紙容器の製造方法
【課題】 一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する紙容器の製造方法を提供する。
【解決手段】 側板原紙11と底板原紙とからなる紙容器の製造方法において、まず、容器の内面側に第1フィルム21が、容器の外面側に第2フィルム22が形成され、対向する側縁14a及び14bを有する扇形の側板原紙11を準備する。次に、一方の側縁14aに、第1段部及び第1段部の2倍の厚さの第2段部18を形成し、第1段部の端部の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、第1段部の残り部分に重ね合わせて一体化した折り返し部分19を形成する。最後に、側板原紙11を筒状に丸め、側縁14bを折り返し部分19及び第2段部18に重ね合わせた部分に押圧状態で熱を加えて、側縁14bの第1フィルム21と、折り返し部分19の第1フィルム21及び紙よりなる第2段部18とをそれぞれ熱溶着させて、側縁14aと側縁14bとを一体化させる。
【解決手段】 側板原紙11と底板原紙とからなる紙容器の製造方法において、まず、容器の内面側に第1フィルム21が、容器の外面側に第2フィルム22が形成され、対向する側縁14a及び14bを有する扇形の側板原紙11を準備する。次に、一方の側縁14aに、第1段部及び第1段部の2倍の厚さの第2段部18を形成し、第1段部の端部の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、第1段部の残り部分に重ね合わせて一体化した折り返し部分19を形成する。最後に、側板原紙11を筒状に丸め、側縁14bを折り返し部分19及び第2段部18に重ね合わせた部分に押圧状態で熱を加えて、側縁14bの第1フィルム21と、折り返し部分19の第1フィルム21及び紙よりなる第2段部18とをそれぞれ熱溶着させて、側縁14aと側縁14bとを一体化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紙容器の製造方法に関し、特に液体や食品を収容する紙容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の紙容器の外観形状を示した斜視図であり、図9は、図8に示した紙容器を製造するための紙材料の平面図であり、図10は、図9に示したX−Xラインの拡大断面図であり、図11は、側板原紙を筒状に丸めた状態の外観形状を示した平面図であり、図12は、側板原紙の溶着工程を示した図であって、図11で示した“X”部分の拡大模式図である。
【0003】
これらの図を参照して、紙容器70は、紙製のシート体84の両面にポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる耐水性及び熱溶融性の第1フィルム81及び第2フィルム82をラミネートしたものからなる原紙を扇形に打抜いた側板原紙71と、円形に打抜いた底板原紙72とから成形される。尚、側板原紙71は対向する側縁74a及び74bを有する。
【0004】
紙容器70の成形に当たっては、まず、側板原紙71を第1フィルム81の側を内側にして筒状に丸め、側縁74aが筒の内面側に、側縁74bが筒の外面側になるように側縁74aと側縁74bとを重ね合わせる。次に、重ね合わせ部分に一対の熱板90a及び90bで熱を押圧状態で加え、同素材の側縁74aの第2フィルム82と側縁74bの第1フィルム81とを熱溶着させて、側縁74aと側縁74bとを一体化させ、側板原紙71を筒形状にする。最後に、筒形状の側板原紙71の開口の一方を外縁を折り曲げた底板原紙72で塞ぎ、紙容器70の形成工程を終了する。
【0005】
しかし、このように形成された紙容器70は、内面側に露出する側縁74aの端部75が第1フィルム81又は第2フィルム82に覆われていないため、紙容器70に収容した液体や、食品から発生する水分や油分等が、図の二点鎖線の矢印で示すように端部75からシート体84に侵入するという、品質上の問題があった。
【0006】
そこで、紙容器70の内面側に露出する端部75の処理方法として、以下のような方法が提案されている。
【0007】
図13は、従来の紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成された状態を示した拡大模式図であり、図14は、図13で示した段部を折り返した状態を示した拡大模式図であり、図15は、図14で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【0008】
これらの図のうち、まず、図13を参照して、一方の側縁74aの紙容器の外面側を端部75に沿って除去し、側板原紙の厚さHの半分の厚さH/2及び幅Lを有する段部77を形成する。この段部77の一部には、食品用容器に使用することが可能な接着剤80を塗布する。
【0009】
次に、図13及び図14を参照して、段部77の端部75の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、段部77の残り部分に重ね合わせて接着剤80を介して一体化する。
【0010】
最後に、図15を参照して、まず、折り返し部分79を含む側縁74aと側縁74bとを重ね合わせる。次に、重ね合わせ部分に一対の熱板90a及び90bで熱を押圧状態で加え、折り返し部分79の第1フィルム81及び側縁74aの第2フィルム82と側縁74bの第1フィルム81とを熱溶着させて、側縁74aと側縁74bとを一体化させる。
【0011】
このようにすると、シート体84が端部75も含め第1フィルム81又は第2フィルム82に完全に覆われるため、図の二点鎖線の矢印で示すように、紙容器に収容した液体や、食品から発生する水分や油分等がシート体84に侵入せず、紙容器の品質が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、近年、耐水性と耐ガス性といった異なる性質を合わせ持たせるために、内面側と外面側とに異なる性質のフィルムをそれぞれ形成した紙容器が提案されているが、そのような紙容器に上述した端部処理を行うと、以下のような問題が生ずる。
【0013】
図16は、異素材フィルムが形成された側板原紙の、従来の紙容器の製造方法による溶着工程を示した拡大模式図であって、図15に対応する図であり、図17は、図16で示した側板原紙の折り返し部分の剥離状態を示した拡大模式図である。
【0014】
これらの図のうち、まず、図16を参照して、第2フィルム82が、第1フィルム81と異なる素材の、耐ガス性を有するポリエチレン(PE)よりなるものに置き換わっている。尚、他の構成要素は、図15に示したものと同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0015】
この状態で、折り返し部分79を含む側縁74aと側縁74bとを重ね合わせた部分に熱を加えると、同素材の第1フィルム81同士は熱溶着されるが、素材の異なる第1フィルム81と第2フィルム82とは“A”部分において十分に熱溶着されない。したがって、側縁74aと側縁74bとが十分に一体化されていない部分が生じる。
【0016】
すると、図17の矢印に示すように、側縁74bに紙容器の外面側に向かう外力が掛かった場合、“A”部分及び折り返し部分79は接着状態を維持できず、剥離する。尚、折り返し部分79を接着する接着剤は、上述したように、紙容器の用途上、食品用容器に使用できるものでなければならないため、接着力の強い他の素材の接着剤に置き換えることはできない。
【0017】
上記のように従来の紙容器の製造方法では、接着剤を中心とした側縁同士の一体化を図るため、強度的に十分とは言えない。特に、紙容器の内面側と外面側とに異なる素材のフィルムを形成すると、一方の側縁と他方の側縁との一体化状態が不安定であった。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する紙容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紙容器の製造方法であって、少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、側縁の一方を端部に沿って原紙の他方面から除去し、第1厚さ及び第1幅を有する第1段部と第1段部に隣接する第1厚さの2倍の第2厚さ及び第2幅を有する第2段部を形成する工程と、第1段部の端部側の一部を他方面側に折り返し、第1段部の残り部分に重ね合わせて一体化する工程と、原紙を一方面側に丸めて側縁の他方を第2段部に重ね合わせ、第1フィルムを熱溶着させて側縁の一方に一体化させる工程とを備えたものである。
【0020】
このように構成すると、側縁の他方のフィルムが側縁の一方の第2段部に熱溶着すると共に側縁同士の接合部分の段差が小さくなる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1幅は、第2幅の2倍に設定されるものである。
【0022】
このように構成すると、第1フィルムが第1フィルムに熱溶着する長さと紙に熱溶着する長さとがほぼ等しくなる。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、原紙の他方面には、第1フィルムと異なった第2フィルムが形成されるものである。
【0024】
このように構成すると、第1フィルムと第2フィルムとは接しない。
【0025】
請求項4記載の発明は、紙容器の製造方法であって、少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、側縁の一方を端部に沿って原紙の他方面から除去し、原紙の厚さの半分の厚さ及び所定幅を有する段部を形成する工程と、段部の少なくとも一部に熱溶融性フィルムを設置する工程と、段部の端部側の一部を他方面側に折り返し、段部の残り部分に熱溶融性フィルムを挟んだ状態で重ね合わせ、段部を熱溶融性フィルムを熱溶着させて一体化する工程と、原紙を一方面側に丸めて側縁の他方を段部の折り返し部分の外面に重ね合わせ、第1フィルムを熱溶着させて側縁の一方に一体化させる工程とを備えたものである。
【0026】
このように構成すると、段部の折り返し部分が熱溶融性フィルムの熱溶着で一体化する。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、熱溶融性フィルムは、段部の折り返し部分の端部も覆うように配置されるものである。
【0028】
このように構成すると、段部の折り返し部分全体が一体化する。
【0029】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の構成において、原紙の他方面には、第1フィルムと異なった第2フィルムが形成され、側縁の他方の端部は段部の折り返し部分の先端部に整列するものである。
【0030】
このように構成すると、第1フィルムは第2フィルムに接しない。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、側縁の他方のフィルムが側縁の一方の第2段部に熱溶着すると共に側縁同士の接合部分の段差が小さくなるので、一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1フィルムが第1フィルムに熱溶着する長さと紙に熱溶着する長さとがほぼ等しくなるので、一体化状態が安定する。
【0033】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、第1フィルムと第2フィルムとは接しないので、商品の品質が向上すると共に第2フィルムは一体化状態に影響しない。
【0034】
請求項4記載の発明は、段部の折り返し部分が熱溶融性フィルムの熱溶着で一体化するので、折り返し部分の一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。
【0035】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、段部の折り返し部分全体が一体化するので、折り返し部分の一体化状態がより安定する。
【0036】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の効果に加えて、第1フィルムは第2フィルムに接しないので、側縁同士の接合不良が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段形成部が形成された状態を示した拡大模式図である。
【図2】図1で示した側縁の一方に第1段部及び第2段部が形成された状態を示した拡大模式図である。
【図3】図2で示した第1段部を折り返した状態を示した拡大模式図である。
【図4】図3で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成され、熱溶融性フィルムが設置される状態を示した拡大模式図である。
【図6】図5で示した段部を折り返して溶着する状態を示した拡大模式図である。
【図7】図6で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【図8】従来の紙容器の外観形状を示した斜視図である。
【図9】図8に示した紙容器を製造するための紙材料の平面図である。
【図10】図9に示したX−Xラインの拡大断面図である。
【図11】側板原紙を筒状に丸めた状態の外観形状を示した平面図である。
【図12】側板原紙の溶着工程を示した図であって、図11で示した“X”部分の拡大模式図である。
【図13】従来の紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成された状態を示した拡大模式図である。
【図14】図13で示した段部を折り返した状態を示した拡大模式図である。
【図15】図14で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【図16】異素材フィルムが形成された側板原紙の、従来の紙容器の製造方法による溶着工程を示した拡大模式図であって、図15に対応する図である。
【図17】図16で示した側板原紙の折り返し部分の剥離状態を示した拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、この発明の第1の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段形成部が形成された状態を示した拡大模式図であり、図2は、図1で示した側縁の一方に第1段部及び第2段部が形成された状態を示した拡大模式図であり、図3は、図2で示した端部を折り返した状態を示した拡大模式図であり、図4は、図3で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【0039】
これらの図を参照して、紙容器を製造するための紙材料の側板原紙11は、目付170〜500g/m2、厚さ0.2〜0.5mmの紙製のシート体24の一方面にPETよりなる厚さ30μmの第1フィルム21が、他方面にPEよりなる厚さ30μmの第2フィルム22がそれぞれ押出ラミネートにより形成された原紙を、図9の従来例で示したように扇形に打抜いたものからなる。尚、側板原紙11は対向する側縁14a及び14bを有する。紙容器の成形の際には、側板原紙11を第1フィルム21の側を内側にして筒状に丸め、側縁14a及び側縁14bを一体化させて、筒形状にする。
【0040】
側板原紙を筒形状にするに当たっては、まず、図1を参照して、側縁14aの紙容器の外面側の一部を端部15に沿って切削して除去し、側板原紙の厚さHの2/3の厚さ2H/3及び幅Lを有する段形成部16を形成する。尚、幅Lはここでは12mmとする。
【0041】
次に、図1及び図2を参照して、段形成部16の紙容器の外面側を端部15に沿って更に切削して除去し、厚さH/3及び幅2L/3を有する第1段部17を形成し、第1段部17の一部に接着剤20を塗布する。尚、段形成部16の残りの部分が第2段部18となる。このように第1段部17及び第2段部18の寸法を設定したことによる効果は後述する。尚、便宜上、第1段部17の厚さH/3を第1厚さと、第2段部18の厚さ2H/3を第2厚さと、第1段部17の幅2L/3を第1幅と、第2段部18の幅L/3を第2幅とする。
【0042】
次に、図2及び図3を参照して、第1段部17の端部15の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、第1段部17の残り部分に重ね合わせて接着剤20を介して一体化する。
【0043】
尚、図2で示したように、第1幅は第2幅の2倍に設定されていることから、折り返し部分19の幅Wは第2幅にほぼ等しくなる。このように構成されていることによる効果は後述する。又、第1厚みは第2厚みの1/2に設定されていることから、折り返し部分19の厚みは第2厚みにほぼ等しくなる。このように構成されていることによる効果も後述する。尚、折り返し部分19の幅は約4mm、第2幅は4mmとなり、これらの幅の合計は約8mmとなる。
【0044】
最後に、図4を参照して、側縁14aと側縁14bとの一体化においては、まず、側縁14bを側縁14aの折り返し部分19及び第2段部18に重ね合わせる。すると、上述したように、折り返し部分19の厚みと第2厚みとはほぼ等しいから、折り返し部分19の第1フィルム21及び第2段部18の表面とは、ほぼ面一の状態で側縁14bの第1フィルム21と接する。この状態で折り返し部分19及び第2段部18と側縁14bとが重なり合う部分に一対の熱板90a及び90bによって押圧しながら熱を加えると、側縁14bの第1フィルム21は、同素材のフィルムである折り返し部分19の第1フィルム21及び紙製の第2段部18のいずれとも熱溶着されるので、側縁14aと側縁14bとが完全に一体化する。
【0045】
このようにすると、側縁14bの第1フィルム21が側縁14aの第2段部18に熱溶着すると共に側縁14aと側縁14b同士の接合部分の段差である“B”部分が図16の従来例に比べて小さくなるので、一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。又、図3で示したように、折り返し部分19の幅Wは第2幅にほぼ等しいから、側縁14bの第1フィルム21が側縁14aの第1フィルム21に熱溶着する長さと、第2段部18に熱溶着する長さとがほぼ等しくなり、一体化状態が安定する。更に、第1フィルム21と第2フィルム22とは接しないため、商品の品質が向上すると共に第2フィルム22の存在が一体化状態に影響しない。
【0046】
図5は、この発明の第2の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成され、熱溶融性フィルムが設置される状態を示した拡大模式図であり、図6は、図5で示した段部を折り返して溶着する状態を示した拡大模式図であり、図7は、図6で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【0047】
これらの図を参照して、紙容器を製造するための紙材料の側板原紙11は、目付170〜500g/m2、厚さ0.3〜0.4mmの紙製のシート体24の一方面にPETよりなる厚さ30μmの第1フィルム21が、多方面にPEよりなる厚さ30μmの第2フィルム22がそれぞれ押出ラミネートにより形成された原紙を、図9の従来例で示したように扇形に打抜いたものからなる。尚、側板原紙11は対向する側縁14a及び14bを有する。紙容器の成形の際には、側板原紙11を第1フィルム21の側を内側にして筒状に丸め、側縁14a及び側縁14bを一体化させて、筒形状にする。
【0048】
側板原紙を筒形状にするに当たっては、まず、図5を参照して、側縁14aの紙容器の外面側の一部を端部35に沿って切削して除去し、側板原紙の厚さHの1/2の厚さH/2及び幅Lを有する段部37を形成する。尚、幅Lはここでは16mmとする。次に、段部37に厚さ20μmのPE、又は厚さ30μmのPETよりなる熱溶融性フィルム40を設置する。ここで、熱溶融性フィルム40は、後述する段部37の折り返し時に、端部35も覆うことができるように配置するが、このように構成することによる効果は後述する。
【0049】
次に、図6を参照して、段部37の端部35の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、段部37の残り部分に熱溶融性フィルム40を挟んだ状態で重ね合わせ、一対の熱板50a及び50bで押圧すると共に熱を加えて熱溶融性フィルム40を熱溶着させて、段部37を一体化する。ここで、上述したように幅Lは16mmであるから、折り返し部分39の幅はその1/2の約8mmとなる。
【0050】
このように構成すると、紙製の段部37の折り返し部分39が熱溶融性フィルム40の熱溶着で一体化するので、折り返し部分39の一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。
【0051】
又、上述したように、熱溶融性フィルム40は、折り返し部分39の端部35も覆うことができるように配置されているので、段部37の折り返し部分39の全ての面が内部で一体化し、折り返し部分39の一体化状態がより安定する。
【0052】
最後に、図7を参照して、側縁14aと側縁14bとの一体化においては、まず、側縁14bを、側縁14bの端部45が折り返し部分39の端部35に整列するように折り返し部分39に重ね合わせる。次に、重ね合わせ部分に一対の熱板90a及び90bによって押圧しながら熱を加え、同素材である折り返し部分39の第1フィルム21と側縁14bの第1フィルム21とを熱溶着させて、側縁14aと側縁14bとを一体化させる。
【0053】
このようにすると、第1フィルム21は第2フィルム22に接しないため、側縁14aと側縁14bとが十分に一体化されていない部分は生じない。又、折り返し部分39は熱溶融性フィルム40との熱溶着により、側縁14aと側縁14bとは各々の第1フィルム21同士の熱溶着により、各々十分に一体化しているため、側縁14aと側縁14bとの接合不良が生じない。
【0054】
尚、上記の各実施の形態では、側板原紙の一方面に第1フィルムが、他方面に第2フィルムがそれぞれ形成されていたが、少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性フィルムが形成されていればよい。
【0055】
又、上記の各実施の形態では、第1フィルムが特定の厚みのPETよりなるフィルムであったが、耐水性及び熱溶融性フィルムであれば、素材や厚みの異なるフィルムであってもよい。
【0056】
更に、上記の各実施の形態では、第2フィルムが特定の厚みのPEよりなるフィルムであったが、発泡PE、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)等、素材が異なるフィルムや、厚みが異なるフィルムであってもよい。
【0057】
更に、上記の各実施の形態では、側板原紙は1枚の紙製のシート体であったが、アルミニウム箔との貼り合せとした、2層又は3層以上の構造のシート体であってもよい。
【0058】
更に、上記の各実施の形態では、第1フィルム及び第2フィルムは押出ラミネートにより形成されていたが、ドライラミネート等、他の方法によって形成されてもよい。
【0059】
更に、上記の各実施の形態では、第1フィルムと第2フィルムとは異素材であったが、同素材であってもよい。
【0060】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1厚さ及び第2厚さの寸法が特定寸法に設定されていたが、第2厚さが第1厚さの2倍に設定されていれば、異なる寸法に設定されてもよい。
【0061】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1幅及び第2幅の寸法が特定寸法に設定されていたが、異なる寸法に設定されてもよく、第1幅は第2幅の2倍以外の寸法に設定されてもよい。
【0062】
更に、上記の第2の実施の形態では、側縁の他方が段部の折り返し部分の端部に整列するように折り返し部分に重ね合わされていたが、折り返し部分の外面にのみ重ね合わされていればよい。
【0063】
更に、上記の第2の実施の形態では、熱溶融性フィルムが折り返し部分の端部も覆うように配置されていたが、少なくとも折り返し部分に挟まれるように配置されていればよい。
【0064】
更に、上記の第2の実施の形態では、熱溶融性フィルムは特定の厚みのPETよりなるフィルム又はPEよりなるフィルムであったが、熱溶融性を有するものであれば他の素材よりなるフィルムであってもよい。又、第2フィルムと同素材のフィルムであれば、第2フィルムと熱溶融性フィルムとが熱溶着するので、折り返し部分の一体化状態が更に安定して良い。
【0065】
更に、上記の第2の実施の形態では、段部の幅の寸法が特定寸法に設定されていたが、異なる寸法に設定されてもよい。
【0066】
更に、上記の第1の実施の形態では、段形成部を形成した後、第1段部及び第2段部が形成されたが、第1段部から形成する等、他の形成方法により形成してもよい。
【0067】
更に、上記の各実施の形態では、第1段部、第2段部、段部の各々は、紙容器の外面側の一部を切削して除去し、形成されていたが、第2フィルムの該当箇所を除去した状態で端部を圧縮加工して、所望の段部形状としてもよい。
【0068】
更に、上記の各実施の形態では、紙容器の外面側は無地であったが、外面に模様等の印刷を施した後に第2フィルムを形成したり、内面側に模様等が印刷されたフィルムを第2フィルムとして形成したりすることで、紙容器の外面側に模様等を付したものにしてもよい。
【0069】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1段部の表面は、側板原紙の一方面及び他方面に対し平行になるように形成されていたが、端部に向かってテーパーをつけた傾斜面になるように形成されていてもよい。
【0070】
更に、上記の第2の実施の形態では、段部の表面は、側板原紙の一方面及び他方面に対し平行になるように形成されていたが、端部に向かってテーパーをつけた傾斜面になるように形成されていてもよい。
【0071】
更に、上記の各実施の形態では、熱板による熱溶着を行っていたが、超音波を用いた熱溶着を行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
11…側板原紙
14a、14b…側縁
15…端部
17…第1段部
18…第2段部
21…第1フィルム
22…第2フィルム
35…端部
37…段部
39…折り返し部分
40…熱溶融性フィルム
45…端部
70…紙容器
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は紙容器の製造方法に関し、特に液体や食品を収容する紙容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の紙容器の外観形状を示した斜視図であり、図9は、図8に示した紙容器を製造するための紙材料の平面図であり、図10は、図9に示したX−Xラインの拡大断面図であり、図11は、側板原紙を筒状に丸めた状態の外観形状を示した平面図であり、図12は、側板原紙の溶着工程を示した図であって、図11で示した“X”部分の拡大模式図である。
【0003】
これらの図を参照して、紙容器70は、紙製のシート体84の両面にポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる耐水性及び熱溶融性の第1フィルム81及び第2フィルム82をラミネートしたものからなる原紙を扇形に打抜いた側板原紙71と、円形に打抜いた底板原紙72とから成形される。尚、側板原紙71は対向する側縁74a及び74bを有する。
【0004】
紙容器70の成形に当たっては、まず、側板原紙71を第1フィルム81の側を内側にして筒状に丸め、側縁74aが筒の内面側に、側縁74bが筒の外面側になるように側縁74aと側縁74bとを重ね合わせる。次に、重ね合わせ部分に一対の熱板90a及び90bで熱を押圧状態で加え、同素材の側縁74aの第2フィルム82と側縁74bの第1フィルム81とを熱溶着させて、側縁74aと側縁74bとを一体化させ、側板原紙71を筒形状にする。最後に、筒形状の側板原紙71の開口の一方を外縁を折り曲げた底板原紙72で塞ぎ、紙容器70の形成工程を終了する。
【0005】
しかし、このように形成された紙容器70は、内面側に露出する側縁74aの端部75が第1フィルム81又は第2フィルム82に覆われていないため、紙容器70に収容した液体や、食品から発生する水分や油分等が、図の二点鎖線の矢印で示すように端部75からシート体84に侵入するという、品質上の問題があった。
【0006】
そこで、紙容器70の内面側に露出する端部75の処理方法として、以下のような方法が提案されている。
【0007】
図13は、従来の紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成された状態を示した拡大模式図であり、図14は、図13で示した段部を折り返した状態を示した拡大模式図であり、図15は、図14で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【0008】
これらの図のうち、まず、図13を参照して、一方の側縁74aの紙容器の外面側を端部75に沿って除去し、側板原紙の厚さHの半分の厚さH/2及び幅Lを有する段部77を形成する。この段部77の一部には、食品用容器に使用することが可能な接着剤80を塗布する。
【0009】
次に、図13及び図14を参照して、段部77の端部75の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、段部77の残り部分に重ね合わせて接着剤80を介して一体化する。
【0010】
最後に、図15を参照して、まず、折り返し部分79を含む側縁74aと側縁74bとを重ね合わせる。次に、重ね合わせ部分に一対の熱板90a及び90bで熱を押圧状態で加え、折り返し部分79の第1フィルム81及び側縁74aの第2フィルム82と側縁74bの第1フィルム81とを熱溶着させて、側縁74aと側縁74bとを一体化させる。
【0011】
このようにすると、シート体84が端部75も含め第1フィルム81又は第2フィルム82に完全に覆われるため、図の二点鎖線の矢印で示すように、紙容器に収容した液体や、食品から発生する水分や油分等がシート体84に侵入せず、紙容器の品質が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、近年、耐水性と耐ガス性といった異なる性質を合わせ持たせるために、内面側と外面側とに異なる性質のフィルムをそれぞれ形成した紙容器が提案されているが、そのような紙容器に上述した端部処理を行うと、以下のような問題が生ずる。
【0013】
図16は、異素材フィルムが形成された側板原紙の、従来の紙容器の製造方法による溶着工程を示した拡大模式図であって、図15に対応する図であり、図17は、図16で示した側板原紙の折り返し部分の剥離状態を示した拡大模式図である。
【0014】
これらの図のうち、まず、図16を参照して、第2フィルム82が、第1フィルム81と異なる素材の、耐ガス性を有するポリエチレン(PE)よりなるものに置き換わっている。尚、他の構成要素は、図15に示したものと同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0015】
この状態で、折り返し部分79を含む側縁74aと側縁74bとを重ね合わせた部分に熱を加えると、同素材の第1フィルム81同士は熱溶着されるが、素材の異なる第1フィルム81と第2フィルム82とは“A”部分において十分に熱溶着されない。したがって、側縁74aと側縁74bとが十分に一体化されていない部分が生じる。
【0016】
すると、図17の矢印に示すように、側縁74bに紙容器の外面側に向かう外力が掛かった場合、“A”部分及び折り返し部分79は接着状態を維持できず、剥離する。尚、折り返し部分79を接着する接着剤は、上述したように、紙容器の用途上、食品用容器に使用できるものでなければならないため、接着力の強い他の素材の接着剤に置き換えることはできない。
【0017】
上記のように従来の紙容器の製造方法では、接着剤を中心とした側縁同士の一体化を図るため、強度的に十分とは言えない。特に、紙容器の内面側と外面側とに異なる素材のフィルムを形成すると、一方の側縁と他方の側縁との一体化状態が不安定であった。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する紙容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紙容器の製造方法であって、少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、側縁の一方を端部に沿って原紙の他方面から除去し、第1厚さ及び第1幅を有する第1段部と第1段部に隣接する第1厚さの2倍の第2厚さ及び第2幅を有する第2段部を形成する工程と、第1段部の端部側の一部を他方面側に折り返し、第1段部の残り部分に重ね合わせて一体化する工程と、原紙を一方面側に丸めて側縁の他方を第2段部に重ね合わせ、第1フィルムを熱溶着させて側縁の一方に一体化させる工程とを備えたものである。
【0020】
このように構成すると、側縁の他方のフィルムが側縁の一方の第2段部に熱溶着すると共に側縁同士の接合部分の段差が小さくなる。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1幅は、第2幅の2倍に設定されるものである。
【0022】
このように構成すると、第1フィルムが第1フィルムに熱溶着する長さと紙に熱溶着する長さとがほぼ等しくなる。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、原紙の他方面には、第1フィルムと異なった第2フィルムが形成されるものである。
【0024】
このように構成すると、第1フィルムと第2フィルムとは接しない。
【0025】
請求項4記載の発明は、紙容器の製造方法であって、少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、側縁の一方を端部に沿って原紙の他方面から除去し、原紙の厚さの半分の厚さ及び所定幅を有する段部を形成する工程と、段部の少なくとも一部に熱溶融性フィルムを設置する工程と、段部の端部側の一部を他方面側に折り返し、段部の残り部分に熱溶融性フィルムを挟んだ状態で重ね合わせ、段部を熱溶融性フィルムを熱溶着させて一体化する工程と、原紙を一方面側に丸めて側縁の他方を段部の折り返し部分の外面に重ね合わせ、第1フィルムを熱溶着させて側縁の一方に一体化させる工程とを備えたものである。
【0026】
このように構成すると、段部の折り返し部分が熱溶融性フィルムの熱溶着で一体化する。
【0027】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、熱溶融性フィルムは、段部の折り返し部分の端部も覆うように配置されるものである。
【0028】
このように構成すると、段部の折り返し部分全体が一体化する。
【0029】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の構成において、原紙の他方面には、第1フィルムと異なった第2フィルムが形成され、側縁の他方の端部は段部の折り返し部分の先端部に整列するものである。
【0030】
このように構成すると、第1フィルムは第2フィルムに接しない。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、側縁の他方のフィルムが側縁の一方の第2段部に熱溶着すると共に側縁同士の接合部分の段差が小さくなるので、一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1フィルムが第1フィルムに熱溶着する長さと紙に熱溶着する長さとがほぼ等しくなるので、一体化状態が安定する。
【0033】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、第1フィルムと第2フィルムとは接しないので、商品の品質が向上すると共に第2フィルムは一体化状態に影響しない。
【0034】
請求項4記載の発明は、段部の折り返し部分が熱溶融性フィルムの熱溶着で一体化するので、折り返し部分の一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。
【0035】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、段部の折り返し部分全体が一体化するので、折り返し部分の一体化状態がより安定する。
【0036】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の効果に加えて、第1フィルムは第2フィルムに接しないので、側縁同士の接合不良が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段形成部が形成された状態を示した拡大模式図である。
【図2】図1で示した側縁の一方に第1段部及び第2段部が形成された状態を示した拡大模式図である。
【図3】図2で示した第1段部を折り返した状態を示した拡大模式図である。
【図4】図3で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成され、熱溶融性フィルムが設置される状態を示した拡大模式図である。
【図6】図5で示した段部を折り返して溶着する状態を示した拡大模式図である。
【図7】図6で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【図8】従来の紙容器の外観形状を示した斜視図である。
【図9】図8に示した紙容器を製造するための紙材料の平面図である。
【図10】図9に示したX−Xラインの拡大断面図である。
【図11】側板原紙を筒状に丸めた状態の外観形状を示した平面図である。
【図12】側板原紙の溶着工程を示した図であって、図11で示した“X”部分の拡大模式図である。
【図13】従来の紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成された状態を示した拡大模式図である。
【図14】図13で示した段部を折り返した状態を示した拡大模式図である。
【図15】図14で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【図16】異素材フィルムが形成された側板原紙の、従来の紙容器の製造方法による溶着工程を示した拡大模式図であって、図15に対応する図である。
【図17】図16で示した側板原紙の折り返し部分の剥離状態を示した拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、この発明の第1の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段形成部が形成された状態を示した拡大模式図であり、図2は、図1で示した側縁の一方に第1段部及び第2段部が形成された状態を示した拡大模式図であり、図3は、図2で示した端部を折り返した状態を示した拡大模式図であり、図4は、図3で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【0039】
これらの図を参照して、紙容器を製造するための紙材料の側板原紙11は、目付170〜500g/m2、厚さ0.2〜0.5mmの紙製のシート体24の一方面にPETよりなる厚さ30μmの第1フィルム21が、他方面にPEよりなる厚さ30μmの第2フィルム22がそれぞれ押出ラミネートにより形成された原紙を、図9の従来例で示したように扇形に打抜いたものからなる。尚、側板原紙11は対向する側縁14a及び14bを有する。紙容器の成形の際には、側板原紙11を第1フィルム21の側を内側にして筒状に丸め、側縁14a及び側縁14bを一体化させて、筒形状にする。
【0040】
側板原紙を筒形状にするに当たっては、まず、図1を参照して、側縁14aの紙容器の外面側の一部を端部15に沿って切削して除去し、側板原紙の厚さHの2/3の厚さ2H/3及び幅Lを有する段形成部16を形成する。尚、幅Lはここでは12mmとする。
【0041】
次に、図1及び図2を参照して、段形成部16の紙容器の外面側を端部15に沿って更に切削して除去し、厚さH/3及び幅2L/3を有する第1段部17を形成し、第1段部17の一部に接着剤20を塗布する。尚、段形成部16の残りの部分が第2段部18となる。このように第1段部17及び第2段部18の寸法を設定したことによる効果は後述する。尚、便宜上、第1段部17の厚さH/3を第1厚さと、第2段部18の厚さ2H/3を第2厚さと、第1段部17の幅2L/3を第1幅と、第2段部18の幅L/3を第2幅とする。
【0042】
次に、図2及び図3を参照して、第1段部17の端部15の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、第1段部17の残り部分に重ね合わせて接着剤20を介して一体化する。
【0043】
尚、図2で示したように、第1幅は第2幅の2倍に設定されていることから、折り返し部分19の幅Wは第2幅にほぼ等しくなる。このように構成されていることによる効果は後述する。又、第1厚みは第2厚みの1/2に設定されていることから、折り返し部分19の厚みは第2厚みにほぼ等しくなる。このように構成されていることによる効果も後述する。尚、折り返し部分19の幅は約4mm、第2幅は4mmとなり、これらの幅の合計は約8mmとなる。
【0044】
最後に、図4を参照して、側縁14aと側縁14bとの一体化においては、まず、側縁14bを側縁14aの折り返し部分19及び第2段部18に重ね合わせる。すると、上述したように、折り返し部分19の厚みと第2厚みとはほぼ等しいから、折り返し部分19の第1フィルム21及び第2段部18の表面とは、ほぼ面一の状態で側縁14bの第1フィルム21と接する。この状態で折り返し部分19及び第2段部18と側縁14bとが重なり合う部分に一対の熱板90a及び90bによって押圧しながら熱を加えると、側縁14bの第1フィルム21は、同素材のフィルムである折り返し部分19の第1フィルム21及び紙製の第2段部18のいずれとも熱溶着されるので、側縁14aと側縁14bとが完全に一体化する。
【0045】
このようにすると、側縁14bの第1フィルム21が側縁14aの第2段部18に熱溶着すると共に側縁14aと側縁14b同士の接合部分の段差である“B”部分が図16の従来例に比べて小さくなるので、一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。又、図3で示したように、折り返し部分19の幅Wは第2幅にほぼ等しいから、側縁14bの第1フィルム21が側縁14aの第1フィルム21に熱溶着する長さと、第2段部18に熱溶着する長さとがほぼ等しくなり、一体化状態が安定する。更に、第1フィルム21と第2フィルム22とは接しないため、商品の品質が向上すると共に第2フィルム22の存在が一体化状態に影響しない。
【0046】
図5は、この発明の第2の実施の形態による紙容器の製造方法において、側縁の一方に段部が形成され、熱溶融性フィルムが設置される状態を示した拡大模式図であり、図6は、図5で示した段部を折り返して溶着する状態を示した拡大模式図であり、図7は、図6で示した側縁の一方を含む側板原紙の溶着工程を示した拡大模式図である。
【0047】
これらの図を参照して、紙容器を製造するための紙材料の側板原紙11は、目付170〜500g/m2、厚さ0.3〜0.4mmの紙製のシート体24の一方面にPETよりなる厚さ30μmの第1フィルム21が、多方面にPEよりなる厚さ30μmの第2フィルム22がそれぞれ押出ラミネートにより形成された原紙を、図9の従来例で示したように扇形に打抜いたものからなる。尚、側板原紙11は対向する側縁14a及び14bを有する。紙容器の成形の際には、側板原紙11を第1フィルム21の側を内側にして筒状に丸め、側縁14a及び側縁14bを一体化させて、筒形状にする。
【0048】
側板原紙を筒形状にするに当たっては、まず、図5を参照して、側縁14aの紙容器の外面側の一部を端部35に沿って切削して除去し、側板原紙の厚さHの1/2の厚さH/2及び幅Lを有する段部37を形成する。尚、幅Lはここでは16mmとする。次に、段部37に厚さ20μmのPE、又は厚さ30μmのPETよりなる熱溶融性フィルム40を設置する。ここで、熱溶融性フィルム40は、後述する段部37の折り返し時に、端部35も覆うことができるように配置するが、このように構成することによる効果は後述する。
【0049】
次に、図6を参照して、段部37の端部35の側の一部を紙容器の外面側に折り返し、段部37の残り部分に熱溶融性フィルム40を挟んだ状態で重ね合わせ、一対の熱板50a及び50bで押圧すると共に熱を加えて熱溶融性フィルム40を熱溶着させて、段部37を一体化する。ここで、上述したように幅Lは16mmであるから、折り返し部分39の幅はその1/2の約8mmとなる。
【0050】
このように構成すると、紙製の段部37の折り返し部分39が熱溶融性フィルム40の熱溶着で一体化するので、折り返し部分39の一体化状態が安定し、紙容器の品質が向上する。
【0051】
又、上述したように、熱溶融性フィルム40は、折り返し部分39の端部35も覆うことができるように配置されているので、段部37の折り返し部分39の全ての面が内部で一体化し、折り返し部分39の一体化状態がより安定する。
【0052】
最後に、図7を参照して、側縁14aと側縁14bとの一体化においては、まず、側縁14bを、側縁14bの端部45が折り返し部分39の端部35に整列するように折り返し部分39に重ね合わせる。次に、重ね合わせ部分に一対の熱板90a及び90bによって押圧しながら熱を加え、同素材である折り返し部分39の第1フィルム21と側縁14bの第1フィルム21とを熱溶着させて、側縁14aと側縁14bとを一体化させる。
【0053】
このようにすると、第1フィルム21は第2フィルム22に接しないため、側縁14aと側縁14bとが十分に一体化されていない部分は生じない。又、折り返し部分39は熱溶融性フィルム40との熱溶着により、側縁14aと側縁14bとは各々の第1フィルム21同士の熱溶着により、各々十分に一体化しているため、側縁14aと側縁14bとの接合不良が生じない。
【0054】
尚、上記の各実施の形態では、側板原紙の一方面に第1フィルムが、他方面に第2フィルムがそれぞれ形成されていたが、少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性フィルムが形成されていればよい。
【0055】
又、上記の各実施の形態では、第1フィルムが特定の厚みのPETよりなるフィルムであったが、耐水性及び熱溶融性フィルムであれば、素材や厚みの異なるフィルムであってもよい。
【0056】
更に、上記の各実施の形態では、第2フィルムが特定の厚みのPEよりなるフィルムであったが、発泡PE、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)等、素材が異なるフィルムや、厚みが異なるフィルムであってもよい。
【0057】
更に、上記の各実施の形態では、側板原紙は1枚の紙製のシート体であったが、アルミニウム箔との貼り合せとした、2層又は3層以上の構造のシート体であってもよい。
【0058】
更に、上記の各実施の形態では、第1フィルム及び第2フィルムは押出ラミネートにより形成されていたが、ドライラミネート等、他の方法によって形成されてもよい。
【0059】
更に、上記の各実施の形態では、第1フィルムと第2フィルムとは異素材であったが、同素材であってもよい。
【0060】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1厚さ及び第2厚さの寸法が特定寸法に設定されていたが、第2厚さが第1厚さの2倍に設定されていれば、異なる寸法に設定されてもよい。
【0061】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1幅及び第2幅の寸法が特定寸法に設定されていたが、異なる寸法に設定されてもよく、第1幅は第2幅の2倍以外の寸法に設定されてもよい。
【0062】
更に、上記の第2の実施の形態では、側縁の他方が段部の折り返し部分の端部に整列するように折り返し部分に重ね合わされていたが、折り返し部分の外面にのみ重ね合わされていればよい。
【0063】
更に、上記の第2の実施の形態では、熱溶融性フィルムが折り返し部分の端部も覆うように配置されていたが、少なくとも折り返し部分に挟まれるように配置されていればよい。
【0064】
更に、上記の第2の実施の形態では、熱溶融性フィルムは特定の厚みのPETよりなるフィルム又はPEよりなるフィルムであったが、熱溶融性を有するものであれば他の素材よりなるフィルムであってもよい。又、第2フィルムと同素材のフィルムであれば、第2フィルムと熱溶融性フィルムとが熱溶着するので、折り返し部分の一体化状態が更に安定して良い。
【0065】
更に、上記の第2の実施の形態では、段部の幅の寸法が特定寸法に設定されていたが、異なる寸法に設定されてもよい。
【0066】
更に、上記の第1の実施の形態では、段形成部を形成した後、第1段部及び第2段部が形成されたが、第1段部から形成する等、他の形成方法により形成してもよい。
【0067】
更に、上記の各実施の形態では、第1段部、第2段部、段部の各々は、紙容器の外面側の一部を切削して除去し、形成されていたが、第2フィルムの該当箇所を除去した状態で端部を圧縮加工して、所望の段部形状としてもよい。
【0068】
更に、上記の各実施の形態では、紙容器の外面側は無地であったが、外面に模様等の印刷を施した後に第2フィルムを形成したり、内面側に模様等が印刷されたフィルムを第2フィルムとして形成したりすることで、紙容器の外面側に模様等を付したものにしてもよい。
【0069】
更に、上記の第1の実施の形態では、第1段部の表面は、側板原紙の一方面及び他方面に対し平行になるように形成されていたが、端部に向かってテーパーをつけた傾斜面になるように形成されていてもよい。
【0070】
更に、上記の第2の実施の形態では、段部の表面は、側板原紙の一方面及び他方面に対し平行になるように形成されていたが、端部に向かってテーパーをつけた傾斜面になるように形成されていてもよい。
【0071】
更に、上記の各実施の形態では、熱板による熱溶着を行っていたが、超音波を用いた熱溶着を行ってもよい。
【符号の説明】
【0072】
11…側板原紙
14a、14b…側縁
15…端部
17…第1段部
18…第2段部
21…第1フィルム
22…第2フィルム
35…端部
37…段部
39…折り返し部分
40…熱溶融性フィルム
45…端部
70…紙容器
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙容器の製造方法であって、
少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、
前記側縁の一方を端部に沿って前記原紙の他方面から除去し、第1厚さ及び第1幅を有する第1段部と前記第1段部に隣接する前記第1厚さの2倍の第2厚さ及び第2幅を有する第2段部を形成する工程と、
前記第1段部の前記端部側の一部を前記他方面側に折り返し、前記第1段部の残り部分に重ね合わせて一体化する工程と、
前記原紙を前記一方面側に丸めて前記側縁の他方を前記第2段部に重ね合わせ、前記第1フィルムを熱溶着させて前記側縁の前記一方に一体化させる工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項2】
前記第1幅は、前記第2幅の2倍に設定される、請求項1記載の紙容器の製造方法。
【請求項3】
前記原紙の他方面には、前記第1フィルムと異なった第2フィルムが形成される、請求項1又は請求項2記載の紙容器の製造方法。
【請求項4】
紙容器の製造方法であって、
少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、
前記側縁の一方を端部に沿って前記原紙の他方面から除去し、前記原紙の厚さの半分の厚さ及び所定幅を有する段部を形成する工程と、
前記段部の少なくとも一部に熱溶融性フィルムを設置する工程と、
前記段部の前記端部側の一部を前記他方面側に折り返し、前記段部の残り部分に前記熱溶融性フィルムを挟んだ状態で重ね合わせ、前記段部を前記熱溶融性フィルムを熱溶着させて一体化する工程と、
前記原紙を前記一方面側に丸めて前記側縁の他方を前記段部の折り返し部分の外面に重ね合わせ、前記第1フィルムを熱溶着させて前記側縁の前記一方に一体化させる工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項5】
前記熱溶融性フィルムは、前記段部の折り返し部分の端部も覆うように配置される、請求項4記載の紙容器の製造方法。
【請求項6】
前記原紙の他方面には、前記第1フィルムと異なった第2フィルムが形成され、前記側縁の他方の端部は前記段部の折り返し部分の先端部に整列する、請求項4又は請求項5記載の紙容器の製造方法。
【請求項1】
紙容器の製造方法であって、
少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、
前記側縁の一方を端部に沿って前記原紙の他方面から除去し、第1厚さ及び第1幅を有する第1段部と前記第1段部に隣接する前記第1厚さの2倍の第2厚さ及び第2幅を有する第2段部を形成する工程と、
前記第1段部の前記端部側の一部を前記他方面側に折り返し、前記第1段部の残り部分に重ね合わせて一体化する工程と、
前記原紙を前記一方面側に丸めて前記側縁の他方を前記第2段部に重ね合わせ、前記第1フィルムを熱溶着させて前記側縁の前記一方に一体化させる工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項2】
前記第1幅は、前記第2幅の2倍に設定される、請求項1記載の紙容器の製造方法。
【請求項3】
前記原紙の他方面には、前記第1フィルムと異なった第2フィルムが形成される、請求項1又は請求項2記載の紙容器の製造方法。
【請求項4】
紙容器の製造方法であって、
少なくとも一方面に耐水性及び熱溶融性を有する第1フィルムが形成されると共に対向する側縁を有するシート状の原紙を準備する工程と、
前記側縁の一方を端部に沿って前記原紙の他方面から除去し、前記原紙の厚さの半分の厚さ及び所定幅を有する段部を形成する工程と、
前記段部の少なくとも一部に熱溶融性フィルムを設置する工程と、
前記段部の前記端部側の一部を前記他方面側に折り返し、前記段部の残り部分に前記熱溶融性フィルムを挟んだ状態で重ね合わせ、前記段部を前記熱溶融性フィルムを熱溶着させて一体化する工程と、
前記原紙を前記一方面側に丸めて前記側縁の他方を前記段部の折り返し部分の外面に重ね合わせ、前記第1フィルムを熱溶着させて前記側縁の前記一方に一体化させる工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項5】
前記熱溶融性フィルムは、前記段部の折り返し部分の端部も覆うように配置される、請求項4記載の紙容器の製造方法。
【請求項6】
前記原紙の他方面には、前記第1フィルムと異なった第2フィルムが形成され、前記側縁の他方の端部は前記段部の折り返し部分の先端部に整列する、請求項4又は請求項5記載の紙容器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−200966(P2012−200966A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66907(P2011−66907)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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