紙幣処理機
【課題】収納カセットの空状態での取扱性および保管効率を一層向上できる紙幣処理機の提供。
【解決手段】布製でいずれの方向にも変形容易な袋体42と、袋体42の開口部に取り付けられる金属製の枠体43と、枠体43の内側の導入口61を開閉するスライド式のシャッタ64とを有し、シャッタ64が開放された状態で枠体43の導入口61を介して袋体42内に紙幣を収納可能な収納カセット3と、装填された収納カセット3の枠体43を支持する支持手段と、支持手段で支持した収納カセット3の袋体42の中間部を窄めた状態とする昇降可能なエレベータ手段105とを有する処理機本体とを備え、エレベータ手段105が、袋体42の中間部が相互間に挿入されることで中間部を窄めた状態とする一対の回転可能なローラ213を具備する。
【解決手段】布製でいずれの方向にも変形容易な袋体42と、袋体42の開口部に取り付けられる金属製の枠体43と、枠体43の内側の導入口61を開閉するスライド式のシャッタ64とを有し、シャッタ64が開放された状態で枠体43の導入口61を介して袋体42内に紙幣を収納可能な収納カセット3と、装填された収納カセット3の枠体43を支持する支持手段と、支持手段で支持した収納カセット3の袋体42の中間部を窄めた状態とする昇降可能なエレベータ手段105とを有する処理機本体とを備え、エレベータ手段105が、袋体42の中間部が相互間に挿入されることで中間部を窄めた状態とする一対の回転可能なローラ213を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機に関し、特にその収納構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣処理機において、紙幣を収納する収納カセットを処理機本体に対し着脱可能に構成し、この収納カセットを金庫として用いて紙幣の運搬を行うことが行われているが、収納カセットを蛇腹構造にして伸縮可能に構成し、紙幣の収納量に応じて収納容量を変化させることで、空状態での取扱性および保管効率を向上する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−149088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の収納カセットは、蛇腹構造を採用していることから、伸縮方向の変形は容易であるものの、他の方向への変形は容易ではなく、また、最も縮長させた状態でも十分に小型化できるとは言えなかった。
【0004】
したがって、本発明は、収納カセットの空状態での取扱性および保管効率を一層向上できる紙幣処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、該袋体の開口部に取り付けられる枠体と、該枠体の内側の導入口を開閉するスライド式のシャッタとを有し、該シャッタが開放された状態で前記枠体の導入口を介して前記袋体内に紙幣を収納可能な収納カセットと、装填された前記収納カセットの前記枠体を支持する支持手段と、該支持手段で支持した前記収納カセットの前記袋体の中間部を窄めた状態とする昇降可能なエレベータ手段とを有する処理機本体とを備えた紙幣処理機であって、前記エレベータ手段は、相互間に前記袋体の中間部が挿入される一対の回転可能なローラを具備することを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記一対のローラは、前記エレベータ手段の昇降に連動して回転することを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記一対のローラは、回転自在のフリーローラであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、袋体の開口部に取り付けられる枠体と、枠体の内側の導入口を開閉するスライド式のシャッタとを有する収納カセットを、その枠体において、処理機本体の支持手段に支持させるとともに、処理機本体のエレベータ手段で袋体の中間部を窄めた状態とする。すると、袋体の窄められた部分が収納空間の底部となって導入口から導入された紙幣をその上側に収納する。そして、例えば収納量が多くなるとエレベータ手段が下降することで袋体の窄めた位置つまり収納空間の底部を下げることができ、収納空間を拡大することができる。このように、紙幣の収納量に応じて収納空間の大きさを設定できるため、紙幣の収納状態が乱雑になることなく良好に収納することができる。そして、空の状態の収納カセットは、袋体が布製でいずれの方向にも変形容易であるため、変形自由度が高くて取扱性に優れることになり、また、一層小さく折り畳むことができることになって保管効率も優れることになる。
しかも、エレベータ手段の一対のローラで窄められた袋体の収納空間の底部を下降させる際に、一対のローラは回転することで袋体との摩擦力が軽減されて、円滑に下降できることになる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、エレベータ手段の一対のローラで窄められた袋体の収納空間の底部を下降させる際に、一対のローラは下降に連動して回転するため、袋体との摩擦力が軽減されて、円滑に下降できることになる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、エレベータ手段の一対のローラで窄められた袋体の収納空間の底部を下降させる際に、フリーローラである一対のローラは袋体との摩擦によって摩擦力を軽減するように回転するため、袋体との摩擦力が軽減されて、円滑に下降できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態の紙幣処理機を図1〜図8を参照して以下に説明する。
第1実施形態の紙幣処理機1は、バラの紙幣Sを計数して入金および収納する入金収納処理と、バラの紙幣Sを計数して返却する計数処理とを行うことが可能とされるものである。
【0012】
第1実施形態の紙幣処理機1は、図1に概略的に示すように、処理機本体2と、処理機本体2に対し着脱可能な収納カセット3とを有している。
【0013】
処理機本体2は、機体の前面2A側の上部にバラ紙幣Sが投入される装填部12が設けられ、この装填部12の下側に機体内からリジェクト紙幣が繰り出されるリジェクト部13が設けられている。
【0014】
装填部12は、水平に対し若干後ろ下がりに傾斜してその底をなす台部15を有しており、この台部15上に紙幣Sが上下方向に集積された状態で装填される。なお、台部15を水平に配置しても良い。
【0015】
また、装填部12には、台部15の機体奥側上方に機体左右方向に沿って配設された回動軸16と、この回動軸16に回動可能に支持されて台部15の上側で上下に揺動可能とされ、台部15上に装填された紙幣Sを台部15との間で挟持するビルプレス17とが設けられている。
【0016】
処理機本体2は、装填部12の機体奥側に、このように台部15上に装填されたバラ紙幣Sを、下側のものから一枚ずつ分離して機体内に繰り出す分離繰出部20を有している。この分離繰出部20は、装填部12の台部15に、台部15から上部を一部突出させた状態で機体左右方向に沿う軸回りに回転可能に設けられた蹴出ローラ21と、台部15よりも機体奥側に蹴出ローラ21と平行な軸回りに回転可能に設けられた繰出ローラ22と、この繰出ローラ22の上側に繰出ローラ22と平行な軸回りに回転可能に設けられた分離ローラ23とを有している。分離ローラ23は、図示せぬワンウエイクラッチによって繰出ローラ22側が紙幣Sを機体奥方に移動させる方向の回転、すなわち図1における反時計回り方向の回転が規制され、逆方向の回転のみ許容される。
【0017】
このような分離繰出部20は、台部15上に装填されたバラ紙幣Sの最下のものを蹴出ローラ21で繰出ローラ22と分離ローラ23との間に蹴り出し、この蹴り出し時に最下の紙幣Sに引きずられて繰出ローラ22と分離ローラ23との間に移動した紙幣Sを分離ローラ23で止めて蹴り出された最下の紙幣Sのみを繰出ローラ22で機体内方に繰り出す。
【0018】
処理機本体2は、分離繰出部20の機体奥側に接続され、分離繰出部20から繰り出された紙幣Sを搬送する搬送部25を有している。この搬送部25は、紙幣Sを案内する複数のガイド板と搬送ローラと振分部材等で構成されるもので、分離繰出部20から略水平に沿って機体奥側に延出した後に下側に折り返し略水平に沿って機体手前側に延出してリジェクト部13に接続される搬送路26と、この搬送路26の途中から分岐して前下がりに延出する搬送路27とを有しており、搬送路26には、搬送中の紙幣Sの金種、真偽、正損および搬送異常の識別と計数とを行う識別部28が設けられている。
【0019】
処理機本体2は、搬送部25の搬送路27の端末位置に、識別部28により真紙幣かつ正紙幣で正常搬送と識別された紙幣Sを金種混合で一時貯留させる一時貯留部30が接続されている。この一時貯留部30は、機体前面側から開閉可能な返却扉31と、返却扉31とで平面視枠状をなす壁部32と、機体左右方向に水平にスライドすることで返却扉31および壁部32で囲まれた一時貯留空間33の下部を開閉する一時貯留部シャッタ34と、紙幣Sを下方に押し込む昇降可能な押込部35とを有している。そして、処理機本体2には、各部を制御する制御部36と、操作者による操作入力が行われる操作部37と、操作者への表示を行う表示部38とが設けられている。また、返却扉31には、制御部36でロックおよびロック解除が制御される返却扉ロック部39が設けられている。
【0020】
なお、装填部12には、紙幣Sが分離繰出部20の分離繰出方向に長手方向を沿わせる姿勢で装填されることになり、搬送部25は紙幣Sをその長手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送し、その長手方向を放出方向に沿わせた姿勢で一時貯留部30およびリジェクト部13のいずれかに放出させる。勿論、紙幣Sを短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送するようにしても良い。
【0021】
そして、第1実施形態の収納カセット3は、処理機本体2の前面2Aに設けられた開閉可能な扉体40を開いた状態で処理機本体2に対し機体前後方向に出し入れされることになり、処理機本体2に装填された状態で一時貯留部30の鉛直下方に配置される。以下、収納カセット3を処理機本体2に装填された状態をもって説明する。
【0022】
図2に示すように、収納カセット3は、滑りの良い布製であって長さ方向一側に開口部41を有する略有底角筒状に縫製された袋体42を有している。この袋体42は全体的に布製とされることで、三次元のいずれの方向にも変形容易となっているものの、外力を受けない状態では縫製によって有底角筒状をほぼ維持可能になっている。
【0023】
収納カセット3は、袋体42の開口部41に取り付けられる金属製の枠体43を有している。この枠体43は、平面視が長方形枠状の下部構成体44と、図3に示すように、この下部構成体44に開閉可能にヒンジ部材45を介してヒンジ結合された平面視が長方形枠状の上部構成体46と、これら下部構成体44および上部構成体46を当接状態でロックする枠体ロック部47と有している。枠体ロック部47は、下部構成体44および上部構成体46を当接状態とするとこれに連動してロック状態となり、別体のキー48により操作されてロック状態を解除可能となっている。
【0024】
収納カセット3は、図2に示すように、その枠体43が、処理機本体2に機体前後方向に沿う水平状態で固定されたガイドレール(支持手段)50で案内されて処理機本体2内に配置されることになり、ガイドレール50の上面に載置されて水平状態に支持されることになる。
【0025】
下部構成体44は、図3(c)に示すように、下部の下枠部52と上部の上枠部53とを有しており、これら下枠部52および上枠部53は外側が同一形状をなし、内側の形状が、下枠部52の方が上枠部53よりも一回り小さい段差形状をなしている。その結果、これら下枠部52および上枠部53の間には上方に向く段面部54が形成されており、この段面部54には、上方に突出する係止突起部55が所定の間隔で複数形成されている。そして、袋体42は、図3(d)に示すように、その開口部41を形成する全周縁部が段面部54を覆うようにして係止突起部55に差し込まれて係止されることになり、この状態で下部構成体44から下方に垂れ下がった状態となる。
【0026】
上部構成体46は、下枠部58と上枠部59と上板部60とを有しており、外側の形状が、下枠部58の方が上枠部59よりも一回り小さい段差形状をなしている。上部構成体46は、下部構成体44側に最も揺動した状態で下枠部58が下部構成体44の上枠部53の内側に嵌合することになり、この状態で、上部構成体46の下枠部58が係止突起部55に係止された袋体42の上方移動を規制し、係止突起部55からの外れを規制する。なお、上部構成体46ではなく、別途の角リング状の保持部材を下部構成体44の上枠部53の内側に固定して、この保持部材で係止突起部55に係止された袋体42の上方移動を規制し、係止突起部55からの外れを規制しても良い。このように構成すれば上部構成体46の下部構成体44に対する揺動とは無関係に袋体42の係止突起部55からの外れを規制できる。
【0027】
上部構成体46には、図4に示すように、枠体43の上板部60の内側に形成された導入口61を開閉するスライド式のカセットシャッタ(シャッタ)64が設けられている。このカセットシャッタ64は、上部構成体46に形成されたガイド溝65に沿って導入口61を機体前後方向の一方から他方まで水平状態でスライドする平板状のスライド体66と、このスライド体66に回動軸67を介して回動自在にヒンジ結合される揺動体68とを有している。揺動体68は、上部構成体46に貫通形成された貫通溝69から上部構成体46に対して入出可能となっている。揺動体68も上部構成体46内に挿入された状態ではガイド溝65に沿って水平にスライドする。揺動体68は、平板状をなし回動軸67を介してスライド体66に連結される主板部70と、主板部70のスライド体66とは反対側から垂直に折れ曲がる操作板部71と、主板部70の操作板部71の折り曲げ方向とは反対側に突出するロック片部72とを有している。
【0028】
カセットシャッタ64は、図4(a)に示すように、スライド体66が上部構成体46内において導入口61よりも外側に位置した状態で揺動体68が下方に回動可能となり、この状態で導入口61を開放する。この状態から、揺動体68を水平となるように回動させた状態で上部構成体46内にカセットシャッタ64を押し込むと、スライド体66および揺動体68が上部構成体46に形成されたガイド溝65に沿って水平移動して導入口61を閉塞する。
【0029】
上部構成体46の一端側には、上記のように導入口61を閉塞した状態のカセットシャッタ64のロック片部72の下側に、シャッタロック部材75が回動軸76によって回動可能に支持されている。このシャッタロック部材75は、回動軸76とは反対側に上方に突出するロック爪部77が形成されており、回動軸76側にも上方に突出する突出部78が形成されている。突出部78には回動軸79を介して作動アーム80の一端部が回動可能に連結されており、この作動アーム80の他端部には回動軸81を介してスライダ82が回動可能に連結されている。このスライダ82は、上部構成体46に設けられたスライド溝83に沿って水平方向にスライド可能とされている。
【0030】
そして、スライダ82にはこれをシャッタロック部材75とは反対側に付勢するスプリング85が上部構成体46との間に介装されている。スライダ82がスプリング85の付勢力で最もシャッタロック部材75とは反対側に位置した作動では作動アーム80を介してシャッタロック部材75が略水平に配置されており、この状態でカセットシャッタ64が上部構成体46に押し込まれると、カセットシャッタ64のロック片部72がシャッタロック部材75のロック爪部77に当たってその上側の傾斜面77aによってシャッタロック部材75を回動させスライダ82をスライドさせながら移動し、ロック爪部77を過ぎるとシャッタロック部材75およびスライダ82がスプリング85の付勢力で戻り、図4(c)に示すように、ロック爪部77がロック片部72に係合する。これにより、シャッタロック部材75がカセットシャッタ64を閉状態でロックする。
【0031】
上部構成体46のスライダ82の位置には、貫通穴88が形成されており、枠体43がガイドレール50に沿って処理機本体2の当接板部90に当接する奥位置まで装填されると、この貫通穴88に進入してスライダ82を押圧して移動させるロック解除片部91が当接板部90から突出している。つまり、このロック解除片部91が貫通穴88に進入してスライダ82を押圧してスプリング85の付勢力に抗してシャッタロック部材75側に移動させると、作動アーム80を介してシャッタロック部材75がロック爪部77を下方に移動させるように回動し、その結果、カセットシャッタ64のロック片部72からロック爪部77が離間してロックが解除される。つまり、収納カセット3が枠体43を当接板部90に当接させる所定の装填位置(所定位置)に装填されると、処理機本体2に設けられたロック解除片部91がシャッタロック部材75によるカセットシャッタ64の閉状態でのロックを解除する。
【0032】
また、上部構成体46には、挿入溝93が形成されており、処理機本体2の当接板部90には、当接板部90の挿通穴95から収納カセット3側に突出するカセットロック部材96が収納カセット3とは反対側の回動軸97で処理機本体2に回動可能に支持されている。このカセットロック部材96は収納カセット3側の端部に下方に突出するロック爪部98を有しており、スプリング99で付勢されて挿通穴95の下端部に当接することになり、この状態で全体として水平に沿う。収納カセット3が枠体43を当接板部90に当接させる所定の装填位置まで装填されると、閉状態のカセットシャッタ64がロック爪部98の下側の傾斜面98aに当接することになり、カセットロック部材96は、図4(b)に示すようにカセットシャッタ64で押圧されてロック爪部98を上側に移動させる。この状態からカセットシャッタ64が開かれると、カセットロック部材96は、図4(a)に示すようにカセットシャッタ64による押圧が解除されるためスプリング99の付勢力でロック爪部98を下降させ収納カセット3をこの所定の装填位置にロックする。他方、この状態からカセットシャッタ64が閉じられると、図4(b)に示すようにカセットシャッタ64で押圧されてカセットロック部材96が傾斜面98aの傾斜でロック爪部98を上側に移動させることになり、収納カセット3のロックを解除する。
【0033】
上部構成体46には、閉状態のカセットシャッタ64の下側に、図2に示す一対のフラッパ101,102が回動軸103,104を中心に回動可能に設けられている。これらフラッパ101,102は、それぞれが支持される回動軸103,104から互いに近接する方向に延出し、平面視で導入口61内に両側から突出する閉状態と、回動軸103,104を中心に下方に回動して平面視で導入口61内から退避する開状態との間で回動可能とされ、閉状態となるように図示せぬネジリバネで付勢されている。
【0034】
処理機本体2には、一時貯留部30の鉛直下方位置つまり収納カセット3が装填される装填空間で昇降可能な可動ステージ(エレベータ手段)105が設けられている。
【0035】
可動ステージ105は、図2および図5に示すように、収納カセット3の装着方向奥側である機体前後方向後側に配置される奥板部201と、この奥板部201の両側部から機体前後方向前側に延出する一対の側板部202とを有して平面視コ字状に形成されたベース203を有しており、図5に示すように、このベース203の両側板部202のそれぞれに上下二つのガイドローラ204,205が設けられている。ガイドローラ204,205は、鉛直方向に延在するガイドレール206で移動が案内されることになり、その結果、ベース203が一定姿勢を維持したままガイドレール206に沿って昇降する。
【0036】
ベース203には、一対の側板部202の相互近接側に、収納カセット3の脱着方向である機体前後方向に離間して配置された一対の支持板部210とこれら支持板部210を連結させるとともに側板部202に固定される固定板部211とを有する平面視コ字状の支持部材212がそれぞれ固定されている。そして、各支持部材212には、機体前後方向の支持板部210同士を結ぶようにローラ213の軸214が回転可能に取り付けられている。ローラ213は、軸214に円筒状のゴム製のローラ本体215が嵌合固定されて構成されている。このようにして、軸214とローラ本体215とで構成されるローラ213が一対、収納カセット3の脱着方向に沿って水平に軸線を配し、しかも互いに同高さ且つ軸線方向の位置を合わせて設けられている。そして、一対のローラ213の各軸214の支持部材212から奥板部201側に突出する部分に、傘歯車216がそれぞれ固定されている。
【0037】
また、ベース203には、一対の側板部202同士を結ぶように、奥板部201側に、奥板部201に沿って水平に回転軸220が設けられており、この回転軸220の各側板部202の内側位置には、対応する傘歯車216に噛み合う一対の傘歯車221が固定されている。また、回転軸220には、一対の側板部202の外側位置にそれぞれピニオンギヤ222が固定されており、各ピニオンギア222は、鉛直配置されたラックギア223に噛み合っている。これにより、ベース203つまり可動ステージ105が下降すると、この下降に連動してピニオンギヤ222および回転軸220が回転し、それぞれ傘歯車221,216を介して一対のローラ213が相互近接側を上向きに移動させるように同速度で回転する。逆に、可動ステージ105が上昇すると、これに連動して一対のローラ213が相互近接側を下向きに移動させるように同速度で回転する。
【0038】
さらに、ベース203には、図2に示すように、可動ステージ105を上昇方向に付勢するスプリング225が取り付けられている。なお、処理機本体2の制御部36は、図示略の位置センサの検出結果に基づいて可動ステージ105の昇降位置を把握する。
【0039】
紙幣処理機1は、さらに、上記した収納カセット3の袋体42を窄めた状態で止める図7に示すクリップ部材115を有している。このクリップ部材115は、袋とじ用の合成樹脂製のもので、ヒンジ部116で連結された一対の挟持部117,118を有しており、これら挟持部117,118の先端側には互いに係合可能な係合構造部119が設けられている。この係合構造部119は、爪部120と、爪部120を係止する係止穴121とを有しており、樹脂の可撓性によって互いに係合し、また樹脂の可撓性によって互いの係合が解除される。
【0040】
以上の紙幣処理機1においては、処理機本体2の前面の扉体40を開いた状態で、カセットシャッタ64が閉状態とされた空の収納カセット3を処理機本体2内の所定の装填位置に装填する。つまり、収納カセット3の枠体43をガイドレール50上を摺動させて当接板部90に当接するまで移動させる。すると、図4(b)に示すように、収納カセット3の枠体43内に処理機本体2のカセットロック部材96が入り込み、シャッタカセット64にロック爪部98の傾斜面98aで乗り上げることでスプリング99の付勢力に抗して上側に回動する。それとともに、枠体43の貫通穴88にロック解除片部91が進入してスライダ82を押圧してスプリング85の付勢力に抗してシャッタロック部材75側に移動させる。すると、作動アーム80を介してシャッタロック部材75がロック爪部77を下方に移動させるように回動し、その結果、カセットシャッタ64のロック片部72からシャッタロック部材75が離間してカセットシャッタ64のロックが解除される。
【0041】
このようにロックが解除されたカセットシャッタ64を、図4(a)に示すように、処理機本体2の前面側に引き出すと、その初期においてカセットロック部材96からカセットシャッタ64が離れ、その結果、カセットロック部材96がスプリング99の付勢力でロック爪部98を下方に移動させるように回動して、収納カセット3を処理機本体2の所定の装填位置にロックすることになる。なお、収納カセット3が装填位置に装填された状態で、閉状態のカセットシャッタ64をシャッタロック部材75の傾斜面98aに当接させるとともにスプリング99の付勢力および傾斜面98aの傾斜角度を適宜設定することによって、ロック解除片部91でカセットシャッタ64のシャッタロック部材75によるロックが解除されると同時に、カセットロック部材96が傾斜面98aでカセットシャッタ64を開方向にスライドさせながら下側に回動して収納カセット3を処理機本体2にロックするようにしても良い。
【0042】
引き出されたカセットシャッタ64は、スライド体66が導入口61から退避する位置に位置すると揺動体68が全体として枠体43よりも外側に位置し、回動軸67を介して回動可能となって下方に延出する姿勢に折り畳まれる。
【0043】
上記した装填時に、変形容易な袋体42は、図6に示すように、上部の待機位置に位置する可動ステージ105の一対のローラ213間に挿入されることになり、これにより、袋体42は中間部が一対のローラ213で窄められた状態となる。このとき、袋体42の窄められた窄部123よりも上側が紙幣Sを収納する図2に示す収納空間122となり、袋体42の窄められた窄部123が収納空間122の底部となる。
【0044】
そして、例えば、紙幣Sの入金収納処理を行う場合には、操作者が装填部12のビルプレス17を持ち上げてこれと台部15との間に紙幣Sを、その長手方向を機体前後方向に沿わせた状態で装填する。このとき、金種混合の装填および単一金種の装填のいずれも可能である。そして、操作者が操作部37に入金開始の操作を入力すると、制御部36が分離繰出部20と搬送部25とを駆動する。すると、装填部12に装填された紙幣Sが最下のものから一枚ずつ機内に繰り出され、搬送部25で搬送される。その途中で識別部28により受け入れ可能と識別された紙幣Sが搬送路27から一時貯留部30内に放出され、それ以外の紙幣Sがリジェクト部13に放出される。なお、リジェクト部13に放出された紙幣Sはそのまま機外へ取り出し可能となる。
【0045】
上記のようにして、装填部12に装填された紙幣Sが、リジェクト部13および一時貯留部30のいずれかに放出されることですべてなくなると、制御部36は、分離繰出部20および搬送部25を停止させて、識別部28の識別結果に基づいて一時貯留部30に一時貯留された紙幣Sの識別結果を表示部38に表示させる。この表示を見て操作者がキャンセル操作を操作部37に入力すると、制御部36は返却扉ロック部39で返却扉31のロックを解除して開放可能とし、操作者が返却扉31を開いて直接一時貯留部30の紙幣Sを取り出すことになる。
【0046】
他方、表示を見て操作者が承認操作を操作部37に入力すると、制御部36は一時貯留部シャッタ34を開作動させることになり、一時貯留空間33から、紙幣Sが下方に落下して、収納カセット3の導入口61を通って閉状態の一対のフラッパ101,102上に載置される。続いて、制御部36は、押込部35を下降させて、フラッパ101,102上の紙幣Sをフラッパ101,102を下方に回動させながら押し込む。すると、紙幣Sは、フラッパ101,102を通過して、可動ステージ105で窄められた窄部123で底部が形成される袋体42の収納空間122の底部または既に収納された紙幣S上に収納される。フラッパ101,102は紙幣Sが離れることでネジリバネの付勢力で水平状態に戻る。このとき、袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123より下側に紙幣Sが進入することはない。
【0047】
また、このとき、押込部35の下降による紙幣Sを介しての押圧で、可動ステージ105とその一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とが、押し込む紙幣量に応じて下降することになる。その際に、可動ステージ105の下降に連動してピニオンギヤ222が回転することになり、一対のローラ213が袋体42と接触する相互近接側を上向きに移動させるように回転する。これにより、下降する一対のローラ213と、これらに対し相対的に上昇する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0048】
その後、押込部35が閉状態のフラッパ101,102間を通過しながら上昇し、この押込部35の上昇によってスプリング225の付勢力で、可動ステージ105とその一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とが上昇することになり、収納空間122内の紙幣Sは可動ステージ105の一対のローラ213上にある袋体42の一部と一対のフラッパ101,102とで挟持されることになる。この上昇時にも、可動ステージ105の上昇に連動して一対のローラ213が袋体42と接触する相互近接側を下向きに移動させるように回転する。これにより、上昇する一対のローラ213と、これらに対し相対的に下降する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0049】
なお、以上の紙幣処理機1で紙幣Sの計数処理を行う場合は、上記と同様にして、装填部12に装填された紙幣Sがすべてリジェクト部13および一時貯留部30に搬送されたら、一時貯留部30から収納カセット3に紙幣Sを収納せずに、返却扉31を開いて一時貯留部30の紙幣Sを操作者に返却することになる。
【0050】
上記のようにして紙幣Sを収納した収納カセット3を処理機本体2から取り出す場合には、まず、操作者は、扉体40を開き、図4(b)に示すように、揺動体68を水平に持ち上げて枠体43に押し込むことでカセットシャッタ64を閉じる。すると、カセットシャッタ64がカセットロック部材96に当接してこれを揺動させ、収納カセット3の処理機本体2とのロックを解除する。次に、図7に示すクリップ部材115を用いて、その一対の挟持部117,118で袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123に近いそれよりも下側部分を図8に示すように挟持し、挟持部117,118の係合構造部119を係合させる。そして、収納カセット3を扉体40側に引き出す。すると、その初期に、図4(c)に示すように枠体43からロック解除片部91が退避することになり、スライダ82がスプリング85の付勢力でシャッタロック部材75から離間する方向に移動し、作動アーム80を介してシャッタロック部材75がカセットシャッタ64を閉状態でロックすることになる。
【0051】
収納カセット3を扉体40側に引き出すと、袋体42も可動ステージ105の一対のローラ213間から引き出されることになるが、クリップ部材115の挟持部117,118による挟持で窄められた部分が維持されるため、袋体42に収納された紙幣Sが下方に落下するのを規制し、良好な収納状態を維持することになる。このようにして、導入口61がカセットシャッタ64で閉塞されることで紙幣Sの取り出しを不可とした状態で収納カセット3が運搬される。
【0052】
そして、収納カセット3から紙幣Sを取り出す際には、図3(b)に示すように、別途のキー48で枠体ロック部47による上部構成体46と下部構成体44とのロックを解除して、上部構成体46をヒンジ部材45を介して下部構成体44に対し揺動させて開く。すると、カセットシャッタ64およびフラッパ101,102を含む上部構成体46が下部構成体44から離れるため、袋体42の紙幣Sを容易に取り出すことができる。
【0053】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理機1によれば、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体42と、袋体42の開口部41に取り付けられる金属製の枠体43と、枠体43の内側の導入口61を開閉するスライド式のカセットシャッタ64とを有する収納カセット3を、その枠体43において、処理機本体2のガイドレール50に支持させるとともに、処理機本体2の可動ステージ105で袋体42の中間部を窄めた状態とする。すると、袋体42の窄められた窄部123が収納空間122の底部となって導入口61から導入された紙幣Sをその上側に収納する。そして、例えば収納量が多くなると押込部35が紙幣Sを介して可動ステージ105を下降させることで袋体42の窄部123つまり収納空間122の底部を下げることができ、収納空間122を拡大することができる。このように、紙幣Sの収納量に応じて収納空間122の大きさを設定できるため、紙幣Sの収納状態が乱雑になることなく良好に収納することができる。そして、空の状態の収納カセット3は、袋体42が布製でいずれの方向にも変形容易であるため、変形自由度が高くて取扱性に優れることになり、また、一層小さく折り畳むことができることになって保管効率も優れることになる。
【0054】
しかも、押込部35が、可動ステージ105と、その一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とを紙幣Sを介して下降させる際に、一対のローラ213は、可動ステージ105の下降に連動して、袋体42と接触する側が袋体42の相対移動方向である上向きに移動するように回転させられることになって、袋体42との摩擦力が軽減されることになり、その結果、円滑に下降することになる。また、押込部35が上昇することで、可動ステージ105と、その一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とをスプリング225の付勢力で上昇させる際にも、一対のローラ213は、可動ステージ105の上昇に連動して、袋体42と接触する相互近接側が袋体42の相対移動方向である下向きに移動するように回転させられることになって袋体42との摩擦力が軽減されることになり、その結果、円滑に上昇することになる。
【0055】
加えて、収納カセット3を処理機本体2の所定の装填位置に装填すると、処理機本体2に設けられたロック解除片部91がシャッタロック部材75のロックを解除してカセットシャッタ64を開放可能とし、カセットシャッタ64を開放することで、カセットロック部材96が収納カセット3を装填位置にロックする。よって、カセットシャッタ64を開いて処理機本体2からの紙幣Sの導入が可能になるとともに処理機本体2からの収納カセット3の取り外しが規制される。この状態からカセットシャッタ64を閉じると、カセットシャッタ64がカセットロック部材96の傾斜面98aを押圧しこの傾斜面98aがカセットロック部材96による収納カセット3の処理機本体2へのロックを解除することになって、収納カセット3が取り外し可能となる。したがって、収納カセット3の運搬時にはカセットシャッタ64は閉じられていることになり、保安上良好となる。
【0056】
さらに、収納カセット3の処理機本体2からの取り外し前に、袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123よりも下側部分を窄めた状態でクリップ部材115で止めることで、収納空間122の拡大を規制した上で、収納カセット3を処理機本体2から取り外すことができる。したがって、取り外した収納カセット3内で紙幣Sの収納状態が乱雑になるのを防止できる。
【0057】
加えて、枠体43の上部構成体46および下部構成体44の枠体ロック部47による閉状態でのロックを解除すれば、カセットシャッタ64が設けられた上部構成体46が下部構成体44に対し開放されて袋体42の紙幣Sを取り出し可能となる。カセットシャッタ64を開いた導入口61よりも広い開口で紙幣Sを取り出し可能となり、紙幣Sの取り出しが容易となる。また、袋体42が汚損、破損した場合でも、袋体42の交換が容易となる。
【0058】
次に、本発明の第2実施形態の紙幣処理機を図9を主に参照して以下に説明する。
第2実施形態の紙幣処理機では、可動ステージ105の構成が第1実施形態と相違している。つまり、第2実施形態の可動ステージ105には、両側の支持部材212に一対のローラとして第1実施形態のローラ213に換えて回転自在のフリーローラ230が設けられており、第1実施形態の傘歯車216,221,回転軸220、ピニオンギヤ222およびラックギヤ223は設けられていない。
【0059】
このような第2実施形態においても、紙幣収納時に、押込部35が下降して、フラッパ101,102上の紙幣Sをフラッパ101,102を下方に回動させながら押し込むと、紙幣Sは、フラッパ101,102を通過して、可動ステージ105で窄められた窄部123で底部が形成される袋体42の収納空間122に収納されることになるが、このとき、押込部35の下降による紙幣Sを介しての押圧で可動ステージ105と、その一対のローラ230で窄められて形成される収納空間122の底部とが紙幣量に応じた分だけ下降することになり、その際に相対的に上昇する袋体42との摩擦で摩擦力を軽減するように一対の回転自在のフリーローラ230が袋体42と接触する相互近接側を上向きに移動させるように回転する。これにより、一対のフリーローラ230と、これに対し相対的に上昇する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0060】
その後、押込部35が閉状態のフラッパ101,102間を通過しながら上昇すると、スプリング225の付勢力で可動ステージ105も上昇することになるが、この上昇時にも、相対的に下降する袋体42との摩擦で摩擦力を軽減するように一対の回転自在のフリーローラ230が袋体42と接触する相互近接側を下向きに移動させるように回転する。これにより、一対のフリーローラ230と、これに対し相対的に下降する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0061】
以上に述べた第2実施形態の紙幣処理機1によれば、押込部35が、可動ステージ105と、その一対のフリーローラ230で窄められて形成される収納空間122の底部とを紙幣Sを介して下降させる際に、一対のフリーローラ230は、袋体42との摩擦によって、袋体42と接触する側が袋体42の相対移動方向である上向きに回転させられることになって袋体42との摩擦力が軽減されることになり、円滑に下降することになる。また、押込部35が上昇することで、可動ステージ105と、その一対のローラ230で窄められて形成される収納空間122の底部とをスプリング225の付勢力で上昇させる際にも、一対のフリーローラ230は、袋体42との摩擦によって、袋体42と接触する相互近接側が袋体42の相対移動方向である下向きに移動するように回転させられることになって袋体42との摩擦力が軽減されることになり、円滑に上昇することになる。
【0062】
しかも、一対のフリーローラ230は、実際の袋体42の相対移動による摩擦力に応じてこれを最小限にするように回転することになるため、袋体42のセット状態によらず、摩擦力を最小限にできる。しかも、可動ステージ105の昇降に連動してローラを回転させるための傘歯車、回転軸、ピニオンギヤおよびラックギヤが不要となるため、低コスト化が図れる。
【0063】
上記第1,第2実施形態の紙幣処理機1を以下のように変更することも可能である。
【0064】
図10に示すように、収納カセット3の袋体42にキー125でロックおよびロック解除が可能なファスナ126を設け、このファスナ126を開けることで紙幣Sを取り出すようにしても良い。
【0065】
また、収納カセット3の処理機本体2からの取り外し前に、袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123よりも下側部分を窄めた状態で保持するために、クリップ部材115にかえて、図11に示すように、袋体42を窄めた状態とする昇降可能なリング部材128を設けても良い。このリング部材128は、その内側に袋体42が挿入されることになり、内周面から突出する複数の先細の突起部129で袋体42に引っ掛かることで位置を保持可能となっている。このようなリング部材128を可動ステージ105の直ぐ下側に配置して収納カセット3を処理機本体2に装填すれば、可動ステージ105が紙幣Sの収納量に応じて下降すると、リング部材128を下降させることになって、収納カセット3の取り外し時に、可動ステージ105で窄められた窄部123の直ぐ下側部分を窄めた状態で保持することができる。なお、このリング部材128の脱落を防止するためにリング部材128の外側において袋体42の上端部と下端部とを結ぶ紐状の脱落防止部材130が取り付けられている。
【0066】
さらに、クリップ部材115にかえて、図12に示すように、袋体42を窄めた状態とする昇降可能な紐状部材131を設けても良い。この紐状部材131は、一本の両端側がボタン132を有するロック部材133に挿入されており、ロック部材133はボタン132が押圧操作されない状態で紐状部材131にロックされ、ボタン132が押圧操作されると紐状部材131に対しスライド可能になる。紐状部材131には、その中間部とロック部材133とで形成された管状部134の内側に袋体42が挿入されることになり、ロック部材133で管状部134を小さくすることで袋体42を窄めた状態とする。この紐状部材131を用いる場合には、収納カセット3の処理機本体2への装填時には紐状部材131を袋体42の下端部に位置させておき、収納カセット3を処理機本体2から取り出す際に、操作者が袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123よりも下側部分を、管状部134を小さくすることで窄めた状態とする。なお、紐状部材131の脱落を防止するために紐状部材131の外側において袋体42の上端部と下端部とを結ぶ紐状の脱落防止部材135が取り付けられている。
【0067】
加えて、図示は略すが可動ステージ105の下面側に袋体42を窄めた状態でテープで止めるテープ止め機構を設けても良い。このテープ止め機構は袋体42の処理機本体2への挿入時にはテープを止めず、処理機本体2から引き出す際にテープ止めするものを用いることができる。例えば、袋の絞った部分を溝を通すことによってテープを巻き付け、引き抜くときにテープを切断するバッグシーラを利用することができる。あるいは、可動ステージ105の下面側に、スプリングで一対の挟持部を閉方向に付勢したクリップ部材を開状態で保持する保持機構を設け、処理機本体2へ袋体42を挿入した後に、クリップ部材を、ヒンジ側を引き抜き方向にして保持機構に保持することで袋体42の引き抜き時に袋体42でクリップ部材を一緒に引き出し、保持機構から外すことでスプリングの付勢力で一対の挟持部で袋体42を挟持するようにしても良い。さらに、ゴムバンドを巻回することで袋体42を窄めた状態に保持するようにしても良い。このゴムバンドは空の収納カセット3を運ぶ際に枠体43を袋体42で刳るんだ状態でその周囲に巻回されると衝撃の緩衝材として機能する。
【0068】
さらに、袋体42内に紐を底部を通るように数カ所通しておき、底部を枠体43に近づけるように締め上げる構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態の紙幣処理機を概略的に示す側断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の要部を示す側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の収納カセットの枠体を示すもので、(a)は閉状態の側面図、(b)は開状態の側面図、(c)は下部構成体の平面図、(d)は下部構成体を断面とした側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので、(a)は収納カセットを装填位置に装填しカセットシャッタを開いた状態を示す側断面図、(b)は収納カセットを装填位置に装填しカセットシャッタを閉じた状態を示す側断面図、(c)は収納カセットを装填位置から離間させた状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の可動ステージを示す収納カセットの袋体を挿入する前の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の可動ステージを示す収納カセットの袋体を挿入した後の状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の一部を構成するクリップ部材を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の要部を示す側断面図であってクリップ部材を取り付けた状態を示すものである。
【図9】本発明の第2実施形態の紙幣処理機の可動ステージを示す斜視図である。
【図10】本発明の第1,第2実施形態の紙幣処理機の収納カセットの別の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1,第2実施形態の紙幣処理機の収納カセットのさらに別の例を示す斜視図である。
【図12】本発明の第1,第2実施形態の紙幣処理機の収納カセットのさらに別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
S 紙幣
1 紙幣処理機
2 処理機本体
3 収納カセット
41 開口部
42 袋体
43 枠体
50 ガイドレール(支持手段)
61 導入口
64 カセットシャッタ(シャッタ)
105 可動ステージ(エレベータ手段)
213 ローラ
230 フリーローラ(ローラ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機に関し、特にその収納構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣処理機において、紙幣を収納する収納カセットを処理機本体に対し着脱可能に構成し、この収納カセットを金庫として用いて紙幣の運搬を行うことが行われているが、収納カセットを蛇腹構造にして伸縮可能に構成し、紙幣の収納量に応じて収納容量を変化させることで、空状態での取扱性および保管効率を向上する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−149088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の収納カセットは、蛇腹構造を採用していることから、伸縮方向の変形は容易であるものの、他の方向への変形は容易ではなく、また、最も縮長させた状態でも十分に小型化できるとは言えなかった。
【0004】
したがって、本発明は、収納カセットの空状態での取扱性および保管効率を一層向上できる紙幣処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、該袋体の開口部に取り付けられる枠体と、該枠体の内側の導入口を開閉するスライド式のシャッタとを有し、該シャッタが開放された状態で前記枠体の導入口を介して前記袋体内に紙幣を収納可能な収納カセットと、装填された前記収納カセットの前記枠体を支持する支持手段と、該支持手段で支持した前記収納カセットの前記袋体の中間部を窄めた状態とする昇降可能なエレベータ手段とを有する処理機本体とを備えた紙幣処理機であって、前記エレベータ手段は、相互間に前記袋体の中間部が挿入される一対の回転可能なローラを具備することを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記一対のローラは、前記エレベータ手段の昇降に連動して回転することを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記一対のローラは、回転自在のフリーローラであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、袋体の開口部に取り付けられる枠体と、枠体の内側の導入口を開閉するスライド式のシャッタとを有する収納カセットを、その枠体において、処理機本体の支持手段に支持させるとともに、処理機本体のエレベータ手段で袋体の中間部を窄めた状態とする。すると、袋体の窄められた部分が収納空間の底部となって導入口から導入された紙幣をその上側に収納する。そして、例えば収納量が多くなるとエレベータ手段が下降することで袋体の窄めた位置つまり収納空間の底部を下げることができ、収納空間を拡大することができる。このように、紙幣の収納量に応じて収納空間の大きさを設定できるため、紙幣の収納状態が乱雑になることなく良好に収納することができる。そして、空の状態の収納カセットは、袋体が布製でいずれの方向にも変形容易であるため、変形自由度が高くて取扱性に優れることになり、また、一層小さく折り畳むことができることになって保管効率も優れることになる。
しかも、エレベータ手段の一対のローラで窄められた袋体の収納空間の底部を下降させる際に、一対のローラは回転することで袋体との摩擦力が軽減されて、円滑に下降できることになる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、エレベータ手段の一対のローラで窄められた袋体の収納空間の底部を下降させる際に、一対のローラは下降に連動して回転するため、袋体との摩擦力が軽減されて、円滑に下降できることになる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、エレベータ手段の一対のローラで窄められた袋体の収納空間の底部を下降させる際に、フリーローラである一対のローラは袋体との摩擦によって摩擦力を軽減するように回転するため、袋体との摩擦力が軽減されて、円滑に下降できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態の紙幣処理機を図1〜図8を参照して以下に説明する。
第1実施形態の紙幣処理機1は、バラの紙幣Sを計数して入金および収納する入金収納処理と、バラの紙幣Sを計数して返却する計数処理とを行うことが可能とされるものである。
【0012】
第1実施形態の紙幣処理機1は、図1に概略的に示すように、処理機本体2と、処理機本体2に対し着脱可能な収納カセット3とを有している。
【0013】
処理機本体2は、機体の前面2A側の上部にバラ紙幣Sが投入される装填部12が設けられ、この装填部12の下側に機体内からリジェクト紙幣が繰り出されるリジェクト部13が設けられている。
【0014】
装填部12は、水平に対し若干後ろ下がりに傾斜してその底をなす台部15を有しており、この台部15上に紙幣Sが上下方向に集積された状態で装填される。なお、台部15を水平に配置しても良い。
【0015】
また、装填部12には、台部15の機体奥側上方に機体左右方向に沿って配設された回動軸16と、この回動軸16に回動可能に支持されて台部15の上側で上下に揺動可能とされ、台部15上に装填された紙幣Sを台部15との間で挟持するビルプレス17とが設けられている。
【0016】
処理機本体2は、装填部12の機体奥側に、このように台部15上に装填されたバラ紙幣Sを、下側のものから一枚ずつ分離して機体内に繰り出す分離繰出部20を有している。この分離繰出部20は、装填部12の台部15に、台部15から上部を一部突出させた状態で機体左右方向に沿う軸回りに回転可能に設けられた蹴出ローラ21と、台部15よりも機体奥側に蹴出ローラ21と平行な軸回りに回転可能に設けられた繰出ローラ22と、この繰出ローラ22の上側に繰出ローラ22と平行な軸回りに回転可能に設けられた分離ローラ23とを有している。分離ローラ23は、図示せぬワンウエイクラッチによって繰出ローラ22側が紙幣Sを機体奥方に移動させる方向の回転、すなわち図1における反時計回り方向の回転が規制され、逆方向の回転のみ許容される。
【0017】
このような分離繰出部20は、台部15上に装填されたバラ紙幣Sの最下のものを蹴出ローラ21で繰出ローラ22と分離ローラ23との間に蹴り出し、この蹴り出し時に最下の紙幣Sに引きずられて繰出ローラ22と分離ローラ23との間に移動した紙幣Sを分離ローラ23で止めて蹴り出された最下の紙幣Sのみを繰出ローラ22で機体内方に繰り出す。
【0018】
処理機本体2は、分離繰出部20の機体奥側に接続され、分離繰出部20から繰り出された紙幣Sを搬送する搬送部25を有している。この搬送部25は、紙幣Sを案内する複数のガイド板と搬送ローラと振分部材等で構成されるもので、分離繰出部20から略水平に沿って機体奥側に延出した後に下側に折り返し略水平に沿って機体手前側に延出してリジェクト部13に接続される搬送路26と、この搬送路26の途中から分岐して前下がりに延出する搬送路27とを有しており、搬送路26には、搬送中の紙幣Sの金種、真偽、正損および搬送異常の識別と計数とを行う識別部28が設けられている。
【0019】
処理機本体2は、搬送部25の搬送路27の端末位置に、識別部28により真紙幣かつ正紙幣で正常搬送と識別された紙幣Sを金種混合で一時貯留させる一時貯留部30が接続されている。この一時貯留部30は、機体前面側から開閉可能な返却扉31と、返却扉31とで平面視枠状をなす壁部32と、機体左右方向に水平にスライドすることで返却扉31および壁部32で囲まれた一時貯留空間33の下部を開閉する一時貯留部シャッタ34と、紙幣Sを下方に押し込む昇降可能な押込部35とを有している。そして、処理機本体2には、各部を制御する制御部36と、操作者による操作入力が行われる操作部37と、操作者への表示を行う表示部38とが設けられている。また、返却扉31には、制御部36でロックおよびロック解除が制御される返却扉ロック部39が設けられている。
【0020】
なお、装填部12には、紙幣Sが分離繰出部20の分離繰出方向に長手方向を沿わせる姿勢で装填されることになり、搬送部25は紙幣Sをその長手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送し、その長手方向を放出方向に沿わせた姿勢で一時貯留部30およびリジェクト部13のいずれかに放出させる。勿論、紙幣Sを短手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送するようにしても良い。
【0021】
そして、第1実施形態の収納カセット3は、処理機本体2の前面2Aに設けられた開閉可能な扉体40を開いた状態で処理機本体2に対し機体前後方向に出し入れされることになり、処理機本体2に装填された状態で一時貯留部30の鉛直下方に配置される。以下、収納カセット3を処理機本体2に装填された状態をもって説明する。
【0022】
図2に示すように、収納カセット3は、滑りの良い布製であって長さ方向一側に開口部41を有する略有底角筒状に縫製された袋体42を有している。この袋体42は全体的に布製とされることで、三次元のいずれの方向にも変形容易となっているものの、外力を受けない状態では縫製によって有底角筒状をほぼ維持可能になっている。
【0023】
収納カセット3は、袋体42の開口部41に取り付けられる金属製の枠体43を有している。この枠体43は、平面視が長方形枠状の下部構成体44と、図3に示すように、この下部構成体44に開閉可能にヒンジ部材45を介してヒンジ結合された平面視が長方形枠状の上部構成体46と、これら下部構成体44および上部構成体46を当接状態でロックする枠体ロック部47と有している。枠体ロック部47は、下部構成体44および上部構成体46を当接状態とするとこれに連動してロック状態となり、別体のキー48により操作されてロック状態を解除可能となっている。
【0024】
収納カセット3は、図2に示すように、その枠体43が、処理機本体2に機体前後方向に沿う水平状態で固定されたガイドレール(支持手段)50で案内されて処理機本体2内に配置されることになり、ガイドレール50の上面に載置されて水平状態に支持されることになる。
【0025】
下部構成体44は、図3(c)に示すように、下部の下枠部52と上部の上枠部53とを有しており、これら下枠部52および上枠部53は外側が同一形状をなし、内側の形状が、下枠部52の方が上枠部53よりも一回り小さい段差形状をなしている。その結果、これら下枠部52および上枠部53の間には上方に向く段面部54が形成されており、この段面部54には、上方に突出する係止突起部55が所定の間隔で複数形成されている。そして、袋体42は、図3(d)に示すように、その開口部41を形成する全周縁部が段面部54を覆うようにして係止突起部55に差し込まれて係止されることになり、この状態で下部構成体44から下方に垂れ下がった状態となる。
【0026】
上部構成体46は、下枠部58と上枠部59と上板部60とを有しており、外側の形状が、下枠部58の方が上枠部59よりも一回り小さい段差形状をなしている。上部構成体46は、下部構成体44側に最も揺動した状態で下枠部58が下部構成体44の上枠部53の内側に嵌合することになり、この状態で、上部構成体46の下枠部58が係止突起部55に係止された袋体42の上方移動を規制し、係止突起部55からの外れを規制する。なお、上部構成体46ではなく、別途の角リング状の保持部材を下部構成体44の上枠部53の内側に固定して、この保持部材で係止突起部55に係止された袋体42の上方移動を規制し、係止突起部55からの外れを規制しても良い。このように構成すれば上部構成体46の下部構成体44に対する揺動とは無関係に袋体42の係止突起部55からの外れを規制できる。
【0027】
上部構成体46には、図4に示すように、枠体43の上板部60の内側に形成された導入口61を開閉するスライド式のカセットシャッタ(シャッタ)64が設けられている。このカセットシャッタ64は、上部構成体46に形成されたガイド溝65に沿って導入口61を機体前後方向の一方から他方まで水平状態でスライドする平板状のスライド体66と、このスライド体66に回動軸67を介して回動自在にヒンジ結合される揺動体68とを有している。揺動体68は、上部構成体46に貫通形成された貫通溝69から上部構成体46に対して入出可能となっている。揺動体68も上部構成体46内に挿入された状態ではガイド溝65に沿って水平にスライドする。揺動体68は、平板状をなし回動軸67を介してスライド体66に連結される主板部70と、主板部70のスライド体66とは反対側から垂直に折れ曲がる操作板部71と、主板部70の操作板部71の折り曲げ方向とは反対側に突出するロック片部72とを有している。
【0028】
カセットシャッタ64は、図4(a)に示すように、スライド体66が上部構成体46内において導入口61よりも外側に位置した状態で揺動体68が下方に回動可能となり、この状態で導入口61を開放する。この状態から、揺動体68を水平となるように回動させた状態で上部構成体46内にカセットシャッタ64を押し込むと、スライド体66および揺動体68が上部構成体46に形成されたガイド溝65に沿って水平移動して導入口61を閉塞する。
【0029】
上部構成体46の一端側には、上記のように導入口61を閉塞した状態のカセットシャッタ64のロック片部72の下側に、シャッタロック部材75が回動軸76によって回動可能に支持されている。このシャッタロック部材75は、回動軸76とは反対側に上方に突出するロック爪部77が形成されており、回動軸76側にも上方に突出する突出部78が形成されている。突出部78には回動軸79を介して作動アーム80の一端部が回動可能に連結されており、この作動アーム80の他端部には回動軸81を介してスライダ82が回動可能に連結されている。このスライダ82は、上部構成体46に設けられたスライド溝83に沿って水平方向にスライド可能とされている。
【0030】
そして、スライダ82にはこれをシャッタロック部材75とは反対側に付勢するスプリング85が上部構成体46との間に介装されている。スライダ82がスプリング85の付勢力で最もシャッタロック部材75とは反対側に位置した作動では作動アーム80を介してシャッタロック部材75が略水平に配置されており、この状態でカセットシャッタ64が上部構成体46に押し込まれると、カセットシャッタ64のロック片部72がシャッタロック部材75のロック爪部77に当たってその上側の傾斜面77aによってシャッタロック部材75を回動させスライダ82をスライドさせながら移動し、ロック爪部77を過ぎるとシャッタロック部材75およびスライダ82がスプリング85の付勢力で戻り、図4(c)に示すように、ロック爪部77がロック片部72に係合する。これにより、シャッタロック部材75がカセットシャッタ64を閉状態でロックする。
【0031】
上部構成体46のスライダ82の位置には、貫通穴88が形成されており、枠体43がガイドレール50に沿って処理機本体2の当接板部90に当接する奥位置まで装填されると、この貫通穴88に進入してスライダ82を押圧して移動させるロック解除片部91が当接板部90から突出している。つまり、このロック解除片部91が貫通穴88に進入してスライダ82を押圧してスプリング85の付勢力に抗してシャッタロック部材75側に移動させると、作動アーム80を介してシャッタロック部材75がロック爪部77を下方に移動させるように回動し、その結果、カセットシャッタ64のロック片部72からロック爪部77が離間してロックが解除される。つまり、収納カセット3が枠体43を当接板部90に当接させる所定の装填位置(所定位置)に装填されると、処理機本体2に設けられたロック解除片部91がシャッタロック部材75によるカセットシャッタ64の閉状態でのロックを解除する。
【0032】
また、上部構成体46には、挿入溝93が形成されており、処理機本体2の当接板部90には、当接板部90の挿通穴95から収納カセット3側に突出するカセットロック部材96が収納カセット3とは反対側の回動軸97で処理機本体2に回動可能に支持されている。このカセットロック部材96は収納カセット3側の端部に下方に突出するロック爪部98を有しており、スプリング99で付勢されて挿通穴95の下端部に当接することになり、この状態で全体として水平に沿う。収納カセット3が枠体43を当接板部90に当接させる所定の装填位置まで装填されると、閉状態のカセットシャッタ64がロック爪部98の下側の傾斜面98aに当接することになり、カセットロック部材96は、図4(b)に示すようにカセットシャッタ64で押圧されてロック爪部98を上側に移動させる。この状態からカセットシャッタ64が開かれると、カセットロック部材96は、図4(a)に示すようにカセットシャッタ64による押圧が解除されるためスプリング99の付勢力でロック爪部98を下降させ収納カセット3をこの所定の装填位置にロックする。他方、この状態からカセットシャッタ64が閉じられると、図4(b)に示すようにカセットシャッタ64で押圧されてカセットロック部材96が傾斜面98aの傾斜でロック爪部98を上側に移動させることになり、収納カセット3のロックを解除する。
【0033】
上部構成体46には、閉状態のカセットシャッタ64の下側に、図2に示す一対のフラッパ101,102が回動軸103,104を中心に回動可能に設けられている。これらフラッパ101,102は、それぞれが支持される回動軸103,104から互いに近接する方向に延出し、平面視で導入口61内に両側から突出する閉状態と、回動軸103,104を中心に下方に回動して平面視で導入口61内から退避する開状態との間で回動可能とされ、閉状態となるように図示せぬネジリバネで付勢されている。
【0034】
処理機本体2には、一時貯留部30の鉛直下方位置つまり収納カセット3が装填される装填空間で昇降可能な可動ステージ(エレベータ手段)105が設けられている。
【0035】
可動ステージ105は、図2および図5に示すように、収納カセット3の装着方向奥側である機体前後方向後側に配置される奥板部201と、この奥板部201の両側部から機体前後方向前側に延出する一対の側板部202とを有して平面視コ字状に形成されたベース203を有しており、図5に示すように、このベース203の両側板部202のそれぞれに上下二つのガイドローラ204,205が設けられている。ガイドローラ204,205は、鉛直方向に延在するガイドレール206で移動が案内されることになり、その結果、ベース203が一定姿勢を維持したままガイドレール206に沿って昇降する。
【0036】
ベース203には、一対の側板部202の相互近接側に、収納カセット3の脱着方向である機体前後方向に離間して配置された一対の支持板部210とこれら支持板部210を連結させるとともに側板部202に固定される固定板部211とを有する平面視コ字状の支持部材212がそれぞれ固定されている。そして、各支持部材212には、機体前後方向の支持板部210同士を結ぶようにローラ213の軸214が回転可能に取り付けられている。ローラ213は、軸214に円筒状のゴム製のローラ本体215が嵌合固定されて構成されている。このようにして、軸214とローラ本体215とで構成されるローラ213が一対、収納カセット3の脱着方向に沿って水平に軸線を配し、しかも互いに同高さ且つ軸線方向の位置を合わせて設けられている。そして、一対のローラ213の各軸214の支持部材212から奥板部201側に突出する部分に、傘歯車216がそれぞれ固定されている。
【0037】
また、ベース203には、一対の側板部202同士を結ぶように、奥板部201側に、奥板部201に沿って水平に回転軸220が設けられており、この回転軸220の各側板部202の内側位置には、対応する傘歯車216に噛み合う一対の傘歯車221が固定されている。また、回転軸220には、一対の側板部202の外側位置にそれぞれピニオンギヤ222が固定されており、各ピニオンギア222は、鉛直配置されたラックギア223に噛み合っている。これにより、ベース203つまり可動ステージ105が下降すると、この下降に連動してピニオンギヤ222および回転軸220が回転し、それぞれ傘歯車221,216を介して一対のローラ213が相互近接側を上向きに移動させるように同速度で回転する。逆に、可動ステージ105が上昇すると、これに連動して一対のローラ213が相互近接側を下向きに移動させるように同速度で回転する。
【0038】
さらに、ベース203には、図2に示すように、可動ステージ105を上昇方向に付勢するスプリング225が取り付けられている。なお、処理機本体2の制御部36は、図示略の位置センサの検出結果に基づいて可動ステージ105の昇降位置を把握する。
【0039】
紙幣処理機1は、さらに、上記した収納カセット3の袋体42を窄めた状態で止める図7に示すクリップ部材115を有している。このクリップ部材115は、袋とじ用の合成樹脂製のもので、ヒンジ部116で連結された一対の挟持部117,118を有しており、これら挟持部117,118の先端側には互いに係合可能な係合構造部119が設けられている。この係合構造部119は、爪部120と、爪部120を係止する係止穴121とを有しており、樹脂の可撓性によって互いに係合し、また樹脂の可撓性によって互いの係合が解除される。
【0040】
以上の紙幣処理機1においては、処理機本体2の前面の扉体40を開いた状態で、カセットシャッタ64が閉状態とされた空の収納カセット3を処理機本体2内の所定の装填位置に装填する。つまり、収納カセット3の枠体43をガイドレール50上を摺動させて当接板部90に当接するまで移動させる。すると、図4(b)に示すように、収納カセット3の枠体43内に処理機本体2のカセットロック部材96が入り込み、シャッタカセット64にロック爪部98の傾斜面98aで乗り上げることでスプリング99の付勢力に抗して上側に回動する。それとともに、枠体43の貫通穴88にロック解除片部91が進入してスライダ82を押圧してスプリング85の付勢力に抗してシャッタロック部材75側に移動させる。すると、作動アーム80を介してシャッタロック部材75がロック爪部77を下方に移動させるように回動し、その結果、カセットシャッタ64のロック片部72からシャッタロック部材75が離間してカセットシャッタ64のロックが解除される。
【0041】
このようにロックが解除されたカセットシャッタ64を、図4(a)に示すように、処理機本体2の前面側に引き出すと、その初期においてカセットロック部材96からカセットシャッタ64が離れ、その結果、カセットロック部材96がスプリング99の付勢力でロック爪部98を下方に移動させるように回動して、収納カセット3を処理機本体2の所定の装填位置にロックすることになる。なお、収納カセット3が装填位置に装填された状態で、閉状態のカセットシャッタ64をシャッタロック部材75の傾斜面98aに当接させるとともにスプリング99の付勢力および傾斜面98aの傾斜角度を適宜設定することによって、ロック解除片部91でカセットシャッタ64のシャッタロック部材75によるロックが解除されると同時に、カセットロック部材96が傾斜面98aでカセットシャッタ64を開方向にスライドさせながら下側に回動して収納カセット3を処理機本体2にロックするようにしても良い。
【0042】
引き出されたカセットシャッタ64は、スライド体66が導入口61から退避する位置に位置すると揺動体68が全体として枠体43よりも外側に位置し、回動軸67を介して回動可能となって下方に延出する姿勢に折り畳まれる。
【0043】
上記した装填時に、変形容易な袋体42は、図6に示すように、上部の待機位置に位置する可動ステージ105の一対のローラ213間に挿入されることになり、これにより、袋体42は中間部が一対のローラ213で窄められた状態となる。このとき、袋体42の窄められた窄部123よりも上側が紙幣Sを収納する図2に示す収納空間122となり、袋体42の窄められた窄部123が収納空間122の底部となる。
【0044】
そして、例えば、紙幣Sの入金収納処理を行う場合には、操作者が装填部12のビルプレス17を持ち上げてこれと台部15との間に紙幣Sを、その長手方向を機体前後方向に沿わせた状態で装填する。このとき、金種混合の装填および単一金種の装填のいずれも可能である。そして、操作者が操作部37に入金開始の操作を入力すると、制御部36が分離繰出部20と搬送部25とを駆動する。すると、装填部12に装填された紙幣Sが最下のものから一枚ずつ機内に繰り出され、搬送部25で搬送される。その途中で識別部28により受け入れ可能と識別された紙幣Sが搬送路27から一時貯留部30内に放出され、それ以外の紙幣Sがリジェクト部13に放出される。なお、リジェクト部13に放出された紙幣Sはそのまま機外へ取り出し可能となる。
【0045】
上記のようにして、装填部12に装填された紙幣Sが、リジェクト部13および一時貯留部30のいずれかに放出されることですべてなくなると、制御部36は、分離繰出部20および搬送部25を停止させて、識別部28の識別結果に基づいて一時貯留部30に一時貯留された紙幣Sの識別結果を表示部38に表示させる。この表示を見て操作者がキャンセル操作を操作部37に入力すると、制御部36は返却扉ロック部39で返却扉31のロックを解除して開放可能とし、操作者が返却扉31を開いて直接一時貯留部30の紙幣Sを取り出すことになる。
【0046】
他方、表示を見て操作者が承認操作を操作部37に入力すると、制御部36は一時貯留部シャッタ34を開作動させることになり、一時貯留空間33から、紙幣Sが下方に落下して、収納カセット3の導入口61を通って閉状態の一対のフラッパ101,102上に載置される。続いて、制御部36は、押込部35を下降させて、フラッパ101,102上の紙幣Sをフラッパ101,102を下方に回動させながら押し込む。すると、紙幣Sは、フラッパ101,102を通過して、可動ステージ105で窄められた窄部123で底部が形成される袋体42の収納空間122の底部または既に収納された紙幣S上に収納される。フラッパ101,102は紙幣Sが離れることでネジリバネの付勢力で水平状態に戻る。このとき、袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123より下側に紙幣Sが進入することはない。
【0047】
また、このとき、押込部35の下降による紙幣Sを介しての押圧で、可動ステージ105とその一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とが、押し込む紙幣量に応じて下降することになる。その際に、可動ステージ105の下降に連動してピニオンギヤ222が回転することになり、一対のローラ213が袋体42と接触する相互近接側を上向きに移動させるように回転する。これにより、下降する一対のローラ213と、これらに対し相対的に上昇する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0048】
その後、押込部35が閉状態のフラッパ101,102間を通過しながら上昇し、この押込部35の上昇によってスプリング225の付勢力で、可動ステージ105とその一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とが上昇することになり、収納空間122内の紙幣Sは可動ステージ105の一対のローラ213上にある袋体42の一部と一対のフラッパ101,102とで挟持されることになる。この上昇時にも、可動ステージ105の上昇に連動して一対のローラ213が袋体42と接触する相互近接側を下向きに移動させるように回転する。これにより、上昇する一対のローラ213と、これらに対し相対的に下降する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0049】
なお、以上の紙幣処理機1で紙幣Sの計数処理を行う場合は、上記と同様にして、装填部12に装填された紙幣Sがすべてリジェクト部13および一時貯留部30に搬送されたら、一時貯留部30から収納カセット3に紙幣Sを収納せずに、返却扉31を開いて一時貯留部30の紙幣Sを操作者に返却することになる。
【0050】
上記のようにして紙幣Sを収納した収納カセット3を処理機本体2から取り出す場合には、まず、操作者は、扉体40を開き、図4(b)に示すように、揺動体68を水平に持ち上げて枠体43に押し込むことでカセットシャッタ64を閉じる。すると、カセットシャッタ64がカセットロック部材96に当接してこれを揺動させ、収納カセット3の処理機本体2とのロックを解除する。次に、図7に示すクリップ部材115を用いて、その一対の挟持部117,118で袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123に近いそれよりも下側部分を図8に示すように挟持し、挟持部117,118の係合構造部119を係合させる。そして、収納カセット3を扉体40側に引き出す。すると、その初期に、図4(c)に示すように枠体43からロック解除片部91が退避することになり、スライダ82がスプリング85の付勢力でシャッタロック部材75から離間する方向に移動し、作動アーム80を介してシャッタロック部材75がカセットシャッタ64を閉状態でロックすることになる。
【0051】
収納カセット3を扉体40側に引き出すと、袋体42も可動ステージ105の一対のローラ213間から引き出されることになるが、クリップ部材115の挟持部117,118による挟持で窄められた部分が維持されるため、袋体42に収納された紙幣Sが下方に落下するのを規制し、良好な収納状態を維持することになる。このようにして、導入口61がカセットシャッタ64で閉塞されることで紙幣Sの取り出しを不可とした状態で収納カセット3が運搬される。
【0052】
そして、収納カセット3から紙幣Sを取り出す際には、図3(b)に示すように、別途のキー48で枠体ロック部47による上部構成体46と下部構成体44とのロックを解除して、上部構成体46をヒンジ部材45を介して下部構成体44に対し揺動させて開く。すると、カセットシャッタ64およびフラッパ101,102を含む上部構成体46が下部構成体44から離れるため、袋体42の紙幣Sを容易に取り出すことができる。
【0053】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理機1によれば、布製でいずれの方向にも変形容易な袋体42と、袋体42の開口部41に取り付けられる金属製の枠体43と、枠体43の内側の導入口61を開閉するスライド式のカセットシャッタ64とを有する収納カセット3を、その枠体43において、処理機本体2のガイドレール50に支持させるとともに、処理機本体2の可動ステージ105で袋体42の中間部を窄めた状態とする。すると、袋体42の窄められた窄部123が収納空間122の底部となって導入口61から導入された紙幣Sをその上側に収納する。そして、例えば収納量が多くなると押込部35が紙幣Sを介して可動ステージ105を下降させることで袋体42の窄部123つまり収納空間122の底部を下げることができ、収納空間122を拡大することができる。このように、紙幣Sの収納量に応じて収納空間122の大きさを設定できるため、紙幣Sの収納状態が乱雑になることなく良好に収納することができる。そして、空の状態の収納カセット3は、袋体42が布製でいずれの方向にも変形容易であるため、変形自由度が高くて取扱性に優れることになり、また、一層小さく折り畳むことができることになって保管効率も優れることになる。
【0054】
しかも、押込部35が、可動ステージ105と、その一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とを紙幣Sを介して下降させる際に、一対のローラ213は、可動ステージ105の下降に連動して、袋体42と接触する側が袋体42の相対移動方向である上向きに移動するように回転させられることになって、袋体42との摩擦力が軽減されることになり、その結果、円滑に下降することになる。また、押込部35が上昇することで、可動ステージ105と、その一対のローラ213で窄められて形成される収納空間122の底部とをスプリング225の付勢力で上昇させる際にも、一対のローラ213は、可動ステージ105の上昇に連動して、袋体42と接触する相互近接側が袋体42の相対移動方向である下向きに移動するように回転させられることになって袋体42との摩擦力が軽減されることになり、その結果、円滑に上昇することになる。
【0055】
加えて、収納カセット3を処理機本体2の所定の装填位置に装填すると、処理機本体2に設けられたロック解除片部91がシャッタロック部材75のロックを解除してカセットシャッタ64を開放可能とし、カセットシャッタ64を開放することで、カセットロック部材96が収納カセット3を装填位置にロックする。よって、カセットシャッタ64を開いて処理機本体2からの紙幣Sの導入が可能になるとともに処理機本体2からの収納カセット3の取り外しが規制される。この状態からカセットシャッタ64を閉じると、カセットシャッタ64がカセットロック部材96の傾斜面98aを押圧しこの傾斜面98aがカセットロック部材96による収納カセット3の処理機本体2へのロックを解除することになって、収納カセット3が取り外し可能となる。したがって、収納カセット3の運搬時にはカセットシャッタ64は閉じられていることになり、保安上良好となる。
【0056】
さらに、収納カセット3の処理機本体2からの取り外し前に、袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123よりも下側部分を窄めた状態でクリップ部材115で止めることで、収納空間122の拡大を規制した上で、収納カセット3を処理機本体2から取り外すことができる。したがって、取り外した収納カセット3内で紙幣Sの収納状態が乱雑になるのを防止できる。
【0057】
加えて、枠体43の上部構成体46および下部構成体44の枠体ロック部47による閉状態でのロックを解除すれば、カセットシャッタ64が設けられた上部構成体46が下部構成体44に対し開放されて袋体42の紙幣Sを取り出し可能となる。カセットシャッタ64を開いた導入口61よりも広い開口で紙幣Sを取り出し可能となり、紙幣Sの取り出しが容易となる。また、袋体42が汚損、破損した場合でも、袋体42の交換が容易となる。
【0058】
次に、本発明の第2実施形態の紙幣処理機を図9を主に参照して以下に説明する。
第2実施形態の紙幣処理機では、可動ステージ105の構成が第1実施形態と相違している。つまり、第2実施形態の可動ステージ105には、両側の支持部材212に一対のローラとして第1実施形態のローラ213に換えて回転自在のフリーローラ230が設けられており、第1実施形態の傘歯車216,221,回転軸220、ピニオンギヤ222およびラックギヤ223は設けられていない。
【0059】
このような第2実施形態においても、紙幣収納時に、押込部35が下降して、フラッパ101,102上の紙幣Sをフラッパ101,102を下方に回動させながら押し込むと、紙幣Sは、フラッパ101,102を通過して、可動ステージ105で窄められた窄部123で底部が形成される袋体42の収納空間122に収納されることになるが、このとき、押込部35の下降による紙幣Sを介しての押圧で可動ステージ105と、その一対のローラ230で窄められて形成される収納空間122の底部とが紙幣量に応じた分だけ下降することになり、その際に相対的に上昇する袋体42との摩擦で摩擦力を軽減するように一対の回転自在のフリーローラ230が袋体42と接触する相互近接側を上向きに移動させるように回転する。これにより、一対のフリーローラ230と、これに対し相対的に上昇する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0060】
その後、押込部35が閉状態のフラッパ101,102間を通過しながら上昇すると、スプリング225の付勢力で可動ステージ105も上昇することになるが、この上昇時にも、相対的に下降する袋体42との摩擦で摩擦力を軽減するように一対の回転自在のフリーローラ230が袋体42と接触する相互近接側を下向きに移動させるように回転する。これにより、一対のフリーローラ230と、これに対し相対的に下降する袋体42との摩擦力が軽減される。
【0061】
以上に述べた第2実施形態の紙幣処理機1によれば、押込部35が、可動ステージ105と、その一対のフリーローラ230で窄められて形成される収納空間122の底部とを紙幣Sを介して下降させる際に、一対のフリーローラ230は、袋体42との摩擦によって、袋体42と接触する側が袋体42の相対移動方向である上向きに回転させられることになって袋体42との摩擦力が軽減されることになり、円滑に下降することになる。また、押込部35が上昇することで、可動ステージ105と、その一対のローラ230で窄められて形成される収納空間122の底部とをスプリング225の付勢力で上昇させる際にも、一対のフリーローラ230は、袋体42との摩擦によって、袋体42と接触する相互近接側が袋体42の相対移動方向である下向きに移動するように回転させられることになって袋体42との摩擦力が軽減されることになり、円滑に上昇することになる。
【0062】
しかも、一対のフリーローラ230は、実際の袋体42の相対移動による摩擦力に応じてこれを最小限にするように回転することになるため、袋体42のセット状態によらず、摩擦力を最小限にできる。しかも、可動ステージ105の昇降に連動してローラを回転させるための傘歯車、回転軸、ピニオンギヤおよびラックギヤが不要となるため、低コスト化が図れる。
【0063】
上記第1,第2実施形態の紙幣処理機1を以下のように変更することも可能である。
【0064】
図10に示すように、収納カセット3の袋体42にキー125でロックおよびロック解除が可能なファスナ126を設け、このファスナ126を開けることで紙幣Sを取り出すようにしても良い。
【0065】
また、収納カセット3の処理機本体2からの取り外し前に、袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123よりも下側部分を窄めた状態で保持するために、クリップ部材115にかえて、図11に示すように、袋体42を窄めた状態とする昇降可能なリング部材128を設けても良い。このリング部材128は、その内側に袋体42が挿入されることになり、内周面から突出する複数の先細の突起部129で袋体42に引っ掛かることで位置を保持可能となっている。このようなリング部材128を可動ステージ105の直ぐ下側に配置して収納カセット3を処理機本体2に装填すれば、可動ステージ105が紙幣Sの収納量に応じて下降すると、リング部材128を下降させることになって、収納カセット3の取り外し時に、可動ステージ105で窄められた窄部123の直ぐ下側部分を窄めた状態で保持することができる。なお、このリング部材128の脱落を防止するためにリング部材128の外側において袋体42の上端部と下端部とを結ぶ紐状の脱落防止部材130が取り付けられている。
【0066】
さらに、クリップ部材115にかえて、図12に示すように、袋体42を窄めた状態とする昇降可能な紐状部材131を設けても良い。この紐状部材131は、一本の両端側がボタン132を有するロック部材133に挿入されており、ロック部材133はボタン132が押圧操作されない状態で紐状部材131にロックされ、ボタン132が押圧操作されると紐状部材131に対しスライド可能になる。紐状部材131には、その中間部とロック部材133とで形成された管状部134の内側に袋体42が挿入されることになり、ロック部材133で管状部134を小さくすることで袋体42を窄めた状態とする。この紐状部材131を用いる場合には、収納カセット3の処理機本体2への装填時には紐状部材131を袋体42の下端部に位置させておき、収納カセット3を処理機本体2から取り出す際に、操作者が袋体42の可動ステージ105で窄められた窄部123よりも下側部分を、管状部134を小さくすることで窄めた状態とする。なお、紐状部材131の脱落を防止するために紐状部材131の外側において袋体42の上端部と下端部とを結ぶ紐状の脱落防止部材135が取り付けられている。
【0067】
加えて、図示は略すが可動ステージ105の下面側に袋体42を窄めた状態でテープで止めるテープ止め機構を設けても良い。このテープ止め機構は袋体42の処理機本体2への挿入時にはテープを止めず、処理機本体2から引き出す際にテープ止めするものを用いることができる。例えば、袋の絞った部分を溝を通すことによってテープを巻き付け、引き抜くときにテープを切断するバッグシーラを利用することができる。あるいは、可動ステージ105の下面側に、スプリングで一対の挟持部を閉方向に付勢したクリップ部材を開状態で保持する保持機構を設け、処理機本体2へ袋体42を挿入した後に、クリップ部材を、ヒンジ側を引き抜き方向にして保持機構に保持することで袋体42の引き抜き時に袋体42でクリップ部材を一緒に引き出し、保持機構から外すことでスプリングの付勢力で一対の挟持部で袋体42を挟持するようにしても良い。さらに、ゴムバンドを巻回することで袋体42を窄めた状態に保持するようにしても良い。このゴムバンドは空の収納カセット3を運ぶ際に枠体43を袋体42で刳るんだ状態でその周囲に巻回されると衝撃の緩衝材として機能する。
【0068】
さらに、袋体42内に紐を底部を通るように数カ所通しておき、底部を枠体43に近づけるように締め上げる構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態の紙幣処理機を概略的に示す側断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の要部を示す側断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の収納カセットの枠体を示すもので、(a)は閉状態の側面図、(b)は開状態の側面図、(c)は下部構成体の平面図、(d)は下部構成体を断面とした側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の要部を示すもので、(a)は収納カセットを装填位置に装填しカセットシャッタを開いた状態を示す側断面図、(b)は収納カセットを装填位置に装填しカセットシャッタを閉じた状態を示す側断面図、(c)は収納カセットを装填位置から離間させた状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の可動ステージを示す収納カセットの袋体を挿入する前の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の可動ステージを示す収納カセットの袋体を挿入した後の状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の一部を構成するクリップ部材を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態の紙幣処理機の要部を示す側断面図であってクリップ部材を取り付けた状態を示すものである。
【図9】本発明の第2実施形態の紙幣処理機の可動ステージを示す斜視図である。
【図10】本発明の第1,第2実施形態の紙幣処理機の収納カセットの別の例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1,第2実施形態の紙幣処理機の収納カセットのさらに別の例を示す斜視図である。
【図12】本発明の第1,第2実施形態の紙幣処理機の収納カセットのさらに別の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
S 紙幣
1 紙幣処理機
2 処理機本体
3 収納カセット
41 開口部
42 袋体
43 枠体
50 ガイドレール(支持手段)
61 導入口
64 カセットシャッタ(シャッタ)
105 可動ステージ(エレベータ手段)
213 ローラ
230 フリーローラ(ローラ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、該袋体の開口部に取り付けられる枠体と、該枠体の内側の導入口を開閉するスライド式のシャッタとを有し、該シャッタが開放された状態で前記枠体の導入口を介して前記袋体内に紙幣を収納可能な収納カセットと、
装填された前記収納カセットの前記枠体を支持する支持手段と、該支持手段で支持した前記収納カセットの前記袋体の中間部を窄めた状態とする昇降可能なエレベータ手段とを有する処理機本体とを備えた紙幣処理機であって、
前記エレベータ手段は、前記袋体の中間部が相互間に挿入されることで該中間部を窄めた状態とする一対の回転可能なローラを具備することを特徴とする紙幣処理機。
【請求項2】
前記一対のローラは、前記エレベータ手段の昇降に連動して回転することを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項3】
前記一対のローラは、回転自在のフリーローラであることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項1】
布製でいずれの方向にも変形容易な袋体と、該袋体の開口部に取り付けられる枠体と、該枠体の内側の導入口を開閉するスライド式のシャッタとを有し、該シャッタが開放された状態で前記枠体の導入口を介して前記袋体内に紙幣を収納可能な収納カセットと、
装填された前記収納カセットの前記枠体を支持する支持手段と、該支持手段で支持した前記収納カセットの前記袋体の中間部を窄めた状態とする昇降可能なエレベータ手段とを有する処理機本体とを備えた紙幣処理機であって、
前記エレベータ手段は、前記袋体の中間部が相互間に挿入されることで該中間部を窄めた状態とする一対の回転可能なローラを具備することを特徴とする紙幣処理機。
【請求項2】
前記一対のローラは、前記エレベータ手段の昇降に連動して回転することを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項3】
前記一対のローラは、回転自在のフリーローラであることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−171334(P2008−171334A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6007(P2007−6007)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】
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