説明

糖化反応促進剤及び糖の製造方法

【課題】バイオマスからバイオエタノールを製造する際の糖化反応促進剤として幅広く使用できる、バイオマスの分解性能が低下せず、保存安定性が高い糖化反応促進剤及びこの糖化促進剤を使用した糖の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する糖化反応促進剤。化合物(A)がグアニジン塩酸塩である。好ましくはさらに化合物(B)を含有する糖化反応促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖化反応促進剤及びこの糖化反応促進剤を使用する糖の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のために、世界的に二酸化炭素削減が叫ばれている。その中で注目を集めているのは、資源として利用されずに廃棄されている稲わら、籾殻、林地残材等の未利用バイオマス、特にセルロースを含む草、わら、木材等のセルロース系バイオマスからエネルギーを取り出して利用することである。バイオマスが注目を集めている理由の一つは、バイオマス中に含まれている炭素は元をたどれば植物が光合成により吸収・固定した大気中の二酸化炭素であり、バイオマスからエネルギーを取り出す際に二酸化炭素が排出されたとしても、全体として二酸化炭素の量は変化しておらず、いわゆるカーボンニュートラルになることである。また、バイオマスからエタノールやメタンガスなど燃料となる物質を取り出すことができるので、将来枯渇する化石燃料を代替することが期待されている。
【0003】
現在、ブラジルではサトウキビの糖から、アメリカではトウモロコシの可食部からバイオマス由来エタノール(バイオエタノール)が盛んに製造され、それぞれの国においてガソリン代替燃料として実用化されている。これらバイオエタノールは人間や家畜の食糧としても利用可能な部分から製造しているため、燃料原料としての利用が多くなると、食糧用の価格が高騰する等の問題がある。
【0004】
そこでバイオエタノールの原料として注目されているのは、食糧とはならない草や木などのセルロース系バイオマスである。しかし、セルロース系バイオマスを燃料物質へ変換することは困難である。それは、燃料物質の元となるセルロース自体の結晶度が高く、また、セルロースが分解の困難なリグニンに囲まれているために利用し難いからである。そのため、セルロース系バイオマスのセルロースを利用するためには、結晶度を低くしたり、リグニンを除去するなどしてセルロースを利用しやすい形態にする必要がある(非特許文献1〜3)。
【0005】
セルロース系バイオマスを燃料物質を取り出すことができる糖(グルコース)に変換する方法は大きく分けて二種類ある。一つは酸などを用いてセルロース系バイオマス中のセルロースをグルコースまで加水分解する酸加水分解法である。このグルコースを発酵によってエタノールへ変換する。この方法は古くから考えられて研究がされてきたが、強酸性かつ高温高圧の条件下で反応を行うためにそれに耐え得る装置のコストやメンテナンス費用がかかるなど大きな問題がある。
【0006】
もう一つは、セルロース分解酵素(セルラーゼ等)を用いてセルロースをグルコースまで分解する酵素糖化法である。酵素糖化法は酸加水分解法と比較して、穏和な条件で反応が可能であるために、装置上の利点がある。しかしながら、分解が進むには酵素とセルロース系バイオマス中のセルロースが接触する必要があるが、前述したリグニンの存在、更にはセルロースの結晶化がそれを邪魔する。そのために酵素反応の前に何らかの前処理を行う必要がある。セルロース系バイオマスの酵素糖化法のための前処理として、希硫酸法、アルカリ処理法、微粉砕法など様々な方法が考えられているが、まだ決定的な方法は確立されていない(非特許文献4)。
例えば、バイオマス微粉体を、タングステン酸あるいはモリブデン酸塩を含有する15〜30%過酸化水素水で脱リグニン処理する方法(特許文献1)等が提案されているが、決定的な方法とはなっていない。
【0007】
また、現状の課題として、酵素糖化法には大量の酵素が必要であり、コスト面から実用的であるとは言えない。前述したとおり、前処理法に関しては盛んに提案されているが、酵素糖化反応そのものに関する提案はほとんどない。実用化されるためには、効率的な酵素糖化反応も必要不可欠である。例えば、糖化反応に使用される酵素を含む糖化反応促進剤は液状品であることが多いが、液状品である場合、一定期間保管すると糖化反応促進剤としてのセルロースの分解性能が経時的に低下し、持続しない課題がある。また、分解性能が低下した場合、糖化反応促進剤を当初予定していた量より多く加えなければ目的を達成できなくなり、コスト増を招くことになる。
そこで、保管期間中にバイオマスの分解性能が低下しない糖化反応促進剤の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−149343号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】坂士朗ら、「バイオマス・エネルギー・環境」、IPC、2001年、p251−260
【非特許文献2】杉浦純、「バイオマスエネルギーの特性とエネルギー変換・利用技術」、NTS、2003年、p283−312
【非特許文献3】George P.Philippidis,”Handbook on Bioethanol”,Taylor&Francis,1996,p253−285
【非特許文献4】The−An Hsu,”Handbook on Bioethanol”,Taylor&Francis,1996,p183−212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、保管期間中にバイオマスの分解性能が低下せず、保存安定性が高い糖化反応促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する糖化反応促進剤であることを要旨とする。
【化1】

[式(1)中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【発明の効果】
【0012】
本発明の糖化反応促進剤は、バイオマスの分解性能の持続性が高い。
本発明において「分解性能を持続する」とは、一定期間保管した後に測定した糖化率と、保管する直前に測定した糖化率との差が小さいことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の糖化反応促進剤は、下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する糖化反応促進剤である。
【0014】
【化2】

[式(1)中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0015】
液体の糖化反応促進剤は、長期間保存するとバイオマスの分解性能が著しく低下するという問題点があるが、本発明では、特定の化学構造を有する上記の化合物(A)を糖化反応促進剤に含有させることにより解決できる。
【0016】
一般式(1)で表される化合物として、具体的にはグアニジン、尿素及びチオ尿素が挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表される化合物の塩としては、グアニジンの塩が挙げられる。
塩としては塩酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩等が挙げられる。
【0018】
化合物(A)としては、バイオマスの分解性能の持続性の観点で、グアニジンの塩及び尿素が好ましく、さらに好ましくはグアニジンの塩、次にさらに好ましくはグアニジン塩酸塩である。
【0019】
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる化合物(A)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、糖化反応促進剤の重量を基準として対し、0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.02〜10、次にさらに好ましくは0.03〜5、特に好ましくは0.05〜3である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる化合物(A)の含有量は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、酵素(a)の重量に対し、1〜1000重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜500重量%であり、次にさらに好ましくは10〜300重量%である。
【0020】
本発明の糖化反応促進剤は、さらに下記一般式(2)で表される化合物(B)を含有することができる。バイオマスの分解性能の持続性の観点から、(B)を含有することが好ましい。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(2)中、Qはアミノ基又はアルキル基を表し、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の置換基に置換されていてもよい。
【0023】
Qのアルキル基としては炭素数1〜22のアルキル基が挙げられ、具体的にメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、セチル基、ステアリル基及びベヘニル基等が挙げられる。これらのアルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の置換基に置換されてもよい。
水素原子以外の置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、イミノ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。置換基の数は1〜3が好ましく、さらに好ましくは2〜3である。例えばQがブチル基の場合、ブチル基末端の水素原子2つが1つのアミノ基及び1つのカルボキシル基で置換された場合は(B)はアルギニンを表す。
【0024】
化合物(B)としては、アルギニン又はその塩(B−1)、アルギニン誘導体又はその塩(B−2)及びグアニジン誘導体又はその塩(B−3)が挙げられる。
【0025】
アルギニン又はその塩(B−1)として、アルギニン、アルギニンの無機酸塩(塩酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩等)及びアルギニンの有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩及びピロメリット酸塩等)が挙げられる。
【0026】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)において、アルギニン誘導体は下記一般式(3)で表されるアルギニンのα−アミノ基若しくはα−カルボキシル基又はこれらの両方の基が置換された誘導体である。
α−アミノ基の置換は、下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド(Y−1)基又は一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)への置換であり、α−カルボキシル基の置換は下記一般式(6)で表されるエステル基又は下記一般式(7)で表されるN−アルキルアミド基(Z−2)への置換である。
【0027】
言い換えると、アルギニン誘導体又はその塩(B−2)では、α−アミノ基又はα−カルボキシル基の少なくともいずれか一方が置換されている。すなわち、Yがアミノ基の場合、Zは下記一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)又は下記一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)であり、Zがカルボキシル基の場合は、Yは下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は下記一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)である。
【0028】
【化4】

【0029】
一般式(3)中、Yはアミノ基、下記一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)又は下記一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)を表す。Zは、カルボキシル基、下記一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)又は下記一般式(7)で表されるN−アルキルアミド基(Z−2)を表す。
【0030】
【化5】

【0031】
一般式(4)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜36の1価の炭化水素基を表し、この炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0032】
一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)におけるR1の炭化水素基としては、炭素数1〜36の1価の炭化水素基であり、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。
直鎖の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基及びベヘニル基等が挙げられる。
分岐の脂肪族炭化水素基としては、イソプロピル基及びt−ブチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びシクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基及びメチルベンジル基等が挙げられる。
これらの炭化水素基のうち、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはメチル基である。
水素原子以外の置換基としては、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、イミノ基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(4)で表されるN−アルキルカルボニル−アミド基(Y−1)として具体的には、ホルムアミド基、アセチルアミド基、プロピオン酸アミド基、ブチル酸アミド基、ヘキシル酸アミド基、シクロヘキサンカルボキシアミド基、オクチル酸アミド基及びベンゾイルアミド基等が挙げられる。
【0034】
【化6】

【0035】
一般式(5)中、R2とR3はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜36の炭化水素基を表し、これらの炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0036】
一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)において、R2とR3は、R1と同様の炭化水素基が含まれ、これらの炭化水素基はR1と同様に、その一部が他の官能基に置換されていてもよい。
【0037】
一般式(5)で表されるイミノ基(Y−2)としては、メチルイミノ基等が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
一般式(6)中、R4は、炭素数1〜36の炭化水素基を表す、又は多価アルコール若しくは糖から1つのヒドロキシル基を除いた残基を表す。
この炭化水素基はその水素原子一部が他の官能基、例えば、ヒドロキシル基、メトキシル基、エトキシル基、ニトロ基及びヒドロキシフェニル基からなる群より選ばれる官能基で置換されていてもよい。
【0040】
一般式(6)で表されるエステル基(Z−1)において、R4が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、その炭化水素基は、前記R1と同様の炭化水素基が含まれる。
4が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、これらの炭化水素基のうち、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはエチル基である。
【0041】
多価アルコールとしては、2価〜3価のアルコールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
糖としては、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール及びトレハロース等が挙げられる。
【0042】
【化8】

【0043】
一般式(7)中、R5は、水素原子又は炭素数1〜36の炭化水素基を表し、この炭化水素基はその水素原子の一部が水素原子以外の他の官能基に置換されていてもよい。
【0044】
一般式(7)で表されるアミド基(Z−2)において、R5が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、その炭化水素基としては、前記R1と同様の炭化水素基が含まれ、これらの炭化水素基はR1と同様に、その一部が他の官能基に置換されていてもよい。
5が炭素数1〜36の炭化水素基の場合、これらの炭化水素基のうち、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはメチル基及びエチル基、最も好ましくはメチル基である。
【0045】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)がアルギニン誘導体の塩の場合、無機酸塩(塩酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩及びケイ酸塩等)及び有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、トリメリット酸塩及びピロメリット酸塩等)が挙げられる。
【0046】
アルギニン誘導体又はその塩(B−2)の化合物として具体的に、N−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩が挙げられる。
【0047】
グアニジン誘導体又はその塩(B−3)としては、Qを特に限定するものではないが、具体的にアミノグアニジン(−NH2)、ジシアンジアミド(−CN)、グアニルチオウレア(−C(=S)NH2)、ドデシルグアニジン(−C1225)、エチルグアニジン(−C25)、オクチルグアニジン(−C817)及びビグアニド(−C(=NH)NH2)が挙げられる。ここで、()内はQを表す。
【0048】
これらのうち、バイオマスの分解性能の持続性の観点で、好ましくは(B−1)及び(B−2)であり、さらに好ましくは、(B−2)であり、特に好ましいのはN−α−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩である。
【0049】
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる化合物(B)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、糖化反応促進剤の重量に対し0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.03〜10、次にさらに好ましくは0.05〜5である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる化合物(B)の含有量は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、酵素(a)の重量に対し、1〜1000重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜500重量%であり、次にさらに好ましくは10〜300重量%である。
【0050】
本発明の糖化反応促進剤は化合物(A)のみを含有すればよいが、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、化合物(A)及び化合物(B)を含有することが好ましい。
【0051】
(A)及び(B)を含有する場合、(A)と(B)との重量比((A)の重量/(B)の重量)は0.1〜9が好ましく、さらに好ましくは0.2〜8であり、特に好ましくは0.5〜5である。
【0052】
本発明における必須成分である酵素(a)としては、糖化反応用に使用する従来のものが使用でき、例えばセルラーゼ(a−1)、ヘミセルラーゼ(a−2)及びアミラーゼ(a−3)等が挙げられる。
【0053】
セルラーゼ(a−1)としては、セロビオヒドロラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、ベータグルコシダーゼ活性を有するものであれば、特に限定するものではない。
【0054】
市販のセルラーゼとしては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)、フーミコラ(Humicola)属、バチルス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤があり、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、セリックCテック(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)及びGC220(ジェネンコア社製)等が挙げられる。
【0055】
ヘミセルラーゼ(a−2)としては、キシラン分解酵素、マンナン分解酵素、ペクチン分解酵素及びアラビナン分解酵素等が挙げられる。
セルラーゼとヘミセルラーゼは、それぞれを適宜の量で添加しても良いが、市販されているセルラーゼ製剤には、各種のセルラーゼ活性を有すると同時に、ヘミセルラーゼ活性も有しているものが多く、上記市販のセルラーゼ製剤を用いれば良い。セルラーゼ製剤としては、例えば、Cellic Ctec(ノボザイムズ社製)及びGC220(ジェネンコア社製)等が挙げられる。
【0056】
アミラーゼ(a−3)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。アミラーゼとしては、例えば、英国特許第1,296,839号明細書に詳細に記載されているB.リヘニフォルミス(B.licheniformis)の特殊株から得られるα−アミラーゼが挙げられる。
市販のアミラーゼとしては、ノボザイムス社の DuramylTM、TermamylTM、FungamylTM及びBANTM並びにGist−Brocades社のRapidaseTM及びMaxamyl PTMが挙げられる。
【0057】
上記の酵素(a)のうち、バイオマス(特にセルロース)の分解性(糖化率)の観点で、セルラーゼ(a−1)及びヘミセルラーゼ(a−2)が好ましい。
【0058】
本発明において、糖化反応促進剤に含まれる酵素(a)は、2種以上を含むことができる。2種以上を含む場合の組み合わせとしては、セルラーゼ(a−1)2種以上を含む組み合わせ、セルラーゼ(a−1)とヘミセルラーゼ(a−2)を含む組み合わせ、セルラーゼ(a−1)2種以上とヘミセルラーゼ(a−2)を含む組み合わせ等が挙げられる。
【0059】
本発明の糖化反応促進剤に含まれる酵素(a)の含有量は、バイオマス(特にセルロース)の分解性(糖化率)の観点から、糖化反応促進剤の重量を基準として、0.01〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15重量%、1〜10重量%である。
【0060】
本発明の必須成分である水は、特に限定するものではなく、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。
【0061】
本発明の糖化反応促進剤に含まれる水の含有量は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から、糖化反応促進剤の重量を基準として、20〜99.97重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜99.9重量%、次にさらに好ましくは65〜99.85重量%、特に好ましくは75〜99.8重量%、次に特に好ましくは80〜98.9重量%、さらに次に特に好ましくは85〜98.8重量%、最も好ましくは87.98〜98重量%である。
【0062】
本発明の糖化反応促進剤には、バイオマスの分解性能を向上させるために、上記の化合物(A)、(B)、酵素(a)及び水以外に、漂白剤(b)、界面活性剤(c)、水混和性有機溶剤(d)、無機塩(e)、糖(f)、アルギニン以外のアミノ酸(g)、pH調整剤(h)及び防腐剤(i)を含有することができる。
【0063】
漂白剤(b)リグニン分解用として用いられている公知の物質を用いることができ、例えば、過酸化水素等の酸素系漂白剤が挙げられる。
【0064】
界面活性剤(c)として、ノニオン性界面活性剤(c−1)、アニオン性界面活性剤(c−2)、カチオン性界面活性剤(c−3)及び両性界面活性剤(c−4)が挙げられる。
【0065】
ノニオン性界面活性剤(c−1)としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[オレイルアルコールエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物等]、脂肪族アミン(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)[ヘキサデシルアミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物、ラウリルアミンエチレンオキサイド付加物、ステアリルアミンエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)グリコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)及びジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール及びモノラウリン酸ソルビタン等]、多価(2価〜10価又はそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(ポリ)アルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜8,重合度=1〜100)[ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド(重合度=10)付加物及びメチルグルコースジオレエートエチレンオキサイド(重合度=50)付加物等]、脂肪酸N−ヒドロキシアルキルアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及び1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、アルキル(炭素数1〜22)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)フェニルエーテル、アルキル(炭素数8〜24)(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)−アミノアルキル(炭素数8〜24)−エーテル及びアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0066】
アニオン性界面活性剤(c−2)としては、炭素数8〜24のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンエーテルカルボン酸又はその塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸ナトリウム及びラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸−トリエタノールアミン塩等]、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸スルホン酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキルリン酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられ
る。
【0067】
カチオン性界面活性剤(c−3)としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]及びアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0068】
両性界面活性剤(c−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0069】
界面活性剤(c)としては、1種又は2種以上が使用出来る。2種以上を使用する場合、その組み合わせとしては、例えばノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0070】
水混和性有機溶剤(d)としては、水100gに対する溶解度が10g以上の溶剤であれば特に限定するものではないが、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール及びソルビトール等が挙げられる。
【0071】
無機塩(e)として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及び硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0072】
糖(f)として、トレハロース、スクロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸等が挙げられる。
【0073】
アルギニン以外のアミノ酸(g)として、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ロイシン、リシン、ヒスチジン及びそれらの塩等が挙げられる。
【0074】
pH調整剤(h)としては、従来のpH調整剤が使用でき、例えば、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー及びクエン酸等が挙げられる。
【0075】
防腐剤(i)としては、従来の防腐剤を用いることができる。例えば、パラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸及びフェノール等が挙げられる。
【0076】
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる漂白剤(b)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から糖化反応促進剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜1、次にさらに好ましくは0〜0.5である。
本発明の糖化反応促進剤に含まれる界面活性剤(c)の含有量は、バイオマスの分解性能の持続性の観点から糖化反応促進剤の重量に対し、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.3〜40重量%、特に好ましくは0.5〜30重量%である。
本発明の糖化反応促進剤に含まれる水混和性有機溶剤(d)の含有量は、バイオマスの分解性能の観点から、糖化反応促進剤の重量に対し、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる無機塩(e)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の観点から糖化反応促進剤の重量に対し0〜40が好ましく、さらに好ましくは0〜30、次にさらに好ましくは0〜20である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる糖(f)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の観点から糖化反応促進剤の重量に対し0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜5、次にさらに好ましくは0〜3である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれるアミノ酸(g)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の観点から糖化反応促進剤の重量に対し0〜10が好ましく、さらに好ましくは0〜5、次にさらに好ましくは0〜3である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれるpH調整剤(h)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の観点から糖化反応促進剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜1である。
本発明の糖化反応促進剤中に含まれる防腐剤(i)の含有量(重量%)は、バイオマスの分解性能の観点から糖化反応促進剤の重量に対し0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜3、次にさらに好ましくは0〜2である。
【0077】
本発明の糖化反応促進剤は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)水に、化合物(A)及び必要により化合物(B)を加え、25℃で均一になるまで撹拌する。
(2)酵素(a)以外の成分を所定量添加し均一に溶解させる。
(3)最後に酵素(a)を添加し溶解させ、繊維処理用薬剤を製造する。
【0078】
本発明の糖化反応促進剤は、バイオマス、特にセルロース系バイオマスからエタノール燃料を製造する等を目的とした、バイオマスを糖に分解する薬剤として使用できる。
【0079】
本発明の別の実施態様は、上記に記載の糖化反応促進剤を使用してセルロースを分解して糖を製造する、糖の製造方法である。
【0080】
本発明の糖の製造方法は、セルロースと糖化反応促進剤を同時に存在させる工程を含む。
本発明の糖の製造方法において、セルロースと糖化反応促進剤を同時に存在させる温度は、セルロースの分解のしやすさの観点から、20〜80℃が好ましく、さらに好ましくは30〜60℃である。
本発明の糖の製造方法において、セルロースと糖化反応促進剤を同時に存在させるpHは、セルロースの分解のしやすさの観点から、pH3〜9が好ましく、さらに好ましくはpH4〜8である。
本発明の糖の製造方法において、セルロースと糖化反応促進剤を同時に存在させる時間は、糖化率の観点から、24〜400時間が好ましく、さらに好ましくは48〜200時間である。
【0081】
本発明の糖の製造方法の一例を挙げる。
(1)セルロースに1重量%濃度の硫酸水溶液を重量比で50〜500%加え、90℃、1時間加熱撹拌し、セルロースを膨潤させる。
(2)膨潤させたセルロースに、上記に記載の糖化反応促進剤を重量比で10〜500%加え、40℃に加温し1週間撹拌し続ける。
(3)反応後、中和し、懸濁液をろ過して、糖溶液を得る。
【実施例】
【0082】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
<製造例1>
N−α−アセチルアルギニン{アルギニンアセトアミド、株式会社エムピーバイオジャパン}12.6部(0.05モル部)、メタンスルホン酸1部及びエタノール92部(2モル部)を均一混合し、80℃で5時間加熱攪拌し、エバポレーターで濃縮後、塩酸(濃度:35重量%)5.2部(0.05モル部)を加え中和した。その後、水から再結晶し、減圧乾燥{60℃、20Pa}して、化合物(B)であるN−α−アセチルアルギニンエチルエステル塩酸塩を得た。
【0084】
<実施例1〜12>
表1の割合で25℃で配合し、本発明の糖化反応促進剤を作製した。
【0085】
<比較例1〜6>
表2の割合で25℃で配合し、比較用の糖化反応促進剤を作製した。
【0086】
<分解性能試験>
バイオマスの分解性能を、セルロースの糖化率の測定により調べた。糖化率の値が大きいほど、より多くのセルロースが分解され、バイオマスの分解性能が高いことを示す。
<方法>
セルロース10gに1重量%濃度の硫酸水溶液1Lを加え、90℃、1時間加熱撹拌し、セルロースを膨潤させる。膨潤させたセルロースをろ取して希硫酸水溶液を除去し、ろ取したセルロースに実施例1〜12又は比較例1〜6の糖化反応促進剤を重量比で100%加え、40℃に加温し1週間撹拌し続けた。反応後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、懸濁液を得た。この懸濁液をワットマン社製ろ紙(グレードNo.1、9cm)でろ過して、ろ液として糖溶液を得た。ろ取した固形分は60℃で3時間乾燥した。
<糖化率の測定方法>
糖化率の測定は以下の方法でおこなった。
糖化率=(ろ取した固形分を乾燥後の重量)/(セルロースの重量)×100
結果を表1、2に示す。
【0087】
<保管後の性能試験>
実施例1〜12及び比較例1〜6の糖化反応促進剤を25℃で3ヶ月保管した後、上記と同様に分解性能試験を行い、3ヶ月保管後の糖化反応促進剤を使用した糖化率を算出した。結果を表1、表2に示す。
<分解能の持続性>
分解性能の持続性は下記の式で算出した。
分解性能の持続性(%)=(3ヶ月保管後の糖化率)/(作製直後の糖化率)×100
結果を表1、2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表1及び2中の化合物(A)、化合物(B)及び酵素(a)は下記のものを使用した。
グアニジン塩酸塩:和光純薬工業製
尿素:和光純薬工業製
アルギニン塩酸塩:和光純薬工業製
セルラーゼ:トリコデルマ属由来、和光純薬工業製
ヘミセルラーゼ:ヘミセルラーゼ「アマノ」90、天野エンザイム製
アミラーゼ:枯草菌由来、和光純薬工業製
TWEEN20:和光純薬工業製
【0091】
表2より、比較例1〜4の糖化反応促進剤を使用した場合は、25℃で3ヶ月保管後に糖化率が低下しており、3ヶ月保管することによってバイオマスの分解性能が低下していることがわかる。また、酵素(a)を含まない比較例5及び6の糖化反応促進剤は、糖化率が0%であり、バイオマスの分解性能が無いことがわかる。
一方、表1の実施例1〜12の本発明の糖化反応促進剤を使用した場合は、25℃で3ヶ月保管後も糖化率が維持されており、バイオマスの分解性能が持続していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の糖化反応促進剤は、酵素によるバイオマスの分解性能を持続できる。そのため、バイオマスからバイオエタノールを製造する際の糖化反応促進剤として幅広く使用できる。特に、廃木材、古紙等のセルロース系バイオマスからバイオエタノールを製造する際の糖化反応促進剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)、酵素(a)及び水を含有する糖化反応促進剤。
【化1】

[式中、Xはイミノ基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【請求項2】
酵素(a)が、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼである請求項1に記載の糖化反応促進剤。
【請求項3】
化合物(A)がグアニジン塩酸塩である請求項1又は2に記載の糖化反応促進剤。
【請求項4】
さらに下記一般式(2)で表される化合物(B)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の糖化反応促進剤。
【化2】

[式中、Qは、アミノ基又はアルキル基を表し、アルキル基中の水素原子の一部が水素原子以外の基に置換されていてもよい。]
【請求項5】
化合物(A)の含有量が糖化反応促進剤の重量を基準として0.01〜30重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の糖化反応促進剤。
【請求項6】
バイオエタノール用の糖を製造する際に用いる請求項1〜5のいずれかに記載の糖化反応促進剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の糖化反応促進剤を使用してセルロースを分解して糖を製造する糖の製造方法。

【公開番号】特開2011−234715(P2011−234715A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90589(P2011−90589)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】