説明

糖尿病性腎症のための医薬組成物、並びにその調製及び適用

本発明は、糖尿病性腎症のための医薬組成物及びその調製、並びに糖尿病性腎症のための医薬の調製における適用に関する。本医薬組成物は、活性成分としての7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンのうちの少なくとも一方から構成され、活性成分の重量%は、0.1〜99.5%である。更に、本医薬組成物は、主に糖尿病性腎症の予防及び治癒に使用される。豊富な材料、糖尿病性腎症の予防及び治癒に対する顕著な効果及び便利な使用のため、患者にとって新たな選択薬剤となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝統的な漢方薬の調製の分野に関し、特に糖尿病性腎症のための医薬組成物とその調製及び適用に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病及びその慢性合併症は、ヒトの健康及び生活の質に深刻な影響を与えてきた。近年、患者の数が増加しており、全ての年齢群において糖尿病性腎症の発症率は、世界中で、2000年は2.8%であり、2030年には4.4%になると予測され、このことは、糖尿病患者の数が2000年の1億7千百万人から2030年には3億3千3百万人に増加することを意味する。発症率が毎年増加しているので、中国における患者の数は、インドに次いで第2位である。したがって、糖尿病及びその合併症の予防及び治癒は、最近は非常に重要な話題になっている。糖尿病性腎症(DN)は、糖尿病の重要な合併症の1つであり、腎不全の最終段階をもたらす疾患の第1位である。世界保険機構のデータにより示されているように、I型糖尿病患者の約30%及びII型糖尿病患者の25%〜40%は、血中グルコースが管理されないとDN患者に進行する。潜伏期のため及びより早い時期にDNを発見することが困難であるため、腎臓罹患の症状が現れたときには、逆転することができない。糖尿病が1年間続けば、腎臓の濾過機能が破壊され、微量のタンパク尿として表れる。疾患の経過が長引くとタンパク尿は増加し、血中の毒素を排除する腎臓の能力が徐々に減衰し、末期腎疾患(ESRD)をもたらし、患者は、血液透析又は腎臓移植により生命を維持するしかなくなる。したがって、DNの機構を徹底的に解明すること、並びに予防及び治癒の手段を充実させて完成させることがどうしても必要である。
【0003】
クワ(Morus alba L.)の乾燥根皮層である桑白皮(Cortex Mori)は、甘味があり、冷感性であって、肺から熱を除去し、喘息を緩和し、利尿を誘導して浮腫を軽減する機能を有する。桑白皮は、通常、肺の熱に起因する呼吸困難症及び咳、水症及び膨張に起因する乏尿症、顔面の筋肉及び皮膚の腫脹に使用される。最近の薬理学研究は、桑白皮が、血糖及び血圧の低下、利尿、咳の予防及び喘息の緩和、抗HIV、抗腫瘍などの活性を有することを示した。血糖を低下する活性成分である1−デオキシノジリマイシン及びモランAが桑白皮から単離されて以来、ますます多くの研究者たちが、血糖を低下する新たな活性成分を桑白皮から探しており、次いで糖尿病のために新たな薬剤の改善を探求している。桑白皮の主要な活性成分は、フラボン、アルカノイド、多糖類、クマリン(ウンベリフェロン、スコポレチン)などである。研究者たちは、フラボン、アルカノイド及び多糖類が全て血糖を下げる効果を有し、アルカノイドが最も良好に機能することを実証した。桑白皮中のクマリンは、通常、利尿、咳の予防及び喘息の緩和に使用されており、現在までのところ、どの文献も糖尿病性腎症に対する効果を報告していない。国内及び海外の研究報告書によると、クマリンは、抗HIV、抗腫瘍、血圧低下、抗不整脈、抗骨粗鬆症、痛覚消失、喘息の緩和、抗生作用などの生物活性を有する。したがって、糖尿病性腎症を治療することは、クマリンにとって医療分野における新たな適用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、糖尿病性腎症のための医薬組成物及びその調製を提供することであり、ここで本医薬組成物の活性成分はクマリンである。
【0005】
上記の目的を達成するための技術的解決は以下である:
活性成分としての7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンのうちの少なくとも一方、並びに従来の薬剤担体から構成され、活性成分が0.1〜99.5重量%の割合で含まれる、糖尿病性腎症のための医薬組成物。
【0006】
好ましくは、活性成分は、5〜70重量%の割合で含まれる。
【0007】
好ましくは、本医薬組成物は、活性成分としての7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン、並びに従来の担体から構成され、7−ヒドロキシクマリンと7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの重量比は、1:4〜4:1の範囲である。
【0008】
本発明の医薬組成物に使用される従来の薬剤担体は、医薬分野の従来の薬剤担体である。例えば、希釈剤及び賦形剤は水であり、充填剤は、デンプン、スクロース、ラクトースなどであり、接着剤は、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン又はポリビニルピロリドンであり、湿潤剤はグリセリンであり、崩壊剤は、寒天、炭酸カルシウム又は重炭酸ナトリウムのいずれかであり、吸収促進剤は、第四級アンモニウム化合物であり、界面活性剤は、パルミチルアルコールであり、吸収担体は、カオリン粘土又は石けん粘土であり、潤滑剤は、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム又はポリエチレングルコールである。加えて、風味剤、甘味料などの他の佐剤を組成物に加えることもできる。
【0009】
通常の調製方法を使用することによって、本発明の医薬組成物を通常の投与形態に調製することができるが、この投与形態は主に、ペレット剤、カプセル剤、顆粒剤、滴下剤(dripping pill)、経口液剤などの経口調合剤である。
【0010】
医薬組成物の用量は、投与方法及び疾患の重篤度によって調整することができる。通常、診療所の経口基準用量は、10〜70mg/dである。
【0011】
本発明の更なる目的は、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンのうちの少なくとも一方を従来の薬剤担体と混合することと、医薬組成物を得るために、特定の調製方法に従って調製することを含む、糖尿病性腎症のための医薬組成物を調製する方法を提供することである。
【0012】
本医薬組成物は、薬剤学の分野における通常の調製方法に従って調製することができる。例えば、活性成分を複数の担体と混合し、次に所望の投与形態に調製する。
【0013】
本発明は、糖尿病性腎症のための医薬組成物の調製における7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの適用も提供する。
【発明の効果】
【0014】
1.本発明は、桑白皮から単離されたクマリンが血糖を低下する機能を有することを初めて証明したが、このことは、糖尿病及び糖尿病の合併症の患者のための新たな薬剤を提供することを意味する。
【0015】
2.本発明の医薬組成物は、糖尿病性腎症に対して、桑白皮の水抽出物よりもはるかに有効である。加えて、確定した活性成分及び容易な品質管理のおかげで、不確定な活性成分、粗悪な品質管理、多くの毒性副作用などのような伝統的な漢方薬の欠点を克服する。
【0016】
3.本医薬組成物の材料は豊富にあり、滴下剤、注入用粉末調合剤、ペレット剤のような経口投与形態にすることが容易であり、使用するのに都合が良い。
【0017】
4.本医薬組成物は、糖尿病における糸球体の損傷の予防又は治癒において際立った効果を有する。本医薬組成物は、顕著に血清クレアチニンの上昇を防ぎ、糖尿病のラットの尿量及び尿タンパク質を低下することができ、このことは、本医薬組成物が糖尿病性腎症の予防及び治癒に対して顕著な効果があることを証明している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラット糸球体毛細血管間細胞の肥大に対する変化を示す(HE、200×); 図中、 A:正常対照群; B:ブドウ糖(25mmol/L)群; C:桑白皮の水抽出物(0.1g/L); D:7−ヒドロキシクマリン(1μmol/L); E:7−ヒドロキシクマリン(0.1μmol/L); F:7−ヒドロキシクマリン(0.01μmol/L); G:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(1μmol/L); H:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.1μmol/L); I:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.01μmol/L); J:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.06:0.03μmol/L); K:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.05:0.05μmol/L); L:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.03:0.06μmol/L)。
【図2】7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラット糸球体毛細血管間細胞の細胞外マトリックス増殖に対する効果を示す(PAS、200×); 図中、 A:正常対照群; B:ブドウ糖(25mmol/L)群; C:桑白皮の水抽出物(0.1g/L); D:7−ヒドロキシクマリン(1μmol/L); E:7−ヒドロキシクマリン(0.1μmol/L); F:7−ヒドロキシクマリン(0.01μmol/L); G:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(1μmol/L); H:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.1μmol/L); I:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.01μmol/L); J:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.06:0.03μmol/L); K:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.05:0.05μmol/L); L:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.03:0.06μmol/L)。
【図3】7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラット糸球体毛細血管間細胞のCTGF発現に対する効果を示す(CTGF、200×)。; 図中、 A:正常対照群; B:ブドウ糖(25mmol/L)群; C:陰性対照(CTGF抗体なし); D:桑白皮の水抽出物(0.1g/L); E:7−ヒドロキシクマリン(1μmol/L); F:7−ヒドロキシクマリン(0.1μmol/L); G:7−ヒドロキシクマリン(0.01μmol/L); H:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(1μmol/L); I:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.1μmol/L); J:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.01μmol/L); K:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.06:0.03μmol/L); L:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.05:0.05μmol/L); M:7−ヒドロキシクマリン:7−ヒドロキ−6−メトキシシクマリン(0.03:0.06μmol/L)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において糖尿病性腎症に使用されるクマリンは、7−ヒドロキシクマリン(A)及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン(B)であり、これらの構造を下記に示す:
【化1】

【0020】
これらの2つのクマリン化合物は、多くの植物中に広範囲に分布しており、化学合成によっても得ることができる。
【0021】
本発明を以下の実施態様において更に説明する。
【0022】
〔実施例1:7−ヒドロキシクマリンの調製〕
10kgの桑白皮乾燥根皮層を微細粉末に粉砕し、100Lの水を加え、還流下で2時間に3回抽出する。抽出物をまとめ、真空下で特定の容量に濃縮し、D101マクロ孔質樹脂に加え、水、次に95%EtOHで溶離し、95%EtOH溶離液を収集し、真空下で濃縮し、次にシリカゲルに加え、石油、石油−酢酸エーテル100:1、石油−酢酸エーテル50:1、石油−酢酸エーテル20:1のそれぞれにより溶離する。琥珀色の粉末が石油−酢酸エーテル20:1の溶離により得られ、アセトンによる数回の再結晶によって純粋な試料がもたらされる。その構造は、赤外線スペクトル、紫外線スペクトル、核磁気共鳴及び質量スペクトルによって、7−ヒドロキシクマリン(ウンベリフェロン)であると同定された。分子式:C;分子量:162。HPLCにより検出した純度は>99%であり、構造を下記に示す:
【化2】

【0023】
〔実施例2:7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの調製〕
10kgの桑白皮の乾燥根皮層を微細粉末に粉砕し、100Lの水を加え、還流下で2時間に3回抽出する。抽出物をまとめ、真空下で特定の容量に濃縮し、D101マクロ孔質樹脂に加え、水、次に95%EtOHで溶離し、95%EtOH溶離液を収集し、真空下で濃縮し、次にシリカゲルに加え、石油、石油−酢酸エーテル100:1、石油−酢酸エーテル50:1のそれぞれにより溶離する。琥珀色の粉末が石油−酢酸エーテル50:1の溶離によって得られ、アセトンによる数回の再結晶によって純粋な試料がもたらされる。その構造は、赤外線スペクトル、紫外線スペクトル、核磁気共鳴及び質量スペクトルによって、7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン(スコポレチン)であると同定された。分子式:C10;分子量:192。HPLCにより検出した純度は>99%であり、構造を下記に示す:
【化3】

【0024】
〔実施例3:医薬組成物(活性成分:7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン)のカプセル剤の調製〕
工程:
A 4.2gのミツロウを取り、125gのエファモルを加え、80℃の湯浴で溶融及び混合し、室温(25℃)に冷却し、次に十分な量のジブチルヒドロキシアニソールを加え、均一に混合する。
B 100メッシュの篩にかけた0.25gの7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン及び5gのレシチンを加え、250gのエファモルを加え、均一に混合してカプセル剤のコア液とし、1000個のカプセル剤を調製する。
【0025】
この実施例で調製したカプセル剤は、高血糖症及び糖尿病性腎症に対して十分な効果を発揮する。
【0026】
〔実施例4:医薬組成物(活性成分:7−ヒドロキシクマリン)の滴剤の調製〕
15gの7−ヒドロキシクマリンを取り、微細粉末に粉砕し、200メッシュの篩にかけ、15gの溶融ポリグリコール6000基材に加え、均一に撹拌し、チラーとしてジメチルベンゼンシリコーン油を用いて滴剤(drop pill)を調製し、乾燥して完成させる。本滴剤は、血清クレアチニンを上昇させ、尿クレアチニンを下降させる疾患、及び糖尿病性腎症に対して十分な効果を発揮する。
【0027】
〔実施例5:医薬組成物(活性成分:7−ヒドロキシクマリン又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン)のペレット粒剤の調製〕
粒剤1個あたりの構成成分:
7−ヒドロキシクマリン又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン 12mg
ラクトース 175mg
トウモロコシデンプン 50mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
【0028】
調製方法:活性成分、ラクトース及びデンプンを混合し、水で均一に湿潤し、混合物を篩にかけ、乾燥し、再び篩にかけ、ステアリン酸マグネシウムを加え、次に混合物を砕いて、粒剤1個当たり240mgで活性成分が12mgの錠剤にする。本ペレット粒剤(pellet pill)は、高尿タンパク質の疾患及び糖尿病性腎症に対して十分な効果を発揮する。
【0029】
〔実施例6:医薬組成物(活性成分:7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン)の分散性錠剤の調製〕
処方用量である95gの7−ヒドロキシクマリン、190gの7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン、40gのラクトース、70gの微晶質セルロース、5.25gのポリビニルピロリドン、2.5gのアスパルテーム、6gのポリビドン及び4gの重炭酸カリウム、を正確に計量し、主剤及び佐剤を等量ずつ増やして十分に混合し、80メッシュの篩で2回篩にかけ、混合物を適切な容器に入れ、75%EtOHに溶解した15%(g/100ml)ポリエチレン6000の十分な量を加えて軟質にし、20メッシュの篩によって砕いて湿潤顆粒にし、ほうろうプレートの上に塗布し、送風オーブンにより70℃で2時間乾燥し、乾燥した顆粒を正確に計量し、2.25gの残りのポリビニルピロリドン及び1%(w/w)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加え、均一に混合し、φ7mmの円形打抜ダイで1000個の粒剤に砕いて、1000個の7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの分散性錠剤を仕上げる。本分散性錠剤は、糖尿病性腎症及びその合併症に対して十分な効果を発揮する。
【0030】
〔実施例7:医薬組成物(活性成分:7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン)のペレット粒剤の調製〕
活性成分: 70g
微晶質セルロース: 0.4g
砕いて1000個の粒剤にする
【0031】
調製方法:活性成分である56gの7−ヒドロキシクマリンと14gの7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンを微晶質セルロースと混合し、水で均一に湿潤して軟質にし、混合物を顆粒にし、20メッシュの篩にかけ、80℃で乾燥し、再び篩にかけ、次に砕いて、粒剤1個あたり70.4mgであって粒剤1個あたり70mgの活性成分を有する粒剤にする。本粒剤は、糖尿病性腎症及びその合併症に対して十分な効果を発揮する。
【0032】
〔実施例8:医薬組成物(活性成分:7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン)のペレット粒剤の調製〕
活性成分: 70g
微晶質セルロース: 0.4g
砕いて1000個の粒剤にする
【0033】
調製方法:活性成分である14gの7−ヒドロキシクマリンと56gの7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンを微晶質セルロースと混合し、水で均一に湿潤して軟質にし、混合物を顆粒にし、20メッシュの篩にかけ、80℃で乾燥し、再び篩にかけ、次に砕いて、粒剤1個あたり70.4mgであって粒剤1個あたり70mgの活性成分を有する粒剤にする。本粒剤は、糖尿病性腎症及びその合併症に対して十分な効果を発揮する。
【0034】
本発明において、7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンを、高グルコースで培養したラットの腎臓毛細血管間細胞に対する効果及び糖尿病性腎症のdb/dbマウスに対する治療作用についての実験に適用する。
【0035】
<実験1>
7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラット糸球体メサンギウム細胞の肥大及びラット糸球体毛細血管間細胞の細胞外マトリックス増殖に対する効果
糖尿病性腎症に特異的な疾患兆候として糸球体硬化があるが、その重要な理由の一つは、糸球体間質領域の細胞外マトリックスの過度な増大である。メサンギウム細胞は、糸球体腸間膜の主要な構成成分であり、収縮、内分泌、分化増殖、免疫及び食菌作用の多くの機能を有する糸球体の生理学的機能を仲介する重要な役割を果たす。したがって、高グルコース下で培養されたメサンギウム細胞は、糖尿病性腎症における糸球体硬化の研究にとって非常に貴重なモデルである。
【0036】
1.材料及び薬剤
ラットのメサンギウム細胞の細胞株HBZY−1;DMEM培地(GIBCO);仔牛血清(Sijiqing serum factory, Hangzhou);CTFG(Canta Cruz);ヤギ抗マウスのビオチン化抗体(Jingmei bioengineering Co.,LTD);即時利用できる免疫組織化学SABC染色キット(Bost company);DAB発色システム(Gene Tech Biotechnology CompanyLimited)。
【0037】
COインキュベーター(NAPC05410, PERCISION SCIENTIFIC);XSZ-D2倒立顕微鏡(Chongqing opticalinstrument factory);スーパークリーンベンチ(Baisheng technology network system Co., LTD, Suzhou & Purity technology institute, Suzhou city);臨床用遠心分離機(LDZ5-2, Beijing clinical centrifuge factory);免疫組織化学用shi box(Maixin biotechnology explotitation company, Fuzhou)。
【0038】
2.実験方法
2.1 桑白皮の水抽出物の調製
十分な量の桑白皮の乾燥根皮質を粉末に粉砕し、10倍の水を加え、還流下で2時間毎に3回抽出し、抽出物をまとめ、真空下で濃縮して使用のための特定の容量にする。
【0039】
2.2 細胞のモデル化及び培養
対数増殖期のラットメサンギウム細胞を取り、5%仔牛血清含有DMEM培地により単細胞懸濁液(5×10細胞/ml)を調製し、カバーガラスで覆われた24ウエルプレートに1ml/ウエル(細胞量:5×10/ウエル)で接種し、5%COインキュベーターにより37℃で24時間インキュベートし、血清不含有DMEM培地を加え、24時間インキュベートして、全ての細胞を休止期にする。上清を廃棄し、900μlのDMEM培地及び100μlの異なる濃度のブドウ糖(各濃度を3回繰り返す)を加え、24時間、48時間、72時間及び96時間、それぞれインキュベートする。HE及びPASで染色した後、モデル化の結果を観察した。その結果は、25mmol/Lのブドウ糖及び48時間のインキュベーションが実験のモデルにとって最高の条件であったことを示す。
【0040】
ポリ−L−リシンで前処理したカバーガラスを24ウエル細胞培養プレートに入れてから単細胞懸濁液を加え、次にこれらの細胞を同期段階まで培養する。上清を廃棄し、800μlのDMEM培地、100μlのブドウ糖(最終濃度は25mM/Lである)を各薬剤群に加え、次に100μlの桑白皮の水抽出物(最終濃度は0.1g/Lである)又は7−ヒドロキシクマリン(最終濃度は1、0.1若しくは0.01μmol/Lである)又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン(最終濃度は1、0.1若しくは0.01μmol/Lである)又は7−ヒドロキシクマリンと7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの混合溶液(最終濃度は0.06:0.03、0.05:0.05若しくは0.03:0.06μmol/Lである)を加える。高グルコース群に900μlのDMEM培地及び100μlのブドウ糖(最終濃度は25mmol/Lであった)を加えたとき、正常対照群には1mlのDMEM培地を加える。各群で3回繰り返す。次に全ての群を5%COインキュベーターにより37℃で48時間インキュベートする。その後、カバーガラスを取り出して、HE染色、PAS染色及び免疫細胞化学染色を行う。
【0041】
2.3 染色
日常的HE染色、日常的PAS染色、CTGF染色
CTGF染色の工程:細胞で被覆されたカバーガラスを4%パラホルムアルデヒドにより30分間固定し、内因性ホースラディッシュペルオキシダーゼを、その都度調製した3%Hメタノール溶液で10分間不活性化し、蒸留水で3回清浄し、非特異的抗原を、5%BSAで20分間ブロックし、抗体CTGF(:500)を滴加し、4℃で一晩維持し、PBS(pH7.4)により20分間で3回洗浄し、ヤギの抗マウスビオチン化抗体を滴加し、37℃で30分間保持し、PBS(pH7.4)により5分間で4回洗浄し、50μlの発色液(1mlの蒸留水に各現像液A、B、Cを滴下し、均一に混合する)を加え、室温で15分間発色させ、蒸留水で均一に清浄し、ヘマトキシリンで1分間再び軽く染色し、水で洗浄し、脱水し、透明化し、カバーガラスをneutro-gummiで覆い、顕微鏡で染色を観察する。
【0042】
3 結果及び分析
ラットメサンギウム細胞の肥大変化、細胞外マトリックスの増殖及びCTGFの発現をそれぞれ観察する。
【0043】
3.1 7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラット糸球体毛細血管間細胞の肥大に対する変化
図1に示されているように、高グルコース(25mmol/L)下で培養したラットメサンギウム細胞の肥大は明白であり、桑白皮の水抽出物、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、高グルコースにより誘導されたラットメサンギウム細胞の肥大を有意に抑制することができる。更に、化合物の効果は、抽出物よりも良好であり、共使用は単一使用と比べてより良好であるか又は同等である。
【0044】
3.2 7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラットメサンギウム細胞の細胞外マトリックス増殖に対する効果
図2に示されているように、高グルコース(25mmol/L)下で48時間培養したラットメサンギウム細胞の細胞外マトリックスは増大する(PASにより染色された染色区域の領域及び色度が増大する)が、桑白皮の水抽出物、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、高グルコースにより誘導されたラットメサンギウム細胞の細胞外マトリックスを減少することができる。更に、化合物の効果は、抽出物よりも良好であり、共使用は単一使用よりも良好である。
【0045】
3.3 7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、高グルコース下で培養したラットメサンギウム細胞のCTGF発現に対する効果
図3に示されているように、高グルコース(25mmol/L)下で48時間培養したラットメサンギウム細胞のCTGF発現は増加するが、桑白皮の水抽出物、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、高グルコースにより誘導されたラットメサンギウム細胞のCTGF発現を減少することができる。更に、化合物の効果は、抽出物よりも良好であり、共使用は単一使用よりも良好である。
【0046】
<実験2>
7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる糖尿病性腎症のdb/dbマウスに対する治療作用
1.材料及び薬剤
db/dbマウス、B6マウス(南医科大学の実験動物センターから提供された);Accu-Chek Advantage血糖装置(los diagnose company, America);SPECTRA max190(America MD company);クレアチニン検出キット、クーマシーブリリアントブルー検出キット(Jiancheng bioengineering institute, Nangjing,China)。
【0047】
2 実験方法
2.1 桑白皮の水抽出物の調製
十分な量の桑白皮乾燥根皮質を粉末に粉砕し、10倍の水を加え、還流下で2時間毎に3回抽出し、抽出物をまとめ、真空下で濃縮して使用のための特定の容量にする。
【0048】
2.2 動物管理及び投与
実験の期間中、全てのマウスを層流ケージで飼育し、食餌及び水を自由に与える。水及び下側パッドを毎日交換して、ケージを清浄に保ち、水、食餌及び敷パッドは固定されている。12時間交互に光を照らす。全ての器具及び食餌は毎日滅菌する。
【0049】
110匹の8週齢のマウスを、1群あたり10匹のマウスで以下の11群に分ける:モデル群、桑白皮の水抽出物(用量:2000mg生薬/kg)、7−ヒドロキシクマリン(用量:0.5、1.0及び2.0mg/kg)、7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン(用量:0.5、1.0及び2.0mg/kg)、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン(0.6:0.3、0.5:0.5及び0.3:0.6)である。更に、10匹の8週齢のB6マウスを正常対照として用いる。各群には、異なる濃度で0.4mlの対応する薬剤又は生理食塩水を、5週間にわたって毎日胃内投与により与える。
【0050】
3 統計分析
食餌摂取及び水摂取を測定し、体重を毎週量り、血中グルコースを毎週測定する。投与が終了した後、24時間の尿を収集して尿量を計算し、尿の総タンパク質及びクレアチニンを測定し、マウスを殺処分し、2つの腎臓を取り出して、腎臓指数〔RI:RI(‰)=腎臓重量/体重×1000〕を計算する。
【0051】
全ての測定を統計化し、クラス間t−検定により分析して、(平均)±sで表す。
【0052】
4 結果
4.1 7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる糖尿病性腎症のdb/dbマウスの体重に対する効果
表1に示されているように、桑白皮の水抽出物、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの体重の増加を抑制することができる(P<0.05)。更に、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの効果は、抽出物と比べてより良好であるか又は同等であり、共使用は単一使用よりも良好である。
【0053】
表1 7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの体重に対する効果((平均)±s、n=10)
【表1】

【0054】
4.2 7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの血中グルコースに対する効果
表2に示されているように、最終投与段階における7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの血中グルコースを顕著に減少することができる(P<0.05)。更に、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの効果は、抽出物よりも明らかに良好であり、共使用は単一使用よりも良好である。
【0055】
表2 7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの血中グルコースに対する効果((平均)±s、n=10)。
【表2】

【0056】
4.3 7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの24時間の尿量、尿総タンパク質及び尿クレアチニンに対する効果
表3に示されているように、桑白皮の水抽出物、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの24時間の尿量及び尿総タンパク質を減少し、尿中の尿クレアチニンを上昇させることができる(P<0.05、P<0.01)。更に、7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン及び7−ヒドロキシクマリンの効果は、抽出物よりも良好であり、共使用は単一使用よりも良好である。
【0057】
表3 7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの24時間の尿量、尿総タンパク質及び尿クレアチニンに対する効果((平均)±s、n=10)
【表3】

【0058】
4.4 7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの腎臓の重量及び腎臓指数に対する効果
表4に示されているように、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの腎臓の重量及び腎臓指数は、5週間後に増加し、桑白皮の水抽出物、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの単一使用又は共使用は、全て、糖尿病性腎症のdb/dbマウスの腎臓の重量及び腎臓指数を明白に減少することができる。更に、7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの効果は、抽出物及び7−ヒドロキシクマリンよりも良好であり、共使用は単一使用よりも良好である。
【0059】
表4 7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンによる糖尿病性腎症のdb/dbマウスの腎臓の重量及び腎臓指数に対する効果((平均)±s、n=10)。
【表4】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】

【図1J】

【図1K】

【図1L】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2F】

【図2G】

【図2H】

【図2I】

【図2J】

【図2K】

【図2L】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図3G】

【図3H】

【図3I】

【図3J】

【図3K】

【図3L】

【図3M】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としての、7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンのうちの少なくとも一方、並びに、従来の薬剤担体から構成され、活性成分が0.1〜99.5重量%の割合で含まれる、糖尿病性腎症のための医薬組成物。
【請求項2】
活性成分が、5〜70重量%の割合で含まれる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物が、活性成分としての7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリン、並びに従来の薬剤担体から構成され、7−ヒドロキシクマリンと7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの重量比が、1:4〜4:1の範囲である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
従来の薬剤担体が、希釈剤、賦形剤、充填剤、接着剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸収担体、潤滑剤、風味剤及び甘味料のうちの少なくとも1つを含み、賦形剤が水であり、充填剤が、デンプン、スクロース又はラクトースであり、接着剤が、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン及びポリビニルピロリドンからなる群より選択されるうちの少なくとも1つであり、湿潤剤がグリセリンであり、崩壊剤が、寒天、炭酸カルシウム又は重炭酸ナトリウムであり、吸収促進剤が第四級アンモニウム化合物であり、界面活性剤がパルミチルアルコールであり、吸収担体が、カオリン粘土又は石けん粘土であり、潤滑剤が、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム又はポリエチレングリコールである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ペレット剤、カプセル剤、顆粒剤、滴下剤又は経口液剤のような臨床投与形態に調製することができる、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
7−ヒドロキシクマリン及び7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンのうちの少なくとも一方を従来の薬剤担体と混合すること、および、医薬組成物を得るために、特定の調製方法に従って調製することを含む、請求項1記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項7】
糖尿病性腎症のための医薬組成物の調製における7−ヒドロキシクマリン及び/又は7−ヒドロキシ−6−メトキシクマリンの使用。

【公表番号】特表2011−510098(P2011−510098A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546200(P2010−546200)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000343
【国際公開番号】WO2010/081262
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(510178345)グアンヂョウ コンスン メディスン アール アンド ディー カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU CONSUN MEDICINE R & D Co.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.71,Dongpeng Road,Eastern District,Economy Technology Development Park,Guangzhou 510 530,P.R.CHINA
【Fターム(参考)】