説明

精製水添ポリイソブテンならびにこれを含有する化粧品、医薬部外品、医薬品。

【課題】
水添ポリイソブテンの臭いがほぼ無臭で、かつ臭いの経時安定性に優れたいわゆる経時着臭のない、さらには皮膚に対する安全性を向上させた精製水添ポリイソブテンを提供する。

【課題を解決するための手段】
水添ポリイソブテンを、カラムクロマトグラフ法を用いて、波長260nm〜350nmの範囲における吸光度の最大値を0.06以下に低下させることにより、ほぼ無臭で、かつ経時安定性に優れたいわゆる経時着臭のない、さらには皮膚に対する安全性を向上させた精製水添ポリイソブテンを得、これを含有する化粧品、医薬部外品、医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添ポリイソブテンを、カラムクロマトグラフ法を用いて、波長260nm〜350nmの範囲における吸光度の最大値を0.06以下に低下させることにより、ほぼ無臭で、かつ経時安定性に優れたいわゆる経時着臭のない、さらには皮膚に対する安全性を向上させた精製水添ポリイソブテンを得、これを含有する化粧品、医薬部外品、医薬品を提供することにある。尚、この明細書に於いて、組成物とは薬事法上の化粧品、医薬部外品、医薬品のどれに属していても、属していなくとも、人体の外用に使用される全てを含む。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品用基油として使用されてきた炭化水素としては、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、スクワラン等が知られている。化粧品に使用される化合物は、直接皮膚へ塗布されることが多いことから、臭いとその経時安定性、安全性は重要な問題である。また、原油由来の炭化水素は多核芳香族炭化水素を含んでおり、発がん性があることが知られている。その含有量は安全性上問題となるものではないとの報告もされているが、直接皮膚へ塗布され、さらに皮膚に接触する時間も長いため、より多核芳香族炭化水素の含有量が少ないものが望まれている。炭化水素の一般的な精製法は、蒸留、溶剤抽出、水素添加、白土処理等が行われており、それらの工程の中で多核芳香族炭化水素は低減されるが、望ましいレベルまで多核芳香族炭化水素を取り除くことは不十分であった。また、一般的な精製法で得られた炭化水素は、加熱等により劣化しやすく、劣化により生じた物質が悪臭や経時着臭の原因となっており、一般的な精製法のみでは改質が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開昭62−205005号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、水添ポリイソブテン中に含まれる波長260nm〜350nmに吸収を認める物質の吸光度の最大値を0.06以下に低下させることにより、ほぼ無臭で、かつ臭いの経時安定性に優れたいわゆる経時着臭のない、さらには皮膚に対する安全性を向上させた化粧品、医薬部外品、医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、水添ポリイソブテンをカラムクロマトグラフ法等の精製法を用いて精製を行う事により、ほぼ無臭で、経時安定性に優れたいわゆる経時着臭のない、さらには皮膚に対する安全性を向上させた化粧料組成を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明に関する精製ポリイソブテンは、水添ポリイソブテンをカラムクロマトグラフ法によって精製処理する事により得ることができる。精製処理に用いられる水添ポリイソブテンは一般に市販されている水添ポリイソブテンでよい。一般に市販されている水添ポリイソブテンとはイソブテンとn―ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物あるいは主としてイソパラフィンからなる炭化水素の混合物であることを指す。
上記の水添ポリイソブテンをカラムクロマトグラフ法によって精製処理して、本発明に関する精製水添ポリイソブテンを得るには、まず、水添ポリイソブテンを吸着剤が充填されたカラムに通液して水添ポリイソブテン中に含まれる波長260nm〜350nmに吸収を認める物質を吸着剤に保持させる。用いられる充填剤としては、シリカゲル、アルミナ、活性アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、活性炭等の一種または二種以上を組み合わせて用いても構わないが、本発明者等が提案したカラムクロマトグラフ的手法(特開昭62−205005)は特に優れた、本発明に適した精製方法である。この方法によれば、経時安定性に優れたいわゆる経時着臭のない、皮膚に対する安全性を向上させた精製水添ポリイソブテンとすることが出来る。
【発明の効果】
【0007】
評価例1、試験例1の通り、実施例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンは、比較例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンと比較して、経時着臭しない結果となった。 また、評価例2の通り、実施例1〜2は波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルの極大吸収が0.06以下であり、0.07以上の比較例1〜2よりも低減していることから、臭い、経時安定性に優れ、さらには皮膚に対する安全性が期待できる。従って、化粧品、医薬部外品、医薬品の原料として好適に使用することができる。
【0008】
以下にこの発明の効果を明確にするために、実施例、比較例及び試験例を示す。しかし本発明はこの実施例によって限定される物ではない。また本発明に云う精製水添ポリイソブテンとは薬事法に云う化粧品、医薬部外品、医薬品のどれに属していても属していなくても人体の外用に使用する化粧、育毛を目的とする全てを含む。
【実施例】
【0009】
(実施例1)
炭素原子数12〜16個の水添ポリイソブテン200gを、吸着剤としてシリカゲル100gを充填したカラムに通液した後、更にn−ヘキサン250mlを通液する。これらの通過液からn−ヘキサンを蒸発留去して、精製水添ポリイソブテン188gを得た。この精製水添ポリイソブテンの波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルを測定したところ、吸光度の最大値は0.05であった。
【0010】
(実施例2)
炭素原子数12〜16個の水添ポリイソブテン200gを、吸着剤として活性炭25gを充填したカラムに通液した後、更にn−ヘキサン250mlを通液する。これらの通過液からn−ヘキサンを蒸発留去して、精製水添ポリイソブテン180gを得た。この精製水添ポリイソブテンの波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルを測定したところ、吸光度の最大値は0.06であった。
【0011】
(比較例1)
炭素原子数12〜16個の水添ポリイソブテン200gを、吸着剤としてシリカゲル50gを充填したカラムに通液した後、更にn−ヘキサン125mlを通液する。これらの通過液からn−ヘキサンを蒸発留去して、精製水添ポリイソブテン192gを得た。この精製水添ポリイソブテンの波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルを測定したところ、吸光度の最大値は0.07であった。
【0012】
(比較例2)
一般市販されている炭素原子数12〜16個の水添ポリイソブテンを用いた。このポリイソブテンの波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルを測定したところ、吸光度の最大値は0.08であった。
【0013】
(評価例1 経時着臭評価)
実施例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテン、比較例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンについて45℃における経時着臭の評価を行った。
【0014】
評価例1の結果を表1に示す。以上の結果から、実施例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンは、比較例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンと比較して、経時着臭のない優れた結果となった。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
(評価例2 UVスペクトルの測定)
実施例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテン、比較例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンについて、波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルを測定した。
【0018】
評価結果を図1に示す。以上の結果から、波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルの極大吸収は、実施例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンは0.05および0.06であり、比較例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンは、0.07および0.08であった。実施例1〜2は、比較例1〜2よりも
波長260nm〜350nmの範囲におけるUVスペクトルの吸光度の最大値が低減され、改善された結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】UVスペクトルの測定結果
【0020】
(試験例―1)
実施例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテン、比較例1〜2で得られた精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンを用いて、表3に示したヘアトリートメント処方において経時着臭の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0021】
試験例1の結果を表4に示す。以上の結果から、処方例1〜2の精製水添ポリイソブテンのヘアトリートメント処方は、処方例3〜4の精製水添ポリイソブテンおよび水添ポリイソブテンのヘアトリートメント処方と比較して、経時着臭のない優れた結果となった。
【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ポリイソブテンを、吸着剤が充填されたカラムに通液し、波長260nm〜350nmの範囲における吸光度の最大値を0.06以下に低下させたことを特徴とする精製水添ポリイソブテン。
【請求項2】
水添ポリイソブテンが8〜40個の炭素原子を有する請求項1に記載の精製水添ポリイソブテン
【請求項3】
請求項1〜2に記載の精製水添ポリイソブテンを配合することを特徴とする化粧品、医薬部外品、医薬品。



【図1】
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【公開番号】特開2012−167220(P2012−167220A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30455(P2011−30455)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000104995)クローダジャパン株式会社 (35)
【Fターム(参考)】