説明

糸巻用スプール

【課題】展示などの際には商品内容を確実に表示でき、しかも、再使用や再資源化が容易であり、廃棄物を少なくして環境に優しくする。
【解決手段】本体部(2)の外縁に巻装部(3)を備える。巻装部(3)は筒状の胴部(5)とその胴部(5)の両側端から径方向外側へ張り出した一対のフランジ部(6・6)とからなる。巻装部(3)に筒状の保護カバー(8)を外嵌する。保護カバー(8)の側縁に係止部(9)を、上記の本体部(2)の外側面に沿って径方向内側へ延設する。係止部(9)と本体部(2)との間に、外側から順に押え用フィルム(10)とシート状の表示ラベル(11)とを挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸などの糸条体を捲き付ける糸巻用スプールに関し、さらに詳しくは、展示などの際には商品内容を確実に表示でき、しかも、再使用や再資源化が容易であり、廃棄物を少なくして環境に優しい、糸巻用スプールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に釣糸は、合成樹脂製の糸巻用スプールに捲回された状態で店頭などに展示されて販売される。
従来、この種の糸巻用スプールには、円板状の本体部の外縁に巻装部を備え、この巻装部が筒状の胴部とその胴部の両側端から径方向外側へ張り出した一対のフランジ部とからなるものがある(例えば、特許文献1参照。)。上記の本体部の中心には回転用の挿通孔が形成してあり、巻付装置の回転部にこの挿通孔を挿通して胴部を回転させ、巻装部に釣糸が巻き付けられる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−107027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の糸巻用スプールは、巻装部に巻装された釣糸をリールに巻き取った後は不要となる。この使用済みスプールは製品である釣糸に比べて嵩高く、材料使用量も多いので、再使用や再資源化など所謂リサイクルされると好ましい。しかしながら、従来の糸巻用スプールには、本体部の表面に製品内容を表示する表示ラベルが接着剤で貼着されており、これを剥離するのが容易でないため、再資源化が困難であった。
【0005】
また、不要となった糸巻用スプールを、この表示ラベルを貼着したまま再利用することも考えられる。しかしながら、糸巻用スプールは釣糸の品種ごとに表示ラベルの記載内容が異なるため、回収品の在庫管理が極めて煩雑となる。しかも、この表示ラベルは見やすいように本体部の側面中央に貼着されるため、この本体部の中央に形成してある回転用の挿通孔が覆われていることが多い。このため、表示ラベルを貼着した状態ではこの糸巻用スプールを巻付装置に装着することができず、再使用も困難である。
【0006】
そこで上記の表示ラベルを接着強度の弱い粘着材などで本体部に貼着し、この表示ラベルを簡単に剥離してリサイクルすることが考えられる。しかしながら、表示ラベルの貼着力が弱いと、これらの糸巻用スプールが商品として店頭などに展示される際に、自然に或いは他物との接触で表示ラベルが本体部から剥離して離脱する虞がある。この結果、表示ラベルの貼着状態の管理が煩雑であるうえ、万一剥離して本体部から離れた場合は、釣糸の品名や特徴などの商品内容を適正に表示できなくなる問題がある。
【0007】
以上の事情から、従来の糸巻用スプールは不要になるとそのまま廃棄されており、処理コストがかかるうえ環境汚損の要因となる虞があった。
本発明の課題は上記の問題点を解消し、展示などの際には商品内容を確実に表示でき、しかも、再使用や再資源化が容易であり、廃棄物を少なくして環境に優しい、糸巻用スプールを提供することにある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するため、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図3に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明は糸巻用スプールに関し、本体部(2)の外縁に、筒状の胴部(5)とその胴部(5)の両側端から径方向外側へ張り出した一対のフランジ部(6・6)とからなる巻装部(3)を備え、この巻装部(3)に筒状の保護カバー(8)を外嵌した糸巻用スプールであって、上記の保護カバー(8)は、少なくとも一方の側縁に、上記の本体部(2)の外側面に沿って径方向内側へ延設した係止部(9)を備え、上記の係止部(9)と上記の本体部(2)との間に、シート状の表示手段(11)を挟持したことを特徴とする。
【0009】
上記の表示手段は、保護カバーの係止部と本体部との間に挟持されるので、フランジ部へ接着剤等で貼着しなくても本体部から離れることがない。この結果、店頭などで展示や販売される際には、商品に関する品名や特徴などの内容がこの表示手段により確実に表示される。
【0010】
糸巻用スプールを購入した使用者が、釣糸をリールに巻き取るなど、糸条体を使用する際に、保護カバーが巻装部から外されると、表示手段が本体部から離れる。しかし、この糸巻用スプールは、糸状体をリール等に巻き取ったのちは不要となるので、もはや上記の表示手段が商品内容を表示する必要はない。そしてこの不要となった糸巻用スプールは回収されたのち、再使用されたり、各構成材料へ簡単に分別されて再資源化されたりする。
【0011】
上記の表示手段は、上記の係止部と本体部との間に直接挟持してもよいが、この係止部と表示手段との間に透明材料からなる押え用フィルムを配置して、この押え用フィルムを介して上記の表示手段を係止部と本体部との間に挟持してもよい。この場合、表示手段の表面が押え用フィルムで覆われるので、表示手段を日光や外気等から保護して耐久性を高めることができるうえ、表示手段を任意の大きさや形状に加工しても押えフィルムにより確りと本体部へ固定でき、好ましい。
【0012】
上記の表示手段は、特定の材質に限定されないが、紙を用いると印刷が容易であり、任意の大きさや形状に加工でき、安価に実施できるので好ましい。
一方、この表示手段の耐候性を高めるため、表示面にフィルムコーティングなどの処理を施したり、或いは合成樹脂製フィルムで形成してもよく、これらの場合は上記の押え用フィルムを省略することができる。
【0013】
なお、上記の表示手段は、接着剤はもとより、粘着材を塗布しないものを用いると安価に実施できて好ましいが、本体部の側面の特定位置に配置するため、容易に剥離可能な接着力の弱い粘着材を裏面に塗布したものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0015】
(1) 上記の表示手段は、保護カバーの係止部と本体部との間に挟持されるので、本体部へ接着剤等で貼着しなくても離れることがなく、店頭などで展示・販売される際には、商品に関する品名や特徴などの内容を確実に表示することができる。
【0016】
(2) しかも、表示手段は保護カバーを巻装部から外すだけで本体部から簡単に離れるので、不要となって回収された糸巻用スプールは、容易に再使用や再資源化することができ、廃棄物を少なくして環境汚損の虞を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1と図2は本発明の実施形態を示し、図1は糸巻用スプールを分解した状態の一部破断斜視図、図2は糸巻用スプールの要部の拡大断面図である。
【0018】
図1に示すように、この糸巻用スプール(1)は円板状の本体部(2)の外縁に巻装部(3)を備えており、この巻装部(3)に糸状体である釣糸(4)が巻き付けてある。上記の巻装部(3)は、筒状の胴部(5)とその胴部(5)の両側端から径方向外側へ張り出した一対のフランジ部(6・6)とからなり、両フランジ部(6・6)の外端縁に亘って、1つ割りした円筒状の覆い部材(7)が装着してある。上記の釣糸(4)は、この覆い部材(7)に形成した割れ目(7a)から引き出すことができる。なお、上記の本体部(2)には、側面の中央に回転用の挿通孔(12)が透設してあり、この挿通孔(12)を図外の巻付装置の回転軸に挿通して本体部(2)を回転させ、これにより上記の巻装部(3)に釣糸(4)が巻き付けられる。
【0019】
上記の本体部(2)や覆い部材(7)は、例えば、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂などの合成樹脂材料で形成してある。これらの本体部(2)や覆い部材(7)は透明材料で形成してあり、巻装部(3)に巻き付けた釣糸(4)が外側から良好に目視される。但し、本発明の本体部等を構成する材料はこれらの合成樹脂材料に限定されず、他の材料で形成してもよく、また着色材料や不透明材料で形成することも可能である。
【0020】
上記の巻装部(3)には、一対の筒状保護カバー(8・8)が外嵌してある。この保護カバー(8)は、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などの、やや柔軟な合成樹脂材料で形成してあり、この保護カバー(8)の装着により、他物との衝突などで上記の本体部(2)や覆い部材(7)が損傷することが防止される。
【0021】
上記の各保護カバー(8)は、外側の側縁に径方向内側へ延設した環状の係止部(9)を備える。この保護カバー(8)を巻装部(3)に外嵌した状態では、上記の係止部(9)は本体部(2)のフランジ部(6)の外側面に沿って配置される。
【0022】
上記の一方の保護カバー(8)の係止部(9)と上記の本体部(2)との間には、外側から順に、押え用フィルム(10)とシート状の表示ラベル(11)とが配置してある。この表示ラベル(11)は紙製で、外側面には釣糸(4)の品名や物性などの特徴、メーカー名などの商品内容が印刷してある。一方、上記の押え用フィルム(10)は透明の、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂材料で形成される。但し、この押え用フィルム(10)は、内側の表示ラベル(11)を透視できれば良く、透視可能な程度に着色されていてもよく、また他の合成樹脂材料で形成することも可能である。
【0023】
なお、この押え用フィルム(10)には、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、蓚酸アニリン系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系などの紫外線劣化防止剤を配合しておくと、展示中などに釣糸(4)が紫外線で劣化されることを防止でき、好ましい。
【0024】
上記の表示ラベル(11)は、上記の保護カバー(8)を巻装部(3)へ外嵌することにより、図2に示すように、押え用フィルム(10)を介して係止部(9)と本体部(2)との間に挟持される。この状態では表示ラベル(11)が本体部(2)から離れることがなく、糸巻用スプール(1)を店頭などで展示し販売する際に、商品である釣糸(4)に関する情報が確実に表示される。
【0025】
上記の糸巻用スプール(1)を購入した使用者が上記の釣糸(4)を使用する際には、上記の保護カバー(8)が巻装部(3)から取外され、釣糸(4)が巻装部(3)から引き出されて、リールに巻き取られる。このとき、押え用フィルム(10)とともに表示ラベル(11)が本体部(2)から離れるが、この糸巻用スプール(1)は、釣糸(4)をリールに巻き取ったのちは不要となるので、表示ラベル(11)が本体部(2)から離れても問題ない。そしてこの不要となった糸巻用スプール(1)は回収されたのち、再使用や、各構成材料へ簡単に分別されて再資源化される。
【0026】
図3は本発明の変形例を示す、糸巻用スプールの正面図である。
上記の実施形態では、保護カバー(8)に形成した係止部(9)を環状に形成した。しかし本発明の係止部は、表示手段を本体部との間に挟持して固定できればよく、環状以外の形状であってもよい。
即ちこの変形例では、保護カバー(8)の側縁の3箇所に弓形の係止部(9…)が径方向内側へ延設してある。保護カバー(8)が巻装部(3)に外嵌されると、各係止部(9)はそれぞれフランジ部(6)の外側面に沿って配置され、この係止部(9)と本体部(2)との間に、押え用フィルム(10)を介して表示ラベル(11)が挟持される。その他の構成は上記の実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0027】
上記の実施形態や変形例で説明した糸巻用スプールは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、本体部や巻装部の材質や形状、構造などをこれらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0028】
例えば上記の実施形態では、本体部の片側面に沿って表示手段と押え用フィルムを配置したが、本体部の両側面に沿ってそれぞれ表示手段と押え用フィルムを配置し、保護カバーの両側縁に設けた係止部でそれぞれを本体部との間に挟持してもよい。
また、上記の実施形態では巻装部の外周面に覆い部材を装着したが、本発明ではこの覆い部材を省略することも可能である。
さらに、上記の巻装部に捲回される糸状体は釣糸に限定されず、手芸糸など他の糸状体(金属製を含む)であってもよいことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、展示などの際には商品内容を確実に表示でき、しかも、再使用や再資源化が容易であり、廃棄物を少なくして環境に優しいので、釣糸を巻き付ける糸巻用スプールに特に好適であるが、他の糸状体を巻き付ける糸巻用スプールにも好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態を示す、糸巻用スプールを分解した状態の一部破断斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の、糸巻用スプールの要部の拡大断面図である。
【図3】本発明の変形例を示す、糸巻用スプールの一部破断正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…糸巻用スプール
2…本体部
3…巻装部
4…糸状体(釣糸)
5…胴部
6…フランジ部
8…保護カバー
9…係止部
10…押え用フィルム
11…表示手段(表示ラベル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部(2)の外縁に、筒状の胴部(5)とその胴部(5)の両側端から径方向外側へ張り出した一対のフランジ部(6・6)とからなる巻装部(3)を備え、
この巻装部(3)に筒状の保護カバー(8)を外嵌した糸巻用スプールであって、
上記の保護カバー(8)は、少なくとも一方の側縁に、上記の本体部(2)の外側面に沿って径方向内側へ延設した係止部(9)を備え、
上記の係止部(9)と上記の本体部(2)との間に、シート状の表示手段(11)を挟持したことを特徴とする、糸巻用スプール。
【請求項2】
上記の係止部(9)と表示手段(11)との間に透明材料からなる押え用フィルム(10)を配置し、この押え用フィルム(10)を介して上記の表示手段(11)を係止部(9)と本体部(2)との間に挟持した、請求項1に記載の糸巻用スプール。
【請求項3】
上記の巻装部(3)に釣糸(4)を巻装した、請求項1または請求項2に記載の糸巻用スプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−327768(P2006−327768A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154452(P2005−154452)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000246479)有限会社よつあみ (9)
【Fターム(参考)】