説明

糖尿病性腎症のための医薬組成物、並びにその調製及び適用

本発明は、桑白皮(Cortex Mori)から抽出及び単離された4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメート(DPMC)の適用、並びに糖尿病性腎症のための医薬の調製に関する。医薬組成物は、活性成分としてのDPMC及び通常の薬剤担体から構成され、活性成分の重量%は0.1〜99.5%である。糖尿病性腎症の予防及び治癒に対する顕著な効果及び便利な使用のため、患者にとって新たな選択薬剤となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝統的な漢方薬の調製の分野に関し、特に活性成分が4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメート(DPMC)である糖尿病性腎症のための医薬組成物の調製及びその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病及びその慢性合併症は、ヒトの健康及び生活の質に深刻な影響を与えてきた。近年、患者の数が増加しており、全ての年齢群において糖尿病性腎症の発症率は、世界中で、2000年は2.8%であり、2030年には4.4%になると予測され、このことは、糖尿病患者の数が2000年の1億7千百万人から2030年には3億3千3百万人に増加することを意味する。発症率が毎年増加しているので、中国における患者の数は、インドに次いで第2位である。したがって、糖尿病及びその合併症の予防及び治癒は、最近は非常に重要な話題になっている。糖尿病性腎症(DN)は、糖尿病の重要な合併症の1つであり、腎不全の最終段階をもたらす疾患の第1位である。世界保険機構のデータにより示されているように、I型糖尿病患者の約30%及びII型糖尿病患者の25%〜40%は、血中グルコースが管理されないとDN患者に進行する。潜伏期のため及びより早い時期にDNを発見することが困難であるため、腎臓罹患の症状が現れたときには、逆転することができない。糖尿病が1年間続けば、腎臓の濾過機能が破壊され、微量のタンパク尿として表れる。疾患の経過が長引くとタンパク尿は増加し、血中の毒素を排除する腎臓の能力が徐々に減衰し、末期腎疾患(ESRD)をもたらし、患者は、血液透析又は腎臓移植により生命を維持するしかなくなる。したがって、DNの機構を徹底的に解明すること、並びに予防及び治癒の手段を充実させて完成させることがどうしても必要である。
【0003】
終末糖化産物(AGEs)は、酵素の触媒作用なしで生じる巨大分子とグリコ−カルボニルとの共有結合体である。非酵素性触媒作用の条件下において、第1に、可逆性シッフ塩基がブドウ糖分子の遊離アルデヒド及びタンパク質のアミノ基により形成され、第2に、固定ケトアミン化合物(アマドリ生成物)がシッフ塩基の構造転位により形成され、次に、固定した非可逆性のAGEが、脱水、酸化及び縮合の反応の後で形成される。AGEは、タンパク質、核酸、脂質などの生体巨大分子と容易に架橋剤を形成し、次に細胞内に蓄積し、細胞の正常な機能を妨げるので、糖尿病の合併症に密接に関連する。炎症促進因子及び線維症促進因子の多くのサイトカインの産生又は活性化をもたらし、細胞肥大の病的変化、塩基性物質の付着成長及び糸球体の線維症をもたらす、AGEとRAGEの相互作用は、糖尿病性腎症の発症及び進展に対して大きな影響を及ぼし、病因の1つである。したがって、AGES形成への介入、構成されたAGEの排除、AGEにより誘導された腎疾患の症状の修正は、DNを予防及び治癒することができる(Bohlender JM, Franke S, Stein G, et al. Advanced glycation end products and the kidney. Am J Physiol Renal Physiol, 2005, 289(4): 645-659)。
【0004】
クワ(Morus alba L.)の乾燥根皮層である桑白皮(Cortex Mori)は、甘味があり、冷感性であって、肺から熱を除去し、喘息を緩和し、利尿を誘導して浮腫を軽減する機能を有する。桑白皮は、通常、肺の熱に起因する呼吸困難症及び咳、水症及び膨張に起因する乏尿症、顔面の筋肉及び皮膚の腫脹に使用される。最近の薬理学研究は、桑白皮が、血糖及び血圧の低下、利尿、咳の予防及び喘息の緩和、抗HIV、抗腫瘍などの活性を有することを示した。血糖を低下する活性成分である1−デオキシノジリマイシン及びモランAが桑白皮から単離されて以来、ますます多くの研究者たちが、血糖を低下する新たな活性成分を桑白皮から探しており、次いで糖尿病のために新たな薬剤の改善を探求している。DPMCは、桑白皮の抽出物から初めて単離された新たな天然産物であり、以前は化学工学の分野でのみ使用されたDPMCの合成生成物は、ポリウレタンの主要材料であるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を調製するためのものである。現在まで、国内又は海外の文献で医薬分野に使用されるDPMCについて報告したものはほとんどない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
糖尿病性腎症のための医薬組成物及びその調製を提供することが本発明の目的であり、ここで、本医薬組成物の活性成分は、桑白皮から抽出したDPMCである。
【0006】
上記の目的を達成するための技術的解決は以下である:
DPMC及び従来の薬剤担体から構成され、活性成分は0.1〜99.5重量%の割合で含まれる、糖尿病性腎症のための医薬組成物。
【0007】
好ましくは、本活性成分は、5〜70重量%の割合で含まれる。
【0008】
本発明の医薬組成物に使用される従来の薬剤担体は、医薬分野の従来の薬剤担体である。例えば、希釈剤及び賦形剤は水であり、充填剤は、デンプン、スクロース、ラクトースなどであり、接着剤は、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン又はポリビニルピロリドンであり、湿潤剤はグリセリンであり、崩壊剤は、寒天、炭酸カルシウム又は重炭酸ナトリウムから選択され、吸収促進剤は、第四級アンモニウム化合物であり、界面活性剤は、パルミチルアルコールであり、吸収担体は、カオリン粘土又は石けん粘土であり、潤滑剤は、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム又はポリエチレングルコールである。加えて、風味剤、甘味料などの他の佐剤を組成物に加えることもできる。
【0009】
通常の調製方法を使用することよって、本発明の医薬組成物を通常の投与形態に調製することができるが、この投与形態は主に経口調合剤であって、例えば固体調合剤は、ペレット剤、顆粒剤、粒剤、粉末剤、顆粒化剤、カプセル剤であり、液体調合剤は、水性又は油性懸濁剤、エリキシル剤などである。
【0010】
好ましくは、本医薬組成物は、ペレット剤、顆粒剤、粒剤又はカプセル剤である。
【0011】
医薬組成物の投与量は、投与方法及び疾患の重篤度によって調整することができる。通常、診療所の経口基準投与量は、20〜120mg/dである。
【0012】
本発明の更なる目的は、4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメートを従来の薬剤担体と混合することと、医薬組成物を得るために、特定の調製方法に従って調製することを含む、請求項1記載の医薬組成物の調製方法を提供することである。
【0013】
好ましくは、4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメートを調製する方法は、以下の通りである:
A.桑白皮の乾燥根皮層を粉末に粉砕し、水を加え、還流下で抽出し、抽出物をまとめ、真空下で濃縮して、特定の容量にする;
B.マクロ孔質樹脂に加え、水、次に95%EtOHで溶離し、95%EtOH溶離液を収集し、真空下で濃縮する;
C.シリカゲルに加え、石油、石油−酢酸エーテル100:1、石油−酢酸エーテル50:1のそれぞれで溶離し、石油−酢酸エーテル50:1の溶離によって無色の層状結晶を得る。
【0014】
本医薬組成物は、薬剤学の分野における通常の調製方法に従って調製することができる。例えば、活性成分を複数の担体と混合し、次に所望の投与形態に調製する。
【0015】
本発明は、糖尿病性腎症及びその合併症のための医薬組成物の調製におけるDPMCの適用も提供する。好ましくは、本適用は、糖尿病性腎症のための医薬組成物の調製におけるDPMCの適用である。
【発明の効果】
【0016】
1.本発明において、DPMCは、初めて、桑白皮から単離され、血糖を低下する機能を有することが証明されたが、このことは、糖尿病及び糖尿病の合併症の患者にとって新たな薬剤を提供することを示している。
【0017】
2.本医薬組成物は、顆粒剤、滴下剤(dripping pill)、注入用の粉末調合剤、ペレット剤のような経口投与形態に調製することができ、使用するのに都合が良い。
【0018】
3.本医薬組成物は、糖尿病における糸球体の損傷の予防又は治癒において際立った効果を有する。本医薬組成物は、顕著に血清クレアチニンの上昇を防ぎ、糖尿病のラットの尿量、尿タンパク質及び腎指数を低下することができ、このことは、本医薬組成物が糖尿病性腎症の予防及び治癒に対して顕著な効果があることを証明している。
【0019】
4.本医薬組成物は、糖尿病性腎症に対して、桑白皮の水抽出物よりも明らかに有効である。加えて、確定した活性成分及び容易な品質管理のおかげで、不確定な活性成分、粗悪な品質管理、多くの特定の毒性副作用などのような伝統的な漢方薬の欠点を克服することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】AGEにより誘導されるラットメサンギウム細胞のTGFβ−1の発現に対する、DPMCの効果を示す(200×); 図中、A:正常対照群、B:AGE(5mM/L)、C:陰性対照群、D:桑白皮の水抽出物(0.1mg/ml)、E:DPMC(0.5nM/L)、F:DPMC(5nM/L)、G:DPMC(25nM/L)、H:DPMC(125nM/L)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を以下の実施態様において更に説明する。
【0022】
〔実施例1:DPMCの調製〕
10kgの桑白皮の乾燥根皮層を微細粉末に粉砕し、100Lの水を加え、還流下で2時間に3回抽出する。抽出物をまとめ、真空下で特定の容量に濃縮し、D101マクロ孔質樹脂に加え、水、次に95%EtOHで溶離し、95%EtOH溶離液を収集し、真空下で濃縮し、次にシリカゲルに加え、石油、石油−酢酸エーテル100:1、石油−酢酸エーテル50:1のそれぞれにより溶離する。無色の層状結晶が石油−酢酸エーテル50:1の溶離によって得られる。その構造は、赤外線スペクトル、紫外線スペクトル、核磁気共鳴及び質量スペクトルによって、4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメート(DPMC)であると同定された。分子式:C1718;分子量:314。構造を下記に示す:
【化1】

【0023】
〔実施例2:医薬組成物のペレット粒剤の調製〕
粒剤1個あたりの構成成分:
DPMC 12mg
ラクトース 175mg
トウモロコシデンプン 50mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
【0024】
調製方法:DMPC、ラクトース及びデンプンを混合し、水で均一に湿潤し、混合物を篩にかけ、乾燥し、再び篩にかけ、ステアリン酸マグネシウムを加え、次に混合物を砕いて、粒剤1個当たり240mgで活性成分が12mgの錠剤にする。ペレット粒剤(pellet pill)は、高尿タンパク質及び糖尿病性の腎症に対して十分な効果を発揮する。
【0025】
〔実施例3:医薬組成物のカプセル剤の調製〕
工程:
A 4.2gのミツロウを取り、125gのエファモルを加え、80℃の湯浴で溶融及び混合し、室温(25℃)に冷却し、次に十分な量のジブチルヒドロキシアニソールを加え、均一に混合する。
B 100メッシュの篩にかけた0.25gのDPMC及び5gのレシチンを加え、250gのエファモルを加え、十分に混合してカプセル剤のコア液とし、1000個のカプセル剤を調製する。
【0026】
この実施例で調製したカプセル剤は、高血糖症及び糖尿病性腎症に対して十分な効果を発揮する。
【0027】
〔実施例4:医薬組成物の滴剤の調製〕
15gのDPMCを取り、微細粉末に粉砕し、200メッシュの篩にかけ、15gの溶融ポリグリコール6000基材に加え、十分に撹拌し、チラーとしてジメチルベンゼンシリコーン油を用いて滴剤(drop pill)を調製し、乾燥して、7−ヒドロキシクマリンの滴剤を完成させる。滴剤は、血清クレアチニンを上昇させ、尿クレアチニンを下降させる疾患、及び糖尿病性腎症に対して十分な効果を発揮する。
【0028】
〔実施例5:医薬組成物の分散性錠剤の調製〕
処方用量:280gのDMPC、40gのラクトース、70gの微晶質セルロース、5.25gのポリビニルピロリドン、2.5gのアスパルテーム、6gのポリビドン及び4gの重炭酸カリウム、の量を正確に計量し、主剤及び佐剤を等量ずつ増やして十分に混合し、80メッシュの篩で2回篩にかけ、混合物を適切な容器に入れ、75%EtOHに溶解した15%(g/100ml)ポリエチレン6000の十分な量を加えて軟質にし、20メッシュの篩によって砕いて湿潤顆粒にし、ほうろうプレートの上に塗布し、送風オーブンにより70℃で2時間乾燥し、乾燥した顆粒を正確に計量し、2.25gの残りのポリビニルピロリドン及び1%(w/w)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加え、均一に混合し、φ7mmの円形打抜ダイで1000個の粒剤に砕いて、1000個のDPMCの分散性錠剤を作製する。本分散性錠剤は、糖尿病性腎症及びその合併症に対して十分な効果を発揮する。
【0029】
〔実施例6:医薬組成物のペレット粒剤の調製〕
活性成分: 70g
微晶質セルロース: 0.4g
砕いて1000個の粒剤にする
【0030】
調製方法:活性成分を微晶質セルロースと混合し、水で均一に湿潤して軟質にし、混合物を顆粒にし、20メッシュの篩にかけ、80℃で乾燥し、再び篩にかけ、次に砕いて、粒剤1個あたり70.4mgであって粒剤1個あたり70mgの活性成分を有する粒剤にする。本粒剤は、糖尿病性腎症及びその合併症に対して十分な効果を発揮する。
【0031】
DPMCは、本発明の医薬分野において使用されるが、糖尿病性腎症に対するその効果を証明するために、AGEにより誘導されるメサンギウム細胞のマトリックス増殖に対する効果及びSTZ糖尿病性腎症モデルラットの病理変化に対する効果についての実験に、DPMCを適用する。
【0032】
<実験1>
AGEにより誘導されるメサンギウム細胞のマトリックス増殖に対するDPMCの効果
糖尿病性腎症の特異的な疾患兆候は、メサンギウム領域における細胞外マトリックスの増大により誘導される糸球体毛細血管間細胞のマトリックス硬化である。メサンギウム細胞は、糸球体腸間膜の主要な構成成分であり、収縮、内分泌、分化増殖、免疫及び食菌作用の多くの機能を有する糸球体の生理学的機能を維持する重要な役割を果たす。AGEは、メサンギウム細胞の細胞外マトリックス増殖を誘導することができ、このことは糖尿病性腎症の重要な病理変化である。
【0033】
1.材料及び薬剤
ラットのメサンギウム細胞株HBZY−1(Wuhan cell & biology institute);DPMC、桑白皮の水抽出物;ウシ血清アルブミン、D−ブドウ糖(sigma company);仔牛血清(Sijiqing serum factory, Hangzhou);TGFβ−1抗体(Canta Cruz);DAB発色システム(Gene Tech Biotechnology CompanyLimited);ヒドロキシプロリン含有量測定キット(Nanjing Jiancheng company)。
【0034】
2.実験方法
2.1 桑白皮及びAGEの水抽出物の調製
桑白皮の水抽出物の調製
十分な量の桑白皮の乾燥根皮質を粉末に粉砕し、10倍の水を加え、還流下で2時間毎に3回抽出し、抽出物をまとめ、真空下で濃縮して使用のための特定の容量にする。
【0035】
AGEの水抽出物の調製
グロブリン不含有5%ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.5mol/LのD−ブドウ糖を0.2mol/Lのリン酸緩衝溶液(PBS、PH=7.2)に溶解し、0.22μmの微細孔膜で濾過し、37℃で60日間インキュベートした。終末糖化産物(AGE)のインキュベーションが終了した後、非結合材料を拡張透過法により清浄した。必要な濃度に希釈し、0.22μmの微細孔膜で濾過した。
【0036】
2.2 メサンギウム細胞の培養及び染色
メサンギウム細胞の病理変化を誘導するAGEの濃度及び時間測定
対数増殖期のHBZY−1細胞及び5%仔牛血清含有DMEM培地により単細胞懸濁液を調製し、100μl/ウエル(細胞量:1×10/ウエル)を取り出して、96ウエルプレートに入れ、5%COインキュベーターにより37℃で24時間インキュベートし、血清不含有DMEMの100μlに変えて、更に24時間インキュベートして、細胞を休止期にする(同期化)。上清を廃棄し、5%仔牛血清、及び段階希釈による異なる濃度のAGEの10μlを含有するDEME培地の90μlを、1群あたり6回繰り返して加え、それぞれ勾配時間によりインキュベートし、MTTによりラットのメサンギウム細胞の繁殖程度を測定する。その結果は、0.25mg/mlのAGE及び48時間のインキュベーションが実験にとって最高の条件であったことを示す。
【0037】
HBZY−1細胞を同期化まで増殖させるために、ポリ−L−リシンで前処理したカバーガラスを24ウエル細胞培養プレートに入れる。上清を廃棄し、800μlのDMEM培地、100μlのAGE(最終濃度は0.25mg/mlである)を各薬剤群に加え、次に、桑白皮の水抽出物(最終濃度は0.1g/Lである)又はDPMC(最終濃度は0.5、5、25又は125nM/Lである)の100μlを加える。AGE群に900μlのDMEM培地及び100μlのAGE(最終濃度は0.25mg/mlであった)を加えたとき、正常対照群には1mlのDMEM培地を加える。各群では6回繰り返す。次に全ての群を5%COインキュベーターにより37℃で48時間インキュベートする。細胞をカバーガラスで完全に覆った後、ヒドロキシプロリンの含有量測定のために細胞上清の吸引を行い、カバーガラスを取り出して免疫細胞化学染色を行う。
【0038】
TGFβ−1染色の工程:細胞で覆われたカバーガラスを4%パラホルムアルデヒドにより30分間固定し、内因性ホースラディッシュペルオキシダーゼを、その都度調製した3%Hメタノール溶液で10分間不活性化し、蒸留水で3回清浄し、非特異的抗原を、5%BSAで20分間ブロックし、TGFβ−1(1:500)を滴加し、40℃で一晩維持し、PBS(pH7.4)により2分間で3回洗浄し、ヤギの抗マウスビオチン化抗体を滴加し、37℃で30分間保持し、PBS(pH7.4)により2分間で3回洗浄し、HRPで標識されたアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体を滴加し、37℃で30分間保持し、PBS(pH7.4)により5分間で4回洗浄し、50μlのDAB発色液を滴加し、室温で15分間発色させ、蒸留水で均一に清浄し、ヘマトキシリンで1分間再び軽く染色し、水で洗浄し、アルコールで脱水する。
【0039】
ジメチルベンゼンで透過化処理し、カバーガラスをneutro-gummiで覆う。
【0040】
3 統計分析
ラットのメサンギウム細胞の培養液のヒドロキシプロリンの含有量を測定し、t−検定で分析してx(平均)±sで表し、顕微鏡によりラットのメサンギウム細胞の免疫組織化学写真におけるTGFβ−1発現を観察する。
【0041】
4 結果
AGEにより誘導されるラットのメサンギウム細胞の上清におけるヒドロキシプロリンの含有量の増加に対するDPMCの効果
表1に示されているように、桑白皮の水抽出物及び異なる用量のDPMCは、全て、AGEにより誘導されるラットのメサンギウム細胞の上清におけるヒドロキシプロリンの含有量増加を減少することができる。更に、大用量のDPMC(125nM/L)は、最高の成果をあげ、桑白皮の水抽出物よりも明らかに良好である。
【0042】
表1 AGEにより誘導されるラットのメサンギウム細胞の上清におけるヒドロキシプロリンの含有量の増加に対するDPMCの効果
【表1】

【0043】
4.2 AGEにより誘導されるラットのメサンギウム細胞のTGFβ−1発現に対するDPMCの効果
図1に示されているように、AGEは、ラットのメサンギウム細胞のTGFβ−1発現を増加させることができる。桑白皮の水抽出物及び異なる用量のDPMCは、全て、ラットのメサンギウム細胞のTGFβ−1発現の増加を抑制することができる。更に、大用量のDPMC(125nM/L)は、最高の成果をあげ、異なる用量のDPMCは、桑白皮の水抽出物と比べてより良好であるか又は同等である。
【0044】
<実験2>
STZ糖尿病性腎症ラットの病理変化に対する効果
1 材料及び試薬
ストレプトゾトシン(Sigma);ウィスターラット(南医科大学の実験動物センターから提供された);BIOBASE-PEARL分離自動生化学分析機(Shandong BIOBASE Company)。
【0045】
2 実験方法
2.1 桑白皮の水抽出物の調製
十分な量の桑白皮の乾燥根皮質を粉末に粉砕し、10倍の水を加え、還流下で2時間毎に3回抽出し、抽出物をまとめ、使用するために、真空下で濃縮して特定の容量にする。
【0046】
2.2 投与
低用量のSTZを数回投与することによりモデル化し、糖尿病性腎症のモデルラットとして測定し、10匹のマウス/群で以下の6群に分ける:モデル群、陽性薬剤対照群(アミノグアニジン、100mg/kg)、桑白皮の水抽出物群、3つの異なる濃度用量のDPMC群(高用量群:4mg/kg;中用量群:2mg/kg;低用量:1mg/kg)、正常対照群。
【0047】
各群には、異なる濃度で同じ容量の対応する薬剤又は生理食塩水を、14週間にわたって毎日胃内投与により与える。
【0048】
3 統計分析
投与が終了した後、24時間の尿を収集し、尿量を計算し、尿の総タンパク質、微量アルブミン及び尿クレアチニンの含有量を測定し、眼窩から血液を得て、自動生化学分析機により生化学的指標を測定し、2つの腎臓を取り出し、ホルマリンで固定し、組織病理学実験まで維持する。
【0049】
全ての測定の統計分析を、クラス間t−検定により計算して、x(平均)±sで表す。
【0050】
4 結果
4.1 STZにより誘導される糖尿病性腎症のラットモデルの24時間尿量、尿の総タンパク質、微量アルブミン及び尿クレアチニンに対するDPMCの効果
表2に示されているように、モデル群において、24時間尿量、尿総タンパク質の排出量及び微量アルブミンが増加し、尿中のクレアチニンの排出量は明らかに減少しているが、それにもかかわらず、桑白皮の抽出物及び異なる用量は、全て、上記の変化を抑制することができる、すなわち、糖尿病性腎症のラットの24時間尿量を減少させ、尿総タンパク質及び微量アルブミンの排出量を低下させ、クレアチニンの排出量を増加させることができる。これらの群のうち、DPMC用量の上昇につれて効果は強化され、用量効果関係が明らかである。更に、大用量のDPMCの効果は、桑白皮の水抽出物よりも明らかに良好である。
【0051】
表2 ラットの尿量、尿の総タンパク質、微量アルブミン及び尿クレアチニンに対するDPMCの効果(x(平均)±s、n=10)。
【表2】

【0052】
4.2 糖尿病性腎症のラットの血清の生化学的指標に対するDPMCの効果
表3に示されているように、桑白皮の水抽出物及び異なる用量のDPMCは、全て、糖尿病性腎症のラットの血清総コレステロール(TC)、マロンアルデヒド(MDA)、血清クレアチニン(SC)、血中尿素窒素(BUN)、AGE及び低密度リポタンパク質(LDL)のレベルを減少し、血清スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)のレベルを上昇させることができる。用量の上昇につれてDPMCの効果は強化され、更に、DPMCの全ての濃度の効果は、桑白皮の水抽出物と比べてより良好であるか又は同等である。
【0053】
表3 糖尿病性腎症のラットの血清の生化学的指標に対するDPMCの効果(x(平均)±s、n=10)
【表3】

【0054】
4.3 糖尿病性腎症モデルのラット糸球体のCTGF発現及び病理組織学に対するDPMCの効果
表4に示されているように、正常対照群と比較すると、糖尿病性腎症モデルの糸球体CTGF発現は増加し(P<0.01)、病理組織の損傷も増加し、桑白皮の水抽出物及び異なる用量のDPMCは、全て、STZにより誘導された糖尿病性腎症のラットモデルの糸球体CTGF発現を減少することができ、損傷の病理スコアを下げることができる。用量の上昇につれてDPMCの効果は強化され、更に、DPMCの全ての濃度の効果は、桑白皮の水抽出物と比べてより良好であるか又は同等である。
【0055】
表4 糖尿病性腎症モデルのラット糸球体のCTGF発現及び病理組織学に対するDPMCの効果(x(平均)±s、n=10)
【表4】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としての4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメート、及び、従来の薬剤担体から構成され、活性成分が0.1〜99.5重量%の割合で含まれる、糖尿病性腎症のための医薬組成物。
【請求項2】
活性成分が、5〜70重量%の割合で含まれる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
従来の薬剤担体が、希釈剤、賦形剤、充填剤、接着剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸収担体、潤滑剤、風味剤及び甘味料のうちの少なくとも1つを含み、ここで、賦形剤が水であり、充填剤が、デンプン、スクロース又はラクトースであり、接着剤が、セルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン及びポリビニルピロリドンからなる群より選択されるうちの少なくとも1つであり、湿潤剤がグリセリンであり、崩壊剤が、寒天、炭酸カルシウム又は重炭酸ナトリウムであり、吸収促進剤が第四級アンモニウム化合物であり、界面活性剤がパルミチルアルコールであり、吸収担体が、カオリン粘土又は石けん粘土であり、潤滑剤が、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム又はポリエチレングリコールである、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
ペレット剤、顆粒剤、粒剤、カプセル剤又は液剤のような臨床投与形態に調製することができる、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項5】
4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメートを従来の薬剤担体と混合すること、及び、医薬組成物を得るために、特定の調製方法に従って調製することを含む、請求項1記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項6】
4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメートを調製する方法が、以下:
D.桑白皮(Cortex Mori)の乾燥根皮層を粉末に粉砕し、水を加え、還流下で抽出し、抽出物をまとめ、必要な容量にまで真空下で濃縮すること;
E.マクロ孔質樹脂に加え、水、続いて95%EtOHで溶離し、95%EtOH溶離液を収集し、真空下で濃縮すること;
F.シリカゲルに加え、石油、石油−酢酸エーテル100:1、石油−酢酸エーテル50:1のそれぞれで溶離し、石油−酢酸エーテル50:1の溶離によって無色の層状結晶を得ること
を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
糖尿病性腎症のための医薬組成物の調製における4,4′−ジフェニルメタン−ビス(メチル)カルバメートの使用。

【公表番号】特表2011−528320(P2011−528320A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546201(P2010−546201)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000351
【国際公開番号】WO2010/081263
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(510178345)グアンヂョウ コンスン メディスン アール アンド ディー カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU CONSUN MEDICINE R & D Co.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.71,Dongpeng Road,Eastern District,Economy Technology Development Park,Guangzhou 510 530,P.R.CHINA
【Fターム(参考)】