説明

紙容器用積層材料と該積層材料を用いて作製した紙容器

【課題】充填時の耐熱性や熱封緘適性に優れ、かつ、易開封性を有する紙容器用積層材料と該積層材料を用いて作製した紙容器を提供すること。
【解決手段】板紙51を基材とし、表面層52と裏面層53がポリエチレンからなり、裏面層の内側に少なくともポリエチレンテレフタレートフィルム54aを用いた中間層54が接着層55を介して積層された紙容器用積層材料50において、ポリエチレンテレフタレートフィルム54aには手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュース、清酒等の飲料物、パーマ洗剤、シャンプー等の液状物を収容する紙容器に使用する積層材料と該積層材料を用いて作製した紙容器、特には易開封性を有するゲーブルトップ型紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジュース、清酒等の飲料物、パーマ洗剤、シャンプー等の液状物を収容する紙容器に使用する積層材料には、紙基材と内面側のポリエチレン層の間に充填時の耐熱性に優れ、液漏れが発生しにくいポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した構成が一般的である。
【0003】
積層材料にポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することで、熱封緘時のピンホールがなくなり、また、シール強度が安定して強固な熱封緘性をもたらしたが、反面易開封のためにはマイナス要素になっていて、例えば、ゲーブルトップ型紙容器の場合、容器頂部のゲーブルトップ部分のトップシール部を左右に引き裂くように指で左右に押し広げようとしても簡単には広がらず、図5に示すような、例えば、牛乳パックにおける開封方法をとることができなかった。そのため、図7に示すような専用の注出用の口栓を設けなくてはならず、コスト高になっていた。また、回収時には注出用の口栓は別に分離しなければならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、紙容器用積層材料と該積層材料を用いて作製したゲーブルトップ型紙容器に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、充填時の耐熱性や熱封緘適性に優れ、液漏れが発生しにくく、かつ、易開封性を有する紙容器用積層材料と該積層材料を用いて作製した紙容器、特には、頂部が切り妻屋根型をした四角柱状容器いわゆるゲーブルトップ型紙容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1の発明は、板紙を基材とし、表面層と裏面層がポリエチレンからなり、裏面層の内側に少なくともポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた中間層が接着層を介して積層された紙容器用積層材料において、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムには、手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられていることを特徴とする、紙容器用積層材料である。
【0006】
このように請求項1に記載の発明によれば、板紙を基材とし、表面層と裏面層がポリエチレンからなり、裏面層の内側に少なくともポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた中間層が接着層を介して積層された紙容器用積層材料において、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムには、手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられているので、該紙容器用積層材料を用いて作製したゲーブルトップ型紙容器のトップシール部分は、牛乳パックのように左右に押し広げ、広げたフラップを手前にひっぱるようにすると、フラップはトップシール部分から無理なく引き剥がされて開封が可能になる(図5(a),(b),(c)参照)。
【0007】
また、十文字開封も容易に行うことができる。十文字開封について説明する。
すなわち、容器頂部の切り妻屋根型部分のトップシール部を先ず左右に引き裂くように指で外側に押し広げ、反対側まで強く押しつける。反対側も同様に押し広げ、頂部のトップ
シール部を十文字状に分離する。
【0008】
ついで、十文字状に分離されたトップシール部の相対向するフラップを指でしっかり掴み、対角線に沿って外側方向に引っ張って頂部を開口する。反対側のフラップも同様に対角線に沿って引っ張り頂部を完全に開口する(図6(a),(b),(c)参照)。このような頂部の開封方法を十文字開封と呼称している。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の紙容器用積層材料を用いて成形した紙容器である。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記紙容器は、頂部が切り妻屋根型をした四角柱状容器であることを特徴とする、紙容器である。
【0011】
このように請求項3に記載の発明によれば、頂部が切り妻屋根型をした四角柱状容器であるゲーブルトップ型紙容器には、手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた紙容器用積層材料が使われているので、トップシール部分は牛乳パックと同様の開封方法で、また、十文字開封方式で容易に開封することができる。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の紙容器用積層材料は、積層材料の層構成中に手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを含むため、この紙容器用積層材料を用いて成形したゲーブルトップ型紙容器は、牛乳パック同様にトップシール部から容易に開封することができる。
また層構成中にポリエチレンテレフタレートフィルムを含むため、充填時の耐熱性に優れ、ピンホールの発生がなく、液漏れが発生しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の紙容器用積層材料(50)は、例えば、図1に示すように、板紙(51)を基材とし、表面層(52)と裏面層(53)がポリエチレンからなり、裏面層(53)の内側に少なくともポリエチレンテレフタレートフィルム(54a)を用いた中間層(54)が接着層(55)を介して積層された紙容器用積層材料に関するものである。
【0014】
そして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(54a)には、手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられているものである。
【0015】
手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムとして、例えば、東洋紡績株式会社製のティアファイン TF110(厚さ14μm)が好ましく使用できる。
【0016】
また、中間層(54)としては、アルミニウム箔/手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化ケイ素の薄膜を蒸着した手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム、酸化アルミニウムの薄膜を蒸着した手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムなどが好ましく使用できる。
【0017】
図4は、紙容器用積層材料(50)を用いて作製した紙容器(1)の一例で、四枚の側壁板と、この側壁板の一枚に連設されると共に、隣接する側壁板に接続する糊代片とを有する四角筒状の胴部(2)と、この胴部の一方の開口端部に形成された切り妻屋根状に折り込み閉鎖されたゲーブルトップ型の頂部(3)と、胴部の他の開口端部に形成される底部(4)とからなる、ゲーブルトップ型紙容器である。
【0018】
ここで、頂部(3)とその形成方法を詳細に述べる。頂部(3)は、側壁板(21)に連設された相対向する一組の屋根板(11,11)と、他の相対向する一組の妻板(12,12)とから形成されると共に、各屋根板(11,11)と各妻板(12,12)とは交互に順次環状に連設されている。
【0019】
相対向する一組の屋根板(11,11)は、四角形状の傾斜片(13,13)と、外側貼着片(14,14)とで形成され、相対向する一組の妻板(12,12)は、側壁板(21)に連設された折り込み片(15,15)と、この折り込み片(15,15)に連設されると共に、傾斜板(13,13)に連設された一対の折り返し片(16,16)と、この一対の折り返し片(16,16)に連設された一対の内側貼着片(17、17)とで形成される。
【0020】
そして、前記各外側貼着片(14,14)は、各内側貼着片(17,17)から突出するように各内側貼着片より幅広に形成され、各境界を折り曲げ線として、折り込み片(15,15)と折り返し片(16,16)との折り曲げ線を内側に折り込むようにして、相対向する妻板(12,12)を屋根板(11,11)間に折り込み、かつ相対向する傾斜片(13,13)を内側に折り込み、外側貼着片(14,14)により各各内側貼着片(17,17)を重合させ、この重合部をトップシール部(18)として接着させることにより形成される(図3、図4参照)。
【0021】
つぎに具体的な実施例を以下に詳述する。
【実施例1】
【0022】
先ず、板紙(51)として坪量300g/m2のミルクカートン原紙、中間層として厚さ7μmのアルミニウム箔と、手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムである厚さ14μmのティアファインTF110(東洋紡績株式会社製)をそれぞれ準備した。
【0023】
つぎに、ドライラミネート法により、厚さ7μmのアルミニウム箔(54b)と手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムである厚さ14μmのティアファインTF110(54a)を貼り合わせ、中間層(54)を作製した。
【0024】
この中間層(54)のティアファインTF110面に、裏面層(53)となる厚さ60μmのポリエチレンフィルムをドライラミネート法により貼りあわせ、3層構成の複合フィルムを作製した。
【0025】
ついで押し出しラミネート法により、板紙の外側面には低密度ポリエチレンを、また、板紙の接液面側には3層構成の複合フィルムのアルミニウム箔面を接着層(55)であるエチレン・メタアクリル酸共重合体樹脂を介して貼り合わせ、[外側]ポリエチレン(厚さ20μm)(52)/板紙(坪量300g/m2)(51)/エチレン・メタアクリル酸共重合体樹脂(厚さ25μm)(55)/アルミニウム箔(厚さ7μm)(54b)/ティアファインTF110(54a)(厚さ14μm)/ポリエチレン(厚さ60μm)(53)[接液側]の6層構成からなる実施例1の紙容器用積層材料を作製した(図2参照)。
【0026】
作製した実施例1の紙容器用積層材料から、図3、図4に示すような四枚の側壁板(21、21、21、21)とこの側壁板の一枚に連設されると共に隣接する側壁板に接続する糊代片(22)とを有する四角筒状の胴部(2)とこの胴部の一方の開口端部に折り曲げ線を介して形成された切り妻屋根型をした頂部(3)と、胴部の他方の開口端部に折り曲げ線を介して形成された底部(4)とからなる四角柱状の紙容器ブランク(20)に打
ち抜いた。
【0027】
紙容器ブランクの側壁板(21)を縦方向の折り曲げ線に沿って折り曲げ、糊代片(22)の上に折り曲げた側壁板(21)の裏面を重ねて、糊代片(22)の表面と側壁板(21)の裏面を接着させ、スリーブ状に成形する(実施例1のスリーブとする)。
なお、糊代片(22)の端縁は、あらかじめ、端面が露出しないように、例えば、ブランクを構成する紙容器用積層材料(50)の厚みの半分を削除(スカイブ)し、削り取った残りの半分を削除面が内側になるように折り返す(ヘミング)、スカイブヘミング加工を行ったり、プラスチック製のテープを貼るなどの紙端面露出防止策を講じておくと良い。
【0028】
出来上がった実施例1のスリーブを、専用のEP−PAK充填機(充填能力;2000本/時間、四国化工機株式会社製)を用いて第1オーブン:400℃、第2オーブン:360℃の条件で熱シールし、実施例1のスリーブを用いた液状内容物が充填された、ゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【実施例2】
【0029】
中間層(54)のティアファインTF110(54a)の代わりに通常使用されている厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は実施例1と同じ材料の紙容器用積層材料を作製し、実施例1と同様に図3、図4に示すような四枚の側壁板(21、21、21、21)とこの側壁板の一枚に連設されると共に隣接する側壁板に接続する糊代片(22)とを有する四角筒状の胴部(2)とこの胴部の一方の開口端部に折り曲げ線を介して形成された切り妻屋根型をした頂部(3)と、胴部の他方の開口端部に折り曲げ線を介して形成された底部(4)とからなる四角柱状の紙容器ブランクに打ち抜いた。
【0030】
このブランクを実施例1と同様にスリーブ状に成形し、比較例となる実施例2のスリーブとした。
【0031】
出来上がった実施例2のスリーブを、実施例1と同様に専用のEP−PAK充填機(充填能力;2000本/時間、四国化工機株式会社製)を用いて用いて第1オーブン:400℃、第2オーブン:360℃の条件で熱シールし、実施例2のスリーブを用いた液状内容物が充填された、ゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【実施例3】
【0032】
中間層を用いず、牛乳パックと同じ層構成となる、[外側]ポリエチレン(厚さ20μm)(52)/板紙(坪量300g/m2)(51)/ポリエチレン(厚さ40μm)(53)[接液側]の3層構成からなる実施例3の紙容器用積層材料を比較例として作製した。この紙容器用積層材料から実施例1と同じ寸法、形状の比較例となる実施例3のスリーブを作製した。
【0033】
出来上がった実施例2のスリーブを、実施例1と同様に専用のEP−PAK充填機(充填能力;2000本/時間、四国化工機株式会社製)を用いて用いて第1オーブン:400℃、第2オーブン:360℃の条件で熱シールし、比較例となる実施例3のスリーブを用いた液状内容物が充填された、ゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【0034】
以上のようにして作製した実施例1〜3の3種類のゲーブルトップ型の紙容器について、充填機適性とトップシール部の開封性を下記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
・充填機適性 … 各構成の容器を充填機にて密封シールし、チェック液にてモレ数をチェックした(n=100)。
・トップシール部開封性 … 10名のパネラーによりトップシール部を開封し、何名が開封できなかったかをチェックした。
【0035】
【表1】

表1の結果からポリエチレンテレフタレートフィルムとして、ティアファインフィルムを用いることにより、トップシール部の開封が容易になることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の紙容器用積層材料の一実施例を示す、断面説明図である。
【図2】本発明の紙容器用積層材料の別の実施例を示す、断面説明図である。
【図3】本発明の紙容器用積層材料を用いて作製した紙容器のブランクの一実施例を示す、展開説明図である。
【図4】図3のブランクを組み立てた紙容器の斜視説明図である。
【図5】(a)〜(c)は図4の紙容器のトップシール部分を開いて開口する説明図である。
【図6】(a)〜(c)は図4の紙容器のトップシール部分を開いて開口する別の説明図である。
【0037】
ゲーブルトップ型紙容器の開封方法に一例である。
【図7】従来のゲーブルトップ型紙容器の別の一例で注出口栓を取り付けた紙容器の一例である。
【符号の説明】
【0038】
1‥‥紙容器
2‥‥胴部
3‥‥頂部
4‥‥底部
10‥‥紙容器用積層材料
11‥‥屋根板
12‥‥妻板
13‥‥傾斜板
14‥‥外側貼着片
15‥‥折り込み片
16‥‥折り返し片
17‥‥内側貼着片
18‥‥トップシール部
20‥‥紙容器ブランク
21‥‥側壁板
50‥‥紙容器用積層材料
51‥‥板紙
52‥‥表面層
53‥‥裏面層
54‥‥中間層
54a‥ポリエチレンテレフタレートフィルム
54b‥アルミニウム箔
55‥‥接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙を基材とし、表面層と裏面層がポリエチレンからなり、裏面層の内側に少なくともポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた中間層が接着層を介して積層された紙容器用積層材料において、
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムには、手切れ適性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられていることを特徴とする、紙容器用積層材料。
【請求項2】
請求項1記載の紙容器用積層材料を用いて成形した紙容器。
【請求項3】
前記紙容器が、頂部が切り妻屋根型をした四角柱状容器であることを特徴とする、請求項2記載の紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−78830(P2009−78830A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248862(P2007−248862)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】