説明

納豆容器を用いた納豆の製造方法、およびこの製造方法により製造されたパック入り納豆

【課題】調味料を密封包装材無しの状態で容器本体内に収容した場合であっても、調味料の漏れを可及的に防止することができ、これにより納豆との混合が生じることがなく、しかも食する場合には、調味料を容易に納豆に混ぜ合わせることのできる納豆容器およびこの納豆容器を用いた納豆の製造方法、およびこの製造方法により製造されたパック入り納豆を提供すること。
【解決手段】容器本体4の内側底面4bに、蒸煮大豆12が入り込むことのできない幅Aの貯留細溝部9を設けるとともに、この貯留細溝部9内に予め調味料Gを収容し、その上に蒸煮大豆と納豆菌の混合物12を収容し、この状態で蓋体6を閉じて発酵させたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆容器およびこの納豆容器を用いた納豆の製造方法、およびこの製造方法により製造されたパック入り納豆に関するもので、詳しくは、容器本体内に納豆菌が接種された蒸煮大豆が収容され、開口部が蓋体により封止された状態でこの蒸煮大豆を納豆菌により発酵させた後、市場に出荷される納豆容器およびこの納豆容器を用いた納豆の製造方法、およびこの製造方法により製造されたパック入り納豆に関する。
【背景技術】
【0002】
健康食品として、近年特に好評を博している納豆の製造工程は以下のようなものである。
(1)浸漬工程
原料大豆を水に浸漬する工程は、一般的には、常温の水に1時間以上、好ましくは10時間以上浸漬させることにより大豆を十分に膨潤させる。浸漬時間は使用する大豆および水温に応じて適宜調整する。
【0003】
(2)蒸煮工程
上記浸漬工程により得られた浸漬大豆を蒸煮する工程は、一般的には、蒸煮の温度は100℃以上、圧力は0.5〜3kg/cm2、時間は1分〜2時間の範囲で適宜調整する。
【0004】
(3)植菌工程
上記蒸煮工程により得られた蒸煮大豆に納豆菌を植菌する工程は、一般的には、蒸煮大豆1kgあたり、1×10の6剰〜10の10剰cfu(colony forming unit)の納豆
菌を含む植菌液を25〜300mL、好ましくは50〜100mLの割合で添加し、撹拌機等を用いて十分に混合する。植菌液の量は、蒸煮大豆(発酵食品原料)全体に均一に植菌することができ、かつ水分過多とならない範囲で適宜調整する。
【0005】
(4)充填工程/発酵工程/熟成工程
納豆菌を植菌した蒸煮大豆はホッパーを介して納豆容器に入れて発酵を行う。一般的には、室温〜60℃で1〜50時間かけて発酵させる。
また、必要に応じて、上記発酵工程終了後に、旨味成分をさらに引き出すために納豆を熟成させる工程を設けることもできる。この熟成工程は、通常は0〜10℃で10〜100時間程度かけて行う。
【0006】
納豆を得るまでの製造工程は、概略上記の通りである。
ここで、納豆にかき混ぜて使用するタレやカラシといった調味料は、上記発酵工程に入る前の段階において容器本体内に収容されている。すなわち、上記発酵工程の前には、蒸煮大豆と納豆菌の混合物の容器内への充填作業が行なわれるが、その充填工程を行なう中でタレやカラシが容器本体内に収容される。
【0007】
その場合、通常は、先ず、所定量の蒸煮大豆と納豆菌の混合物が容器本体に充填され、次いで、蒸煮大豆の表面を覆うように被膜フィルムが配置され、その被膜フィルムの上にタレやカラシといった調味料が配置され、さらに蓋体が閉じられた状態で発酵装置内に供給されている。
【0008】
そして、納豆を食する際に蓋体が開けられ、容器本体から先ずタレやカラシなどの調味料の入った小袋が取り出され、続いて被膜フィルムが取り出され、その状態から蒸煮大豆
と納豆菌の混合物(発酵後であるためここでは納豆)が攪拌され、十分攪拌された納豆に好みのタレやカラシが混ぜ合わされている。
【0009】
ところで、このように発酵から食するまで、同一の容器が用いられる従来の納豆容器では、容器本体内から調味料の入った小袋を取り出す作業と、被膜フィルムを取り出す作業と、小袋を切断する作業と、小袋から調味料を納豆上に載せる作業と、さらには納豆を食した後に使用済みの小袋や納豆の表面を覆っていた被膜フィルムをゴミとして処分する作業などが強いられることになる。また、これらの作業を行う中で指先を汚してしまうという問題もあり、また、生産者側から見れば、調味料専用の小袋を用意しなければならないという問題もある。
【0010】
一方、今日では、醤油やタレなどのいわゆるサラッとした液体調味料に代え、調味料に増粘性物質を添加した半固形状、あるいはゲル状調味料も提供されている。
例えば、特許文献1では、ゲル状調味料の収容部として、容器本体内の一部にポケット部が画成された容器が用意されている。そして、そのポケット部内にゲル状調味料が収容されるとともに、その上に被膜フィルムが配置され、さらに蓋部材がヒートシールされた状態で出荷されている。
【0011】
しかしながら、この特許文献1に開示された納豆容器では、ゲル状調味料が搬送中に移動して漏れ出てしまうことがないように、蓋体は容器本体に対し通常より強固に溶着しなければならない。このため、消費者が食する際の蓋の開けやすさに難点があり、その結果、蓋体を容器本体から取り外す作業が困難になるという問題があった。
【0012】
また、特許文献1に開示された納豆容器では、長時間傾けられていたりすると、いくら半固形のゲル状調味料であったとしても、そのポケット部からゲル状調味料が大量に漏れ出してしまう可能性があった。その場合には、食する前に納豆と混ざり合って、納豆菌によって調味料が分解され、品質の低下、見た目の悪さなどが発生し、商品価値を下げてしまう虞がある。
【0013】
一方、納豆容器には、特許文献2のように、紙を基材とした容器も提供されている。この特許文献2では、紙を基材とする容器であって、納豆の上部に被膜フィルムを被せるものであるが、容器本体の胴部および底部に凸凹加工が施されている。これらの凹凸は容器内の通気性を高め、納豆の発酵を良好にし得るようにする目的で形成されたものである。特許文献2の凹凸は、点状に散在して設けられた凹凸、あるいは周方向にほぼ定間隔に規則正しく配置された凹凸、あるいは周方向および上下方向に互いに間隔を有するようにほぼ等間隔に配置された凹凸などが開示されているが、これらの凹凸は文献添付の図面4からも明らかなように、いずれも蒸煮大豆が簡単に凹内に入り込む形状をしている。したがって、このような特許文献2の容器において、仮に、本申請品のように予め容器底面に調味料を配置したとすると、調味料が蒸煮大豆と納豆菌の混合物と接触し発酵が著しく阻害された不良品しか製造することができない。
【0014】
また、特許文献3には、被膜フィルムを用いることのない納豆容器が開示されている。この特許文献3では、容器底面に渦巻き状の溝(突条)が複数本形成されている。この容器では、容器底面に溝を設けた目的は、納豆製造における発酵時の通気性向上のためである。よって、この溝に調味料を入れることにより溝を埋めてしまうことは通気性の向上が阻害され発酵が不良になるとともに、底面の多くの領域に調味料が配置されるため蒸煮大豆と納豆菌の混合物が調味料と接する面積が大きくなり正常な発酵はできない。
【0015】
さらに、特許文献4では、納豆容器の上部開口部を覆う蓋体に調味料を収納し易破断シール体によってその開口部が密閉されたものが開示されている。
この特許文献4では、易破断シール体を手先などで押し込むことにより、内部の調味料を、納豆上に放出することができるが本申請のような工夫は無く調味料全部が納豆に供給されるに過ぎない。
【0016】
さらに、特許文献5では、帯シールを蓋体の底面に装着し、この帯シールの自由端部を引っ張ることにより、内部に収納した調味料を納豆の上に導出させるようにした納豆容器が開示されている。この特許文献5では、特許文献4の容器の場合に比べて調味料を簡便に注ぎ出すことができる反面、帯シール体を引っ張ったときに、調味料の全量が投入されてしまう。結果として、特許文献4および特許文献5の容器では、調味料の使用量を消費者が適宜増減させることができない。
【0017】
また、特許文献6には、容器本体の底面から周囲の側壁に跨って複数の溝が形成された容器が開示されている。
しかしながら、文献添付の図面3の形状では仮に溝内に調味料を入れても中央部を主として納豆菌が植菌された蒸煮大豆は容易に調味料に接触してしまい、発酵は著しく阻害され納豆製造には全く適さない。
【0018】
以上の文献1〜6においても、従来市販されている納豆容器においても、いずれにしても各容器において多かれ少なかれ底面に凸凹があるのが普通であり容器底面は平坦ではないが、いずれのものにおいても大豆からみれば所謂大きな波状であって、発酵における通気性の改良・向上を目的としており、ゲル状や半固形状に調味料を加工してこれを容器内底面に入れたとしても蒸煮大豆との接触面が著しく多くなり、発酵が正常に進むことはなくいわゆる不良品しか製造することができない。
【0019】
上記のように、既存の納豆容器底面における形状は、本申請品のように調味料を格納するものではなく、さらに格納した調味料を納豆を食する場合に適切に利用できる形態にもなっていないのが現状である。
【特許文献1】特開2005−269909号公報
【特許文献2】特許登録第3785359号公報
【特許文献3】特開2005−88934号公報
【特許文献4】特開2002−179174号公報
【特許文献5】特開2002−37349号公報
【特許文献6】特開2001−2172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、調味料を密封包装材無しの状態で容器本体内に収容した場合であっても、調味料の漏れを可及的に防止することができ、これにより納豆との混合が生じることがなく、しかも食する場合には、調味料を容易に納豆に混ぜ合わせることができ、混ぜ合わせの量も適宜調整することができる納豆容器およびこの納豆容器を用いた納豆の製造方法、およびこの製造方法により製造されたパック入り納豆を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る納豆容器は、
蒸煮大豆と納豆菌の混合物を収容するための収容凹部が形成された容器本体と、前記容器本体の開口部を覆うように形成された蓋体とを備えた納豆容器において、
前記収容凹部の前記蒸煮大豆と納豆菌の混合物が接触する内側底面に、調味料を貯留するための貯留細溝部が設けられていることを特徴としている。
【0022】
このような構成の本発明によれば、蒸煮大豆と納豆菌の混合物が触れる容器本体の内側底面に形成された貯留細溝部に予め調味料を収納することにより、製造された納豆がさらなる蓋の役割を持つことから搬送の途中などであっても、調味料が漏れ出てしまうことはない。さらに、発酵前および発酵中に蒸煮大豆と納豆菌の混合物が調味料と接触することは発酵不良となり製品価値が著しく損なわれるが、正常な発酵終了後に納豆と調味料が万一多少混合することがあっても製品・商品としては何ら問題はない。
【0023】
ここで、本発明では、前記貯留細溝部は、直線状、曲線状、渦巻き状、放射状のいずれかであることが好ましい。なお、直線状とは、ギザギザ模様も含む態様である。
また、箸でかき混ぜる方向に細溝が形成されていれば、一回の動作で適量の調味料を取り出すことができる。一方、細溝と直交する方向に箸を動かせば、調味料の取り出し量を少なくすることができる。したがって、食に必要とする調味料の消費者による使用量調整が容易になる。
【0024】
また、本発明では、蒸煮大豆の直径より小さい幅に設定されていることが特徴である。
このような構成であれば蒸煮大豆と納豆菌の混合物やその発酵品である納豆が細溝に落ち込むことが防止されるので、調味料との接触を可及的に防止することができる。
【0025】
また、本発明では、前記貯留細溝部の深さは、3mm〜10mmの範囲に設定されていることが好ましい。さらに好ましくは5mmである。
このような深さであれば、細溝内に調味料を適量収容することができる。
【0026】
なお、蓋体に関してであるが、本発明に関する容器の蓋体の形状は特に限定されるものではなく、どのような形状であっても良い。従来から使用されている一般的な納豆容器としての蓋の形状を有していれば納豆製造において最重要と考えられる発酵の段階でも何ら問題なく行うことができる。
【0027】
例えば、蓋体がヒンジを介して容器本体と一体的に形成されていても良く、あるいは蓋体が容器本体とは取り外し可能に別体で形成されていても良く、他に蓋体がフィルム状であっても構わない。さらには、蒸煮大豆と納豆菌の混合物の表面を覆う被膜フィルムが使用されない納豆容器にも適用可能である。さらには紙などを基材とするカップ型の納豆容器にも適用可能である。要は、発明の本質に係わらない部分は、どのように形成されていても良い。
【0028】
一方、本発明に係る納豆の製造方法は、選別、洗浄がなされた原料大豆を浸漬する浸漬工程と、浸漬された大豆を蒸煮する蒸煮工程と、蒸煮大豆に納豆菌を植菌する植菌工程と、植菌された蒸煮大豆を容器に充填する充填工程と、容器に充填された蒸煮大豆を発酵させる発酵工程と、発酵により形成された納豆を熟成させる熟成工程と、からなる納豆の製造方法において、前記容器として、上記いずれかに記載の納豆容器を使用するとともに、前記充填工程において、先ず、容器本体の内側底面に形成された貯留細溝部に調味料を収容し、その後、前記容器本体内に前記蒸煮大豆と納豆菌の混合物を収容したことを特徴としている。
【0029】
ここで、本発明に係る納豆の製造方法では、調味料として、半固形状、粉体も採用可能である。
本発明に係るパック入り納豆は、上記に記載の納豆の製造方法により製造されたことを特徴としている。
【0030】
このような納豆の製造方法およびこの製造方法を用いたパック入り納豆によれば、調味料用の小袋などが不要となる。また、消費者がタレなどを開封する必要がないので、指先
を汚してしまったり、ゴミとして処理したりする手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る納豆容器によれば、調味料が容器本体内の内側底面に包装材無しの状態で予め貯留されているので、調味料を封止するための個別の密封包装材が不要であるとともに、小袋を取り出して内部の調味料を取り出すという一連の作業が不要となる。したがって、納豆を食するまでに調味料を手で触れることがないので、指先などを汚してしまうことがない。また、単に、容器本体が短時間傾いたり、天地逆転しただけでは、調味料が納豆に混ざりあってしまうことはない。また、製造された納豆がさらなる蓋の役割を持つことから搬送の途中などであっても、調味料が漏れ出てしまうことはない。これにより、納豆と調味料とを実際に食するまで隔離された状態に維持することができる。
【0032】
さらに、使用後の密封包装材をゴミとして処分する作業も不要となる。
また、食する際に納豆を攪拌すれば、糸を引く粘り成分の一部が貯留細溝部内に加わるので、箸の動きに伴って、調味料と容易に接触・混和させることができる。また、細溝部の形成方向と同方向に箸を動かせば、納豆の粘り成分と調味料との接触機会が増えるため一度により多くの調味料を取り出すことができ、逆に、異なる方向に箸を動かせば、調味料の取出し量・混和量を少なくすることができる。したがって、調味料の使用量を好みに合わせて調整することが容易にできる。
【0033】
また、細溝部の幅を蒸煮大豆より小さい幅に設定すれば、この溝内に大豆が落ち込んでしまうことがないので、搬送中における納豆と調味料との接触を防止できる。さらに、納豆の粘り成分に伴う箸先の動きにより、調味料を容易に納豆と混和することができる。
【0034】
また、本発明に係る納豆容器によれば、特許文献1のような納豆の収容部と調味料の収容部とを分離した容器の場合に比べて、収容し得る納豆量を多くすることができる。また調味料を箸で移動する手間もいらず、漏れを気にして蓋体を厳密に溶着する必要が無いため消費者が開けやすいという利便性も付加することができる。これに加えて、複数種の調味料を複数の溝によって入れ分けることも可能である点が優れている。
【0035】
また、本発明に係る納豆の製造方法、およびこの製造方法により製造されたパック入り納豆によれば、生産者から見れば、タレなどを収容するための専用の小袋を用意する必要がない。また、消費者から見れば、小袋を取り出して内部の調味料を取り出すといった作業が不要になる。さらに、単に納豆を攪拌する工程の中で調味料を納豆に混ぜ合わせれば良いので、小袋を取り出したり、開封したりする煩雑な作業を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面に示した実施例を参照しながら本発明を説明する。
図1は本発明の一実施例による納豆容器2を示したものである。
この納豆容器2は、断面凹状で一方面に開口部4aが形成され、その内部に納豆を収容するための断面略四角形の収容凹部7が形成された容器本体4と、この容器本体4の開口部4aを覆う蓋体6とから構成され、また容器本体4と蓋体6とには、開口部4aを取り囲むように、フランジ部10,13がそれぞれ形成されている。一方、蓋体6の内面には、略四角形状の内方凸部14が形成されている。容器本体4および蓋体6は、ポリスチレンあるいはポリプロピレンなどの発泡合成樹脂により一体的に形成されたもので、蓋体6は容器本体4に対して肉薄なヒンジ8により開閉可能に連結されている。
【0037】
一方、容器本体4の内側底面4bには、図2(A)にも示したように、調味料Gを貯留するための貯留部として、複数本の貯留細溝部9が形成されている。
また、上記貯留細溝部9は、ヒンジ8の形成された方向と直角となる方向に複数本形成
されているが、ヒンジ8と同方向に形成されていても良い。さらに、貯留細溝部9は、複数形成する場合一定のピッチ毎に平行に形成されていることが好ましい。さらには、内側底面4bの両側、あるいはいずれか一方の片側に偏らせて形成しても良い。また、この実施例の貯留細溝部9は全て平行な直線から形成されているが、細溝部9は曲線状でも渦巻き状でも良く、また斜めでも放射状に形成されていても良い。あるいはギザギザ模様に形成されていても良く、これらが混在されていても良い。
【0038】
さらに、本実施例の貯留細溝部9は、図2(A),(B)に示したように、その幅Aは蒸煮大豆12の直径aより小さい幅に設定されている(なお、厳密には構成要件は異なるが、説明の都合上、符号12は、蒸煮大豆12と、この蒸煮大豆と納豆菌の混合物12と、発酵産物である納豆12である場合を含んでいる)。
【0039】
上記のように細溝部9の幅Aが設定されていれば、直径aの蒸煮大豆と納豆菌の混合物12が搬送中などに細溝部9内に落ち込むことは無く、蒸煮大豆と納豆菌の混合物12は、常に隙間を残して内側底面4bの上に配置される。
【0040】
また、細溝部9の深さBは、3mm〜10mmの範囲に設定されていることが特徴である。好ましくは5mmである。さらに、細溝部9の幅Aと深さBが上記のように設定されていれば、細溝部9は同一形状でなくても良く、例えば大小混在させても良い。
【0041】
また、特に幅Aが上記のように設定されていれば、調味料Gと蒸煮大豆と納豆菌の混合物12または納豆12とが搬送中などに接触することはない。また、幅Aが上記の範囲に設定されていれば、箸先が細溝部上を通過した場合などに、調味料と納豆を粘性成分により容易に混和することができる。
【0042】
そして、本実施例では、このように適量の調味料Gが予め貯留細溝部9内に収容されるとともに、その上に納豆菌が接種された蒸煮大豆と納豆菌の混合物12が収容される。蓋体6と容器本体4との嵌合に際しては、容器本体4の上面に形成された矩形枠状のフランジ10に対し、蓋体6に形成された同じく矩形枠状のフランジ13を突き合わせるように装着する。これにより、容器本体4内の収容凹部7内に収容された発酵前の蒸煮大豆と納豆菌の混合物12は、図3に示したように外部から隔離され、発酵工程を経てパック入り納豆となる。
【0043】
このように、本実施例では、調味料Gと納豆菌が接種された蒸煮大豆と納豆菌の混合物12とが予め容器本体4内に収容され、発酵室内に搬送されるとともに、この発酵室内で適宜な温度で発酵される。そして、発酵が完了した後に、発酵室から取り出される。
【0044】
さらに、図3に示したパック入り納豆の容器底面のうち外部に面した部分は、図のように凸凹があっても良く、また容器の形成に際して外部部分は平坦であり容器内部は凹形状であっても良く、外面形状は何ら限定されるものではない。
【0045】
いずれにしても、本実施例の納豆容器2によれば、食卓に上るまで調味料Gと蒸煮大豆12と、この蒸煮大豆と納豆菌の混合物12と、発酵産物である納豆12と、が互いに接触してしまうことを可及的に防止することができる。
【0046】
なお、本実施例で使用される調味料Gは、半固形状、あるいは粉末状であっても良いが、特には、半固形状のものが好ましく使用される。
また、半固形状の調味料とは、醤油のようなサラッとしたものではなく、適度な粘り成分があるもので、室温程度の温度であれば、周囲に容易に流れでるものではない。
【0047】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、直線状の貯留細溝部9が複数本形成されているが、これに代え、例えば、図4に示したように、大小異なる長さのS字のような曲線による細溝20を形成しても良い。また、貯留細溝部9は斜め、渦、あるいは放射状などであっても良い。この場合にも、幅Aと深さBは上記のように設定されることが好ましい。
【0048】
また、内側底面が平坦な貯留細溝部9に代え、図5(A)に示したように、断面四角形の溝の内側底面を半円状に膨出させた貯留細溝部22であっても良く、あるいは図5(B)に示したように、断面三角形状の貯留細溝部24であっても良い。
【0049】
さらに、上記実施例では、いずれも発泡合成樹脂製の納豆容器について説明したが、本発明は、紙カップ形状の納豆容器にも適用可能である。また、紙カップ形状の納豆容器は、紙製あるいは合成樹脂製であっても良い。
【0050】
また、納豆の調味料Gにカラシを含有させてもよく、あるいは、複数の貯留細溝部9を選択して、調味料とカラシとを別々に収容しても良い。
さらに、本実施例では、蓋体6の内方凸部14が容器本体4の内方に充分深く差し込まれるよう予め設定されているため、蒸煮大豆と納豆菌の混合物12の上にポリエチレンなどの被膜フィルムを介在させなくても、蓋体6の内方凸部14の底面で代替することができた。このような構造であっても蒸煮大豆表面の保湿性を確保することができた。上記のような納豆容器を用いて、実際にパック入り納豆を製造し評価試験を行った。
【0051】
すなわち、納豆の製造は上記に記載したように定法に従い、(1)浸漬工程、(2)蒸煮工程、(3)植菌工程、(4)充填工程/発酵工程/熟成工程により行ったが、調味料はゲル状のものを使用し、その添加は(4)充填工程の最初である蒸煮大豆と納豆菌の混合物を容器へ充填する直前に実施した。
容器底面には長さ65mmの直線上の細溝を8本設け、その幅は5mm、深さも5mmとした。
【0052】
最終的に製造された納豆製品は、従来品と変わりなく特に調味料の漏れなども見られなかった。
納豆を食する場合には、蓋体6を開き、箸で納豆12をかき混ぜ、納豆12から出る粘り成分が糸のようになって、その一部が細溝部9内に侵入し調味料Gと接触し、調味料Gを箸の動きに伴って取り出すことができ、これにより、納豆12に混ぜ合わすことができた。このとき、箸の動かし方を細溝部9に沿うように移動させれば、調味料Gを取り出すことができた。
【0053】
また、ゲル状調味料Gの取出し量を少なくしたい場合には、箸の動かし方を細溝部9に対して例えば直交する方向に移動させれば良いことも確認した。
また、研究員の官能検査(臭い・味、等)においても通常の納豆製品と変わりなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明の一実施例による納豆容器の斜視図である。
【図2】図2(A)は、図1の容器本体内の内側底面に形成した調味料の貯留細溝部の断面図で、図2(B)は蒸煮大豆の径を示す概略図である。
【図3】図3は、図1の納豆容器に蒸煮大豆が収容された状態での、すなわちパック入り納豆の断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例による納豆容器の概略図である。
【図5】図5(A)、(B)は、本発明のさらに他の実施例による細溝貯留部を示した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0055】
2 納豆容器
4 容器本体
4a 開口部
4b 内側底面
6 蓋体
7 収容凹部
8 ヒンジ
9 貯留細溝部
10,13 フランジ
12 蒸煮大豆または蒸煮大豆と納豆菌の混合物または納豆
14 内方凸部
20 貯留細溝部
22 貯留細溝部
24 貯留細溝部
A 貯留細溝部の幅
a 蒸煮大豆の径
B 細溝部の深さ
G 調味料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸煮大豆と納豆菌の混合物を収容するための収容凹部が形成された容器本体と、前記容器本体の開口部を覆うように形成された蓋体とを備えた納豆容器において、
前記収容凹部の前記蒸煮大豆と納豆菌の混合物が接触する内側底面に、調味料を貯留するための貯留細溝部が設けられていることを特徴とする納豆容器。
【請求項2】
前記貯留細溝部は、直線状、曲線状、渦巻き状、放射状のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の納豆容器。
【請求項3】
前記貯留細溝部の幅は、蒸煮大豆の直径より小さい幅に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の納豆容器。
【請求項4】
前記貯留細溝部の深さは、3mm〜10mmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の納豆容器。
【請求項5】
選別、洗浄がなされた原料大豆を浸漬する浸漬工程と、浸漬された大豆を蒸し煮する蒸煮工程と、蒸煮された蒸煮大豆に納豆菌を植菌する植菌工程と、植菌された蒸煮大豆と納豆菌の混合物を容器に充填する充填工程と、容器に充填された蒸煮大豆と納豆菌の混合物を発酵させる発酵工程と、発酵により形成された納豆を熟成させる熟成工程と、からなる納豆の製造方法において、前記容器として、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の納豆容器を使用するとともに、前記充填工程において、先ず、容器本体の内側底面に形成された貯留細溝部に調味料を収容し、その後、前記容器本体内に前記蒸煮大豆と納豆菌の混合物を収容したことを特徴とする納豆の製造方法。
【請求項6】
前記調味料は、半固形状であることを特徴とする請求項5に記載の納豆の製造方法。
【請求項7】
前記調味料は、粉体であることを特徴とする請求項5に記載の納豆の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法により製造されたパック入り納豆。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−116188(P2010−116188A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291004(P2008−291004)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【特許番号】特許第4322954号(P4322954)
【特許公報発行日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(392013763)くめ・クオリティ・プロダクツ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】