説明

糸切れ検出方法および装置

【課題】設備コストおよび作業工数を、従来技術に比してはるかに低減させるとともに、装置の稼動効率を大きく向上させてなお、糸切れの発生を高精度に検出する。
【解決手段】複数本の糸2を同時に繰出し走行させるとともに、それらを並列姿勢とした状態でゴムコーティング処理工程に引き渡すに当って、糸2の繰出し位置に近接して、走行経路内に存在する全ての糸2の本数を計測し、併せて、ゴムコーティング処理工程に近接した位置で、走行経路内に存在する全ての糸2を、一旦強制的に弛み変形させて、強制力を取り除いてなお弛み変形状態を維持する糸の有無を検知するにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リール、ボビン等から繰出された、スチールコードその他とすることもできる糸を、それらの複数本を並列姿勢に引き揃えて、ディップ処理、ゴムコーティング処理等を行う処理工程に引き渡す場合の、それらの糸の、走行経路内での切断を、安価にして確実に検出する糸切れ検出方法およびそれに用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リール、ボビン等から同時に繰出し走行される複数本の糸を、並列姿勢に引き揃えた状態で、ディップ処理、ゴムコーティング処理等をするに当っては、糸が途中で切れることがあり、かかる場合には、全ての糸の走行を一旦停止して、切れた糸を繋ぐことが必要となる。
【0003】
これがため従来は、糸切れの有無を検出するべく、各1本の糸を巻回したリール、ボビン等の各個に対応させて、リール等の回転の有無を検出する近接センサーその他を配設すること、または、各1本の糸にフック錘を吊下して、フック錘の落下の有無を、近接センサーその他によって検知すること等が広く一般に行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、近接スイッチその他を配設する前者の従来技術にあっては、たとえば200本の糸を同時に繰出し走行させる場合には200個所に近接スイッチ等を配設することが必要になり、またたとえば、200個のリールを同時に支持するクリールスタンドを複数台準備する場合には、クリールスタンド台数の200倍の個数の近接スイッチ等の配設が必要になって設備コストが大きく嵩むという問題があった。
【0005】
また、各糸にフック錘を吊下する後者の技術にあっては、近接センサー等の配設に起因する設備コスト上の問題に加えて、たとえば、作業者の手作業によって200本の糸の全てにフック錘を吊下するに当って、多くの作業工数が必要となり、しかも、このような作業はリール等の交換の度に行わなければならないという、作業工数および、装置の稼動効率上の問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、設備コストおよび作業工数を、従来技術に比してはるかに低減させるとともに、装置の稼動効率を大きく向上させてなお、糸切れの発生を高精度に検出することができる糸切れ検出方法およびそれに用いる検出装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の糸切れ検出方法は、複数本の糸を、リール、ボビン等から同時に繰出し走行させるとともに、それらを並列姿勢とした状態で、ディップ処理、ゴムコーティング処理等の処理工程に引き渡すに当って、スチールコードその他とすることもできる糸の、処理工程に引き渡すまでの走行経路長さの半分の位置より繰出し側で、走行経路内に存在する全ての糸の数を計測するとともに、糸の走行経路長さの半分の位置より処理工程側で、走行経路内に存在する全ての糸を、一旦強制的に弛み変形させて、強制力を取り除いてなお弛み状態を維持する糸、すなわち切れた糸の有無を検知するにある。
【0008】
ここで、走行経路内に存在する糸の本数は、並列姿勢とした複数本の糸による光学センサーに対する遮光、より直接的には、光学センサーの受光部に対する遮光に基いて計測することが好ましく、この場合は、光学センサーを、糸の延在方向と交差する方向、たとえば、並列姿勢をなす複数本の糸のうち、中央部もしくは中央部分に延在するものと直交する方向に変位させて、糸の本数を1本ずつカウントすることが好ましい。
【0009】
そしてより好ましくは、光学センサーの、往動変位および復動変位のそれぞれで糸の本数をカウントする。
【0010】
また、弛み変形状態を維持する糸の有無は、光学弛みセンサーに対する遮光の有無、これもより直接的には、光学弛みセンサーの受光部に対する遮光の有無によって検知することが好ましい。
【0011】
ところで、強制的に弛み変形させた糸から強制力を取り除くに際しては、全ての糸に、それらの弛み方向に向くエアブローを施すことが好ましい。
【0012】
この発明の糸切れ検出装置は、複数本の糸を、リールその他から同時に繰出し走行させるとともに、それらを並列姿勢とした状態で先に述べたような処理工程に引き渡すに当たっての糸切れを検出するものであり、繰出された糸を並列姿勢とする、たとえば櫛歯状をなす引き揃え手段を設けるとともに、この引き揃え手段に対し、糸の走行方向前方側に、糸を隔てて、たとえば上下に位置する発光部および受光部を有し、糸の延在方向と交差する方向に往復変位されて糸の本数を計測する光学センサーを配設し、そしてこの光学センサーに対し、糸の走行方向のさらに前方側に、全ての糸を、たとえば下方側へ強制的に弛み変形させる押込み手段および、糸の弛み変形状態を検知する弛みセンサーを設けたものである。
【0013】
かかる装置において、光学センサーはフォトファイバセンサーとすることが好ましい。
また押込手段は、糸の延在方向と交差する方向に延在する押込みロッドと、この押込みロッドの往復駆動手段とで構成することが好ましい。
【0014】
そしてまた、弛みセンサーは、これもたとえばフォトファイバセンサーとすることができる光学弛みセンサーとすることが好ましい。
【0015】
ここでより好ましくは、押込み手段に隣接させて、糸を弛ませる方向のエアブローを行うブロワを配設する。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る検出方法では、たとえば、複数本の糸の繰出し位置に近接した部分で、走行経路内に存在する全ての糸の本数を、所要の時間間隔をおいて計測することにより、たとえばリール上の糸が終了した場合、リール上の糸が、繰出し時の絡まり等によって糸切れした場合その他における糸の走行本数の減少を検知することができ、またたとえば、処理工程に近接した部分で、これも所要の時間間隔をおいて強制的に弛み変形させた場合の、弛み変形が残留する糸の有無を検知することにより、走行の途中で切断、破断等されて処理工程に進入できない糸の存在を見つけ出すことができる。
【0017】
従って、糸の走行本数の減少が検知された場合および、弛み変形状態に維持される糸の存在が検知された場合には、たとえば、装置の作動を一旦停止して切れた糸を繋ぎ合わせることで、ゴムコーティング処理等を施した後の、糸の打込み密度等の不測の変動を有効に防止することができる。
【0018】
ところで、リール等の近傍で、走行経路内の全ての糸の本数を計測するのみにては、その計測位置より糸の走行方向前方側での糸切れの発生を検知することができず、また、処理工程の近傍で、糸への弛み変形の残留を検知するだけでは、リール、ボビン等に近接した位置その他の、糸の走行方向のはるか後方側で糸切れが発生した場合にあって、切れた糸の端末が処理工程内へ進入した後には糸切れの発生を検知することができないので、ここでは、リール等の近傍での糸本数の計測と、処理工程の近傍での、糸への弛み変形の残留の有無の検知との両者を行うことで、発生した糸切れの検知もれのおそれを有効に取り除いている。
【0019】
ここで、走行経路内に存在する糸の本数を、並列姿勢とした複数本の糸による遮光に基いて計測する場合には、簡単な構造の安価な装置で、糸本数を十分正確に計測することができる。
【0020】
そしてこの場合、糸の単位本数を検知する単一の光学センサーを、糸の延在方向と交差する方向に変位させて糸の本数を1本ずつカウントするときは、糸の本数と対応する数の光学センサーを予め準備する静止タイプのものに比して設備コストを大きく低減できる他、それぞれの糸の、振動その他に起因する走行経路の変動に対してもカウントミスのおそれを有効に取り除くことができる。
【0021】
また、このような光学センサーの、往動変位および復動変位のそれぞれで糸本数をカウントするときは、カウント精度を一層高めることができる。
【0022】
なおこの一方で、弛み変形状態を維持する糸の有無を、光学弛みセンサーに対する遮光の有無によって検知するときは、これも、簡単で安価なセンサーをもって、弛みの発生を正確に検知することができる。
【0023】
そして、このような弛みの検知をもまた、糸の単位本数を検知する単一の光学弛みセンサーを、糸の延在方向と交差する方向に変位させて行う場合には、それぞれの糸の本数と対応するだけの数のセンサを固定配置する場合に比して、設備コストを低減するとともに、糸の経路変動等に十分に対処することができる。
【0024】
以上に述べたような方法において、強制的に弛み変形させた糸から強制力を取り除くに際し、全ての糸に、それらの弛み方向に向くエアブローを施す場合には、糸切れしている糸が、静電気その他の作用下で、隣接する糸に共連れされて直線状の走行姿勢に復帰するおそれを取り除いて、糸切れ検知の信頼性をより一層高めることができる。
【0025】
この発明に係る検出装置では、たとえば櫛歯状をなす固定タイプもしくは回転タイプの引き揃え手段をもって、多くは、80〜200本の糸を、水平面内で1〜3mmの間隔をおいた並列姿勢とした状態の下で、糸の単位本数を検知する一個の光学センサーを往復運動させて、走行経路内に存在する全ての糸の本数を非接触で計測し、その計測本数を所定の糸本数と対比することで、糸切れの発生の有無および糸切れ本数を検知することができる。
【0026】
そしてこれと併せて、押込み手段により、全ての糸を一旦下方側へ強制的に弛み変形させた後、その押込み外力を除去して、糸切れを生じていない糸を、引張力の作用下で元の直線状の走行姿勢に復帰させ、この一方で、糸切れが生じて引張力が作用しない糸を弛み姿勢のままに残留させ、そして、弛み変形状態を維持する糸の存在の有無を弛みセンサーによって検知することで、糸切れの発生の有無を検知することができる。
【0027】
従ってここでは、リール等に十分近接した位置で糸本数の計測を行い、処理工程に十分近接した位置で、弛み変形姿勢にある糸の有無を検知することで、前述したように、糸切れの発生を正確に検出することができる。
【0028】
しかもこの装置では、各一個の、往復駆動される光学センサー、押込み手段および弛みセンサーによって糸切れを検出することができるので、繰出し走行される糸本数に応じた数の近接センサー等を必要とする従来技術に比して設備コストを大きく低減させることができ、また、全ての糸にフック錘を吊下する場合に比して、作業工数の効果的な低減と、装置の稼動効率の向上とをもたらすことができる。
【0029】
また、かかる装置において、糸の本数を計測する光センサーをフォトファイバセンサーとした場合には、フォトファイバセンサーの発光部から照射される光ビームは拡散が少ないことから、糸本数の計測精度を高め得る利点がある。
【0030】
ところで、糸の押込み手段を、糸の延在方向と交差する方向、たとえば、並列姿勢をなす複数本の糸のうち、中央部もしくは中央部分に延在するものと直交する方向に延びる、通常は、水平姿勢の押込みロッドと、この押込みロッドの往復駆動手段、たとえばシリンダとで構成した場合には、簡単な構造にして安価な押込み手段で、全ての糸の、所期した通りの強制的な弛み変形を十分均等に行わせることができる。
【0031】
なおこの場合の強制的な弛み変形は、糸の走行を継続させたまま行われることになるので、押込みロッドは回転自在に支持することが、糸に対する摩擦力を軽減する上で好ましい。
【0032】
そしてこの装置の弛みセンサーを光学弛みセンサーとしたときは、接触センサー等とする場合に比して、構造の簡単な安価なセンサーで糸の弛みを正確に検知することができる。
【0033】
またこの場合は、一の光学センサーを糸の延在方向と交差する方向に変位させることで、前述してように、設備コストを一層低減し、併せて、糸の振れ等に起因する経路変動にも十分に対処することができる。
【0034】
さらに、押込み手段に隣接させてブロワを配設した場合には、糸を強制的に弛み変形させた後における、糸切れしている糸の、直線状走行姿勢への復帰を、そこからのエアブローをもって阻止することで、先にも述べたように、糸切れ検知の信頼性ないしは精度を十分に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基いて説明する。
図1はこの発明に係る装置の実施形態を示す略線斜視図であり、これは、リールから繰出された、スチールコード等とすることもできる糸の複数本のそれぞれを並列姿勢とした状態で、ゴムコーティンング処理工程に引き渡す場合について示すものである。
【0036】
図中1は糸を巻回したリールを示し、通常は、中心軸を水平姿勢として、たとえば80〜200個配設されるそれぞれのリール1から同時に繰出されたそれぞれの糸2は、相互の並列引き揃え姿勢で走行されて、ゴムコーティンング処理工程のインシュレーションダイ3に引き渡され、そこで、図示しない押出機から送給されたゴム4内にシート状に一体的に埋込み被覆される。
【0037】
ここでは、各リール1からインシュレーションダイ3までの、糸2のこのような走行経路内での糸切れを検出するべく、リール1の配設位置に近接した部分に、走行経路内に存在する全ての糸2の本数を計測する光学センサー5を配設するとともに、インシュレーションダイ3の配設位置に近接した部分に、走行経路内に存在する全ての糸2を、一旦強制的に弛み変形させる押込み手段6および、糸2の弛み変形状態を検知する弛みセンサー7をそれぞれ配設する。
【0038】
ここで、フォトファイバセンサーとすることが好ましい光学センサー5は、糸2を隔てて上下に位置して相互に対をなす発光部8および受光部9を具え、糸の単位本数、ここでは1本を、その糸2による受光部9に対する遮光をもって検知するものとし、このような光学センサー5を、繰出し走行される全ての糸2に対して機能させるため、糸2の延在方向と交差する方向、好ましくは、複数本の糸2のうちの、中央部に位置するものもしくはそれに隣接して位置するものの延在方向と直交する方向に往復変位可能とする。
【0039】
光学センサー5このような往復変位は、後に述べるように、並列姿勢に引き揃えた複数本の糸2の並列幅よりも懐が深く、いずれの糸2とも干渉するおそれのないコ字状枠部材10に、光学センサー5を図示のように取り付けた状態で、そのコ字状枠部材10を、駆動糸を含む歯車もしくは索条手段またはシリンダ等とすることができる駆動手段、図ではモータ11を具えるラックアンドピニオン12に連結することにより行わせることができる。
【0040】
また、ここにおける押込み手段6は、糸2の延在方向と交差する方向、これも好ましくは、中央部に位置するまたは、中央部分に位置する糸2と直交する方向に延在して全ての糸2をカバーする押込みロッド13を、たとえばそれの水平姿勢で、好ましくはヨーク部材14によって回転自在に支持した状態で、往復駆動手段の一例としての、糸2の上方側に配設したシリンダ15に連結することにより構成することができ、これによれば、簡単にして安価な手段をもって、全ての糸を十分均等に、かつ所期した通りに、下方側に向けて強制的に弛み変形させることができる。
【0041】
そして弛みセンサー7は、これも相互に対をなす発光部16と受光部17とを具える光学弛みセンサーによって構成することができる。ところで、この弛みセンサー7は、単位本数の糸2を検知する光学弛みセンサーを、走行経路内の個々の糸の本数と対応する数だけ並置した固定式とすることができる他、図示のように、単一の光学弛みセンサーを、前述した光学センサー5と同様に、糸2の延在方向と交差する方向に往復変位されるものとすることもでき、この場合には、設備コストの低減を実現するとともに、切れた糸の変形、変位等に対してもすぐれた検知機能を発揮させることができる。
【0042】
さらにここでは、少なくとも、光学センサー5の作用位置に対し、それのリール1側に隣接する位置、より好ましくは、図示のようにそれの両側となる位置に、それぞれの糸2を、水平面内で、1〜3mmの間隔をおいて引き揃える、引き揃え手段としての固定櫛歯18、19を配設して複数本の糸2の並列配置を担保して、糸2の振動その他に起因する、光学センサー5へのカウント誤差等の発生のおそれを十分に取り除く。なおここで、固定櫛歯18、19の少なくとも一方を、櫛歯の回転体形状をなすいわゆる櫛ロールに置換することもでき、これによれば、櫛ロールの回転下で糸2が引き揃えられるので、糸2の摩擦を低減できる利点がある。
【0043】
また、この図に示すところでは、押込み手段6に対し、糸2の走行方向の前方側に隣接する位置で、糸2の上方側に、下方に向けたエアブローを行うブロワ20を配設する。このブロワ20は、たとえば、ブロワ本体21に、押込みロッド13とほぼ平行に延びて、複数本の糸の全体をカバーするエア噴出パイプ22を連結することによって構成することができ、ここでは、ブロワ本体21からの加圧エアを、エア噴出パイプ22に形成した複数の噴口から下方に向けて噴出させることで、押込み手段6の作用下で、一旦強制的に弛み変形された糸2のうちの、糸切れを生じているものの、直線状走行姿勢への、静電気等に起因する共連れ復帰を阻止するべく機能する。
【0044】
なおこのようなブロワ20は、上述したところに代えてもしくは加えて、押込み手段6に対して、糸の走行方向の後方側に隣接させて設けることもできる。
【0045】
ところで、図示はしないが、固定櫛歯18、19によって引き揃えられて、同一平面内で並列姿勢に整列された複数本の糸2をインシュレーションダイ3内へ進入させるに際して、複数本の糸2の整列ピッチを調整、変更等するための、糸2の他の引き揃え手段を、そのダイ3の手前側に隣接させて設けることもできる。
【0046】
以上のように構成してなる装置を用いて糸切れを検出するに当っては、複数個のリール1から繰り出されて、インシュレーションダイ3に向けて走行される複数本の糸2を、たとえばリール1に近接した位置で、それぞれの固定櫛歯18、19をもって引き揃えて、所定の間隔をおいた並列姿勢に整列させるとともに、それらの両櫛歯18、19間で、光学センサー5を、所要のタイミングでまたは、所要のインターバルで往復変位させて、好ましくは、往動および復動のそれぞれで、走行経路内に存在する全ての糸の本数を、各糸による、センサー5に対する遮光に基づいて計測する。
【0047】
ここで、この計測結果は、たとえば、リール1の配設個数と対応する、糸2の所定の繰出し本数との比較に供して、計測結果が、所定の繰出し本数より小さい場合には、いずれかの糸に糸切れが生じている旨の警告信号、装置全体の停止信号等を出力させることができる。
この一方で、計測結果が所定繰出し本数と一致するときは、信号等の出力なしに、糸2の走行、ひいては、インシュレーションダイ3による、糸2に対するゴムコーティング処理が継続されることになる。
【0048】
また、この装置では、糸本数のこのような計測と併せて、たとえば、インシュレーションダイ3に近接した位置で、押込み手段6のシリンダ15の、たとえば定期的に繰返される伸縮作動の下で、走行経路内に存在する全ての糸2を、押込みロッド13をもって図に仮想線で示すように、下方側へ、所定の量にわたって強制的に弛み変形させ、これによって、糸2に所定量の弛み変形が発生した後に、その押込みロッド13を、図に実線で示すそれの上昇限位置まで上昇させる。
【0049】
押込みロッド13をこのようにして上昇変位させることにより、糸切れを生じていない糸2は、たとえば、ゴムコーティング処理工程および、それより下流側の工程等で糸2に及ぼされる引張力の作用に基いて、次第に、図に実線で示す元の直線状の走行姿勢に復帰し、これによって糸2の弛みが完全に消去されることになるのに対し、糸切れしている糸には上述のような引張力が作用しないので、押込みロッド13が上昇変位してなお、その糸は、強制的弛み変形時の変形状態に維持されることになる。
【0050】
そこでここでは、糸切れを生じていない糸2が図示の走行状態に復帰した後に、光学弛みセンサーを、それらの糸2の延在方向と交差する方向にたとえば往復変位させて、好ましく、往動および復動のそれぞれで、弛み変形状態にあって、センサー7の受光部17に対して遮光を行う、糸切れを生じた糸の有無を検知する。
【0051】
そして糸切れの発生を検知したときは、先に述べたと同様の警告信号、停止信号等を発生させることができる。
【0052】
なお、糸切れを生じている糸の存在の有無をこのようにして検知するに当って、本来ならば、強制的弛み変形時の変形状態に維持されるはずの、糸切れを生じた、たとえば有機繊維製の糸が、静電気、糸の絡まりその他に起因して、糸切れを生じていない隣接糸の、直線状走行姿勢への復帰に共連れされて直線状に復帰するおそれがあるときは、ブロワ20の作用によるエアブローによってその共連れを阻止することが好ましく、このことによれば、糸切れを生じた糸の検知精度を十分に高めることができる。
【0053】
このようにして糸切れを検出する場合には、光学センサー5によっては糸切れの有無を検知することができない、たとえば、図2に模式的に示すような、インシュレーションダイ3の近傍での糸切れの発生は、弛みセンサー7の作用下で検知することができ、また、弛みセンサー7によっては糸切れの有無を検知することができない、たとえば、図3に模式的に示すように、リール1の近傍で切れた糸の後端がインシュレーションダイ3内へ入り込んだ後の糸切れは、光学センサー5の作用下で検知することができるので、糸切れの検知もれのおそれを十分に取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上、糸に対する処理工程を、インシュレーションダイによるゴムコーティング処理工程とする場合について述べたが、ゴムコーティング処理工程は、コールド、セミホット、ホット等のカレンダー方式によるものとすることもでき、また、ゴムコーティング処理工程に代えて、ディップ処理工程等とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明に係る装置の実施形態を示す略線斜視図である。
【図2】糸切れ形態を例示する模式図である。
【図3】他の糸切れ形態を例示する模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 リール
2 糸
3 インシュレーションダイ
4 ゴム
5 光学センサー
6 押込み手段
7 弛みセンサー
8,16 発光部
9,17 受光部
10 コ字状枠部材
11 モータ
12 ラックアンドピニオン
13 押込みロッド
14 ヨーク部材
15 シリンダ
18,19 固定櫛歯
20 ブロワ
21 ブロワ本体
22 エア噴出パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の糸を同時に繰出し走行させるとともに、それらを並列姿勢とした状態で処理工程に引き渡すに当って、
糸の、処理工程に引き渡すまでの走行経路長さの半分の位置より繰出し側で、走行経路内に存在する全ての糸の本数を計測し、併せて、糸の走行経路長さの半分の位置より処理工程側で、走行経路内に存在する全ての糸を、一旦強制的に弛み変形させて、強制力を取り除いてなお弛み変形状態を維持する糸の有無を検知する糸切れ検出方法。
【請求項2】
走行経路内に存在する糸の本数を、並列姿勢とした複数本の糸による光学センサーに対する遮光に基づいて計測する請求項1に記載の糸切れ検出方法。
【請求項3】
光学センサーを、糸の延在方向と交差する方向に変位させて、糸の本数を1本ずつカウントする請求項2に記載の糸切れ検出方法。
【請求項4】
光学センサーの、往動変位および復動変位のそれぞれで糸の本数をカウントする請求項3に記載の糸切れ検出方法。
【請求項5】
弛み変形状態を維持する糸の有無を、光学弛みセンサーに対する遮光の有無によって検出する請求項1〜4のいずれかに記載の糸切れ検出方法。
【請求項6】
強制的に弛み変形させた糸から強制力を取り除くに際し、全ての糸に、それらの弛み方向に向くエアブローを施す請求項1〜5のいずれかに記載の糸切れ検出方法。
【請求項7】
複数本の糸を同時に繰出し走行させるとともに、それらを並列姿勢とした状態で処理工程に引き渡すに当っての糸切れを検出する装置であって、
繰出された糸を並列姿勢とする引き揃え手段を設けるとともに、この引き揃え手段に対し、糸の走行方向前方側に、糸を隔てて位置する発光部および受光部を有し、糸の延在方向と交差する方向に往復変位されて糸の本数を計測する光学センサーを配設し、この光学センサーに対し、糸の走行方向のさらに前方側に、全ての糸を強制的に弛み変形させる押込み手段および、糸の弛み変形状態を検知する弛みセンサーを設けてなる糸切れ検出装置。
【請求項8】
光学センサーをフォトファイバーセンサーとしてなる請求項7に記載の糸切れ検出装置。
【請求項9】
押込手段を、糸の延在方向と交差する方向に延在する押込みロッドと、この押込みロッドの往復駆動手段とで構成してなる請求項7もしくは8に記載の糸切れ検出装置。
【請求項10】
弛みセンサーを光学弛みセンサーとしてなる請求項7〜9のいずれかに記載の糸切れ検出装置。
【請求項11】
押込み手段に隣接させて、糸を弛ませる方向のエアブローを行うブロワを配設してなる請求項7〜10のいずれかに記載の糸切れ検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−44912(P2006−44912A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231216(P2004−231216)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】