説明

系統切替システム及び系統切替方法

【課題】(N+1)構成のエンコーダと、二重化構成の多重化装置とを備え、エンコーダ又は多重化装置をシームレスに切り替えることが可能な系統切替システム及び系統切替方法を提供する。
【解決手段】系統切替システムは、複数のエンコーダ、第1の切替部、第1及び第2の多重化装置、TSスプライサ及び制御部を具備する。エンコーダは、チャンネル数よりも多く設けられ、素材信号を所定の符号化方式で符号化して出力する。第1の切替部は、複数のエンコーダからの符号化信号のうち所望の符号化信号を出力する二つのクロスポイント部を備え、これらのクロスポイント部は、制御部からの指示に従って出力する符号化信号を切り替える。第1及び第2の多重化装置は、クロスポイント部からの符号化信号を多重して第1及び第2の多重信号をそれぞれ生成する。TSスプライサは、制御部からの指示に応じて、第1及び第2の多重信号のうち一方を選択的に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冗長構成を形成し、システム内に故障等が発生した際には、現用系及び予備系を相互に切り替える系統切替システム及びこのシステムで用いられる系統切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放送局の主調整設備では、エンコーダ及び多重化装置の故障等に備えるため、エンコーダ及び多重化装置の冗長構成として二重化構成が採られている。一方、多くのチャンネルサービスを提供する局において、二重化構成が採用されると、エンコーダの台数がチャンネル数の2倍で増大するため、多くのエンコーダを用意しなくてはならない。そこで、このような局では、二重化ではなく、エンコーダを所望チャンネル数プラス1以上用意する(N+1)構成を採用し、エンコーダの故障等に備えるようにする場合がある。
【0003】
一般にエンコーダの障害の影響は該当チャンネルのみで済むが、多重化装置の障害はその多重化装置で処理するすべてのチャンネルに対して影響が及ぶ。今後、多くのチャンネルサービスの提供が想定されるため、エンコーダを(N+1)構成とし、多重化装置を二重化構成とする系統切替システムが望まれている。また、エンコーダ及び多重化装置をシームレスに切り替えることが可能な系統切替システムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−261977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、今後、多くのチャンネルサービスの提供が想定されるため、(N+1)構成のエンコーダと、二重化構成の多重化装置とを備え、エンコーダ又は多重化装置をシームレスに切り替えることが可能な系統切替システムが望まれている。
【0006】
そこで、目的は、(N+1)構成のエンコーダと、二重化構成の多重化装置とを備え、エンコーダ又は多重化装置をシームレスに切り替えることが可能な系統切替システム及びこのシステムで用いられる系統切替方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、系統切替システムは、複数のエンコーダ、第1の切替部、第1及び第2の多重化装置、TSスプライサ及び制御部を具備する。エンコーダは、チャンネル数よりも多く設けられ、受け取った素材信号を予め設定された符号化方式で符号化して出力する。第1の切替部は、前記複数のエンコーダからの符号化信号のうち前記複数チャンネルの符号化信号を出力する第1及び第2のクロスポイント部を備え、前記第1及び第2のクロスポイント部は、第1の切替信号に従って出力する符号化信号を切り替える。第1の多重化装置は、前記第1のクロスポイント部からの前記複数チャンネルの符号化信号を多重して第1の多重信号を生成する。第2の多重化装置は、前記第2のクロスポイント部からの前記複数チャンネルの符号化信号を多重して第2の多重信号を生成する。TSスプライサは、第2の切替信号に応じて、前記第1及び第2の多重信号のうち一方を選択的に出力する。制御部は、前記TSスプライサから多重信号が出力されていない他方の多重化装置へ供給される符号化信号の一部を、他のエンコーダからの符号化信号へ切り替えるように前記第1の切替信号を生成し、前記TSスプライサから出力される多重信号を前記他方の多重化装置からの多重信号へ切り替えるように前記第2の切替信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1の系統切替システムが、エンコーダをシームレスに切り替える際のシーケンス図である。
【図3】図1の系統切替システムにおいてエンコーダを切り替え、TSスプライサからの多重信号を切り替えた際の系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態に係る系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4の系統切替システムが、エンコーダをシームレスに切り替える際のシーケンス図である。
【図6】図4の系統切替システムにおいてエンコーダを切り替え、TSスプライサからの多重信号を切り替えた際の系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。図1に示す系統切替システムは、エンコーダ30−1〜30−5、第1の切替部40、現用系の多重化装置50−1、予備系の多重化装置50−2、TSスプライサ60、供給部10及び第2の切替部20を具備する。なお、図1は、エンコーダ30−1〜30−5に障害が発生していない状態で、現用系の多重化装置50−1を使用する場合の系統切替システムの例を示す。また、図1では、供給部10及び第2の切替部20が系統切替システムに含まれる場合を示しているが、系統切替システムの構成はこれに限定される訳ではない。例えば、系統切替システムは、供給部10及び第2の切替部20を具備しなくても構わない。
【0011】
供給部10は、複数チャンネルの素材信号を第2の切替部20へ供給する。ここで、素材信号には、例えば、映像信号及び音声信号のうち少なくとも一方が含まれる。なお、以下では、4チャンネルの素材信号が供給部10から第2の切替部20へ供給される場合を例に説明する。
【0012】
第2の切替部20は、第3のクロスポイント部を備える。第3のクロスポイント部は、各チャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−5のうち4個のエンコーダへそれぞれ出力する機能、及び、所定のチャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−5のうち複数のエンコーダへ出力する機能を有する。第2の切替部20は、制御部70からの第3の切替信号に従って第3のクロスポイント部を切り替え、供給部10からの各チャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−5へ出力する。図1では、第2の切替部20は、供給部10からの各チャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−4へ出力する。
【0013】
エンコーダ30−1〜30−5は、所望チャンネル数プラス1だけ用意される、N+1構成を採っている。なお、図1において、所望チャンネル数は「4」である。エンコーダ30−1〜30−5は、第2の切替部20からの素材信号を所定の方式でエンコードし、エンコード後の符号化信号を第1の切替部40へ出力する。ここで、所定の方式には、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式が該当する。また、エンコーダ30−1〜30−5は、TSスプライサの出力から除外しようとしているエンコーダからその動作を引き継ぐ際には、制御部70から供給されるパラメータ情報に従って、第2の切替部20からの素材信号をエンコードする。ここで、パラメータ情報とは、例えば、ビットレート、画面サイズ、音声モード等を含む。
【0014】
第1の切替部40は、第1及び第2のクロスポイント部を備える。第1及び第2のクロスポイント部は、各チャンネルの素材信号を多重化装置50−1,50−2へ出力する機能を有する。第1の切替部40は、制御部70からの第1の切替信号に従って第1及び第2のクロスポイント部を切り替え、エンコーダ30−1〜30−5からの各チャンネルの符号化信号を多重化装置50−1,50−2へ出力する。図1では、第1の切替部40は、エンコーダ30−1〜30−4からの符号化信号を多重化装置50−1,50−2へそれぞれ出力する。
【0015】
多重化装置50−1,50−2は、第1の切替部40からの符号化信号を多重化し、多重信号をTSスプライサ60へ出力する。
【0016】
TSスプライサ60は、多重化装置50−1,50−2からの多重信号を受け取り、制御部70からの第2の切替信号に従い、多重化装置50−1,50−2からの多重信号のうちいずれかを選択的に切り替えて後段へ出力する。ここで、TSスプライサ60は、多重信号をシームレスに切り替える機能を有している。図1では、TSスプライサ60は、多重化装置50−1からの多重信号を後段へ出力する。
【0017】
制御部70は、エンコーダ30−1〜30−5のいずれかに障害が発生した等によりエンコーダを切り替える必要がある場合、第3のクロスポイント部の接続を切り替える旨の第3の切替信号、第1及び第2のクロスポイント部を切り替える旨の第1の切替信号、及び、TSスプライサ60を切り替える旨の第2の切替信号を作成する。制御部70は、第3の切替信号を第2の切替部20へ出力し、第1の切替信号を第1の切替部40へ出力し、第2の切替信号をTSスプライサ60へ出力する。また、このとき、制御部70は、TSスプライサの出力から除外しようとしているエンコーダの動作を引き継ぐエンコーダに対して、TSスプライサの出力から除外しようとしているエンコーダのエンコード処理についてのパラメータ情報を与える。
【0018】
また、制御部70は、多重化装置50−1,50−2のいずれかに障害が発生した等により多重化装置を切り替える必要がある場合、第2の切替信号を作成し、第2の切替信号をTSスプライサ60へ出力する。
【0019】
次に、以上のように構成された系統切替システムによる系統切替動作を説明する。図2は、図1に示す系統切替システムが、エンコーダ30−4からエンコーダ30−5へシームレスに切り替える際のシーケンス図を示す。
【0020】
まず、制御部70は、第3の切替信号を、第2の切替部20へ出力する(シーケンスS21)。ここで、第3の切替信号は、第3のクロスポイント部が、エンコーダ30−4に供給しているチャンネルの素材信号S1をエンコーダ30−5へも供給するように指示するものである。第2の切替部20は、制御部70からの第3の切替信号に従い、素材信号S1をエンコーダ30−5へ供給するように第3のクロスポイント部を切り替える(シーケンスS22)。
【0021】
制御部70は、エンコーダ30−4でのエンコード処理に用いられているパラメータ情報をエンコーダ30−5へ与える(シーケンスS23)。エンコーダ30−5は、素材信号S1に対し、エンコーダ30−4と同様のエンコード処理を行う(シーケンスS24)。これにより、エンコーダ30−4からは符号化信号ES4が第1の切替部40へ出力され、エンコーダ30−5からは符号化信号ES5が第1の切替部40へ出力される。
【0022】
続いて、制御部70は、第1の切替信号を第1の切替部40へ出力する(シーケンスS25)。ここで、第1の切替信号は、第2のクロスポイント部が、エンコーダ30−4からの符号化信号ES4に代えてエンコーダ30−5からの符号化信号ES5を多重化装置50−2へ出力するように指示するものである。第1の切替部40は、制御部70からの第1の切替信号に従い、符号化信号ES4を多重化装置50−2へ出力する経路を非接続とし、符号化信号ES5を多重化装置50−2へ出力する経路を接続させるように、第2のクロスポイント部を切り替える(シーケンスS26)。
【0023】
続いて、制御部70は、符号化信号の所定の位置に切り替え用の印を付すように、エンコーダ30−4,30−5に対して指示を出す(シーケンスS27、S28)。そして、制御部70は、切替印の位置で多重化装置50−1からの多重信号を、多重化装置50−2からの多重信号へ切り替える旨の第2の切替信号をTSスプライサ60へ出力する(シーケンスS29)。エンコーダ30−4,30−5は、指示された位置に切替印を付して符号化信号ES4,ES5を出力する(シーケンスS210、S211)。TSスプライサ60は、制御部70からの第2の切替信号に従い、切替印の位置で多重化装置50−1からの多重信号を、多重化装置50−2からの多重信号へ切り替える(シーケンスS212)。
【0024】
例えば、エンコーダ30−4,30−5が素材信号をMPEG方式に従って符号化する場合には、制御部70は、エンコーダ30−4,30−5に対し、同一のGOP(Group Of Picture)のIピクチャにフラグを立てるように指示を出す。そして、制御部70は、t秒以内にフラグを検出した場合、そのフラグの位置で多重化装置50−1からの多重信号を、多重化装置50−2からの多重信号へ切り替える旨の第2の切替信号をTSスプライサ60へ出力する。エンコーダ30−4,30−5は、制御部70からの指示に応じたGOPのIピクチャにフラグを立てて、符号化信号ES4、ES5を出力する。そして、TSスプライサ60は、第2の切替信号の受信からt秒以内に両多重信号中にフラグを検出した場合、そのフラグの位置で多重化装置50−1からの多重信号を、多重化装置50−2からの多重信号へ切り替える。
【0025】
なお、図2では、シーケンスS27、S28で、エンコーダ30−4,30−5に対して符号化信号の所定の位置に切り替え用の印を付すように指示を出し、シーケンスS29で、TSスプライサ60に対して切替印の位置で多重信号を切り替える旨の第2の切替信号を出力する場合を例に説明したが、これに制限される訳ではない。例えば、シーケンスS27、S28で、エンコーダ30−4,30−5に対して切替位置を指定し、シーケンスS29で、TSスプライサ60に対して一定時間後に多重信号を切り替える旨の第2の切替信号を出力するようにしても構わない。
【0026】
図3は、エンコーダ30−4からエンコーダ30−5へ切り替え、TSスプライサ60から多重化装置50−2からの多重信号を出力する際の系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。
【0027】
以上のように、第1の実施形態では、第1の切替部40における第1及び第2のクロスポイント部を介して、複数チャンネルの符号化信号を多重化装置50−1,50−2へ出力する。そして、エンコーダを切り替える必要がある場合には、第1及び第2のクロスポイント部により接続経路を切り替えるようにしている。これにより、エンコーダがN+1の冗長構成を採る場合であっても、所望のチャンネルの符号化信号を多重化装置50−1,50−2へ出力することが可能となる。
【0028】
また、第1の実施形態では、第1の切替部40における第1及び第2のクロスポイント部を切り替えた後に、TSスプライサ60で多重化装置50−1,50−2からの多重信号をシームレスに切り替えるようにしている。これにより、第1及び第2のクロスポイント部での切り替えの際にショックがあったとしても、TSスプライサ60から出力される信号には、そのショックの影響はない。このため、エンコーダの切り替えをシームレスに行うために、切替元のエンコーダからの符号化信号と、切替先のエンコーダからの符号化信号とを切り替えて多重化装置へ供給する、チャンネル数分の複数のスプライサを余分に用意する必要がなくなる。なお、多重化装置の切り替えは、TSスプライサ60による現用系及び予備系の切り替えによりシームレスに行うことが可能である。
【0029】
また、第1の実施形態で第1の切替部40を構成する第1及び第2のクロスポイント部は、局内の既存設備を利用することが可能である。このため、設備投資の費用、及び、システムの大規模化を抑えることが可能となる。
【0030】
したがって、第1の実施形態に係る系統切替システムによれば、(N+1)構成のエンコーダと、二重化構成の多重化装置とを備え、エンコーダ又は多重化装置をシームレスに切り替えることができる。また、スプライサを余分に用意する必要がなく、第1乃至第3のクロスポイント部は既存設備を利用することで実現することが可能であるため、設備投資の費用及びシステムの大規模化を抑えることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。図4に示す系統切り替えシステムは、エンコーダ30−1〜30−5、多重化装置80−1,80−2、TSスプライサ60、制御部90、供給部10及び切替部20を具備する。なお、図4は、エンコーダ30−1〜30−5に障害が発生していない状態で、現用系の多重化装置80−1を使用する場合の系統切替システムの例を示す。また、図4では、供給部10及び切替部20が系統切替システムに含まれる場合を示しているが、系統切替システムの構成はこれに限定される訳ではない。例えば、系統切替システムは、供給部10及び切替部20を具備しなくても構わない。
【0032】
切替部20は、クロスポイント部を備える。クロスポイント部は、各チャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−5のうち4個のエンコーダへそれぞれ出力する機能、及び、所定のチャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−5のうち複数のエンコーダへ出力する機能を有する。切替部20は、制御部90からの第2の切替信号に従ってクロスポイント部を切り替え、供給部10からの各チャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−5へ出力する。図4では、切替部20は、供給部10からの各チャンネルの素材信号をエンコーダ30−1〜30−4へ出力する。
【0033】
エンコーダ30−1〜30−5は、所望チャンネル数プラス1だけ用意される、N+1構成を採っている。なお、図4において、所望チャンネル数は「4」である。エンコーダ30−1〜30−5は、切替部20からの素材信号を所定の方式でエンコードし、エンコード後の符号化信号を多重化装置80−1,80−2へ出力する。ここで、所定の方式には、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式が該当する。エンコーダ30−1〜30−5は、TSスプライサの出力から除外しようとしているエンコーダからその動作を引き継ぐ際には、制御部90から供給されるパラメータ情報に従って、切替部20からの素材信号をエンコードする。
【0034】
多重化装置80−1,80−2は、制御部90から所定のチャンネルの符号化信号を選択する旨の選択信号を受け、この選択信号に従い、受信した符号化信号のうちいずれかを選択する。そして、多重化装置80−1,80−2は、選択した符号化信号を多重した多重信号をTSスプライサ60へ出力する。
【0035】
制御部90は、エンコーダ30−1〜30−5のいずれかに障害が発生した等によりエンコーダを切り替える必要がある場合、クロスポイント部の接続を切り替える旨の第2の切替信号、多重化装置80−1,80−2に対して所望のチャンネルの符号化信号を選択する旨の選択信号、及び、TSスプライサ60を切り替える旨の第1の切替信号を作成する。制御部90は、第2の切替信号を切替部20へ出力し、選択信号を多重化装置80−1,80−2へ出力し、第1の切替信号をTSスプライサ60へ出力する。また、このとき、制御部90は、TSスプライサの出力から除外しようとしているエンコーダの動作を引き継ぐエンコーダに対して、TSスプライサの出力から除外しようとしているエンコーダのエンコード処理についてのパラメータ情報を与える。
【0036】
また、制御部90は、多重化装置80−1,80−2のいずれかに障害が発生した等により多重化装置を切り替える必要がある場合、第1の切替信号を作成し、第1の切替信号をTSスプライサ60へ出力する。
【0037】
次に、以上のように構成された系統切替システムによる系統切替動作を説明する。図5は、図4に示す系統切替システムが、エンコーダ30−4からエンコーダ30−5へシームレスに切り替える際のシーケンス図を示す。
【0038】
まず、制御部90は、第2の切替信号を、切替部20へ出力する(シーケンスS51)。ここで、第2の切替信号は、クロスポイント部が、エンコーダ30−4に供給しているチャンネルの素材信号S1をエンコーダ30−5へも供給するように指示するものである。切替部20は、制御部90からの第2の切替信号に従い、素材信号S1をエンコーダ30−5へ供給するようにクロスポイント部を切り替える(シーケンスS52)。
【0039】
制御部90は、エンコーダ30−4でのエンコード処理に用いられているパラメータ情報をエンコーダ30−5へ与える(シーケンスS53)。エンコーダ30−5は、素材信号S1に対し、エンコーダ30−4と同様のエンコード処理を行う(シーケンスS54)。これにより、エンコーダ30−4からは符号化信号ES4が多重化装置80−1,80−2へ出力され、エンコーダ30−5からは符号化信号ES5が多重化装置80−1,80−2へ出力される。
【0040】
続いて、制御部90は、選択信号を多重化装置80−1,80−2へ出力する(シーケンスS55)。ここで、選択信号は、多重化装置80−1がエンコーダ30−1〜30−4からの符号化信号を選択し、多重化装置80−2がエンコーダ30−1〜30−3,30−5からの符号化信号を選択するように指示するものである。多重化装置80−1は、制御部90からの選択信号に従い、エンコーダ30−1〜30−4からの符号化信号を多重した多重信号CS1をTSスプライサ60へ出力し、多重化装置80−2は、制御部90からの選択信号に従い、エンコーダ30−1〜30−3,30−5からの符号化信号を多重した多重信号CS2をTSスプライサ60へ出力する(シーケンスS56)。
【0041】
続いて、制御部90は、符号化信号の所定の位置に切り替え用の印を付すように、エンコーダ30−4,30−5に対して指示を出す(シーケンスS57、S58)。そして、制御部90は、切替印の位置で多重化装置80−1からの多重信号CS1を、多重化装置80−2からの多重信号CS2へ切り替える旨の第1の切替信号をTSスプライサ60へ出力する(シーケンスS59)。エンコーダ30−4,30−5は、指示された位置に切替印を付して符号化信号ES4,ES5を出力する(シーケンスS510、S511)。TSスプライサ60は、制御部90からの第1の切替信号に従い、切替印の位置で多重信号CS1を、多重信号CS2へ切り替える(シーケンスS512)。
【0042】
なお、図5では、シーケンスS57、S58で、エンコーダ30−4,30−5に対して符号化信号の所定の位置に切り替え用の印を付すように指示を出し、シーケンスS59で、TSスプライサ60に対して切替印の位置で多重信号を切り替える旨の第1の切替信号を出力する場合を例に説明したが、これに制限される訳ではない。例えば、シーケンスS57、S58で、エンコーダ30−4,30−5に対して切替位置を指定し、シーケンスS59で、TSスプライサ60に対して一定時間後に多重信号を切り替える旨の第1の切替信号を出力するようにしても構わない。
【0043】
図6は、エンコーダ30−4からエンコーダ30−5へ切り替え、TSスプライサ60から多重化装置80−2からの多重信号CS2を出力する際の系統切替システムの機能構成を示すブロック図である。
【0044】
以上のように、第2の実施形態では、多重化装置80−1,80−2は、所定のチャンネルの符号化信号を選択し、選択した符号化信号を多重化する機能を有する。そして、エンコーダを切り替える必要がある場合には、多重化装置80−1,80−2へ選択信号を出力して接続経路を切り替えるようにしている。これにより、エンコーダがN+1の冗長構成を採る場合であっても、所望のチャンネルの符号化信号を多重した多重信号を多重化装置80−1,80−2から出力することが可能となる。このため、エンコーダの切り替えをシームレスに行うために、切替元のエンコーダからの符号化信号と、切替先のエンコーダからの符号化信号とを切り替えて多重化装置へ供給する、チャンネル数分の複数のスプライサを余分に用意する必要がなくなる。なお、多重化装置の切り替えは、TSスプライサ60による現用系及び予備系の切り替えによりシームレスに行うことが可能である。
【0045】
したがって、第2の実施形態に係る系統切替システムによれば、(N+1)構成のエンコーダと、二重化構成の多重化装置とを備え、エンコーダ又は多重化装置をシームレスに切り替えることができる。また、スプライサを余分に用意する必要がないため、設備投資の費用及びシステムの大規模化を抑えることができる。
【0046】
なお、上記各実施形態では、N=4の場合を例に説明しているが、チャンネルの数は、4個に限定される訳ではない。4個以上であっても以下であっても同様に実施可能である。
【0047】
また、上記各実施形態では、エンコーダが(N+1)構成を採り、多重化装置が二重化構成を採る場合について説明したが、これらに限定される訳ではない。例えば、エンコーダは(N+2)構成をとっても構わない。また、多重化装置は三重化構成を採っても構わない。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
10…供給部
20…第2の切替部
30−1〜30−5…エンコーダ
40…第1の切替部
50−1,50−2,80−1,80−2…多重化装置
60…TSスプライサ
70,90…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンネル数よりも多く設けられ、複数チャンネルの素材信号を予め設定された符号化方式で符号化して出力する複数のエンコーダと、
前記複数のエンコーダからの符号化信号のうち前記複数チャンネルの符号化信号を出力する第1及び第2のクロスポイント部を備え、前記第1及び第2のクロスポイント部は、第1の切替信号に従って出力する符号化信号を切り替える第1の切替部と、
前記第1のクロスポイント部からの前記複数チャンネルの符号化信号を多重して第1の多重信号を生成する第1の多重化装置と、
前記第2のクロスポイント部からの前記複数チャンネルの符号化信号を多重して第2の多重信号を生成する第2の多重化装置と、
第2の切替信号に応じて、前記第1及び第2の多重信号のうち一方を選択的に出力するTS(Transport Stream)スプライサと、
前記TSスプライサから多重信号が出力されていない他方の多重化装置へ供給される符号化信号の一部を、他のエンコーダからの符号化信号へ切り替えるように前記第1の切替信号を生成し、前記TSスプライサから出力される多重信号を前記他方の多重化装置からの多重信号へ切り替えるように前記第2の切替信号を生成する制御部と
を具備することを特徴とする系統切替システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の切替信号を前記第1の切替部に出力した後に前記第2の切替信号を前記TSスプライサへ出力することを特徴とする請求項1記載の系統切替システム。
【請求項3】
前記複数チャンネルの素材信号を供給する供給部と、
前記供給部からの素材信号を前記複数のエンコーダへ出力する第3のクロスポイント部を備え、前記第3のクロスポイント部は、第3の切替信号に応じて、同一チャンネルの素材信号を少なくとも二つのエンコーダへ出力する第2の切替部と
をさらに具備し、
前記制御部は、前記複数のエンコーダのうち、いずれのエンコーダへ前記同一チャンネルの素材信号を出力するかを指示する前記第3の切替信号を生成し、前記他方の多重化装置へ供給される符号化信号の一部を、前記同一チャンネルの素材信号が供給されるエンコーダからの符号化信号へ切り替えるように前記第1の切替信号を生成することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の系統切替システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記同一チャンネルの素材信号を符号化する少なくとも二つのエンコーダで、同一の符号化処理が行われるように、前記少なくとも二つのエンコーダでパラメータ情報を共通させることを特徴とする請求項3記載の系統切替システム。
【請求項5】
チャンネル数よりも多く設けられ、複数チャンネルの素材信号を予め設定された符号化方式で符号化して出力する複数のエンコーダと、
前記複数のエンコーダからの符号化信号のうち所望のエンコーダからの符号化信号を選択して前記選択した符号化信号を多重化し、選択信号に応じて前記選択した符号化信号のいずれかを他のエンコーダからの符号化信号へ変更する第1及び第2の多重化装置と、
第1の切替信号に応じて、前記第1及び第2の多重化装置からの多重信号のうち一方を選択的に出力するTS(Transport Stream)スプライサと、
前記TSスプライサから多重信号が出力されていない他方の多重化装置へ、前記選択した符号化信号のいずれかを他のエンコーダからの符号化信号へ変更するように前記選択信号を生成し、前記TSスプライサから出力される多重信号を前記他方の多重化装置からの多重信号へ切り替えるように前記第1の切替信号を生成する制御部と
を具備することを特徴とする系統切替システム。
【請求項6】
前記複数チャンネルの素材信号を供給する供給部と、
前記供給部からの素材信号を前記複数のエンコーダへ出力するクロスポイント部を備え、前記クロスポイント部は、第2の切替信号に応じて、同一チャンネルの素材信号を少なくとも二つのエンコーダへ出力する切替部と
をさらに具備し、
前記制御部は、前記複数のエンコーダのうち、いずれのエンコーダへ前記同一チャンネルの素材信号を出力するかを指示する前記第2の切替信号を生成し、前記他方の多重化装置へ、前記選択した符号化信号のいずれかを、前記同一チャンネルの素材信号が供給されるエンコーダからの符号化信号へ変更するように前記選択信号を生成することを特徴とする請求項5記載の系統切替システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記同一チャンネルの素材信号を符号化する少なくとも二つのエンコーダで、同一の符号化処理が行われるように、前記少なくとも二つのエンコーダでパラメータ情報を共通させることを特徴とする請求項6記載の系統切替システム。
【請求項8】
供給される素材信号のチャンネル数よりも多く設置されるエンコーダで、前記チャンネル毎の素材信号を、予め設定された符号化方式で符号化し、
第1及び第2のクロスポイント部それぞれにより、前記複数のエンコーダからの符号化信号のうち前記複数チャンネルの符号化信号を出力し、
第1の多重化装置により、前記第1のクロスポイント部からの前記複数チャンネルの符号化信号を多重して第1の多重信号を生成し、
第2の多重化装置により、前記第2のクロスポイント部からの前記複数チャンネルの符号化信号を多重して第2の多重信号を生成し、
TS(Transport Stream)スプライサにより、前記第1及び第2の多重信号のうち一方を選択的に出力し、
前記TSスプライサから多重信号が出力されていない他方の多重化装置へ供給される符号化信号の一部を、他のエンコーダからの符号化信号へ切り替える際、前記第1の切替部に対して第1の切替信号を出力し、
前記TSスプライサから出力される多重信号を前記他方の多重化装置からの多重信号へ切り替える際、前記TSスプライサに対して第2の切替信号を出力することを特徴とする系統切替方法。
【請求項9】
供給される素材信号のチャンネル数よりも多く設置されるエンコーダで、前記チャンネル毎の素材信号を、予め設定された符号化方式で符号化し、
第1及び第2の多重化装置それぞれにより、前記複数のエンコーダからの符号化信号のうち所望のエンコーダからの符号化信号を選択して前記選択した符号化信号を多重化し、
TS(Transport Stream)スプライサにより、前記第1及び第2の多重化装置からの多重信号のうち一方を選択的に出力し、
前記TSスプライサから多重信号が出力されていない他方の多重化装置で前記選択した符号化信号のいずれかを他のエンコーダからの符号化信号へ変更する際、前記他方の多重化装置に対して選択信号を出力し、
前記TSスプライサから出力される多重信号を前記他方の多重化装置からの多重信号へ切り替える際、前記TSスプライサに対して切替信号を出力することを特徴とする系統切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−195761(P2012−195761A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58060(P2011−58060)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】