説明

糸条巻取機

【課題】コンタクトローラを糸通し前にトラバース装置から退避させることにより、容易に糸を通す。
【解決手段】紡糸巻取機1は、コンタクトローラ14を退避位置へ降下させる。そして、ガイド部材30を軸部材31を中心に糸道側へ回動させ、水平方向から所定の角度傾いた位置にする。そして、ゴデッドローラ18,19から装置本体10へ複数の糸Yを送り、コンタクトローラ14とトラバースガイド21との間に糸Yを通す。そして、コンタクトローラ14を接近位置へ上昇させ、糸Yをトラバースガイド21に掛ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を綾振りしながらボビンに巻取る糸条巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紡糸機などから連続的に供給される糸を巻取る紡糸巻取機は、ボビンが装着されるボビンホルダと、ボビンと接触可能なコンタクトローラと、トラバースガイドを備えたトラバース装置とを有しており、トラバースガイドで綾振りしながらボビンに糸を巻取るように構成されている。このような紡糸巻取機では、空ボビンへの糸掛け時に、サクションガンなどの吸引装置で糸を吸引して、トラバースガイドとコンタクトローラとの間に糸を通す必要がある。しかしながら、トラバースガイドとコンタクトローラとの間は非常に狭いため、糸通しの最中に糸がトラバースガイドに掛かってしまうことが多く、糸通しが困難であった。
【0003】
そこで、特許文献1には、トラバースガイドが設けられたケースにシリンダが取り付けられた糸条巻取機が開示されている。この糸条巻取機は、シリンダが作動することによりケースを揺動させ、トラバースガイドを糸道(糸通しされる糸の走行経路)から遠ざける。
【0004】
【特許文献1】特開平1−48781号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラバース装置には、トラバースガイド以外にもトラバースガイドに綾振り動作をさせるトラバースカムやトラバースカムを回転駆動させるトラバースモータなどが設けられており、重量及びサイズが大きくなっている。このような重量及びサイズが大きなトラバース装置を、特許文献1に記載の糸条巻取機のように、トラバースガイドが糸道から遠ざかるように移動させることは困難である。
【0006】
本発明の主たる目的は、コンタクトローラを糸通し前にトラバース装置から退避させることにより、容易に糸を通すことができる糸条巻取機を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明の糸条巻取機は、複数のボビンが直列に装着されるボビンホルダと、前記複数のボビンのそれぞれに巻取られる糸に係合して、当該糸を綾振るための複数のトラバースガイドを備えたトラバース装置と、前記複数のボビンと接触可能なコンタクトローラと、前記複数のトラバースガイドから糸を外す糸跳ねガイドと、前記複数のトラバースガイドのそれぞれに対応した位置に、複数の糸を振分ける複数の糸振分けガイドと、を備えており、前記トラバース装置と前記コンタクトローラとは糸を挟んで配置されており、前記コンタクトローラは、前記トラバース装置に接近する接近位置と、前記トラバース装置から遠ざかる第1退避位置とに移動可能であり、前記糸跳ねガイドは、糸に接触する糸掛け位置と、糸に接触しない第2退避位置とに移動可能であり、前記糸振分けガイドは、前記複数のトラバースガイドのそれぞれに対応した位置に複数の糸を振分ける分繊位置と、糸に接触しない第3退避位置とに移動可能であり、前記糸跳ねガイドの前記糸掛け位置は、前記糸跳ねガイドに接触する複数の糸が、前記コンタクトローラが前記第1退避位置に位置している状態において、前記複数のトラバースガイドから外れるように設定され、前記コンタクトローラが前記接近位置に位置している状態において、前記複数のトラバースガイドに係合するように設定されることを特徴とする。
【0008】
本発明の糸条巻取機によれば、コンタクトローラをトラバース装置から遠ざかる方向に移動可能に設けたことにより、コンタクトローラとトラバース装置との間に糸を通す際に、糸を通すための空間を十分に確保することができ、容易に糸を通すことができる。また、糸跳ねガイド及び糸振分けガイドは、初期糸掛け時のみと使用頻度が低いにも関わらず、従来の糸条巻取機では多くの部品点数を必要とし、コストアップに繋がっていた。しかし、本発明の糸条巻取機によれば、コンタクトローラをトラバース装置に接近する接近位置とトラバース装置から遠ざかる第1退避位置とに移動させることにより、糸跳ねガイドによって、トラバースガイドに糸が係合された状態と、トラバースガイドから糸が外れた状態にすることができる。その結果、トラバースガイドに糸を係合させるために必要なガイドが省略可能となり、糸条巻取機の構造を簡素化することができる。さらに、作業性の向上とコスト削減も実現することができる。
【0009】
また、本発明の糸条巻取機は、前記糸跳ねガイドと、前記複数の糸振分けガイドとを一体的に備えた、前記トラバース装置に対して揺動可能なガイド部材を有していることが好ましい。本発明の糸条巻取機によれば、糸跳ねガイドと糸振分けガイドとを1つのガイド部材に設け、糸跳ねガイドと糸振分けガイドとを一体化したことにより、初期糸掛けに必要なガイドをコンパクト化することができる。また、1つのガイド部材を揺動させることにより、初期糸掛け時にトラバースガイドから糸を外したり、複数の糸を振分けたりすることができるため、作業性が向上する。
【0010】
一方、別の観点では、本発明の糸条巻取機は、複数のボビンが直列に装着されるボビンホルダと、前記複数のボビンのそれぞれに巻取られる糸に係合して、当該糸を綾振るための複数のトラバースガイドを備えたトラバース装置と、前記複数のボビンと接触可能であり、前記トラバース装置に接近する接近位置と、前記トラバース装置から遠ざかる第1退避位置とに移動可能なコンタクトローラと、運転停止信号を検出する制御部と、前記コンタクトローラを前記接近位置と、前記第1退避位置とに移動させるコンタクトローラ駆動手段と、を備えており、前記制御部は、運転停止信号を検出した場合、前記コンタクトローラを前記第1退避位置に移動させるように前記コンタクトローラ駆動手段を制御する。
【0011】
本発明の糸条巻取機によれば、運転停止時において、コンタクトローラをトラバース装置から遠ざかる方向に移動させた状態で運転を停止させることが可能である。その結果、例えば、糸条巻取機のメンテナンス時にコンタクトロ−ラとトラバース装置との間に作業者が誤って異物を落としたとしても、コンタクトローラとトラバース装置との間に空間が確保されており、異物が滞留することがない。したがって、コンタクトローラとトラバース装置との間に異物が滞留した状態で、糸条巻取機の運転が再開されて、この異物によりコンタクトローラとトラバース装置とが損傷することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る紡糸巻取機の側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る紡糸巻取機の正面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、紡糸巻取機1(糸条巻取機)は、図示しない紡糸機からゴデッドローラ18,19を介して連続的に供給される複数の糸Yを複数のボビンBにそれぞれ巻取るものである。紡糸巻取機1の装置本体10には、円板状のタレット板11が円板の中心を回転軸として回転可能に取り付けられている。この回転軸には、タレット板モータ53が連結されており、このタレット板モータ53の駆動によりタレット板11は回転する。
【0014】
タレット板11の円板の中心に関して点対称な位置には、2本のボビンホルダ12,13が突設されている。なお、2本のボビンホルダ12,13には、複数のボビンBが装着されている。2本のボビンホルダ12,13は、後述するタレット板制御部43の制御によりタレット板11が180度回転することにより、巻取位置(図2のボビンホルダ12の位置)と待機位置(図2のボビンホルダ13の位置)とに切り替えられる。
【0015】
さらに、ボビンホルダ12,13は、ボビンホルダモータ54に連結されており、このボビンホルダモータ54の駆動によりボビンホルダ12,13は回転する。
【0016】
ボビンホルダ12の上方には、コンタクトローラ14とトラバース装置15とを支持するスライドボックス16が装置本体10に昇降可能に設けられている。スライドボックス16には、装置本体10に固設されたシリンダ51のロッドが連結され、シリンダ51の駆動によりスライドボックス16は昇降する。
【0017】
コンタクトローラ14は、ボビンホルダ12と平行、且つ、トラバース装置15と対向した状態で、スライドボックス16に昇降可能に設けられた昇降機構17の可動部17aに設置されている。昇降機構17には、昇降モータ55が設けられており、昇降モータ55の駆動により、可動部17aが昇降することにより、コンタクトローラ14は昇降する。つまり、コンタクトローラ14は、トラバース装置15に対して昇降可能となっている。このように、昇降機構17及び昇降モータ55はコンタクトローラ駆動手段を構成している。
【0018】
さらに、コンタクトローラ14には、回転数センサ57が設けられている。この回転数センサ57は、ボビンホルダ12に接触して回転するコンタクトローラ14の回転数を検出する。コンタクトローラ14の回転数が所定の回転数になるように巻取位置にあるボビンホルダ12の回転数が後述するボビンホルダ制御部44によって制御される。
【0019】
トラバース装置15は、複数のボビンBに巻取られる複数の糸Yを綾振る複数のトラバースガイド21と、これら複数のトラバースガイド21と係合するトラバースカム20と、このトラバースカム20を回転させる駆動手段としてのトラバースモータ52とを有している。
【0020】
なお、トラバース装置15は、回転羽根を用いて糸Yを綾振りする形式の羽根トラバース装置を用いてもよい。この場合、回転羽根がトラバースガイドに相当する。
【0021】
トラバース装置15の上部には、ガイド部材30が設けられている。ガイド部材30は、トラバース装置15の上部に取り付けられた軸部材31に連結され、軸部材31を中心にトラバース装置15に対して揺動可能となっている。さらに、ガイド部材30は、糸跳ねガイド32と複数の糸振分けガイド33とを有している。このガイド部材30について、図3を参照して説明する。図3は、ガイド部材を示す図であり、(a)はガイド部材の正面図、(b)はガイド部材の平面図である。
【0022】
糸跳ねガイド32は、糸通し時に、糸道(糸通しされる糸の走行経路)に進出して、糸Yがトラバースガイド21に掛からないように糸Yを押し出すガイドであり、図3(a)及び(b)に示すように、ボビンホルダ12の軸方向に長尺な板形状を有する。糸跳ねガイド32は、その短手方向の一端部において、軸部材31に連結されている。他端部は上方へ屈曲しており、その屈曲部32aが糸Yと接触して糸Yを押し出す。
【0023】
複数の糸振分けガイド33は、L字状をしており、その一端部はそれぞれ糸跳ねガイド32に接続されており、複数のトラバースガイド21にそれぞれ対応する位置に等間隔で配置されている。糸振分けガイド33の他端部先端は、糸跳ねガイド32の屈曲部32aよりも突出している。この複数の糸振分けガイド33によって、複数のトラバースガイド21に対応して複数の糸Yを振分け、トラバースガイド21への糸掛け時に、糸Yの位置を規制する。糸掛け時におけるガイド部材30の作用については後ほど詳述する。
【0024】
本実施形態において、スライドボックス制御部41、トラバース制御部42、タレット板制御部43、ボビンホルダ制御部44及びコンタクトローラ制御部45は、マイクロコンピュータ式に構成されて、図示しない演算手段としてのCPUや、記憶手段としてのROM、RAMなどを備えている。また、巻取制御部40も同様に図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備えている。
【0025】
巻取制御部40は、スライドボックス制御部41、トラバース制御部42、タレット板制御部43、ボビンホルダ制御部44及びコンタクトローラ制御部45へ信号を送信して、ボビンBへの糸巻取りに関する全体動作を制御する。また、巻取制御部40は、糸条巻取機1の巻取動作を停止する図示しない停止スイッチがONになった場合、また、図示しない紡糸機から供給される糸が切れたことを図示しない糸切れ検出センサが検出した場合、糸条巻取機1の巻取動作を停止する運転停止信号を入力される。巻取制御部40により運転停止信号が検出されると、コンタクトローラ制御部45によりコンタクトローラ14はトラバース装置15から遠ざかる方向に移動して、糸条巻取機1の運転は停止する。
【0026】
スライドボックス制御部41は、巻取制御部40からの信号を受けてシリンダ51の駆動を制御する。このシリンダ51が駆動することにより、スライドボックス16は昇降する。
【0027】
トラバース制御部42は、巻取制御部40からの信号を受けてトラバースモータ52の運転/停止を制御する。このトラバースモータ52が駆動することにより、トラバースカム20は回転し、このトラバースカム20に係合されたトラバースガイド21は糸Yを綾振るように往復動する。
【0028】
タレット板制御部43は、巻取制御部40からの信号を受けてタレット板モータ53の運転/停止を制御する。このタレット板モータ53が駆動することにより、タレット板11は回転する。
【0029】
ボビンホルダ制御部44は、巻取制御部40からの信号を受けてボビンホルダモータ54の運転/停止を制御する。このボビンホルダモータ54が駆動することにより、ボビンホルダ12,13は回転する。
【0030】
コンタクトローラ制御部45は、巻取制御部40からの信号を受けて昇降モータ55の駆動を制御する。この昇降モータ55が駆動することにより、可動部17aとともにコンタクトローラ14は昇降する。
【0031】
次に、トラバースガイド21への糸掛け時の一連の動作について図4を参照して説明する。図4は、トラバースガイドへの糸掛け時の一連の動作を示す説明図である。
【0032】
まず、図4(a)に示すように、紡糸巻取機1の運転停止時には、スライドボックス16は、巻取位置にあるボビンホルダ12から上方に遠ざかった位置にある。この状態で、コンタクトローラ制御部45により、昇降モータ55を駆動し、コンタクトローラ14を破線で示す接近位置から実線で示す退避位置(第1退避位置)へ降下させる。なお、接近位置とは、トラバースガイド21に糸を掛けるときの位置であり、退避位置とは、接近位置よりもトラバース装置15から遠ざかる方向に退避した位置である。これにより、コンタクトローラ14とトラバースガイド21との間の隙間が広がる。
【0033】
そして、作業者はガイド部材30を軸部材31を中心に糸道側へ回動させ、水平方向から所定の角度傾いた姿勢にする。そして、ゴデッドローラ18,19から装置本体10へ図示しない吸引装置で吸引しながら複数の糸Yを送り、コンタクトローラ14とトラバースガイド21との間に糸を通す。ここで、ガイド部材30が所定の角度傾いた姿勢であることにより、糸跳ねガイド32が糸掛け位置に位置し、糸跳ねガイド32の屈曲部32aがトラバースガイド21よりも糸道側(図4(a)中左方)に突出するため、糸Yはトラバースガイド21に掛かることなく、コンタクトローラ14とトラバースガイド21との間に通される。また、糸跳ねガイド32の屈曲部32aは、糸振分けガイド33の先端部よりも糸道側(図4(a)中左方)に突出するため、糸振分けガイド33に糸Yが掛かることはない。
【0034】
次に、図4(b)に示すように、作業者はガイド部材30をさらに糸道側に突出するように回動させて、水平方向の姿勢にする。すると、糸振分けガイド33が分繊位置に位置し、糸通しされた複数の糸Yが複数の糸振分けガイド33の間に掛かる状態となる。ここで、作業者は、複数のトラバースガイド21に対応する複数の糸振分けガイド33に複数の糸Yを振分ける。これにより、複数の糸Yがボビン軸方向に関して位置規制され、各ボビンB及び各トラバースガイド21と対応する位置にガイドされる。
【0035】
続いて、図4(c)に示すように、コンタクトローラ制御部45により、昇降モータ55を駆動し、コンタクトローラ14を破線で示す退避位置から実線で示す接近位置へ上昇させる。すると、糸跳ねガイド32との接触部での糸Yの屈曲角が大きくなり、複数の糸Yが対応する各トラバースガイド21に掛かる。このように、コンタクトローラ14を退避位置から接近位置に移動させることにより、トラバースガイド21への糸掛けが可能となり、トラバースガイド21への糸掛けに必要なガイドを省略可能となる。
【0036】
そして、図4(d)に示すように、作業者はガイド部材30を糸道から遠ざかる方向に回動させて、ガイド部材30が糸Yと接触しない位置、つまり糸掛けガイド32及び糸振分けガイド33が糸Yと接触しない位置(第2、第3退避位置)にする。さらに、スライドボックス制御部41により、シリンダ51を駆動し、コンタクトローラ14が巻取位置にあるボビンホルダ12に装着されたボビンBに接触するようにスライドボックス16を降下させる。
【0037】
以上説明した本実施形態の糸条巻取機1においては、コンタクトローラ14をトラバース装置15から遠ざかる方向に移動可能に設けたことにより、コンタクトローラ14とトラバース装置15との間に糸を通す際に、糸Yを通すための空間を十分に確保することができ、容易に糸を通すことができる。また、糸跳ねガイド32及び糸振分けガイド33は、初期糸掛け時のみと使用頻度が低いにも関わらず、従来の糸条巻取機では多くの部品点数を必要とし、コストアップに繋がっていた。しかし、本発明の糸条巻取機1によれば、コンタクトローラ14をトラバース装置15に接近する接近位置とトラバース装置15から遠ざかる第1退避位置とに移動させることにより、糸跳ねガイド32によって、トラバースガイド21に糸Yが係合された状態と、トラバースガイド21から糸Yが外れた状態にすることができる。その結果、トラバースガイド21に糸Yを係合させるために必要なガイドが省略可能となり、糸条巻取機1の構造を簡素化することができる。さらに、作業性の向上とコスト削減も実現することができる。
【0038】
また、糸跳ねガイド32と糸振分けガイド33とを1つのガイド部材30に設け、糸跳ねガイド32と糸振分けガイド33とを一体化したことにより、初期糸掛けに必要なガイドをコンパクト化することができる。また、1つのガイド部材30を揺動させることにより、初期糸掛け時にトラバースガイド21から糸Yを外したり、複数の糸Yを振分けたりすることができるため、作業性が向上する。
【0039】
さらに、運転停止時において、コンタクトローラ14をトラバース装置15から遠ざかる方向に移動させた状態で運転を停止させることが可能である。その結果、例えば、糸条巻取機1のメンテナンス時にコンタクトロ−ラ14とトラバース装置15との間に作業者が誤って異物を落としたとしても、コンタクトローラ14とトラバース装置15との間に空間が確保されており、異物が滞留することがない。したがって、コンタクトローラ14とトラバース装置15との間に異物が滞留した状態で、糸条巻取機1の運転が再開されて、この異物によりコンタクトローラ14とトラバース装置15とが損傷することがない。
【0040】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0041】
1]本実施形態においては、糸掛け時にトラバースガイド21に糸が掛からないように糸跳ねガイド32を備えていたが、糸跳ねガイド32は備えていなくてもよい。
【0042】
2]本実施形態においては、糸跳ねガイド32と糸振分けガイド33を1つのガイド部材30で構成していたが、糸跳ねガイド32と糸振分けガイド33をそれぞれ別の部材で構成してもよい。
【0043】
3]本実施形態において、コンタクトローラ14は、鉛直方向に沿って降下することにより退避位置に移動していたが、降下に限らず、トラバースガイド21から遠ざかる方向であれば、いかなる方向に移動してもよい。例えば、水平方向(図2中左方向)に沿ってトラバースガイド21から遠ざかる退避位置に移動してもよい。
【0044】
4]本実施形態においては、スライドボックス16が巻取位置にあるボビンホルダ12と遠ざかるように上方に位置した状態で、コンタクトローラ14を退避位置に下降させ、糸通しを行っていたが、スライドボックス16を降下させた状態で、タレット板11を回転させてボビンホルダ12を一時退避させて、コンタクトローラ14を退避位置に下降させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡糸巻取機の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る紡糸巻取機の正面図である。
【図3】ガイド部材を示す図であり、図3(a)はガイド部材の正面図、図3(b)はガイド部材の平面図である。
【図4】トラバースガイドへの糸掛け時の一連の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 紡糸巻取機
12,13 ボビンホルダ
14 コンタクトローラ
15 トラバース装置
17 昇降機構
21 トラバースガイド
30 ガイド部材
32 糸跳ねガイド
33 糸振分けガイド
40 巻取制御部
55 昇降モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボビンが直列に装着されるボビンホルダと、
前記複数のボビンのそれぞれに巻取られる糸に係合して、当該糸を綾振るための複数のトラバースガイドを備えたトラバース装置と、
前記複数のボビンと接触可能なコンタクトローラと、
前記複数のトラバースガイドから糸を外す糸跳ねガイドと、
前記複数のトラバースガイドのそれぞれに対応した位置に、複数の糸を振分ける複数の糸振分けガイドと、を備えており、
前記トラバース装置と前記コンタクトローラとは糸を挟んで配置されており、
前記コンタクトローラは、前記トラバース装置に接近する接近位置と、前記トラバース装置から遠ざかる第1退避位置とに移動可能であり、
前記糸跳ねガイドは、糸に接触する糸掛け位置と、糸に接触しない第2退避位置とに移動可能であり、
前記糸振分けガイドは、前記複数のトラバースガイドのそれぞれに対応した位置に複数の糸を振分ける分繊位置と、糸に接触しない第3退避位置とに移動可能であり、
前記糸跳ねガイドの前記糸掛け位置は、前記糸跳ねガイドに接触する複数の糸が、前記コンタクトローラが前記第1退避位置に位置している状態において、前記複数のトラバースガイドから外れるように設定され、前記コンタクトローラが前記接近位置に位置している状態において、前記複数のトラバースガイドに係合するように設定されることを特徴とする糸条巻取機。
【請求項2】
前記糸跳ねガイドと、前記複数の糸振分けガイドとを一体的に備えた、前記トラバース装置に対して揺動可能なガイド部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の糸条巻取機。
【請求項3】
複数のボビンが直列に装着されるボビンホルダと、
前記複数のボビンのそれぞれに巻取られる糸に係合して、当該糸を綾振るための複数のトラバースガイドを備えたトラバース装置と、
前記複数のボビンと接触可能であり、前記トラバース装置に接近する接近位置と、前記トラバース装置から遠ざかる第1退避位置とに移動可能なコンタクトローラと、
運転停止信号を検出する制御部と、
前記コンタクトローラを前記接近位置と、前記第1退避位置とに移動させるコンタクトローラ駆動手段と、を備えており、
前記制御部は、運転停止信号を検出した場合、前記コンタクトローラを前記第1退避位置に移動させるように前記コンタクトローラ駆動手段を制御することを特徴とする糸条巻取機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−290819(P2008−290819A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136197(P2007−136197)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】