説明

紙幣収納装置

【課題】小型化と低コスト化を可能にすることができると同時に使用勝手のよい紙幣収納装置を提供する。
【解決手段】紙幣搬送装置によって各葉ごとに搬送されてきた紙幣Sを積層して収納する紙幣収納装置1は、紙幣搬送装置から搬送されてきた紙幣Sを取り込む取込口11と、取込口11から紙幣Sを略真っ直ぐに取り込んで搬送する紙幣搬送部20と、取り込んだ紙幣Sを収納する紙幣収納部30と、紙幣収納部30に収納する紙幣Sを一時的に収納保留する収納一時保留部40と、収納一時保留部40の紙幣Sをそのまま略並行に紙幣収納部30に押し出す紙幣押出し部50と、紙幣搬送部20における紙幣Sの搬送と紙幣押出し部50における紙幣Sの押出しとの駆動源であるモーターMと、を備え、紙幣収納部30は、収納された紙幣Sを取り出す取出し部60を側方に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣搬送装置によって各葉ごとに搬送されてきた紙幣を積層して収納する紙幣収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣収納装置としては、例えば特許文献1に挙げたようなものがある。
特許文献1に記載されているように、従来の紙幣収納装置では、紙幣の搬送および収納それぞれに別個のモーターを使用している。すなわち、紙幣搬送装置によって搬送されてきた紙幣を紙幣類搬送口から取り込んで、その直後に設けられた略S字状の搬送通路を通して紙幣の向きを変えて紙幣類待機部に導く過程において、紙幣類搬送部に配設したギヤードモータの動力によって紙幣の搬送をし、紙幣類押出部に配設したスタックモータの動力によって紙幣を紙幣類収納部に押し出して収納するようにしている。
【0003】
そして、紙幣類待機部の紙幣は、紙幣類搬送口に取り込まれる紙幣の取込方向に対して略垂直となる方向にあり、その状態で紙幣類収納部に押し出されるようにして収納される。紙幣類収納部に収納された紙幣の両肩上部を紙幣類押え板が押さえており、収納した紙幣が皺等により膨らみを生じて上方に弾けてバラバラになるのを防止している。この紙幣類押え板は、収納部に収納された紙幣を回収するときには開くことができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−259072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術では、紙幣を搬送するためのモーターと、搬送した紙幣を紙幣収納部に押し出して収納するためのモーターとを別個に2つ設けて、搬送動作と収納動作とを別個に行っているので、装置の小型化や低コスト化の促進を妨げる要素の一つになっているという問題点があった。
【0006】
また、紙幣の搬送路がS字状に曲がっているので、紙幣が引っ掛かったり、詰まったりなどして紙幣の搬送・収納過程で先行する紙幣の処理がもたついてしまう場合もある。特に折れ曲ったくせ札などは引っ掛かったり、詰まったりする可能性が高くなり、これらの場合には、後から搬送されて来た紙幣が先行する紙幣に衝突してしまう場合も有るという問題点があった。
【0007】
さらに、収納部に収納された紙幣を回収する際には、紙幣の両肩上部を押さえている紙幣類押え板を開いて、紙幣を上方に抜き出すようにして取り出さなければならないという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、小型化と低コスト化を可能にすることができると同時に使用勝手のよい紙幣収納装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。 [1]紙幣搬送装置によって各葉ごとに搬送されてきた紙幣(S)を積層して収納する紙幣収納装置(1)において、
紙幣搬送装置から搬送されてきた紙幣(S)を取り込む取込口(11)と、
前記取込口(11)から紙幣(S)を略真っ直ぐに取り込んで搬送する紙幣搬送部(20)と、
取り込んだ紙幣(S)を収納する紙幣収納部(30)と、
前記紙幣収納部(30)に収納する紙幣(S)を一時的に収納保留する収納一時保留部(40)と、
前記収納一時保留部(40)の紙幣(S)をそのまま略並行に前記紙幣収納部(30)に押し出す紙幣押出し部(50)と、
前記紙幣搬送部(20)における紙幣(S)の搬送と前記紙幣押出し部(50)における紙幣(S)の押出しとの駆動源であるモーター(M)と、を備え、
前記紙幣収納部(30)は、収納された紙幣(S)を取り出す取出し部(60)を側方に設けたことを特徴とする紙幣収納装置(1)。
【0010】
[2]前記収納一時保留部(40)は、前記紙幣搬送部(20)による紙幣(S)の搬送方向に沿って前記紙幣収納部(30)寄りに配設されたことを特徴とする[1]に記載の紙幣収納装置(1)。
【0011】
[3]前記モーター(M)は、正転および反転が可能なモーター(M)であり、
前記紙幣搬送部(20)は、前記モーター(M)が一方向に回転しているときに前記モーター(M)の駆動力を受けて紙幣(S)を搬送し、
前記紙幣押出し部(50)は、前記モーター(M)が逆方向に回転しているときにモーター(M)の駆動力を受けて紙幣(S)を前記紙幣収納部(30)へ押し出すことを特徴とする[1]または[2]に記載の紙幣収納装置(1)。
【0012】
[4]前記紙幣搬送部(20)は、一対のプーリに掛け渡した搬送ベルト(22)が紙幣(S)に接触して紙幣(S)を搬送するものであり、一方のプーリが取り付けられた回転軸(110)に前記モーター(M)の駆動力を伝達する搬送部ワンウェイクラッチ(W1)を有し、
前記紙幣押出し部(50)は、前記モーター(M)の駆動力を伝達する紙幣押出し部ワンウェイクラッチ(W2)を有し、
前記搬送部ワンウェイクラッチ(W1)は、前記モーター(M)が一方向に回転しているときに前記モーター(M)の駆動力を伝達し、
前記紙幣押出し部ワンウェイクラッチ(W2)は、前記モーター(M)が逆方向に回転しているときにモーター(M)の駆動力を伝達することを特徴とする[3]に記載の紙幣収納装置(1)。
【0013】
[5]前記搬送ベルト(22)は、平ベルト(22)であることを特徴とする[4]に記載の紙幣収納装置(1)。
【0014】
前記本発明は次のように作用する。
紙幣収納装置(1)に収納される紙幣(S)は、紙幣搬送装置によって各葉ごとに搬送されてきて、紙幣収納装置(1)の取込口(11)から紙幣収納装置(1)内に取り込まれる。取込口(11)に先端が入った紙幣(S)は、方向を変えるために曲げられたりすることなく略真っ直ぐに取り込まれて、紙幣搬送部(20)によって紙幣収納部(30)へ向けて搬送される。このため、紙幣(S)が途中で引っ掛かったり、詰まったりする不都合の生じることを大きく低減させることができる。
【0015】
紙幣(S)は、収納一時保留部(40)に至ると一時的に紙幣収納部(30)への収納が保留される。この収納一時保留部(40)は、紙幣搬送部(20)による紙幣(S)の搬送方向に沿って紙幣収納部(30)寄りに僅かにずらして配設することにより、紙幣(S)の衝突を防止することができる。収納一時保留部(40)の紙幣(S)は、紙幣(S)を間にして紙幣収納部(30)とは反対側から紙幣押出し部(50)によって略そのままの状態で紙幣収納部(30)に向けて押し出される。
【0016】
紙幣搬送部(20)における紙幣(S)の搬送動作と紙幣押出し部(50)における紙幣(S)の押出し動作とは、1つのモーター(M)を駆動源として行われている。このため、装置のコストを低減できるとともに、省スペース化を図ることもできる。
【0017】
このモーター(M)を正転および反転が可能なモーター(M)とした場合には、モーター(M)が一方向に回転(例えば正転)しているときに紙幣搬送部(20)がモーター(M)の駆動力を受けて紙幣(S)を搬送する一方、紙幣押出し部(50)は紙幣収納部(30)への紙幣押し出し動作を停止しており、モーター(M)が逆方向に回転(例えば反転)しているときに紙幣押出し部(50)がモーター(M)の駆動力を受けて紙幣(S)を紙幣収納部(30)へ押し出す一方、紙幣搬送部(20)は紙幣(S)の搬送動作を停止しているようにすることができる。
【0018】
これにより、紙幣(S)を紙幣収納部(30)へ押し出しているときに紙幣(S)の搬送動作が重なって、収納一時保留部(40)にある紙幣(S)に搬送されてきた紙幣(S)が衝突して紙幣収納部(30)への紙幣(S)の収納動作が滞るようなことが起こりにくくなる。
【0019】
このような動作は、例えば、紙幣搬送部(20)における紙幣(S)の搬送を一対のプーリ(21a,21b)に掛け渡した搬送ベルト(22)が紙幣(S)に接触して回転することにより行い、一方のプーリ(21a)が取り付けられた回転軸(110)にモーター(M)の駆動力を伝達する搬送部ワンウェイクラッチ(W1)を設けておき、紙幣押出し部(50)は、モーター(M)の駆動力を伝達する紙幣押出し部ワンウェイクラッチ(W2)を設けておくことによって実現することができる。
【0020】
すなわち、モーター(M)が正転しているときは、搬送部ワンウェイクラッチ(W1)がモーター(M)の駆動力を回転軸(110)に伝達する一方、紙幣押出し部ワンウェイクラッチ(W2)は、モーター(M)の駆動力を伝達せず、モーター(M)が反転しているときは、搬送部ワンウェイクラッチ(W1)はモーター(M)の駆動力を回転軸(110)に伝達せず、一方、紙幣押出し部ワンウェイクラッチ(W2)は、モーター(M)の駆動力を伝達するようにしておけばよい。
【0021】
紙幣収納部(30)に収納され紙幣(S)は、紙幣収納部(30)の側面側に取出し部(60)を設けることにより、紙幣収納部(30)から容易に取り出すことができる。
【0022】
なお、搬送ベルト(22)を平ベルト(22)にすることにより、搬送する紙幣(S)と搬送ベルト(22)との接触面積が大きくなり、取込口(11)からの紙幣(S)を取り込む際の取込力や紙幣(S)を搬送中の搬送力を向上させることができるうえに、搬送中の紙幣(S)の姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる紙幣収納装置によれば、1つのモーターによって紙幣の搬送と収納部への紙幣の押出しを行うことができるので、装置の小型化と低コスト化を図ることができるとともに、収納した紙幣を紙幣収納部の上からではなく側方に設けた取出し部から取り出せるようにしたので、紙幣収納装置を内部に有する装置の扉を開いて容易に紙幣を取り出すことができる。
【0024】
また、モーターが一方向に回転しているときに、紙幣搬送部での紙幣の搬送が行われ、モーターが逆方向に回転しているときに紙幣押出し部が収納一時保留部の紙幣を押し出して紙幣収納部に収納するので、紙幣の収納中に紙幣が搬送されてきて収納しようとする紙幣に衝突して収納動作が妨げられてしまうということが起こらないようにすることができる。
【0025】
また、搬送ベルトが平ベルトであるので、紙幣と搬送ベルトとの接触面積が大きくなり、取込口からの紙幣を取り込む際の取込力や紙幣の搬送力を向上させることができるうえに、搬送中の紙幣の姿勢を安定させて搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の好適な一の実施の形態を説明する。
各図は本発明の一の実施の形態を示している。
図1は、本発明の一の実施の形態に係る紙幣収納装置を示す平面図であり、図2は、図1の紙幣収納装置を簡略して示す図である。図3は、本発明の一の実施の形態に係る紙幣収納装置を示す斜視図である。図4は、本発明の一の実施の形態に係る紙幣収納装置の内部構造を示す斜視図である。図5は、図1の紙幣収納装置の正面図であり、図6は、図5の紙幣収納装置を簡略して示す図ある。
【0027】
本発明の一の実施の形態に係る紙幣収納装置1は、例えば複数台の遊技機と遊技媒体貸機とが配設された遊技機島において、遊技媒体貸機に投入されて遊技機島内部に配設された紙幣搬送装置によって起立した状態で搬送されてきた紙幣をそのまま取り込んで積層して収納するものであり、遊技機島端部に配設された不図示の島管理ボックス内に配設されている。
【0028】
図1に示すように、紙幣収納装置1は、紙幣搬送装置から起立した状態で搬送されてきた紙幣Sを取り込む取込口11がハウジング10の内側から外側に向かって広がるように設けられている。取込口11の外側には、取込みセンサー12が配設されている。取込みセンサー12は、紙幣搬送装置によって搬送されて来た紙幣Sを検知するためのものである。取込みセンサー12が紙幣Sを検知すると、後述するモーターMが正転して、取込口11からの紙幣Sの取込み動作と、取り込んだ紙幣Sの搬送動作とを行うようになっている。
【0029】
ハウジング10は、例えば金属で作られており、取込口11から紙幣Sを起立した状態のままで略真っ直ぐに取り込んでそのまま略真っ直ぐに搬送する紙幣搬送部20と、紙幣搬送部20が搬送してきた紙幣Sを紙幣収納部30に収納する前段階で一時的に収納保留する収納一時保留部40と、収納一時保留部40の紙幣Sをそのまま略並行に紙幣収納部30に押し出す紙幣押出し部50を備えている。さらに、紙幣搬送部20における紙幣Sの搬送動作と紙幣押出し部50における紙幣Sの押出し動作との駆動源となるモーターMが1つ設けられている。
【0030】
このように構成されている紙幣収納装置1は、紙幣搬送装置によって搬送されてきた紙幣Sをそのまま略真っ直ぐ搬送方向(矢印A方向)に沿って取込口11から取り込めるように島管理ボックス内に配置されている。ハウジング10には、紙幣収納部30の側壁となる取込口11とは反対側の側面に切欠き部分を有する。この切欠き部分は、紙幣収納部30に収納された紙幣Sを取り出すための取出し部60の役目を果たしている。
【0031】
図1および図4に示すように、紙幣収納装置1の唯一の駆動源であるモーターMは、正転および反転が可能なものであり、その駆動軸101には駆動プーリ102が取り付けられている。この駆動プーリ102と、主回転軸110の下端部に取り付けられた従動プーリ103とには、駆動ベルト104が巻回されている。これにより、モーターMの駆動力を主回転軸110に伝達することができる。
【0032】
主回転軸110の中間部にはプーリ21aが取り付けられており、このプーリ21aは、搬送部ワンウェイクラッチW1に連動しており、主回転軸110の一方向の回転、例えばモーターMが正転しているときの回転にのみ連動して同方向に回転するようになっている。
【0033】
プーリ21aは、紙幣搬送部20の搬送部回転軸210に取り付けられたプーリ21bと一対を成している。この一対のプーリ21a,21bには、紙幣Sに接触して紙幣Sを搬送するための搬送ベルトとしての平ベルト22が巻回されている。
【0034】
プーリ21aの近傍には、ローラ23が配設されている。このローラ23は、プーリ21aとの間に平ベルト22を挟むように平ベルト22の外側に接触している。また、プーリ21b寄りにも平ベルト22の外側に接触するようにローラ24が配設されている。
【0035】
ローラ24は、プーリ21bから離れた位置に有り、平ベルト22は、ローラ24とプーリ21bとの間を通ってはいるが、それらに直接に挟まれてはいない。搬送ベルトを平ベルト22にしたことにより、平ベルト22と紙幣Sとの接触面積が大きくなる。これにより、取込口11からの紙幣Sを取り込む際にその取込力が向上して、スムーズかつ確実に取り込むことができる。
【0036】
また、紙幣搬送部20においては、紙幣Sの搬送力が向上するのでスムーズに、確実に、かつ紙幣Sの起立した姿勢を安定させた状態で搬送することができる。さらに、取込口11からローラ24までの間には平ベルト22の内側に沿ってガイド板25が延設されている。これにより、回転中の平ベルト22にブレが生じないので、紙幣Sの姿勢をより安定させた状態で搬送することができる。
【0037】
紙幣搬送部20には、搬送中の紙幣Sを検知するための搬送紙幣センサー26が配設されている。この搬送紙幣センサー26が紙幣Sを検知すると紙幣の枚数がカウントされる。また、搬送紙幣センサー26が紙幣Sを検知した後、例えば所定時間経過しても取込みセンサー12および搬送紙幣センサー26が紙幣Sを検知しないときは、後述のようにモーターMを反転させて収納一時保留部40の紙幣Sを紙幣収納部30に押し出して収納動作をするようになっている。
【0038】
紙幣搬送部20の下流側には、搬送されてきた紙幣Sを収納する前に起立した状態のままで一時的に貯留しておく収納一時保留部40が配設されている。この収納一時保留部40を境にして一方の側(図1の紙面上において右側)には紙幣収納部30が配設されており、他方の側(図1の紙面上において左側)には紙幣押出し部50が配設されている。
【0039】
前記プーリ21bは、紙幣押出し部50に面している側での周縁の位置が平ベルト22に接触するローラ24の周縁の位置よりも収納一時保留部40寄りになるようにプーリ21bとローラ24とが配置されており、収納一時保留部40は、紙幣搬送部20による紙幣Sの搬送方向Aに沿って紙幣収納部30寄りに少しずれた位置に配設されている。したがって、紙幣搬送部20を搬送されてきた紙幣Sは、ローラ24とプーリ21bとの間を通過しながら、紙幣収納部30側に寄せられて収納一時保留部40に入る。
【0040】
搬送部回転軸210の上端部にはプーリ41aが設けられており、搬送部回転軸210の下端部にはプーリ42aが設けられている。収納一時保留部40内に貯留された紙幣Sの先端部近傍には、回転軸410が配設されており、この回転軸410の上端部にはプーリ41bが設けられており、回転軸410の下端部にはプーリ42bが設けられている。
【0041】
これらプーリ41aとプーリ41bには送りベルト106が回動自在に巻回されている。また、プーリ42aとプーリ42bには送りベルト107が回動自在に巻回されている。送りベルト106は紙幣Sの上辺部に当接するように配置され、送りベルト107は紙幣Sの下辺部に当接するように配置されたものであり、紙幣搬送部20によって搬送されて来た紙幣Sを収納一時保留部40の所定位置まで案内するものである。
【0042】
主回転軸110の上端部には、プーリ51aが取り付けられている。このプーリ51aは、紙幣押出し部50の紙幣押出し部回転軸510の上端部に取り付けられたプーリ51bと一対を成している。この一対のプーリ51a,51bには、ベルト105が巻回されており、モーターMの回転がプーリ51bに伝達される。プーリ51bは、例えばタイミングプーリであり、ベルト105は、例えばタイミングベルトである。
【0043】
紙幣押出し部回転軸510は、紙幣Sの搬送方向Aに沿った収納一時保留部40の長手方向の長さの略中央に面する位置に配置されている。紙幣押出し部回転軸510の下部には紙幣押出し部ワンウェイクラッチW2が設けられている。この紙幣押出し部ワンウェイクラッチW2の下方には、この紙幣押出し部ワンウェイクラッチW2に連動するカム52が設けられている。
【0044】
このカム52は、例えばモーターMが反転しているときに主回転軸110、プーリ51a、ベルト105およびプーリ51bを介して回転する紙幣押出し部回転軸510の回転にのみ連動して同方向に回転するようになっている。すなわち、カム52は、後述するように紙幣搬送部20によって搬送されて収納一時保留部40に一時的に貯留されている紙幣Sを紙幣収納部30に向けて押し出して収納するときに動作するものである。
【0045】
紙幣押出し部50には、このカム52に連動して収納一時保留部40に向かって押し出し可能なプッシャーカム53が配設されている。プッシャーカム53には、焦点が紙幣収納部30寄りにある円弧状あるいは紙幣収納部30側に折れた略「く」字状の貫通孔55が穿設されている。この貫通孔55には、カム52に設けられたピン52pが貫通している。したがって、カム52が回転すると、ピン52pによって貫通孔55の内壁を押されたプッシャーカム53が収納一時保留部40に向かう方向に押され、また、押された位置から戻される。
【0046】
プッシャーカム53は、矢印A方向の両端部のうち、少なくとも搬送部回転軸210寄りの端部に突起56が突設されている。この突起56は、突起センサー57で検知するためのものであり、押し出したプッシャーカム53を戻す際に突起センサー57が突起56を検知すると、モーターMを止めるようになっている。このようにしてモーターMを停止させると、プッシャーカム53は、図1に示したように、搬送されてきた紙幣が収納一時保留部40に保留されるのを待機する位置に戻るようになっている。
【0047】
プッシャーカム53は、カム52によって押し出される方向の先端部に、プッシャー板54が取り付けられている。このプッシャー板54は、前記矢印A方向に沿って収納一時保留部40に面するように延びている。プッシャー板54は、上方の送りベルト106と下方の送りベルト107の間を通過することができる上下幅を有し、上方の送りベルト106と下方の送りベルト107の間を通過できる高さに配置されている。
【0048】
これにより、モーターMが反転してカム52がプッシャーカム53を収納一時保留部40へ向けて押し出すと、収納一時保留部40に起立した状態にある紙幣Sがプッシャー板54によって紙幣収納部30にそのまま略並行に押し出されるので、紙幣Sを紙幣収納部30に起立した状態のまま押し出すことができる。
【0049】
紙幣Sが収納される紙幣収納部30は、その上部に収納一時保留部40側から中央部付近まで飛出し防止板31が延設されている。この飛出し防止板31は、紙幣収納部30内で起立している紙幣Sが上方に飛び出すことを防止するためのものである。また、紙幣収納部30には、紙幣押出し部50のプッシャー板54と面するように紙幣受け板34が配設されている。
【0050】
この紙幣受け板34は、ばねのような付勢手段70によって、プッシャー板54に向かう方向に付勢されている。これにより、紙幣収納部30に収納された紙幣Sを紙幣収納部30内部でバラけることなく起立して整った状態のまま積層させて収納しておくことができる。
【0051】
紙幣収納部30には、収納一時保留部40とは反対側の側壁寄りにボールプッシュホルダー32と、このボールプッシュホルダー32の動作を感知するためのマイクロスイッチ33が配設されている。ボールプッシュホルダー32およびマイクロスイッチ33は、紙幣収納部30が紙幣Sによって満杯(例えば約700枚)になったか否かを検知するものであり、紙幣収納部30が紙幣Sによって満杯になるとボールプッシュホルダー32の動作によってマイクロスイッチ33が入るようになっている。
【0052】
次に作用を説明する。
紙幣収納装置1に収納される紙幣Sは、紙幣搬送装置によって各葉ごとに起立した状態で搬送されて来る。この搬送されてきた紙幣Sを取込みセンサー12が検知すると、モーターMは、紙幣Sを取込口11から取込むための方向に回転(以下、正転と記す。)する。
【0053】
モーターMが正転すると、駆動軸101の回転が駆動プーリ102、駆動ベルト104および従動プーリ103を介して紙幣搬送部20の主回転軸110に伝達される。主回転軸110に取付けられているプーリ21aは、搬送部ワンウェイクラッチW1に連動して平ベルト22で紙幣Sを収納一時保留部40に搬送する方向に回転する。
【0054】
紙幣搬送装置によって先端が取込口11の奥まで押し込まれた紙幣Sは、その先端が平ベルト22とプーリ21aとによって挟まれて、起立状態のままで紙幣収納装置1内に略真っ直ぐに取り込まれる。取り込まれた紙幣Sは、引き続き平ベルト22によって収納一時保留部40まで搬送される。
【0055】
従来の紙幣収納装置では、紙幣の搬送を丸ベルトで行っていたが、本願発明に係る紙幣収納装置1では、平ベルト22によって紙幣Sを搬送するので、平ベルト22が紙幣Sに接触する面積は丸ベルトを用いた場合よりも遥かに大きくなり、紙幣Sは、スムーズに、確実に、かつ起立した姿勢が安定した状態で搬送される。
【0056】
紙幣Sは、ローラ24とプーリ21bとの間を通過して収納一時保留部40に入る際に、僅かに紙幣収納部30側にずれる。紙幣Sの先端部が収納一時保留部40に入ると、送りベルト106と送りベルト107によって収納一時保留部40の所定位置まで案内される。
【0057】
搬送中の紙幣Sを搬送紙幣センサー26が検出すると、紙幣Sの枚数がカウントされる。紙幣Sは、収納一時保留部40に至ると紙幣収納部30への収納が一時的に保留される。この収納一時保留部40は、紙幣搬送部20との搬送芯を僅かにずらすことにより、すなわち、紙幣搬送部20による紙幣Sの搬送方向に沿って紙幣収納部30寄りに僅かにずらして配設されているので、紙幣Sの衝突を避けることができる。
【0058】
搬送紙幣センサー26に検知された紙幣Sが通過し、例えば所定時間経過しても取込みセンサー12および搬送紙幣センサー26が紙幣Sを検知しないときは、モーターMを反転させて収納一時保留部40の紙幣Sを紙幣収納部30に押し出す収納動作をする。また、搬送紙幣センサー26に検知された紙幣Sが通過した後、次の紙幣Sを取込みセンサー12ないし搬送紙幣センサー26が検知しないときにモーターMを反転させて収納一時保留部40の紙幣Sを紙幣収納部30に押し出す収納動作をするようにしてもよい。
【0059】
モーターMが反転しているときは、搬送部ワンウェイクラッチW1に連動するプーリ21aは回転しないので、紙幣Sが収納一時保留部40に搬送されてしまうことはない。モーターMが正転しているときは、紙幣押出し部ワンウェイクラッチW2に連動するカム52は、図1に示した待機位置に待機したままで回転しないが、モーターMが反転をすると、カム52は紙幣押出し部ワンウェイクラッチW2に連動して回転する。
【0060】
カム52が待機位置から回転すると、カム52のピン52pがプッシャーカム53の貫通孔55内からプッシャーカム53を押して、プッシャーカム53を収納一時保留部40へ向けて押し出すので、プッシャーカム53に取り付けられたプッシャー板54は、送りベルト106と送りベルト107の間を通り、収納一時保留部40に一時貯留されている紙幣Sを紙幣収納部30内に押し出す。
【0061】
これにより、紙幣Sは、起立した状態のままで略並行に押し出されて、起立した状態のままで紙幣収納部30内に収納される。さらにカム52が回転すると、ピン52pは、貫通孔55内でプッシャーカム53を引っ張るようにして待機位置の方へ戻る。
【0062】
プッシャーカム53が待機位置まで戻ると、突起56が突起センサー57に検知される。この突起センサー57が突起56を検知した信号を受けて、不図示の制御部がモーターMの回転を停止させる。
【0063】
取込みセンサー12が紙幣搬送装置からの紙幣Sを再度検知すると、モーターMは、紙幣Sを紙幣収納部30に押し込む動作が終了した後にカム52が待機位置に戻ったところで反転を停止して、正転を開始する。これにより、前記したように取込口11での紙幣Sの取込み、紙幣搬送部20による紙幣Sの搬送、収納一時保留部40における紙幣Sの一時貯留等を経て、収納一時保留部40の紙幣Sが紙幣押出し部50によって紙幣収納部30に収納される。
【0064】
このようにして、紙幣Sは、紙幣収納部30に積層収納されながら収納枚数が増加するとともにボールプッシュホルダー32を押し、紙幣収納部30に収納された紙幣Sが満杯になるとボールプッシュホルダー32の動作によってマイクロスイッチ33が入る。
【0065】
このようにしてマイクロスイッチ33が入ると、それに基づいて島管理ボックスや不図示のホール全体の管理装置の表示部に満杯の警告を表示するなど、管理者に報知させるとともに、紙幣収納装置1は紙幣搬送装置等に必要な動作制御をするようになっている。
【0066】
紙幣収納部30に収納された紙幣Sを取り出すときは、紙幣収納装置1を内蔵する島管理ボックスの扉を開ければ、紙幣収納部30の側面側に設けられた取出し部60が露出されるので、紙幣Sを紙幣収納部30から容易に取り出すことができる。
【0067】
以上のように、紙幣搬送部20における紙幣Sの搬送動作と紙幣押出し部50における紙幣Sの押出し動作とは、1つのモーターMを駆動源として行われている。このため、装置のコストを低減できるとともに、省スペース化を図ることもできる。
【0068】
また、紙幣搬送装置からの紙幣Sの取込みおよび収納一時保留部40への搬送動作と、収納一時保留部40から紙幣収納部30への紙幣Sの収納動作とが完全に分離されるので、紙幣の収納中に紙幣が搬送されてきて収納しようとする紙幣に衝突して収納動作が妨げられてしまうということが起こらない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る紙幣収納装置を示す平面図である。
【図2】図1の紙幣収納装置を簡略して示す図である。
【図3】図1の紙幣収納装置を示す斜視図である。
【図4】図1の紙幣収納装置の内部構造を示す斜視図である。
【図5】図1の紙幣収納装置の正面図である。
【図6】図5の紙幣収納装置を簡略して示す図ある。
【符号の説明】
【0070】
M…モーター
S…紙幣
W1…搬送部ワンウェイクラッチ
W2…紙幣押出し部ワンウェイクラッチ
1…紙幣収納装置
10…ハウジング
11…取込口
12…取込みセンサー
20…紙幣搬送部
21a…プーリ
21b…プーリ
22…平ベルト
23…ローラ
24…ローラ
25…ガイド板
26…搬送紙幣センサー
30…紙幣収納部
31…飛出し防止板
32…ボールプッシュホルダー
33…マイクロスイッチ
34…紙幣受け板
40…収納一時保留部
41a…プーリ
41b…プーリ
42a…プーリ
42b…プーリ
50…紙幣押出し部
51a…プーリ
51b…プーリ
52…カム
52p…ピン
53…プッシャーカム
54…プッシャー板
55…貫通孔
56…突起
57…突起センサー
60…取出し部
70…付勢手段
101…駆動軸
102…駆動プーリ
103…従動プーリ
104…駆動ベルト
105…ベルト
106…送りベルト
107…送りベルト
110…主回転軸
210…搬送部回転軸
410…回転軸
510…紙幣押出し部回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣搬送装置によって各葉ごとに搬送されてきた紙幣を積層して収納する紙幣収納装置において、
紙幣搬送装置から搬送されてきた紙幣を取り込む取込口と、
前記取込口から紙幣を略真っ直ぐに取り込んで搬送する紙幣搬送部と、
取り込んだ紙幣を収納する紙幣収納部と、
前記紙幣収納部に収納する紙幣を一時的に収納保留する収納一時保留部と、
前記収納一時保留部の紙幣をそのまま略並行に前記紙幣収納部に押し出す紙幣押出し部と、
前記紙幣搬送部における紙幣の搬送と前記紙幣押出し部における紙幣の押出しとの駆動源であるモーターと、を備え、
前記紙幣収納部は、収納された紙幣を取り出す取出し部を側方に設けたことを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項2】
前記収納一時保留部は、前記紙幣搬送部による紙幣の搬送方向に沿って前記紙幣収納部寄りに配設されたことを特徴とする請求項1に記載の紙幣収納装置。
【請求項3】
前記モーターは、正転および反転が可能なモーターであり、
前記紙幣搬送部は、前記モーターが一方向に回転しているときに前記モーターの駆動力を受けて紙幣を搬送し、
前記紙幣押出し部は、前記モーターが逆方向に回転しているときにモーターの駆動力を受けて紙幣を前記紙幣収納部へ押し出すことを特徴とする請求項1または2に記載の紙幣収納装置。
【請求項4】
前記紙幣搬送部は、一対のプーリに掛け渡した搬送ベルトが紙幣に接触して紙幣を搬送するものであり、一方のプーリが取り付けられた回転軸に前記モーターの駆動力を伝達する搬送部ワンウェイクラッチを有し、
前記紙幣押出し部は、前記モーターの駆動力を伝達する紙幣押出し部ワンウェイクラッチを有し、
前記搬送部ワンウェイクラッチは、前記モーターが一方向に回転しているときに前記モーターの駆動力を伝達し、
前記紙幣押出し部ワンウェイクラッチは、前記モーターが逆方向に回転しているときにモーターの駆動力を伝達することを特徴とする請求項3に記載の紙幣収納装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、平ベルトであることを特徴とする請求項4に記載の紙幣収納装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−251643(P2009−251643A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94841(P2008−94841)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(507244862)株式会社TDM (1)
【Fターム(参考)】