説明

糸供給装置

【課題】糸のトラバース方向の振れを抑え、解舒撚りを生じることなく糸を供給することのできる糸供給装置を提供する
【解決手段】トラバース方向(原糸軸芯の軸方向)の両側から扁平糸1に常時接触するガイド部17a、17bを設けることで、扁平糸1のトラバース方向の振れを抑え、解舒撚りの発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚りを生じない状態で織機等へ糸を供給するための糸供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されている糸供給装置は、駆動手段により回転可能な原糸軸芯に原糸を軸方向で往復(トラバース)させて巻いて成る原糸供給体(巻玉)と、巻玉から送り出された糸をU字状にプールする貯留部と、貯留部の直前に設けられたガイドスリットとを備える。このガイドスリットにより、巻玉から引き出された糸のトラバース方向の振れを規制している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−273745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなガイドスリットでは、糸のトラバース方向の振れがスリット幅の分だけ許容されるため、振れを完全に抑えることはできない。この糸のトラバース方向の振れにより、糸が捩れて撚りが生じる、いわゆる解舒撚りが発生する恐れがある。このように解舒撚りが生じたままの糸を、例えばヨコ糸として織機に供給すれば、糸幅が不均一なヨコ糸が織物に織り込まれるため、製品の仕上がりや強度に不具合を生じる恐れがある。
【0005】
本発明の課題は、糸のトラバース方向の振れを完全に抑えて、解舒撚りの発生を防止することのできる糸供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、回転可能な原糸軸芯に糸をトラバースして巻いて成る原糸供給体を備え、この原糸供給体から糸を送り出す糸供給装置において、原糸供給体の糸送り方向先行側に、原糸軸芯の軸方向と直交する中心軸を有し、原糸軸芯の軸方向両側から糸を当接状態で挟む複数のガイド部を設けたことを特徴とする。
【0007】
このように、本発明の糸供給装置では、原糸軸芯の軸方向、すなわち原糸供給体から引き出された糸が振れる方向(以下、トラバース方向と称す)と直交する中心軸を有する複数のガイド部を設ける。このガイド部で原糸供給体から引き出された糸をトラバース方向両側から当接状態で挟むことにより、原糸供給体から解舒された糸のトラバース方向の振れを完全に抑えることができ、解舒撚りの発生を防止することができる。
【0008】
この複数のガイド部を糸送り方向で離隔して設けると、各ガイド部の一部を糸送り方向で重ねて配置することができる。これにより、糸のトラバース方向両側から確実にガイド部を当接させることができるため、糸の振れをより確実に抑えることができる。
【0009】
この糸供給装置では、糸の解舒工程において糸の張力を一定に保つことが重要となる。糸の張力が瞬間的に緩和されると、糸に捩れが生じる恐れがあるためである。そこで、原糸供給体とガイド部との間に案内部を設け、この案内部を糸と接触させて糸送り方向を曲げて糸を送ると、糸の張力を一定に保つことが可能となる。
【0010】
ところで、図8に示すように、通常原糸1は原糸軸芯11aと直交する方向に対して角度(この角度を綾角度と称し、図8にθで示す)をもって巻かれる。このように巻かれた糸を原糸軸芯と直交する方向に引き出すと糸に捩れが生じる恐れがあるため、綾角度θの方向に糸を引き出す必要がある。従って、図9に示すように、綾角度θの方向から送り込まれた糸1が、案内部16を介してガイド部17へ向けて送り出すことになる。このとき、例えば図9、図10に示すように、案内部16の糸との接触面を円筒面状に形成すると、案内部16の母線と糸送り方向とが直交しないため、糸1にダブつきが生じ(図10にXで示す)、糸に撚りが生じる恐れがある。そこで、この案内部が円弧状の母線を有し、且つ案内部と糸との接触点において母線と糸の送り方向とが常に直交するように母線の曲率を設定すると、糸の案内部上におけるダブつきを回避し、解舒撚りをより確実に防止することができる。
【0011】
このような案内部を設けた場合、原糸供給体の原糸が減ると、トラバース方向と直交する平面上において、案内部への糸の供給角度が変わることがある。この角度が変わると、予め設定した案内部の母線形状では糸送り方向と直交させることができなくなるため、糸にダブつきが生じる恐れがある。そこで、原糸供給体と案内部との間に、原糸供給体から送り出した糸と接触することで、原糸軸芯の軸方向(トラバース方向)と直交する平面において常に一定角度で案内部へ糸を供給する補助案内部を設けることで、かかる不具合を回避することができる。
【0012】
また、扁平した糸を使用する場合、前記複数のガイド部で糸をトラバース方向両側から挟むことにより糸の振れが抑えられると同時に、糸が原糸軸芯に巻かれた状態から90°捩られることになる。例えば、後述する貯留部を備えた糸供給装置の場合、このように糸が捩られたままでは貯留部に供給する際に糸に撚りが生じる恐れがある。そこで、ガイド部の糸送り先行側に、ガイド部の軸方向に対して傾斜した中心軸を有する副ガイド部を設け、この副ガイド部に接触させながら糸を送ることにより、糸の捩れを戻すことができる。
【0013】
例えば、このような副ガイド部として、ガイド部の中心軸と直行する中心軸を有する副ガイド部を、ガイド部の糸送り先行側の一箇所に設けた場合、これらの間で糸が急激に捩られるため、捩れが解消されない恐れがある。この点に鑑み、副ガイド部を糸送り方向で離隔した複数箇所に設け、各副ガイド部の中心軸とガイド部の中心軸との間の角度を、ガイド部から離隔するにつれて段階的に大きくすると、ガイド部で捩られた糸の捩れを段階的に元に戻すことができるため、確実に糸の捩れを解消することができる。
【0014】
このような糸供給装置が、原糸供給体から解舒した糸を風圧をかけてU字状にプールする貯留部を備えると、例えば織機にヨコ糸を供給する場合、織機に供給される一定長さの糸を絡まりを防止しながらプールすることができるため、安定して織機にヨコ糸を供給することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によると、糸のトラバース方向の振れを完全に抑え、解舒撚りを生じることなく糸を供給することのできる糸供給装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態では、本発明に係る糸供給装置を織機にヨコ糸を供給するヨコ糸供給装置として使用する場合を示す。図1(a)に、本実施形態に係る糸供給装置100の正面図(部分断面図)を示す。この糸供給装置100は、解舒部10と貯留部30とを備え、解舒部10で解舒した糸を貯留部30に送り、ヨコ糸として織機に断続的に供給される所定の長さ分の糸を貯留部30で貯留するものである。
【0018】
解舒部10は、原糸軸芯11aに原糸をトラバースして巻いて成る原糸供給体11を備える。原糸軸芯11aに巻かれる糸のトラバース幅は特に限定されず、糸のサイズ等に応じて1μm〜1000mmの範囲で適宜設定することができる。この原糸供給体11から送り出した糸を、補助案内部としての補助案内ローラ15、案内部としての案内ローラ16、ガイド部としてのガイドローラ17a、17b、副ガイド部としての副ガイドローラ18a、18b、18c、テンション装置19、及び駆動ローラ20を経て、貯留部30に送り込む。扁平糸1は、図原糸軸芯11aは駆動部14により正逆回転可能に駆動される。原糸供給体11は、超音波センサ12、及び原糸感知センサ13で感知されている。尚、本実施形態では、糸として扁平糸1を使用した場合を示す。
【0019】
超音波センサ12は、ケバやホコリなどを無視できるセンサで、原糸軸芯11aに巻きつけられた扁平糸1(原糸)との距離を感知(測定)するものである。この感知した信号を、駆動部14のサーボモータ及びブレーキ等(図示省略)にフイードバックして扁平糸1の供給量(原糸軸芯11aの回転数)を制御することで、安定した張力で扁平糸1を貯留部30へ送り込む機能を果たしている。
【0020】
原糸感知センサ13は、扁平糸1及び原糸軸芯11aの色を識別することができる。原糸供給体11の原糸が少なくなると、センサ13がその色の変化を感知し、原糸が無くなる寸前に織機をストップさせる。これにより、貯留部30に糸が吸引されることが防止され、原糸の補充をスムーズに行うことができる。
【0021】
駆動部14はモータ(図示省略)を有し、このモータで原糸軸芯11aを糸送り出し方向に積極的に回転駆動させる。この原糸軸芯11aの回転速度、すなわちモータの回転速度を、後述するテンション装置19の信号を感知しながら制御することで、一定の張力を維持した状態で貯留部30に糸を送込むことができる。尚、モータの制御方法は上記のように回転速度で制御する方法に限らず、モータの回転トルクで制御する方法、あるいは原糸軸芯にブレーキ力を発生させ、このブレーキ力の調整により糸の送り出し量を調節するブレーキ制御による方法等を採用することもできる。ブレーキ力を発生させる方法としては、例えば糸送り出し方向と逆方向に駆動を与える方法や、モータ以外のブレーキ装置を設ける方法等が挙げられる。
【0022】
補助案内ローラ15は、トラバース方向と平行な回転軸を有する円筒状ローラである。この補助案内ローラ15を糸と接触させることにより、糸送り方向が曲げられる。これにより、原糸軸芯11aに巻かれた原糸の量が減った場合でも、トラバース方向と直交する平面(図1の紙面上)において案内ローラ16へ糸を一定の角度で供給することができる。
【0023】
案内ローラ16は、トラバース方向と平行な回転軸を有し、この回転軸を中心に円弧状の母線を回転させてなる外周面16aを有する、いわゆる太鼓型ローラである(図2参照)。この案内ローラ16の外周面16aが扁平糸1と接触することにより、原糸供給体から綾角度の方向で送り込まれた扁平糸1が、ガイドローラ17a、17bの方向へ送り出される。このとき、案内ローラ16の外周面16aの形状は、原糸軸芯11aに巻かれた扁平糸1の綾角度、及び案内ローラ16とガイド部17aとの距離等を考慮して、案内部16と扁平糸1との各接触点において案内部16の外周面16aの母線と糸送り方向とが常に直交するように設定される。これらにより、扁平糸1にダブつきが生じることなく安定して案内ローラ16と接触することができるため、糸の解舒撚りを防止することができる。尚、本実施形態では、案内部として回転可能な案内ローラ16を用いているが、これに限られない。例えば、図5に示すように、弓型に湾曲した固定式の案内部16’を用いてもよい。これによると案内部の構造が簡略化できる一方で、糸との摩擦力が大きくなるため、摩擦によるケバ立ちや糸切れが懸念される場合は、前述の回転式の案内部を用いることが好ましい。あるいは、図示は省略するが、スイング機構により円筒部材をトラバース方向にスイングさせるスイング式の案内部を採用してもよい。
【0024】
ガイドローラ17a、17bは、トラバース方向と直行する中心軸を有するローラからなる。この複数のガイドローラ17a、17bがトラバース方向両側から扁平糸1を当接状態で挟むことにより、扁平糸1のトラバース方向の振れを完全に抑えることができる。すなわち、図2に示すように、案内ローラ16では扁平糸1にトラバース方向の振れが生じているが(図2に点線及び一点鎖線で示す)、ガイドローラ17a、17bで扁平糸1を挟み込むことにより、この振れを抑えている。また、本実施形態では、図2に示すように、ガイドローラ17a、17bを糸送り方向で離隔して設けている。これにより、ガイドローラ17aへの扁平糸1の進入方向に対してガイドローラ17a、17bの一部を重ねて配することができるため、確実に扁平糸1と当接させることができる。このようにガイドローラ17a、17bで扁平糸1を当接状態で挟み込むことにより、扁平糸1は、トラバース方向の振れが抑えられると同時に、原糸供給体11から送り出された状態から90°捩られる。尚、ガイドローラの配置数はこれに限らず、例えば図6に示すように、さらに糸送り先行側にガイドローラ17cを設けても良い。これにより、扁平糸1のトラバース方向の振れをより確実に抑えることができる。あるいは、図7に示すように、ガイドローラ17a及び17bを扁平糸1を中心に対向させて配置し、これらで扁平糸1を挟み込む構成としてもよい。これによると、ガイド部の配置スペースをコンパクト化することができる。また、図2では、扁平糸1の捩れを理解しやすくするために、糸の扁平を誇張して示している。
【0025】
ガイドローラ17a、17bの糸送り先行側には、ガイドローラ17a、17bの軸方向と異なる方向から糸に接触する副ガイドローラ18a、18b、18cが設けられる。本実施形態では、それぞれ1本のローラからなる副ガイドローラ18a〜18cが糸送り方向で互いに離隔した複数箇所に配される。これらの副ガイドローラ18a〜18cは、図3に示すように、ガイドローラ17a、17bによる糸の捩り方向(図3では反時計回り方向)と逆向きに傾斜させた中心軸を有する。具体的には、各副ガイドローラ18a〜18cの中心軸L1〜L3は、ガイドローラ17a、17bの軸方向(図3には、ガイドローラ17bの軸方向をL0で示す)に対してそれぞれ15°、45°、75°の角度を成す。すなわち、ガイドローラ17a、17bから離隔するにつれて、各副ガイドローラ18a〜18cの軸方向L1〜L3とガイドローラ17a、17bの軸方向L0との間の角度が、90°へ向けて段階的に大きくなっている。各副ガイドローラ18a〜18cは、トラバース方向一方側から扁平糸1に接触するもの(副ガイドローラ18a、18c)と、他方側から扁平糸1に接触するもの(副ガイドローラ18b)とを糸送り方向で交互に配している。
【0026】
このような副ガイドローラ18a〜18cにより、ガイドローラ17a、17bで90°捩られた扁平糸1の捩れを戻すことができる。また、上記のように、各副ガイドローラ18a〜18cの軸方向L1〜L3とガイドローラ17a、17bの軸方向L0との間の角度を段階的に大きくすることにより、扁平糸1の捩れを段階的に戻すことができるため、確実に糸の捩れを解消することができる。尚、本実施形態では、糸送り方向で最も先行側に配された副ガイドローラ18cの軸方向L3とガイドローラ17a、17bの軸方向L0との間の角度が75°に設定されているため、副ガイドローラ18cを経た扁平糸1には15°の捩れが残る。この捩れはさらに糸送り先行側のテンション装置19で解消される。尚、扁平糸1の捩れを副ガイドローラで完全に解消するために、副ガイドローラ18cとテンション装置19との間に、ガイドローラ17a、17bの軸方向L0と直交する軸を有する副ガイドローラをさらに設けても良い。また、副ガイドローラの配設数は上記に限らず、さらに多く、例えば、副ガイドローラの軸方向とガイドローラの軸方向との間の角度を5°〜90°間の5°刻みで設定した複数の副ガイドローラを設けてもよい。また、扁平糸の捩れを確実に解消するために、副ガイド部は最低3個以上設けることが望ましい。
【0027】
こうして捩れが解消された扁平糸1は、テンション装置19を経て、駆動ローラ20及びプレスローラ21により貯留部30へ送り込まれる。テンション装置19は、扁平糸1の張力を感知し、その情報を原糸軸芯11aの駆動部14に伝達する。この信号を元に原糸供給体11からの扁平糸1の送り出し量を制御することにより、常に一定の張力を保った状態で扁平糸1を貯留部30に供給することができる。
【0028】
駆動ローラ20はモータ(図示省略)により回転駆動され、プレスローラ21は駆動力を有さず自由に回転する。回転駆動させた駆動ローラ20に、扁平糸1をプレスローラ21で押し付けられることにより、扁平糸1が貯留部30に送り込まれる。このとき、駆動ローラ20及びプレスローラ21の表面の材質は、扁平糸1を送り込むことのできる摩擦力が得られ、且つ扁平糸1にケバ立ちや糸切れが生じにくいものを使用することが望ましい。また、プレスローラ21は、扁平糸1の材質等によりに加圧力を調整可能であることが望ましい。
【0029】
解舒部10を経た扁平糸1は、貯留部30に送り込まれる。貯留部30は、織機に送り込む扁平糸1をケーシング31内でU字状に貯留するものである(図1(a)参照)。ケーシング31は、図1(a)の正面図で示す幅寸法と比べて、図1(b)の側面図で示す奥行き寸法がはるかに小さい扁平な形状を成し、前面部31a、背面部31b、及び側面部31c、31cで構成される。ケーシング31の奥行き(図1の紙面に垂直な方向)は扁平糸1の幅に合わせて調整され、例えば1mm〜100mmの間で調整される。ケーシング31の高さ(図1の上下方向)は製作される織物の幅(例えば50mm〜1500mm)に応じて調整される。
【0030】
ケーシング31内の空気は、ブロワー35で吸引されて外部へ排出され(図1に白抜き矢印で示す)、これと同時に、ケーシング31の上端開口部から空気がケーシング31の内部に吸入される。これにより、ケーシング31内でU字状の貯留された扁平糸1には常に下向きの風圧がかかるため、貯留時に糸が絡まる事態を回避すると共に、貯留する糸の長さを容易に管理することができる。尚、本実施形態ではブロワー35を用いた吸引式の貯留部を示したが、これに限らず、例えばケーシングの上方から下方へ向けて空気を噴射することで糸に風圧を与えてU字状に貯留する噴射式の貯留部を採用してもよい。
【0031】
ケーシング31の下部にはバッファボックス33が設けられる。このように、ケーシング31の内部空間とブロワー35との間に、バッファボックス33によるバッファ空間を設けることにより、ケーシング31内の空気を万遍なく吸引することができる。これに対し、ケーシング31の下部に直接ブロワーを配置すると、ケーシング31内の空気が局部的に吸引され、ケーシング31内にプールされた糸が暴れて、糸に撚りが生じる恐れがある。
【0032】
バッファボックス33の内部には、集塵部34が設けられる。この集塵部34でケーシング31内に浮遊したケバやホコリを集塵することにより、これらの塵がブロワー35に吸引されたり外部へ排出されたりすることを防止している。
【0033】
ケーシング31の前面部31a及び背面部31bは、アルミ板等の金属板で形成される。前面部31aの任意箇所、例えば後述するセンサ32a〜32cと同じ高さの3箇所には、幅方向のスリット31a2が形成される。このスリット31a2に透明のアクリル板等をはめ込むことにより、内部の状態を観察することができる。ケーシング31の内面、特に前面部31aの内面31a1及び背面部31bの内面31b1には、粗面加工(いわゆる梨地処理)施される。これにより、ケーシング31内に浮遊したケバやホコリが、ケーシング31の内面に静電気等により付着することを防止できる。
【0034】
ケーシング31内への扁平糸1の供給量は、ケーシング31の側部に配置されたセンサ32a、32b、32cと、貯留部30の入り口に配された駆動ローラ20とが連携することにより制御される。具体的には、ケーシング31内への扁平糸1の供給が不足し、上方に取付けられたセンサ32aが扁平糸1を感知しなくなると、駆動ローラ20の回転速度が速くなり、ケーシング31内への扁平糸1の供給スピードが速くなる。一方、ケーシング31内への扁平糸1の供給が過剰になり、下方に取付けられたセンサ32bが扁平糸1を感知すると、駆動ローラ20の回転速度が遅くなり、ケーシング31内への扁平糸1の供給スピードが遅くなる。それでもケーシング31内への扁平糸1の供給が過剰であり、さらに下方に取付けられたセンサ32cが扁平糸1を感知すると、駆動ローラ20が停止する。尚、ここで使用されるセンサ32a、32b、32cは、ケーシング31内の微弱な静電気やケバ、ほこり等により誤作動を起こさない程度の感度を有するものであることが好ましい。
【0035】
こうしてケーシング31内に貯留された扁平糸1は、貯留部30の出口付近に設けられたローラ36を介して織機に供給される。
【0036】
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明する。尚、以下の説明において、上記の実施形態と同様の機能・構成を有する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図4に、本発明の他の実施形態に係る糸供給装置200を示す。この糸供給装置200は、貯留部30を有さない点、及びテンション装置の構成が異なる点で、上記実施形態と構成を異にする。この糸供給装置200のテンション装置40は、テンション感知部41と、テンションローラ42と、テンションローラ42の糸送り方向両側に段違いで設けられた補助ローラ43及び44とで構成される。この段違いで設けられた補助ローラ43、テンションローラ42、及び補助ローラ44を介して蛇行して送られることにより扁平糸1に加わる張力を、テンションローラ42を介してテンション感知部41で感知する。
【0038】
以上の実施形態では、各副ガイドローラ18a、18b、18cをそれぞれ1本のローラで構成しているが、これに限られず、例えば図7に示すガイドローラ17a、17bのように、2本のローラで扁平糸1を挟み込む構成としてもよい。
【0039】
また、以上の実施形態では、ガイド部、副ガイド部、案内部、及び補助案内部として回転可能なローラを使用しているが、摩擦等の問題がなければ固定式のガイド部、副ガイド部、案内部及び補助案内部を使用してもよい。
【0040】
また、以上の実施形態では、扁平糸を使用した場合を示しているが、他の種類の糸、例えば丸糸を使用した場合でも解舒撚りの防止効果が得られる。尚、原糸が原糸軸芯11aにテープ状、すなわちトラバースすることなく巻かれている場合、上記のガイド部や副ガイド部等は必要ないと考えられるが、これらを設けていても問題なく原糸を解舒することができる。従って、このような糸を用いる場合でも装置を交換することなく、本発明の糸供給装置を使用することができる。
【0041】
また、以上の実施形態では、本発明に係る糸供給装置を織機にヨコ糸を供給するヨコ糸供給装置として使用した場合を示しているが、これに限らず、例えば、縦糸を供給する装置として使用することもできる。また、使用される織機の種類も限定されず、例えばレピア織機等の無杼織機に適用できる。あるいは、複数のフィラメントが集合されてなる繊維束を拡繊対称とする拡繊装置等として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は本発明に係る糸供給装置100を示す正面図、(b)は側面図である。
【図2】解舒部10の一部を図1のA方向から見た側面図である。
【図3】解舒部10の一部を図1のB方向から見た上面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る糸供給装置200の正面図である。
【図5】案内部の他の例を示す側面図である。
【図6】ガイド部の他の例を示す側面図である。
【図7】ガイド部の他の例を示す側面図である。
【図8】原糸供給体11の拡大図である。
【図9】円筒状の案内部を使用した場合を示す概略図である。
【図10】図9の案内部の拡大図である。
【符号の説明】
【0043】
100 糸供給装置
1 糸(扁平糸)
10 解舒部
11 原糸供給体
11a 原糸軸芯
14 駆動部
15 補助案内ローラ(補助案内部)
16 案内ローラ(案内部)
17a、17b ガイドローラ(ガイド部)
18a〜18c 副ガイドローラ(副ガイド部)
30 貯留部
31 ケーシング
32a〜32c センサ
33 バッファボックス
34 集塵部
35 ブロワー
L0 ガイドローラの軸方向
L1〜L3 副ガイドローラの軸方向
θ 綾角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な原糸軸芯に糸をトラバースして巻いて成る原糸供給体を備え、この原糸供給体から糸を送り出す糸供給装置において、
原糸供給体の糸送り方向先行側に、原糸軸芯の軸方向と直交する中心軸を有し、原糸軸芯の軸方向両側から糸を当接状態で挟む複数のガイド部を設けたことを特徴とする糸供給装置。
【請求項2】
前記複数のガイド部を糸送り方向で離隔して設けたことを特徴とする請求項1記載の糸供給装置。
【請求項3】
原糸供給体とガイド部との間に、原糸供給体から送り出した糸に接触して糸送り方向を曲げる案内部を設け、この案内部が円弧状の母線を有し、且つ案内部と糸との接触点において母線と糸の送り方向とが常に直交することを特徴とする請求項1記載の糸供給装置。
【請求項4】
原糸供給体と案内部との間に、原糸供給体から送り出した糸と接触することにより、原糸軸芯の軸方向と直交する平面において常に一定角度で案内部へ糸を供給する補助案内部を設けたことを特徴とする請求項3記載の糸供給装置。
【請求項5】
扁平した糸を使用する場合であって、ガイド部の糸送り先行側に、ガイド部の軸方向に対して傾斜した中心軸を有する副ガイド部を設けたことを特徴とする請求項1記載の糸供給装置。
【請求項6】
副ガイド部が糸送り方向で離隔した複数箇所に設けられ、各副ガイド部の中心軸とガイド部の中心軸との間の角度を、ガイド部から離隔するにつれて段階的に大きくしたことを特徴とする請求項5記載の糸供給装置。
【請求項7】
原糸供給体から解舒した糸に風圧をかけてU字状にプールする貯留部を備えた請求項1記載の糸供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−156104(P2008−156104A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349896(P2006−349896)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(599017667)
【Fターム(参考)】