいずれであってもよい。
【0014】
本発明の水処理方法に使用する装置の配置図を図1に示す。1は原水槽であるが、ここからポンプ7で送給された原料水は電解装置2に送られる。電解装置2から出た被処理水はイオン交換処理装置3を経て逆浸透処理装置4に送られ、得られた精製水は精製水槽5に貯められる。上記のイオン交換処理装置3は、従来からの逆浸透処理装置においても前処理用として一般に付加されているものであり、本発明の方法においても設けるのが好ましい。イオン交換処理装置はカルシウムイオン、塩素イオンなどの陽イオン、陰イオンを除去する。このような付加される装置は図1や後に示す図2に記載のものに限定されず、例えば原水中の微生物や微粒子を除去するためのフィルターや、水道水の殺菌のために添加されている塩素を活性炭により吸着除去する活性炭処理装置などをさらに付加することもできる。
【0015】
なお図1の水処理装置においては電解装置2は逆浸透処理装置4の上流に設けられいて、被処理水が電解装置から逆浸透処理装置に流れるようになっている。すなわち電解装置2と逆浸透処理装置4の間にはイオン交換処理装置3があるが、いずれにしても電解装置2と逆浸透処理装置4は流路で結合されている。しかし図2に配置図を示すように電解装置2により電解が行なわれた被処理水は貯水槽6に一旦貯められ、逆浸透処理装置4には貯水槽6から処理水が送給されるようにしてもよい。なお8はポンプであるが、ポンプは図1や図2に記載が無い位置にも適宜設けることができる。貯水槽6は複数あっても良く、その場合には1つの貯水槽に被処理水が流入しているとき、他の貯水槽から被処理水を送り出すこともできる。図2のような配置にすることにより、電解装置と逆浸透処理装置との処理速度が一致しなくても円滑な処理が可能になる。
【0016】
本発明の水処理方法に使用する電解装置は、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極と、作用電極と間隙を以って対向する対極とを有し、この間隙を被処理水の流路とするものである。図3および図4はこのような電解装置を示すものであって、図3は軸方向に平行な断面図、図4は図3におけるA−A´矢視断面図である。これらの図において11は作用電極であって(図4では位置関係を2点鎖線で示している)、薄い板状の電導性の基板の少なくとも表側の面、すなわち図4において少なくとも左側の面に導電性のダイヤモンド被膜が形成されている。また12は弗素樹脂など耐薬品性の電気絶縁体からなるスペーサであって、図4に見るように一つの細長い穴121が開いている。また13はチタンなどの耐蝕性を有する導電体のブロックからなる対極であって、スペーサ12を挟んで作用電極11のダイヤモンドが形成された面と対向している。したがって作用電極と対極との間隔はスペーサの厚みによって定められる。
【0017】
上記の作用電極11は導電性の薄板、たとえば厚さが0.7mm程度の導電性のシリコンの単結晶板を基板として数μmの大きさの微細なダイヤモンドの結晶からなる30μm程度の厚さの被膜を形成することによって作成される。ダイヤモンド被膜の形成はアセトンなどの炭素源を含有する水素ガス中でプラズマCVDにより行なえる。なおダイヤモンドに導電性を付与するために酸化硼素などを前記炭素源に溶解することにより硼素をドープする。
【0018】
前記スペーサ12の穴121によって形成される一つの空間14にそれぞれ開口して、被処理液の導入口15および排出口16があるが、これらはいずれも対極13のブロックに設けられている。すなわち被処理液の導入口15および排出口16は対極13のブロックに穴をあけることによって形成され、被処理液の導入、排出のための流体継手17、18が対極のブロックにねじ込まれている。なお19は対極13への通電端子である。
【0019】
また30は参照電極であって、先端が対極と同一面になるように対極のブロックにねじ込んで取り付けられている。ここではAg−AgCl系の例を示しているが、弗素樹脂のような耐薬品性の容器301の中に飽和KCl溶液をゼラチンによりゲル状にしたものが電解液302として充填されている。さらにこの中に表面をAgClにしたAg線が電極材303として挿入されている。また304は参照電極の電解液302と被処理液とを隔てる多孔質セラミックスなどのフィルターである。参照電極は本発明の電解処理装置としては必須のものではないが、作用電極と対極間の正確な電圧を測定するため設けることは好ましい。
【0020】
また作用電極11の電極板の裏面、すなわち対極13と対向する面の反対側には作用電極への通電板20が設けられ、作用電極11に接触している。21は作用電極11への通電端子である。また22は耐薬品性の電気絶縁体からなるシールカバーであって、図示しない複数の止めねじによって前記の対極13のブロックと結合されており、Oリング23、24でシールすることにより電解装置の内部を密閉する。また前記の通電板20の一部にOリング26を設けてその内側に被処理液が入らないようにし、液体を介さず直接に通電板を電極板の裏面に電気的接触させる。また27は対極13の金属ブロック全体を覆うプラスチック製の絶縁カバーである。
【0021】
なお後述のように本発明においては、ダイヤモンド電極では比較的高い電圧範囲でも水の電解が生じないことを利用して、水の電解を発生させずにエンドトキシンを分解するものである。しかしながら作用電極11の裏面および端面は必ずしもダイヤモンド被膜が形成されているわけではなく、また通電板20についても当然にダイヤモンド被膜が無い。したがって被処理液が電極板などにおけるダイヤモンド被膜が無い部分に回り込むと水の電解が発生するおそれがあるが、作用電極11の電極板の端面や、通電板との接触部分以外の裏面も被処理液との接触を許容する構造にしている。このようにしても液の流れの無い個所では気泡が発生してもその部分に止まり、金属の表面が気泡で覆われて通電しなくなるので水の電解はそれ以上進行しない。もし被処理液が作用電極のスペーサの孔121に面した範囲内に止まるようにシールしようとすると、作用電極と対極の間を大きな力で加圧しなければならず電極板の破損の問題から困難である。したがって上記のように作用電極の電極板における対極と対向する面と反対側の面の一部分、すなわち通電部分以外は被処理液との接触を許容する構造にすることは実用上重要である。
【0022】
本発明の方法は上記のような電解装置を使用して、Ag/AgCl基準電極に対して1.2〜2.5Vの電圧を作用電極に印加して電解を行なう。本発明における電解処理は水の電解が生じない限度の電圧で行なうものであるが、上記のように電解装置の作用電極としてダイヤモンド電極を使用することにより高い電圧でなければ分解しない分子の原子間の結合を切断することも可能となり、本発明が目的とするエンドトキシンの分解、不活性化を行なうことができる。すなわち従来の電解装置における作用電極である白金電極などでは電解電圧が1.2Vを超えると水の電気分解が発生するが、本発明で使用する電解装置は約2.5V(Ag/AgCl基準電極に対して)まで水の電気分解が発生しない。水が電解するような条件においても並行してエンドトキシンの分解は行なわれるが、水の電解が発生するとこれにエネルギーが費やされるのでエンドトキシンの分解状況が不安定になる。なお電解電圧は高い方がエンドトキシンの分解が促進され、1.3V以上が好ましいが、1.9Vを超えるとその効果が飽和する。したがって電解電圧は1.3〜1.9Vがより好ましい。
【0023】
本発明において水が電解しない電圧範囲でエンドトキシンの分解を行なうには、前記のように作用電極11のダイヤモンド被膜を有する面と対極13との間隔を1.0mm以下といった狭い間隙にする必要がある。なお作用電極と対極との間隔は0.05mmより小さいと作用電極と対極とが接触するおそれがあるので、0.05mm以上が適当である。なお、このような電解によるエンドトキシンの分子の分解が、なぜ作用電極と対極とを0.05ないし1.0mmといった狭い間隙をもって対向させた場合にのみ発生するのかは不明である。
【0024】
本発明における被処理水である水道水などにおいては当然に電解質がほとんど含まれないが、水の硬度に対応したカルシウムイオンや殺菌のため添加された塩素に由来する塩素イオンなどが存在する。本発明においては水の電解が生じないような条件で電解するので、上記のような水道水に含まれる微量のイオンを電解質として利用する。逆浸透処理の前段の処理として一般に設けられるイオン交換処理装置を本発明の水処理装置においても設けるのが好ましいが、図1や図2に示したように電解装置の後段に設ける。もし電解装置の前段に設けると電解質が極めて少なくなって電解処理が困難になる。
【0025】
本発明の水処理方法において水道水を電解したときの電流値は、作用電極の実効面積、すなわち図3、図4においてスペーサの穴121に面した部分の面積が、約2.8cmの場合において数十μA〜数百μA程度である。水道水の不純物は地域によって大きく相違するだけでなく、同じ蛇口からの水であっても時間的な変動が大きい。さらにまた容器に汲み置きした水においては経時的な変化もある。水道水にはエンドトキシン以外にも電解の対象となる様々な不純物が当然に入っており、上記のような電解電流はエンドトキシンの分解だけによるものではない。電解電流自体の変動が大きいこともあって、電解電流値の経過の測定によってエンドトキシンの分解の程度を知ることは、このようなことから不可能である。
【0026】
なお作用電極と対極との間隔が1.0mmより大きくても、水の電解が生じない電圧範囲において電解電流は観測されるが、これは成分の分解によるものではなく分子からの電子の離脱によるものである。この場合、検出される電流は1μA以下の程度であって、本発明の場合よりずっと小さい。
【0027】
上記のようにして電解装置によりエンドトキシンを分解、不活性化した被処理水は図1や図2に示すようにイオン交換処理装置などを経て逆浸透処理装置に送られ、ここで残留しているエンドトキシンが除去される。通常の水道水に含まれるエンドトキシンの分量は10000単位/L程度であるが、本発明の水処理方法においては電解装置により1000単位/L以下、好ましくは500単位/L以下にされる。逆浸透膜の性質として、除去すべき物質の初期濃度が高いほど除去の効率が低下する。このため通常の水道水を原水として逆浸透処理したとき、透析水として得られるのは処理した水の10%程度である。一方、本発明においては逆浸透処理に供される被処理水のエンドトキシン含有量を1000単位/L以下に低減することにより濾過の効率を向上させることができ、処理した水の30%以上が透析用水として利用可能となる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
図3および図4に示した電解装置により水道水の電解を行なって含有するエンドトキシンの分解、不活性化を行なった。作用電極と対極との間隔を0.5mmとし、水道水を1.5ml/minの流速で流しつつ電圧を変更した条件で電解を行ない、エンドトキシンの含有量を測定した。各条件の試料は、被処理水を電解装置に5分以上通過させた後、電解装置から出た水をエンドトキシンの汚染の無い容器に採取した。なおエンドトキシン濃度の測定は和光純薬株式会社製のリムルス試薬を使用して行なった。
【0029】
電解電圧(Ag/AgCl基準電極に対して)と電解処理後に残存するエンドトキシンとの関係を表1に示す。なお水道水である原水のエンドトキシン含有量は12400単位/Lであった。また表1に示す電圧の範囲において水の電解は発生しなかった。表1で見るように電解電圧1.0V以下ではほとんどエンドトキシンの低下が無いが、1.3V以上になると急激に低下する。このようにエンドトキシン含有量が1000単位/L以下になると、逆浸透処理において濾過の効率を向上させることができる。なお電解電圧を1.9Vを超えて高くしてもエンドトキシンの低下が頭打ちになることが判る。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例2)
実施例1で使用した電解装置において、スペーサ11の厚みが異なるものを使用することにより作用電極11と対極13との間隔を変える実験を行なった。また参照電極30の先端位置はいずれの場合も対極の電極面と同じにしたので、参照電極と対極との間隔も作用電極と対極との間隔と同じになる。水道水を1.5ml/minの流速で流しつつ各条件で電解を行ない、エンドトキシンの含有量を測定した。使用した原水、試料の採取方法や測定方法は実施例1と同様である。電解装置の作用電極印加電圧はAg/AgCl基準電極に対してすべて1.9Vにしたが、水の電解は発生しなかった。
【0032】
作用電極と対極との間隔と、電解処理後に残存するエンドトキシンとの関係を表2に示す。表2で見るように電極の間隔が1.0mm以下の条件ではエンドトキシンの低下が生じており、電極の間隔が狭いほど低下の程度が大きいが、2.0mmの場合にはエンドトキシンの低下が見られなかった。なお水道水である原水のエンドトキシン含有量は実施例1と同様に12400単位/Lであった。なお電極の間隔が1.0mm以下の条件では100μA前後の電解電流が観察されたが、2.0mmの場合には電解電流は測定感度ぎりぎりのわずかしか検出されなかった。
【0033】
【表2】

【符号の説明】
【0034】
1 原水槽
2 電解装置
3 イオン交換処理装置
4 逆浸透処理装置
5 精製水槽
6 貯水槽
7、8 ポンプ
11 作用電極
12 スペーサ
121 穴
13 対極
14 空間
15、16 溶出液の導入口および排出口
17、18 流体継手
19 通電端子
20 通電板
21 通電端子
22 シールカバー
23、24、26 Oリング
27 絶縁カバー
30 参照電極
301 容器
302 電解液
303 電極材
304 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を逆浸透膜からなる逆浸透処理装置を通過させて精製水を製造するための水処理方法において、ダイヤモンド薄膜を基板に生成させた作用電極と、作用電極と0.05ないし1.0mmの間隙を以って対向する対極とを有し、前記間隙を前記被処理水の流路とする電解装置を設け、水の電解が発生する電圧未満の電圧を前記作用電極と対極間に印加して被処理水の電解を行ない、含有するエンドトキシンが1000単位/L以下にされた被処理水を前記逆浸透処理装置に送給することを特徴とする精製水を製造するための水処理方法。
【請求項2】
電解装置により電解が行なわれた被処理水は貯水槽に貯められ、逆浸透処理装置には前記貯水槽から被処理水が送給されることを特徴とする請求項1記載の精製水を製造するための水処理方法。
【請求項3】
作用電極に印加する電解電圧は、Ag/AgCl基準電極に対して1.2〜2.5Vであることを特徴とする請求項1または2に記載の精製水を製造するための水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−56395(P2011−56395A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208691(P2009−208691)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(598165068)有限会社コメット (6)
【Fターム(参考)】