説明

精鉱バーナー及び自熔製錬炉

【課題】 反応塔側壁から十分な量の反応用気体を送風させて、効果的に精鉱反応を促進させる。
【解決手段】 精鉱バーナー10は、製錬原料24を反応塔2内に導入する精鉱シュート20と、精鉱シュート20を包囲し、管内の所定位置から下方に向かって縮径して形成され、反応用気体11を反応塔2内に導入する送風管21と、精鉱シュート20と送風管21の外周に設けられ、送風管21から流入された反応用気体11の流速を調整する風速調整器23とを備え、風速調整器23と送風管21とで形成される反応用気体11の流路27に、圧力損失を生じさせる凸部23aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応塔側壁から反応塔内に反応用気体の一部を吹込むようにした自熔製錬炉における精鉱バーナー及び自熔製錬炉に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化精鉱を原料とする製錬炉の一つに自熔炉と呼ばれる自熔製錬炉がある。自熔製錬炉は、例えば、頂部に精鉱バーナーが設けられた反応塔と、反応塔の下部に一端が接続され、側面にスラグホール及びマットホールが設けられたセトラーと、セトラーの他端に接続された排煙道とを備える。
【0003】
自熔製錬炉を用いて製錬原料を製錬する操業方法では、製錬精鉱、フラックス、補助燃料等からなる製錬原料が、予熱された反応用気体とともに、精鉱バーナーから反応塔内に吹き込まれる。反応塔内において、製錬原料の可燃成分である硫黄と鉄とが高温の反応用気体と反応し、熔体となってセトラーに溜められる。セトラーでは、熔体が比重差によってCuSとFeSとの混合物であるカワと、2FeO・SiOを主成分とするカラミとに分けられる。カラミは、カラミ抜き口から排出されて錬カン炉に導入される。カワは、次工程である転炉からの要求に応じて、マットホールから適量が抜き出される。
【0004】
反応塔内で発生する高温排ガスは、セトラー及び排煙道を通って排熱ボイラーで冷却される。電気錬カン炉に入ったカラミは、電極によって通電された電熱によって加熱保持され、必要に応じて電気錬カン炉に挿入された塊状鉱石や塊状フラックス等と混合され、銅分がさらに炉底に沈降し、残った銅分を含んだカラミのみが抜き口から炉外に排出される。
【0005】
このような自熔製錬炉では、製錬原料が反応塔内を落下する間に反応を完結させることが重要である。反応が完結しない場合には、製錬原料の未反応物の一部が高温排ガスとともに飛散して煙灰となって排熱ボイラー内に堆積固着してしまう。また、製錬原料の未反応物の一部が未熔解物として反応塔の下部の熔体表面上に堆積してしまう。
【0006】
煙灰発生率が増加すると、煙灰溶解用の補助燃料を増加させる必要があり、コストが増加してしまう。また、排熱ボイラー内に固着した煙灰は、次第に成長してボイラーの電熱効率を低下させてしまうとともに、剥離、落下して排熱ボイラーを破壊してしまうおそれがある。また、熔体表面に堆積した製錬原料の未熔解物は、カラミの生成を妨げ、カラミの温度やカラミの品質を変動させてしまう原因となってしまう。
【0007】
このような事態を回避し、反応塔内で製錬原料と反応用気体とを均一に混合し、製錬原料を完全に反応させるため、種々の改良を施した自熔製錬炉の操業方法が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、頂部に精鉱バーナーを有する自熔製錬炉において、反応塔の側壁部に、反応塔内に向けて反応用気体を吹込むための送風ノズルを設置する方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、送風ノズルを設置することにより、精鉱バーナーにより形成されるジェット流を乱流にし、操業性の低下や炉体各部の損傷を招くことなく、反応塔内での製錬原料と反応用気体との均一な混合を確保し、かつ、製錬原料の塔内滞留時間の延長を図り、精鉱反応(製錬原料と反応用気体との反応)を促進させるようにしている。
【0009】
しかしながら、これまでの自熔製錬炉では、特許文献1に記載の技術のように反応塔の側壁部からも反応用気体を吹込むための送風ノズルを設けた場合でも、その送風ノズルから十分な風量の反応用気体を吹込ませることができなかった。その結果、十分に精鉱バーナーにより形成されるジェット流を乱流にする効果が発揮し得ず、効果的に精鉱反応を促進させるまでには至っていない。
【0010】
この原因の一つとして、反応塔頂部の精鉱バーナーから吹込まれる反応用気体と、側壁部の送風ノズルから吹込まれる反応用気体とが、同一の反応用気体供給部に貯蔵されて供給されるようになっていることが考えられる。しかしながら、各反応用気体を、別々の反応用気体供給部から供給しようとすると、別に新たな設備を設けなければならず、また、反応用気体供給部を設置するための場所を確保しなければならなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平01−252734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、反応用気体の一部を反応塔側壁から反応塔内に吹込むようにした自熔製錬炉において、反応塔側壁から十分な量の反応用気体を送風させて、効果的に精鉱反応を促進させることができる精鉱バーナー及び自熔製錬炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、自熔炉製錬炉において反応塔頂部の精鉱バーナーに備えられた風速調整器と送風管とで形成される流路に、圧力損失を生じさせる凸部を形成することで、送風ノズルから吹込む反応用気体量を増加させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る精鉱バーナーは、反応塔頂部に設けられ、製錬原料を燃料及び反応用気体とともに供給する精鉱バーナーと反応塔の側壁に取付けられ反応用気体を送風するための送風ノズルとを備える反応塔と、精鉱バーナーと送風ノズルとに反応用気体を供給する反応用気体供給部とを有する自熔製錬炉の精鉱バーナーにおいて、当該精鉱バーナーは、製錬原料を上記反応塔内に導入する精鉱シュートと、精鉱シュートを包囲し、管内の所定位置から下方に向かって縮径して形成され、反応用気体を反応塔内に導入する送風管と、精鉱シュートの外周に設けられ、送風管から流入された反応用気体の流速を調整する風速調整器とを備え、風速調整器と送風管とで形成される反応用気体の流路に、圧力損失を生じさせる凸部が形成されている。
【0015】
本発明に係る自熔製錬炉は、頂部に設けられ製錬原料を燃料及び反応用気体とともに供給する精鉱バーナーと、側壁に取付けられ反応用気体を送風するための送風ノズルとを備える反応塔と、精鉱バーナーと送風ノズルとに反応用気体を供給する反応用気体供給部とを有する自熔製錬炉において、精鉱バーナーは、製錬原料を反応塔内に導入する精鉱シュートと、精鉱シュートを包囲し、管内の所定位置から下方に向かって縮径して形成され、反応用気体を反応塔内に導入する送風管と、精鉱シュートの外周に設けられ、送風管から流入された反応用気体の流速を調整する風速調整器とを備え、風速調整器と送風管とで形成される反応用気体の流路に、圧力損失を生じさせる凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、風速調整器と送風管とで形成される流路内を流れる反応用気体の圧力損失が大きくなり、反応用気体が送風管を介して反応塔内に入りにくくなるため、送風ノズルから反応塔内に十分な量の反応用気体を送風させて、効果的に精鉱反応を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る自熔製錬炉の操業方法で用いられる自熔製錬炉の構成例を示す断面図である。
【図2】自熔製錬炉における反応塔の構成例を示す断面図である。
【図3】反応塔、反応塔内に反応用気体を供給する反応用気体供給部及び反応用気体供給部を制御する制御装置の構成例を示すブロック図ある。
【図4】自熔製錬炉における精鉱バーナーの構成例を示す断面図である。
【図5】精鉱バーナーの構成例を示す一部拡大図である。
【図6】精鉱バーナーの構成例を示す一部拡大図である。
【図7】送風ノズルからの反応用気体の送風速度と、煙灰発生率との関係を示すグラフである。
【図8】比較例で用いた精鉱バーナーの構成例を示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)の一例について、図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.自熔製錬炉
2.精鉱バーナー
3.自熔製錬炉の操業方法
4.実施例
【0019】
<1.自熔製錬炉>
図1は、本実施の形態に係る自熔製錬炉の構成例を示す断面図である。図1に示すように、自熔製錬炉1は、例えば、反応塔2と、反応塔2の下部に一端が接続され、側面にスラグホール5及びマットホール7が設けられたセトラー3と、セトラー3の他端に接続された排煙道8とを備える。自熔製錬炉1では、例えば2300〜3500t/日の製錬原料(銅精鉱、コークス、フラックス等)を処理することができる。
【0020】
図2は、自熔製錬炉1における反応塔2の構成例を示す断面図である。また、図3は、反応塔2、反応塔2内に反応用気体11,11’を供給する反応用気体供給部15及び反応用気体供給部15を制御する制御装置16の構成例を示すブロック図ある。
【0021】
反応塔2は、例えば図2に示すように、反応塔2の頂部に設けられた精鉱バーナー10と、側壁に取付けられ反応用気体11’を送風するための送風ノズル12とを備える。反応塔2では、例えば、製錬原料と、燃料と、反応用気体11,11’とが供給され、反応用気体11によってジェット流を形成して、精鉱反応が起こる。
【0022】
精鉱バーナー10は、製錬原料を燃料及び反応用気体11とともに反応塔2内に供給し、上述したように反応用気体11によって反応塔2内でジェット流を形成して、精鉱反応を起こさせる。精鉱バーナー10の構成については、後に詳述する。
【0023】
送風ノズル12は、例えば、反応塔2の側壁の相互に反応塔中心点を通る鉛直線上に線対称になる位置に、鉛直線方向に相対するように少なくとも一組以上が取付けられており、反応用気体11’を反応塔2内に送風する。送風ノズル12から送り込まれる反応用気体11’は、精鉱バーナー10から送り込まれる反応用気体11と同一の反応用気体供給部15から供給される。このように、精鉱バーナー10のみからではなく、反応用気体11’を反応塔2の側壁から反応塔2内に送風することにより、精鉱バーナー10から吹き込まれた反応用気体11によって形成されたジェット流を攪拌して乱流化させて、製錬原料24の粒子と反応用気体11との反応効率を高めることができる。また、製錬原料24の反応塔2内での滞留時間を延長させることができる。このように、滞留時間を延長させることにより、製錬原料24が反応塔2内を落下する間に反応を完結させて、製錬原料24の未反応物の一部が高温排ガス13とともに飛散して煙灰となって排熱ボイラー14内に堆積固着してしまうことを防止することができる。さらに、滞留時間を延長させることにより、製錬原料24の未反応物の一部が未熔解物として反応塔2の下部の熔体表面上に堆積してしまうことを防止することができる。
【0024】
送風ノズル12は、その取付け位置を固定式としてもよく可動式としてもよいが、反応塔2の側壁中央部に設けられていることが好ましい。送風ノズル12を反応塔2の天井部に設けた場合には、精鉱バーナー10から吹き込まれた反応用気体11によって形成されたジェット流を十分に攪拌して、反応塔2内部全体に広がる乱流とすることができない。また、送風ノズル12を反応塔2の下方部に設けた場合には、ジェット流の低い位置に反応用気体11’が吹き当てられるため、乱流の一部分或いは大部分がセトラー3内に形成され、粒子間の衝突の機会が減少し、粒子と酸素との接触も不十分となってしまう。その結果、製錬原料24が熔解する熔解反応が完結しないままセトラー3部から炉外に煙灰として排出されてしまう。また、セトラー3の熔体表面上に落下する粒子が増加してしまう。
【0025】
反応用気体供給部15は、反応用気体11,11’を貯蔵し、送風管21を介して反応塔2内に反応用気体11を供給するとともに、送風ノズル12を介して反応塔2内に反応用気体11’を供給する。このように、反応塔2内には、反応用気体供給部15から供給された反応用気体11と反応用気体11’との合計量が送り込まれる。反応用気体11,11’としては、空気、又は空気と酸素とを混合させた酸素富化空気を用いることができる。
【0026】
制御装置16は、例えば図示しない反応塔2の操作部における操作に基づいて、精鉱バーナー10から吹込む反応用気体11の量と、送風ノズル12から吹込む反応用気体11’の量との割合を変化させるように、反応用気体供給部15を制御する。
【0027】
セトラー3は、保持容器として機能し、熔解された製錬原料24を、比重差によってスラグ(カラミ)4と、マット(カワ)6とに分離し、スラグ4の層と、マット6の層を形成する。セトラー3は、スラグホール5が設けられており、スラグホール5を介して、セトラー3で分離したスラグ4を排出して錬カン炉30に導入する。また、セトラー3は、マットホール7が設けられており、マットホール7を介して、セトラー3で分離したマット6を排出する。マット6は、マットホール7から次工程である転炉のバッチプロセスでの要求に応じて適宜抜き出される。
【0028】
錬カン炉30には、樋31及び流入口32を介してスラグホール5から抜き出されたスラグ4が流入される。錬カン炉30では、自熔製錬炉1から流入したスラグ4を加熱しながら、スラグ4中に懸垂するマット6をセットリングすることにより、比重差によってスラグ4とマット6とに分離する。マット6は、炉底に沈澱した後、マットホールから錬カン炉30の外、例えば、マット6を受け入れるためのレードルを介して転炉に導出される。
【0029】
<2.精鉱バーナー>
図4は、自熔製錬炉1における精鉱バーナー10の構成例を示す断面図である。図5及び図6は、精鉱バーナー10の構成例を示す一部拡大図である。精鉱バーナー10は、精鉱シュート20と、送風管21と、バーナーコーン22と、風速調整器23とを備える。
【0030】
精鉱シュート20は、製錬原料24を反応塔2内に送り込むための管状部材であり、反応塔2に向かって鉛直方向に延びている。精鉱シュート20の中心部には、反応用気体11を昇温させるための補助燃料を送り込む補助燃料バーナー25が反応塔2に向けて延びている。また、その補助燃料バーナー25の先端には、精鉱シュート20から送り出された製錬原料24が衝突する位置に、分散コーン26が設けられている。この分散コーン26は、製錬原料24を分散させて反応用ガスと接触し易くし、いわゆるヒープ(未熔解物の塊)の発生を防止する。
【0031】
送風管21は、精鉱シュート20を包囲する、すなわち、精鉱シュート20を内包する状態で設けられる管状構造体である。送風管21は、管内の所定位置より下方に向かって縮径している。送風管21は、反応用気体供給部15から供給された反応用気体11を、反応塔2内に導入する。
【0032】
バーナーコーン22は、例えば、管状構造体をなし、その上端が送風管21の下端に接続されており、反応塔2内に製錬原料24と反応用気体11とを送り込むことができるようになっている。
【0033】
風速調整器23は、精鉱シュート20と送風管21との間、例えば精鉱シュート20の外周に設けられており、精鉱シュート20と送風管21とで形成される反応用気体11の流路幅を所定の大きさに狭めるような形状、例えば、略円筒形状に形成されている。このように形成された風速調整器23は、反応用気体11の流速を所定速度に調整可能とする。また、風速調整器23は、精鉱シュート20の軸に沿った方向に動く可動式となっており、精鉱シュート20の軸に沿った方向に可動することにより、反応用気体11の流速を調整することができる。
【0034】
ここで、反応用気体供給部15から供給される反応用気体11’は、上述したように送風ノズル12が少なくとも1組以上設けられているので、各送風ノズル12から反応塔2内への勢いが弱くなり、精鉱バーナー10側から反応塔2内に供給される反応用気体11と比較して反応塔2内に入りにくい傾向がある。そのため、製錬原料の量に応じた所定量の反応用気体を反応塔2内に導入する際には、精鉱バーナー10から吹込まれる反応用気体11の量の方が多くなり、送風ノズル12から十分な量の反応用気体11’が導入されない。
【0035】
そこで、精鉱バーナー10においては、風速調整器23と、送風管21とで形成される反応用気体11の流路27に、圧力損失を生じさせる凸部23aを形成する。このように精鉱バーナー10の流路27に凸部23aを形成することによって、流路27内を流れる反応用気体11に対して圧力損失を生じさせ、反応用気体供給部15から供給される反応用気体11を反応塔2内に入りにくくすることができる。その結果、凸部23aが形成されていない場合と比較して、反応塔2内において反応用気体11によって形成される反応塔2内の頂部側から下部側への力が弱くなるので、反応用気体供給部15から供給される反応用気体11’が、各送風ノズル12から反応塔2内に入りやすくなる。これにより、所定量の反応用気体を反応塔2内に導入するに際して、送風ノズル12から反応塔2内に吹込む反応用気体11’の量を増加させることができる。したがって、自熔製錬炉1では、送風ノズル12から反応塔2内に十分な量の反応用気体11’を送風させることが可能となり、効果的に精鉱反応を促進させることができる。
【0036】
以下、図4及び図5を参照しながら、風速調整器23に凸部23aが設けられた精鉱バーナー10の構成例について説明する。風速調整器23は、略円筒形状に形成され、風速調整器23の下端側に向けて次第に拡径した部材23Aと、略円筒形状に形成され、部材23Aとは段差23bを介して風速調整器23の半径方向の外側に向けて突出し、風速調整器23の下端側に向けて次第に縮径した部材23Bとを有する。なお、部材23Aは、風速調整器23の下端側に向けて次第に拡径した形状に限定されず、例えば部材23Bの外周と同径であってもよい。
【0037】
このように、風速調整器23は、長さ方向の下端側の所定位置から半径方向の外側に向けて突出した段差23bを有し、段差23bを介して、下端部に向けてテーパー状に縮径された略円筒形であり、下端部に向けてテーパー状に縮径され始める位置の外周部によって凸部23aが構成されている。この所定位置からテーパー状に縮径された風速調整器23の下端部は、流路27における反応用気体11の送風方向の幅が最も狭い流路部分28を形成する。
【0038】
図5に示すように、風速調整器23に凸部23aが構成されることによって、精鉱バーナー10を介して反応塔2内に導入される反応用気体11に対して圧力損失をより効果的に生じさせることができる。これにより、送風ノズル12から反応塔2内に吹込む反応用気体11’の量をより効果的に増加させることができ、精鉱反応を効果的に促進させることができる。
【0039】
風速調整器23の凸部23aは、部材23Bにおいて、段差23bと、テーパー状に縮径された部分の外周面23cとで形成される角部を有する。また、風速調整器23は、例えば、部材23Aにおいてテーパー状に縮径された外周面を下端側に延長した線から半径方向の外側に突出した部分を凸部23aとした場合に、凸部23aの自熔製錬炉1の高さ方向の断面形状が、三角形状となるように形成されている。凸部23aがこのような形状に形成されていることにより、流路27内を流れる反応用気体11の圧力損失がより大きくなり、送風ノズル12から反応塔2内に吹込む反応用気体11の量を効果的に増加させることができる。
【0040】
風速調整器23としては、例えば図6に示すように、上述した部材23Aと、略円筒形状に形成された部材23Cと、略円筒形状に形成され、風速調整器23の下端側に向けて次第に縮径した部材23Dとを有するものを使用することもできる。図6に示す風速調整器23を使用した場合には、長さ方向の所定位置の外周部にテーパー状に縮径された略円筒形からなるリング部材29を部材23Cの外周部に取付けることによって、風速調整器23に凸部23aを構成することができる。このようなリング部材29を用いることにより、図6に示すように凸部23aが形成されていない既存の風速調整器23を利用することができるため、新たな風速調整器23を製造するのに必要なコストを削減することができる。リング部材29は、例えば、溶接によって風速調整器23に取付けることができる。
【0041】
なお、風速調整器23の凸部23aは、上述した例に限定されるものではなく、風速調整器23と送風管21とで形成される流路27に、圧力損失を生じさせることが可能なものであれば、他の形状等であってもよい。
【0042】
<3.自熔製錬炉の操業方法>
次に、自熔製錬炉1の操業方法の一例について説明する。自熔製錬炉1において、例えば銅精鉱とフラックス(硅石)との混合物である製錬原料24が、反応用気体11とともに、反応塔2の頂部に設けられた精鉱バーナー10から反応塔2内に吹き込まれる。また、反応塔2内には、送風ノズル12からも反応用気体11’が吹き込まれる。
【0043】
反応塔2内に吹き込まれた精鉱等は、反応塔2の炉壁内の輻射熱、補助燃料の熱などにより昇温され、反応用気体11,11’と反応して熔体となり、セトラー3内に溜められる。
【0044】
反応塔2内に吹き込む反応用気体11,11’の量は、使用する自熔製錬炉1の大きさや、処理する精鉱量によって変化させることができる。例えば、自熔製錬炉1の炉内に装入可能な製錬原料24の量が2300〜3500t/日である自熔製錬炉1を用いた場合には、送風ノズル12から吹込む反応用気体11’の量を15000Nm/h以上とすることが好ましい。
【0045】
図7は、送風ノズル12からの反応用気体11’の送風速度と、煙灰発生率との関係を示すグラフである。図7に示すように、送風ノズル12から反応用気体11’を吹込む速度を速くすることで、煙灰発生率を良好にすることができる。
【0046】
自熔製錬炉1では、上述したように送風ノズル12から反応塔2内に十分な量の反応用気体11’を吹込むことができるので、送風ノズル12の内径の大きさを適宜調整することにより、送風ノズル12からの反応用気体11’の送風速度を適した速度にすることができる。これにより、精鉱反応を促進させて煙灰発生率を良好にすることができる。
【0047】
なお、精鉱バーナー10及び送風ノズル12から反応用気体11,11’を吹き込む速度は、使用する自熔製錬炉1の大きさや、処理する精鉱量によって適宜変更することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記のいずれかの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例では、頂部に精鉱バーナーと、側壁中央部付近に取付けられた送風ノズルとを有する反応塔と、反応塔の下部に一端を接続して設けられたセトラーと、セトラーの他端に接続して設けられた排煙道とを備える自熔製錬炉の操業を行った。実施例では、図5に示すような凸部23aが形成された風速調整器23を備えた精鉱バーナーを用いた。
【0050】
また、反応塔に導入する反応用気体の合計量30000Nm/hとし、精鉱バーナーから吹込む反応用気体量と、送風ノズルから吹込む反応用気体量との割合を1:1に設定した。なお、反応用気体量の割合の制御は、制御装置により、反応用気体供給部から精鉱バーナー及び送風ノズルに供給する反応用気体量の供給量を変化させることにより行った。
【0051】
比較例では、図8に示すような風速調整器230を備える精鉱バーナーを用いたこと以外は、実施例と同様に行った。すなわち、比較例では、実施例で使用した風速調整器23とは異なり、凸部23aを有していない風速調整器230を備えた精鉱バーナー100を用いたこと以外は、実施例と同様に自熔製錬炉の操業を行った。
【0052】
(送風ノズルから吹込む反応用気体量について)
凸部23aを有する風速調整器23を備えた精鉱バーナーを用いた実施例では、送風ノズルから吹込む反応用気体量を増加させることができた。
【0053】
具体的には、精鉱バーナーからの反応用気体量を15000Nm/hとし、送風ノズルからの反応用気体量を15000Nm/hとすることができ、制御装置にて設定した通り、精鉱バーナーから吹込む反応用気体量と、送風ノズルから吹込む反応用気体量を1:1の割合で反応塔内に導入することができた。
【0054】
これは、風速調整器と送風管とで形成される流路内を流れる反応用気体の圧力損失が大きくなり、精鉱バーナーからの反応用気体が反応塔内に入りにくくなったため、送風ノズルから十分な量の反応用気体を送風できたものと考えられる。
【0055】
したがって、実施例では、送風ノズルから十分な量の反応用気体を送風させて、効果的に精鉱反応を促進させることができることがわかった。
【0056】
一方、風速調整器23の長さ方向に沿った凸部23aを有しない風速調整器23を備えた精鉱バーナーを用いた比較例では、実施例のように、送風ノズルから十分な量の反応用気体を導入することができなかった。
【0057】
具体的には、比較例では、精鉱バーナーから吹込む反応用気体量と、送風ノズルから吹込む反応用気体量との割合を1:1に設定したにもかかわらず、精鉱バーナーからの反応用気体量が20000Nm/hとなり、送風ノズルからの反応用気体量が10000Nm/hとなった。
【0058】
このように、比較例では、十分な量の反応用気体を送風ノズルから導入することができなかった。
【符号の説明】
【0059】
1 自熔製錬炉、2 反応塔、3 セトラー、4 スラグ、5 スラグホール、6 マット、7 マットホール、8 排煙道、10,100 精鉱バーナー、11,11’ 反応用気体、12 送風ノズル、13 高温排ガス、14 排熱ボイラー、15 反応用気体供給部、16 制御装置、20 精鉱シュート、21,210 送風管、22,220 バーナーコーン、23,230 風速調整器、
23A,23B,23C,23D 部材、23a 凸部、23b 段差、23c 外周面、24 製錬原料、25 補助燃料バーナー、26 分散コーン、27 流路、28 流路部分、28a 流入側、29 リング部材、30 錬カン炉、31 樋、32 流入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部に設けられ製錬原料を燃料及び反応用気体とともに供給する精鉱バーナーと側壁に取付けられ反応用気体を送風するための送風ノズルとを備える反応塔と、該精鉱バーナーと該送風ノズルとに該反応用気体を供給する反応用気体供給部とを有する自熔製錬炉の精鉱バーナーにおいて、
当該精鉱バーナーは、
上記製錬原料を上記反応塔内に導入する精鉱シュートと、
上記精鉱シュートを包囲し、管内の所定位置から下方に向かって縮径して形成され、上記反応用気体を上記反応塔内に導入する送風管と、
上記精鉱シュートの外周に設けられ、該送風管から流入された反応用気体の流速を調整する風速調整器とを備え、
上記風速調整器と上記送風管とで形成される上記反応用気体の流路に、圧力損失を生じさせる凸部が形成されていることを特徴とする精鉱バーナー。
【請求項2】
上記風速調整器は、長さ方向の下端側の所定位置から半径方向の外側に向けて突出した段差を有し、該段差を介して、下端部に向けてテーパー状に縮径された略円筒形であり、
上記風速調整器の縮径され始める位置の外周部によって、上記凸部が構成されていることを特徴とする請求項1記載の精鉱バーナー。
【請求項3】
上記風速調整器は、上記長さ方向の下端側の所定位置の外周部に、テーパー状に縮径された略円筒形のリング部材が取付けられることによって、長さ方向の下端側の所定位置から半径方向の外側に向けて突出した段差を有し、該段差を介して、下端部に向けてテーパー状に縮径され、該縮径され始める位置の外周部によって上記凸部が構成されていることを特徴とする請求項1記載の精鉱バーナー。
【請求項4】
頂部に設けられ製錬原料を燃料及び反応用気体とともに供給する精鉱バーナーと、側壁に取付けられ反応用気体を送風するための送風ノズルとを備える反応塔と、該精鉱バーナーと該送風ノズルとに該反応用気体を供給する反応用気体供給部とを有する自熔製錬炉において、
上記精鉱バーナーは、
上記製錬原料を上記反応塔内に導入する精鉱シュートと、
上記精鉱シュートを包囲し、管内の所定位置から下方に向かって縮径して形成され、上記反応用気体を上記反応塔内に導入する送風管と、
上記精鉱シュートの外周に設けられ、該送風管から流入された反応用気体の流速を調整する風速調整器とを備え、
上記風速調整器と上記送風管とで形成される上記反応用気体の流路に、圧力損失を生じさせる凸部が形成されていることを特徴とする自熔製錬炉。
【請求項5】
上記風速調整器は、長さ方向の下端側の所定位置から半径方向の外側に向けて突出した段差を有し、該段差を介して、下端部に向けてテーパー状に縮径された略円筒形であり、
上記風速調整器の縮径され始める位置の外周部によって、上記凸部が構成されていることを特徴とする請求項4記載の自熔製錬炉。
【請求項6】
上記風速調整器は、上記長さ方向の下端側の所定位置の外周部に、テーパー状に縮径された略円筒形のリング部材が取付けられることによって、長さ方向の下端側の所定位置から半径方向の外側に向けて突出した段差を有し、該段差を介して、下端部に向けてテーパー状に縮径された略円筒形であり、該縮径され始める位置の外周部によって上記凸部が構成されていることを特徴とする請求項4記載の自熔製錬炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−224880(P2012−224880A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90959(P2011−90959)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】