説明

純粋なシクロドデカノンの製法

本発明は、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物の製法に関するが、これは少なくとも、(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して組成物(A1)にし、(a2)組成物(A2)を得るために、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを組成物(A1)から分離し、(b)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理する工程を含み、その際Zは1、2、3又は4であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物の製法に関するが、これは少なくとも、(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する1種の環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種のオレフィン及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A1)にし、(a2)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A2)を得るために、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1)からの組成物(A1)から分離し、(b)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理する工程を含み、その際Zは1、2、3又は4であってよい。
【0002】
WO2008/000757A1には、C原子7〜16個を有する環状ケトンの製法が公開されているが、これは少なくとも、(a)少なくとも1個のC−C二重結合を有し、C原子7〜16個を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(I)を一酸化窒素を用いて酸化して組成物(A)にし、(b)組成物(A)を少なくとも1種の塩基で処理して組成物(B)を得る工程を含む。この文書には、工程(b)で組成物(A)を少なくとも1種の塩基で処理する前に酸化から得た組成物を蒸留により精製すべきであることは開示されていない。
【0003】
WO2008/000756A1には、C原子7〜16個を有する環状ケトンの製法が公開されているが、これは少なくとも、(a)少なくとも1個のC−C二重結合を有し、C原子7〜16個を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(I)を一酸化二窒素を用いて酸化して組成物(A)にし、(b)組成物(A)を少なくとも1種の塩基で処理して組成物(B)にし、(c)組成物(B)を少なくとも1種の触媒の存在で水素添加して組成物(C)にし、(d)工程(di)組成物Cを少なくとも1種の酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する少なくとも1種の触媒を用いて熱処理し、(dii)更に蒸留、抽出及び結晶化から成る群から選択した方法により精製する工程を少なくとも含む、組成物(C)の精製の工程を含む。この文書にも、酸化中に生じた特有の副生成物の含量を減少させるために、酸化から得た反応混合物を蒸留により精製することは開示されていない。
【0004】
WO2005/030690A2には、ケトン、特にシクロデカノンの製法が公開されているが、その際シクロドデカトリエンを一酸化二窒素と反応させてシクロドデカジエノンにし、得られたシクロドデカジエノンを水素添加して特にシクロドデカノンにする。この文書には、一酸化二窒素を用いる酸化から得た反応混合物を酸化中に生じた特有の副生成物の含量を減少させるために蒸留により精製するという環状ケトンの製法は開示されてない。
【0005】
WO2008/000754A1には、C原子7〜16個を有する環状ケトンを少なくとも含有する組成物(I)の精製法が公開されているが、これは組成物(I)を少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を用いて熱処理し、更に蒸留、抽出及び結晶化から選択した方法によって精製することを含む。前記文書には、酸化中に生成された特有の副生成物の含量を減少させるために酸化から得た反応生成物を蒸留により精製する、C原子7〜16個を有する環状ケトンを、相応するオレフィンの一酸化二窒素を用いる酸化によって製造する方法は開示されていない。
【0006】
公知技術から公知の環状ケトンの製法は、製造された環状ケトンの純度に関してなお改善する必要がある。公知技術の方法の欠点は、例えば、酸化中に生じた副生成物を完全に乃至はほぼ完全に分離することができない場合には、後の工程で障害となるか又は最終精製工程、例えば蒸留で所望の生成物から分離することができない化合物に変わることであり、それは環状ケトン中に含有される不純物、例えばアルデヒドは、官能基及び炭素原子数が似ているので、慣用の精製法、例えば蒸留、抽出又は再結晶によって除去することが極めて難しいからである。このことは、環状ケトンが高い純度の種々の用途に必要とされている限りは問題となる。例えばシクロドデカノンはラウリルラクタム、ドデカンジカルボン酸及びそれから誘導されるポリアミド、例えばナイロン12又はナイロン6.12を製造するための重要な中間生成物である。従ってこの場合には、例えば多段階蒸留及び/又は結晶化による非常に費用のかかる精製が必要である。それによってこれらの精製法は、費用がかかり、コスト高である。
【0007】
従って本発明の課題は、炭素原子7〜16個を有する環状ケトンを特に高い純度で得ることができる方法を提供することである。本発明のもう一つの課題は、付加的な装置の構築をできる限り僅かにするために、C原子7〜16個を有する環状ケトンの製造用の既存の設備又は装置を使用することができることである。
【0008】
この課題は、本発明によりケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物の製法によって解決されるが、この方法は、少なくとも工程:(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する1種の環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種のオレフィン及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A1)を得る工程、(a2)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A2)を得るために、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1)からの組成物(A1)から分離する工程、(b)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理する工程を含み、その際Zは1、2、3又は4であってよい。
【0009】
意外にも、特に副生成物、例えば使用した出発化合物より1個少ない環(Z−1個の環)を有する環状及び開鎖アルデヒド又は場合によりケト基を含有する副生成物を、これらの妨げになる副生成物の含量を減らすために、酸化から得た混合物を残留する出発物質の分離後に蒸留により精製することによって、同じか又は類似の数のC原子を有する環状ケトンを有する混合物から、選択的に減らすことができることを見出した。酸化直後の前記化合物の除去によって、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を特に高い純度で得ることができるが、これは本発明による工程(b)なしには得られない。
【0010】
更に、本発明による方法の工程(b)の前記化合物の蒸留による分離によって、所望の生成物から完全に分離することができない邪魔な化合物の生成を抑制することができる。
【0011】
本発明による方法によって、例えば少なくとも95%、有利には少なくとも98%の純度を有するC原子7〜16個及びケト基1個を有する環式化合物を得ることができる。純度は当業者に公知の全ての方法、例えばガスクロマトグラフィーにより測定することができる。本発明による方法のもう一つの利点は、存在する装置と簡単に組み合わせることができるので、費用のかさむ改造の必要がないことである。
【0012】
工程(a1)
(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する1種の環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を、一酸化二窒素を用いて酸化して、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種のオレフィン及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A1)を得る工程。
【0013】
工程(a1)による反応は通常、オレフィン及び一酸化二窒素が相互に反応する全ての方法工程により行うことができる。
【0014】
本発明による方法の工程(a1)で、環状オレフィンを一酸化二窒素と反応させることによって酸化することができる。その際に環状オレフィンと一酸化二窒素との反応用に少なくとも1種の好適な溶剤又は希釈剤を使用することができる。このようなものとしては特に環状アルカン、例えばシクロドデカン又はシクロドデカノン又は飽和脂肪族又は芳香族、場合によりアルキル置換された炭化水素が挙げられるが、その際、C−C二重結合もC−C三重結合もアルデヒド基も有さないという条件で、実質的には全ての慣用の溶剤及び/又は希釈剤が好適である。
【0015】
一般的に環状オレフィンと一酸化二窒素との反応で溶剤又は希釈剤の添加は必要ではない。
【0016】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応で温度は、有利には140〜350℃、更に有利には180〜320℃、特に有利には200〜300℃である。
【0017】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応は、各々前記限度内にある二つ以上の温度で又は二つ以上の温度範囲で実施することができる。反応中の温度変化は連続的に又は非連続的に行うことができる。
【0018】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応で圧力は、有利には選択した反応温度又は選択した複数の反応温度における出発混合物又は生成物混合物の固有の圧力より高い。圧力は有利には1〜1000バール、更に有利には40〜325バール、特に有利には50〜200バールである。
【0019】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応を各々前記限度内にある二つ以上の圧力又は二つ以上の圧力範囲で実施することができる。反応中の圧力変化は連続的又は非連続的に行うことができる。
【0020】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応用に使用可能な反応器に関しては特別な制限はない。特に反応はバッチ法で行ってもよいし、連続的方法で行ってもよい。従って反応器として少なくとも1個の内部及び/又は少なくとも1個の外部の熱交換器を有するCSTR(連続攪拌タンク反応器Continuous Stirred Reactor)、少なくとも1個の管型反応器、少なくとも1個の管束反応器又は少なくとも1個のループ反応器を使用することができる。これらの反応器の少なくとも一つを少なくとも二つの異なる帯域を有するような構造にすることもできる。このような帯域は例えば、反応条件例えば温度又は圧力及び/又は帯域の形状、例えば容積又は横断面において異なっていてよい。反応を2個以上の反応器中で行う場合には、2個以上の同じ種類の反応器を使用してもよいし、少なくとも2種類の異なる反応器を使用してもよい。
【0021】
環状オレフィンと一酸化二窒素との反応を唯一の反応器中で実施するのが有利である。例えば連続方法における反応が有利である。好適な反応器は例えばまだ公開されていない特許出願EP09151002.4に記載されている。
【0022】
環状オレフィンと一酸化二窒素の反応で少なくとも1個の反応器中の反応材料の滞留時間は、通常20時間までの範囲、有利には0.1〜20時間の範囲、更に有利には0.2〜15時間の範囲、特に有利には0.25〜10時間の範囲である。
【0023】
一酸化二窒素と環状オレフィンの反応に供給されるフィード中で一酸化二窒素と環状オレフィンのモル比は、通常0.05〜4の範囲、有利には0.06〜1の範囲、更に有利には0.07〜0.5の範囲、特に有利には0.1〜0.4の範囲である。
【0024】
少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環状オレフィンと一酸化二窒素の反応は、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物に関する非常に高い選択性で、環状オレフィンの変換率が50%までの範囲、有利には5〜30%の範囲、特に有利には10〜20%の範囲に達するように行うことができる。その際選択性は、Z個の環、C原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物に対して、通常少なくとも90%、有利には少なくとも92.5%、特に有利には少なくとも93%である。
【0025】
原則的に本発明により、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する全ての環状オレフィン又は各々少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する2種以上の異なる環状オレフィンから成る全ての混合物を一酸化二窒素と反応させることができる。
【0026】
本発明によれば組成"Z個の環"は、相応する前記化合物がZの数の環状単位を有することを表す。本発明によればZは、1、2、3又は4を表し、例えば有利な化合物(I)から(VIII)及び(XI)ではZは1であり、有利な化合物(IX)及び(X)ではZは2である。
【0027】
有利には環状オレフィンは本発明によればC−C二重結合2、3又は4個を有する。
【0028】
従って本発明はもう一つの実施態様により、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環式化合物の製法に関し、その際環状オレフィンはC−C二重結合3個を有する。
【0029】
本発明は、本発明による方法にも関するが、その際2個以上のC−C二重結合を有する少なくとも1種の環状オレフィンを、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエン、1,9−シクロヘキサデカジエン、1,8−シクロテトラデカジエン、1,6−シクロデカジエン、1,6,11−シクロペンタデカトリエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、ビニルシクロヘキセン及びその混合物から成る群から選択する。これらの本発明により使用可能な前記オレフィンは1個の環を有し、従ってこの場合にZは1である。もう一つの有利な化合物はノルボルナジエン及びエチリデンノルボルネンであり、ここでZは2である。
【0030】
下記に、可能な異性体の一つにすぎないが、1,5−シクロオクタジエン(I)、1,5−シクロドデカジエン(II)、1,9−シクロヘキサデカジエン(III)、1,8−シクロテトラデカジエン(IV)、1,6−シクロドデカジエン(V)、1,6,11−シクロペンタデカトリエン(VI)、1,5,9−シクロドデカトリエン(VII)、1,5,9,13−シクロヘキサデカテトラエン(VII)、ノルボルナジエン(IX)、エチリデンノルボルネン(X)、ビニルシクロヘキセン(XI)を図示する:
【化1】

【0031】
特に有利には環状オレフィンとして1,5,9−シクロドデカトリエン(VII)を使用する。1,5,9−シクロドデカトリエンは通常可能な全ての異性体で、例えばシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、シス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、オール−トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はオール−シス−1,5,9−シクロドデカトリエン、極めて特に有利にはシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを使用することができる。本発明による方法で前記異性体の混合物を使用することもでき、特に主としてシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する異性体混合物を使用してもよい。
【0032】
従って本発明は、有利な態様で前記したようなケトンの製法に関し、その際少なくとも2個の二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環状オレフィンはシクロデカトリエン、有利には1,5,9−シクロドデカトリエン、特に有利にはシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンである。
【0033】
本発明による方法で有利に使用されるシクロドデカトリエンは、通常全ての当業者に公知の方法によって得られる。有利な態様ではシクロドデカトリエンはブタジエンの三量体化によって得られる。
【0034】
従って本発明はもう一つの態様により、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環状ケトンの前記したような製法にも関し、その際少なくとも2個の二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環状オレフィンはブタジエンから三量体化により製造したシクロドデカトリエンである。
【0035】
1,5,9−シクロドデカトリエンは、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版(2000)、Electronic Release、Wiley VCH、1〜4頁中のT.Schiffer、G.Oenbrnk"Cyclododecatriene,Cyclooctadiene,and 4−Vinylcyclohexene"に記載されているように、例えば純粋な1,3−ブタジエンの三量体化によって製造することができる。この方法では、例えばLiebigs Ann.Chem.681(1965)10〜20頁中のH.Weberその他著"Zur Bildungsweise von cis,trans,trans−Cyclododecarien−(1.5.9) mittels titanhaltiger Katalysatoren"に記載されているように、例えばチーグラー触媒の存在における三量体化でシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、シス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン及びオール−トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンが生成する。シクロドデカトリエンは、例えばDE1283836により、例えば1,3−ブタジエンをチタン−又はニッケル触媒の使用下で三量体化することによって製造することができる。
【0036】
原則として三量体化用に好適な全てのチタン触媒を使用することができるが、Weberその他の論文に記載されている四塩化チタン/エチルアルミニウムセスキクロライド触媒が特に好適である。
【0037】
原則として三量体化用に好適な全てのニッケル触媒を使用することができるが、DE1283836に記載されているビス−シクロオクタジエニルニッケル/エトキシジエチルアルミニウム触媒が特に好適である。
【0038】
三量体化用に使用されるブタジエンは、特に有利には、ガスクロマトグラフィーで測定して少なくとも99.6%、更に有利には少なくとも99.65%の純度を有する。特に有利には使用される1,3−ブタジエンは検出精度の範囲で1,2−ブタンジエン及び2−ブテンを全く含まない。
【0039】
この三量体化から通常、少なくとも95質量%、有利には少なくとも96質量%及び更に有利には少なくとも97質量%のシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する混合物が得られる。特に有利には混合物は、ほぼ98質量%のシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する。このシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する混合物は、そのまま工程(a)による本発明による反応に使用することができる。また少なくとも1種の好適な方法により、例えば有利には少なくとも1種の蒸留によって、シス,トランス、トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを混合物から分離して、工程(a)による反応で使用することもできる。
【0040】
本発明による方法の極めて特に有利な態様によれば、シクロドデカトリエンとして主としてシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン、トランス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン又はシス,シス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する異性体混合物を使用する。有利には、異性体混合物に対して60質量%より多い、更に有利には70質量%より多い、特に80質量%より多い、特に有利には90質量%より多い、例えば91質量%より多い、92質量%より多い、93質量%より多い、94質量%より多い、95質量%より多い、96質量%より多い、97質量%より多い又は98質量%より多い、シス,トランス、トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを含有する異性体混合物を使用する。
【0041】
本発明により使用可能なオレフィンは、例えば下記文献箇所に記載の方法によって製造することができる:
(I)シクロ−1,5−ジエンは、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版(2000)、Electronic Release、Wiley VCH中のT.Schiffer、G.Oenbrnk"Cyclododecatriene,Cyclooctadiene,and 4−Vinylcyclohexene"に記載されているように、化合物(VII)の合成で副生成物として得られる。
(II)シクロドデカ−1,5−ジエンは、例えばUS3182093に記載されているように、例えば化合物(VII)の接触還元によって得ることができる。
(III)シクロヘキサデカ−1,9−ジエンは、例えばEP1288181に記載されているように、シクロオクテンの複分解によって得ることができる。
(IV)シクロテトラデカ−1,8−ジエンは、例えばS.Warwel、H.Kaetker、Synthesis(1987)(10)、935−7に記載されているように、シクロヘプテンの複分解によって得ることができる。
(V)シクロデカ−1,6−ジエン、有利にはシス,シス−異性体は、例えばDE1230023に記載されているように、シス,トランス−シクロデカ−1,5−ジエンの異性体化によってえることができる。
(VI)シクロペンタデカデカ−1,6,11−トリエンは、例えばDD115480に記載されているように、シクロペンテンのシクロオリゴマー化によって得ることができる。
(VII)(I)参照
(VIII)シクロヘキサデカ−1,5,9,13−テトラエンは、例えばU.M.Dzhemilev、L.Yu.Gubaidullin、G.A.Tolstikov、Zhurnal Organicheskoi Khimii(1976)、12(1)、44−6に記載されているように、ブタジエンの四量体化によって得ることができる。
(IX)ノルボルナジエンは、例えばUS2875256に記載されているように、シクロペンタジエンとアセチレンの反応によって得ることができる。
(X)エチリデンノルボルネンは、例えばEP0279397に記載されているように、5−ビニル−2−ノルボルネンの塩基触媒による転位によって得ることができる。
(XI)4−ビニルシクロヘキセンは、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版(2000)、Electronic Release、Wiley VCH 1−4頁中のT.Schiffer、G.Oenbrnk"Cyclododecatriene,Cyclooctadiene,and 4−Vinylcyclohexene"に記載されているように、化合物(VII)の製造で副生成物として得ることもできる。
【0042】
Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する1種の環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)の一酸化二窒素を用いる本発明による反応から、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィン及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A1)が得られる。
【0043】
通常工程(a1)によるシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンと一酸化二窒素の本発明による有利な反応から、異性体シス,トランス−シクロドデカ−4,8−ジエノン、トランス,シス−シクロドデカ−4,8−ジエノン及びトランス,トランス−シクロドデカ−4,8−ジエノンの少なくとも二つを、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環式化合物として含有するシクロドデカ−4,8−ジエノン−異性体混合物が生じる。
【0044】
有利には本発明により、トランス,シス−及びシス,トランス−異性体がほぼ同じ量で生成され、トランス,トランス−異性体が二つの異なる異性体に比してごく僅かな量で生成される異性体混合物が得られる。従って例えば代表的な異性体混合物は、前記異性体をモル比約1:1:0.08で有する。
【0045】
組成物(A1)中に含有されるケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物は、本発明による方法の工程(a)の所望の生成物である。有利には基幹としてZ個の環及びC原子7〜16個及び3個の二重結合を有する少なくとも1種の環式化合物を使用するので、特に有利な生成物として本発明による方法の工程(a)でこれらの二重結合の一つの酸化によって2個の二重結合及びケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物が生成される。もう一つの有利な態様では、工程(a)からこの生成物をなお次の工程で水素添加することによってZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の飽和環式化合物、特にシクロドデカノンに変える。
【0046】
組成物(A1)は本発明ではケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を、通常5質量%より多く、有利には10質量%より多く、有利には10〜90質量%、特に11〜50質量%、特に特別には12〜40質量%、特に有利には13〜30質量%、例えば14〜20質量%又は15〜18質量%の量で含有する。
【0047】
本発明によれば組成物(A1)中に、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィン及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物も少なくとも存在する。
【0048】
組成物(A1)中に存在する少なくとも2個のC−C−二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンは、酸化前に組成物(A)中で出発化合物として使用されたものと同じ化合物である。従って組成物(A1)中の少なくとも2個のC−C−二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンは、本発明による方法の工程(a1)で酸化されなかった残留出発物質である。本発明によれば組成物(A1)中の少なくとも2個のC−C−二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンは、出発物質として使用されたものと同じ異性体構造で存在しうる。有利な態様では組成物(A1)中で少なくとも2個のC−C−二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンに関して、工程(a1)で使用された出発物質とは若干異なる異性体比で存在する。これは例えば個々の異性体の異なる反応性によるものであり、例えばオール−トランス−異性体はシス,トランス、トランス−異性体より迅速に反応し、これはまたシス,シス,トランス−異性体より若干迅速に反応する。
【0049】
組成物(A1)中に存在する少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物は、出発物質として使用された少なくとも2個の二重結合を有するオレフィンから二重結合の酸化解裂によって生じる。
【0050】
前記したようにZは前記化合物中に存在する環の数を表すので、式"Z−1個の環"は記載化合物中でZ個の環を含有する化合物より1個少ない環が存在することを表す。化合物は本発明により例えば開環反応によって出発物質より1個少ない環を含有することができる。
【0051】
本発明による方法の工程(a1)で場合により少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物が副生成物として生成される。少なくとも1種の副生成物は工程(a1)で使用した出発物質と同じ数の環を有する。この少なくとも1種の化合物は、有利には環収縮によって生じる少なくとも1個のアルデヒドを有する環式化合物である。
【0052】
少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物は、組成物(A)中で通常0.1〜50.0質量%、有利には0.5〜10.0質量%、特に有利には1.0〜5.0質量%の量で存在する。
【0053】
本発明による方法で出発物質として、1,5,9−シクロドデカトリエン、特にシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエン(Z=1)を使用する有利な場合には、少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物として、特に有利にはアルデヒド基1個及び二重結合3個を有する非環式化合物の異性体混合物、例えば4,8,11−ドデカトリエナールの混合物、例えばシス,トランス−、トランス,シス−、トランス,トランス−異性体の混合物が、例えば50:45:5の近似比で得られる。シス,トランス−異性体を化合物(XIII)として図示する:
【化2】

【0054】
出発物質用にZが1であるこの有利な場合には、Z−1個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも1個のアルデヒド官能基を有する少なくとも1種の化合物は、Z−1で1−1=0であるので、環を何も有さない。
【0055】
本発明による方法の有利な態様では、工程(a1)で得られる組成物(A1)は付加的に少なくとも2個のケト基を有し、C環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する。これらの化合物は、出発物質として使用された少なくとも2個の二重結合を有するオレフィンから、2個の存在する二重結合を一酸化二窒素で酸化することによって生じる。少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種のこれらの環式化合物は、有利な態様では組成物(A1)中に通常0.1〜20.0質量%、有利には0.5〜10.0質量%、特に有利には1.0〜5.0質量%の量で存在する。
【0056】
本発明による方法で出発物質として、1,5,9−シクロドデカトリエン、特にシス,トランス,トランス−1,5,9−シクロドデカトリエンを使用する有利な場合には、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物として、特に有利には2個のケト官能基及び1個の二重結合を有する環式化合物の異性体混合物、特にシクロドデセンジオン、例えば8−シス−シクロドデセン−1,5−ジオン−、9−シス−シクロドデセン−1,6−ジオン−、8−シス−シクロドデセン−1,4−ジオン−、8−トランス−シクロドデセン−1,5−ジオン−、8−トランス−シクロドデセン−1,4−ジオン−及び9−トランス−シクロドデセン−1,6−ジオン−異性体の混合物が、例えば38:19:19:12の近似比で、得られる。主異性体として生成される8−シス−シクロドデセン−1,5−ジオン−異性体を化合物(XII)として図示する:
【化3】

【0057】
従って本発明は有利な態様で、少なくとも下記の工程を含む本発明による方法に関する:(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィン及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A1)を得る工程、(a2)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A2)を得るために、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1)からの組成物(A1)から分離する工程、(b)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、0.3質量%より少ない少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理する工程。
【0058】
前記所望生成物、前記副生成物及び未反応出発物質の他に、組成物(A1)は、通常その他の化合物、特に有機化合物、例えば酸素含有基を有する有機化合物、例えばアルコール、アルデヒド又はエポキシドを含有する。その際有機化合物は特に組成物(A1)中に含有される環状ケトンと同じ数又は異なる数のC原子を有することができる。組成物(A1)中に前記成分に付加的に反応しなかった一酸化二窒素及び生成された窒素が存在しうる。従って工程(a1)は特に有利な態様で、(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィン及び一酸化二窒素及び窒素を少なくとも含有する組成物(A1)を得る工程を含む。
【0059】
本発明で工程(a1)で一酸化二窒素は純粋な形で使用してもよいし、一酸化二窒素を含有する気体混合物の形で使用してもよい。
【0060】
原則として本発明による方法の工程(a1)で一酸化二窒素を含有する全ての気体混合物を使用することができる。本発明によれば一酸化二窒素を含有する気体混合物を工程(a)で使用前に精製するか又は濃縮することもできる。好適な精製法には、例えば有機溶剤又は水中における気体混合物の吸収、負荷した有機溶剤又は負荷した水からの気体混合物の脱着及び気体混合物中の酸化窒素NOの含量の気体混合物の全容量に対して高くとも0.01〜0.001容量%への調節が含まれる。このような方法は、例えばDE102004046167.8に記載されているが、これに関するその内容は本出願内容に組み込む。
【0061】
その際、使用される一酸化二窒素を含有する気体混合物は原則として全ての任意の由来のものであってよい。特に一酸化二窒素源として、WO2006/032502、WO2007/060160及びWO2008/071632及びまだ未公開の出願EP08153953.8及びEP08153952.0に記載されているように工程の排ガスを使用することができる。
【0062】
用語"気体混合物"は、本発明で使用されているように、周囲圧及び周囲温度で気体の状態である2種以上の化合物の混合物である。異なる温度又はその他の圧力では気体混合物もその他の態種、例えば液体であってもよく、本発明では引き続き気体混合物と称する。
【0063】
本発明によれば異なる排ガスの混合物を使用することもできる。
【0064】
本発明のもう一つの有利な態様によれば、少なくとも1種の一酸化二窒素を含有する排ガスは、アジピン酸装置、ドデカン二酸装置、ヒドロキシルアミン装置及び/又は硝酸装置に由来し、その際後者は有利にはアジピン酸装置、ドデカン二酸装置、グリオキサル装置又はヒドロキシルアミン装置の少なくとも1種の排ガスを用いて操作する。
【0065】
本発明によれば気体混合物は気体で使用することができる。しかし一酸化二窒素を含有する気体混合物を先ず、気体混合物又は一酸化二窒素が液体又は臨界形で存在するように処理し、それから使用することもできる。気体混合物又は一酸化二窒素を圧力又は温度の好適な選択によって液化させることができる。本発明では気体混合物を溶剤に溶解させることもできる。
【0066】
Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個の二重結合を有する環状オレフィンと一酸化二窒素の工程(a1)による反応は、原則として触媒の存在で行うことができるが、触媒の添加なしに行ってもよい。
【0067】
工程(a1)で得られた組成物(A1)は、工程(a1)に引き続いて本発明による工程(a2)で処理する。
【0068】
有利な態様では、組成物(A1)を工程(a2)で使用する前に、なお存在する気体の出発物質又は生成物、例えば反応しなかったNO又は生成したNを除去するために、工程(a1)から得た組成物(A1)を工程(a1b)で減圧する。減圧は当業者に公知方法により、例えば組成物(A1)を低い圧力にした室へ移すことによって行うことができる。
【0069】
従って本発明による方法は有利には工程(a1b)を含む。
(a1b)一酸化二窒素及び窒素を除去し、実質的に一酸化二窒素及び窒素不含である組成物(A1)を得るための組成物(A1)の減圧。
【0070】
工程(a2):
(a2)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A2)を得るために、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1)からの組成物(A1)から分離する工程。
【0071】
本発明による方法の工程(a2)で、組成物(A2)を得るために、工程(a1)で酸化反応で反応されなかった本発明による方法の出発物質を組成物(A1)から分離する。
【0072】
工程(a2)は当業者に公知の全ての方法により行うことができる。有利な態様で本発明による方法の工程(a2)で、例えば反応しなかった出発物質、即ち少なくとも2個のC−C結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを、生成物流から分離し、これを有利に本発明による方法の工程(a1)に戻すために、蒸留を行う。
【0073】
有利な態様では、工程(a2)の蒸留用に当業者に公知の充填物を有する簡単な蒸留塔を使用する。本発明による方法の工程(a2)の蒸留は、有利には真空、例えば≦1000ミリバール、有利には≦500ミリバール、特に有利には≦300ミリバールで実施する。出発物質としてC原子12個を有するオレフィン化合物を使用する本発明による有利な場合用には、工程(a2)を有利には圧力≦120ミリバール、特に有利には≦70ミリバール、極めて特に有利には≦60ミリバールで実施する。本発明によれば当業者に公知の蒸留塔を使用することができ、少なくとも20段、有利には少なくとも25段、特に有利には少なくとも30段の理論分離段を有するようなものが有利である。もう一つの有利な態様では、分離段の35〜55%が蒸留塔のストリッピング部に存在する。還流比は、出発物質としてC原子12個を有するオレフィン化合物を使用する有利な態様では、1〜2、有利には1.2〜1.8である。その他の前記出発物質では還流比は当業者によって調節することができる。
【0074】
この蒸留の塔頂生成物として、実質的に純粋な出発物質、即ち少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンが得られ、これは特に有利な態様では本発明の方法の工程(a1)の基質として戻す。
【0075】
工程(a2)で前記蒸留で得られる塔頂生成物は主として前記組成物(A2)である。
【0076】
組成物(A1)が、Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のケト基を有する少なくとも1種の環式化合物も含有する本発明による方法の有利な態様では、本発明による方法の工程(a2)で、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有しZ−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A2)が得られる。
【0077】
工程(b):
本発明による方法の工程(b)には、(b)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)の蒸留による処理が含まれる。
【0078】
組成物(A1)がZ個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のケト基を有する少なくとも1種の環式化合物も含有する本発明による方法の有利な態様では、本発明による方法の工程(b)で、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、0.5質量%より少ない少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(B)が得られる。
【0079】
量データは、各々全組成物(B)に関する。本発明は特に、前記組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理することから成る。
【0080】
その際本発明により重要なことは、組成物(B)が、各々全組成物(B)に対して、1.0質量%より少ない、有利には0.5質量%より少ない、特に有利には0.2質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物、特に前記ドデカトリエナール異性体を含有することである。
【0081】
特に有利な態様では、組成物(B)は各々全組成物(B)に対して、0.5質量%より少ない、有利には0.3質量%より少ない、特に有利には0.25質量%より少ない、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、特に前記シクロドデセンジオン−異性体及び1.0質量%より少ない、有利には0.5質量%より少ない、特に有利には0.2質量%より少ない、少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物、特に前記ドデカトリエナール異性体を含有する。
【0082】
従って、本発明により重要なことは、少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を本発明による方法の工程(b)で特に僅かな、前記量に減少させることである。本発明による方法の特に有利な態様では、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物の両方を各々特に僅かな、前記量に減少させる。
【0083】
有利な態様では、本発明による方法の工程(b)を少なくとも2個の蒸留塔で実施する。特に有利な態様では、工程(a2)からの組成物(A2)を第1工程で簡単な蒸留塔(T1)中で処理する。その際有利には、主として少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物から成り、場合により最高35質量%、有利には最高30質量%、特に有利には最高25質量%の少なくとも2個のケト基を有し、C環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する塔頂流(K1)が得られる。更に残りの全ての成分を含有し得る塔底流(S1)が得られる。
【0084】
蒸留塔(T1)としては当業者に好適であると公知の全ての塔を使用することができる。有利な態様では、塔(T1)は少なくとも10段、特に有利には15段、極めて特に有利には20段の理論分離段を有する。その際、分離段の多くが、例えば少なくとも50%の分離段が塔の精留部に存在するのが更に有利である。蒸留塔(T1)中の蒸留は有利には大気圧より下の圧力で、例えば出発物質としてC原子12個を有するオレフィン化合物を使用する特に有利な場合用には、50ミリバールより低い、特に有利には25ミリバールより低い塔頂圧で行う。本発明により使用可能なその他の化合物用に好適な圧力は当業者によって求めることができる。蒸留塔(T1)における蒸留は、出発物質としてC原子12個を有するオレフィン化合物を使用する有利な場合には、有利には120〜220℃、特に有利には150〜200℃の塔底温度で行う。本発明により好適なその他の出発生成物用には蒸留温度は、調節された圧力も考慮して、当業者によって選択することができる。
【0085】
本発明による方法の工程(b)のもう一つの有利な態様では、第1蒸留塔(T1)からの塔底流(S1)を少なくとも1個のその他の簡単な蒸留塔(T2)で処理する。その際有利な態様では、少なくとも1個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する塔頂流(K2)が得られる。この塔頂流(K2)は有利な態様では少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する化合物を実質的に全く含有しない、即ち1.0質量%より僅かにしか、有利な態様では最高でも0.2質量%しか含有しない。本発明による方法のT2の第2の蒸留(工程(b))で更に塔底流(S2)が得られるが、これは少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び工程(a1)による酸化のその他の副生成物を含有し、最高40質量%、有利には最高25質量%のケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する。
【0086】
蒸留塔(T2)として当業者に好適であると公知の全ての塔を使用することができる。有利な態様では、塔は少なくとも30段、特に有利には少なくとも35段の分離段を有する。更に有利な態様では、分離段の多くがストリッピング部に存在し、特に有利には少なくとも28段の理論分離段がストリッピング部に存在する。蒸留塔(T2)における蒸留は有利には大気圧より下の圧力で、出発物質としてC原子12個を有するオレフィン化合物を使用する特に有利な場合用には、例えば≦50ミリバール、特に有利には≦25ミリバールの塔頂圧で実施する。蒸留塔(T2)における蒸留は、C原子12個を有するオレフィン化合物を使用する有利な場合には、有利には120〜220℃、特に有利には150〜200℃の塔底温度で行う。本発明により好適なその他の出発物質用には温度は、調節された圧力も考慮して、当業者によって選択することができる。
【0087】
本発明によれば蒸留塔(T1)及び(T2)は反対の順序で操業することもでき、即ち第1塔中で少なくとも1個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を塔頂を介して分離し、第2塔で少なくとも1個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する精製された少なくとも1種の環式化合物を塔底を介して分離することもできる。
【0088】
極めて特に有利には本発明による方法の工程(b)で2個の蒸留塔(T1)及び(T2)の代わりに単一の分離壁塔を使用する。
【0089】
本発明によれば本発明の方法の工程(b)で本分離問題にとって当業者が好適であると思われる全ての分離壁塔を使用することができる。
【0090】
有利な態様では、有利には少なくとも三つの帯域を有する連続的分離壁塔を使用する。有利には分離壁塔は、有利には少なくとも2段、特に有利には少なくとも4段の理論段を有する一つの下部帯域を有する。更に有利に使用される分離壁塔は、有利には少なくとも15段、特に有利には少なくとも25段の理論段を有する中間部を有する。その他の有利な態様では、使用される分離壁塔は、有利には少なくとも4段、特に有利には少なくとも7段の理論段を有する上部を有する。中間部は、有利に中間に配置された分離壁によって入口−及び出口区画に分割されている。
【0091】
更に有利な態様では、分離壁塔には好適な充填物が装填されている。好適な塔充填物は、例えばJ.F.Fair著"Handbook of Separation Process Technology"、R.W.Rousseau(発行)、John Wiley&Sons、295〜312頁から当業者に公知である。
【0092】
分離塔で蒸留する際に温度をできる限り低く保つために、有利には大気圧より下の圧力で、例えば500ミリバールより低い、有利には200ミリバールより低い、特に100ミリバールより低い、極めて特に有利には50ミリバールより低い分離壁塔内部圧で操作する。塔底と塔頂の圧力差は、有利には50ミリバールより僅かであり、特に有利には30ミリバールより僅かである。
【0093】
分離壁塔中で蒸留は有利には150〜220℃、特に有利には160〜200℃の塔底温度で行う。組成物(B)を有利に取出す側部排出口の温度は、有利には110〜180℃、特に有利には130〜170℃である。分離壁塔の塔頂温度は、有利には80〜150℃、特に有利には100〜135℃である。これらの値は特に、出発物質としてC原子12個を有するオレフィン化合物を使用する有利な場合に当てはまり、本発明により使用可能なその他の出発物質に関しては、これらの値は当業者によって適切に決めることができる。
【0094】
分離壁塔の塔頂を介して有利には組成物(A2)の低沸点成分を塔頂流(K3)として分離する。有利な態様では塔頂流(K3)は少なくとも30質量%、特に有利には少なくとも50質量%、極めて特に有利には少なくとも70質量%のZ−1個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも1個のアルデヒド基を有する少なくとも1種の化合物を含有する。
【0095】
分離壁塔の塔底を介して有利には組成物(A2)の高沸点成分を塔底流(S2)として分離する。有利な態様では塔底流(S2)は、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び工程(a1)による酸化のその他の副生成物を含有するが、しかし最高40質量%、有利には最高25質量%のケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する。
【0096】
分離壁塔の側鎖排出口を介して組成物(B)が得られる。
【0097】
本発明による方法の工程(b)による蒸留処理後に、主として所望の生成物、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する組成物(B)が得られる。
【0098】
更に本発明による組成物(B)中には場合により副生成物として、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物が前記した僅かな量で存在する。
【0099】
特に工程(b)の、本発明による方法の利点は、組成物(A2)の蒸留による処理によって少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物の非常に僅かな含量を有する組成物(B)が得られることである。工程(a1)による酸化のこの副生成物が、本発明によって可能であるより高い量で存在する場合には、公知方法で一般的であるように、方法の後の経過で次の不都合が生じる。
【0100】
Z−1個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも1個のアルデヒド基を有する少なくとも1種の化合物が本発明による工程(b)によって分離されない場合には、場合により実施される水素添加によって相応する飽和アルデヒド基又はヒドロキシ基を有する化合物、特に有利には例えばドデカナール及び/又はドデカノールが生成される。これらの副生成物は、所望の主生成物がシクロドデカノンである有利な場合には、通常の方法によって分離することが非常に困難であるので、高純度の生成物を得ることができない。
【0101】
本発明による方法の工程(a1)による酸化で所望の生成物の他に特に少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物が生成される場合には、更に次の副反応が起こる。
【0102】
塩基の影響下で前記ジケトンは非常に簡単に分子内アルドール反応を起こす。従って塩基性条件下で例えば、約38%で本発明による方法の工程(a1)で有利に生成されるジケトンの主異性体であるシス−シクロドデセ−8−エン−1,5−ジオン(XII)は、(Z)−3,4,5,6,7,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾシクロオクテン−1−オン(XIV)に変わる。場合によって行われる次の水素添加でこれをデカヒドロベンゾシクロオクテン−1−オン(XV)に変える。
【0103】
【化4】

【0104】
デカヒドロベンゾシクロオクテン−1−オン及びその他のシクロドデセンジオンから生成される類似の二環式C12−ケトンは、シクロドデカノンの沸点に近い沸点を有するので、最後の蒸留による精製によって、この所望の生成物を所望の高い純度で得ることが難しいか又は不可能である。本発明により使用されるその他の出発物質も蒸留により分離することが極めて難しい相応する副生成物を生じる。
【0105】
例えばシクロオクタ−1,5−ジエン(I)の使用では下記の副生成物が得られる:
【化5】

【0106】
本発明による方法のこの特別な態様では、NOを用いる酸化で、所望の不飽和モノケトン(a)、二つのジケトン(b1)及び(b2)(これらはZ個の環及びC原子7〜16個及び2個のケト基を有する少なくとも1種の環式化合物に相応する)及びアルデヒド(c)(これはアルデヒド基1個を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物に相応する)から成る混合物が生成される。ケトン(b2)は非常に簡単に分子内アルドール縮合を起こしやすく(部分的には既に熱負荷だけによって)(d)が生成される。有利には本発明の工程(b)によって、ジケトンが分離されない場合には、(d)が生成され、これは次いで水素添加されて(f)になる。水素添加後に全方法の所望の生成物である(e)及び(f)の沸点は非常に近似しており(各々12トールでe:74℃及びf:72℃)、これによって(e)の精製は極めて困難になる。
【0107】
酸化反応から得られる反応混合物を含有するジケトンを先ず水素添加する公知技術から公知の方法は、同様の欠点を有する。水素添加によって、不飽和ジケトン、例えば前記シクロデセンジオン(XII)から相応する飽和化合物、例えばシクロドデカンジオン、特にシクロドデカン−1,5−ジオン(XVI)が得られる。場合により実施される反応混合物の触媒の存在における熱処理の条件下で、例えばWO2008/000754に記載されているように、例えば50%で生成されたシクロドデカンジオンにおける主異性体であるシクロドデカン−1,5−ジオン(XVI)は3,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−(2H)−ベンゾシクロオクテン−1−オン(XVII)に変わる。
【0108】
【化6】

【0109】
化合物(XVII)は、同じく有利に所望される貴重な生成物シクロドデカノンと非常に近い沸点を有するので、蒸留による分離が難しいか又は不可能である。
【0110】
本発明による方法の工程(b)によって、酸化の前記副生成物、例えば不飽和アルデヒド及び場合によりジケトンを反応混合物から徹底的に分離することができるので、前記した不所望な副反応が全くか又はごく僅かな程度でしか起こらず、従って分離が難しいか又は分離できない化合物が全く又は僅かな量でしか生じない。
【0111】
工程(c):
本発明による方法のもう一つの有利な態様では、工程(b)に引き続いて少なくとも下記工程(c)を行う:
(c)組成物(C)を得るための少なくとも1種の触媒の存在における組成物(B)の水素添加。
【0112】
ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物のどのレジオイソマー、例えばシクロドデカジエノン又はケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも2種のレジオイソマーの環式化合物から成るどの化合物が、工程(a)による一酸化二窒素との本発明による反応及び工程(b)による蒸留処理から得られるかに無関係に、これらの化合物は例外なく少なくとも1個の残留する、即ち酸化されなかった二重結合を含有し、これを本発明による方法の場合による工程(c)で、Z個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の飽和環式化合物を含有する組成物(C)を得るために、水素添加する。
【0113】
本発明による方法の工程(c)の特に有利な態様によれば、シクロドデカ−4,8−ジエノンを水素添加してシクロドデカノンにする。従って本発明は前記したような方法にも関し、その際工程(a1)によるシクロドデカトリエンと一酸化二窒素との反応、工程(a2)による処理及び工程(b)による蒸留処理から得たシクトドデカジエノンを工程(c)で水素添加してシクロドデカノンにする。
【0114】
組成物(B)、特に有利にはシクロドデカ−4,8−ジエノンの水素添加用に、好適な全ての触媒を使用することができる。特に少なくとも1種の均一系又は少なくとも1種の不均一系又は少なくとも1種の均一系及び少なくとも1種の不均一系触媒を使用することができる。
【0115】
有利には使用可能な触媒は、元素の周期系の第7、第8、第9、第10又は第11副族からの少なくとも1種の金属を含有する。更に有利には、本発明により場合による工程(C)で使用可能な触媒は、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu及びAuから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有する。特に有利には、本発明により使用可能な触媒は、Fe、Ni、Pd、Pt及びCuから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有する。特別に有利には本発明により使用される触媒はPdを含有する。
【0116】
本発明による方法の場合による工程(c)で有利に使用される均一系触媒は、第8、第9又は第10副族の少なくとも1種の元素を含有する。Ru、Rh、Ir及び/又はNiを含有する均一系触媒が更に有利である。その際例えばRhCl(TTP)又はRu(CO)12が挙げられる。Ruを含有するような均一系触媒が特に有利である。例えばUS5180870、US5321176、US5177278、US3804914、US5210349、US5128296、US B316917及びD.R.Fahey、J.Org.Chem.38(1973)80−87頁に記載されているような、均一系触媒を使用するが、これらの公開当該部分は本発明の内容に全て組み入れる。このような触媒は例えば(TPP)(CO)Ru、[RU(CO)、(TPP)Ru(CO)Cl、(TPP)(CO)RuH、(TPP)(CO)RuH、(TPP)(CO)RuClH又は(TPP)(CO)RuClである。
【0117】
本発明による方法の場合による工程(c)で少なくとも1種の不均一系触媒を使用するのが特に有利であるが、その際金属として前記金属の少なくとも1種をそのまま、ラネー触媒として及び/又は慣用の担体上に塗布して使用することができる。有利な担体材料は例えば活性炭又は酸化物、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン又は酸化ジルコニウムである。同じく特に担体材料としてベントナイトも挙げられる。2種以上の金属を使用する場合には、これらは別々に又は合金として存在することができる。その際、少なくとも1種の金属をそのままで及び少なくとも1種のその他の金属をラネー触媒として、又は少なくとも1種の金属をそのままで及び少なくとも1種のその他の金属を少なくとも1種の担体上に塗布して、又は少なくとも1種の金属をラネー触媒として及び少なくとも1種のその他の金属を少なくとも1種の担体上に塗布して、又は少なくとも1種の金属をそのまま及び少なくとも1種のその他の金属をラネー触媒として及び少なくとも1種のその他の金属を少なくとも1種の担体上に塗布して、使用することができる。
【0118】
本発明による方法の場合による工程(c)で使用される触媒は、例えばいわゆる沈澱触媒であってもよい。このような触媒は、その触媒活性成分をその塩溶液、特に硝酸塩及び/又は酢酸塩の溶液から、例えばアルカリ金属−及び/又はアルカリ土類金属水酸化物−及び/又は炭酸塩溶液、例えば難溶性水酸化物、酸化水和物、塩基性塩又は炭酸塩の溶液の添加によって、沈澱させ、得られた沈澱を次いで乾燥させ、次いでこれを通常300〜700℃、特に400〜600℃でか焼することによって相応する酸化物、混合酸化物及び/又は混合価数の酸化物に変え、これを水素又は水素を含有する気体で通常50〜700℃、特に100〜400℃の範囲で処理することによって還元して該当する金属及び/又は低酸化段階の酸化物の化合物にし、本来の触媒作用形に変えることによって、製造することができる。その際、原則として水がもはや全く生成されなくなるまで還元する。担体材料を含有する沈澱触媒の製造では、触媒活性成分の沈澱は当該担体材料の存在で行うことができる。触媒活性成分は有利には担体材料と同時に当該塩溶液から沈澱させることができる。
【0119】
有利には本発明による方法の場合による工程(c)で水素添加触媒を使用するが、これは水素添加の触媒作用を有する金属又は金属化合物を担体材料上に沈着させた状態て含有する。
【0120】
触媒活性成分の他になお付加的に担体材料を含有する前記沈澱触媒の他に、本発明による方法用に通常、水素添加触媒作用を有する成分を例えば担体上に含浸により塗布してあるような担体材料が好適である。
【0121】
触媒活性金属を担体上に塗布する方法は、原則として重要でなく、種々の方法で行うことができる。触媒活性金属をこれらの担体材料上に、例えば当該元素の塩又は酸化物の溶液又は懸濁液を含浸させ、乾燥させ、次いで金属化合物を還元剤、有利には水素又は錯体水素化物を用いて還元して当該金属又は低い酸化段階の化合物にすることによって、塗布することができる。触媒活性金属をこれらの担体上に塗布するもう一つの方法は、担体を熱により容易に分解可能な塩、例えば亜硝酸塩又は熱により容易に分解可能な錯化合物、例えば触媒活性金属のカルボニル−又はヒドリド錯体の溶液を含浸させ、こうして含浸させた担体を300〜600℃の範囲の温度に加熱して、吸収した金属化合物を熱分解するものである。この熱分解は、有利には保護ガス雰囲気下で行う。好適な保護ガスは、例えば窒素、二酸化炭素、水素又は希ガスである。更に触媒担体上の触媒活性金属を蒸着又は溶射によって沈着させることができる。これらの担体触媒の触媒活性金属の含量は原則として本発明による方法の成果に重要ではない。通常これらの担体触媒の触媒活性金属の高い含量は低い含量より高い時空変換率をもたらす。通常触媒活性金属の含量が、触媒の全質量に対して0.1〜90質量%の範囲、有利には0.5〜40質量%の範囲である担体触媒を使用する。この含量データは担体材料を含めて全触媒に対するものであり、異なる担体材料は非常に異なる比重及び比表面積を有するので、本発明による方法の結果に対して不利な影響を生じることなくこの記載値を下回ってもよいし、超えてもよいと考えられる。もちろん複数の触媒活性金属を各々の担体材料上に塗布することもできる。更に触媒活性金属を例えばDE−OS2519817又はEP0285420A1の方法により担体上に塗布することができる。
【0122】
沈澱触媒並びに担体触媒の活性化は、反応開始時に現場で存在する水素によって行うこともできる。有利にはこれらの触媒を使用前に別々に活性化する。
【0123】
担体材料として、通常アルミニウム及びチタンの酸化物、二酸化ジルコニウム、二酸化珪素、アルミナ、例えばモンモリロナイト、珪酸塩、例えば珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウム、ゼオライト、例えば構造タイプZSM−5又はZSM−10又は活性炭を使用することができる。有利な担体材料は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化珪素、二酸化ジルコニウム及び活性炭である。もちろん異なる担体材料の混合物を本発明による方法の場合による工程(c)で使用可能な触媒用の担体として使用することもできる。
【0124】
少なくとも1種の不均質系触媒を本発明による方法の場合による工程(c)で例えば懸濁触媒及び/又は固定床触媒として使用することができる。
【0125】
例えば本発明による方法で工程(c)による場合による水素添加を少なくとも1種の懸濁触媒を用いて実施する場合には、有利には少なくとも1個の攪拌反応器又は少なくとも1個の泡鐘塔又は少なくとも1個の充填した泡鐘塔又は2個以上の同じか又は異なる反応器から成る組合せ中で水素添加する。
【0126】
ここで用語"異なる反応器"とは、異なる種類の反応器並びに例えば形状、例えばその容積及び/又は断面積及び/又は反応器中の水素添加条件によって異なる同じ種類の反応器の両方である。
【0127】
例えば本発明による方法の場合による工程(c)で水素添加を少なくとも1種の固定床触媒を用いて行う場合には、少なくとも1個の管型反応器、例えば少なくとも1個のシャフト反応器及び/又は少なくとも1個の管束反応器を使用するが、その際個々の反応器を上方−又は下方流動法により運転することができる。2個以上の反応器を使用する場合には少なくとも1個を上方流動法で、少なくとも1個を下方流動法で運転する。
【0128】
本発明による方法の場合による工程(c)の有利な態様によれば、水素添加用に使用した少なくとも1種の触媒を水素添加の生成物混合物から分離する。この分離は使用した触媒に応じて各々好適な方法により行うことができる。
【0129】
水素添加の触媒として例えば不均一系触媒を懸濁触媒として使用する場合には、これを本発明では有利には少なくとも1回の濾過工程によって分離する。このようにして分離した触媒は水素添加に戻してもよいし、少なくとも1種のその他の方法に供給してもよい。例えば触媒中に含まれる金属を回収するために、触媒を後処理することもできる。
【0130】
水素添加で触媒として例えば均一系触媒を使用する場合には、本発明ではこれを有利には少なくとも1回の蒸留工程によって分離する。この蒸留で1個又は2個又はそれ以上の蒸留塔を使用することができる。このようにして分離した触媒を水素添加に戻してもよいし、少なくとも1種のその他の方法に供給してもよい。例えば触媒中に含まれる金属を回収するために、触媒を後処理することもできる。
【0131】
任意の方法で使用する前に例えば本発明による方法に戻す前に、少なくとも1種の均一系触媒並びに不均一系触媒を、必要な場合には、少なくとも1種の好適な方法により再生することができる。
【0132】
熱除去は本発明により使用する反応器で内部で、例えば冷却コイルを用いて及び/又は外部から例えば少なくとも1個の熱交換器を用いて行うことができる。例えば有利には水素添加用に少なくとも1個の反応器を使用する場合には、有利には反応を熱排出を組み込んだ外部循環を介して行う。
【0133】
本発明による方法の有利な態様により水素添加を連続的に実施する場合には、更に有利には少なくとも2個の反応器、更に有利には少なくとも2個の管型反応器、更に有利には少なくとも2個の連続的に接続した管型反応器、特に有利には2個の連続的に接続した管型反応器を使用する。使用した反応器中の水素添加条件は、各々同じであってもよいし、異なっていてもよく、各々前記範囲内である。
【0134】
水素添加を少なくとも1個の懸濁した触媒を用いて行う場合には、滞留時間は通常0.5〜50時間の範囲、有利には1〜30時間の範囲、特に有利には1.5〜25時間の範囲である。その際本発明により1個の反応器又は少なくとも2個の連続的に接続した反応器を使用するか否かは重要でない。これら全ての態様で全滞留時間は前記範囲内である。
【0135】
本発明による方法で水素添加を連続的方法で少なくとも1個の固定床触媒を用いて行う場合には、滞留時間は通常0.1〜20時間の範囲、有利には0.2〜15時間の範囲、特に有利には0.3〜10時間の範囲である。その際本発明により1個の反応器又は少なくとも2個の連続的に接続した反応器を使用するか否かは重要でない。これら全ての態様で全滞留時間は前記範囲内である。
【0136】
第1管型反応器から得られる混合物は、所望の生成物、例えばシクロドデカノンを有利には50〜99.9質量%の範囲、特に有利には70〜99.5質量%の範囲の割合で含有する。この混合物は場合により少なくとも1種の中間処理後に、第2管型反応器に供給する。第2管型反応器から得られる混合物は、シクロドデカノンを有利には少なくとも99.5%の範囲、更に有利には99.9%、特に有利には99.99%の範囲、特に有利には少なくとも99.9%の範囲、特に有利には少なくとも99.99質量%の範囲の割合で含有する。
【0137】
水素圧は本発明による水素添加で場合による(c)で通常1〜325バールの範囲、有利には1.5〜200バールの範囲、更に有利には2〜100バールの範囲に、特に有利には2.5〜50バールの範囲である。
【0138】
水素添加温度は、通常0〜250℃の範囲、有利には20〜200℃の範囲、例えば30〜180℃の範囲、更に有利には30〜150℃の範囲、特に有利には40〜170℃の範囲、特別に有利には40〜140℃の範囲である。
【0139】
従って本発明は前記したような方法にも関し、これは工程(c)の水素添加を水素添加触媒、有利には不均一系触媒の存在で0〜250℃の範囲の温度及び1〜325バールの範囲の圧力で行うことを特徴とする。
【0140】
本発明による水素添加で少なくとも1種の好適な溶剤又は希釈剤を使用することができる。このようなものとして、特にシクロドデカノン又はシクロドデセン並びに原則として水素添加条件で水素化されないか又はその他の反応を起こさない全ての溶剤及び希釈剤が挙げられる。
【0141】
本発明による方法の有利な態様によれば、水素添加を溶剤又は希釈剤の添加なしに行う。本発明による水素添加から通常、Z個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物、特にシクロドデカノンの他に、前記副生成物を記載した非常に僅かな量で有する混合物が得られる。
【0142】
ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物の本発明による製法は、特にこのケトンが僅かな工程及び同時に高い選択性で得られるという利点を提供する。更に著しい利点は、本発明による方法用の出発物質として有利には工業設備からの一酸化二窒素を含有する排ガスを使用することができるということであり、この排ガスは一方では多大な費用なしに使用可能であり、他方では本発明による方法を既存の製造設備に統合することができ、それによって出発物質用の輸送路を最小にすることができ、更に潜在的温暖化ガスとして除去するために特別な処理に送る必要がなく、直接貴重な生成物中に送られるという事である。
【0143】
本発明は本発明による方法にも関し、その際工程(b)の次に少なくとも下記工程(d)を行う:
(d)組成物(D)を得るための工程(b)からの組成物(B)の少なくとも1種の塩基を用いる処理。
【0144】
本発明によれば組成物(B)を場合による工程(d)で少なくとも1種の塩基で処理する。その際処理の方法条件は、少なくとも1種の邪魔な副生成物、特に工程(a1)で副生成物として生成し得える、少なくとも1種のアルデヒド、例えば少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する化合物を減少させることが確実である限り、広い範囲で変えることができる。
【0145】
その際本発明によれば有利には、少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物の量を更に減少させる。その際、本発明により工程(b)により場合によりなお存在する少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する化合物を90%より多く、特に95%より多く、特に有利には99.99%まで分解する。
【0146】
工程(a1)の酸化で場合により生成されるC原子7〜16個及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z個の環を有する化合物、即ち環縮合により生じる環状アルデヒドを、有利には30%まで、特に35%まで、特に有利には40%まで分解する。本発明によりZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1個の環式化合物を0.5〜2.0%、有利には0.75〜1.75%、特には1.0〜1.5%まで分解する。
【0147】
一次近似でアルデヒド基1個を有する化合物1モル当たり貴重生成物、即ちZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する化合物1モルが分解される。
【0148】
本発明によれば工程(d)による少なくとも1種の塩基を用いる処理を有利には1分〜10時間、特に5分〜5時間、特に有利には10〜60分、更に有利には20〜50分間の時間行う。
【0149】
その際、本発明による方法で処理は特に100〜250℃、有利には110〜220℃、特に有利には120〜200℃、更に有利には150〜190℃の温度で行うことができる。
【0150】
従って本発明はもう一つの態様により、ケト基1個を有し、Z個の環及び原子7〜16個を有する環式化合物を製造するための前記したような方法にも関し、その際工程(d)による処理を温度100〜250℃で1分〜10時間の時間行う。
【0151】
塩基を用いて処理するために可能な全ての種類の反応器が好適である。連続的反応実施用には有利には管状の反応器、例えば管型反応器、攪拌釜カスケード又は類似の反応器を使用する。不連続的な反応実施(バッチ法)用には簡単な攪拌釜が好適である。有利には反応は実質的に均質に液相中で行われる。
【0152】
有利には工程(d)による処理は二つの部分工程(d1)及び(d2)から成り、その際工程(d1)により組成物(B)を少なくとも1種の塩基で処理し、工程(d2)により塩基を分離する。
【0153】
従って本発明はもう一つの態様により、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する環式化合物の前記したような製法にも関し、その際工程(d)は部分工程(d1)及び(d2)を含む:(d1)組成物(B)の少なくとも1種の塩基を用いる処理、(d2)塩基の分離。
【0154】
(d2)による塩基の分離は、常用の全ての方法、例えば蒸留によって行うことができる。特に塩基としてNaOH又はKOHを使用する場合には、分離は、有利には蒸発によって、例えば流下液膜式蒸発器、wiped film evaporator又は螺旋管蒸発器の形で、又は例えば水を用いる塩基の抽出によって行う。
【0155】
本発明で原則として好適な全ての塩基を使用することができる。有利には、共役酸が水中のpKa>9を有する有機又は無機塩基を使用する。本発明で、トリアルキルアミン、アルカリ金属−又はアルカリ土類金属アルコラート及びテトラアルキルアンモニウム−、アルカリ金属−又はアルカリ土類金属水酸化物が有利である。特に水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが極めて有利である。
【0156】
塩基は本発明によれば純粋な物質として使用することもできるし、溶液として使用することもできる。液体塩基は有利には溶剤の添加なしに使用する。固体塩基は有利には溶液として使用する。溶剤として有利には共役酸を使用する。特に有利な塩基NaOH及びKOHは有利には濃縮した水溶液として使用する。有利には溶液として使用した塩基は、少なくとも25質量%、特に少なくとも40質量%、特に有利には約50質量%の濃度を有する。
【0157】
工程(d)により使用される塩基の量は、広い範囲で変えることができる。アルデヒド1モル当たり0.01〜5モルの塩基を使用することができる。有利にはアルデヒド1モル当たり0.05〜2モルの塩基を使用する。特に有利にはアルデヒド1モル当たり0.1〜1モルの塩基を処理される混合物中に使用する。ここでアルデヒドとは含有される全てのアルデヒドのことである。
【0158】
塩基を用いる処理は、100〜250℃の温度範囲で行う。有利には反応を110〜220℃で行う。特に有利には反応を150〜190℃で行う。処理時間は、選択した温度、塩基の種類及び量及びアルデヒドの所望される減少度によって決められる。その際条件は有利には、処理時間が1分〜10時間、例えば10分〜5時間、有利には20分〜2時間、特に30分〜1.5時間、特に有利には40分〜1時間であるように選択する。
【0159】
有利な態様によれば、塩基を用いる処理を温度160〜185℃で30〜40分間行う。有利には処理は、全組成物に対して0.1〜0.15質量%の水酸化ナトリウムを用いて行う。特に有利な態様によれば、塩基を用いる処理を、全組成物に対して0.1〜0.15質量%の水酸化ナトリウムを用いて温度160〜185℃で30〜40分間行う。
【0160】
本発明による方法の場合による工程(d)後に組成物(D)が得られる。この組成物(D)は有利には少なくとも85質量%のZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する環式化合物、特に有利には少なくとも95質量%のZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する環式化合物を含有する。
【0161】
本発明による方法の特に有利な態様では、本発明による方法の工程(d)の次に水素添加工程(c’)を行う。
【0162】
従って本発明は本発明による方法にも関するが、その際工程(d)の次に少なくとも下記工程(c’)を行う:(c’)組成物(C’)を得るための、少なくとも1種の触媒の存在における組成物(D)の水素添加。
【0163】
この水素添加工程は通常前記した場合による工程(c)と同様にして行う。場合による工程(c’)後に組成物(C’)が得られる。これは有利な態様では、少なくとも90質量%のケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する飽和環式化合物、特に有利には少なくとも95質量%のケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する飽和環式化合物を含有する。工程パラメーター、例えば触媒、圧力、温度、物質量等に関しては本発明による工程(c’)用に工程(c)に関する記載が当てはまる。
【0164】
本発明による方法のもう一つの有利な態様で、水素添加工程(c)又は場合による水素添加工程(c’)の次に下記工程(e)を行う:
(e)(e1)組成物(C)又は(C’)の少なくとも1種の酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する少なくとも1種の触媒を用いる熱処理、(e2)蒸留、抽出及び結晶化から成る群から選択した方法による更なる精製の工程を少なくとも含む、工程(c)からの組成物(C)又は工程(c’)からの組成物(C’)の精製。
【0165】
本発明によれば組成物(C)又は(C’)を直接工程(e)に使用することができる。しかし組成物(C)又は(C’)に工程(e)の前に中間処理を施すこともできる。有利な態様では工程(e)を直接工程(c)の次に実施して、従って工程(d)及び(c’)は行わない。
【0166】
本発明による方法の場合による工程(e)には工程(e1)及び(e2)が含まれる。工程(e1)により組成物(C)又は(C’)を酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を用いて熱により処理する。
【0167】
酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を用いる処理は、有利には温度30〜350℃、例えば60〜350℃、特に100〜270℃、特に有利には130〜260℃で行う。
【0168】
従って本発明はもう一つの有利な態様により、Z個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する環式化合物の前記した製法にも関し、その際工程(e1)による処理を温度60〜350℃で行う。
【0169】
意外にも、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物を含有する組成物を酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を用いて処理する場合に、引き続いて更に精製、例えば蒸留、抽出及び/又は結晶化によって更に精製する場合に、環状ケトンを高い収率で99.5%より上の純度で得ることができることを見出した。その際環状ケトン自体は全くか又はごく僅かにしか攻撃されない。本発明によれば分離される化合物は特にアルコール、アルデヒド及びエポキシドである。
【0170】
組成物中に含有される環状ケトンに対して本発明により10%より少ない、有利には5%より少ない、特に有利には3%より少ないケトンが失われる。その際工程(e1)による処理は気相中で行うこともできるし、液相中で行うこともできる。その際圧力は広い範囲で調節可能である。例えば0.001〜300バール、有利には0.01〜200バール、特に有利には0.1〜100バールである。本発明により、場合により生成される低沸点成分を系から蒸留により除去することができる圧力、即ち0.25〜70バール、有利には0.35〜50バール、特に有利には0.5〜30バールの圧力が有利である。
【0171】
工程(e1)による処理は不連続的又は連続的に行うことができ、その際連続的処理が有利である。その際滞留時間は、0.1〜50時間、有利には0.2〜24時間、例えば0.5〜15時間、特に1〜19時間、特に有利には1.5〜10時間である。
【0172】
従って本発明はもう一つの態様により、Z個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する環式化合物の前記した製法にも関し、その際工程(e1)による処理を0.1〜50時間行う。
【0173】
本発明により使用する酸は、ブレンステッド又はルイス酸であり、その際2種以上の酸から成る混合物を使用することもできる。使用される酸は均一系又は不均一系であってよい。不均一系酸は本発明によれば懸濁するか又は固定してよい。
【0174】
従って本発明はもう一つの態様により前記した方法にも関し、その際酸は均一系又は不均一系で存在する。
【0175】
本発明により使用する均一系可溶性酸は、例えば鉱酸又は有機酸である。例えば硫酸、スルホン酸、硝酸、塩酸、燐酸、亜燐酸、過塩素酸、EP0158229に記載されているようなヘテロポリ酸、C1〜C130カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等である。
【0176】
有利な均一系酸は、燐酸、亜燐酸、硫酸、スルホン酸及びヘテロポリ酸、例えば燐タングステン酸である。
【0177】
均一系可溶性酸の含量は、通常環状ケトンに対して0.01〜10質量%である。有利には均一系可溶性酸を0.05〜5質量%、特に有利には0.1〜1質量%の量で使用する。
【0178】
本発明の有利な態様によれば均一系可溶性酸を0.1〜1質量%の量で使用する。
【0179】
有利には酸をZ個の環及びC原子7〜16個及び環状ケトンのケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物の蒸留による分離後に、少なくとも部分的に処理工程に戻す。
【0180】
本発明により好適な不均一系酸は、金属酸化物の固体であり、これは例えば本発明によってその酸濃度を高めるために例えば鉱酸、例えば燐酸又は硫酸で処理しておくことができる。有利には、B、Al、Si、Sn、Ti、Cr、Zr、Fe及びZnの酸化物又は混合酸化物を使用するが、これはなおその他の成分を含有することができる。例えば酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素及びこれらから成る組合せ、例えばアルモシリケート、例えばゼオライトが好適である。例えば層状珪酸塩又は天然アルミナを使用することができる。有機塩基上の不均一系酸、例えば酸性イオン交換体も使用可能である。
【0181】
本発明による方法の工程(e1)を不均一系酸を用いて不連続的に行う場合には、通常Z個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物に対して0.1〜50質量%の酸を使用する。有利には不均一系酸を0.5〜20質量%、特に有利には1〜10質量%の量で使用する。
【0182】
本発明による方法の工程(e1)を連続的に不均一系酸を用いて行う場合には、有利には空間速度、不均一系酸の空間速度を、原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物0.01〜10kg/触媒(リットル)/時に調節する。特に環式化合物0.05〜2kg/触媒(リットル)/時、特に有利には環式化合物0.1〜1kg/触媒(リットル)/時の空間速度にする。
【0183】
本発明により使用される触媒は、少なくとも1種の遷移金属を含有し、その際2種以上の遷移金属を含有する触媒又は少なくとも1種の遷移金属を含有する2種以上の触媒から成る混合物を使用することができる。使用される触媒は、均質に溶解されているか又は不均一系であってよい。不均一系触媒は本発明により懸濁するか又は固定してあってよい。従って本発明はもう一つの態様により、前記したような方法にも関し、その際少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒は均一系又は不均一系である。
【0184】
少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒としては、本発明で慣用の全ての触媒を使用することができる。その際、遷移金属としては原則として当業者に公知の全ての遷移金属が挙げられる。
【0185】
本発明により使用される均一系可溶性触媒は、例えばHouben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、第IV/1c巻、35〜67頁、Thieme Verlag Stuttgart、1980に記載されている。
【0186】
有利な均一系触媒は、遷移金属としてRu、Rh及び/又はPdを含有する。Ruが特に有利である。
【0187】
均一系可溶性触媒の含量は、環式化合物に対して通常0.001〜1質量%である。有利には均一系可溶性触媒を0.005〜0.5質量%、特に有利には0.01〜0.1質量%の量で使用する。
【0188】
本発明の有利な態様によれば、均一系可溶性触媒を0.01〜0.1質量%の量で使用する。
【0189】
有利には触媒はZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物の蒸留による分離後に少なくとも部分的に処理工程(e1)に戻す。
【0190】
本発明により好適な不均一系可溶性触媒は、例えばHouben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie、第IV/1c巻、16〜26頁、Thieme Verlag Stuttgart、1980に記載されている。これらは少なくとも1種の遷移金属を含有する。有利な遷移金属は、Ni、Cu、Pd、Ru、Ir、Pt、Co及び/又はRhである。Pd、Ru、Ptが特に有利であり、Ru及びPdが極めて特に有利である。
【0191】
不均一系触媒は懸濁した形又は有利には固定配置で使用することができる。少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒は、遷移金属を元素として又は化学的化合物の形で、例えば酸化物として含有することができる。異なる遷移金属の混合物は元素又はその化合物を混合物として又は合金として含有することができる。その際、遷移金属を含有しない元素又はその化合物を触媒成分として、例えばいわゆるラネー触媒で使用することもでき、その際例えばAl又は酸化アルミニウムを有利にはNi、Cu又はRuと一緒に使用する。
【0192】
例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム上Ru、活性炭上Ru、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム上Pd、活性炭上Pd、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化カルシウム上Pt又は活性炭上Pdが本発明により好適である。担体材料として異なる金属の混合物又は化合物、例えばアルミナ又はゼオライトを使用することもできる。
【0193】
例えば水素添加で使用した触媒も本発明により好適である。
【0194】
少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒は、本発明によれば担体上に塗布しておくこともできる。これらの担体は、例えば金属酸化物の、塩基性、中性又は酸性の固体であり、これは本発明により酸濃度を高めるために例えば鉱酸、例えば燐酸又は硫酸で処理しておいてよい。有利にはB、Al、Si、Sn、Ti、Cr、Zr、Fe及びZnの酸化物又は混合酸化物を使用するが、これらはなおその他の成分を含有することができる。例えば酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素及びこれらから成る組合せ、例えばアルミノ珪酸塩、例えばゼオライトが好適である。例えば層状珪酸塩又は天然のアルミナが使用可能である。
【0195】
本発明による方法を不均一系触媒を用いて不連続的に行う場合には、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物に対して通常0.1〜50質量%の触媒を使用する。有利には不均一系触媒を0.5〜20質量%、特に有利には1〜10質量%の量で使用する。
【0196】
工程(e1)による方法を連続的に不均一系触媒を用いて行う場合には、有利には空間速度、即ち不均一系酸の空間速度を、原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物0.01〜10kg/触媒(リットル)/時に調節する。特にC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物0.05〜2kg/触媒(リットル)/時、特に有利にはZ個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する少なくとも1種の環式化合物0.1〜1kg/触媒(リットル)/時の空間速度に調節する。
【0197】
本発明により、酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を工程(e2)で分離することができる。しかし本発明では酸又は触媒を工程(e1)後にかつ工程(e2)前に分離することもできる。分離用に可能な方法は、例えば蒸留、抽出、沈澱又は結晶化である。
【0198】
工程(e2)によりこのようにして処理した組成物を蒸留、抽出及び/又は結晶化によって更に精製する。その際蒸留、抽出及び/又は結晶化は当業者に公知の全ての慣用の方法により行うことができる。
【0199】
工程(e2)による結晶化用に好適な溶剤は、例えばアルコール、エーテル、炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、有利にはトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、ジエチルケトン又はメチル−t−ブチルエーテルである。本発明によれば、溶剤を何も使用しないで、溶融結晶化を行うことも可能である。
【0200】
蒸留による精製は1個以上の蒸留塔で行うことができる。その際有利には1〜2000ミリバールの圧力で操作する。特にケト基1個及び8個以上の炭素原子を有する環式化合物の場合には、5〜500ミリバールの圧力が有利であり、特に10〜200ミリバールが有利である。温度(塔底温度)は100〜300℃である。有利には蒸留精製時の温度は130〜250℃、特に有利には150〜220℃である。
【0201】
本発明の有利な態様によれば、蒸留による精製は1〜2000ミリバール、有利には5〜500ミルバール、特に有利には10〜200ミリバールの圧力及び100〜300℃、有利には130〜250℃、特に有利には150〜220℃の塔底温度で行う。
【0202】
蒸留による精製で1個の蒸留塔を使用する限り、貴重生成物は有利には側部排出口を介して得られる。その際本発明により、所望の生成物を液体又は気体形で得ることができる。塔底部を介して有利には高沸点成分が分離され、塔頂部を介して有利には低沸点成分が分離される。2個の蒸留塔を使用する場合には、貴重生成物は有利には高沸点成分と一緒に有利には塔底部を介して第2の蒸留塔へ入り、次いでそこから塔頂部又は再び側部排出口を介して得ることができる。本発明により分離壁塔を使用することもできる。
【0203】
その際本発明によれば、方法の個々の工程の間に更に処理を行うことも可能である。特に本発明によれば、工程(e1)後に酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を分離することができる。
【0204】
工程(e2)による蒸留、抽出又は結晶化の前に、特に触媒が均質に溶解されている場合には、酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する触媒を工程(e)で処理した組成物(C)又は(C’)から除去することができる。これは不均一系酸又は触媒の場合には例えば濾過によって行われ、均一系酸又は触媒の場合には例えば水を用いる抽出又は蒸留が好適であり、その際酸は沸点に応じて塔頂部又は塔底部を介して分離される。
【0205】
有利には酸又は触媒を分離後に再び工程(e1)に使用することができる。本発明によれば、酸又は触媒に分離後、工程(e1)に再使用する前に、中間処理、例えば精製を行うことができる。
【0206】
蒸留による精製、特にアルデヒドが攻撃される塩基を用いる処理及び主としてエポキシド及びアルコールが攻撃される酸又は遷移金属含有する触媒を用いる処理の本発明による有利な組合せによって、特に純粋な生成物が得られる。その際本発明による方法は装置が簡単で費用効果が高い。
【0207】
極めて特に有利な態様で本発明による方法は、Z個の環及びC原子7〜16個及びケト基1個を有する飽和環式化合物、特にシクロドデカノンを得るために、下記工程:(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する1種の環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種のオレフィン、少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物及び一酸化二窒素及び窒素を少なくとも含有する組成物(A1)にし、(a1b)工程(a1)からの組成物(A1)を、一酸化二窒素及び窒素を除去し、実質的に一酸化二窒素及び窒素不含である組成物(A1)を得るために、減圧し、(a2)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A2)を得るために、少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1b)からの組成物(A1)から分離し、(b)ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、0.5質量%より少ない少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び1.0質量%より少ない少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を含有する組成物(B)を得るために、工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理し、(c)組成物(C)を得るために、工程(b)から得た組成物(B)を少なくとも1種の触媒の存在で水素添加し、及び(e)工程(e1)少なくとも1種の酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する少なくとも1種の触媒を用いて組成物(B)を熱処理し、(e2)更に蒸留による精製する工程を少なくとも含む工程(c)からの組成物(C)の精製の工程を含む。
【0208】
次に本発明を実施例につき詳説する。
【0209】
実施例:
例1:NOを用いる1,5,9−シクロドデカトリエン(CDT)の酸化及び反応しなかった1,5,9−シクロドデカトリエンの分離(工程(a1)及び(a2))
相応する受器容器から好適な流量調節ポンプを用いて、1,5,9−シクロドデカトリエン2000g/時及び液体NO68g/時を静的ミキサーで管型反応器(二重ジャケット管、巻き、φ内部=6mm、長さ36m)中にポンプ装入する。管は、二重ジャケット中で生成物に対して順流で流れる熱媒体油によって280℃に温度調節し、その際油出口温度は油入口温度より2℃より高くはない。反応圧力を反応器出口の圧力調整弁を用いて100バールに調節する。反応器出口の1,5,9−シクロドデカトリエンの変換率は11.3%である。反応帯域通過後、生成したN及び反応しなかったNOを排出するために、反応混合物を2個の非隔離フラッシュ容器中で減圧して先ず3バールに、次いで60ミリバールにした。その際生成物は100℃より下に冷える。
【0210】
次いで液体生成物を少なくとも7段の理論分離段を有する充填塔中で塔頂圧60ミリバールで蒸留する(T塔底=170℃、T塔頂=130℃)。塔頂生成物として純度>99%を有する未反応1,5,9−シクロドデカトリエンが得られ、これを再び反応に戻す。塔底排出物は淡帯黄色液体であり、第1表による組成を有する:
第1表
【表1】

【0211】
生成物を集め、例2で使用する。
【0212】
例2:工程(b)
例1からの生成物混合物を蒸留するために、内径64mm及び長さ2.6m(充填物の全長)を有する連続的な実験室用分離壁塔を使用する。試験混合物の予備試験で、塔は35段の理論分離段を有することが確認される。塔は3つの帯域に分かれている。下部(1〜9段)は0.65mの長さを有する。中間帯域(9〜27段)は1.3mの長さであり、同心配置の分離壁によって入口側と出口側に分かれている。入口側には19段の高さに供給口が取り付けられている。出口側には12段の高さで側流生成物を気体状で除去する。上部帯域(27〜35段)は0.65mの長さを有する。全塔には充填物(Montz A3 750)が充填されている。蒸留は約44ミリバールの塔頂圧で行い、充填物を通る圧力損失は3.6ミリバールである。滞留時間、従って熱負荷を塔頂部で最小にするために、塔底蒸発器としてSambay−Verdampfer(wiped film evaporator)を使用する。塔頂温度は137℃であり、塔底温度は185℃である。流量調節ポンプを用いて蒸留すべき混合物501g/時を添加するが、その際混合物を前以て180℃に加熱しておく。側流から生成物481g/時が得られるが、これは第2表による組成を有する(質量%)。
【0213】
第2表
【表2】

【0214】
これは融点+1℃を有する無色液体である。
【0215】
塔底部で塔底生成物6g/時が第3表による組成を有する暗黄色から褐色の液体として得られる(質量%)。
【0216】
第3表
【表3】

【0217】
塔頂部で塔頂生成物14g/時が第4表による組成を有する無色液体として得られる(質量%)。
【0218】
第4表
【表4】

【0219】
記載の流量は、合計80kgの供給で処理した連続的蒸留からの平均値である。
【0220】
例3(比較例)
蒸留なしで塩基を用いるシクロドデカ−4,8−ジエノンの処理
例1からの塔底搬出物550gを攪拌フラスコに前以て装入し、保護ガス(N)下で160℃に加熱する。引き続き注射器で25%NaOH水溶液2.75gを添加する。その際反応混合物は透明かつ均質のままである。規則的な間隔で試料を取出し、GCで分析する。95分後に溶液はなお<30質量ppmだけのドデカ−4,8,11−トリナール及び820質量ppmのシクロウンデカ−3,7−ジエンカルブアルデヒドを含有する。シクロドデカ−4,8−ジエノンの含量は88.5質量%に減少する。これは貴重生成物の約4%が塩基処理で分解されることを意味する。
【0221】
シクロドデセンジオンも塩基処理により分解される。シクロドデセンジオンは分解され、その代わりに二環式ジエノンが生成される。水素添加後にこれから二環式C12−ケトンが生成し、これは沸点が非常に近似しているのでシクロドデカノンから蒸留により分離することが難しいことが公知である。例は、15トルで沸点145℃を有するデカヒドロヘプタレノンである(G.Buechi、O.Jeger、Helv.Chim.Acta(1949)32、538)。この圧力でシクロドデカノンは140℃の沸点を有し、従ってシクロドデカノンの沸点と非常に近い。
【0222】
例4:塩基を用いるシクロドデカ−4,8−ジエノンの処理
例2からの側部取出し生成物550gを攪拌フラスコに前以て装入し、保護ガス(N)下で160℃に加熱する。引き続き注射器で25%NaOH水溶液2.75gを添加する。その際反応混合物は透明かつ均質のままである。規則的な間隔で試料を取出し、GCで分析する。95分後に溶液はドデカ−4,8,11−トリナールを全く含有せず、950質量ppmのシクロウンデカ−3,7−ジエンカルブアルデヒドのみを含有する。しかしシクロドデカ−4,8−ジエノンの含量はただ97.4質量%に減少する。これは貴重生成物の約1%だけが塩基処理で分解されるにすぎないことを意味する(例3、比較例の4%の代わりに)。
【0223】
例5(比較例):
前以ての蒸留なしのシクロドデカ−4,8−ジエノンの水素添加
水素添加するために、液体循環を有する攪拌反応器(長さ1.6m、内径20mm、触媒床容量350ml)及び後攪拌機(全長15m、12個の区画に分割、内径4mm、触媒床容量150ml)から成る反応器カスケードを使用するが、その際両方の反応器は温度調節のために熱媒体油がその中を循環している二重ジャケットを具備している。反応器は、酸化アルミニウム上Pd(0.2質量%)触媒(ストランド3mm、Pdを硝酸パラジウム水溶液として市販の酸化アルミニウム担体上に含浸させ、次いで乾燥させ300℃で空気中でか焼した)を充填してある。この装置中に例1からの塔底生成物を130℃及び水素圧30バールで水素添加するが、その際水素3モル/供給モル(シクロドデカ−4,8−1−オン100%として計算)を使用する。反応器は細流法で操作する。第1反応器中の液体循環対供給の比は10対1であり、全空間速度は供給0.5kg/触媒(リットル)/時である。液体並びに気体の形の供給を先ず主反応器に装入する。次いで主反応器からの液体並びに気体の形の搬出物を直接後反応器に誘導する。水素添加は300時間行う。水素添加搬出物は第5表による組成を有する(質量%)。
【0224】
第5表
【表5】

【0225】
この生成物を次いで酸性に酸化チタン(ストランド1.5mm、WO2007/104650に記載されているような99%までアナターゼ型の純粋な二酸化チタン、触媒床容量315ml、長さ1.5mを有する管型反応器、外部にある油加熱ジャケットによる加熱)上に200℃及び常圧で誘導する(空間速度:供給約0.5kg/触媒リットル/時)。この搬出物を集め、その中3kgを塔を取り付けた蒸留容器(充填剤塔1m)で分別蒸留する。最高シクロドデカノン純度(99.5質量%)を有するフラクション(0.5kg)(蒸留圧約50ミリバール、沸点約165℃)は、なお第6表による副成分を含有する(質量%)。
【0226】
第6表
【表6】

【0227】
例6
シクロドデカ−4,8−ジエノンの前以ての蒸留を用いる水素添加
例5を繰り返すが、出発物質として例2からの側部取出し生成物を使用する。水素添加排出物は第7表による組成を有する(質量%)。
【0228】
【表7】

【0229】
この生成物を次いで酸性二酸化チタン上に200℃及び常圧で誘導する(空間速度:供給1kg/触媒(リットル)/時)。この排出物を集め、その中3kgを塔を取り付けた蒸留容器中で分別蒸留する。最高シクロドデカノン純度(99.9質量%)を有するフラクション(2.5kg)は、なお第8表による副成分を含有する(質量%)。
【0230】
第8表
【表8】

【0231】
例7
1,5−シクロオクタジエンのNOを用いる酸化
1,5−シクロオクタジエン(市販品、Aldrich 少なくとも99%再蒸留、700ml)を1.2Lのオートクレーブ中に入れ、オートクレーブを閉じ、Nで不活性化した。オートクレーブをN50バールで3回パージし、次いでNOを用いて攪拌機運転なしに50バールの冷圧で加圧した。攪拌機のスイッチを入れ、400rpmに調節し、次いで理論温度(200℃)に24時間加熱した。24時間後にオートクレーブを室温に冷却し、周囲圧力に減圧した。次いで不活性化、NO添加、200℃への加熱及び減圧の工程をなお2回繰り返した。
【0232】
排出物:
第9表
【表9】

【0233】
例8
シクロテトラデカ−1,8−ジエンの酸化
シクロテトラデカ−1,8−ジエン(異性体混合物、約91%、2g)及びシクロヘキサン(98g)を300mlのオートクレーブ中に入れ、オートクレーブを閉じ、Nで不活性化した。オートクレーブをN50バールで3回パージし、次いでNOを用いて攪拌機運転なしに30バールの冷圧に加圧した。攪拌機のスイッチを入れ、400rpmに調節し、次いで理論温度(280℃)に加熱した。24時間後にオートクレーブを室温に冷却し、周囲圧力に減圧し、生成物をGCにより分析した。
【0234】
排出物
第10表
【表10】

【0235】
例9
シクロヘキサデカ−1,9−ジエンの酸化
シクロヘキサデカ−1,9−ジエン(異性体混合物、約89%、2.1g)及びシクロヘキサン(98.5g)を300mlのオートクレーブ中に入れ、オートクレーブを閉じ、Nで不活性化した。オートクレーブをN50バールで3回パージし、次いでNOを用いて攪拌機運転なしに30バールの冷圧に加圧した。攪拌機のスイッチを入れ、400rpmに調節し、次いで理論温度(240℃)に加熱した。24時間後にオートクレーブを室温に冷却し、周囲圧力に減圧し、生成物をGCにより分析した。
【0236】
排出物:
第11表
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物の製法において、少なくとも
(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、
− ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、
− 少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィン及び
− 少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物を少なくとも含有する組成物(A1)を得る工程と、
(a2)少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1)からの組成物(A1)から分離して、
− ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び
− 少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物
を少なくとも含有する組成物(A2)を得る工程と、
(b)工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理して、
− ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び
− 少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物1.0質量%未満
を含有する組成物(B)を得る工程と
を含み、その際Zは1、2、3又は4であってよい、前記製法。
【請求項2】
少なくとも
(a1)Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する環状オレフィンを少なくとも含有する組成物(A)を一酸化二窒素を用いて酸化して、
− ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、
− 少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、
− 少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィン及び
− 少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物
を少なくとも含有する組成物(A1)を得る工程と、
(a2)少なくとも2個のC−C二重結合を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環状オレフィンを工程(a1)からの組成物(A1)から分離して、
− ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、
− 少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物及び
− 少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物
を少なくとも含有する組成物(A2)を得る工程と、
(b)工程(a2)からの組成物(A2)を蒸留により処理して、
− ケト基1個を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物、
− 少なくとも2個のケト基を有し、Z個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の環式化合物0.5質量%未満及び
− 少なくとも1個のアルデヒド基を有し、Z−1個の環及びC原子7〜16個を有する少なくとも1種の化合物1.0質量%未満
を含有する組成物(B)を得る工程と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)の次に少なくとも下記工程(c):
(c)組成物(B)を少なくとも1種の触媒の存在で水素添加して組成物(C)を得る工程
を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の次に少なくとも下記工程(d):
(d)組成物(B)を少なくとも1種の塩基で処理して組成物(D)を得る工程
を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)の次に少なくとも下記工程(c’):
(c’)組成物(D)を少なくとも1種の触媒の存在で水素添加して組成物(C’)を得る工程
を行うことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)又は(c’)の次に少なくとも工程(e):
(e)少なくとも
(e1)組成物(C)又は(C’)の少なくとも1種の酸又は少なくとも1種の遷移金属を含有する少なくとも1種の触媒を用いる熱処理工程、
(e2)蒸留、抽出及び結晶化から成る群から選択した方法によって更に精製する工程
を含む、工程(c)からの組成物(C)又は工程(c’)からの組成物(C’)の精製工程
を行うことを特徴とする、請求項3又は5に記載の方法。
【請求項7】
環状オレフィンがシクロドデカトリエンであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
環状オレフィンが、ブタジエンの三量体化によって製造したシクロドデカトリエンであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Z個の環及びC原子7〜16個及び少なくとも2個のC−C二重結合を有する少なくとも1種の環状オレフィンを、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエン、1,9−シクロヘキサデカジエン、1,8−シクロテトラデカジエン、1,6−シクロドデカジエン、1,6,11−シクロペンタデカトリエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン及びその混合物から成る群から選択することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
塩基を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びその混合物から成る群から選択することを特徴とする、請求項4から9までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−516301(P2012−516301A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546824(P2011−546824)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050888
【国際公開番号】WO2010/086314
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】