説明

糸条切断装置

【課題】横幅を抑制しながら糸条を切断すると共に糸端を継続して保持することができる糸条切断装置を提供する。
【解決手段】糸条を通過させるためのスリット27が筐体の一面に形成された糸条切断装置1において、筐体の正面に対向して配置された電磁石取付部23bと、一端面が筐体の正面に対向するよう電磁石取付部23bに取付けられた電磁石の芯15と、電磁石に吸引される吸引部13aを有し、電磁石取付部23bに設けられた支点19を中心として水平方向に搖動する作動鉄片16および吸引鉄片13と、吸引鉄片13の先端に取付けられた切断器12と、吸引部13aが電磁石の芯15から離反する方向に作動鉄片16および吸引鉄片13を付勢するスプリング22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の糸条切断装置は、上方の給糸ボビンから下方の巻取ボビンへ走行する糸条を通過させるスリットを有し、外部信号(例えば、断糸検知装置からの断糸検知信号)に応じてスリット内の糸条を切断すると共に、切断した糸端を保持(クリップ)するようになっていた。特に、複数の糸条が並行して走行する構成においては、クリップ動作を行わないと、切断した糸端が浮遊して近隣の糸条や、給糸ボビンと巻取ボビンの間に介在するローラに絡まるおそれがある。
【0003】
この種の切断装置には、フレームに取付けられた電磁石と、一端にカッタおよび押え片を有し、電磁石の端面(芯)と対向して搖動可能な吸引片と、一端が吸引片の他端に取付けられ、他端がフレームに取付けられ、非吸引時に電磁石から吸引片を離間させるように付勢するスプリングと、を備え、電磁石によって吸引鉄片を吸引することによって、スプリングに弾持された吸引片が水平方向に回動し、吸引片の一端のカッタが上下方向に走行する糸条を切断すると共に、切断した糸端を押え片が保持するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合、電磁石のコイルの周面と糸条が通過するスリットとを対向配置することによって、切断装置の横幅(上下方向に延びるスリットが設けられた端面の水平方向の大きさ)を小さくしている。並行する複数の糸条を巻取るようにした構成においては、前述のように切断装置の横幅を小さくすることによって、複数の切断装置を同一の高さで水平方向に並べて配置することができる。したがって、切断装置の設置スペースが少なくて済む。
【0005】
なお、切断装置の横幅が大きいと、例えば、複数の切断装置を異なる高さに配置する(重ねる)ことになる(例えば、後述する図9(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−78237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の糸条切断装置においては、電磁石の周面(コイルの周面)とスリットとを対向配置しているために、コイルが軸方向に短い扁平な形状となり、コイルの巻数が制限されるという問題があった。
【0008】
この場合、いわゆるワンショット動作による糸条の切断動作および糸端の保持動作は可能であるが、コイルの巻数が制限されるために糸端を継続して保持することは難しい。また、単にコイルの巻数を増やすと軸方向に延びて切断装置の横幅が大きくなってしまう。
【0009】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、横幅を抑制しながら糸条を切断すると共に糸端を継続して保持することができる糸条切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の糸条切断装置は、糸条を通過させるためのスリットが筐体の一面に形成され、前記スリットを通過する糸条を切断すると共に糸端を保持する糸条切断装置において、前記筐体の一面に対向して配置された板部材と、一端面が前記筐体の一面に対向するよう前記板部材に取付けられた電磁石と、前記電磁石に吸引される被吸引部を有し、前記板部材に設けられた支点を中心として水平方向に搖動する搖動部材と、前記搖動部材の先端に取付けられた糸切断保持部材と、前記被吸引部が前記電磁石の一端面から離反する方向に前記搖動部材を付勢する付勢部材と、を備えた構成を有している。
【0011】
この構成によれば、スリットが形成された筐体の一面(例えば、正面)に電磁石の一端面が対向するので、電磁石のコイルの軸は筐体の一面と直交する他の一面(例えば、側面)と平行になる。したがって、糸条切断装置の横幅(例えば、正面の水平方向の大きさ)を抑制しながら、軸方向において糸端の保持を継続するのに必要なコイルの巻数を確保することができる。
【0012】
また、本発明の糸条切断装置においては、前記筐体の一面と直交する前記筐体の他の一面と前記電磁石のコイルの周面との間に、前記コイルの通電を制御するための制御回路基板を取付けた構成を有している。
【0013】
この構成によれば、電磁石のコイルの周面と筐体の一面と直交する他の一面(例えば、側面)との隙間に制御回路基板を取付けたので、筐体内の空間を有効利用して糸条切断装置の大型化を抑制すると共に、外部から独立して複雑な制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、スリットが形成された筐体の一面に電磁石の一端面が対向するように配置したことにより、横幅を抑制しながら糸条を切断すると共に糸端を継続して保持することができるという効果を有する糸条切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の一形態の巻取システムの斜視図である。
【図2】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の平面図である。
【図3】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の側面図である。
【図4】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の正面図である。
【図5】本発明の実施の一形態の糸条切断装置および断糸検知装置の駆動に係るタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の駆動に係る第1のタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の駆動に係る第2のタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の駆動に係る第3のタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施の一形態の糸条切断装置の配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態としての糸条切断装置を備えた巻取システムについて、図面を用いて説明する。
【0017】
本発明の実施の一形態としての巻取システムを図1に示す。
【0018】
図1において、巻取システムは、巻取り対象の糸条を給送する給糸ボビン30と、給糸ボビン30から給送された糸条を挟持して巻取ボビン31へガイドする第1ガイドローラ32および第2ガイドローラ33と、給糸ボビン30から第1ガイドローラ32および第2ガイドローラ33を介して給送された糸条を巻取る巻取ボビン31と、給糸ボビン30と第1ガイドローラ32の間に配設された糸条切断装置1と、第2ガイドローラ33と巻取ボビン31の間に配設された断糸検知装置34と、を有する構成である。
【0019】
なお、第1ガイドローラ32および第2ガイドローラ33は矢印で示す方向に回転する。また、他の矢印で示すように、巻取ボビン31の軸は巻取りに応じて左右方向(水平方向)に回転し、巻取る糸端の位置(ガイド位置)は上下方向に移動する。
【0020】
糸条切断装置1は、制御回路基板18を有し、断糸検知装置34からの動作信号(断糸信号)に基づいて正面に形成されたスリット27内を走行する糸条を切断するようになっている。なお、図1では、制御回路基板18の構成を示すため装置外部に引出しているが、実際は筐体の側板24(図2参照)に取付けられている。
【0021】
制御回路基板18は、例えば、マイクロプロセッサで構成されたコントローラ29と、電磁石のコイル14(図2参照)に流す電流を切替えるためのトランジスタ(NPN)Q、Qと、トランジスタQに接続されたダイオードDと、トランジスタQに接続された抵抗Rと、コントローラ29に接続されたリセット用の復帰スイッチ37と、を備えている。
【0022】
断糸検知装置34は、例えば、走行する糸条を挟んで対向配置された発光部と受光部からなる透過型の光センサ(不図示)を備える。光センサの出力(検知信号)に基づいて断糸信号がコントローラ29に入力(ON、OFF)されるようになっている。図1では、走行中の糸条が切れて糸端が第2ガイドローラ33に巻き付いた場合を示している。この場合、コントローラ29に入力される断糸信号はOFFからONに変化する(図5参照)。
【0023】
次に、糸条切断装置1の構成を図2〜図4に示す。
【0024】
図2〜図4に示すように、糸条切断装置1は、端部にカッタ28と弾性体21とが対向して取付けられた切断器12と、一体形成された作動鉄片16および吸引鉄片13と、吸引鉄片13を吸引する電磁石と、作動鉄片16の一端を筐体の側面(側板24)に向けて付勢するスプリング22と、電磁石のコイル14に対する通電を制御する制御回路基板18と、を有する構成である。
【0025】
なお、糸条切断装置1は、カバー11および側板24によって覆われ、カバー11および側板24が筐体を形成している。また、正面のカバー11には、上下方向に切欠されたスリット27が形成され、スリット27の上下の開口部にはガイド25が取付けられている。糸条はガイド25によってスリット27に導入されるようになっている。
【0026】
切断器12は、断面が略コの字状に形成され(図4参照)、吸引鉄片13の係合部13bに取付けられて、初期位置(図2に鎖線で示す)から切断位置(図2に実線で示す)まで水平方向に回動するようになっている。切断器12には、カッタ28で切断した糸端を押圧して保持するための弾性体21と、スリット27を通過する糸条を切断するためのカッタ28と、が上下に対向して取付けられている。弾性体21が上部(給糸ボビン30側)にあるのは、給糸ボビン30の糸条が切断されたとき、糸端が浮遊して隣接走行する糸条に巻付くのを防ぐためである。なお、制御回路基板18(または側板24)には、カッタ28の刃および弾性体21の一面と対向して、弾性板20が取付けられている。弾性体21の一面と弾性板20とでスリット27を通過する糸条を保持すると共に、保持する糸条をカッタ28の刃によって弾性板20に押付けながら切断するようになっている。
【0027】
また、切断器12の上部(弾性体21側)には、一部曲折した棒状の補助部材17が取付けられている。補助部材17は、一端が切断器12の上部に取付けられ、他端が電磁石取付部23bの上端に取付けられている。補助部材17は、作動鉄片16および吸引鉄片13の回動に連れて、電磁石取付部23bの取付部位を中心として水平方向に回動自在となっている。
【0028】
補助部材17は、作動鉄片16の凹部が支点19(電磁石取付部23bの端面)を中心として水平方向に回動するときに、作動鉄片16の動作を安定させる。作動鉄片16が安定して回動すると、切断器12のカッタ28の刃が弾性板20の垂直な平面に密着する。したがって、糸条を確実に切断することができる。
【0029】
なお、通電時に作動鉄片16および吸引鉄片13の回動により、吸引部13aは電磁石の芯15に対して斜行して吸着されるため、糸条はカッタ28によって引切られる。糸条を押切る場合に比べると、糸条とカッタ28の刃との接触部位は大きくなる(長くなる)。
【0030】
電磁石は、糸条切断装置1の正面(上下にわたってスリット27が開口している面)に電磁石の芯15(端面)が対向するように配設されている。また、電磁石のコイル14の周面は側板24および制御回路基板18と対向している。したがって、コイル14の巻数を増やした場合、糸条切断装置1はコイル14の軸方向に大きくなるが正面の横幅は拡大しない。
【0031】
スプリング22は、一端が取付部材23のスプリング取付部23aの端部中央に取付けられ、他端が作動鉄片16の2端面の切欠部に架渡された支持部材26の長手方向中央に取付けられている。非通電時には、スプリング22が縮退してばね力が得られるため、作動鉄片16および吸引鉄片13は支点19を中心として水平方向(図2中、反時計方向)に回動するよう付勢される。この付勢によって、切断器12は初期位置に保持されるようになっている。通電時には、前述のように吸引部13aが電磁石の芯15に吸引される。この吸引によって、作動鉄片16および吸引鉄片13は、スプリング22のばね力に抗して支点19を中心として時計方向に回動し、切断器12が切断位置まで水平方向(図2中、時計方向)に回動するようになっている。
【0032】
制御回路基板18は、側板24に取付けられ、断糸検知装置34からの断糸信号に基づいて電磁石のコイル14に対する通電を制御するようになっている。前述のように、電磁石の芯15の端面は正面と対向しているため、コイル14の周面と側板24の隙間を利用して制御回路基板18を配設している。制御回路基板18を糸条切断装置1の内部に設けることにより、断糸信号以外の外部信号を要せず、糸条の切断および糸端の保持に係る制御を行うことができる。
【0033】
以上のように構成された巻取システムについて、図5を用いてその糸条の切断動作および糸端の保持動作を説明する。図5(a)は、糸条切断装置1の動作タイミングを示し、図5(b)は、断糸検知装置34の動作タイミングを示している。
【0034】
図5(b)に示すように、断糸検知装置34は光センサ出力(検知信号)の変化(糸有り(ON)→糸無し(OFF))によって断糸を検知すると、糸条切断装置1に対して断糸信号を送信する(ONとする)。この断糸信号の出力は、糸条切断装置1における動作信号の入力に相当する。
【0035】
図5(a)に示すように、糸条切断装置1は、断糸検知装置34における断糸信号の出力に基づいて動作信号を入力する(ONとする)。この動作信号の入力に基づいて、コントローラ29はトランジスタQ、QをON(通電)として最大電流(MAX)をコイル14にT時間流すように制御する。この制御により、作動鉄片16および吸引鉄片13が支点19を中心として水平方向に回動し、スリット27を通過する糸条がカッタ28によって切断されると共に、糸端が弾性体21および弾性板20によって保持される。なお、動作信号は、断糸信号の出力に基づいてONまたはOFF状態が保持される。
【0036】
次いで、コントローラ29はトランジスタQをOFF(非通電)とすると共に、トランジスタQをON(通電)とする。この場合、最大電流(MAX)より小さい電流(糸端の保持に必要な電流)がコイル14に流れ、切断後の糸端は弾性体21および弾性板20によって継続して保持される。この後、復帰スイッチ37の操作に基づいて復帰信号がONとなると、コントローラ29はトランジスタQ、QをOFF(非通電)とする。したがって、コイル14は非通電状態となり、電磁石による吸引鉄片13の吸引は解除される。一方、スプリング22のばね力によって、作動鉄片16および吸引鉄片13は支点19を中心として水平方向に回動し、切断器12は初期位置に戻る。
【0037】
なお、本実施の形態では、復帰スイッチ37の操作に基づいて復帰信号がON(出力)となる場合を示すが、これに限らず、予めコントローラ29のROMに設定された時間経過後にリセットするようにしてもよい。あるいは、外部装置(例えば、上位のホストコンピュータ)からの復帰信号に基づいてリセットするようにしてもよい。
【0038】
このような本発明の実施の一形態としての糸条切断装置1によれば、スリット27が形成された筐体の正面に電磁石の芯15の一端面が対向するので、電磁石のコイル14の軸は筐体の正面と直交する側板24(側面)と平行になる。したがって、糸条切断装置1の正面の幅(横幅)を抑制しながら、切断された糸端の保持を継続するのに必要なコイル14の巻数を確保することができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、作動鉄片16および吸引鉄片13は電磁石取付部23bの上端面の支点19を中心として回動する構成のため、作動鉄片16および吸引鉄片13に異物や塵が付着しにくい。したがって、汚れによる切断保持機能の低下を抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、作動鉄片16、吸引鉄片13および切断器12は、支点19を中心として連なって回動する。ここで、吸引鉄片13の吸引面(吸引によって電磁石の芯15と接する面)を力点とし、切断器12のカッタ28の刃を作用点とする。この場合、通電によって力点は電磁石の芯15に向かって斜行するため、糸条が作用点に接してから切断されるまでの間隔(幅)を十分広く取れる。なお、カッタ28の刃が弾性板20に対して平行な状態を保って当接する場合(斜行しない場合)には、単に糸条を押切ることになる。
【0041】
また、通電によって力点が電磁石の芯15に向かって斜行するようにしたので、吸引鉄片13と電磁石の芯15との間隔が小さくなり(例えば、特許文献1参照)、電磁石の吸引力の損失を抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、作動鉄片16および吸引鉄片13の吸引部13aが電磁石を囲む板状部材からなり、作動鉄片16の左右の端面と係合部13bの表裏面とが略平行であり、かつ支点19が電磁石の後方(電磁石取付部23bの上端面)にある。なお、作動鉄片16は2つに分かれて電磁石のコイル14の周面と対向し、吸引部13aは電磁石の芯15と対向している。したがって、電磁石のコイル14を軸方向に延しても、支点19と作用点との距離を確保し、作用点に対して十分な圧力を付与することができる。また、筐体の正面の幅(横幅)を小さくすることができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、筐体の正面と直交する側板24とコイル14の軸との間に、コイル14の通電を制御するための制御回路基板18を取付けたので、筐体内の空間を有効利用して糸条切断装置1の大型化を抑制すると共に、制御回路基板18により外部から独立して複雑な制御を行うことができる。
【0044】
なお、前述した実施の形態に限らず、糸条切断装置1に制御回路基板18を設けたことによって、他の切断保持動作を行うことも可能となる。他の実施の形態を図6〜図8に示す。
【0045】
図6に示すように、糸条切断装置1は、断糸検知装置34における断糸信号の出力に基づいて動作信号を入力する(ONとする)。この動作信号の入力に基づいて、コントローラ29はトランジスタQ、QをON(通電)として最大電流(MAX)をコイル14にT時間流すように制御する。次いで、コントローラ29はトランジスタQ、QともOFF(非通電)とする。この制御により、スリット27を通過する糸条がカッタ28によって切断された後にリセットされ(切断器12は初期位置に戻る)、保持動作は継続して行われない。前記動作信号は1パルスのものであってもよい(ワンショット動作)。
【0046】
図7に示すように、糸条切断装置1は、断糸検知装置34における断糸信号の出力に基づいて1パルスの動作信号を入力する(ONとする)。この1パルスの動作信号の入力に基づいて、コントローラ29はトランジスタQ、QをON(通電)として最大電流(MAX)をコイル14にT時間流すように制御する。次いで、コントローラ29はトランジスタQをOFF(非通電)とすると共に、トランジスタQをON(通電)とする。この制御により、スリット27を通過する糸条がカッタ28によって切断されると共に、糸端が弾性体21および弾性板20によって継続して保持される。この後、復帰スイッチ37の操作に基づいて復帰信号がONとなると、コントローラ29はトランジスタQ、QをOFF(非通電)とする。したがって、コントローラ29は断糸検知装置34からの断糸信号入力の変化に関らず、復帰信号がONとなるまで保持動作を継続することになる。
【0047】
図8に示すように、糸条切断装置1は、断糸検知装置34における断糸信号の出力に基づいて動作信号を入力する(ONとする)。この動作信号の入力に基づいて、コントローラ29はトランジスタQ、QをON(通電)として最大電流(MAX)をコイル14にT時間流すように制御する。次いで、コントローラ29はトランジスタQをOFF(非通電)とすると共に、トランジスタQをON(通電)とする。このトランジスタQのみを通電させる状態で動作信号がOFFになると、コントローラ29はトランジスタQ、QをOFF(非通電)とする。但し、動作信号がON(トランジスタQのみを通電させる状態)で、復帰信号がONとなると、コントローラ29はトランジスタQ、QをOFF(非通電)とする。この制御により、復帰信号がOFFの場合には、動作信号に基づいて糸条の切断および糸端の保持動作を行うことになる。
【0048】
なお、前述した各実施の形態によれば、復帰動作を手動で行う必要がないため、巻取ボビン31の巻取工程(切断器12による糸条の切断および糸端の保持動作を含む)を自動化することが可能となる。さらに、巻取ボビン31を交換して新たに糸掛けを行う糸掛工程についても、例えば、ロボットアームによる機械動作で代替することにより、自動化することが可能となる。
【0049】
さらに、前述した各実施の形態に限らず、切断器12からカッタ28を取外し、糸端の保持のみを継続動作あるいはワンショット動作にて行うようにしてもよい。この構成は、他の糸条切断装置で糸条を切断し、糸条切断装置1が糸端を保持する場合、巻取ボビン31の巻取りが完了する度に手作業で糸条を切断し、糸条切断装置1が糸端を保持する場合、等に適用することができる。
【0050】
また、前述した各実施の形態によれば、糸条切断装置1の横幅を抑制しているので、3個以上の巻取ボビンを並列して空間を効率的に利用することもできる。この構成を図9(a)に示す。
【0051】
図9(a)に示すように、各巻取ボビン31は隣接して並列に配設されている。各巻取ボビン31には、複数の第1ガイドローラ32と第2ガイドローラ33を介して糸条が給送されている。この場合、各第1ガイドローラ32の上方には、複数の糸条切断装置1a〜1cが同一高さで並列に配設されている。手作業で糸掛けを行う場合には、各スリット27の糸道を同一高さで正面から目視しながら行うことができる。したがって、糸掛け作業および糸条切断装置の取付け、取外し作業が容易である。
【0052】
これに対し、図9(b)に示すように、巻取ボビン31の径方向の大きさ、あるいは第1ガイドローラ32の軸方向の大きさに対して糸条切断装置38a〜38cの横幅が大きい場合には、糸条切断装置38a〜38cを同一高さで並列に配設することは難しい。この場合、例えば、糸条切断装置38b、38cに対して糸条切断装置38aを上方に配設することになる。したがって、糸条切断装置の配設空間が拡がり、巻取システムが大型化してしまう。また、手作業で糸掛けを行う場合には、糸掛けの高さが変わるために作業が容易でない。同じく、糸条切断装置の取付け、取外し作業が容易でない。
【0053】
なお、糸条切断装置38a〜38cの正面を横向きにして同一高さで並列することも考えられる。しかしながら、手作業で糸掛けを行う場合には、正面からスリットの糸道が見えないために作業が容易でない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係る糸条切断装置は、横幅を抑制しながら糸条を切断すると共に糸端を継続して保持することができるという効果を有し、巻取ボビンに巻取られる糸条を切断する糸条切断装置として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b、1c 糸条切断装置
11 カバー
12 切断器(糸切断保持部材)
13 吸引鉄片(被吸引部、搖動部材)
13a 吸引部
13b 係合部
14 コイル(電磁石)
15 電磁石の芯(電磁石)
16 作動鉄片(搖動部材)
17 補助部材
18 制御回路基板
19 支点
20 弾性板
21 弾性体(糸切断保持部材)
22 スプリング(付勢部材)
23 取付部材(板部材)
23a スプリング取付部
23b 電磁石取付部
24 側板
25 ガイド
26 支持部材
27 スリット
28 カッタ(糸切断保持部材)
29 コントローラ
30 給糸ボビン
31 巻取ボビン
32 第1ガイドローラ
33 第2ガイドローラ
34 断糸検知装置
35、36 給糸ガイド
37 復帰スイッチ
38a、38b、38c 糸条切断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸条を通過させるためのスリットが筐体の一面に形成され、前記スリットを通過する糸条を切断すると共に糸端を保持する糸条切断装置において、
前記筐体の一面に対向して配置された板部材と、
一端面が前記筐体の一面に対向するよう前記板部材に取付けられた電磁石と、
前記電磁石に吸引される被吸引部を有し、前記板部材に設けられた支点を中心として水平方向に搖動する搖動部材と、
前記搖動部材の先端に取付けられた糸切断保持部材と、
前記被吸引部が前記電磁石の一端面から離反する方向に前記搖動部材を付勢する付勢部材と、
を備えたことを特徴とする糸条切断装置。
【請求項2】
前記筐体の一面と直交する前記筐体の他の一面と前記電磁石のコイルの周面との間に、前記コイルの通電を制御するための制御回路基板を取付けたことを特徴とする請求項1に記載の糸条切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−202352(P2010−202352A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50247(P2009−50247)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(593189324)小田原工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】