説明

紙の光学的性質を改良する方法

本発明は、精製した紙の明度および白色度を効率的に維持または増加させる方法を対象とする。一態様において、本発明は、パルプの精製を増すことにより紙の明度および/または白色度を実質的に維持(または増加さえ)させるための方法であって、該パルプをその濾水度が少なくとも約100CSFに低下するまで精製するステップと、最終的な紙の明度および/または白色度を増すのに十分な量のOBAと担体ポリマーの組み合わせをサイズプレスにおいて紙表面に添加するステップとを含む方法を対象とする。別の態様において、本発明は、セルロース繊維懸濁液をその濾水度が少なくとも約100CSFに低下するまで精製するステップと、その精製ステップの途中または後で、任意のさらなるウェットエンド化学薬品を添加する前に、そのセルロース繊維を少なくとも1つの蛍光増白剤(OBA)と接触させるステップとを含む精製したパルプから紙を製造する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書にその全体が組み込まれている、2007年4月5日に出願された米国特許仮出願第60/922,057号、および、2008年2月29日に出願された米国特許仮出願第61/032,588号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は、紙の明度および白色度を改良するための製紙方法に関する。より詳しくは、本発明の分野は、加増された精製を受けるパルプから製造される紙の明度および白色度を維持または増加するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
製紙会社は、自社の紙銘柄、特に印刷および情報用紙の明度および白色度を改良することを絶えず追及している。現在明度を改良する最も普通の手段は、ウェットエンドまたはサイズプレスのいずれかにおける蛍光増白剤類(OBA)または蛍光光沢/増白剤類(fluorescent brightener/whitener agents)(FWA)の量を増加することによるものである。多くの場合、これは著しく多量のOBA類を加える必要がある。しかしながら、多量のOBA類を加えることには、白水(再循環水)への影響および製紙システムの投入量に対する変更などの障害がある。また、OBA類のコストおよび入手の可能性も、OBA類は高価であるばかりでなく多くの需要があって供給に限りがあるために問題である。
【0004】
製紙工場は、紙の明度および白色度を改良する自工場の主たる方法として、化学薬品添加用にカスタマイズした手段ではなく一般的な手段に従う傾向があり、しばしば、それらの工場は、過剰のOBAを使用する結果となっている。その上、増加した明度および/または白色度を有する新しい紙グレードと競争するためには、明度および白色度を改良する唯一の道がOBA濃度を増し続けることであると製紙工場は一般に考えている。それゆえ、使用されるOBAの量を、増加させることなく、好ましくは減少さえするような、明度および白色度を増す別の方法を見出す必要がある。
【0005】
該製紙法は、最終的な紙の光学的品質に影響を及ぼすことができる多くの可変要素を含む。木(複数可)の種の選択は、最大の明度および白色度を含めた最終的な紙のグレードに多大な影響がある。パルプ精製作業の増加がパルプにおける明度の減少を引き起こすことはよく知られている。しかしながら、精製は、とりわけ、紙強度、繊維から繊維の結合を増すため、平滑性を増すため、およびフォーメーションを改良するために必要である。ファイン紙の工場は、不透明性、気孔率および強度などの性質を得るためにより大きな度合いまで精製する。工場によっては、鍵となる運転パラメーターを満たすために一定の濾水度まで精製する必要があり、変化させる余地は非常に少ない。パルプの明度は、また、最終的な紙の明度に影響を及ぼす。すなわち、パルプの明度が高ければ高いほどその紙の明度は高くなる。それゆえ、精製によってパルプの明度を失うことは最終的な紙の明度に深刻な影響がある。
【0006】
得られる製品に対して問題を解決するために加えられた努力がかなりのものであるにもかかわらず、精製中に明度と白色度を失わないようにし、OBAの使用レベルを増すことなく最も効果的なやり方で紙の明度と白色度を増加させる必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紙の明度と白色度とを効果的に増す方法を対象とする。本発明は、最適化された化学薬品添加、ならびに精製中、明度および白色度を維持することによって明度と白色度とを増加させることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、パルプ精製を加増した紙の明度および/または白色度を実質的に維持する(または増加さえする)ための方法であって、該パルプをその濾水度が少なくとも約100CSFに低下するまで精製するステップと、最終的な紙の明度および/または白色度を増すのに十分な量のOBAと担体ポリマーの組み合わせをサイズプレスにおいて紙表面に添加するステップとを含む方法を対象とする。
【0009】
そのポリマー担体は、好ましくはポリビニルアルコール(PVOH)である。PVOH:OBAの重量比は、好ましくは約1:1〜約16:1の範囲であり、より好ましくは約1.5:1〜約12:1、最も好ましくは約2:1〜約8:1である。
【0010】
該パルプは、好ましくは所定の濾水度に低下するまで精製する。一実施形態において、該濾水度レベルは、より高い濾水度レベルと比較して増大している明度および/または白色度に対応する。好ましくは、該パルプは、繊維デラミネーション点と一致する濾水度まで精製する。
【0011】
該OBAおよびPVOHは、好ましくは該サイズプレスに添加する前にプレミックスする。該OBAは、好ましくはパルプ1トン当り約0.5〜約15ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約5〜約14ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約8〜約12ポンドの範囲の量で添加する。該PVOHは、好ましくはパルプ1トン当り約50〜約150ウェットポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約70〜約130ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約80〜約120ポンドの範囲の量で添加する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、パルプの精製が加増された紙の明度および/または白色度を実質的に維持する(または増大さえする)ための方法を対象とする。したがって、本発明は、セルロース繊維懸濁液をその濾水度が少なくとも約100CSFに低下するまで精製するステップと、該精製ステップの途中または後で、任意のさらなるウェットエンド化学薬品を添加する前に、該セルロース繊維を少なくとも1つの蛍光増白剤(OBA)と接触させるステップとを含む精製パルプから紙を製造する方法を対象とする。該精製は、該濾水度を、好ましくは約100〜約400CSF、より好ましくは約150〜約350CSF、最も好ましくは約200〜約325SCFの間の量で減少する。
【0013】
一実施形態において、該方法は、所定の濾水度レベルに低下するまで該パルプを精製するステップと、該製紙工程のウェットエンドにおいて該パルプにOBAを添加するステップと、該製紙工程のウェットエンドにおいて該パルプに、染料、沈降炭酸カルシウム(PCC)およびアルケニル無水コハク酸(ASA)からなる群から選択される1つまたは複数のウェットエンド添加剤を添加するステップとを含み、該OBAは、該ウェットエンド添加剤の前に添加し、該OBAおよびウェットエンド添加剤は所定の濾水度レベルで明度および/または白色度を増すのに十分な量で添加する。好ましくは、該パルプは漂白パルプである。好ましくは、該PCCおよび/または染料は、該ウェットエンドに、該OBAの後および任意のさらなるウェットエンド化学薬品の前に添加する。
【0014】
一実施形態において、上で掲げたウェットエンド添加剤のすべては製紙工程のウェットエンドに添加する。好ましくは、染料およびPCCは、ASAの前に加える。好ましくは、該ASAは、デンプンとプレミックスしてからウェットエンドに添加する。好ましくは、該デンプンは、ジャガイモデンプンである。該ASAとデンプンは、好ましくは約1:1〜約1:5、より好ましくは約1:2〜約1:4、最も好ましくは約1:3〜約1:4の重量比で混合する。
【0015】
別の実施形態において、該方法は、製紙工程のウェットエンドに、アニオン性ポリマー(PL)、シリカナノ粒子(NP)およびその両方の組み合わせからなる群から選択される付加的なウェットエンド添加剤を添加するステップをさらに含む。好ましくは、その付加的なウェットエンド添加剤(複数可)は、上に掲げたその他のウェットエンド添加剤の添加後に歩留まり向上系の形で加える。該ナノ粒子(NP)は、好ましくは、ミクロゲルまたは少なくとも部分的に凝集したナノ粒子アニオン性シリカゾルの形をしている。
【0016】
1つの好ましい実施形態において、該ウェットエンド添加剤は、該OBAの後に、PCC、染料、ASAおよびPLの順序で添加する。別の好ましい実施形態においては、該ウェットエンド添加剤は、該OBAの後に、染料、PCC、ASA、PLおよびNPの順序で添加する。さらに別の好ましい実施形態においては、該ウェットエンド添加剤は、該OBAの後に、PCC、染料、ASA、PLおよびNPの順序で添加する。好ましくは、それぞれの好ましい順序において、該ASAは、添加前にデンプンとプレミックスする。好ましくは、そのデンプンはジャガイモデンプンである。
【0017】
該OBAは、好ましくはパルプ1トン当り約5〜約35ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約10〜約30ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約15〜約5ポンドの範囲の量で該ウェットエンドに添加する。該染料は、好ましくはパルプ1トン当り約0.01〜約0.25ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約0.02〜約0.2ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約0.05〜約0.15ポンドの範囲の量で添加する。該PCCは、好ましくはパルプ1トン当り約100〜約600ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約300〜約500ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約350〜約450ポンドの範囲の量で添加する。
【0018】
該ASAは、好ましくはパルプ1トン当り約0.5〜約4ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約1〜約3ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約1.5〜約2.5ポンドの範囲の量で添加する。該ASAをデンプンとプレミックスする実施形態において、そのASA/デンプン混合物は、好ましくはパルプ1トン当り約2〜約14ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約4〜約12ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約6〜約10ポンドの範囲の量で添加する。
【0019】
PLおよび/またはNPを該ウェットエンドに添加する実施形態において、該PLは、好ましくはパルプ1トン当り約0.1〜約2.5ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約0.3〜約2ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約0.5〜約1.5ポンドの範囲の量で添加する。該NPは、好ましくはパルプ1トン当り約0.1〜約2.5ポンド、より好ましくはパルプ1トン当り約0.3〜約2ポンド、最も好ましくはパルプ1トン当り約0.5〜約1.5ポンドの範囲の量で添加する。
【0020】
好ましい実施形態において、上で述べた該OBAおよびウェットエンド添加剤の添加に加えて、本方法は、上で述べた最終的な紙の明度および/または白色度を増すのに十分な量のOBAとPVOHの組み合わせを該サイズプレスにおいて紙表面に加えるステップをさらに含む。
【0021】
さらなる目的、利点および新たな特徴が、以下に続く記述を吟味すれば当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1世代ナノ粒子BMA−0の説明図である。
【図2】第3世代ナノ粒子NPの説明図である。
【図3】針葉樹パルプおよび紙の明度に対する精製の効果を示すグラフである。
【図4】広葉樹パルプおよび紙の明度に対する精製の効果を示すグラフである。
【図5】針葉樹パルプおよび紙の明度に対する精製の効果を示すグラフである。
【図6】紙の明度に対する、精製、OBA添加および広葉樹比率の効果を示すグラフである。
【図7】紙の白色度に対する、精製、OBA添加および広葉樹比率の効果を示すグラフである。
【図8】明度および白色度に対するパルプpHの効果を示すグラフである。
【図9】OBAにより表面処理した紙の明度に対する精製の効果を示すグラフである。
【図10】OBAにより表面処理した紙の白色度に対する精製の効果を示すグラフである。
【図11】紙の明度に対するさまざまな化学薬品の効果を示すグラフである。
【図12】紙の明度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(2つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図13】紙の明度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(3つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図14】紙の明度に対するウェットエンドおよび表面OBA添加の効果を示すグラフである。
【図15】紙の明度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(4つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図16】紙の白色度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(4つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図17】紙の明度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(5つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図18】紙の白色度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(5つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図19】紙の明度に対するさまざまな化学薬品の組み合わせ(6つの化学薬品系)の効果を示すグラフである。
【図20】紙の明度に対するウェットエンドおよび表面OBAと組み合わせたウェットエンド化学薬品の効果を示すグラフである。
【図21】紙の明度に対するウェットエンドおよび表面OBAと組み合わせた異なるウェットエンド化学薬品の効果を示すグラフである。
【図22】紙の白色度に対するウェットエンドおよび表面OBAと組み合わせた異なるウェットエンド化学薬品の効果を示すグラフである。
【図23】明度に対するOBA量の効果を示すグラフである。
【図24】明度および白色度に対するOBAタイプの効果を示すグラフである。
【図25】明度に対するPVOH固形分の効果を示すグラフである。
【図26】紙の明度に対するPVOHのタイプ/量の効果を示すグラフである。
【図27】紙の明度に対するPVOHの24〜203固形分パーセントの効果を示すグラフである。
【図28】紙の白色度に対するPVOHの24〜203固形分パーセントの効果を示すグラフである。
【図29】紙の明度に対する2つのOBAの間の性能比較を示すグラフである。
【図30】紙の明度に対する表面に添加するOBAとPVOH比率の効果を示すグラフである。
【図31】紙の白色度に対する表面に添加するOBAとPVOH比率の効果を示すグラフである。
【図32】紙の明度のためのさまざまなOBAに対するパルプのpHの効果を示すグラフである。
【図33】紙の白色度のためのさまざまなOBAに対するパルプのpHの効果を示すグラフである。
【図34】さまざまな濾水度レベルについての紙の明度に対するOBAおよびPVOHの効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、紙の明度および白色度を、精製度を増しながらも効果的に維持し、好ましくは増大する方法を対象とする。
【0024】
一態様において、本発明は、該パルプ中のセルロース繊維を、その精製ステップの途中または後で、少なくとも1つの蛍光増白剤(OBA)と、任意のさらなるウェットエンド化学薬品を添加する前に、接触させるステップを含む。一実施形態においては、該OBAは、ウェットエンドにおける精製ステップの後に該繊維と接触させる。
【0025】
本発明の方法において使用されるOBAは、幅広く変化することができ、使用されている、すなわち、機械またはクラフトパルプの明度を上げるために使用することができる任意の通常のOBAを、本発明の方法を実行する上で使用することができる。蛍光増白剤は、ヒトの眼には見えない短波の紫外光を吸収してそれを長波の青色光として放ち、その結果ヒトの眼が高度の白色度を感じ、したがって、白色度の度合いを増大させる染料のような蛍光化合物である。これは明度の付加を提供し、紙などの基材の自然の黄色の色合いを弱めることができる。本発明で使用する蛍光増白剤は、幅広くさまざまなものであり得、任意の適切な蛍光増白剤を使用することができる。かかる増白剤の概要は、例えば、全体として参照により本明細書にこれによって組み込まれるUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、Sixth Edition、2000 Electronic Release、OPTICAL BRIGHTENERS−Chemistry of Technical Productsの中に見出すことができる。その他の有用な蛍光増白剤は、参照によりすべて組み込む米国特許第5,902,454号、第6,723,846号、第6,890,454号、第5,482,514号、第6,893,473号、第6,723,846号、第6,890,454号、第6,426,382号、第4,169,810号、および第5,902,454号ならびにそこに引用されている参考文献に記載されている。さらなるその他の有用な蛍光増白剤は、参照によりすべて組み込む米国特許出願公開第2004/014910号および第2003/0013628号、ならびにWO96/00221ならびにそこに引用されている参考文献に記載されている。有用な蛍光増白剤の例は、4,4'−ビス−(トリアジニルアミノ)−スチルベン−2,2'−ジスルホン酸、4,4'−ビス−(トリアゾール−2−イル)スチルベン−2,2'−ジスルホン酸、4,4'−ジベンゾフラニル−ビフェニル、4,4'−(ジフェニル)−スチルベン、4,4'−ジスチリル−ビフェニル、4−フェニル−4'−ベンゾオキサゾリル−スチルベン、スチルベニル−ナフトトリアゾール、4−スチリル−スチルベン、ビス−(ベンゾオキサゾール−2−イル)誘導体、ビス−(ベンズイミダゾール−2−イル)誘導体、クマリン、ピラゾリン、ナフタルイミド、トリアジニル−ピレン、2−スチリル−ベンゾオキサゾールまたは−ナフトオキサゾール、ベンズイミダゾール−ベンゾフランまたはオキサニリドである。
【0026】
最も多く市販されている蛍光増白剤は、スチルベン、クマリンおよびピラゾリン化学に基づいており、これらは本発明の実施で使用するのに好ましい。本発明の実施で使用するためのより好ましい蛍光増白剤は、製紙業で一般的に使用されるスチルベン化学に基づく蛍光増白剤、例えば、4,4'−ジアミノスチルベン−2,2'−ジスルホン酸およびその塩の、例えば2、4および/または6位にさらなるスルホ基をもっていてもよい1,3,5−トリアジニル誘導体類である。最も好ましいのは、例えば、Ciba Geigyから「Tinopal」の商品名のもとで、Clariantから「Leucophor」の商品名のもとで、Lanxessから「Blankophor」の商品名のもとで、および3Vから「Optiblanc」の商品名のもとで市販されているもののようなスチルベン誘導体類、例えばジスルホネート、テトラスルホネートおよびヘキサスルホネートスチルベン系の蛍光増白剤類などである。これらの最も好ましい工業用の蛍光増白剤の中では、市販のジスルホネートおよびテトラスルホネートスチルベン系の蛍光増白剤がより好ましく、市販のジスルホネートスチルベン系蛍光増白剤が最も好ましい。本発明は、上記のOBAを使用する方法および繊維−OBA複合体を優先はするが、本発明は、上記の例示した実施形態に限定されることは決してなく、任意のOBAを利用できる。
【0027】
別の実施形態において、本方法は、該ウェットエンドにおいて、OBAの後、および任意のさらなるウェットエンド化学薬品の前に、充填剤および/または染料を添加するステップを含む。従来型の適当な無機充填剤を、本発明による水性セルロース懸濁液に添加することができる。適当な充填剤類の例としては、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルクならびに天然および合成炭酸カルシウム、例えば、チョーク、粉末にした大理石および沈降炭酸カルシウム(PCC)などが挙げられる。好ましい充填剤はPCCである。製紙におけるウェットエンド化学で普通に使用される任意の染料を使用することができる。1つの好ましい実施形態においては、Royal Pigmentsから市販されている染料、Premier Blue 2GS−MT、を使用することができる。
【0028】
さらに別の実施形態においては、該PCCおよび/または染料を添加した後に該ウェットエンドに歩留まり向上系が追加され、その歩留まり向上系は、アニオン性ポリマーおよびミクロゲルまたは少なくとも部分的に凝集したナノ粒子のアニオン性シリカゾルを含む。パルプの分量および分量をバランスさせる必要性によって、歩留まり向上系を追加する前に、カチオン性ポリマーおよび/またはサイズ剤を添加することが賢明であり得る。一実施形態においては、ASAおよびカチオン性ジャガイモデンプンの組み合わせを該歩留まり向上系の前に添加する。
【0029】
該歩留まり向上系は、濾水性向上剤および歩留まり向上剤として使用される任意のいくつかの種類のアニオン性ポリマー類、例えば、アニオン性有機ポリマーを含むことができる。本発明により使用することができるアニオン性有機ポリマーは、1つまたは複数の負に帯電した(アニオン性の)基を含むことができる。該ポリマー中ならびに該ポリマーを調製するために使用されるモノマー中に存在することができる基の例としては、水中に溶解または分散したとき、アニオン性電荷を持つ基およびアニオン性電荷を持つ酸基が挙げられ、その基は本明細書では集合的にアニオン性の基と称しており、例えば、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、スルホン酸、スルホネート、カルボン酸、カルボキシレート、アルコキシドおよびフェノール基、すなわち、ヒドロキシ置換フェニル類およびナフチル類などである。アニオン性電荷を持っている基は、通常はアルカリ金属、アルカリ土類またはアンモニアの塩である。
【0030】
本発明により使用することができるアニオン性有機粒子としては、架橋したアニオン性ビニル付加ポリマー類、適切には、アクリル酸、メタクリル酸およびスルホン化もしくはホスホネート化ビニル付加モノマーのようなアニオン性モノマーを含む通常は(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレートなどのような非イオン性モノマー類と共重合したコポリマー類が挙げられる。有用なアニオン性有機粒子としては、アニオン性縮合ポリマー類、例えばメラミン−スルホン酸ゾルも挙げられる。
【0031】
濾水性および歩留まり向上系の一部を形成することができるさらなるアニオン性ポリマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸エチルアクリル酸(methacrylic acid ethylacrylic acid)、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸および上記のもののいずれかの塩、二塩基酸類の無水物類、ならびにスルホン化ビニル付加モノマー類、例えば、スルホン化スチレンなどを含み、通常はアクリルアミド、アルキルアクリレート類などのような非イオン性モノマーと共重合されているビニル付加ポリマー類、例えば、その技術が参照により本明細書にこれにより組み込まれる米国特許第5,098,520号および第5,185,062号に開示されているものが挙げられる。そのアニオン性ビニル付加ポリマー類は、適切には、約50,000〜約5,000,000、一般的には約75,000〜約1,250,000の重量平均分子量を有する。
【0032】
適当なアニオン性有機ポリマーの例としては、さらに、逐次成長ポリマー類、連鎖成長ポリマー類、多糖類、天然に存在する芳香族ポリマー類およびそれらの変性品が挙げられる。本明細書で使用される用語「逐次成長ポリマー」とは、逐次成長重合によって得られたポリマーを表し、それぞれ、逐次反応ポリマーおよび逐次反応重合とも呼ばれる。該アニオン性有機ポリマー類は、線状であるか、枝分かれしているかまたは架橋していることができる。好ましくは、該アニオン性ポリマーは、水溶性または水分散性である。一実施形態において、該アニオン性有機ポリマーは、1つまたは複数の芳香族基を含むことができる。
【0033】
芳香族基を有するアニオン性有機ポリマー類は、同じまたは異なる種類の1つまたは複数の芳香族基を含むことができる。該アニオン性ポリマーの芳香族基は、ポリマーバックボーン中またはそのポリマーバックボーン(主鎖)に結合している置換基中に存在することができる。適当な芳香族基の例としては、アリール、アラルキルおよびアルカリル基ならびにそれらの誘導体類、例えば、フェニル、トリル、ナフチル、フェニレン、キシリレン、ベンジル、フェニルエチルおよびこれらの基の誘導体類が挙げられる。
【0034】
適当なアニオン性芳香族逐次成長ポリマー類の例としては、縮合ポリマー類、すなわち、逐次成長縮合重合によって得られるポリマー類、例えば、ホルムアルデヒド等のアルデヒドの、1つまたは複数のアニオン性基および任意的なその他の縮合重合で有用なコモノマー類、例えば、尿素およびメラミンなどを含有する1つまたは複数の芳香族化合物との縮合物、が挙げられる。アニオン性基を含有する適当な芳香族化合物類の例は、アニオン性基を含有するベンゼンおよびナフタレン系化合物類、例えば、フェノールおよびナフトール化合物類、例えば、フェノール、ナフトール、レゾルシノールおよびそれらの誘導体類、通常はスルホン酸およびスルホン酸塩である芳香族酸およびそれらの塩、例えば、フェニル酸、フェノール酸、ナフチル酸およびナフトール酸ならびにそれらの塩、例えば、ベンゼンスルホン酸およびスルホン酸塩、キシレンスルホン酸およびスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸およびスルホン酸塩、フェノールスルホン酸およびスルホン酸塩、などである。本発明による適当なアニオン性逐次成長ポリマー類の例としては、アニオン性のベンゼン系およびナフタレン系縮合ポリマー類、好ましくはナフタレンスルホン酸系およびナフタレンスルホン酸塩系縮合ポリマー類が挙げられる。
【0035】
芳香族基を有するさらなる適当なアニオン性逐次成長ポリマー類の例としては、付加ポリマー類、すなわち、逐次成長付加重合によって得られたポリマー類、例えば、芳香族イソシアネート類および/または芳香族アルコール類を含むモノマー混合物から調製することができるアニオン性ポリウレタン類が挙げられる。適当な芳香族イソシアネート類の例としては、ジイソシアネート類、例えば、トルエン−2,4−および2,6−ジイソシアネートならびにジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートが挙げられる。適当な芳香族アルコール類の例としては、二価アルコール類、すなわち、ジオール類、例えば、ビスフェノールA,フェニルジエタノールアミン、グリセロールモノテレフタレートおよびトリメチロールプロパンモノテレフタレートが挙げられる。フェノールおよびその誘導体類等の一価芳香族アルコール類もまた使用することができる。該モノマー混合物は、また、非芳香族イソシアネート類および/またはアルコール類、通常はジイソシアネートおよびジオール、例えばポリウレタン類の調製において有用であることが知られている任意のものも含むことができる。アニオン性基を含有する適当なモノマー類の例としては、トリオール類、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびグリセロールのジカルボン酸類またはそれらの酸無水物類、例えば、コハク酸および酸無水物、テレフタル酸および酸無水物、とのモノエステル反応生成物、例えば、グリセロールモノスクシネート、グリセロールモノテレフタレート、トリメチロールプロパンモノスクシネート、トリメチロールプロパンモノテレフタレートなど、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−グリシン、ジ(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸などが挙げられ、場合によって、および、通常は塩基、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムなど、アンモニアまたはアミン、例えば、トリエチルアミン、との反応と組み合わせ、それによってアルカリ金属、アルカリ土類またはアンモニウムの対イオンを形成する。
【0036】
芳香族基を有する適当なアニオン性連鎖成長ポリマーの例としては、芳香族基を有する少なくとも1つのモノマーおよびアニオン性基を有する少なくとも1つのモノマーを含むビニルまたはエチレン性不飽和モノマー類の混合物から、通常は、非イオン性モノマー類、例えば、アクリレート系およびアクリルアミド系モノマー類などと共重合して得られるアニオン性ビニル付加ポリマー類が挙げられる。
【0037】
芳香族基を有する適当なアニオン性多糖類の例としては、デンプン、グァーガム、セルロール、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、グルカン、キサンタンガム、ペクチン、マンナン、デキストリン、好ましくはデンプン、グァーガムおよびセルロース誘導体が挙げられ、適当なデンプンとしては、ジャガイモ、トウモロコシ、コムギ、タピオカ、コメ、モチトウモロコシおよびオオムギが挙げられ、好ましくはジャガイモである。多糖類中のアニオン性基は、天然物および/または化学処理によって導入されたものであり得る。多糖類中の芳香族基は、技術的に既知の化学的手法によって導入することができる。
【0038】
天然に存在する芳香族アニオン性ポリマー類および本発明によるそれらの変性物、すなわち、変性した天然に存在する芳香族アニオン性ポリマー類としては、木材およびある木材種の樹皮の有機抽出液ならびにそれらの化学変性物中、通常はそれらのスルホン化変性物中に存在する天然に存在するポリフェノール物質が挙げられる。該変性ポリマー類は、例えば、亜硫酸パルプ化およびクラフトパルプ化等の化学処理によって得ることができる。このタイプの適当なアニオン性ポリマー類の例としては、リグニン系ポリマー類、好ましくはスルホン化リグニン類、例えば、リグノスルホネート、クラフトリグニン、スルホン化クラフトリグニン、およびタンニン抽出物が挙げられる。
【0039】
芳香族基を有するアニオン性ポリマーの重量平均分子量は、とりわけ、使用されるポリマーのタイプによって決まる広い限度内で変動することができ、通常それは少なくとも約500、適切には、約2,000を超え、好ましくは約5,000を超える。その上限は、重要ではなく、それは約200,000,000、通常は、約150,000,000、適切には、約100,000,000であり、好ましくは約10,000,000であり得る。
【0040】
芳香族基を有するアニオン性ポリマーは、とりわけ、使用されるポリマーのタイプによって決まる広い範囲で変化するアニオン置換度(DS)を有することができ、DSは、通常、0.01〜2.0、適切には、0.02〜1.8、好ましくは0.025〜1.5であり、芳香族置換度(DS)は、0.001〜1.0、通常は0.01〜0.8、適切には、0.02〜0.7、好ましくは0.025〜0.5であり得る。該アニオン性ポリマーが、カチオン性基を含有する場合、そのカチオン置換度(DS)は、例えば、0〜0.2、適切には、0〜0.1、好ましくは0〜0.05であり得、そのアニオン性ポリマーは全体としてはアニオン性電荷を有する。通常、該アニオン性ポリマーのアニオン電荷密度は、乾燥ポリマー1g当たり0.1〜6.0meqv、適切には0.5〜5.0、好ましくは、1.0〜4.0の範囲内である。
【0041】
本発明に従って使用することができる適当な芳香族のアニオン性有機ポリマー類としては、これにより参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,070,236号および第5,755,930号、国際特許出願公開WO95/21295、WO95/21296、WO99/67310、WO00/49227およびWO02/12626に記載されているものが挙げられる。
【0042】
上記のカチオン性およびアニオン性濾水性向上剤および歩留まり向上剤に加えて、低分子量のカチオン性有機ポリマー類および/または無機アルミニウム化合物もまた濾水性向上剤および歩留まり向上剤として使用することができる。
【0043】
脱水助剤および歩留まり向上剤と共に使用することができる低分子量(以後LMWと呼ぶ)カチオン性有機ポリマー類としては、アニオン性くず捕捉剤(ATC)のように通常は称され、使用されるものが挙げられる。ATC類は、紙料中に存在する邪魔/有害なアニオン性物質に対する中和剤および/または固定剤としておよび濾水性向上剤および歩留まり向上剤と一緒に使用すると、しばしばさらに改善された濾水性および/または歩留まりを提供するものとして当技術分野では知られている。LMWカチオン性有機ポリマーは、天然または合成源から誘導することができ、好ましくは、それはLMW合成ポリマーである。このタイプの適当な有機ポリマー類としては、LMWの高度に荷電したカチオン性有機ポリマー類、例えば、ポリアミン類、ポリアミドアミン類、ポリエチレンイミン類、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドに基づくホモポリマーおよびコポリマー類、(メタ)アクリルアミド類および(メタ)アクリレート類、ビニルアミド系ならびに多糖類などが挙げられる。脱水助剤および歩留まり向上剤ポリマーの分子量に関して、該LMWカチオン性有機ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは低めであり、それは、適切には、少なくとも約2,000、好ましくは少なくとも約10,000である。その分子量の上限は、通常約2,000,000〜約3,000,000である。適当なLMWポリマー類は、約2,000から約2,000,000までの重量平均分子量を有することができる。
【0044】
本発明によるATCとして使用することができるアルミニウム化合物類としては、ミョウバン、アルミン酸塩類、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびポリアルミニウム化合物類、例えばポリ塩化アルミニウム類、ポリ硫酸アルミニウム類、塩化物イオンおよび硫酸イオンの両方を含有するポリアルミニウム化合物類、ポリケイ酸−硫酸アルミニウム類など、ならびにそれらの混合物が挙げられる。そのポリアルミニウム化合物類は、また、塩化物イオン以外のアニオン類、例えば、硫酸、リン酸、ならびに有機酸類、例えば、クエン酸およびシュウ酸などからのアニオン類を含有することもできる。
【0045】
好ましいアニオン性ポリマーとしては、Eka Chemicalsから、PLの称号のもとで市販されている、例えば、PL1610、PL1710およびPL8430が挙げられる。加えて、Eka Chemicals製のカチオン性ポリマー、例えば、PL2510も本発明において使用することができる。
【0046】
1つの好ましい実施形態において、該歩留まり向上系は、アニオン性のシリカ系粒子を含む。適当なアニオン性のシリカ系粒子の例としては、約100nmより下の、例えば、約20nmより下または約1〜約10nmの範囲の平均粒径を有するものが挙げられる。好ましくはその平均粒径は、約1から約5nmまでである。シリカの化学では標準的であるように、該粒径は、凝集していても凝集していなくてもよい一次粒子の平均粒度を表す。一実施形態によれば、該アニオン性のシリカ系粒子は、凝集したアニオン性シリカ系粒子である。該シリカ系粒子の比表面積は、適切には、少なくとも50m/g、例えば、少なくとも100m/gである。一般に、該比表面積は、最大約1700m/gまで、適切には、最大約1000m/gまでであり得る。その比表面積は、Analytical Chemistry 28(1956年):12、1981〜1983頁に、G.W.Searsにより、および米国特許第5,176,891号に記載されているように、滴定を妨げる可能性のあるアルミニウムおよびホウ素種のような試料中に存在する任意の化合物について適切な除去または調整をした後、NaOHによる滴定を用いて測定する。その示された面積は、かくして、該粒子の平均比表面積を表す。
【0047】
本発明の一実施形態において、該アニオン性のシリカ系粒子は、50〜1000m/g、例えば、100〜950m/gの範囲内の比表面積を有する。該シリカ系粒子は、約8〜50%、例えば、10〜40%の範囲のS値を有しており、300〜1000m/g、適切には、500〜950m/g、例えば、750〜950m/gの範囲の比表面積を有するシリカ系粒子を含有するゾル中に存在することができ、そのゾルは、上記のように変性することができる。該S値は、J.Phys.Chem.60(1956年)、955〜957頁にIlerおよびDaltonにより記載されているようにして測定し、計算する。そのS値は、凝集またはミクロゲル形成の程度を示し、低いS値ほど高度の凝集を示す。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態において、該シリカ系粒子は、適切には約1000m/gを超える高い比表面積を有する。その比表面積は、約1000〜1700m/g、例えば1050〜1600m/gの範囲であり得る。
【0049】
本発明による方法において使用することができる好ましいシリカ系粒子としては、Eka ChemicalsからNPの称号で入手できるシリカ系粒子、例えば、NP320およびNP442が挙げられる。
【実施例】
【0050】
材料、装置および試験方法ならびに実施例で使用した材料を以下に記す。
【0051】
材料
クラフトパルプは、米国南部の工場から得た。そのパルプは、D1およびD2漂白段階からのものであった。D2段階の広葉樹(HW)パルプおよび針葉樹(SW)パルプの試料を過酸化物(P)段階の追加によってより高い明度のレベルまで漂白した(D0−Eop−D1−D2−P)。それらのパルプをバレービーター(Valley Beater)中で別々に精製した。パルプ精製濾水度レベル(CSF)を精製後の60%広葉樹パルプ/40%針葉樹パルプ混合物についての濾水度と共に表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
手すき紙のさまざまな組を作るために使用した化学薬品としては、充填剤、サイズ剤、カチオンデンプン、シリカゾル歩留まり向上剤、イオン性ポリマー、蛍光増白剤、担体、および染料が挙げられる。
【0054】
装置および試験法
手すき紙を作るためおよび所望の特性を測定するために使用した器具、装置、および試験法は次の通りである。
【0055】
使用した装置は、1)パルプを精製するためのバレービーター、2)手すき紙を作るための手すき紙モールド、3)ウェットプレスおよび手すき紙を乾燥させるためのドラムダイヤーズ(drum dyers)、4)手すき紙をコーティングするための自動ドローダウンテーブル、5)明度、白色度、散乱係数および光吸収係数の試験のためのテクニダイン明度計(Technidine brightness meter)、6)濁り度および濾水性を測定するためのDDAテスター(DDA tester)である。
【0056】
明度D65試験法を、ISO2470:1999に従って該テクニダインを用いて行った。UV含量の較正は、ISO11475:2002に記載されており白色度CIE/10°はISO1475:2002に従う。
【0057】
精製および未精製パルプの濾水度を測定する試験方法は、濾水度試験のカナダ規格(TAPPI法T227)を用いた。
【0058】
ナノテクノロジー
2つのナノ粒子技術を使用した。1つは、Eka Chemicalsにより製造された第三世代のアニオン性コロイド状シリカゾル粒子(NP)からなり、もう1つは、既存の第一世代の技術によるもの(BMA−0)である。NPナノ粒子は粒度がより小さく、酸系およびアルカリ系に対して適する改質表面を有しており最大約25nmまでの長連鎖を形成することができる。そのシリカの一次粒子は、多孔性ではなく球形であり、それらは、500〜3,000m/gの範囲の表面積を有しており、一方膨潤した木材繊維の表面積は、約200m/gである。そのシリカの表面は、酸性であり、陽子がシラノール基から解離している。BMA−0粒子とNP粒子の間の違いは、図1および2に示されている。
【0059】
(比較例1)
いくつかの紙特性に対する精製の効果を評価するために実験を行った。針葉樹パルプおよび広葉樹パルプを、それぞれ、製紙工場のD2漂白段階(すなわち、第2のClO漂白段階)から集めた。そのパルプのいくらかを精製しないで残し、そのパルプの一部をバレービーター中でさまざまな度合いの濾水度まで精製した。該針葉樹パルプおよび広葉樹パルプは、それぞれ、380CSFおよび340CSFまで精製した。明度パッド(5グラム)を精製してないパルプと精製したパルプとからつくり、Technidyne Color Labにより測定し、同様に、手すき紙(1.6グラム)を両方のパルプを用いてつくり、精製による明度の減少を評価した。
【0060】
図3および4は、精製がパルプおよび紙の明度に対して有する効果を示す。図3において、針葉樹パルプは精製後その明度を9%減少したが、紙の減少は、25%の明度の減少でより顕著であった。図4において、広葉樹パルプの明度は3.4%減少し、一方紙はその明度が精製後17%減少した。これら2つの形態は、広葉樹と針葉樹との間の減少の違いを示しているだけでなく、最も重要なことだが、パルプを精製することによって紙が一層の明度を失うことを示している。白色度は、明度と同じ傾向をたどり、すなわち、精製によって白色度の減少が同様に観察された。D1漂白段階(すなわち、最初のClO漂白段階)からのパルプは図5において見ることができるように同様の傾向を示した。
【実施例1】
【0061】
パルプ比(HW対SW)、蛍光増白剤、パルプのpH、および精製が明度および/または白色度に対して有する効果を測定するために実験を行った。D1漂白段階からのパルプを5つの精製濾水度レベルまで精製して、精製が明度に対して有する効果を評価した。3つの異なるパルプ比、100%広葉樹(100%HW)、40%の針葉樹と混合した60%の広葉樹(60%HW)、および100%針葉樹パルプ(0%HW)を評価した。2つのpHレベルを試験し、精製したパルプのpHを5.5および7に調整した。蛍光増白剤(OBA)は、3V製のOptiblancジスルホネートを使用した。表面用のOBAを、ファンクショニングベアラー(functioning bearer)として機能するように8.3%固形分に希釈したPVOH Celvol24−203と混合した。条件によってあるものはOBAを加えず、あるものはウェットエンド(WE)で20ポンド/トンを加え、他のものはサイズプレス(SP)で10ポンド/トンを加え、あるものは、ウェットエンドおよび表面OBAの両方の組み合わせ(WE & SP)により加えた。
【0062】
これらの実験に対して、未精製の広葉樹材は625CSFの、針葉樹材は、730CSFの濾水度を有した。その広葉樹パルプは、1.5%以内のばらつきで、510、425、355、および250CSFまで精製し、針葉樹パルプは、570、490、410、300CSFまで精製した。その精製したパルプを混合して、40%の針葉樹材を含む60%の広葉樹材とした。そのパルプから手すき紙をつくり、OBAをウェットエンドまたはサイズプレスのいずれかで添加した。そのOBAと繊維の相互作用を観察するために、その他の化学薬品はその手すき紙には添加しなかった。図5および6の検討結果は、OBAなしのパルプ(原紙)に対する精製の効果を示している。20ポンド/トンのOBAによりつくった手すき紙については、その添加は、OBAのウェットエンド添加をシミュレートするために、精製パルプに直接および手すき紙が作られる前に行った。10ポンド/トンのOBAによりつくった手すき紙については、そのOBAは、サイズプレス添加をシミュレートするために、自動ドローダウンによりその表面に加えた。手すき紙は、また、OBAのウェットエンドおよびサイズプレス添加の両方によっても製造した。
【0063】
図6および7は、精製、OBA添加およびパルプ比が明度および白色度に対して有する効果の結果を示している。図6の検討結果は、以下のことを示している:
1.精製は、紙の明度を、それらがOBAを有していてもいなくても、すべての条件に対して減少させる。未精製から高度に精製した試料にCSFが引き下げられるときは明度の著しい減少がある。
2.100%針葉樹からつくられた手すき紙は、明度のより高い減少を生じた。
3.10ポンド/トンの表面OBAは、原紙と比較して明度を著しく増大する。
4.20ポンド/トンのウェットエンドOBAは、さらに10ポンド/トンをサイズプレスに添加したときと比べて同様の明度を有する。
5.針葉樹材は、また、広葉樹材より高い精製による白色度の減少も有する。
【0064】
図7は、白色度に対して明度に関するのと同様の傾向を示しているが、10ポンド/トンの表面OBAが、20ポンド/トンのウェットエンドOBAおよび30ポンド/トンの組み合わされたOBAと同様の白色度を与える違いがある。
【0065】
図8の検討結果は、pHが、紙の明度または白色度のいずれに対しても効果を有さないようであることを明らかにしている。
【0066】
OBAのPVOHとの混合物10ポンド/トンの紙の表面への添加は、図9および10において見られるように目立った明度および白色度のピークを生ずる。そのピークは、広葉樹材、針葉樹材、およびその両方の組み合わせに対する繊維のデラミネーション点付近にあるようである。100%広葉樹繊維に対して、明度および白色度のピークは、約355CSFのところであり、100%針葉樹(0%HW)に対してはその明度および白色度のピークは約410CSFのところであり、組み合わされた60%広葉樹と40%針葉樹に対してはそのピークは約409CSFのところである。この予期しない明度の押し上げは、より低い濾水度まで精製することが可能であり(紙の構造および平滑度を改良、言い換えると紙の印刷適正を改良するため)、さらに、あたかも精製が、100%HWに対しては510CSFであり、100%針葉樹材(0%HW)に対しては570CSF、60/40HW/SW混合物に対しては534CSFであった場合と同じ明度を有することができることを意味する。図は、さらに、ピーク点を越えるさらなる精製は、明度および白色度の減少をもたらすことを示している。
【0067】
図6および7は、「OBAなし」の試料についての対照曲線はだいぶ小さいピークを有するが、PVOH担体と混合されたOBAが紙の表面に加えられたときは、その紙の明度および白色度に鋭いピークが存在することを示している(図9および10に示されているように)。
【0068】
この一連の実験から、精製が増すにつれて紙の明度および白色度は減少するが、その明度および白色度が増す点が精製中に存在するようである。これらの観察されたピークは、繊維デラミネーション点前後の精製レベルのところで起こるようである。
【0069】
(比較例2)
800を超える市販の白い非塗工紙銘柄を、それらの業界ランキングを決め、業界の明度および白色度レベルを見極めるために明度および白色度について試験した。その評価による結果は、非塗工上質紙銘柄が最も高い明度および白色度を有することを示した。トップ10の明度および白色度紙銘柄を、下の表1および2にまとめた。明度および白色度基準に対して試験したすべての紙銘柄(上表紙、塗工紙、およびLWCを除く)からの最も高い明度および白色度を有するトップ10の非塗工紙銘柄を表2および3に示す。これらのデータは、化学薬品添加配列実験に対する目標として役立つように評価した。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
この基準に対して選択した223個の市販非塗工白紙についての最低から最高までの明度レベルは、D65明度において103.48から116.84まで変動した。同様に、CIE白色度についての範囲は、90.54単位から170.64単位まで変動した。
【実施例2】
【0073】
化学薬品添加配列実験:未塗工漂白紙の明度および白色度の最適化を試みるためにいくつかの一連の実験を行った。明度および白色度に影響を及ぼすと考えた主な要因は次のものである:
1.パルプの明度。
2.選択された化学薬品(漂白、ウェットエンドおよび表面)。
3.紙の明度および白色度を増すための最適な化学薬品量および化学薬品添加配列。
【0074】
広葉樹パルプおよび針葉樹パルプの試料を、製紙工場のD2漂白段階から得た。そのD2段階のパルプ試料からの広葉樹材(HW)および針葉樹材(SW)を過酸化物(P)段階の追加(D0−Eop−D1−D2−P)によってより高い明度レベルまで漂白した。その工場から得たパルプは、最初のClO段階、抽出段階(苛性処理、加圧O処理および過酸化物処理を含む)、および第1および第2ClO段階を経ていた。このパルプを次に過酸化水素を添加することによってさらに漂白した。パルプの明度および精製濾水度(CSF)をそれぞれ表4および5に示す。SW−Pパルプを、1つの化学薬品から3つの化学薬品までの添加配列についての実験に対して使用した。SW−D2パルプを、4つの化学薬品からすべての化学薬品配列までについて使用した。該SW−Pは、7.07のpHを有しており、該SW−D2は、5.63のpHを有していた。
【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
使用した化学薬品およびそれらの分量を下の表6に示す。その実験は、ウェットエンド化学薬品を、これらが繊維に対して有する効果を見るために、その時点で1つを添加することからなるものであった。表7は、この一連の実験で使用したOBA、染料およびPVOHの説明をしている。
【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
表6の化学薬品は、抄紙機のウェットエンドをシミュレートするために、その時点で1つを繊維に添加した。追加の化学薬品は、手すき紙を乾燥した後でその表面に加えた。表面のOBAおよびPVOH(表7)は、15mlの8.3%固形分のPVOHに対して0.1ml〜1mlのOBAの割合で手すき紙の表面に加えた。
【0081】
図11は、手すき紙に加えた化学薬品で、OBAが最も高い明度の増加を有し、その結果、わずか2ポイントだけ増加した(2番目に高い増加)PCCと比較すると、19ポイントの明度の増加があって繊維に対して最高の親和性を有したことを示している。染料は、明度に対して影響がなく、その他の化学薬品の添加は明度の減少を引き起こした。
【0082】
図12は、ウェットエンドにおいてOBAを上記の化学薬品と組み合わせたときの手すき紙明度効果を示している。最高の明度はOBAをPCCと組み合わせたときに得られている。この組み合わせは、明度を108ポイントから112ポイントに上げている。
【0083】
第3の化学薬品の添加は、2つの化学薬品を超えて手すき紙の明度を改善することはなかった。その明度は、2つの化学薬品を繊維に加えたときのOBAとPCCとの最良の実施の組み合わせと同レベルのものであった。3つの化学薬品添加配列によるその最良の実施の組み合わせは、OBA+PCC+ASAおよびOBA+PCC+染料であった。しかしながら、OBA+PCC混合物へのASAまたは染料のいずれかの添加は、明度を112ポイントより上に増加させることはなく、この一連の実験に対してウェットエンドにおける化学薬品の配列が頭打ちになったことを示した。
【0084】
表8は、いくつかの化学薬品の配列が、表面のOBAにその他のものよりより順調に反応することを示している。表8において、同じ量の表面OBAが、OBA+PCC+PL配列(わずか110.75明度ポイントを有する)よりむしろOBA+PCC+ASA配列に対して明度を増加しており(115.9明度ポイントに達する)、より有効であることを見ることができる。同様にOBA+染料+PCCの配列は、その手すき紙が116.53ポイントの明度を有するのでさらに良好な順列である。該表は、また、OBA以外のウェットエンド化学薬品が存在しない場合、表面のOBAは、紙の明度をわずか1.5ポイントだけ増すことも示している。上記のことは、ウェットエンド化学薬品およびそれらの配列が紙の明度を増加するのに非常に重要であることを示している。
【0085】
【表8】

【0086】
表8および図14の検討結果から、OBA+染料およびOBA+染料+PCCの配列が最高の明度を有していること、およびOBA+PCC+PLが最低の明度を有しており、PLは、PCCの後に続けるべきでないことを示唆していることが明らかである。
【0087】
別の実験においては、ASA上のデンプンをStalokジャガイモデンプンと置き換え、ポリマーPL8430をPL2510と置き換えて系をよりカチオン性にした(表9)。
【0088】
【表9】

【0089】
Stalok 400ジャガイモデンプンおよびPL 2510を、4つの化学薬品(およびその後)の追加の配列に対して使用した。
【0090】
図15および16において見られるように、最良の4つの化学品配列「OBA+PCC+染料+ASA」は、3つの化学品配列OBA+染料+PCCの塗工明度および白色度のレベルを達成した。残りの条件のものはこの明度または白色度に到達できなかった。
【0091】
図15および16からの最良の4つの化学薬品配列を対照として選び、さまざまな化学薬品をその対照に加え、これらの化学薬品が対照の配列の明度および白色度を改良する効果を有するかを評価した。図17および18の検討結果は、「OBA+PCC+染料+ASA+PL8430」が対照の4つの化学薬品の配列より高い明度および白色度を得る最良の5つの化学薬品の配列であることを明らかにしている。
【0092】
同様に、図17および18のその最良の5つの化学薬品の配列を対照として選び、他の化学薬品をこの配列の化学薬品に加える。図19は、高い明度および白色度を有するさまざまな化学薬品配列を示す。6つの化学薬品配列および用量を下の表10に示す。
【0093】
【表10】

【0094】
この一連の実験は、化学薬品の配列とウェットエンドおよび表面OBAとの間の相互作用が紙の最高の明度および白色度を得るために非常に重要であることを示した。
【実施例3】
【0095】
この一連の実験のために使用したパルプは、低い初期明度を有していた。広葉樹材の明度は86.16ポイントであり、針葉樹材の明度は87.42ポイントであった。白色度は、それぞれ、71.83および80.31であった。使用したウェットエンドOBAはLeucophor T−100であり、広葉樹材対針葉樹材の比率は70:30であった。その精製レベルを表11に示す。使用した化学薬品配列は、表10のものである。
【0096】
【表11】

【0097】
この一連の実験は、ウェットエンドに加えられた化学薬品が正しい配列および用量を有している場合は精製による明度の減少はないことを示している。図20は、手すき紙の2つの異なる組の間の比較を示している。両方の組共、ウェットエンドおよびサイズプレスに同じ量のOBAを有する。手すき紙の1つの組は、OBAに加えてウェットエンドに加えられた化学薬品を有する。使用されたその化学薬品および添加の配列は、表10に示されている。使用したOBAはLeucophor T−100であり、ASA中のデンプンはStalok 400デンプンにより置換した。
【0098】
図20の検討結果は次のことを明らかにしている:
1.OBAのみをウェットエンドおよびサイズプレスに添加したときは精製による明度の減少が存在する。
2.図19に示されている配列のウェットエンド化学薬品の添加を伴う精製による明度の減少は実質的に存在しない。
3.ウェットエンドOBAが、内部および表面のOBA(WE & SP OBA)を有しており、ウェットエンド化学薬品を有さない手すき紙に対し0ポンド/トンから20ポンド/トンに増加したときは、中程度の明度の増加がある。
【0099】
しかしながら、異なる方法および化学薬品配列が使用される場合、図21に示されているようにかなりの明度の減少が存在する。図21は、その他の方法およびウェットエンド化学薬品が明度に対して有する効果を示す。図21の左側にある組の手すき紙は、上の表10に示されている化学薬品、配列、および用量により製造した。右側の手すき紙は、PCCベースを入れた、すなわち、化学薬品およびOBAを加える前にPCCを加えたパルプにより製造した。配列および用量は表12に示す。
【0100】
【表12】

【0101】
図21の検討結果は、図の右側の精製手すき紙は、精製によって明度を著しく落とすが、左側の手すき紙は最低の濾水度レベルにおいてさえ明度を維持することを明らかにしている。
【0102】
同様の傾向が白色度について見られる。図22は、図19において円で囲われている化学薬品配列(WE Chem1)についての白色度(左側)を、PCCを入れた化学薬品配列(WE Chem2)と比較したものを示している。図22の検討結果は、左側の手すき紙が、628CSFでの5ポイント高い明度から260CSFでの12ポイント高い明度まで変化するいずれの精製レベルにおいても著しく高い全体的白色度を有していることを明らかにしている。
【0103】
全体として、上の実施例は以下のことを示している:
1.OBA(PVOH中に混合されたもの)が紙の表面に加えられる場合、繊維デラミネーション点付近で異常な明度のピークを増す。これは、工場は、紙の明度または白色度を低下させないで低めの濾水度(繊維デラミネーション点またはその前後)まで精製できることを意味する。
2.紙の明度および白色度を現在の工場の実態より少ないOBAを用いて最高の業界基準まで増すいくつかの化学薬品の配列(図19に示されている)およびそれらの用量(表10)が見出される。
3.いくつかの化学薬品添加配列を伴うOBAとデンプンまたはPVOHと混合した表面のOBAとの組み合わせは、精製による明度の落ち込み(文献にこれまでたくさん書かれている)の代わりに非常に低い濾水度でさえ明度を維持する。
4.同様に、白色度は、化学薬品の配列を選択することにより製造された手すき紙で維持されるだけでなく、PCCベースを入れた化学作用によりその手すき紙より高く維持される。
【実施例4】
【0104】
紙の明度および白色度に対するサイズプレスにおいて使用する表面OBAの効果を評価するために実験を行った。
【0105】
下の図23は、D65明度に対するOBAの効果を示している。その手すき紙は、92.31のパルプ明度および7.07のパルプpHを有するP段階からの100%針葉樹パルプにより製造した。その手すき紙は、ウェットエンドにおいて添加された化学薬品は有さなかった。表面OBAのOptiblanc 3VをサイズプレスにおいてさまざまなOBA濃度で使用した。そのOBAは、8.3%固形分のPVOHと混合した。その図は、OBAの用量が紙の明度に対して有する効果を示している。該OBAおよびPVOHのmlでの用量が表Iに示されており、ウェットポンド/トンが図23に示されている。
【0106】
【表13】

【0107】
図24は、さまざまなタイプのOBAがコピー用紙の表面の明度に対して有する効果を示している。1mlのOBAを15mlのPVOHに混ぜ込んだ。コピー用紙は、85のD65/10明度および89の白色度を有する。該グラフは、Tinopalがその他のOBA製品よりわずかに良好な明度および白色度を有することを示している。
【0108】
表IIは、イオン電荷およびOBA製品のタイプを示している。すべてのOBAに対して、固形分は40%〜60%の範囲である。
【0109】
【表14】

【0110】
Tinopal ABP−Aは、テトラ蛍光増白剤であり、Tinopal PTもそうである。テトラスルホネートOBAは、ウェットエンドおよびサイズプレスの両方で使用することができる。Tinopal PTを非イオン性PVOHのCelvol 09−325とさまざまな割合の固形分で組み合わせて調査した。PVOHの固形分割合は、表面処理した紙のD65/10明度に効果を有するようである。この一連の実験に対しては、PVOH Celvol 09−325および24−203をさまざまな割合の固形分で、およびOBA Tinopal PTをさまざまな用量レベルで用いた。その紙はオフセット用紙でありその明度は102であった。Tinopal PT(テトラ)は、9%固形分でのPVOH 09−325と適合しないことが見られた。それゆえ、実験は、PVOH Celvol 24−203のより高い固形分(12%)で続けた。図25は、固形分パーセントが3%から6%に増加すると紙の明度が増加したことを示している。
【0111】
図26は、12%固形分におけるPVOH Celvol 24−203の性能を示している。該グラフは、このPVOHにより、より高いOBAの用量によりより高い明度を得ることができるが、低めの用量(0.25ml)では紙の明度は09−325を使用したときにより良好であることを示している。その明度は、PVOH 09−324および24−203の両方に対して0.5mlのOBAで同程度である。
【0112】
図27および28は、TinopalがPVOH Celvol 24−203の固形分割合およびOBAの用量によって紙の明度および白色度に影響を及ぼすことを示している。図27は、該OBAが増加すると、明度が、6%PVOH固形分では低下し、12%固形分では増加することを示している。図28は、該OBAの量が増加すると、紙の白色度は6%および12%の両方のPVOHで減少することを示している。
【0113】
図27および28は、Tinopalによりより良好な明度および白色度を得るための最良の条件は、低いOBA用量(20mlのPVOH中に0.25ml)および6%PVOH Celvol 24−203であることを示している。
【0114】
PVOHおよびTinopal OBAによるいくつかの互換性の問題が存在し得るため、およびPVOH固形分およびOBA用量に関する狭い機能範囲の理由から、図24における次にベストの性能3つ(Optiblanc、Blankophor、およびLeucophor蛍光増白剤)の性能も調査した。
【0115】
3つの異なる漂白段階(D1、D2、およびP)からで、それぞれ83.9、86.6、および89.46のパルプの明度を有する広葉樹および針葉樹のパルプ(60:40)を使用して手すき紙を製造した。その手すき紙を次にOBAとPVOHの混合物により塗工した。図29における結果は、明度および白色度の両方で、OtiblancがBlankophorより良く機能することを示している。
【0116】
50%固形分のOBA Leucophor CEを、9.9%固形分のPVOH Celvol 310と混合した。図30および31は、Leucophor CEとPVOH 310との比率が紙の明度および白色度に対して有する効果を示している。
【0117】
図30および31の結果によれば、紙のよりよい明度および白色度を得るための最良の比率は、10mlのPVOH対0.25mlのOBAの比率を使用することである。PVOH:OBAの塗工重量は、4gsmから6gsmまで変化する。
【0118】
パルプのpHの明度および白色度に対する効果を評価した。図32は、LeucophorおよびOptiblankジに対しては、pH7.1がより良好な明度を与えることを示している。その他のOBAについてはpHによる明度に対する顕著な影響はない。図33は、Optiblankジが7.1のpHでより良い白色度を有することを示している。
【0119】
図34は、OBA Leucopher CEおよびPVOH(Celvol 310または325)の表面添加の明度に対する効果を示している。該グラフは、1)ウェットエンド化学薬品およびOBAによるが、表面OBAはなし(未塗工)、2)ウェットエンドOBAおよび化学薬品ならびにPVOHと一緒の表面OBAで製造した手すき紙、および3)ウェットエンド化学薬品またはOBAのいずれもがなく、あるいは表面OBAおよびPVOHがないブランクの手すき紙、についての明度結果を示している。
【0120】
該手すき紙は、3つの精製レベル(470、324、および250CSF)における70:30のHW:SW比により製造した。PVOHのLeucophorに対する比は10ml対0.25mlであった。その化学薬品配列は、第1の成分として繊維に塗布したOBAを有するウェットエンド化学薬品1(上の表10)と同様であった。その表面は、PVOHとLeucophorの混合物を塗工し、その塗工量は約4gsmであった。図34は、その塗工が適用されたとき明度の非常に顕著な増加が存在することを示している。ブランクの手すき紙は、表面がPVOH/Leucophor CE混合物により塗工されたとき、紙の明度のより顕著な増加を示している。同様の結果が白色度についても得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製パルプから紙を製造する方法であって、セルロース繊維懸濁液をその濾水度が少なくとも約100CSFに低下するまで精製するステップと、前記精製ステップの途中または後で、任意のさらなるウェットエンド化学薬品を添加する前に、前記セルロース繊維を少なくとも1つの蛍光増白剤(OBA)と接触させるステップとを含む方法。
【請求項2】
OBA組成物をサイズプレス中の紙の表面に加えるステップをさらに含み、前記OBA組成物が、紙の明度および/または白色度を増すのに十分な量の少なくとも1つのOBAおよび少なくとも1つのポリマー担体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サイズプレス中のOBAを、パルプ1トン当たり約0.5から約15ポンドの量で添加する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー担体が、ポリビニルアルコール(PVOH)であり、PVOH:OBAの重量比が、約1:1から約16:1までの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
PVOH:OBAの重量比が、約2:1から約8:1までの範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該OBAの後および任意のさらなるウェットエンド化学薬品の前に、ウェットエンドにおいてPCC充填剤および/または染料を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該PCCをパルプ1トン当たり約100〜約600ポンドの量で添加し、該染料をパルプ1トン当たり約0.01〜約0.25ポンドの量で添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該PCCおよび/または染料の添加後に該ウェットエンドに歩留まり向上系を加えるステップをさらに含み、該歩留まり向上系がアニオン性ポリマーおよびミクロゲルまたは少なくとも部分的に凝集したナノ粒子アニオン性シリカゾルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
該アニオン性ポリマーをパルプ1トン当たり約0.1〜約2.5ポンドの量で添加し、該シリカゾルをパルプ1トン当たり約0.1〜約2.5ポンドの量で添加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該歩留まり向上系を加える前に該ウェットエンドにカチオン性ポリマーを添加するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記セルロース繊維懸濁液を、該OBAを添加するステップの前に所定の濾水度レベルに低下するまで精製する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記セルロース繊維懸濁液を、より高い濾水度レベルと比較したとき明度および/または白色度における増大をもたらす濾水度レベルに低下するまで精製する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記セルロース繊維懸濁液を、該繊維デラミネーション点に実質的に対応する濾水度レベルに低下するまで精製する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
セルロース繊維懸濁液をその濾水度が少なくとも約100CSFに低下するまで精製するステップと、サイズプレスにおいて紙表面にOBA組成物を添加するステップとを含む精製パルプから紙を製造する方法であって、前記OBA組成物が、少なくとも1つのOBAおよび少なくとも1つのポリマー担体を該紙の明度および/または白色度を増すのに十分な量で含む方法。
【請求項15】
該サイズプレスにおけるOBAを、パルプ1トン当たり約0.5〜約15ポンドの量で添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー担体が、ポリビニルアルコール(PVOH)であり、PVOH:OBAの重量比が、約1:1〜約16:1の範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
PVOH:OBAの重量比が、約2:1〜約8:1の範囲である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記セルロース繊維懸濁液を、該OBAを添加する前に所定の濾水度レベルに低下するまで精製する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記セルロース繊維懸濁液を、より高い濾水度レベルと比較したとき明度および/または白色度の増大をもたらす濾水度レベルに低下するまで精製する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セルロース繊維懸濁液を、該繊維デラミネーション点に実質的に相当する濾水度レベルに低下するまで精製する、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−523835(P2010−523835A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502288(P2010−502288)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/059250
【国際公開番号】WO2008/124489
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】