紙幣処理装置
【課題】紙幣に対する不正行為を、より確実に防止することを可能にする紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】紙幣処理装置1は、紙幣が挿入される紙幣挿入口と、記紙幣挿入口から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能な紙幣搬送機構8と、紙幣搬送機構8により搬送された紙幣を読取る紙幣読取手段20と、紙幣読取手段20により読取られた紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段と、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていることを識別する付着物識別手段と、紙幣識別手段による識別結果、且つ前記付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為防止を制御する制御手段とを有する。そして、制御手段は、紙幣読取手段20により読取りが終了した紙幣を紙幣搬送機構8により下流側へ搬送中に、付着物識別手段により付着物の識別を行うことを特徴とする。
【解決手段】紙幣処理装置1は、紙幣が挿入される紙幣挿入口と、記紙幣挿入口から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能な紙幣搬送機構8と、紙幣搬送機構8により搬送された紙幣を読取る紙幣読取手段20と、紙幣読取手段20により読取られた紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段と、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていることを識別する付着物識別手段と、紙幣識別手段による識別結果、且つ前記付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為防止を制御する制御手段とを有する。そして、制御手段は、紙幣読取手段20により読取りが終了した紙幣を紙幣搬送機構8により下流側へ搬送中に、付着物識別手段により付着物の識別を行うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣挿入口から挿入される紙幣を搬送すると共に、その有効性を識別する紙幣識別部を備えた紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に紙幣処理装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣の有効性を識別し、有効と判定された紙幣価値に応じて、各種の商品やサービスを提供するサービス機器、例えば遊技場に設置されている遊技媒体貸出機、或いは、公共の場に設置されている自動販売機や券売機等に組み込まれている。
【0003】
通常、紙幣処理装置は、紙幣挿入口に挿入された紙幣を搬送する紙幣搬送機構、搬送される紙幣の有効性を判定(真贋判定とも称する)する紙幣識別部等の動作機器、及びこれらの動作機器を駆動、制御する制御手段を備えている。すなわち、紙幣挿入口から紙幣が挿入されると、紙幣の挿入を検知センサが検知し、前記紙幣搬送機構(駆動モータ、搬送ローラ等)を駆動して紙幣を搬送すると共に、搬送状態にある紙幣を、紙幣識別部を構成する識別センサで読み取り、その出力を予め格納されている正規データと比較して有効性を判定する。そして、この紙幣識別部で有効と判定された紙幣は、そのまま下流側に設置されている紙幣収容部等に向けて搬送され、有効と判定されなかった紙幣は、そのまま紙幣挿入口へ戻されるようになっている。
【0004】
上記した紙幣処理装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、挿入された紙幣が紙幣識別部で真正と判定されると、一時保留(エスクロ)するようにしている。このようなエスクロは、例えば、紙幣を挿入した後に何らかの理由で返金指令が発生した場合に、紙幣搬送機構を逆転することで、挿入された紙幣を直ちに紙幣挿入口から返却できるようにするものである。そして、エスクロ状態において、スタック指令等の処理信号が発生することで、エスクロ状態にある紙幣(エスクロ紙幣)は、そのまま下流側に搬送されるようになっている。
【0005】
ところで、上記したような紙幣処理装置では、停止状態にあるエスクロ紙幣に対して不正な行為が行われ易いことから、特許文献1に開示されているように、紙幣挿入口にシャッタを設けておき、シャッタモータを作動して紙幣挿入口をシャッタによって強制的に閉じるようにしている。すなわち、紙幣挿入後に、シャッタによって紙幣挿入口を閉じておくことで、紙幣に紐や糸等の付着物を接続しても、エスクロ紙幣を引き出す等の不正な行為が行えないようにしている。
【0006】
すなわち、上記した特許文献1に開示されている紙幣処理装置では、紙幣を紙幣挿入口に挿入する際、それを検知して閉塞状態にあるシャッタを開放し、紙幣を紙幣識別部に搬送して、その有効性を判定するようにしている。そして、紙幣識別部で真正と判定された紙幣は、更に下流側にあるエスクロ位置まで搬送され、エスクロ状態となったときに開放状態にあるシャッタを閉塞状態に駆動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3000328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、不正行為防止のために、紙幣挿入口をシャッタによって閉じるのは、紙幣が有効と判定された後であることから、紙幣の有効性の判定処理が行われてからエスクロ位置に搬送されるまでの間の不正行為を確実に防止することはできない。すなわち、上記した紙幣識別装置では、(紙幣挿入)→(シャッタの開放処理)→(紙幣の有効性の判定処理)→(有効である場合にエスクロ位置への紙幣の搬送処理)→(シャッタの閉塞処理)を行うため、不正行為防止のために、シャッタによって紙幣挿入口を強制的に閉塞するには、紙幣の有効性判定処理と、紙幣をエスクロ位置まで搬送する処理を行う必要があり、この間の不正行為(特に、紙幣に付着物を付着して行われる不正行為)を確実に防止できない。
【0009】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、紙幣に対する不正行為を、より確実に防止することを可能にする紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された紙幣処理装置は、紙幣が挿入される紙幣挿入口と、前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能な紙幣搬送機構と、前記紙幣搬送機構により搬送された紙幣を読取る紙幣読取手段と、前記紙幣読取手段により読取られた紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段と、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていることを識別する付着物識別手段と、前記紙幣識別手段による識別結果、且つ前記付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為防止処理を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記紙幣読取手段により読取りが終了した紙幣を前記紙幣搬送機構により下流側へ搬送中に、前記付着物識別手段により付着物の識別を行うことを特徴とする。
【0011】
上記した構成の紙幣処理装置によれば、紙幣挿入口に紙幣が挿入されると、紙幣搬送機構を駆動して紙幣を内部に送り込む。内部に送り込まれる紙幣は、搬送状態で、その下流側に設置された紙幣読取手段によって紙幣情報の読取が成される。読取手段によって読取処理された紙幣は、前記紙幣搬送機構により下流側へ搬送処理が行われ、この処理中に、付着物識別手段によって付着物の識別処理が行われる。さらに、その読取った紙幣情報に基づいて紙幣識別手段により紙幣の真贋が識別される。また、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていると、付着物識別手段がこれを検知するようになっており、前記紙幣識別手段による識別結果と、付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為の防止が制御される。
【0012】
また、請求項2に係る発明においては、前記制御手段は、前記付着物識別手段による識別処理後、前記紙幣識別手段により紙幣の真贋の識別を行うことを特徴とする。
【0013】
このような構成では、紙幣の真贋判定処理に先立って付着物が接続されているか否かの検出が行われる。前記付着物識別手段によって糸や紐等の付着物が接続された紙幣が検知されると、紙幣判定NG処理が実行される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紙幣処理装置によれば、紙幣挿入口に挿入された後、紙幣に対する不正行為を、より確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る紙幣処理装置の一実施形態の全体構成を示す斜視図。
【図2】上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図。
【図4】下部フレームの裏面図。
【図5】紙幣検知センサの構成を示す斜視図。
【図6】シャッタ機構の構成を示す斜視図。
【図7】図6に示すシャッタ機構を裏側から見た斜視図。
【図8】シャッタ機構の動作を示す側面図。
【図9】シャッタ機構の回動片が回動されて、紙幣挿入口が閉塞されている状態を示す図。
【図10】シャッタ機構の回動片の作用を模式的に示す図。
【図11】図1から図4に示した紙幣処理装置の構成を模式的に示した図。
【図12】紙幣処理装置の制御系を示すブロック図。
【図13】基準データ記憶部内に格納された基準データテーブルの説明図。
【図14】(a)及び(b)は、紙幣の表裏面を示す模式的説明図。
【図15】紙幣判定処理の手順を示すメインフローチャート。
【図16】紙幣に赤外光及び赤色光を照射して透過光及び反射光を受光するタイミングを示す紙幣スキャンタイミングチャート。
【図17】金種及び紙幣搬送方向を判定する金種・方向判定処理を示すフローチャート。
【図18】真贋判定処理の手順を示すフローチャート。
【図19】紙幣を搬送処理する駆動モータ及びソレノイドの駆動制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
図1から図4は、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図、そして、図4は、下部フレームの裏面図である。
【0018】
本実施形態の紙幣処理装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機間に設置される遊技媒体貸出装置(図示せず)に組み込み可能に構成されている。この場合、遊技媒体貸出装置には、紙幣処理装置1の上側又は下側に、他の装置(例えば、紙幣収納ユニット、硬貨識別装置、記録媒体処理装置、電源装置など)を設置しておいても良く、紙幣処理装置1は、これら他の装置と一体化されていたり、別個に構成されていても良い。そして、このような紙幣処理装置1に紙幣が挿入され、挿入された紙幣の有効性が判定されると、その紙幣価値に応じた遊技媒体の貸出処理、或いは、プリペイドカードのような記録媒体への書き込み処理等が行なわれる。
【0019】
紙幣処理装置1は、略直方体状に形成されたフレーム2を備えており、このフレーム2が図示されていない遊技媒体貸出装置の係止部に装着される。フレーム2は、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bを有しており、これらのフレーム2A,2Bは、図2に示すように、一端部を回動中心として開閉されるように構成されている。この場合、上部フレーム2Aの他端部側には、下部フレーム2Bに係止可能なロックシャフト3が配設されており、このロックシャフト3の操作部3aを、付勢バネ3bの付勢力に抗して図1の矢印方向に回動操作することで、ロックシャフト3は回動支点Pを中心に回動し、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bのロック状態(両者が閉じた状態;重合状態)が解除される。
【0020】
前記上部フレーム2A及び下部フレーム2Bは、重合状態になった際、両者の対向部分に紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路)5が形成されるよう構成されている。そして、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bには、この紙幣搬送路5に一致するようにして、紙幣挿入部6A,6Bが形成されている。これら紙幣挿入部6A,6Bは、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bが閉じられた際、スリット状の紙幣挿入口6を形成する。図1に示すように、紙幣Mは、紙幣の短い辺側から矢印A方向に沿って内部に挿入される。
【0021】
前記フレーム2内には、紙幣搬送機構8と、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知する紙幣検知センサ18と、紙幣検知センサ18の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段20と、紙幣挿入口6と紙幣検知センサ18との間の紙幣搬送路5に設置され、紙幣挿入口6を閉塞するように駆動されるシャッタ機構50と、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50の駆動を制御する制御手段(制御回路基板100)とが設けられている。
以下、上記した各構成部材について、詳細に説明する。
【0022】
前記紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口6から挿入された紙幣を挿入方向Aに沿って搬送可能であると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口6に向けて差し戻すように搬送可能とする機構である。紙幣搬送機構8は、下部フレーム2B側に設置された駆動源である駆動モータ10と、この駆動モータ10によって回転駆動され、紙幣搬送路5に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対12,13,14を備えている。
【0023】
搬送ローラ対12は、下部フレーム2B側に配設される駆動ローラ12Aと、上部フレーム2A側に配設されて駆動ローラ12Aに当接されるピンチローラ12Bとを備えており、これら駆動ローラ12Aとピンチローラ12Bは、紙幣搬送方向と直交する方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。駆動ローラ12A及びピンチローラ12Bは、その一部が紙幣搬送路5に露出した状態となっている。
【0024】
前記2箇所に設置される駆動ローラ12Aは、下部フレーム2Bに回転可能に支持された駆動軸12aに固定されており、前記2つのピンチローラ12Bは、上部フレーム2Aに支持された支軸12bに回転可能に支持されている。この場合、上部フレーム2Aには、支軸12bを駆動軸12a側に付勢する付勢部材12cが設けられており、ピンチローラ12Bを駆動ローラ12A側に所定の圧力で当接させている。
【0025】
なお、上記した搬送ローラ対13,14も、ローラ対12と同様、それぞれ駆動軸13a,14aに固定される2つの駆動ローラ13A,14Aと、支軸13b,14bに回転可能に支持される2つのピンチローラ13B,14Bによって構成され、それぞれ付勢部材13c、14cによって、各ピンチローラ13B,14Bは、各駆動ローラ13A,14Aに所定の圧力で当接されている。
【0026】
前記搬送ローラ対12,13,14は、駆動モータ10に連結される駆動力伝達機構15によって同期駆動される。この駆動力伝達機構15は、駆動モータ10の出力軸に固定される出力ギヤ10a、この出力ギヤ10aに順次噛合され、前記駆動軸12a,13a,14aの端部に装着される入力ギヤ12G,13G,14G、及びこれらのギヤ間に設置されるアイドルギヤ16を備えたギヤトレインによって構成される。
【0027】
上記した構成により、駆動モータ10が正転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を挿入方向Aに向けて搬送するように駆動され、駆動モータ10が逆転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を紙幣挿入口側に差し戻すように逆転駆動される。
【0028】
前記紙幣検知センサ18は、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知した際に、検知信号を発生するものであり、本実施形態では、後述するシャッタ機構を構成する回動片と、紙幣を読取る紙幣読取手段20との間に設置されている。前記紙幣検知センサ18は、例えば、光学式のセンサ、より詳しくは、回帰反射型フォトセンサによって構成されており、図5に示すように、上部フレーム2A側に設置されるプリズム18aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体18bによって構成される。具体的には、プリズム18aとセンサ本体18bは、センサ本体18bの発光部18cから照射された光が、プリズム18aを介してセンサ本体18bの受光部18dで検知される配置態様となっており、プリズム18aとセンサ本体18bとの間に位置する紙幣搬送路5に紙幣が通過して受光部18dで光が検知されなくなると検知信号を発生する。
【0029】
なお、上記した紙幣検知センサ18は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0030】
前記紙幣検知センサ18の下流側には、搬送状態にある紙幣について、その紙幣情報を読取る紙幣読取手段20が設置される。紙幣読取手段20は、上記した紙幣搬送機構8によって紙幣が搬送される際、紙幣に光を照射することで読取を行い、紙幣の有効性(真贋)を判定できるような信号を生成できる構成であれば良く、本実施形態では、紙幣の両側から光を照射し、その透過光と反射光を受光素子で検知することで紙幣の読取を行う。そして、この読取った光信号は光電変化され、後述する紙幣識別手段において、予め格納されている真券のデータと比較することで、搬送される紙幣の真贋を判定するようになっている。なお、具体的な紙幣識別手段の詳細な構成については後述する。また、本実施形態では、この読取手段20は、後述するように、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されているか否かを検知する付着物識別手段としての機能を兼ね備えている。
【0031】
前記紙幣挿入口6の下流側には、紙幣挿入口6を閉塞するシャッタ機構50が配設されている。このシャッタ機構50は、常時、紙幣挿入口6を開放した状態になっており、紙幣が挿入されて、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)に閉塞されて、不正行為等が行えないように構成される。
【0032】
具体的に、シャッタ機構50は、紙幣搬送路5の紙幣搬送方向と直交する方向に所定間隔おいて出没するように回動駆動される回動片52と、この回動片52を回動駆動する駆動源であるソレノイド(プル型)54とを有している。この場合、回動片52は、幅方向に2箇所設置されており、紙幣搬送路5を形成する下部フレーム2Bの搬送面5aには、各回動片52が出没できるように紙幣搬送方向に延出する長孔5cが形成されている。
【0033】
前記回動片52は、図6及び図7に示すように、下部フレーム2Bに回転可能に支持されたシャフト55に固定されており、常時(初期状態)、搬送面5aの内部に位置して搬送面5aから突出しないように設定されている。下部フレーム2Bには、前記ソレノイド54が設置されており、通電することで吸引駆動される駆動軸54aの端部に設けられた係合ピン54bには、揺動可能な揺動部材57の係合部57aが係合されている。
【0034】
この揺動部材57は、下部フレーム2Bに対して支点57bを介して揺動可能に軸支されており、その支点57bからシャフト55に向けて延出する揺動アーム57cを備えている。この揺動アーム57cの先端部には、図8に示すように、シャフト55の端部に固定されたギヤ55Gと噛合するセクターギヤ57Gが形成されている。これにより、ソレノイド54が通電(ソレノイドON)されて駆動軸54aがソレノイド本体に吸引駆動されると、図8の矢印に示すように、揺動部材57は、支点57bを中心に揺動され、揺動アーム57cの先端部に形成されたセクターギヤ57G及びシャフト55の端部に固定されたギヤ55Gを介して、回動片52は、搬送面5aに形成された長孔5cから突出するように回動駆動される(図9参照)。
【0035】
これにより、紙幣挿入口6が閉塞された状態となり、紙幣に糸や紐などの異物を付着して引き出すといった不正行為を防止することが可能となる。なお、上記した回動片52、及びこれを駆動するソレノイド54は、図10に示すように、回動片52を紙幣挿入口6側に向けて起立するように回動駆動し、かつ回動片52が回動して搬送面5aから突出した際、回動片52が長孔5cの端面5dに当て付くように配置しておくことが好ましい。このような構成によれば、回動片52が回動して紙幣挿入口6を閉塞した状態では、紙幣を強制的に引き抜こうとしても、回動片52が端面5dに当て付いて大きな抵抗部材となることから、確実に紙幣の引抜き行為を防止することができる。
【0036】
また、上記したような回動片52は、紙幣搬送路5の幅方向に所定間隔おいて2箇所配設したことで、紙幣搬送経路上5に露出するシャッタ機構のための凹凸部分を極力少なくすることができ、紙幣搬送中にジャム等が生じることが防止される。
【0037】
前記紙幣読取手段20の下流側には、紙幣の通過を検知する紙幣通過検知センサ60が設けられている。この紙幣通過検知センサ60は、有効と判定されたエスクロ紙幣が、更に下流側に搬送されて、紙幣の後端を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号の発生に基づいて、上記したソレノイド54の通電が解除され(ソレノイドOFF)、駆動軸54aに設けられた付勢バネの付勢力によって駆動軸54aは突出方向に移動し、シャッタ機構を構成する回動片52は、紙幣搬送路を開放状態とするように回動駆動される。
【0038】
前記紙幣通過検知センサ60は、上述した紙幣検知センサ18と同様、光学式のセンサ(回帰反射型フォトセンサ)によって構成されており、上部フレーム2A側に設置されるプリズム60aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体60bによって構成される。もちろん、上記した紙幣通過検知センサ60は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0039】
なお、紙幣通過検知センサ60は、シャッタ機構50を開放するための信号を発生するものであることから、シャッタ機構50の開放のタイミングが別の手段、例えば、エスクロ紙幣を搬送してから所定時間後にシャッタ機構を開放する等、時間によって制御できれば、設置しない構成であっても良い。
【0040】
前記前記紙幣挿入口6の近傍には、紙幣が挿入された状態にあることを視認可能に報知する報知素子が設けられている。このような報知素子は、例えば、点滅するLED70によって構成することが可能であり、利用者が紙幣挿入口6に紙幣を挿入することで点灯し、紙幣の処理状態であることを利用者に知らせる。このため、利用者が誤って次の紙幣を差し込むことを防止することが可能となる。
【0041】
次に、上述した紙幣読取手段20で読取られた紙幣情報を基に、紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段において実行される紙幣の真贋判定方法について具体的に説明する。
【0042】
本実施形態に係る紙幣の真贋判定方法は、真券紙幣表面の印刷領域に、発光手段から所定波長の光を照射し、当該真券紙幣を透過した光の透過光データを基準データとして予め記憶しておき、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段から前記所定波長の光を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中、予め特定領域を定め、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記特定領域における前記光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を比較する第2の比較ステップと、を有し、これら第1、第2の比較ステップにおける比較結果に基いて、紙幣の真贋判定を行うようにしている。
【0043】
すなわち、紙幣表面の印刷領域中、例えば、可視光下と赤外光下とで得られる画像がそれぞれ異なるような領域を、予め特定領域として定めておき、この特定領域における赤外光の透過光データに他の領域から得られた透過光データよりも重み付けを施して、これら重み付けられたデータ同士を比較することによって、紙幣表面の全印刷領域における透過光データ同士の比較よりも、真贋判定の精度をより高くしている。
【0044】
このように、真券紙幣には、可視光下と赤外光下とで得られる画像がそれぞれ異なるような領域があり、例えば紙幣に設けられた透かし領域では、異なる波長の光でその領域の画像を見た場合(例えば、赤色光でその領域の画像を見た場合と赤外光下で見た場合)は画像が大きく異なって見えることに着目し、かかる領域を特定領域として、当該特定領域における赤外光による透過光データを取得し、この取得した透過光データと、予め取得していた真券の同じ特定領域における透過光データとをそれぞれ重み付けし、重み付けしたデータ同士で比較して、判定対象となる紙幣が真券であるか偽札であるかを、より精度高く真贋判定する。このとき、金種に応じて特定領域を定め、この特定領域における透過光データに所定の重み付けを設定することで、真贋判定精度のさらなる向上を図ることも可能となる。
【0045】
第1の比較ステップ、第2の比較ステップいずれにしても、基準データと取得したデータとを比較して真贋判定を行う際には、透過光データは濃淡値すなわち濃度値(輝度値)で表すことができることから、これを適宜の相関式に代入して演算した相関係数により判定を行うことができる。
【0046】
また、透過光データから例えばアナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で判定することも可能である。
【0047】
ところで、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、光の透過光データに加え、さらに、前記特定領域における光の反射光データを用いるようにしてもよい。例えば、前記した赤外光の透過光データに加え、さらに、前記各特定領域における赤外光の反射光データを用いることができる。
【0048】
すなわち、透過光データに加えて反射光データの比較も行うようにすることで、判定精度をより高めることができる。また、紙幣表面の印刷領域においては、透過光データよりも反射光データの方が比較しやすい領域が存在することも考えられ、そのような場合は、反射光データのみに重み付けした判定を行ってもよい。
【0049】
また、前記発光手段は異なる波長の光を照射可能であり、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記特定領域における異なる波長の光の透過光データ及び/又は反射光データをさらに用いるようにしてもよい。すなわち、例えば発光手段を、赤外光と赤色光とを照射可能に構成し、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記特定領域における赤外光の透過光データ及び/又は反射光データに加えて、赤色光の透過光データ及び/又は反射光データをさらに用いることができる。
【0050】
このように、赤外光と赤色光とでは波長が異なることから、波長の異なる複数の光による透過光データや反射光データを紙幣の真贋判定に用いると、真券と偽札との特定領域を通過する透過光や特定領域から反射する反射光では、透過率、反射率がそれぞれ異なるという性質を紙幣の真贋判定にさらに加味することができ、かかる方法を採用することにより、判定精度をより高めることができる。この場合も、透過光データや反射光データには重み付けを施しておくものとする。なお、それぞれ異なる波長の透過光や反射光から得られる受光データ毎に、それぞれ重み付けの度合いを異ならせることもでき、真贋判定精度をさらに向上させることも可能となる。
【0051】
また、前記特定領域としては、異なる波長の光を照射した際に得られるデータの異なる領域を含むものとしている。例えば前記した「透かし」領域などが考えられる他、潜像画像が印刷された領域やパールインキにより印刷された領域も含まれる。紙幣には、他にも異なる波長の光を照射した際に得られるデータの異なる領域があり、少なくとも二以上の領域を特定領域として設定することが真贋判定精度を高める上ではより好ましい。
【0052】
上記潜像画像は偽造防止技術の一であり、例えば我が国の現在の紙幣(日本銀行券)に施されているように、直視した場合は見えないが斜めから見ると現れるような画像である。日本銀行券では、直視した状態では何もない領域内に、お札を傾けるとNIPPONなどの文字が浮かび上がるようになっている。
【0053】
そして、このような潜像画像が印刷された領域を、近赤外線領域において所定範囲内にある波長の赤外光で透過させて撮影すると、隠れていた上記NIPPONの文字を認識することが可能であることを知見した。なお、本実施形態においては、一般的であり、かつコスト的にも安価な950nm近傍の波長の光の照射を行う光センサを用いて、所定範囲内にある波長としては950nm近傍の波長を用いたが、所定の範囲内にある波長としてはかかる波長に限定されることはなく、近赤外線領域に含まれる波長であれば、広範囲の中から適宜用いることができる。
【0054】
よって、偽造しにくい領域である潜像画像が印刷された領域において、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを判定するに際し、それぞれ上記範囲にある950nm近傍の波長の赤外光の透過光データ同士を用いて比較した場合、両者の違いがより顕著に表れることが考えられ、真贋判定に極めて有効となる。特に、透過光データに重み付けをして比較することにより、真券と偽札との違いがより明確になると期待できる。
【0055】
また、上記パールインキについても日本銀行券では偽造防止のために採用されており、お札を傾けると印刷箇所がややピンク色を帯びたパール光沢が浮かび上がるようになっている。上記パールインキによる印刷も偽造しにくいもので、パールインキにより印刷された領域について重み付けされた透過光データや反射光データを用いて判定対象紙幣と真券とを比較するとことで、真贋判定が容易かつ正確に行うことが可能となる。
【0056】
すなわち、パールインキは、天然の雲母に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートしたパール顔料を含むインキであり、屈折率の高い酸化チタンの層と、屈折率の低い雲母およびその周辺の媒体との境界における多重の反射光が干渉して独特なパール光沢を創り出すものなので、全く同様な反射光が得られるパールインキを製造することも容易でないことから、パールインキにより印刷された領域について重み付けすれば、真券と偽札との真贋判定が正確に行える。
【0057】
ところで、特定領域から取得した透過光データや反射光データには、紙幣表面の印刷領域中の他の領域から取得したデータよりも所定の重み付けをすることとしたが、所定の重み付けとして、例えば、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データに重み倍率を乗じることが考えられる。
【0058】
すなわち、赤外光の透過光データを用いて紙幣の真贋を判定する前記相関式において、取得したデータからの濃度値に重み倍率などを乗じ、演算される値の比較幅を大きくして判定精度をより向上させることもできる。
【0059】
重み倍率の値は様々に設定することができるため、データ取得後に重み倍率の値だけを変更するだけで、様々な鑑定に対応することも可能となる。
【0060】
また、前述したように、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データから生成した濃度(輝度)を示すアナログ波形で比較する場合であれば、波形を所定倍率で拡大させることが考えられる。この場合、拡大された波形同士の比較となるので、判定精度がより高まる。
【0061】
さらに、上記した特定領域から取得した透過光データや反射光データに、他の領域から取得したデータよりも所定の重み付けをする方法としては、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データのデータ量を、他の領域のデータ量よりも増加させる(あるいは特定領域における座標密度を他の領域よりもより密にする)ことも考えられる。
【0062】
相対的に言えば、特定領域以外のデータ量、あるいは座標密度を間引くこともでき、この場合、データ処理効率の向上も図ることが可能となる。また、特定領域毎に、データ密度を変えることも可能である。
【0063】
具体的に説明すると、例えば赤外光や赤色光の発光手段として、多数のLEDを線状に設けたLEDアレイなどが好適に用いられるが、かかるLEDアレイを用いて特定領域以外の領域に照射する場合は、LEDを間引いて駆動させ、特定領域では全LEDを駆動させることができる。このような手法により、省エネ効果が期待できる。
【0064】
なお、特定領域は紙幣表面領域上で座標として特定可能であることから、上述した紙幣搬送機構8による紙幣の搬送速度を制御して、特定領域においては他の領域よりも搬送速度を落とし、透過光データや反射光データの量を増加させることも可能である。
【0065】
具体的に、紙幣識別手段は、以下の構成が考えられる。
すなわち、紙幣識別手段は、上述した紙幣搬送機構8により搬送される紙幣に光を照射するとともに、照射されて前記紙幣を透過した透過光及び前記紙幣から反射した反射光を受光する紙幣読取手段を構成し、前記紙幣表面の印刷領域内に定められた特定領域を検知する光センサによって検知した受光データに重み付けを施す重み付け手段と、紙幣の真贋を判定する真贋判定部と、を備え、前記真贋判定部は、前記特定領域を含む真券紙幣表面の全印刷領域における基準受光データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した前記基準受光データと、前記光センサにより取得した判定対象となる紙幣表面の全印刷領域における受光データとを比較する第1の比較手段と、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記各特定領域における重み付けられた受光データ同士を比較する第2の比較手段とを有する。
【0066】
この場合、真贋判定部は、CPUと、記憶手段としてのROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータから構成することができる。前記ROMには、上述した真贋判定方法をこのマイクロコンピュータに実行させる判定プログラムと、基準データとなる真券紙幣における特定領域の受光データ(例えば、赤外光による透過光データ及び反射光データ、赤色光による透過光データ及び反射光データ)を含む、紙幣表面の全印刷領域における受光データと、特定領域における受光データに重み付けを施すためのプログラムとを予め記憶させておくことができる。
【0067】
そして、判定対象となる紙幣の受光データを、光センサにより取得してRAMに記憶させ、この受光データと基準データとを、第1の比較手段及び第2の比較手段で比較することにより真贋判定を行う。なお、第1の比較手段及び第2の比較手段としては、それぞれ別のハード構成とするのではなく、前記真贋判定部がその機能を共通に担うものとすることができる。
【0068】
また、発光手段としては、上述したようなLEDアレイを用いることができ、本実施形態では、赤外光を発光する第1の発光アレイと、赤色光を発光する第2の発光アレイとを配設している。
【0069】
上述した構成の紙幣識別手段を用いることにより、たとえ紙幣の全印刷面における受光データ同士の比較で類似していても、重み付けされた特定領域における受光データ同士の比較によって、精度よく真贋判定を行うことができる。なお、この場合、金種毎に重み付けを変えることもできる。
【0070】
また、受光データとして、透過光データに加えて反射光データを用いたり、さらに、紙幣に照射する光を赤外光単独とする他、赤色光を追加したりすることにより、各受光データ同士の比較において、一つでも真券と判定できるレベルを逸脱している場合は偽札と判定するようにして、判定精度を著しく向上させることができる。
【0071】
また、真券の基準データは、記憶手段に予め記憶させてもよいが、例えば、真券を、紙幣搬送機構8を通して搬送させながら受光データを取得し、これを基準データとして記憶させることもできる。したがって、真贋判定装置毎に、対応した最適化された基準データを記憶させることも可能となる。また、移動平均などの手段を用いて、基準データを更新させるようにすれば、ハードウェアの経時劣化に対応するために、随時白補正などを行わなくとも、基準データを出力変動に適応して最適化させることが可能である。
【0072】
ところで、上述した紙幣識別手段の真贋判定方法では、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中に予め特定された特定領域における前記赤外光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を判定対象となる紙幣と前記真券紙幣との間で比較する第2の比較ステップとに区分して説明したが、区分することなく同時に比較することもできる。
【0073】
例えば、重み付けするための関係式を含む比較用の相関式が予め組み込まれた真贋判定プログラムを用いて、真券紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと、反射した赤色光の反射光データにおいて、特定領域に予め重み付けしたものを基準データとして記憶装置内に格納しておく。
【0074】
一方、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データ、あるいは反射した赤色光の反射光データから、前記特定領域部分の重み付けも平行して行い、前記基準データと比較する。このとき、データは、例えば輝度値(濃度値)を表す波形を生成して、この波形で比較することもできる。
【0075】
すなわち、予め特定領域を定めた真券紙幣の印刷領域に、発光手段から所定波長の赤外光を照射し、当該真券紙幣を透過した赤外光の透過光データのうち、前記特定領域を透過した透過光データに所定の重み付けしたデータを基準データとして予め記憶しておく一方、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段から前記所定波長の赤外光を照射し、当該紙幣を透過した赤外光の透過光データのうち、前記特定領域を透過した透過光データに、前記真券と同じ重み付けをして、この重み付けされた前記特定領域における透過光データを含む全透過光データと前記基準データとを比較することにより真贋を判定する紙幣の真贋方法とする。
【0076】
上記の方法であっても、極めて高精度での真贋判定が可能となる。この方法を実現するための紙幣識別手段は、紙幣搬送機構8により搬送される紙幣に光を照射するとともに、照射されて前記紙幣を透過した透過光及び前記紙幣から反射した反射光を受光する光センサと、前記紙幣表面の印刷領域内に定められた特定領域における前記光センサにより検知した受光データに重み付けを施す重み付け手段と、上述した真贋判定方法を実行する真贋判定部とを備え、この真贋判定部は、前記特定領域を含む紙幣表面の全印刷領域における基準データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した前記全印刷領域における基準データと、前記光センサにより取得した判定対象となる紙幣表面の全印刷領域における受光データとを比較するとともに、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記各特定領域における重み付けられた受光データ同士を比較することのできる比較手段とを有することで構成することが可能である。
【0077】
上述したような紙幣の真贋方法を実行する紙幣識別手段の構成について、図11から図14を参照しながらより具体的に説明する。
【0078】
これらの図において、図11は、図1乃至図4に示した紙幣処理装置の構成を模式的に示した図、図12は、紙幣処理装置の制御系を示すブロック図、図13は基準データ記憶部内に格納された基準データテーブルの説明図、そして、図14は紙幣の表裏面を示す模式的説明図である。
【0079】
上記した紙幣読取手段20は、上部フレーム2A側に配設され、搬送される紙幣の上側に赤外光及び赤色光を照射可能とした第1発光部23を具備した発光ユニット24と、下部フレーム2B側に配設された受発光ユニット25とを有している。この受発光ユニット25は、紙幣を挟むようにして第1発光部23と対向する受光センサを具備した受光部26と、受光部26の紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、赤外光及び赤色光を照射可能とした第2発光部27とを有している。
【0080】
前記受光部26と対向配置された第1発光部23は透過用の光源として機能する。この第1発光部23は、図2に示すように、一端に取り付けたLED素子23aからの光を、内部に設けた導光体23bを通して発光する合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。このような構成の第1発光部は、受光部26(受光センサ)と平行にライン状に配設されており、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して全体的に均一に照射することが可能となる。また、このような第1発光部23及び受光部26(受光センサ)は、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されているか否かを識別する付着物識別手段としての機能を備えている。すなわち、紙幣に、例えば、糸や紐等の付着物が接続され、かつそれが紙幣挿入口側に延びていれば、受光部26においてその光量変化を検知することができ、紙幣の搬送路幅方向全体に亘って付着物の接続を検知することが可能となる。
【0081】
前記受発光ユニット25の受光部26は、紙幣搬送路5に対して交差方向に伸延し、かつ受光部26に設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。なお、前記受光センサは、受光部26の厚み方向の中央に複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にセルフォックスレンズアレイ26aを配置した所謂ラインセンサとして構成されている。このため、真贋判定対象となる紙幣に向けて照射された第1発光部23や第2発光部27からの赤外光や赤色光の反射光あるいは透過光を受光し、受光データとして、その輝度に応じた濃淡データやこの濃淡データから二次元画像を生成することが可能となっている。
【0082】
また、受発光ユニット25の第2発光部27は反射用の光源として機能する。この第2発光部27は、第1発光部23と同様、図3に示すように、一端に取り付けたLED素子27aからの光を、内部に設けた導光体27bを通して全体的に均一に照射可能とした合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。この第2発光部27についても、受光部26(受光センサ)と平行にライン状に配設して構成されている。
【0083】
前記第2発光部27は、45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部26(受光センサ)で受光するように配設されている。この場合、第2発光部27から照射された光が受光部26(受光センサ)へ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、反射光を確実に受光可能な範囲であれば適宜設定することができる。このため、第2発光部27、受光部26の配置については、紙幣処理装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部27については、受光部26を挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部27については、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0084】
上記した受発光ユニット25は、紙幣搬送路5に露出することから、その表面部分(搬送面5aと略面一になる部分)の紙幣搬送方向の両端には、図2に示すように、凹凸部25aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。また、発光ユニット24も受発光ユニット25と同様、その表面部分の紙幣搬送方向の両端に、図2に示すように、凹凸部24aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。
【0085】
なお、上記した発光ユニット24、受発光ユニット25の構成や配置などは、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変形することが可能である。
【0086】
上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50は、制御手段30によって、その駆動が制御される。
【0087】
制御手段30は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御回路基板100を備えており、この制御回路基板上には、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、基準データ記憶部116とが実装されている。
【0088】
前記ROM112には、上述した駆動モータ10、ソレノイド54、LED70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定プログラム等の各種プログラム、恒久的なデータが記憶されており、CPU110は、ROM112に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート120を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣識処理装置の動作制御を行う。すなわち、CPU110には、I/Oポート120を介して、駆動モータ駆動回路125(駆動モータ10)、ソレノイド54、LED70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM112に格納された作動プログラムに従って、CPU110からの制御信号により動作が制御される。また、CPU110には、I/Oポート120を介して、紙幣検知センサ18からの検知信号、及び紙幣通過検知検知センサ60からの検知信号が入力されるようになっており、これらの検知信号に基づいて、駆動モータ10の正転/逆転駆動制御、LED70の点滅制御、ソレノイド54の駆動制御が行われる。
【0089】
前記RAM114には、CPU110が作動する際に用いるデータやプログラムが記憶されており、基準データ記憶部116には、紙幣の真贋判定を行うときに用いられる基準データ、すなわち、真券紙幣の全印刷領域から取得した濃淡データが、赤外光の透過光、反射光、及び赤色光の透過光、反射光ごとの基準受光データとして記憶されている。なお、本実施形態では、基準データを専用の基準データ記憶部116に記憶させているが、これをROM112に記憶させておいても良い。
【0090】
CPU110は、I/Oポート120を介して、上記した発光ユニット24における第1発光部23と、受発光ユニット25における受光部26及び第2発光部27が接続されており、これらは、CPU110、ROM112、RAM114、基準データ記憶部116と共に紙幣の真贋判定部150を構成しており、紙幣処理装置1における真贋判定に必要な動作制御を行う。
【0091】
また、CPU110は、I/Oポート120を介して紙幣処理装置1が組み込まれる遊技媒体貸出装置の制御部や外部装置のホストコンピュータ等の上位装置200に接続されており、上位装置に対して、各種信号(紙幣に関する情報、警告信号等)を送信するようにしている。
【0092】
上記した紙幣の真贋判定部150における基準データ記憶部116の所定領域には、図13に示すように、赤外光の透過光に係る基準データ(a)、赤外光の反射光に係る基準データ(b)、赤色光の透過光に係る基準データ(c)、赤色光の反射光に係る基準データ(d)を格納した4種類の基準データ格納テーブルが記憶されている。
【0093】
より具体的に説明すると、基準データ格納テーブルには、赤色光の反射光による濃淡データと透過光による濃淡データ、及び赤外光の反射光による濃淡データと透過光による濃淡データが、それぞれ7種類の金種(新紙幣の千円、五千円、一万円、旧紙幣の千円、二千円、五千円、一万円の7金種)について、かつ紙幣が表面を上向きにした場合と裏面を上向きにした場合、そして、紙幣の長手方向の左右いずれか一方(本実施形態では右方向とする)の向きで挿入された場合についての7×2×1=14通りの濃淡データが基準データ格納テーブルに記憶されている。そして、真贋判定時には、紙幣の挿入方向を判定し、挿入方向が左方向であれば、記憶された基準データを反転して適用するようにしている。勿論、図13で(左向)と示したように、紙幣の長手方向の左向きで挿入された場合の基準データを基準データテーブルに記憶しておいても良い。この場合、7×2×2=28通りの濃淡データが基準データ格納テーブルに記憶されることになる。なお、濃淡データを二次元画像化して記憶しておくこともできる。
【0094】
さらに、本実施形態では、紙幣の表面における印刷領域中に予め定めた、可視光である赤色光下と赤外光下で視認性が異なる特定領域から取得したデータを特定基準データとして基準データ記憶部116に記憶している。
【0095】
ここで上記特定領域について説明する。図14に示すように、我が国の紙幣、すなわち日本銀行券には偽造防止技術として様々な技術が施されている。例えば、図14(a)に示すように紙幣Mの表面には、繊維の厚みを加減した透かし領域40aや、直視した場合は見えないが斜めから見ると現れる潜像画像領域40bや、紙幣を傾けると印刷箇所がややピンク色を帯びたパール光沢が浮かび上がるパールインキによる特殊印刷領域40c、さらには、赤外光は透過するが赤色光などは透過しない赤外光透過領域40dが形成され、また、図14(b)に示すように、紙幣の裏面についても前記透かし領域40aや潜像画像領域40bが形成されている。
【0096】
上記した透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、及び赤外光透過領域40dは、偽造が困難な領域とされており、真券と偽札とでは、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40cにおいては赤外光や赤色光の反射光や透過光の輝度に大きな違いが生じるし、赤外光透過領域40dでは赤色光は透過しないという特性を生じることから紙幣の真贋判定に有用である。本実施形態では、これらを特定領域に設定し、紙幣上における各特定領域の位置を座標により規定している。特に、潜像画像領域40bにおいては、透過光により潜像画像を認識することが難しかったが、本実施形態で用いた波長が950nm近傍の赤外光によれば画像を認識することができるので、真贋判定の要素として有効に利用することができる。
【0097】
なお、旧紙幣においては潜像画像領域40bや特殊印刷領域40cは存在しないことから、少なくとも、新旧いずれも備えている透かし領域40aを真贋判定に用いるようにしている。
【0098】
また、本実施形態においては、潜像画像領域40bに波長が950nm近傍の赤外光(波長が920nm〜980nmにある近赤外線であり、好ましくは940nm〜960nmの範囲にある近赤外線)を透過させて撮影すると、隠れていた画像が認識できることを発見したことから、新紙幣については、この潜像画像領域40bについても特定領域として真贋判定に用いるようにしている。したがって、第1発光部23及び第2発光部27から照射される赤外光は950nmの波長のものとしている。
【0099】
このように、本実施形態における紙幣処理装置1の基準データ記憶部116には、基準データと、この基準データから前記特定領域について抜き出された濃淡データからなる特定基準データとが予め記憶されていることになる。なお、特定基準データについても、赤外光の透過光に係る特定基準データ、赤外光の反射光に係る特定基準データ、赤色光の透過光に係る特定基準データ、赤色光の反射光に係る特定基準データがそれぞれテーブル化されて基準データ記憶部116の所定領域に記憶されている。
【0100】
上記した構成の紙幣処理装置1において、本実施形態では、真券紙幣と判定対象となる紙幣との間で、紙幣全体の濃淡データを比較するのに加え、上述した特定領域における受光データ(透過光データや反射光データ)から得られた濃淡データに重み付けをして、この重み付けされた濃淡データ同士を比較することにより、精度良く真贋判定を行えるようにした点に特徴がある。
【0101】
すなわち、特定基準データ(特定領域を透過した赤色光及び赤外光の透過光データから生成した濃淡データと、特定領域で反射した赤色光及び赤外光の反射光データから生成した濃淡データ)に、それぞれ後述する重み付けを施し、紙幣の真贋判定時には、判定対象となる紙幣から取得した全印刷領域における濃淡データと前記基準データとを比較するとともに、さらに、判定対象となる紙幣の濃淡データから特定領域における濃淡データを取り出し、これに特定基準データ同様の重み付けをして、共に重み付けされた特定濃淡データと前記特定基準データとの間でさらに比較するのである。
【0102】
つまり、本実施形態に係る紙幣処理装置1では、判定対象となる紙幣が紙幣搬送口から投入されて搬送されると、紙幣の表面における印刷領域に、前記第1発光部23及び第2発光部27からから、真券紙幣に照射した同波長の赤外光と赤色光とを照射し、当該紙幣を透過した赤外光及び赤色光の透過光データ及び反射光データから得た4種類の濃淡データをRAM114にそれぞれ展開して、これらと基準データ記憶部116に記憶された4種類(赤外光の透過光及び反射光、赤色光の透過光及び反射光)の基準データとをそれぞれ比較するとともに、前記特定領域における赤外光及び赤色光の各透過光データ及び反射光データから得た特定濃淡データに前記真券紙幣と同じ重み付けをして、この重み付けされた4種類の特定濃淡データをRAM114に展開し、これらと4種類の特定基準データとをそれぞれ1対1で対応させて順に比較し、比較結果が1つでもNGとなれば偽札であると判定するようにしている。
【0103】
ここで、上記した紙幣の真贋判定部150において、実際に紙幣の真贋の判定を行う処理手順を、図15〜図18を参照しながら説明する。
【0104】
図15は紙幣判定処理の手順を示すメインフローチャート、図16は紙幣に赤外光及び赤色光を照射して透過光及び反射光を受光するタイミングを示す紙幣スキャンタイミングチャート、図17は金種及び紙幣搬送方向を判定する金種・方向判定処理を示すフローチャート、そして、図18は真贋判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0105】
なお、各フローチャートにおける処理は、ROM112に格納された真贋判定プログラムにより実行されるもので、この真贋判定プログラムは、CPU110に対して、判定対象となる紙幣の表面の印刷領域に、発光手段である第1発光部23及び第2発光部27から前記所定波長の赤外光を照射させるステップと、当該紙幣を透過した赤外光の透過光データと、予め記憶している基準データとを比較する第1の比較ステップと、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の各特定領域における赤外光の透過光データに所定の重み付けをするステップと、この重み付けられたデータ同士を比較する第2の比較ステップと、第1、第2の比較ステップにおける比較結果に基いて、紙幣の真贋判定を行うステップとを実行させる構成となっている。
【0106】
最初、紙幣処理装置1のCPU110は、紙幣を検出したか否かを判定する(ステップS01)。これは、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知して検知信号を発したか否かで判定され、紙幣検知センサ18が紙幣を検出すると、紙幣の真贋判定処理が実行される。
【0107】
次いで、CPU110は、第1,第2発光部23,27に照射信号を出力し、各発光部23,27から可視光線である赤色光と赤外光を出力させて紙幣に向けて照射させ、紙幣の表面の印刷領域全体の濃淡データの読み取り処理を実行し、二次元画像を生成する(ステップS02)。
【0108】
このとき、第1,第2発光部23,27は、紙幣搬送路5に対して交差方向に延びるライン状に配置されているので、第1,第2発光部23,27から出力される光は、紙幣の幅一杯に照射されることになる。そして、照射された赤色光と赤外光は、紙幣の全面から透過、あるいは反射して、それらの透過光及び反射光が受光部26の受光センサに入力する。上述したように、受光センサもラインセンサとしていることから、各光線の反射光及び透過光をその長さ全体で検出し、濃淡データを読み取ることが可能となる。
【0109】
また、本実施形態における濃淡データ読み取り処理においては、図16に示すように、第1発光部23及び第2発光部27の各赤色光と赤外光、すなわち赤色光と赤外光の透過用の光源と、赤色光と赤外光の反射用の光源からなる4つの光源が一定の適宜間隔で点灯、消灯を繰り返し、しかも、各光源の位相は重なることがなく、2つ以上の光源が同時に点灯することがないようにしている。換言すれば、ある光源が点灯しているときには、他の3つの光源は消灯していることになる。
【0110】
したがって、本実施形態のように、1つの受光部26であっても、各光源の光を一定間隔で検出し、赤色光の透過光及び反射光、赤外光の透過光及び反射光による紙幣の印刷領域の濃淡データからなる画像を読み取ることができる。
【0111】
続いて紙幣に付着物が接続されているか否かの検出を行う(ステップS03)。これは、ステップS03で濃淡データの読み取り処理が終了した後、引き続き紙幣のエスクロ位置(本実施形態では、ラインセンサの位置から紙幣後端が下流側13mm程度、搬送された位置に設定される)への搬送処理が行われるが、この処理中、ラインセンサである受光部26において、紙幣の後端に糸や紐等の付着物が接続されているか否かを検出することで行われる。上述したように、ラインセンサは、紙幣搬送路の全幅、すなわち紙幣の幅全体を検知するために、付着物がどの位置に接続されていても、それを検出することが可能である。従って、このような構成では、紙幣の真贋を識別する精度を向上することができると共に、紙幣の搬送路幅方向のいずれかの位置に糸や紐等の付着物を接続しても、その付着物を異物として確実に検知することが可能となる。紙幣の後端が通過した後、付着物が検出されていれば、紙幣判定NG処理を実行する(ステップ03;Yes、ステップS10)。なお、このステップS03における付着物が接続されているか否かの検出は、後述するステップS07における紙幣の真贋判定処理に先立って実行され、付着物による識別結果を優先して制御するようにしている。この場合、紙幣識別手段による識別結果より、付着物識別手段による識別結果を優先して制御するため、紙幣識別手段により真券と識別された後の紙幣搬送中においても、不正行為を確実に防止することが可能となる。
【0112】
次いで、CPU110は金種・方向判定処理を行い、挿入された紙幣の金種(例えば、新紙幣の千円、五千円、一万円、旧紙幣の千円、二千円、五千円、一万円の7金種)と、挿入方向(紙幣の表面が上か下か、またそのときの紙幣が挿入された向きにより区別される4方向)を判定する(ステップS04)。なお、この金種・方向判定処理については後に詳述する。
【0113】
次に、CPU110は、金種及び搬送方向を判定できたか否かを判断し(ステップS05)、例えば、紙幣が著しく汚損していたり、欠損していたりして、判定不可であった場合(ステップS05のNo)、処理をステップS10に移して紙幣判定NG処理を行う。この紙幣判定NG処理では、CPU110は、駆動モータ駆動回路125に駆動モータ10を逆回転させる信号を出力し、紙幣を紙幣挿入口6へと強制的に戻して、再びステップS01に移行する。
【0114】
一方、金種及び方向を判定できた場合(ステップS05のYes)、一定範囲内で取得した二次元画像を動かして基準データとの相関係数が最大になるように位置補正する(ステップS06)。
【0115】
そして、ステップS07で紙幣の真贋判定を行う。この真贋判定については後に詳述するが、簡単に説明すると、先ず、取得データと基準データとの間の相関係数と差分絶対値を、4光源(赤外透過、赤外反射、赤色透過、赤色反射)それぞれについて演算する。次に、特定領域を抽出して重み付けし、重みを付けた相関係数を4光源について演算する。さらに、透過データについて、透かし領域40aのみを抜き出し、内部で微分係数をとり、その大きさを演算する。最後に透かし領域40aにおける特定基準データとの間で相関係数を演算する。そして、演算した全ての相関係数が全て定められた範囲内にあれば真券、1つでも範囲外であれば偽札と判定する。
【0116】
このとき、多数の真券紙幣をサンプルとして用い、各数値の平均や分散、共分散を予め求めておくことにより、マハラノビスの距離を使った識別も考えられる。これは、演算した数値を個別にみるのではなく、多変量解析を用いて総合的に判断するものである。
【0117】
なお、真贋の判定に要する時間は、0.7s程度、紙幣がエスクロ位置まで搬送される時間が0.1s程度であり、エスクロ位置において、紙幣の真贋判定をしている時間は、0.6s程度である。また、この紙幣の真贋判定処理前に、上記した付着物が接続されているか否かを識別するため(ステップS03)、真贋判定後、エスクロ位置まで紙幣を搬送中でも確実に不正行為を防止することができる。
【0118】
そして、真贋判定結果で真券であると判定された場合(ステップS08のYes)、紙幣判定OK処理を実行する(ステップS09)。この処理は、紙幣がエスクロ状態となった後に行われ、例えば、両替、プリペイドカード販売、記録媒体への書き込み等、各種の処理が該当する。
【0119】
上記したステップS08の処理において、紙幣が偽札であると判定された場合、また、上記したステップS03の処理において、付着物が接続されていると判定された場合、紙幣判定NG処理が実行されるが(ステップS10)、この場合の紙幣判定NG処理では、先にステップS05から移行したときとは異なる処理を行うようにしても良い。
【0120】
例えば、紙幣が偽札であると判定された場合、或いは、付着物が接続されていると判定された場合、挿入された紙幣を返却することなく収容した状態にとどめ、上位装置200に対して警報信号を出力するようにしても良い。このような構成では、警報信号が発信された際、その状態を音や光により報知することで、利用者の不正行為を早期に発見することが可能になる。また、不正目的で紙幣に、糸や紐等の付着物が接続されていることが検知された場合、制御手段は、紙幣処理装置の上位装置(例えば、紙幣処理装置を組み込んでいるサービス/商品販売機、発券機、それらを管理するホストコンピュータ等)に向けて警報信号を発信するようにしても良い。この場合、上位装置は、警報信号を受信した際、その状態を音や光により報知することで、利用者の不正行為を早期に発見することが可能になると共に、そのような不正行為を抑止することが可能となる。或いは、上記したような場合、最初の2回は、単に紙幣を返却するに留め、同一の状態が3回続けて発生した場合、上位装置200に対して警報信号を出力するようにしても良い。これにより、真券であるものの、余計な付着物が付着していたり接続されていたため、真券と判定されなかったような場合があっても、利用者が付着物を除去することで真券であると判定できることがあり、無用なメンテナンスを行う手間を省き、利用者に対しても不快感を与えることが防止される。
【0121】
次に、上記したステップS04の金種・方向判定処理について詳述する。なお、紙幣の真贋判定部150における基準準データ記憶部116には、4種類の光(赤外光の透過光、反射光、赤色光の透過光、反射光)ごとの7金種、右方向の基準データが記憶されていることは前述したとおりである。
【0122】
図17に示すように、CPU110は、先ず、搬送されている真贋判定対象となる紙幣の全面、すなわち全印刷領域から得た濃淡データから生成された二次元画像から、例えば赤外光の透過光データに係るものを選定する(ステップS11)。
【0123】
次いで、7金種・4方向の28通り(紙幣の挿入方向が左向の場合は右向きのデータを反転させている)の取得データと基準データとの類似度をチェックする(ステップS12)。具体的には、類似度を示す指標として下記の式で表される相関係数Rを用いる。
【0124】
【数1】
なお、式中、[i,j]は紙幣の座標であり、この紙幣座標[i,j]における判定対象となる紙幣からの取得データの二次元画像の濃度値(輝度値)をf[i,j]、基準データにおける濃度値をs[i,j]、取得データにおける平均濃度をF、基準データの平均濃度をSとする。
【0125】
相関係数Rは、−1〜+1までの値をとり、+1に近い方が、類似度が高いと判定される。そして、7金種の各4方向の基準データとの相関係数を全て演算し、最も高い値を示した金種と方向とを、挿入された判定対象となる紙幣2の金種・方向と判定する。
【0126】
なお、本実施形態では、予め、紙幣表面の全印刷領域における濃淡データを基準データとして記憶しているので上述の方法としているが、かかる方法によらず、金種・方向を識別する程度であれば、全印刷領域における識別でなくても良い。例えば、取得したデータの長辺3方向の3ライン(紙幣2の中央、上辺から約9mm、下辺から約9mm)で基準データとの相関係数を演算し、3ラインの平均が最も高いものを真贋判定対象となる紙幣2の金種・方向と判定してもよい。この場合、判定が簡易となるので判定時間の短縮も可能である。
【0127】
次に、CPU110は、ステップS12の処理における判定を行い(ステップS13)、判定結果により適合金種が存在すれば、後の真贋判定処理のために、適合した金種・方向を決定する識別コードをセットして(ステップS14)、ステップS04に処理を移す。他方、判定結果により適合金種が無いと判定した場合は、適合紙幣無しの識別コードをセットして(ステップS15)、ステップS04に処理を移す。
【0128】
次に、図15におけるステップS06の真贋判定処理について詳述する。
【0129】
図18に示すように、CPU110は、4種類の光(赤外光の透過光、反射光、赤色光の透過光、反射光)それぞれについて、判定対象となる紙幣2から取得した濃淡データと、予め記憶していた基準データとの間で、紙幣表面の全印刷領域での類似度を演算する(ステップS21)。このとき、相関係数Rと下記に示す式で表される差分絶対総和SUMを用いる。
【0130】
【数2】
なお、式中、[i,j]は紙幣の座標であり、この紙幣座標[i,j]における判定対象となる紙幣からの取得データの二次元画像の濃度値(輝度値)をf[i,j]、基準データにおける濃度値をs[i,j]とする。
【0131】
次いで、相関係数Rと差分絶対総和SUMが許容範囲にあるか否かを判定する(ステップS22)。このとき、相関係数Rの値が+1に近いほど、また、差分絶対総和SUMが0に近いほど、基準データに近い。そして、許容範囲外であれば(ステップS22のNo)、偽札と判定し、偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS24で相関係数Rの値が許容範囲であれば(ステップS22のYes)、処理をステップS23に移す。
【0132】
ステップS23では、特定領域から抽出したデータと特定基準データとの間に大きな重みを付けて相関係数RW+を演算する。なお、ここで設定されている特定領域は、潜像画像領域40bや特殊印刷領域40cであり、これらの領域は、赤色光と赤外光とにおける濃淡が異なる領域であり、赤色光と赤外光とで、負の相関がある。また、本実施形態では、予め演算された重みマップを用意して、下記に示す重み付きの相関係数RW+を演算するようにしている。
【0133】
【数3】
このとき、赤色光と赤外光の透過光については透過光用の重みマップを、また、反射光については反射用の重みマップを用いて重み付き相関係数を演算する。
【0134】
また、特定領域を規定する各座標での重みw[i,j]は、赤色光と赤外光との特定基準データから下記で表される式で決定することができ、この重みw[i,j]の決定を、真贋判定する都度計算するようにしても良い。
【0135】
【数4】
なお、式中、[i,j]は紙幣の座標であり、この紙幣座標[i,j]における判定対象となる紙幣の赤色光の特定基準データの濃度値(輝度値)をsf[i,j]、赤外光の特定基準データにおける濃度値をSir[i,j]、赤色光の特定基準データの平均濃度をSr、赤外光の特定基準データの平均濃度をSirとする。また、cは重み倍率係数であり、適宜に決定した値である。
【0136】
そして、相関係数RW+が許容範囲にあるか否かを判定する(ステップS24)。重み付き相関係数RW+においても−1〜+1の値をとるので、+1に近いほど特定基準データに近いと判定される。そして、許容範囲外であれば(ステップS24のNo)、偽札と判定して判定結果は偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS24で許容範囲と判定されれば(ステップS24のYes)、処理をステップS25に移す。
【0137】
ステップS25では、CPU110は、判定対象となる紙幣から取得したデータから透かし領域40aを抜き取り、その濃値度を演算する。すなわち、予め、透かし領域40aを白、それ以外を黒にしたマスクを金種ごとに用意しておき、取得した二次元画像をマスクと掛け合わせることにより、透かし領域40aだけを抜き出せるのである。
【0138】
そして、透かし領域40aの内部に何らかの画像が存在するか否かを調べるために、下記の式で表されるグラディエント(勾配)の大きさg[i,j]を演算し、これを透かし領域40a全体に亘って合計したものを演算する。
【0139】
【数5】
なお、座標[i,j]における取得した二次元画像の濃度値をf[i,j]とする。例えばコピーなどで偽造した偽札には透かし部分がない場合があり(透かし領域40aにおける濃度が比較的に平坦なものを含む)、その場合はこの濃度値が低くなる。
【0140】
そして、CPU110は、透かし領域40aの濃度が許容範囲にあるか否かを判定し(ステップS26)、許容範囲外であれば(ステップS26のNo)、偽札と判定して判定結果は偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS26で許容範囲と判定されれば(ステップS26のYes)、処理をステップS27に移す。
【0141】
次いで、CPU110は、取得した透かし領域40aの二次元画像と、基準データから生成した二次元画像との間の類似性をみるために相関係数Rを演算する(ステップS27)。
【0142】
次いで、CPU110は、相関係数Rが許容範囲にあるか否かを判定し(ステップS28)、許容範囲外であれば(ステップS28のNo)、偽札と判定して判定結果は偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS28で許容範囲と判定されれば(ステップS28のYes)、処理をステップS29に移し、判定結果が真券であるというコードをセットし(ステップS29)、処理をステップS07に移す。
【0143】
ところで、上述した中で、透かし領域40aについての判定においては、前処理として、下記に示す明るさ補正と位置補正を実施しておくことが望ましい。
【0144】
透かし領域40aには、縦若しくは横方向への折り目が入っていることが多く、縦方向に明るさのムラが生じることもあるため、透かし領域40aを含む小矩形領域において、縦、横の濃淡累計分布が均等になるように、取得した二次元画像、予め記憶していた基準画像共に明るさ補正を実施する。なお、紙幣の全印刷領域における比較においては、折り目やムラの影響がさほど大きくないために無視しても構わない。
【0145】
また、透かし領域40a内の画像(例えば人物)の位置には、紙幣ごとに固体差があり、これを補償するために、所定範囲内で8近傍探索による位置補正を行い、相関係数が最大になる場所を求めておく。
【0146】
このように、本実施形態では、演算した数値を用いた複数の判定ステップがあり、しかも、特定領域に重み付けをしての判定も併用された中で、全ての数値が許容範囲内に入っているときのみ真券と判定され、1つでも範囲外の数値が演算されれば偽札と判定されることになる。従って、真贋判定精度が極めて高いものとなり、高度な偽造技術に対しても対応可能となり、次々と新手の偽造技術に対しての開発に負われることもなく、コストパフォーマンスにおいても優れた紙幣の真贋判定方法、及び紙幣の真贋判定装置となすことができる。
【0147】
次に、上記した紙幣処理装置1において、紙幣を搬送処理する駆動モータ10及びソレノイド54の駆動制御手順について、図19のフローチャートを参照して説明する。
【0148】
最初、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知してON状態になると(ステップS51のYes)、駆動モータ10が正転駆動されると共に、LED70が点灯される(ステップS52)。これにより、搬送ローラ対12,13,14が紙幣挿入方向に回転駆動されて、紙幣を装置内に搬送すると共に、利用者に対して、紙幣処理中であることを知らせ、追加の紙幣挿入が防止される。
【0149】
紙幣の装置内への搬送により、紙幣が紙幣読取手段20の領域を通過する際、上述した図15から図18で示した手順に従い、紙幣判定処理が実行される。また、この紙幣判定処理が行われている段階、すなわち紙幣判定処理と平行してシャッタ機構50の閉塞処理が行われる(ステップS53)。
【0150】
本実施形態では、シャッタ機構50の回動片52の下流側に設置されている紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)、ソレノイド54が通電され、これにより、揺動部材57、セクターギヤ57G、ギヤ55G、シャフト55を介して回動片52が回動駆動され、図9に示すように、搬送面5aから突出して紙幣挿入口6を閉塞する。
【0151】
引き続き、ステップS53の紙幣判定処理において、紙幣判定NG処理があるか否かが判定される(ステップS54)。紙幣判定NG処理があると、その段階で駆動モータ10の逆転駆動処理が実行され、紙幣を紙幣挿入口側に向けて差し戻す(ステップS55)。この際、シャッタ機構50の閉塞処理が既に実行されているため、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませ、紙幣が排出方向に搬送できるようにする(ステップS56)。
【0152】
そして、紙幣が紙幣挿入口側に向けて差し戻されている状態において、駆動モータが所定量だけ逆転駆動された際、駆動モータ10の逆転駆動を停止する(ステップ57)。なお、この所定量は、紙幣の後端が搬送ローラ対12から外れた状態となる程度の回転数に設定される。このとき、紙幣は、紙幣挿入口6から引き出せる程度に排出されており、ユーザが紙幣を引き出して、紙幣の後端が紙幣検知センサ18によって検知された段階(ステップS58)、すなわち紙幣検知センサ18がOFFになった段階でLED70を消灯して処理が終了する(ステップS59)。
【0153】
なお、紙幣判定NG処理では、単に紙幣を紙幣挿入口6から差し戻す以外にも、上述したように、紙幣を差し戻すことなく、上位装置に対して警告信号を送信するように処理しても良い。また、上述したように、紙幣判定NG処理における状態をカウンタにセットしておき、紙幣が偽物であること、及び付着物が接続されていることが連続してカウントされた場合、警告信号を送信するようにしても良い。
【0154】
上記したステップS54において、紙幣判定NG処理が無かった場合、エスクロ待機処理が実行される(ステップS60)。本実施形態では、エスクロ位置は、ラインセンサから下流側13mm程度に紙幣後端が搬送される位置であり、このエスクロ待機処理では、駆動モータ10の駆動が所定時間停止されるか、駆動力の伝達がOFFにされる。
【0155】
このエスクロ待機処理において、何らかの理由で返金指令が発生した場合は、駆動モータ10を逆転駆動することで、挿入された紙幣を直ちに紙幣挿入口6から返却できるようにする(ステップS55〜ステップS59参照)。一方、スタック指令等の処理信号が発生することで、エスクロ状態にある紙幣(エスクロ紙幣)をそのまま下流側に搬送すべく、駆動モータ10による搬送処理が実行される。
【0156】
本実施形態では、上記したように、紙幣挿入口から挿入された紙幣がエスクロ位置に到達するまでに(例えば、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した段階)、シャッタ機構50を閉塞駆動することから、紙幣がエスクロ位置に搬送された後は勿論、紙幣の判定処理中においても、紙幣挿入口6は、シャッタ機構によって閉塞されるため、紙幣判定処理中における不正行為を確実に防止することが可能となる。すなわち、従来では、紙幣に付着物を接続して不正行為を行っている際、その行為を防止する(シャッタ機構を閉じる)ためには、紙幣の真贋判定処理と、紙幣をエスクロ位置まで搬送する処理を行う必要があったが、本実施形態では、エスクロ位置まで搬送する前に、既にシャッタ機構50が閉塞されているため、不正行為を確実に防止することが可能となる。また、紙幣がエスクロ位置に搬送されるまでには、紙幣挿入口6は、閉塞状態にあることから、利用者は連続して紙幣を挿入することができなくなり、紙幣詰まりを効果的に防止することが可能となる。
【0157】
さらに、紙幣を挿入した後、紙幣の有効性の判定処理と共にシャッタ機構の閉塞処理を行い、そのままエスクロ位置への搬送処理を行うため、不正行為防止のための処理手順が簡略化される。
【0158】
そして、エスクロ待機処理の後、紙幣は下流側に搬送され、搬送される紙幣の後端が紙幣通過検知センサ60によって検知された段階、すなわち紙幣通過検知センサ60がOFFになった後(ステップS61)、駆動モータをそのまま所定量だけ回転駆動して、停止する(ステップS62,S63)。この所定量は、紙幣通過センサ60と搬送ローラ対14の距離に依存しており、紙幣の後端が搬送ローラ対14の挟持を外れた状態の回転量に対応する。そして、その後、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませ、紙幣挿入口6を開放状態にすると共に、LED70を消灯して処理が終了する(ステップS64)。勿論、紙幣通過検知センサ60がOFFになった段階でソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)し、LED70を消灯しても良い。
【0159】
このように、紙幣挿入口6は、常時、開放状態にあることから、紙幣処理時における処理手順が簡略化されるようになる。
【0160】
本発明に係る紙幣処理装置は、上記した処理手順以外にも、適宜、変形することが可能である。また、シャッタ機構50は、紙幣が搬送されて有効性を判定している最中に紙幣挿入口6を閉塞するものであれば良く、閉塞するタイミングや、その契機については、適宜変更することが可能である。
【0161】
また、紙幣の識別処理については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【0162】
すなわち、本実施形態では、判定対象となる紙幣と真券とを比較する際に、赤外光の透過光と反射光、及び赤色光の透過光と反射光との4種類の光源を用いたものとして説明したが、少なくとも赤外光の透過光データを用いるものであっても良い。このとき、波長は上述した実施形態のように950nm、あるいはその近傍の値の波長であることが望ましい。
【0163】
また、上述した実施形態では、真贋判定を行う際に、相関係数により判定を行うものとして説明したが、例えば受光したデータから、アナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で判定することもできる。そして、重み付けをして比較する場合は、この波形を拡大して判定精度を高めるようにすることもできる。
【0164】
また、上述した実施形態では、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中に予め特定された特定領域における前記赤外光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を判定対象となる紙幣と前記真券紙幣との間で比較する第2の比較ステップとに区分して説明したが、区分することなく同時に比較することもできる。
【0165】
すなわち、重み付けするための関係式を含む比較用の相関式が予め組み込まれた真贋判定プログラムを用いて、真券紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと、反射した赤色光の反射光データにおいて、特定領域に予め重み付けしたものを基準データとして記憶装置内に格納しておく一方、前記真贋判定プログラムを組み込んだ真贋判定装置において、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データ、あるいは反射した赤色光の反射光データから、前記特定領域部分の重み付けも平行して行い、前記基準データと比較する。
【0166】
また、特定領域から取得した透過光データや反射光データに、全印刷領域において取得したデータよりも所定の重み付けをする方法として、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データのデータ量を、他の領域のデータ量よりも増加させる方法であっても良い。
【0167】
例えば、多数のLEDを線状に設けたLEDアレイなどを用いた場合であれば、座標で特定される特定領域以外の領域に照射する場合は、LEDを間引いて駆動させ、特定領域では全LEDを駆動させるようにするのである。
【0168】
あるいは、座標で特定される特定領域については、紙幣搬送機構による紙幣の搬送速度を制御して他の領域よりも搬送速度を落とし、透過光データや反射光データの量を増加させるようにしてもよい。すなわち、座標密度をより密にしてデータ量を増加させるのである。
【0169】
また、本実施形態における紙幣処理装置1であれば、前述したように紙幣の搬送速度を制御することも可能であるが、発光間隔、すなわちスキャンタイミングを変えることでの対応も可能である。
【0170】
ところで、本実施形態では、図18に示したステップS21〜S28までのフローに則って真贋判定をしているが、特別領域を用いての判定、すなわち、ステップS23及びステップS24のみで真贋判定をするようにしても良いし、適宜その他のステップを組み合わせたりするなどして、適宜することも可能である。
【0171】
上述してきた実施形態から、例えば、以下のような紙幣の真贋判定方法が実現できる。
【0172】
真券紙幣表面の印刷領域に、発光手段から所定波長の光(例えば赤外光)を照射し、当該真券紙幣を透過した光の透過光データ(例えば、濃淡データから生成した二次元画像や波形)を基準データとして予め記憶しておき、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段(例えば、第1発光部23、第2発光部27)から前記所定波長の光(例えば赤外光)を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中、予め特定領域として定め、(例えば赤色光のような可視光下と赤外光下では得られる画像が異なる領域を、予め特定領域として定める)、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記特定領域(例えば、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、赤外光透過領域40dなど)における前記光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を比較する第2の比較ステップと、を有し、これら第1、第2の比較ステップにおける比較結果に基いて、紙幣の真贋判定を行う紙幣の真贋判定方法。
【0173】
紙幣表面の印刷領域中、可視光下と赤外光下で得られる画像が異なる領域を予め特定領域(例えば、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、赤外光透過領域40d)として定めた真券紙幣の印刷領域に、発光手段から所定波長の赤外光を照射し、当該真券紙幣を透過した赤外光の透過光データ(例えば、濃淡データから生成した二次元画像や波形)のうち、前記特定領域を透過した透過光データに所定の重み付けしたデータを基準データとして予め記憶しておく一方、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段(例えば、第1発光部23、第2発光部27)から前記所定波長の赤外光を照射し、当該紙幣を透過した赤外光の透過光データのうち、前記特定領域を透過した透過光データに、前記真券と同じ重み付けをして、この重み付けされた前記特定領域における透過光データを含む全透過光データと前記基準データとを比較することにより真贋を判定する紙幣の真贋方法。
【0174】
上記各紙幣の真贋判定方法において、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記光の透過光データに加え、さらに、前記特定領域における光の反射光データを用いた紙幣の真贋判定方法。
【0175】
上記各紙幣の真贋判定方法において、前記発光手段(例えば、第1発光部23、第2発光部27)は異なる波長の光(例えば、赤色光や赤外光)を照射可能であり、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記特定領域における異なる波長の光の透過光データ及び/又は反射光データをさらに用いる紙幣の真贋判定方法。
【0176】
上記各紙幣の真贋判定方法においいて、前記特定領域は、異なる波長の光を照射した際に得られるデータの異なる領域(例えば、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、赤外光透過領域40d)を含む紙幣の真贋判定方法。
【0177】
上記各紙幣の真贋判定方法において、前記所定の重み付けとして、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データに重み倍率を乗じる紙幣の真贋判定方法。
【0178】
上記各紙幣の真贋判定方法において、前記所定の重み付けとして、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データのデータ量を、他の領域のデータ量よりも増加させた紙幣の真贋判定方法。
【0179】
以上、紙幣の真贋判定方法について説明したが、本発明に係る紙幣処理装置における紙幣の真贋判定方法については、上記した方式に限定されることはなく、従来から行われている各種の真贋判定方法を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の紙幣処理装置は、遊技媒体貸出装置に限られず、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能である。また、本実施形態では、日本銀行券としての紙幣を処理するものであることを例示して説明したが、米ドル札などの外国通貨、また、いわゆる金券やその他有価証券などの真贋判定を行う装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 紙幣処理装置
2 フレーム
5 紙幣搬送路
6 紙幣挿入口
8 紙幣搬送機構
10 駆動モータ
18 紙幣検知センサ
20 紙幣読取手段
30 制御手段
50 シャッタ機構
52 回動片
54 ソレノイド
60 紙幣通過検知センサ
70 LED
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣挿入口から挿入される紙幣を搬送すると共に、その有効性を識別する紙幣識別部を備えた紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に紙幣処理装置は、利用者によって紙幣挿入口から挿入された紙幣の有効性を識別し、有効と判定された紙幣価値に応じて、各種の商品やサービスを提供するサービス機器、例えば遊技場に設置されている遊技媒体貸出機、或いは、公共の場に設置されている自動販売機や券売機等に組み込まれている。
【0003】
通常、紙幣処理装置は、紙幣挿入口に挿入された紙幣を搬送する紙幣搬送機構、搬送される紙幣の有効性を判定(真贋判定とも称する)する紙幣識別部等の動作機器、及びこれらの動作機器を駆動、制御する制御手段を備えている。すなわち、紙幣挿入口から紙幣が挿入されると、紙幣の挿入を検知センサが検知し、前記紙幣搬送機構(駆動モータ、搬送ローラ等)を駆動して紙幣を搬送すると共に、搬送状態にある紙幣を、紙幣識別部を構成する識別センサで読み取り、その出力を予め格納されている正規データと比較して有効性を判定する。そして、この紙幣識別部で有効と判定された紙幣は、そのまま下流側に設置されている紙幣収容部等に向けて搬送され、有効と判定されなかった紙幣は、そのまま紙幣挿入口へ戻されるようになっている。
【0004】
上記した紙幣処理装置は、例えば、特許文献1に開示されているように、挿入された紙幣が紙幣識別部で真正と判定されると、一時保留(エスクロ)するようにしている。このようなエスクロは、例えば、紙幣を挿入した後に何らかの理由で返金指令が発生した場合に、紙幣搬送機構を逆転することで、挿入された紙幣を直ちに紙幣挿入口から返却できるようにするものである。そして、エスクロ状態において、スタック指令等の処理信号が発生することで、エスクロ状態にある紙幣(エスクロ紙幣)は、そのまま下流側に搬送されるようになっている。
【0005】
ところで、上記したような紙幣処理装置では、停止状態にあるエスクロ紙幣に対して不正な行為が行われ易いことから、特許文献1に開示されているように、紙幣挿入口にシャッタを設けておき、シャッタモータを作動して紙幣挿入口をシャッタによって強制的に閉じるようにしている。すなわち、紙幣挿入後に、シャッタによって紙幣挿入口を閉じておくことで、紙幣に紐や糸等の付着物を接続しても、エスクロ紙幣を引き出す等の不正な行為が行えないようにしている。
【0006】
すなわち、上記した特許文献1に開示されている紙幣処理装置では、紙幣を紙幣挿入口に挿入する際、それを検知して閉塞状態にあるシャッタを開放し、紙幣を紙幣識別部に搬送して、その有効性を判定するようにしている。そして、紙幣識別部で真正と判定された紙幣は、更に下流側にあるエスクロ位置まで搬送され、エスクロ状態となったときに開放状態にあるシャッタを閉塞状態に駆動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3000328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、不正行為防止のために、紙幣挿入口をシャッタによって閉じるのは、紙幣が有効と判定された後であることから、紙幣の有効性の判定処理が行われてからエスクロ位置に搬送されるまでの間の不正行為を確実に防止することはできない。すなわち、上記した紙幣識別装置では、(紙幣挿入)→(シャッタの開放処理)→(紙幣の有効性の判定処理)→(有効である場合にエスクロ位置への紙幣の搬送処理)→(シャッタの閉塞処理)を行うため、不正行為防止のために、シャッタによって紙幣挿入口を強制的に閉塞するには、紙幣の有効性判定処理と、紙幣をエスクロ位置まで搬送する処理を行う必要があり、この間の不正行為(特に、紙幣に付着物を付着して行われる不正行為)を確実に防止できない。
【0009】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、紙幣に対する不正行為を、より確実に防止することを可能にする紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された紙幣処理装置は、紙幣が挿入される紙幣挿入口と、前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能な紙幣搬送機構と、前記紙幣搬送機構により搬送された紙幣を読取る紙幣読取手段と、前記紙幣読取手段により読取られた紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段と、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていることを識別する付着物識別手段と、前記紙幣識別手段による識別結果、且つ前記付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為防止処理を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記紙幣読取手段により読取りが終了した紙幣を前記紙幣搬送機構により下流側へ搬送中に、前記付着物識別手段により付着物の識別を行うことを特徴とする。
【0011】
上記した構成の紙幣処理装置によれば、紙幣挿入口に紙幣が挿入されると、紙幣搬送機構を駆動して紙幣を内部に送り込む。内部に送り込まれる紙幣は、搬送状態で、その下流側に設置された紙幣読取手段によって紙幣情報の読取が成される。読取手段によって読取処理された紙幣は、前記紙幣搬送機構により下流側へ搬送処理が行われ、この処理中に、付着物識別手段によって付着物の識別処理が行われる。さらに、その読取った紙幣情報に基づいて紙幣識別手段により紙幣の真贋が識別される。また、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていると、付着物識別手段がこれを検知するようになっており、前記紙幣識別手段による識別結果と、付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為の防止が制御される。
【0012】
また、請求項2に係る発明においては、前記制御手段は、前記付着物識別手段による識別処理後、前記紙幣識別手段により紙幣の真贋の識別を行うことを特徴とする。
【0013】
このような構成では、紙幣の真贋判定処理に先立って付着物が接続されているか否かの検出が行われる。前記付着物識別手段によって糸や紐等の付着物が接続された紙幣が検知されると、紙幣判定NG処理が実行される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紙幣処理装置によれば、紙幣挿入口に挿入された後、紙幣に対する不正行為を、より確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る紙幣処理装置の一実施形態の全体構成を示す斜視図。
【図2】上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図。
【図4】下部フレームの裏面図。
【図5】紙幣検知センサの構成を示す斜視図。
【図6】シャッタ機構の構成を示す斜視図。
【図7】図6に示すシャッタ機構を裏側から見た斜視図。
【図8】シャッタ機構の動作を示す側面図。
【図9】シャッタ機構の回動片が回動されて、紙幣挿入口が閉塞されている状態を示す図。
【図10】シャッタ機構の回動片の作用を模式的に示す図。
【図11】図1から図4に示した紙幣処理装置の構成を模式的に示した図。
【図12】紙幣処理装置の制御系を示すブロック図。
【図13】基準データ記憶部内に格納された基準データテーブルの説明図。
【図14】(a)及び(b)は、紙幣の表裏面を示す模式的説明図。
【図15】紙幣判定処理の手順を示すメインフローチャート。
【図16】紙幣に赤外光及び赤色光を照射して透過光及び反射光を受光するタイミングを示す紙幣スキャンタイミングチャート。
【図17】金種及び紙幣搬送方向を判定する金種・方向判定処理を示すフローチャート。
【図18】真贋判定処理の手順を示すフローチャート。
【図19】紙幣を搬送処理する駆動モータ及びソレノイドの駆動制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
図1から図4は、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図、そして、図4は、下部フレームの裏面図である。
【0018】
本実施形態の紙幣処理装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機間に設置される遊技媒体貸出装置(図示せず)に組み込み可能に構成されている。この場合、遊技媒体貸出装置には、紙幣処理装置1の上側又は下側に、他の装置(例えば、紙幣収納ユニット、硬貨識別装置、記録媒体処理装置、電源装置など)を設置しておいても良く、紙幣処理装置1は、これら他の装置と一体化されていたり、別個に構成されていても良い。そして、このような紙幣処理装置1に紙幣が挿入され、挿入された紙幣の有効性が判定されると、その紙幣価値に応じた遊技媒体の貸出処理、或いは、プリペイドカードのような記録媒体への書き込み処理等が行なわれる。
【0019】
紙幣処理装置1は、略直方体状に形成されたフレーム2を備えており、このフレーム2が図示されていない遊技媒体貸出装置の係止部に装着される。フレーム2は、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bを有しており、これらのフレーム2A,2Bは、図2に示すように、一端部を回動中心として開閉されるように構成されている。この場合、上部フレーム2Aの他端部側には、下部フレーム2Bに係止可能なロックシャフト3が配設されており、このロックシャフト3の操作部3aを、付勢バネ3bの付勢力に抗して図1の矢印方向に回動操作することで、ロックシャフト3は回動支点Pを中心に回動し、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bのロック状態(両者が閉じた状態;重合状態)が解除される。
【0020】
前記上部フレーム2A及び下部フレーム2Bは、重合状態になった際、両者の対向部分に紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路)5が形成されるよう構成されている。そして、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bには、この紙幣搬送路5に一致するようにして、紙幣挿入部6A,6Bが形成されている。これら紙幣挿入部6A,6Bは、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bが閉じられた際、スリット状の紙幣挿入口6を形成する。図1に示すように、紙幣Mは、紙幣の短い辺側から矢印A方向に沿って内部に挿入される。
【0021】
前記フレーム2内には、紙幣搬送機構8と、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知する紙幣検知センサ18と、紙幣検知センサ18の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段20と、紙幣挿入口6と紙幣検知センサ18との間の紙幣搬送路5に設置され、紙幣挿入口6を閉塞するように駆動されるシャッタ機構50と、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50の駆動を制御する制御手段(制御回路基板100)とが設けられている。
以下、上記した各構成部材について、詳細に説明する。
【0022】
前記紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口6から挿入された紙幣を挿入方向Aに沿って搬送可能であると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口6に向けて差し戻すように搬送可能とする機構である。紙幣搬送機構8は、下部フレーム2B側に設置された駆動源である駆動モータ10と、この駆動モータ10によって回転駆動され、紙幣搬送路5に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対12,13,14を備えている。
【0023】
搬送ローラ対12は、下部フレーム2B側に配設される駆動ローラ12Aと、上部フレーム2A側に配設されて駆動ローラ12Aに当接されるピンチローラ12Bとを備えており、これら駆動ローラ12Aとピンチローラ12Bは、紙幣搬送方向と直交する方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。駆動ローラ12A及びピンチローラ12Bは、その一部が紙幣搬送路5に露出した状態となっている。
【0024】
前記2箇所に設置される駆動ローラ12Aは、下部フレーム2Bに回転可能に支持された駆動軸12aに固定されており、前記2つのピンチローラ12Bは、上部フレーム2Aに支持された支軸12bに回転可能に支持されている。この場合、上部フレーム2Aには、支軸12bを駆動軸12a側に付勢する付勢部材12cが設けられており、ピンチローラ12Bを駆動ローラ12A側に所定の圧力で当接させている。
【0025】
なお、上記した搬送ローラ対13,14も、ローラ対12と同様、それぞれ駆動軸13a,14aに固定される2つの駆動ローラ13A,14Aと、支軸13b,14bに回転可能に支持される2つのピンチローラ13B,14Bによって構成され、それぞれ付勢部材13c、14cによって、各ピンチローラ13B,14Bは、各駆動ローラ13A,14Aに所定の圧力で当接されている。
【0026】
前記搬送ローラ対12,13,14は、駆動モータ10に連結される駆動力伝達機構15によって同期駆動される。この駆動力伝達機構15は、駆動モータ10の出力軸に固定される出力ギヤ10a、この出力ギヤ10aに順次噛合され、前記駆動軸12a,13a,14aの端部に装着される入力ギヤ12G,13G,14G、及びこれらのギヤ間に設置されるアイドルギヤ16を備えたギヤトレインによって構成される。
【0027】
上記した構成により、駆動モータ10が正転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を挿入方向Aに向けて搬送するように駆動され、駆動モータ10が逆転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を紙幣挿入口側に差し戻すように逆転駆動される。
【0028】
前記紙幣検知センサ18は、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知した際に、検知信号を発生するものであり、本実施形態では、後述するシャッタ機構を構成する回動片と、紙幣を読取る紙幣読取手段20との間に設置されている。前記紙幣検知センサ18は、例えば、光学式のセンサ、より詳しくは、回帰反射型フォトセンサによって構成されており、図5に示すように、上部フレーム2A側に設置されるプリズム18aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体18bによって構成される。具体的には、プリズム18aとセンサ本体18bは、センサ本体18bの発光部18cから照射された光が、プリズム18aを介してセンサ本体18bの受光部18dで検知される配置態様となっており、プリズム18aとセンサ本体18bとの間に位置する紙幣搬送路5に紙幣が通過して受光部18dで光が検知されなくなると検知信号を発生する。
【0029】
なお、上記した紙幣検知センサ18は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0030】
前記紙幣検知センサ18の下流側には、搬送状態にある紙幣について、その紙幣情報を読取る紙幣読取手段20が設置される。紙幣読取手段20は、上記した紙幣搬送機構8によって紙幣が搬送される際、紙幣に光を照射することで読取を行い、紙幣の有効性(真贋)を判定できるような信号を生成できる構成であれば良く、本実施形態では、紙幣の両側から光を照射し、その透過光と反射光を受光素子で検知することで紙幣の読取を行う。そして、この読取った光信号は光電変化され、後述する紙幣識別手段において、予め格納されている真券のデータと比較することで、搬送される紙幣の真贋を判定するようになっている。なお、具体的な紙幣識別手段の詳細な構成については後述する。また、本実施形態では、この読取手段20は、後述するように、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されているか否かを検知する付着物識別手段としての機能を兼ね備えている。
【0031】
前記紙幣挿入口6の下流側には、紙幣挿入口6を閉塞するシャッタ機構50が配設されている。このシャッタ機構50は、常時、紙幣挿入口6を開放した状態になっており、紙幣が挿入されて、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)に閉塞されて、不正行為等が行えないように構成される。
【0032】
具体的に、シャッタ機構50は、紙幣搬送路5の紙幣搬送方向と直交する方向に所定間隔おいて出没するように回動駆動される回動片52と、この回動片52を回動駆動する駆動源であるソレノイド(プル型)54とを有している。この場合、回動片52は、幅方向に2箇所設置されており、紙幣搬送路5を形成する下部フレーム2Bの搬送面5aには、各回動片52が出没できるように紙幣搬送方向に延出する長孔5cが形成されている。
【0033】
前記回動片52は、図6及び図7に示すように、下部フレーム2Bに回転可能に支持されたシャフト55に固定されており、常時(初期状態)、搬送面5aの内部に位置して搬送面5aから突出しないように設定されている。下部フレーム2Bには、前記ソレノイド54が設置されており、通電することで吸引駆動される駆動軸54aの端部に設けられた係合ピン54bには、揺動可能な揺動部材57の係合部57aが係合されている。
【0034】
この揺動部材57は、下部フレーム2Bに対して支点57bを介して揺動可能に軸支されており、その支点57bからシャフト55に向けて延出する揺動アーム57cを備えている。この揺動アーム57cの先端部には、図8に示すように、シャフト55の端部に固定されたギヤ55Gと噛合するセクターギヤ57Gが形成されている。これにより、ソレノイド54が通電(ソレノイドON)されて駆動軸54aがソレノイド本体に吸引駆動されると、図8の矢印に示すように、揺動部材57は、支点57bを中心に揺動され、揺動アーム57cの先端部に形成されたセクターギヤ57G及びシャフト55の端部に固定されたギヤ55Gを介して、回動片52は、搬送面5aに形成された長孔5cから突出するように回動駆動される(図9参照)。
【0035】
これにより、紙幣挿入口6が閉塞された状態となり、紙幣に糸や紐などの異物を付着して引き出すといった不正行為を防止することが可能となる。なお、上記した回動片52、及びこれを駆動するソレノイド54は、図10に示すように、回動片52を紙幣挿入口6側に向けて起立するように回動駆動し、かつ回動片52が回動して搬送面5aから突出した際、回動片52が長孔5cの端面5dに当て付くように配置しておくことが好ましい。このような構成によれば、回動片52が回動して紙幣挿入口6を閉塞した状態では、紙幣を強制的に引き抜こうとしても、回動片52が端面5dに当て付いて大きな抵抗部材となることから、確実に紙幣の引抜き行為を防止することができる。
【0036】
また、上記したような回動片52は、紙幣搬送路5の幅方向に所定間隔おいて2箇所配設したことで、紙幣搬送経路上5に露出するシャッタ機構のための凹凸部分を極力少なくすることができ、紙幣搬送中にジャム等が生じることが防止される。
【0037】
前記紙幣読取手段20の下流側には、紙幣の通過を検知する紙幣通過検知センサ60が設けられている。この紙幣通過検知センサ60は、有効と判定されたエスクロ紙幣が、更に下流側に搬送されて、紙幣の後端を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号の発生に基づいて、上記したソレノイド54の通電が解除され(ソレノイドOFF)、駆動軸54aに設けられた付勢バネの付勢力によって駆動軸54aは突出方向に移動し、シャッタ機構を構成する回動片52は、紙幣搬送路を開放状態とするように回動駆動される。
【0038】
前記紙幣通過検知センサ60は、上述した紙幣検知センサ18と同様、光学式のセンサ(回帰反射型フォトセンサ)によって構成されており、上部フレーム2A側に設置されるプリズム60aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体60bによって構成される。もちろん、上記した紙幣通過検知センサ60は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0039】
なお、紙幣通過検知センサ60は、シャッタ機構50を開放するための信号を発生するものであることから、シャッタ機構50の開放のタイミングが別の手段、例えば、エスクロ紙幣を搬送してから所定時間後にシャッタ機構を開放する等、時間によって制御できれば、設置しない構成であっても良い。
【0040】
前記前記紙幣挿入口6の近傍には、紙幣が挿入された状態にあることを視認可能に報知する報知素子が設けられている。このような報知素子は、例えば、点滅するLED70によって構成することが可能であり、利用者が紙幣挿入口6に紙幣を挿入することで点灯し、紙幣の処理状態であることを利用者に知らせる。このため、利用者が誤って次の紙幣を差し込むことを防止することが可能となる。
【0041】
次に、上述した紙幣読取手段20で読取られた紙幣情報を基に、紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段において実行される紙幣の真贋判定方法について具体的に説明する。
【0042】
本実施形態に係る紙幣の真贋判定方法は、真券紙幣表面の印刷領域に、発光手段から所定波長の光を照射し、当該真券紙幣を透過した光の透過光データを基準データとして予め記憶しておき、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段から前記所定波長の光を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中、予め特定領域を定め、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記特定領域における前記光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を比較する第2の比較ステップと、を有し、これら第1、第2の比較ステップにおける比較結果に基いて、紙幣の真贋判定を行うようにしている。
【0043】
すなわち、紙幣表面の印刷領域中、例えば、可視光下と赤外光下とで得られる画像がそれぞれ異なるような領域を、予め特定領域として定めておき、この特定領域における赤外光の透過光データに他の領域から得られた透過光データよりも重み付けを施して、これら重み付けられたデータ同士を比較することによって、紙幣表面の全印刷領域における透過光データ同士の比較よりも、真贋判定の精度をより高くしている。
【0044】
このように、真券紙幣には、可視光下と赤外光下とで得られる画像がそれぞれ異なるような領域があり、例えば紙幣に設けられた透かし領域では、異なる波長の光でその領域の画像を見た場合(例えば、赤色光でその領域の画像を見た場合と赤外光下で見た場合)は画像が大きく異なって見えることに着目し、かかる領域を特定領域として、当該特定領域における赤外光による透過光データを取得し、この取得した透過光データと、予め取得していた真券の同じ特定領域における透過光データとをそれぞれ重み付けし、重み付けしたデータ同士で比較して、判定対象となる紙幣が真券であるか偽札であるかを、より精度高く真贋判定する。このとき、金種に応じて特定領域を定め、この特定領域における透過光データに所定の重み付けを設定することで、真贋判定精度のさらなる向上を図ることも可能となる。
【0045】
第1の比較ステップ、第2の比較ステップいずれにしても、基準データと取得したデータとを比較して真贋判定を行う際には、透過光データは濃淡値すなわち濃度値(輝度値)で表すことができることから、これを適宜の相関式に代入して演算した相関係数により判定を行うことができる。
【0046】
また、透過光データから例えばアナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で判定することも可能である。
【0047】
ところで、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、光の透過光データに加え、さらに、前記特定領域における光の反射光データを用いるようにしてもよい。例えば、前記した赤外光の透過光データに加え、さらに、前記各特定領域における赤外光の反射光データを用いることができる。
【0048】
すなわち、透過光データに加えて反射光データの比較も行うようにすることで、判定精度をより高めることができる。また、紙幣表面の印刷領域においては、透過光データよりも反射光データの方が比較しやすい領域が存在することも考えられ、そのような場合は、反射光データのみに重み付けした判定を行ってもよい。
【0049】
また、前記発光手段は異なる波長の光を照射可能であり、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記特定領域における異なる波長の光の透過光データ及び/又は反射光データをさらに用いるようにしてもよい。すなわち、例えば発光手段を、赤外光と赤色光とを照射可能に構成し、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記特定領域における赤外光の透過光データ及び/又は反射光データに加えて、赤色光の透過光データ及び/又は反射光データをさらに用いることができる。
【0050】
このように、赤外光と赤色光とでは波長が異なることから、波長の異なる複数の光による透過光データや反射光データを紙幣の真贋判定に用いると、真券と偽札との特定領域を通過する透過光や特定領域から反射する反射光では、透過率、反射率がそれぞれ異なるという性質を紙幣の真贋判定にさらに加味することができ、かかる方法を採用することにより、判定精度をより高めることができる。この場合も、透過光データや反射光データには重み付けを施しておくものとする。なお、それぞれ異なる波長の透過光や反射光から得られる受光データ毎に、それぞれ重み付けの度合いを異ならせることもでき、真贋判定精度をさらに向上させることも可能となる。
【0051】
また、前記特定領域としては、異なる波長の光を照射した際に得られるデータの異なる領域を含むものとしている。例えば前記した「透かし」領域などが考えられる他、潜像画像が印刷された領域やパールインキにより印刷された領域も含まれる。紙幣には、他にも異なる波長の光を照射した際に得られるデータの異なる領域があり、少なくとも二以上の領域を特定領域として設定することが真贋判定精度を高める上ではより好ましい。
【0052】
上記潜像画像は偽造防止技術の一であり、例えば我が国の現在の紙幣(日本銀行券)に施されているように、直視した場合は見えないが斜めから見ると現れるような画像である。日本銀行券では、直視した状態では何もない領域内に、お札を傾けるとNIPPONなどの文字が浮かび上がるようになっている。
【0053】
そして、このような潜像画像が印刷された領域を、近赤外線領域において所定範囲内にある波長の赤外光で透過させて撮影すると、隠れていた上記NIPPONの文字を認識することが可能であることを知見した。なお、本実施形態においては、一般的であり、かつコスト的にも安価な950nm近傍の波長の光の照射を行う光センサを用いて、所定範囲内にある波長としては950nm近傍の波長を用いたが、所定の範囲内にある波長としてはかかる波長に限定されることはなく、近赤外線領域に含まれる波長であれば、広範囲の中から適宜用いることができる。
【0054】
よって、偽造しにくい領域である潜像画像が印刷された領域において、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを判定するに際し、それぞれ上記範囲にある950nm近傍の波長の赤外光の透過光データ同士を用いて比較した場合、両者の違いがより顕著に表れることが考えられ、真贋判定に極めて有効となる。特に、透過光データに重み付けをして比較することにより、真券と偽札との違いがより明確になると期待できる。
【0055】
また、上記パールインキについても日本銀行券では偽造防止のために採用されており、お札を傾けると印刷箇所がややピンク色を帯びたパール光沢が浮かび上がるようになっている。上記パールインキによる印刷も偽造しにくいもので、パールインキにより印刷された領域について重み付けされた透過光データや反射光データを用いて判定対象紙幣と真券とを比較するとことで、真贋判定が容易かつ正確に行うことが可能となる。
【0056】
すなわち、パールインキは、天然の雲母に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートしたパール顔料を含むインキであり、屈折率の高い酸化チタンの層と、屈折率の低い雲母およびその周辺の媒体との境界における多重の反射光が干渉して独特なパール光沢を創り出すものなので、全く同様な反射光が得られるパールインキを製造することも容易でないことから、パールインキにより印刷された領域について重み付けすれば、真券と偽札との真贋判定が正確に行える。
【0057】
ところで、特定領域から取得した透過光データや反射光データには、紙幣表面の印刷領域中の他の領域から取得したデータよりも所定の重み付けをすることとしたが、所定の重み付けとして、例えば、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データに重み倍率を乗じることが考えられる。
【0058】
すなわち、赤外光の透過光データを用いて紙幣の真贋を判定する前記相関式において、取得したデータからの濃度値に重み倍率などを乗じ、演算される値の比較幅を大きくして判定精度をより向上させることもできる。
【0059】
重み倍率の値は様々に設定することができるため、データ取得後に重み倍率の値だけを変更するだけで、様々な鑑定に対応することも可能となる。
【0060】
また、前述したように、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データから生成した濃度(輝度)を示すアナログ波形で比較する場合であれば、波形を所定倍率で拡大させることが考えられる。この場合、拡大された波形同士の比較となるので、判定精度がより高まる。
【0061】
さらに、上記した特定領域から取得した透過光データや反射光データに、他の領域から取得したデータよりも所定の重み付けをする方法としては、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データのデータ量を、他の領域のデータ量よりも増加させる(あるいは特定領域における座標密度を他の領域よりもより密にする)ことも考えられる。
【0062】
相対的に言えば、特定領域以外のデータ量、あるいは座標密度を間引くこともでき、この場合、データ処理効率の向上も図ることが可能となる。また、特定領域毎に、データ密度を変えることも可能である。
【0063】
具体的に説明すると、例えば赤外光や赤色光の発光手段として、多数のLEDを線状に設けたLEDアレイなどが好適に用いられるが、かかるLEDアレイを用いて特定領域以外の領域に照射する場合は、LEDを間引いて駆動させ、特定領域では全LEDを駆動させることができる。このような手法により、省エネ効果が期待できる。
【0064】
なお、特定領域は紙幣表面領域上で座標として特定可能であることから、上述した紙幣搬送機構8による紙幣の搬送速度を制御して、特定領域においては他の領域よりも搬送速度を落とし、透過光データや反射光データの量を増加させることも可能である。
【0065】
具体的に、紙幣識別手段は、以下の構成が考えられる。
すなわち、紙幣識別手段は、上述した紙幣搬送機構8により搬送される紙幣に光を照射するとともに、照射されて前記紙幣を透過した透過光及び前記紙幣から反射した反射光を受光する紙幣読取手段を構成し、前記紙幣表面の印刷領域内に定められた特定領域を検知する光センサによって検知した受光データに重み付けを施す重み付け手段と、紙幣の真贋を判定する真贋判定部と、を備え、前記真贋判定部は、前記特定領域を含む真券紙幣表面の全印刷領域における基準受光データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した前記基準受光データと、前記光センサにより取得した判定対象となる紙幣表面の全印刷領域における受光データとを比較する第1の比較手段と、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記各特定領域における重み付けられた受光データ同士を比較する第2の比較手段とを有する。
【0066】
この場合、真贋判定部は、CPUと、記憶手段としてのROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータから構成することができる。前記ROMには、上述した真贋判定方法をこのマイクロコンピュータに実行させる判定プログラムと、基準データとなる真券紙幣における特定領域の受光データ(例えば、赤外光による透過光データ及び反射光データ、赤色光による透過光データ及び反射光データ)を含む、紙幣表面の全印刷領域における受光データと、特定領域における受光データに重み付けを施すためのプログラムとを予め記憶させておくことができる。
【0067】
そして、判定対象となる紙幣の受光データを、光センサにより取得してRAMに記憶させ、この受光データと基準データとを、第1の比較手段及び第2の比較手段で比較することにより真贋判定を行う。なお、第1の比較手段及び第2の比較手段としては、それぞれ別のハード構成とするのではなく、前記真贋判定部がその機能を共通に担うものとすることができる。
【0068】
また、発光手段としては、上述したようなLEDアレイを用いることができ、本実施形態では、赤外光を発光する第1の発光アレイと、赤色光を発光する第2の発光アレイとを配設している。
【0069】
上述した構成の紙幣識別手段を用いることにより、たとえ紙幣の全印刷面における受光データ同士の比較で類似していても、重み付けされた特定領域における受光データ同士の比較によって、精度よく真贋判定を行うことができる。なお、この場合、金種毎に重み付けを変えることもできる。
【0070】
また、受光データとして、透過光データに加えて反射光データを用いたり、さらに、紙幣に照射する光を赤外光単独とする他、赤色光を追加したりすることにより、各受光データ同士の比較において、一つでも真券と判定できるレベルを逸脱している場合は偽札と判定するようにして、判定精度を著しく向上させることができる。
【0071】
また、真券の基準データは、記憶手段に予め記憶させてもよいが、例えば、真券を、紙幣搬送機構8を通して搬送させながら受光データを取得し、これを基準データとして記憶させることもできる。したがって、真贋判定装置毎に、対応した最適化された基準データを記憶させることも可能となる。また、移動平均などの手段を用いて、基準データを更新させるようにすれば、ハードウェアの経時劣化に対応するために、随時白補正などを行わなくとも、基準データを出力変動に適応して最適化させることが可能である。
【0072】
ところで、上述した紙幣識別手段の真贋判定方法では、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中に予め特定された特定領域における前記赤外光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を判定対象となる紙幣と前記真券紙幣との間で比較する第2の比較ステップとに区分して説明したが、区分することなく同時に比較することもできる。
【0073】
例えば、重み付けするための関係式を含む比較用の相関式が予め組み込まれた真贋判定プログラムを用いて、真券紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと、反射した赤色光の反射光データにおいて、特定領域に予め重み付けしたものを基準データとして記憶装置内に格納しておく。
【0074】
一方、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データ、あるいは反射した赤色光の反射光データから、前記特定領域部分の重み付けも平行して行い、前記基準データと比較する。このとき、データは、例えば輝度値(濃度値)を表す波形を生成して、この波形で比較することもできる。
【0075】
すなわち、予め特定領域を定めた真券紙幣の印刷領域に、発光手段から所定波長の赤外光を照射し、当該真券紙幣を透過した赤外光の透過光データのうち、前記特定領域を透過した透過光データに所定の重み付けしたデータを基準データとして予め記憶しておく一方、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段から前記所定波長の赤外光を照射し、当該紙幣を透過した赤外光の透過光データのうち、前記特定領域を透過した透過光データに、前記真券と同じ重み付けをして、この重み付けされた前記特定領域における透過光データを含む全透過光データと前記基準データとを比較することにより真贋を判定する紙幣の真贋方法とする。
【0076】
上記の方法であっても、極めて高精度での真贋判定が可能となる。この方法を実現するための紙幣識別手段は、紙幣搬送機構8により搬送される紙幣に光を照射するとともに、照射されて前記紙幣を透過した透過光及び前記紙幣から反射した反射光を受光する光センサと、前記紙幣表面の印刷領域内に定められた特定領域における前記光センサにより検知した受光データに重み付けを施す重み付け手段と、上述した真贋判定方法を実行する真贋判定部とを備え、この真贋判定部は、前記特定領域を含む紙幣表面の全印刷領域における基準データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した前記全印刷領域における基準データと、前記光センサにより取得した判定対象となる紙幣表面の全印刷領域における受光データとを比較するとともに、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記各特定領域における重み付けられた受光データ同士を比較することのできる比較手段とを有することで構成することが可能である。
【0077】
上述したような紙幣の真贋方法を実行する紙幣識別手段の構成について、図11から図14を参照しながらより具体的に説明する。
【0078】
これらの図において、図11は、図1乃至図4に示した紙幣処理装置の構成を模式的に示した図、図12は、紙幣処理装置の制御系を示すブロック図、図13は基準データ記憶部内に格納された基準データテーブルの説明図、そして、図14は紙幣の表裏面を示す模式的説明図である。
【0079】
上記した紙幣読取手段20は、上部フレーム2A側に配設され、搬送される紙幣の上側に赤外光及び赤色光を照射可能とした第1発光部23を具備した発光ユニット24と、下部フレーム2B側に配設された受発光ユニット25とを有している。この受発光ユニット25は、紙幣を挟むようにして第1発光部23と対向する受光センサを具備した受光部26と、受光部26の紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、赤外光及び赤色光を照射可能とした第2発光部27とを有している。
【0080】
前記受光部26と対向配置された第1発光部23は透過用の光源として機能する。この第1発光部23は、図2に示すように、一端に取り付けたLED素子23aからの光を、内部に設けた導光体23bを通して発光する合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。このような構成の第1発光部は、受光部26(受光センサ)と平行にライン状に配設されており、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して全体的に均一に照射することが可能となる。また、このような第1発光部23及び受光部26(受光センサ)は、紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されているか否かを識別する付着物識別手段としての機能を備えている。すなわち、紙幣に、例えば、糸や紐等の付着物が接続され、かつそれが紙幣挿入口側に延びていれば、受光部26においてその光量変化を検知することができ、紙幣の搬送路幅方向全体に亘って付着物の接続を検知することが可能となる。
【0081】
前記受発光ユニット25の受光部26は、紙幣搬送路5に対して交差方向に伸延し、かつ受光部26に設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。なお、前記受光センサは、受光部26の厚み方向の中央に複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にセルフォックスレンズアレイ26aを配置した所謂ラインセンサとして構成されている。このため、真贋判定対象となる紙幣に向けて照射された第1発光部23や第2発光部27からの赤外光や赤色光の反射光あるいは透過光を受光し、受光データとして、その輝度に応じた濃淡データやこの濃淡データから二次元画像を生成することが可能となっている。
【0082】
また、受発光ユニット25の第2発光部27は反射用の光源として機能する。この第2発光部27は、第1発光部23と同様、図3に示すように、一端に取り付けたLED素子27aからの光を、内部に設けた導光体27bを通して全体的に均一に照射可能とした合成樹脂製の矩形棒状体によって構成されている。この第2発光部27についても、受光部26(受光センサ)と平行にライン状に配設して構成されている。
【0083】
前記第2発光部27は、45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部26(受光センサ)で受光するように配設されている。この場合、第2発光部27から照射された光が受光部26(受光センサ)へ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、反射光を確実に受光可能な範囲であれば適宜設定することができる。このため、第2発光部27、受光部26の配置については、紙幣処理装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部27については、受光部26を挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部27については、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0084】
上記した受発光ユニット25は、紙幣搬送路5に露出することから、その表面部分(搬送面5aと略面一になる部分)の紙幣搬送方向の両端には、図2に示すように、凹凸部25aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。また、発光ユニット24も受発光ユニット25と同様、その表面部分の紙幣搬送方向の両端に、図2に示すように、凹凸部24aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。
【0085】
なお、上記した発光ユニット24、受発光ユニット25の構成や配置などは、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変形することが可能である。
【0086】
上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50は、制御手段30によって、その駆動が制御される。
【0087】
制御手段30は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御回路基板100を備えており、この制御回路基板上には、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、基準データ記憶部116とが実装されている。
【0088】
前記ROM112には、上述した駆動モータ10、ソレノイド54、LED70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定プログラム等の各種プログラム、恒久的なデータが記憶されており、CPU110は、ROM112に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート120を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣識処理装置の動作制御を行う。すなわち、CPU110には、I/Oポート120を介して、駆動モータ駆動回路125(駆動モータ10)、ソレノイド54、LED70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM112に格納された作動プログラムに従って、CPU110からの制御信号により動作が制御される。また、CPU110には、I/Oポート120を介して、紙幣検知センサ18からの検知信号、及び紙幣通過検知検知センサ60からの検知信号が入力されるようになっており、これらの検知信号に基づいて、駆動モータ10の正転/逆転駆動制御、LED70の点滅制御、ソレノイド54の駆動制御が行われる。
【0089】
前記RAM114には、CPU110が作動する際に用いるデータやプログラムが記憶されており、基準データ記憶部116には、紙幣の真贋判定を行うときに用いられる基準データ、すなわち、真券紙幣の全印刷領域から取得した濃淡データが、赤外光の透過光、反射光、及び赤色光の透過光、反射光ごとの基準受光データとして記憶されている。なお、本実施形態では、基準データを専用の基準データ記憶部116に記憶させているが、これをROM112に記憶させておいても良い。
【0090】
CPU110は、I/Oポート120を介して、上記した発光ユニット24における第1発光部23と、受発光ユニット25における受光部26及び第2発光部27が接続されており、これらは、CPU110、ROM112、RAM114、基準データ記憶部116と共に紙幣の真贋判定部150を構成しており、紙幣処理装置1における真贋判定に必要な動作制御を行う。
【0091】
また、CPU110は、I/Oポート120を介して紙幣処理装置1が組み込まれる遊技媒体貸出装置の制御部や外部装置のホストコンピュータ等の上位装置200に接続されており、上位装置に対して、各種信号(紙幣に関する情報、警告信号等)を送信するようにしている。
【0092】
上記した紙幣の真贋判定部150における基準データ記憶部116の所定領域には、図13に示すように、赤外光の透過光に係る基準データ(a)、赤外光の反射光に係る基準データ(b)、赤色光の透過光に係る基準データ(c)、赤色光の反射光に係る基準データ(d)を格納した4種類の基準データ格納テーブルが記憶されている。
【0093】
より具体的に説明すると、基準データ格納テーブルには、赤色光の反射光による濃淡データと透過光による濃淡データ、及び赤外光の反射光による濃淡データと透過光による濃淡データが、それぞれ7種類の金種(新紙幣の千円、五千円、一万円、旧紙幣の千円、二千円、五千円、一万円の7金種)について、かつ紙幣が表面を上向きにした場合と裏面を上向きにした場合、そして、紙幣の長手方向の左右いずれか一方(本実施形態では右方向とする)の向きで挿入された場合についての7×2×1=14通りの濃淡データが基準データ格納テーブルに記憶されている。そして、真贋判定時には、紙幣の挿入方向を判定し、挿入方向が左方向であれば、記憶された基準データを反転して適用するようにしている。勿論、図13で(左向)と示したように、紙幣の長手方向の左向きで挿入された場合の基準データを基準データテーブルに記憶しておいても良い。この場合、7×2×2=28通りの濃淡データが基準データ格納テーブルに記憶されることになる。なお、濃淡データを二次元画像化して記憶しておくこともできる。
【0094】
さらに、本実施形態では、紙幣の表面における印刷領域中に予め定めた、可視光である赤色光下と赤外光下で視認性が異なる特定領域から取得したデータを特定基準データとして基準データ記憶部116に記憶している。
【0095】
ここで上記特定領域について説明する。図14に示すように、我が国の紙幣、すなわち日本銀行券には偽造防止技術として様々な技術が施されている。例えば、図14(a)に示すように紙幣Mの表面には、繊維の厚みを加減した透かし領域40aや、直視した場合は見えないが斜めから見ると現れる潜像画像領域40bや、紙幣を傾けると印刷箇所がややピンク色を帯びたパール光沢が浮かび上がるパールインキによる特殊印刷領域40c、さらには、赤外光は透過するが赤色光などは透過しない赤外光透過領域40dが形成され、また、図14(b)に示すように、紙幣の裏面についても前記透かし領域40aや潜像画像領域40bが形成されている。
【0096】
上記した透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、及び赤外光透過領域40dは、偽造が困難な領域とされており、真券と偽札とでは、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40cにおいては赤外光や赤色光の反射光や透過光の輝度に大きな違いが生じるし、赤外光透過領域40dでは赤色光は透過しないという特性を生じることから紙幣の真贋判定に有用である。本実施形態では、これらを特定領域に設定し、紙幣上における各特定領域の位置を座標により規定している。特に、潜像画像領域40bにおいては、透過光により潜像画像を認識することが難しかったが、本実施形態で用いた波長が950nm近傍の赤外光によれば画像を認識することができるので、真贋判定の要素として有効に利用することができる。
【0097】
なお、旧紙幣においては潜像画像領域40bや特殊印刷領域40cは存在しないことから、少なくとも、新旧いずれも備えている透かし領域40aを真贋判定に用いるようにしている。
【0098】
また、本実施形態においては、潜像画像領域40bに波長が950nm近傍の赤外光(波長が920nm〜980nmにある近赤外線であり、好ましくは940nm〜960nmの範囲にある近赤外線)を透過させて撮影すると、隠れていた画像が認識できることを発見したことから、新紙幣については、この潜像画像領域40bについても特定領域として真贋判定に用いるようにしている。したがって、第1発光部23及び第2発光部27から照射される赤外光は950nmの波長のものとしている。
【0099】
このように、本実施形態における紙幣処理装置1の基準データ記憶部116には、基準データと、この基準データから前記特定領域について抜き出された濃淡データからなる特定基準データとが予め記憶されていることになる。なお、特定基準データについても、赤外光の透過光に係る特定基準データ、赤外光の反射光に係る特定基準データ、赤色光の透過光に係る特定基準データ、赤色光の反射光に係る特定基準データがそれぞれテーブル化されて基準データ記憶部116の所定領域に記憶されている。
【0100】
上記した構成の紙幣処理装置1において、本実施形態では、真券紙幣と判定対象となる紙幣との間で、紙幣全体の濃淡データを比較するのに加え、上述した特定領域における受光データ(透過光データや反射光データ)から得られた濃淡データに重み付けをして、この重み付けされた濃淡データ同士を比較することにより、精度良く真贋判定を行えるようにした点に特徴がある。
【0101】
すなわち、特定基準データ(特定領域を透過した赤色光及び赤外光の透過光データから生成した濃淡データと、特定領域で反射した赤色光及び赤外光の反射光データから生成した濃淡データ)に、それぞれ後述する重み付けを施し、紙幣の真贋判定時には、判定対象となる紙幣から取得した全印刷領域における濃淡データと前記基準データとを比較するとともに、さらに、判定対象となる紙幣の濃淡データから特定領域における濃淡データを取り出し、これに特定基準データ同様の重み付けをして、共に重み付けされた特定濃淡データと前記特定基準データとの間でさらに比較するのである。
【0102】
つまり、本実施形態に係る紙幣処理装置1では、判定対象となる紙幣が紙幣搬送口から投入されて搬送されると、紙幣の表面における印刷領域に、前記第1発光部23及び第2発光部27からから、真券紙幣に照射した同波長の赤外光と赤色光とを照射し、当該紙幣を透過した赤外光及び赤色光の透過光データ及び反射光データから得た4種類の濃淡データをRAM114にそれぞれ展開して、これらと基準データ記憶部116に記憶された4種類(赤外光の透過光及び反射光、赤色光の透過光及び反射光)の基準データとをそれぞれ比較するとともに、前記特定領域における赤外光及び赤色光の各透過光データ及び反射光データから得た特定濃淡データに前記真券紙幣と同じ重み付けをして、この重み付けされた4種類の特定濃淡データをRAM114に展開し、これらと4種類の特定基準データとをそれぞれ1対1で対応させて順に比較し、比較結果が1つでもNGとなれば偽札であると判定するようにしている。
【0103】
ここで、上記した紙幣の真贋判定部150において、実際に紙幣の真贋の判定を行う処理手順を、図15〜図18を参照しながら説明する。
【0104】
図15は紙幣判定処理の手順を示すメインフローチャート、図16は紙幣に赤外光及び赤色光を照射して透過光及び反射光を受光するタイミングを示す紙幣スキャンタイミングチャート、図17は金種及び紙幣搬送方向を判定する金種・方向判定処理を示すフローチャート、そして、図18は真贋判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0105】
なお、各フローチャートにおける処理は、ROM112に格納された真贋判定プログラムにより実行されるもので、この真贋判定プログラムは、CPU110に対して、判定対象となる紙幣の表面の印刷領域に、発光手段である第1発光部23及び第2発光部27から前記所定波長の赤外光を照射させるステップと、当該紙幣を透過した赤外光の透過光データと、予め記憶している基準データとを比較する第1の比較ステップと、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の各特定領域における赤外光の透過光データに所定の重み付けをするステップと、この重み付けられたデータ同士を比較する第2の比較ステップと、第1、第2の比較ステップにおける比較結果に基いて、紙幣の真贋判定を行うステップとを実行させる構成となっている。
【0106】
最初、紙幣処理装置1のCPU110は、紙幣を検出したか否かを判定する(ステップS01)。これは、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知して検知信号を発したか否かで判定され、紙幣検知センサ18が紙幣を検出すると、紙幣の真贋判定処理が実行される。
【0107】
次いで、CPU110は、第1,第2発光部23,27に照射信号を出力し、各発光部23,27から可視光線である赤色光と赤外光を出力させて紙幣に向けて照射させ、紙幣の表面の印刷領域全体の濃淡データの読み取り処理を実行し、二次元画像を生成する(ステップS02)。
【0108】
このとき、第1,第2発光部23,27は、紙幣搬送路5に対して交差方向に延びるライン状に配置されているので、第1,第2発光部23,27から出力される光は、紙幣の幅一杯に照射されることになる。そして、照射された赤色光と赤外光は、紙幣の全面から透過、あるいは反射して、それらの透過光及び反射光が受光部26の受光センサに入力する。上述したように、受光センサもラインセンサとしていることから、各光線の反射光及び透過光をその長さ全体で検出し、濃淡データを読み取ることが可能となる。
【0109】
また、本実施形態における濃淡データ読み取り処理においては、図16に示すように、第1発光部23及び第2発光部27の各赤色光と赤外光、すなわち赤色光と赤外光の透過用の光源と、赤色光と赤外光の反射用の光源からなる4つの光源が一定の適宜間隔で点灯、消灯を繰り返し、しかも、各光源の位相は重なることがなく、2つ以上の光源が同時に点灯することがないようにしている。換言すれば、ある光源が点灯しているときには、他の3つの光源は消灯していることになる。
【0110】
したがって、本実施形態のように、1つの受光部26であっても、各光源の光を一定間隔で検出し、赤色光の透過光及び反射光、赤外光の透過光及び反射光による紙幣の印刷領域の濃淡データからなる画像を読み取ることができる。
【0111】
続いて紙幣に付着物が接続されているか否かの検出を行う(ステップS03)。これは、ステップS03で濃淡データの読み取り処理が終了した後、引き続き紙幣のエスクロ位置(本実施形態では、ラインセンサの位置から紙幣後端が下流側13mm程度、搬送された位置に設定される)への搬送処理が行われるが、この処理中、ラインセンサである受光部26において、紙幣の後端に糸や紐等の付着物が接続されているか否かを検出することで行われる。上述したように、ラインセンサは、紙幣搬送路の全幅、すなわち紙幣の幅全体を検知するために、付着物がどの位置に接続されていても、それを検出することが可能である。従って、このような構成では、紙幣の真贋を識別する精度を向上することができると共に、紙幣の搬送路幅方向のいずれかの位置に糸や紐等の付着物を接続しても、その付着物を異物として確実に検知することが可能となる。紙幣の後端が通過した後、付着物が検出されていれば、紙幣判定NG処理を実行する(ステップ03;Yes、ステップS10)。なお、このステップS03における付着物が接続されているか否かの検出は、後述するステップS07における紙幣の真贋判定処理に先立って実行され、付着物による識別結果を優先して制御するようにしている。この場合、紙幣識別手段による識別結果より、付着物識別手段による識別結果を優先して制御するため、紙幣識別手段により真券と識別された後の紙幣搬送中においても、不正行為を確実に防止することが可能となる。
【0112】
次いで、CPU110は金種・方向判定処理を行い、挿入された紙幣の金種(例えば、新紙幣の千円、五千円、一万円、旧紙幣の千円、二千円、五千円、一万円の7金種)と、挿入方向(紙幣の表面が上か下か、またそのときの紙幣が挿入された向きにより区別される4方向)を判定する(ステップS04)。なお、この金種・方向判定処理については後に詳述する。
【0113】
次に、CPU110は、金種及び搬送方向を判定できたか否かを判断し(ステップS05)、例えば、紙幣が著しく汚損していたり、欠損していたりして、判定不可であった場合(ステップS05のNo)、処理をステップS10に移して紙幣判定NG処理を行う。この紙幣判定NG処理では、CPU110は、駆動モータ駆動回路125に駆動モータ10を逆回転させる信号を出力し、紙幣を紙幣挿入口6へと強制的に戻して、再びステップS01に移行する。
【0114】
一方、金種及び方向を判定できた場合(ステップS05のYes)、一定範囲内で取得した二次元画像を動かして基準データとの相関係数が最大になるように位置補正する(ステップS06)。
【0115】
そして、ステップS07で紙幣の真贋判定を行う。この真贋判定については後に詳述するが、簡単に説明すると、先ず、取得データと基準データとの間の相関係数と差分絶対値を、4光源(赤外透過、赤外反射、赤色透過、赤色反射)それぞれについて演算する。次に、特定領域を抽出して重み付けし、重みを付けた相関係数を4光源について演算する。さらに、透過データについて、透かし領域40aのみを抜き出し、内部で微分係数をとり、その大きさを演算する。最後に透かし領域40aにおける特定基準データとの間で相関係数を演算する。そして、演算した全ての相関係数が全て定められた範囲内にあれば真券、1つでも範囲外であれば偽札と判定する。
【0116】
このとき、多数の真券紙幣をサンプルとして用い、各数値の平均や分散、共分散を予め求めておくことにより、マハラノビスの距離を使った識別も考えられる。これは、演算した数値を個別にみるのではなく、多変量解析を用いて総合的に判断するものである。
【0117】
なお、真贋の判定に要する時間は、0.7s程度、紙幣がエスクロ位置まで搬送される時間が0.1s程度であり、エスクロ位置において、紙幣の真贋判定をしている時間は、0.6s程度である。また、この紙幣の真贋判定処理前に、上記した付着物が接続されているか否かを識別するため(ステップS03)、真贋判定後、エスクロ位置まで紙幣を搬送中でも確実に不正行為を防止することができる。
【0118】
そして、真贋判定結果で真券であると判定された場合(ステップS08のYes)、紙幣判定OK処理を実行する(ステップS09)。この処理は、紙幣がエスクロ状態となった後に行われ、例えば、両替、プリペイドカード販売、記録媒体への書き込み等、各種の処理が該当する。
【0119】
上記したステップS08の処理において、紙幣が偽札であると判定された場合、また、上記したステップS03の処理において、付着物が接続されていると判定された場合、紙幣判定NG処理が実行されるが(ステップS10)、この場合の紙幣判定NG処理では、先にステップS05から移行したときとは異なる処理を行うようにしても良い。
【0120】
例えば、紙幣が偽札であると判定された場合、或いは、付着物が接続されていると判定された場合、挿入された紙幣を返却することなく収容した状態にとどめ、上位装置200に対して警報信号を出力するようにしても良い。このような構成では、警報信号が発信された際、その状態を音や光により報知することで、利用者の不正行為を早期に発見することが可能になる。また、不正目的で紙幣に、糸や紐等の付着物が接続されていることが検知された場合、制御手段は、紙幣処理装置の上位装置(例えば、紙幣処理装置を組み込んでいるサービス/商品販売機、発券機、それらを管理するホストコンピュータ等)に向けて警報信号を発信するようにしても良い。この場合、上位装置は、警報信号を受信した際、その状態を音や光により報知することで、利用者の不正行為を早期に発見することが可能になると共に、そのような不正行為を抑止することが可能となる。或いは、上記したような場合、最初の2回は、単に紙幣を返却するに留め、同一の状態が3回続けて発生した場合、上位装置200に対して警報信号を出力するようにしても良い。これにより、真券であるものの、余計な付着物が付着していたり接続されていたため、真券と判定されなかったような場合があっても、利用者が付着物を除去することで真券であると判定できることがあり、無用なメンテナンスを行う手間を省き、利用者に対しても不快感を与えることが防止される。
【0121】
次に、上記したステップS04の金種・方向判定処理について詳述する。なお、紙幣の真贋判定部150における基準準データ記憶部116には、4種類の光(赤外光の透過光、反射光、赤色光の透過光、反射光)ごとの7金種、右方向の基準データが記憶されていることは前述したとおりである。
【0122】
図17に示すように、CPU110は、先ず、搬送されている真贋判定対象となる紙幣の全面、すなわち全印刷領域から得た濃淡データから生成された二次元画像から、例えば赤外光の透過光データに係るものを選定する(ステップS11)。
【0123】
次いで、7金種・4方向の28通り(紙幣の挿入方向が左向の場合は右向きのデータを反転させている)の取得データと基準データとの類似度をチェックする(ステップS12)。具体的には、類似度を示す指標として下記の式で表される相関係数Rを用いる。
【0124】
【数1】
なお、式中、[i,j]は紙幣の座標であり、この紙幣座標[i,j]における判定対象となる紙幣からの取得データの二次元画像の濃度値(輝度値)をf[i,j]、基準データにおける濃度値をs[i,j]、取得データにおける平均濃度をF、基準データの平均濃度をSとする。
【0125】
相関係数Rは、−1〜+1までの値をとり、+1に近い方が、類似度が高いと判定される。そして、7金種の各4方向の基準データとの相関係数を全て演算し、最も高い値を示した金種と方向とを、挿入された判定対象となる紙幣2の金種・方向と判定する。
【0126】
なお、本実施形態では、予め、紙幣表面の全印刷領域における濃淡データを基準データとして記憶しているので上述の方法としているが、かかる方法によらず、金種・方向を識別する程度であれば、全印刷領域における識別でなくても良い。例えば、取得したデータの長辺3方向の3ライン(紙幣2の中央、上辺から約9mm、下辺から約9mm)で基準データとの相関係数を演算し、3ラインの平均が最も高いものを真贋判定対象となる紙幣2の金種・方向と判定してもよい。この場合、判定が簡易となるので判定時間の短縮も可能である。
【0127】
次に、CPU110は、ステップS12の処理における判定を行い(ステップS13)、判定結果により適合金種が存在すれば、後の真贋判定処理のために、適合した金種・方向を決定する識別コードをセットして(ステップS14)、ステップS04に処理を移す。他方、判定結果により適合金種が無いと判定した場合は、適合紙幣無しの識別コードをセットして(ステップS15)、ステップS04に処理を移す。
【0128】
次に、図15におけるステップS06の真贋判定処理について詳述する。
【0129】
図18に示すように、CPU110は、4種類の光(赤外光の透過光、反射光、赤色光の透過光、反射光)それぞれについて、判定対象となる紙幣2から取得した濃淡データと、予め記憶していた基準データとの間で、紙幣表面の全印刷領域での類似度を演算する(ステップS21)。このとき、相関係数Rと下記に示す式で表される差分絶対総和SUMを用いる。
【0130】
【数2】
なお、式中、[i,j]は紙幣の座標であり、この紙幣座標[i,j]における判定対象となる紙幣からの取得データの二次元画像の濃度値(輝度値)をf[i,j]、基準データにおける濃度値をs[i,j]とする。
【0131】
次いで、相関係数Rと差分絶対総和SUMが許容範囲にあるか否かを判定する(ステップS22)。このとき、相関係数Rの値が+1に近いほど、また、差分絶対総和SUMが0に近いほど、基準データに近い。そして、許容範囲外であれば(ステップS22のNo)、偽札と判定し、偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS24で相関係数Rの値が許容範囲であれば(ステップS22のYes)、処理をステップS23に移す。
【0132】
ステップS23では、特定領域から抽出したデータと特定基準データとの間に大きな重みを付けて相関係数RW+を演算する。なお、ここで設定されている特定領域は、潜像画像領域40bや特殊印刷領域40cであり、これらの領域は、赤色光と赤外光とにおける濃淡が異なる領域であり、赤色光と赤外光とで、負の相関がある。また、本実施形態では、予め演算された重みマップを用意して、下記に示す重み付きの相関係数RW+を演算するようにしている。
【0133】
【数3】
このとき、赤色光と赤外光の透過光については透過光用の重みマップを、また、反射光については反射用の重みマップを用いて重み付き相関係数を演算する。
【0134】
また、特定領域を規定する各座標での重みw[i,j]は、赤色光と赤外光との特定基準データから下記で表される式で決定することができ、この重みw[i,j]の決定を、真贋判定する都度計算するようにしても良い。
【0135】
【数4】
なお、式中、[i,j]は紙幣の座標であり、この紙幣座標[i,j]における判定対象となる紙幣の赤色光の特定基準データの濃度値(輝度値)をsf[i,j]、赤外光の特定基準データにおける濃度値をSir[i,j]、赤色光の特定基準データの平均濃度をSr、赤外光の特定基準データの平均濃度をSirとする。また、cは重み倍率係数であり、適宜に決定した値である。
【0136】
そして、相関係数RW+が許容範囲にあるか否かを判定する(ステップS24)。重み付き相関係数RW+においても−1〜+1の値をとるので、+1に近いほど特定基準データに近いと判定される。そして、許容範囲外であれば(ステップS24のNo)、偽札と判定して判定結果は偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS24で許容範囲と判定されれば(ステップS24のYes)、処理をステップS25に移す。
【0137】
ステップS25では、CPU110は、判定対象となる紙幣から取得したデータから透かし領域40aを抜き取り、その濃値度を演算する。すなわち、予め、透かし領域40aを白、それ以外を黒にしたマスクを金種ごとに用意しておき、取得した二次元画像をマスクと掛け合わせることにより、透かし領域40aだけを抜き出せるのである。
【0138】
そして、透かし領域40aの内部に何らかの画像が存在するか否かを調べるために、下記の式で表されるグラディエント(勾配)の大きさg[i,j]を演算し、これを透かし領域40a全体に亘って合計したものを演算する。
【0139】
【数5】
なお、座標[i,j]における取得した二次元画像の濃度値をf[i,j]とする。例えばコピーなどで偽造した偽札には透かし部分がない場合があり(透かし領域40aにおける濃度が比較的に平坦なものを含む)、その場合はこの濃度値が低くなる。
【0140】
そして、CPU110は、透かし領域40aの濃度が許容範囲にあるか否かを判定し(ステップS26)、許容範囲外であれば(ステップS26のNo)、偽札と判定して判定結果は偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS26で許容範囲と判定されれば(ステップS26のYes)、処理をステップS27に移す。
【0141】
次いで、CPU110は、取得した透かし領域40aの二次元画像と、基準データから生成した二次元画像との間の類似性をみるために相関係数Rを演算する(ステップS27)。
【0142】
次いで、CPU110は、相関係数Rが許容範囲にあるか否かを判定し(ステップS28)、許容範囲外であれば(ステップS28のNo)、偽札と判定して判定結果は偽札であるというコードをセットし(ステップS30)、ステップS07に処理を移す。一方、ステップS28で許容範囲と判定されれば(ステップS28のYes)、処理をステップS29に移し、判定結果が真券であるというコードをセットし(ステップS29)、処理をステップS07に移す。
【0143】
ところで、上述した中で、透かし領域40aについての判定においては、前処理として、下記に示す明るさ補正と位置補正を実施しておくことが望ましい。
【0144】
透かし領域40aには、縦若しくは横方向への折り目が入っていることが多く、縦方向に明るさのムラが生じることもあるため、透かし領域40aを含む小矩形領域において、縦、横の濃淡累計分布が均等になるように、取得した二次元画像、予め記憶していた基準画像共に明るさ補正を実施する。なお、紙幣の全印刷領域における比較においては、折り目やムラの影響がさほど大きくないために無視しても構わない。
【0145】
また、透かし領域40a内の画像(例えば人物)の位置には、紙幣ごとに固体差があり、これを補償するために、所定範囲内で8近傍探索による位置補正を行い、相関係数が最大になる場所を求めておく。
【0146】
このように、本実施形態では、演算した数値を用いた複数の判定ステップがあり、しかも、特定領域に重み付けをしての判定も併用された中で、全ての数値が許容範囲内に入っているときのみ真券と判定され、1つでも範囲外の数値が演算されれば偽札と判定されることになる。従って、真贋判定精度が極めて高いものとなり、高度な偽造技術に対しても対応可能となり、次々と新手の偽造技術に対しての開発に負われることもなく、コストパフォーマンスにおいても優れた紙幣の真贋判定方法、及び紙幣の真贋判定装置となすことができる。
【0147】
次に、上記した紙幣処理装置1において、紙幣を搬送処理する駆動モータ10及びソレノイド54の駆動制御手順について、図19のフローチャートを参照して説明する。
【0148】
最初、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知してON状態になると(ステップS51のYes)、駆動モータ10が正転駆動されると共に、LED70が点灯される(ステップS52)。これにより、搬送ローラ対12,13,14が紙幣挿入方向に回転駆動されて、紙幣を装置内に搬送すると共に、利用者に対して、紙幣処理中であることを知らせ、追加の紙幣挿入が防止される。
【0149】
紙幣の装置内への搬送により、紙幣が紙幣読取手段20の領域を通過する際、上述した図15から図18で示した手順に従い、紙幣判定処理が実行される。また、この紙幣判定処理が行われている段階、すなわち紙幣判定処理と平行してシャッタ機構50の閉塞処理が行われる(ステップS53)。
【0150】
本実施形態では、シャッタ機構50の回動片52の下流側に設置されている紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)、ソレノイド54が通電され、これにより、揺動部材57、セクターギヤ57G、ギヤ55G、シャフト55を介して回動片52が回動駆動され、図9に示すように、搬送面5aから突出して紙幣挿入口6を閉塞する。
【0151】
引き続き、ステップS53の紙幣判定処理において、紙幣判定NG処理があるか否かが判定される(ステップS54)。紙幣判定NG処理があると、その段階で駆動モータ10の逆転駆動処理が実行され、紙幣を紙幣挿入口側に向けて差し戻す(ステップS55)。この際、シャッタ機構50の閉塞処理が既に実行されているため、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませ、紙幣が排出方向に搬送できるようにする(ステップS56)。
【0152】
そして、紙幣が紙幣挿入口側に向けて差し戻されている状態において、駆動モータが所定量だけ逆転駆動された際、駆動モータ10の逆転駆動を停止する(ステップ57)。なお、この所定量は、紙幣の後端が搬送ローラ対12から外れた状態となる程度の回転数に設定される。このとき、紙幣は、紙幣挿入口6から引き出せる程度に排出されており、ユーザが紙幣を引き出して、紙幣の後端が紙幣検知センサ18によって検知された段階(ステップS58)、すなわち紙幣検知センサ18がOFFになった段階でLED70を消灯して処理が終了する(ステップS59)。
【0153】
なお、紙幣判定NG処理では、単に紙幣を紙幣挿入口6から差し戻す以外にも、上述したように、紙幣を差し戻すことなく、上位装置に対して警告信号を送信するように処理しても良い。また、上述したように、紙幣判定NG処理における状態をカウンタにセットしておき、紙幣が偽物であること、及び付着物が接続されていることが連続してカウントされた場合、警告信号を送信するようにしても良い。
【0154】
上記したステップS54において、紙幣判定NG処理が無かった場合、エスクロ待機処理が実行される(ステップS60)。本実施形態では、エスクロ位置は、ラインセンサから下流側13mm程度に紙幣後端が搬送される位置であり、このエスクロ待機処理では、駆動モータ10の駆動が所定時間停止されるか、駆動力の伝達がOFFにされる。
【0155】
このエスクロ待機処理において、何らかの理由で返金指令が発生した場合は、駆動モータ10を逆転駆動することで、挿入された紙幣を直ちに紙幣挿入口6から返却できるようにする(ステップS55〜ステップS59参照)。一方、スタック指令等の処理信号が発生することで、エスクロ状態にある紙幣(エスクロ紙幣)をそのまま下流側に搬送すべく、駆動モータ10による搬送処理が実行される。
【0156】
本実施形態では、上記したように、紙幣挿入口から挿入された紙幣がエスクロ位置に到達するまでに(例えば、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した段階)、シャッタ機構50を閉塞駆動することから、紙幣がエスクロ位置に搬送された後は勿論、紙幣の判定処理中においても、紙幣挿入口6は、シャッタ機構によって閉塞されるため、紙幣判定処理中における不正行為を確実に防止することが可能となる。すなわち、従来では、紙幣に付着物を接続して不正行為を行っている際、その行為を防止する(シャッタ機構を閉じる)ためには、紙幣の真贋判定処理と、紙幣をエスクロ位置まで搬送する処理を行う必要があったが、本実施形態では、エスクロ位置まで搬送する前に、既にシャッタ機構50が閉塞されているため、不正行為を確実に防止することが可能となる。また、紙幣がエスクロ位置に搬送されるまでには、紙幣挿入口6は、閉塞状態にあることから、利用者は連続して紙幣を挿入することができなくなり、紙幣詰まりを効果的に防止することが可能となる。
【0157】
さらに、紙幣を挿入した後、紙幣の有効性の判定処理と共にシャッタ機構の閉塞処理を行い、そのままエスクロ位置への搬送処理を行うため、不正行為防止のための処理手順が簡略化される。
【0158】
そして、エスクロ待機処理の後、紙幣は下流側に搬送され、搬送される紙幣の後端が紙幣通過検知センサ60によって検知された段階、すなわち紙幣通過検知センサ60がOFFになった後(ステップS61)、駆動モータをそのまま所定量だけ回転駆動して、停止する(ステップS62,S63)。この所定量は、紙幣通過センサ60と搬送ローラ対14の距離に依存しており、紙幣の後端が搬送ローラ対14の挟持を外れた状態の回転量に対応する。そして、その後、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませ、紙幣挿入口6を開放状態にすると共に、LED70を消灯して処理が終了する(ステップS64)。勿論、紙幣通過検知センサ60がOFFになった段階でソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)し、LED70を消灯しても良い。
【0159】
このように、紙幣挿入口6は、常時、開放状態にあることから、紙幣処理時における処理手順が簡略化されるようになる。
【0160】
本発明に係る紙幣処理装置は、上記した処理手順以外にも、適宜、変形することが可能である。また、シャッタ機構50は、紙幣が搬送されて有効性を判定している最中に紙幣挿入口6を閉塞するものであれば良く、閉塞するタイミングや、その契機については、適宜変更することが可能である。
【0161】
また、紙幣の識別処理については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【0162】
すなわち、本実施形態では、判定対象となる紙幣と真券とを比較する際に、赤外光の透過光と反射光、及び赤色光の透過光と反射光との4種類の光源を用いたものとして説明したが、少なくとも赤外光の透過光データを用いるものであっても良い。このとき、波長は上述した実施形態のように950nm、あるいはその近傍の値の波長であることが望ましい。
【0163】
また、上述した実施形態では、真贋判定を行う際に、相関係数により判定を行うものとして説明したが、例えば受光したデータから、アナログ波形を生成し、この波形の形状同士の比較で判定することもできる。そして、重み付けをして比較する場合は、この波形を拡大して判定精度を高めるようにすることもできる。
【0164】
また、上述した実施形態では、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中に予め特定された特定領域における前記赤外光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を判定対象となる紙幣と前記真券紙幣との間で比較する第2の比較ステップとに区分して説明したが、区分することなく同時に比較することもできる。
【0165】
すなわち、重み付けするための関係式を含む比較用の相関式が予め組み込まれた真贋判定プログラムを用いて、真券紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データと、反射した赤色光の反射光データにおいて、特定領域に予め重み付けしたものを基準データとして記憶装置内に格納しておく一方、前記真贋判定プログラムを組み込んだ真贋判定装置において、判定対象となる紙幣表面の全印刷領域を透過した赤外光の透過光データ、あるいは反射した赤色光の反射光データから、前記特定領域部分の重み付けも平行して行い、前記基準データと比較する。
【0166】
また、特定領域から取得した透過光データや反射光データに、全印刷領域において取得したデータよりも所定の重み付けをする方法として、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データのデータ量を、他の領域のデータ量よりも増加させる方法であっても良い。
【0167】
例えば、多数のLEDを線状に設けたLEDアレイなどを用いた場合であれば、座標で特定される特定領域以外の領域に照射する場合は、LEDを間引いて駆動させ、特定領域では全LEDを駆動させるようにするのである。
【0168】
あるいは、座標で特定される特定領域については、紙幣搬送機構による紙幣の搬送速度を制御して他の領域よりも搬送速度を落とし、透過光データや反射光データの量を増加させるようにしてもよい。すなわち、座標密度をより密にしてデータ量を増加させるのである。
【0169】
また、本実施形態における紙幣処理装置1であれば、前述したように紙幣の搬送速度を制御することも可能であるが、発光間隔、すなわちスキャンタイミングを変えることでの対応も可能である。
【0170】
ところで、本実施形態では、図18に示したステップS21〜S28までのフローに則って真贋判定をしているが、特別領域を用いての判定、すなわち、ステップS23及びステップS24のみで真贋判定をするようにしても良いし、適宜その他のステップを組み合わせたりするなどして、適宜することも可能である。
【0171】
上述してきた実施形態から、例えば、以下のような紙幣の真贋判定方法が実現できる。
【0172】
真券紙幣表面の印刷領域に、発光手段から所定波長の光(例えば赤外光)を照射し、当該真券紙幣を透過した光の透過光データ(例えば、濃淡データから生成した二次元画像や波形)を基準データとして予め記憶しておき、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段(例えば、第1発光部23、第2発光部27)から前記所定波長の光(例えば赤外光)を照射し、当該紙幣を透過した光の透過光データと前記基準データとを比較する第1の比較ステップと、紙幣表面の印刷領域中、予め特定領域として定め、(例えば赤色光のような可視光下と赤外光下では得られる画像が異なる領域を、予め特定領域として定める)、前記判定対象となる紙幣及び前記真券紙幣の前記特定領域(例えば、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、赤外光透過領域40dなど)における前記光の透過光データに所定の重み付けをして、この重み付けられたデータ同士を比較する第2の比較ステップと、を有し、これら第1、第2の比較ステップにおける比較結果に基いて、紙幣の真贋判定を行う紙幣の真贋判定方法。
【0173】
紙幣表面の印刷領域中、可視光下と赤外光下で得られる画像が異なる領域を予め特定領域(例えば、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、赤外光透過領域40d)として定めた真券紙幣の印刷領域に、発光手段から所定波長の赤外光を照射し、当該真券紙幣を透過した赤外光の透過光データ(例えば、濃淡データから生成した二次元画像や波形)のうち、前記特定領域を透過した透過光データに所定の重み付けしたデータを基準データとして予め記憶しておく一方、判定対象となる紙幣表面の印刷領域に、発光手段(例えば、第1発光部23、第2発光部27)から前記所定波長の赤外光を照射し、当該紙幣を透過した赤外光の透過光データのうち、前記特定領域を透過した透過光データに、前記真券と同じ重み付けをして、この重み付けされた前記特定領域における透過光データを含む全透過光データと前記基準データとを比較することにより真贋を判定する紙幣の真贋方法。
【0174】
上記各紙幣の真贋判定方法において、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記光の透過光データに加え、さらに、前記特定領域における光の反射光データを用いた紙幣の真贋判定方法。
【0175】
上記各紙幣の真贋判定方法において、前記発光手段(例えば、第1発光部23、第2発光部27)は異なる波長の光(例えば、赤色光や赤外光)を照射可能であり、判定対象となる紙幣と真券紙幣とを比較する際に、前記特定領域における異なる波長の光の透過光データ及び/又は反射光データをさらに用いる紙幣の真贋判定方法。
【0176】
上記各紙幣の真贋判定方法においいて、前記特定領域は、異なる波長の光を照射した際に得られるデータの異なる領域(例えば、透かし領域40a、潜像画像領域40b、特殊印刷領域40c、赤外光透過領域40d)を含む紙幣の真贋判定方法。
【0177】
上記各紙幣の真贋判定方法において、前記所定の重み付けとして、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データに重み倍率を乗じる紙幣の真贋判定方法。
【0178】
上記各紙幣の真贋判定方法において、前記所定の重み付けとして、前記特定領域における透過光データ及び/又は反射光データのデータ量を、他の領域のデータ量よりも増加させた紙幣の真贋判定方法。
【0179】
以上、紙幣の真贋判定方法について説明したが、本発明に係る紙幣処理装置における紙幣の真贋判定方法については、上記した方式に限定されることはなく、従来から行われている各種の真贋判定方法を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の紙幣処理装置は、遊技媒体貸出装置に限られず、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能である。また、本実施形態では、日本銀行券としての紙幣を処理するものであることを例示して説明したが、米ドル札などの外国通貨、また、いわゆる金券やその他有価証券などの真贋判定を行う装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 紙幣処理装置
2 フレーム
5 紙幣搬送路
6 紙幣挿入口
8 紙幣搬送機構
10 駆動モータ
18 紙幣検知センサ
20 紙幣読取手段
30 制御手段
50 シャッタ機構
52 回動片
54 ソレノイド
60 紙幣通過検知センサ
70 LED
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣が挿入される紙幣挿入口と、
前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能な紙幣搬送機構と、
前記紙幣搬送機構により搬送された紙幣を読取る紙幣読取手段と、
前記紙幣読取手段により読取られた紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段と、
紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていることを識別する付着物識別手段と、
前記紙幣識別手段による識別結果、且つ前記付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為防止処理を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記紙幣読取手段により読取りが終了した紙幣を前記紙幣搬送機構により下流側へ搬送中に、前記付着物識別手段により付着物の識別を行うことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記付着物識別手段による識別処理後、前記紙幣識別手段により紙幣の真贋の識別を行うことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項1】
紙幣が挿入される紙幣挿入口と、
前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を挿入方向に沿って搬送可能な紙幣搬送機構と、
前記紙幣搬送機構により搬送された紙幣を読取る紙幣読取手段と、
前記紙幣読取手段により読取られた紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段と、
紙幣の外形寸法の外側に付着物が接続されていることを識別する付着物識別手段と、
前記紙幣識別手段による識別結果、且つ前記付着物識別手段による識別結果に基づいて、不正行為防止処理を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記紙幣読取手段により読取りが終了した紙幣を前記紙幣搬送機構により下流側へ搬送中に、前記付着物識別手段により付着物の識別を行うことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記付着物識別手段による識別処理後、前記紙幣識別手段により紙幣の真贋の識別を行うことを特徴とする紙幣処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−65663(P2011−65663A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241691(P2010−241691)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【分割の表示】特願2006−193171(P2006−193171)の分割
【原出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【分割の表示】特願2006−193171(P2006−193171)の分割
【原出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】
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