説明

紙箱等のシート状体製容器

【課題】ハーフカットにより開口部を形成するシート製容器において、容器の使用目的や適性に応じた開口部を形成することを解決課題とする。
【解決手段】ハーフカット帯p1により開口を形成するようにしたシート製の容器である。ハーフカット帯p1は、左右に並行して伸びる表ハーフカット81と裏ハーフカット82とを備える。表ハーフカット81はシート状体の表側から裏側に向けて形成され裏面に達していない。裏ハーフカット82はシート状体の裏側から表側に向けて形成され表面に達していない。この表ハーフカット81と裏ハーフカット82とが繋がるように剥がれがシート状体に生じる。このハーフカット帯p1は、その伸びる方向に第1帯部分paと交差部分pxと第2帯部分pbとを備え、交差部分pxで第1帯部分paと第2帯部分pbとが交差し、第1帯部分paと第2帯部分pbとで表ハーフカットと81裏ハーフカット82の左右が逆になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、紙箱等のシート状体製容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、密閉の確実さと開封の容易さとの両立を図った紙箱などの容器に関して、特許文献1、2の提案を行なっている。特許文献1、2の発明は、紙製シートに形成された分離せんを、手で破って開封して蓋体とし、この蓋体を開閉可能とした容器に関するものであった。
【0003】
上記の容器の分離線は、望ましい形態としてハーフカットが採用されている。より詳しくは、第1カットと第2カットとが平行に形成されており、第1カットが開口部の周縁を規定するもので、第2カットが第1カットの外側に形成されている。第1カットは容器を構成するシートの裏側から紙の中間部分までの深さに形成されたもので、第2カットは容器を構成するシートの表側から紙の中間部分までの深さに形成されている。第1カットと第2カットとは、開口部を開ける際に、紙の中間部分で紙の層間剥離によって繋がることにより、開口されるもので、開口した際には、特許文献2の図5に示されているように、層間剥離部分が開口部の周縁に形成されることとなる。このハーフカットを採用することによって、容器の紙の表裏に貫かれた部分を設けることなく分離が可能となるため、密閉性の向上と開口の容易性とを両立させることができる。
【0004】
上記の容器の分離線は、第2カットが第1カットの外側に形成されている。第1カットはシートの裏側から紙の中間部分までの深さに形成されたもので、第2カットはシートの表側から紙の中間部分までの深さに形成されているため、開口部を開ける際に、上記の分離部(蓋体)を表側に引き剥がすように開く方向には破れやすく、容器内に押し込む方向には破れにくい。ところが、引き剥がす動作は、容器の開口を行なう最初の段階では、動作が難しく、また、容器内からの圧力がその部分に集中してかかった場合などでは、内側から外側に向けて開口部が開いてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4490490号公報
【特許文献2】特開2009−179352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、ハーフカットにより開口部を形成するシート製容器において、容器の使用目的や適性に応じた開口部を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、シートの一部分を手で破り開くことによって開口部を形成するようにしたシート製の容器において、
上記開口部はハーフカット帯によって規定され、
上記ハーフカット帯は、実質的に左右に並行して伸びる表ハーフカットと裏ハーフカットとを備え、
上記表ハーフカットは上記シート状体の表側から裏側に向けて形成され裏面に達していないものであり、
上記裏ハーフカットは上記シート状体の裏側から表側に向けて形成され表面に達していないものであり、
力が加えられることにより、上記表ハーフカットと裏ハーフカットとが繋がるように剥がれがシート状体に生じて、上記ハーフカット帯が開封されるものであり、
上記ハーフカット帯は、その伸びる方向に第1帯部分と交差部分と第2帯部分とを備え、上記表ハーフカットと上記裏ハーフカットとが上記交差部分で交差することによって、上記第1帯部分と上記第2帯部分とで上記表ハーフカットと上記裏ハーフカットの左右が逆になることを特徴とする容器を提供することより、上記の課題を解決する。
上記容器は上記シート状体を折り曲げる折り目線を備え、上記折り目線上に上記交差部分が配置されたものとして実施することができる。
また、上記の容器本体は、上面部と、この上面部から折り目を介して連設された前面部とを備えるものであり、上記開口部は、上記上面部と上記前面部とにかけて形成されるものであり、
上記上面部及び上記前面部は、上記ハーフカット体によって容器本体側に残る残存部と、容器本体側から分離する分離部とに区分され、上記ハーフカット体が開封されることにより、容器本体側から分離部が分離されることによって上記開口部が形成され、上記分離部は、上面部に形成される本体上分離部と、前面部に形成される本体前分離部とを備え、上記第1帯部分によって上記本体上分離部が規定され、上記第2帯部分pbによって上記本体前分離部が規定され、上記本体前分離部を容器内に押し込むことにより、上記第2帯部分を開封し、開封された上記本体前分離部を上記本体上分離部の裏面に重ねて引き上げることにより、上記第1帯部分を開封することを特徴としたものとして実施することができる。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、ハーフカットにより開口部を形成するシート製容器において、容器の使用目的や適性に応じた開口部を形成することができたものである。
特に、折り目線上に交差部分を配置することで、折り目線を介して連続する2面(例えば、上面と前面)における開封方向を異なるものとすることができる。
また、上記分離部を、上面部に形成される上分離部と、前面部に形成される前分離部とを備えたものとし、上記第1帯部分によって上記上分離部が規定され、上記第2帯部分pbによって上記前分離部が規定され、上記前分離部を容器内に押し込むことにより上記第2帯部分を開封し、開封された上記前分離部を上記上分離部の裏面に重ねて引き上げることにより上記第1帯部分を開封するようにすることによって、開封を2段階で行なうことができるようにし、不用意に全部が開封されてしまうことを防止できる容器を提供することができたものである。
さらに、前被覆分離部は上記前分離部の表面側に配位され、前被覆分離部を表面側に引くことで開封し、この開封部分から上記前分離部が表れるものであり、表れた上記前分離部を容器内に押し込むことにより、上記第2帯部分を開封するようにしたことで、不用意に前分離部が開封されてしまうことを防止できる容器を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の実施の形態に係る容器に付属の計量スプーンの展開図である。
【図2】本願発明の同計量スプーンの組立状態の斜視図である。
【図3】(A)は同計量スプーンの組立状態の側面図であり、(B)は比較例の計量スプーンの組立状態の側面図である。
【図4】本願発明の実施の形態に係る容器を構成するシート状体の展開平面図である。
【図5】上記シート状体を用いて容器を形成する過程を示す斜視図である。
【図6】図5に続く容器を形成する過程を示す斜視図である。
【図7】(A)は完成した容器の斜視図であり、(B)はその要部断面図である。
【図8】上記容器を開封する過程を示す斜視図である。
【図9】開封した上記容器の斜視図である。
【図10】(A)は開封状態の上記容器の要部正面図であり、(B)は上記容器の開口部を閉鎖した状態を示す要部正面図である。
【図11】上記容器の開口部を閉じる過程を示す斜視図である。
【図12】(A)(B)は、図4の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
この容器は、紙、合成樹脂、紙と合成樹脂、さらにこれらと金属箔等の折り曲げ可能なシートを折り曲て組み立てられるようにしたもので、図4に示すように、容器の前面と上面と下面と後面とを構成する、上面部31、前面部41、下面部51、後面部61、上被覆部11、前被覆部21が折り目線を介して連設されていおり、計量スプーン用の台紙101が、上面部31に切り目線135を介して連設されている。
【0011】
(計量スプーン)
まず、計量スプーン用の台紙101によって組み立てられる計量スプーンから説明する。この計量スプーンは、図1の展開図の状態から、図2の斜視図に示すような立体的な形状に組み立てて使用されるものである。
この計量スプーンは、人に摘まれるための把手部103と、この把手部103の先端側に設けられた掬い部102を備える。
まず把手部103について説明する。この把手部103は、略長方形の台紙101の中央の前後方向に設けられた把手折り目線111を挟んで形成された左右の摘まみ壁112を備える。この把手折り目線111は、中央に1本のみを設ければよいが、中央に2本平行に設けるなど、左右の摘まみ壁112同士を重ねて摘めるものであれば、適宜変更して実施し得る。
左右の摘まみ壁112の一方(図1では左方)には折り曲げ片113が形成され、他方(図1では右方)には凹部114が形成されている。把手折り目線111を折り曲げて左右の摘まみ壁112同士を重ね合わせると共に、折り曲げ片113を折り曲げて凹部114に嵌め込んで係止することで、掬い部102及び把手部103は立体的な形状を維持する。把手部103の後端下部は、切り目115で斜めにカットされており、これによって、スプーンの掬い操作時に、紙箱等にスプーンの端が接触することを防止している。
【0012】
掬い部102と把手部103との境界には、境界折り目線104が形成されている。この境界折り目線104は、前記把手折り目線111の先端から左右方向に伸びるものである。境界折り目線104と把手折り目線111とは、直交させるなどしてもよいが、この例では境界折り目線104先端から、左右方向に向かうに従って漸次後方に向かうように傾斜させることによって、掬い部102と把手部103との間に角度を持たせている。
【0013】
掬い部102は、底部121と、この底部121の左右に対して左右の側部折り目線123を介して連設された左右の側壁122を備える。
この底部121は、左右の傾斜底部分124と、先端底部分125とを備える。左右の傾斜底部分124は、前後方向に設けられた中央折り目線126によって、底部121の基端寄りを左右に区画することによって形成されたものである。この例では、前記の把手折り目線111と連続して形成することもできるが、この例では、把手折り目線111の先端と中央折り目線126の基端との間に折り目線を形成しない部分を設けている。
【0014】
この中央折り目線126の先端側には、左右方向に伸びる先端折り目線127が形成されている。これにより、左右の傾斜底部分124と、先端底部分125とが区画される。この先端折り目線127を設けることによって、中央折り目線126から先端方向に破れが生ずることを防止する。また底部121全体を左右の傾斜底部分124のみで構成し、先端底部分125を設けないようにすることもできるが、このようにした場合には、掬い部102の先端が前後方向から見て略V字状になってしまう。このように掬い部102の先端をV字状にした場合には、例えば洗剤などの被計量物がV字の底からこぼれやすく、摺切りで計量することが困難となる。そこで、先端底部分125を設けると共に、その先端辺を直線状とすることによって、正確な摺切り計量を可能とする。また、左右の側壁122についても、その側端辺を直線状としておくことによって、摺切り計量を可能とする。但し、先端底部分125の先端辺と側壁122の側端辺との角は、アールとすることで、耐久性や安全性を向上させることができる。
【0015】
側部折り目線123については、把手折り目線111の先端から台紙101の先端の左右角に向けて伸びているが、これに限らず、台紙101の先端辺の左右寄りや、或いは、台紙101の左右側辺の先端寄りに向けて伸びるものであってもよい。
この側部折り目線123は、基端から先端まで1本の直線として実施することもできるが、この例では、側部折り目線123は、基端側から先端側に向けて連続して形成された基端側区間131と中間区間132と先端側区間133とを備える。基端側区間131は、把手折り目線111から先端先端に向かうに従って漸次左右方向に伸びるもので、台紙101の前後方向の中央折り目線126に対して傾斜して伸びる。中間区間132は、基端側区間131に比して緩やか傾斜して伸びるものであり、基端側区間131に比して中央折り目線126に対する角度が小さい。先端側区間133は、中間区間132に比して急峻に傾斜して伸びるものであり、中間区間132に比して中央折り目線126に対する角度が大きい。前述の先端折り目線127は、中間区間132と先端側区間133との境界付近に配位されたものである。よって、先端底部分125は、先端折り目線127と先端側区間133とで規定される。また傾斜底部分124は、先端折り目線127と中央折り目線126と基端側区間131と中間区間132とで規定される。
なお、これらの基端側区間131、中間区間132、先端側区間133は、直線と曲線の組合せの他、曲線のみで構成したり、直線のみで構成することもできる。
【0016】
(計量スプーンの容量)
ここで、図3を参照しつつ、中央折り目線126の有無による掬い部102の容量の差を説明する。図3(A)は上記の実施の形態のとおり中央折り目線126を設けた計量スプーンの組立状態の側面図例であり、(B)は中央折り目線126を設けない計量スプーンの組立状態の側面図例である。
【0017】
図3(A)に示すように、本願発明の実施の形態にあっては、組立状態において、中央折り目線126が左右の側部折り目線123よりも低い位置にある。左右の傾斜底部分124は、上記の中央折り目線126から左右方向に向かうに従って漸次上昇し、側壁122に繋がる。これに対して、中央折り目線126を設けない場合にあっては、図3(B)に示すように、底部の位置は、左右の側部折り目線123と同じ高さを維持する。その結果、両者を比較すると、中央折り目線126が左右の側部折り目線123よりも低い位置にある分だけ、掬い部102の容量は大きくなる。もちろん、底部が傾斜している分だけ、左右の側部折り目線123間の平面距離は短くなるが、これによる容積の減少分よりも、底部が深くなることによる容積の増加分の方が多く、事実、約10%の容量の増加を確認したものであり、摺切りで20gの容量を実現した。なお、その半分が約10gであり、これを示す線134を側壁122に表示することによって、2種の計量が可能となる(図1、図2参照)。
【0018】
なお図示の計量スプーンにあっては、台紙101に折り目線を形成することで、立体的な形状に組み立てることができ、平板状の台紙の状態で消費者に供給することができる。各折り目線は、押し罫による折り目の他、一部が貫通したミシン線であってもよい。また実施の形態では、各折り目線は1本としたが、例えば、互いの間隔が小さな平行な複数本の折り目線で、各折り目を形成するようにしてもよい。
【0019】
(容器の全体)
次に、図4〜図12を参照して、容器の全体について説明する。説明の便宜上、図4の紙を主体とするシート状体からなる容器(紙箱)の展開平面図において、fはシートの前方を示し、bはシートの後方を示し、lはシート左方を示し、rはシートの右方を示す。また、図5〜図11において、Fは容器の前方を示し、Bは容器の後方を示し、Uは容器の上方を示し、Sは容器の下方を示し、Lは容器の左方を示し、Rは容器の右方を示す。尚、展開状態のシートについての上記の各方向b,f,l,r,u,sは、専ら図4の説明において用いるものであり、組み立て状態の容器の上記の各方向B,F,L,R,U,Sとは、直接関係はない。
【0020】
更に、本願の各図において、特別な断りがない限り、2点鎖線はミシン目を示し、破線は、折り目線を示す。図10において、一点鎖線は、隠れ線を示す。折られた後の折り目線や、切り取られた後のミシン目は、実線で示す。尚、図7(A)は、開封前と開封後の説明に用いるため、切り取りの如何にかかわらず、ミシン目は用いずに、全て実線で示す。
尚、図4は、容器の表面を構成するシートの表面を示すものとし、当該表面と反対側の面がシートの裏面として説明する。
【0021】
この容器は、図4に示すように、上面部31、前面部41、下面部51、後面部61、上被覆部11、前被覆部21が折り目線を介して連設されていおり、前述の計量スプーン用の台紙101は、上面部31に切り目線135を介して連設されている。
【0022】
展開状態にあって、上面部31は第1折り目線m1を挟んで前面部41の後端から後方bへ延設され、下面部51は第2折り目線m2を挟んで前面部41の先端から前方fへ延設され、後面部61は第3折り目線m3を挟んで下面部51の先端から前方fへ延設され、上記の上被覆部11は第4折り目線m4を挟んで上記の後面部61の先端から前方fへ延設され、前被覆部21は第5折り目線m5を挟んで上被覆部11の先端から前方fへ延設されている。そして、組立状態において、上被覆部11は、その裏面が上面部31の表面に接着される。前被覆部21は、二つ折りにされた状態で前面部に接着される。
【0023】
前面部41は、ハーフカット帯p1にて区画された、前分離部85と前面残存部41aとを備えている。
上面部31は、ハーフカット帯p1にて区画された、上分離部84と上面残存部31aとを備えており、上分離部84に前記の計量スプーン用の台紙101が延設されている。
上被覆部11は、第2分離線p2にて左右に区画された上被覆分離部13と上被覆残存部12とを備える。上被覆分離部13には把持部201が形成されている。この把持部201は、図12(B)に示すように、切り目線202と折り目線203とによって規定され、切り目線202を切り取り、折り目線203から折り曲げ起立させることで使用する。
この上被覆分離部13は、把持部201以外の裏面が上面部31の上分離部84に接着される。上被覆残存部12は、その裏面が上面部31の上面残存部31aに接着される。
前被覆部21は、第5折り目m5を挟んで上被覆部11の上記上被覆分離部13の先端から前方へ延設された前被覆分離部23と、第5折り目線m5を挟んで上被覆部11の上記上被覆残存部12の先端から前方へ延設された前被覆残存部22を、第2分離線p2から延長された第3分離線p3を介して備える。この実施の形態では、上被覆分離部13の左右に、上被覆残存部12,12が、夫々第2分離線p2,p2を介して配設されており、前被覆分離部23の左右に、前被覆残存部22,22が、夫々第3分離線p3,p3を介して配設されている。
【0024】
上記の前被覆分離部23は、前分離本体部23aと、第8折り目線m8を介して前分離本体部23aの先端に延設され且つ横幅が前被覆分離部23の前分離本体部23aより狭くなる幅狭部97と、第6折り目線m6を介して幅狭部97の先端から前方へ延設されたガイド部95とからなる。なお、第8折り目線m8は、省略して実施することも可能である。
【0025】
第1〜第6及び第8の各折り目線m1〜m6,m8同士は、平行である。
ガイド部95の左右の幅は、幅狭部97の左右の幅よりも、大きく、ガイド部95の、上記幅狭部97よりも左右に入り張り出した部位が、差込部96,96を構成する。
ガイド部95の中央前端には、凹部95aが形成されている。
【0026】
差込部96,96の先端縁は、第6折り目線m6と平行であり、差込部96,96の左右側辺は、前方に進むにつれて(先端縁に近づくにつれて)、ガイド部95の左右の幅を漸次大きくするように、テーパを持つ或いはカーブするように形成されている。
ガイド部95は、第6折り目線m6が山折りされて、その裏面が幅狭部97の裏面へ接着されるものである。この実施の形態において、第6折り目m6は、左右方向の中央に設けられたスリット99によって左右に分断されている。
【0027】
前被覆残存部22は、上記の第5折り目線m5を介して上被覆残存部12から延設された押さえ片22aと、第7折り目線m7を介して押さえ片22aの先端から前方へ延設された台部22bとからなる。
【0028】
台部22bは、ガイド部95の前方の左右両側に位置する被係止用部98を備える。左側の被係止用部98(詳しくは、前被覆分離部23の左方に位置する前被覆残存部22の台部22bが備える被係止用部98)は、前被覆分離部23の左方より右方へ張り出して、ガイド部95の左側の差込部96の前方へ位置する。右側の被係止用部98(詳しくは、前被覆分離部23の右方に位置する前被覆残存部22の台部22bが備える被係止用部98)は、前被覆分離部23の右方より左方へ張り出して、ガイド部95の右側の差込部96の前方へ位置する。被係止用部98,98は、夫々第3分離線p3,p3から延長された第4分離線p4,p4にて、ガイド部95の差込部96,96と、区画されている。
左右の被係止用部98の間は、開放部分98aとなっている。この開放部分98aは、前述のガイド部95の中央前端に形成された凹部95aと一連の凹みを形成する。
カイド部構成片22b,22bの表面は、夫々、前面部41の表面に接着されるが、この開放部分98aに該当するは接着されない。
【0029】
上面部31、前面部41、下面部51、後面部61の左右両側には、それぞれ左上面フラップ71、右上面フラップ72、左前面フラップ73、右前面フラップ74、左下面フラップ75、右下面フラップ76、左後面フラップ77、右後面フラップ78が折り目線nを介して連設されており、これらで容器本体部10aが形成される(図5〜図7参照)。これらの各部は、折り目線nから90度に折り曲げられることによって、直方体が形成される。その際、左上面フラップ71、左前面フラップ73、左下面フラップ75、左後面フラップ77は互いに糊付けされて、容器の左側における長方形状の開口端の閉鎖がなされ、側面部10cのうち左側面部が形成される。前記の通り、図4を、容器の表面を構成するシートの表面を示すものとし、当該表面と反対側の面がシートの裏面とすると、上記にて、折り目線nは、シート表面について、90度の山折にされることになる。同じく、右上面フラップ72、右前面フラップ74、右下面フラップ76、右後面フラップ78は互いに糊付けされて、容器の右側における長方形状の開口端の閉鎖がなされ、側面部10cのうち右側面部が形成される。
【0030】
また、上被覆残存部12,12の左右にも、折り目線n(ne)を介して、重ね合わせフラップ71z,72zが連設されている。重ね合わせフラップ72zは、上被覆部11に連続するように設けられたものであり、上面部31に上被覆部11が重ね合わされた際に、上面フラップ71,72の表面に重ね合わされるものである。以下必要に応じて、左側の上被覆残存部12に設けられた、重ね合わせフラップ71zを、左重ね合わせフラップ71zと呼び、右側の上被覆残存部12に設けられた、重ね合わせフラップ72zを、右重ね合わせフラップ72zと呼ぶ。
なお、本願では、糊付けとは、接着と同義語として使用し、両面接着テープ若しくは片面接着テープなどでの接着も、糊付けに含まれるものとする。
【0031】
上記の上被覆部11と前被覆部21とは、全体で被覆部10bを形成するもので、被覆部10bは容器本体部10aの表面側に重ねられて糊付けされる。上被覆部11は上面部31の表面に重ねられて略全面若しくは部分的に接着され、前被覆部21は前面部41の表面に重ねられて部分的に接着される。これらの接着箇所は後述する。
【0032】
なお、本例の容器においては、下面部51と後面部61の一部とに、図4に示すように、凹条である押罫52が形成されている。容器を廃棄する際には、この押罫52の形成された部分で各部51,41を折り曲げることにより、容器をコンパクトに折り畳むことが可能である。なお、この押罫52の形成は必須のものではなく、省略しても良い。また、押罫52の形態は図示したものに限られるものではなく、容器を折り畳みやすくするためのものであれば、ミシン目など、種々の形態での実施が可能である。
【0033】
次に、上記の各フラップ71〜78による開口端(図5、図6)の閉鎖について説明する。ここで、容器の左側における開口端は、上面部31と左上面フラップ71との間、前面部41と左前面フラップ73との間、下面部51と左下面フラップ75との間、後面部61と左後面フラップ77との間にそれぞれ存在する折り目線nを縁辺とするものである。また、容器の右側における開口端は、上面部31と右上面フラップ72との間、前面部41と右前面フラップ74との間、下面部51と右下面フラップ76との間、後面部61と右後面フラップ78との間にそれぞれ存在する折り目線nを縁辺とするものである。つまり、各フラップ71〜78は、開口端の縁辺に設けられたシート状体とも表現できる。
【0034】
ここで、左下面フラップ75及び右下面フラップ76について説明する。なお、左下面フラップ75は右下面フラップ76と対称の関係にあるため、代表して右下面フラップ76について説明する。右下面フラップ76には、右後面フラップ78と重なり合う部分である低位部76aと、そうでない部分である高位部76bとが形成される。この低位部76aと高位部76bとは、プレス加工により形成されたものであって、低位部76aと高位部76bとの間には段差である迂回部76cが存在する。
【0035】
この迂回部76cは、図4などに示すように、屈曲した線分として形成されたものであって、下面部51と右下面フラップ76との間における折り目線n(nc)に対して直交する線分として右下面フラップ76の表面に現れた第1帯部分76c1と、この第1帯部分76c1に連続するものであり、折り目線n(nc)に平行な線分として右下面フラップ76の表面に現れた第2帯部分76c2と、この第2帯部分76c2に連続するものであり、第1帯部分76c1と平行な線分として右下面フラップ76の表面に現れた第3部分76c3とからなる。
【0036】
上記の左下面フラップ75及び右下面フラップ76は、図5に示すように、容器側方の開口端の下部に位置するものであるが、これに対向するようにして、開口端の上部には、左上面フラップ71及び右上面フラップ72が設けられている。なお、左上面フラップ71は右上面フラップ72と対称の関係にあるため、代表して右上面フラップ72について説明する。
【0037】
右上面フラップ72表面は、低位部72aと、中位部72bと、高位部72cとからなる。中位部72bは、高位部72cよりも低く、低位部72aは、中位部72bよりも低い。低位部72aは、表面に右重ね合わせフラップ72zが重ね合わされるものであり、当該重ね合わせによって、中位部72bとの段差が解消される。低位部72a表面に重ね合わされた上記右重ね合わせフラップ72zの表面及び中位部72b表面は、右後面フラップ78が重ね合され、この重ね合わせによって、高位部72cとの段差が解消される。低位部72aと中位部72bとの間には段差をなす第1迂回部72dが設けられ、中位部72bと高位部72cとの間には段差をなす第2迂回部72eが設けられている。
【0038】
両迂回部72d,72eは、前述の右下面フラップ76の迂回部76cと同様、屈曲した線分として形成されたものであり、折り目線n(na)と直交する第1帯部分と、第1帯部分と連続し折り目線n(nb)と平行な第2帯部分と、第2帯部分と連続し折り目線n(na)と平行な第3部分とにより構成される。
【0039】
次に、上記の左下面フラップ75及び右下面フラップ76に対して重ね合わされる左後面フラップ77及び右後面フラップ78について説明する。なお、左後面フラップ77は右後面フラップ78と対称の関係にあるため、右後面フラップ78について説明する。
この右後面フラップ78の、折り目線n(nd)に対向する縁辺が、重なり辺78aである。この重なり辺78aは、折り目線n(nd)に対して平行であり、かつ、折り目線nから相対的に近い位置にある第1辺78a1と、また、折り目線n(nd)に対して平行であり、かつ、折り目線n(nd)から相対的に遠い位置にある第3辺78a3と、また、第1辺78a1、第3辺78a3のそれぞれに対して直交するものであって、第1辺78a1と第3辺78a3とを連結する第2辺78a2とを有する。本例では、この重なり辺78aのうち、第1辺78a1と第2辺78a2とによって、右後面フラップ78の角部がともに切り欠かれた形態とされている。
【0040】
この重なり辺78aは、右下面フラップ76及び右上面フラップ72に右後面フラップ78が重ね合わされた際において、上記の右下面フラップ76に形成された迂回部76cと、上記の右上面フラップ72に形成された第2迂回部72eとのそれぞれに対して合致するものとされている。具体的には、重なり辺78aのうち第1辺78a1と迂回部76cの第1帯部分76c1とが、同様に第1辺78a1と第2迂回部72eの第1帯部分とが合致し、重なり辺78aのうち第2辺78a2と迂回部76cの第2帯部分76c2とが、同様に第2辺78a2と第2迂回部の第2帯部分とが合致し、重なり辺78aのうち第3辺78a3と迂回部76cの第3部分76c3とが、同様に第3辺78a3と第2迂回部72eの第3部分とが合致する。
【0041】
なお、上記の「合致」とは、重なり辺78aと迂回部76c,第2迂回部72eの間に隙間が保たれたものであっても良いし、隙間なく密着したものであっても良い。ただし、この密着した状態を超え、右後面ラップ78が上面フラップ72あるいは右下面フラップ76の高位部72c,76bに乗り上げてしまうことは、被収納物の漏れが発生する恐れがあって好ましくない。
右重ね合わせフラップ72zの前端縁も、上記右上面フラップ72の第1迂回部72dと対応する形状を備える。
【0042】
ここで、上記で説明したことを図5〜図7と共に示す。まず、図4の第1折り目線m1、第2折り目線m2及び第3折り目線m3にて、シートを前述のように山折りにする。これによって、図5に示す状態とする。
図5へ示す状態から、折り目線na,naにて左右上面フラップ71,72を折り、折り目線nc,ncにて左右下面フラップ75,76を折り、更に、折り目線ne,neにて、重ね合わせフラップ72z,72zを折ることによって、シートを図6の状態とする。
図6に示す状態から、第4折り目線m4にて、被覆部10bを、上面部31側へ折り込む。このとき、上記の重ね合わせフラップ72z,72zの夫々は、左右の上面フラップ71,72の低位部に接着される。そして、折り目線nd,ndにて左右の後面フラップ77,78を折り込むことにより、上面フラップ71,72へ接着された重ね合わせフラップ72z,72z及び上面フラップ71,72の中位部へ、当該左右の後面フラップ77,78を重ねて接着する。
左右の後面フラップ77,78を重ねて接着した後、左右の前面フラップ73,74を折り目線nb,nbにて折り込むことにより、左右の前面フラップ73,74を、左右の後面フラップ77,78の表面及び左右の上面フラップ71,72の高位部の上に、重ねて接着する(図7(A)参照)。上記において、左右の前面フラップ73,74の接着のみを行い、重ね合わせフラップ72z,72zや、左右の後面フラップ77,78の糊付けは行わずに実施することもできる。
【0043】
このようにして、各フラップ72,74,76,78が重ねられて開口端が閉鎖された場合において、各フラップの重ね合わせ位置に、多少のずれがあっても、左右の下面フラップ75,76及び左右の上下面フラップ71,72の各迂回部の第2帯部分と、左右の後面フラップ77,78の重なり辺の第2辺とによって、せき止められて、更に、左右の重ね合わせフラップ71z,72zの上記第2辺に想到する部分と、迂回部の第2帯部分とによって、せき止められて、粉末の内容物が、外部へ漏れ出るのを阻止できる。
【0044】
ここで、上記の各フラップにおける迂回部の形成をプレス加工にて行い、重ね合わせフラップ71z,72zの重ね合わせ等によるものであることから、比較的簡易な手段で、被収納物の漏れを防止できるという利点を有するものである。
【0045】
また、本例においては、右後面フラップ78の角部を切り欠くことで、重なり辺78aに、第1辺78a1、第2辺78a2、第3辺78a3を形成したものとし、右後面フラップ78が重ね合わされる右下面フラップ76や右上面フラップ72には、上記の重なり辺78aと合致する迂回部が形成されたものであるが、これら重なり辺78aや迂回部の形状は、本例のものに限定されたものではなく、屈曲あるいは湾曲する線分として現れたものであれば良い。
右後面フラップ78角部についての他の形状を例示すると、角部を円形に切り欠いたもの、端辺に四角形状の切り込みを形成したもの、端辺に三角形状の切り込みを形成したもの、端辺に半円形状の切り込みを形成したもの、直線状の辺が繰り返し形成されたもの、湾曲した辺が波線状に繰り返し形成されたものがあげられる。左後面フラップ77、左上面フラップ71や左下面フラップ75についても上記と同様である。
【0046】
次に、容器のその他の部分について説明する。図4及び図12(A)に示すように、上面部31と前面部41には、開口部を形成するためのハーフカット帯p1が形成される。
このハーフカット帯p1は、実質的に左右に並行して伸びる表ハーフカット81と裏ハーフカット82とを備え、表ハーフカット81は容器の内側から紙の中間部分までの深さに形成されたもので、裏ハーフカット82は容器の外側から紙の中間部分までの深さに形成されている。表ハーフカット81と裏ハーフカット82とは、開口部を明ける際に、紙の中間部分で紙の層間剥離によって繋がることにより、開口されるもので、開口した際には、図9に示すように、層間剥離部分83が開口部の周縁に形成されることとなる。
このハーフカット帯p1は、その伸びる方向に第1帯部分paと交差部分pxと第2帯部分pbとを備える。この例では、第1帯部分paは上面部31に形成され、第2帯部分pbは前面部41に形成され、交差部分pxとは第2帯部分pb上面部31と前面部41との境の折り目である第1折り目線m1上に形成されている。
詳しくは、第1帯部分paは、上面部31の左右両辺寄りに2本が形成されている。これら2本の第1帯部分pa、前後に伸びるように対称に形成され、上面部31の前端にて第1折り目線m1に沿って、互いに近づくように横方向に伸びる。この第1帯部分paでは、表ハーフカット81は裏ハーフカット82の外側に形成されている。
左右の第1帯部分paの両端は、交差部分pxを介して、第2帯部分pbにつながる。この第2帯部分pbは、左右の交差部分pxをつなぐように、前面部41に湾曲して形成されている。この第1帯部分pbでは、表ハーフカット81は裏ハーフカット82の内側に形成されている。即ち、表ハーフカット81と裏ハーフカット82とは、交差部分pxで交差することによって、上記第1帯部分と上記第2帯部分とで上記表ハーフカットと上記裏ハーフカットの左右(外側と内側)が逆になっている。
上記の第1帯部分paによって規定された部分が、上面部31に形成される上分離部84であり、これにより、上面部31は上分離部84と上面残存部31aとに区分される。また、第2帯部分pbによって規定された部分が、前面部41に形成される前分離部85であり、これにより、前面部41は前分離部85と前面残存部41aとに区分される。
上分離部84と前分離部85とを併せて分離部86と呼ぶ。この分離部86が開口部を開閉することとなる。
前分離部85は、表ハーフカット81が裏ハーフカット82の内側に形成された第2帯部分pbによって規定されているため、前分離部85を容器内部側に押し込み、シート状体の表側から裏側に向けて力を加えた場合、内側の表ハーフカット81から外方への剥離が生じて、外側の裏ハーフカット82につながり、開口する。
次に、押し込んだ前分離部85を上分離部84の裏側に重ねて引き上げることにより、上分離部84が開口する。この上分離部84では、裏ハーフカット82が表ハーフカット81の内側に形成された第1帯部分paによって規定されているため、上分離部84を、容器から引き上げるように、シート状体の裏側から表側に向けて力を加えた場合、内側の裏ハーフカット82から外方への剥離が生じて、外側の表ハーフカット81につながり、開口する。
このハーフカットを採用することによって、容器の紙の表裏に貫かれた部分を設けることなく分離が可能となるため、密閉性の向上と開口の容易性とを両立させることができる。なお、この例では、開口部は、上面部31と、上面部31に連設された前面部41に形成されるものであるが、前面部41には形成せずに上面部31にのみ形成するようにしてもよい。
なお、表ハーフカット81、裏ハーフカット82は直線のものを示したが、これに限らず、表ハーフカット81を波線にすることによって、表ハーフカット81の端部で人が手を切ると言った恐怖感を少なくすることができる。このように、表ハーフカット81や裏ハーフカット82の具体的形状は、適宜変更し得る。
【0047】
上面部31と前面部41の表面に重ねられて接着される被覆部10bについても、図4に示すように、開口部と対応するようにして分離線91が形成される。この分離線91は、前述の、第2分離線p2,p2、第3分離線p3,p3及び第4分離線p4,p4によって、構成されている。分離線91は、図7(A)に示すように、被覆部10bが容器本体部の表面側に重ねられた際に、容器本体部の分離線(表ハーフカット81及び裏ハーフカット82)の一回り外側に位置するように形成されたもので、ミシン目などの断続線が適当であるが、分離できることを条件に適宜変更し得る。この分離線91によって、被覆部10b(上被覆部11及び前被覆部21)が、被覆残存部92と被覆分離部93とに区画される。前述の通り、上被覆部11が上被覆残存部12と上被覆分離部13とに区画され、前被覆部21が、第2分離線p2にて、前被覆残存部22と前被覆分離部23とに区画され、上被覆残存部12と前被覆残存部22とが、更に、上被覆分離部13と前被覆分離部23とが第5折り目線m5を介して連続している。
【0048】
しかして、これらの容器本体部の分離線(表ハーフカット81及び裏ハーフカット82)と分離線91とによって、開口部を開閉する蓋体100(図7(A))が形成されることとなる。この蓋体100は、分離部86と被覆分離部93とを接着したものであり、その基端は、後面部61と被覆部10b(上被覆部11)との間の第4折り目線m4をヒンジ用折り目線として、容器と回動可能に連設されることとなる。このヒンジ用折り目線は、容器全体で言えば、上面と後面との間の折り目線となるが、これに限らず、他の位置にヒンジ用折り目線を設けても良い。
【0049】
前述の通り、図4の状態から、第1折り目線m1乃至第3折り目線m3を折って、図5の状態とする。
次に、この図5に示す状態から、図6へ示すように、第6折り目線m6及び第7折り目m7にて、台部22b及びガイド部95を、その裏面が押さえ片構成片部22a及び幅狭部97の裏面へ重なるように折り込む。
このとき、ガイド部95は、幅狭部97の裏面と糊付けされる。また、台部22bは、差込部96,96を避けて、押さえ片構成片部22aと糊付けしても良く、また、単に折り込むだけで糊付けしないものとしても良い。
但し、差込部96,96は、何れにも接着しない。
【0050】
被覆分離部93先端に第6折り目線m6を介して設けられた上記のガイド部95は、容器製造時において、ガイド部95の裏面が、上記のように幅狭部97の裏面と重ね合わされて接着され、ガイド部95と幅狭部97と一体になっており、開封後もこの状態を維持する(開封動作及び開封後の使用については後述する)。
上記の通りガイド部95の左右の幅は、重ねられる被覆分離部93の上記幅狭部97より大きく形成されているので、二つ折りにされた状態で、上記の差込部96,96が、幅狭部97より左右へはみ出す。この例では、差込部96,96は、左右対称に、ガイド部95の左右両端に、それぞれ形成される。
幅狭部97より左右にはみ出した差込部96,96は、台部22b,22bと共に、押さえ片22a,22aへ重ねられるのであるが、上記の通り、差込部96,96は、押さえ片22a,22aに接着はされないのである。
【0051】
次に、図7(A)へ示す通り、第5折り目線m5が山折りにされて、前被覆部21が、容器本体の前面部41に配設される。このように、図6に示す状態から図7(A)へ示す状態にするに際して、台部22b,22bの表面は、容器本体の前面部41表面に糊付けされる。但し台部95の表面は、容器本体の前面部41の表面には接着されない。
【0052】
また、上記にて、上分離部84と上被覆分離部13とは重ねられて接着されるが、裏ハーフカット82と分離線91との間の部分は接着されない。また、前分離部85と前被覆分離部23(前分離本体部23a、幅狭部97、ガイド部95)は単に重ねられるに止まり、接着されない。また、裏ハーフカット82と分離線91との間の部分も接着されない。
被覆残存部92(上被覆残存部12と前被覆残存部22)は、容器本体部、即ち、上面部31及び前面部41に接着される。
以上のように構成されたこの実施の形態の容器は、夫々の折り目線が折られて各部が必要に応じて糊付けされることによって、図7(A)に示す容器が完成される。
【0053】
次に、この容器の開封について説明する。
(開封第1工程)
この容器を開封するに際しては、図7(A)に示す幅狭部97の下端(先端97a)から、その裏側に位置するガイド部95に指を差し込み、幅狭部97と一体になっているガイド部95を手前上方に引き上げる(図8)。
このとき、ガイド部95が、第4分離線p4にて台部22bから切り離され、幅狭部97が、第3分離線p3にて押さえ片22aから切り離される。これにて、第8折り目線m8を中心にして、ガイド部95と幅狭部97とは、下方から前方へ立ち上がる。ここで前述のように、前被覆分離部23(前分離本体部23a、幅狭部97、ガイド部95)は前分離部85に単に重ねられるに止まり、接着されない、上記の立ち上げにより前分離部85が露出する。
【0054】
(開封第2工程)
特許文献1の容器では、開封第1工程に引き続き、ガイド部95と幅狭部97とを引き上げ続けると、一気に開封がなされて、蓋体100が形成されたが、本願発明では、次の開封第2工程がなされる。
この開封第2工程は、開封第1工程により露出した前分離部85(図8参照)を、容器の内部側へ押し込む工程である。前述のように、前分離部85を容器内部側に押し込み、シート状体の表側から裏側に向けて力を加えることにより、内側の表ハーフカット81から外方への剥離が生じて、外側の裏ハーフカット82につながり、第2帯部分pbが開く。
(開封第3工程)
押し込んだ前分離部85を上分離部84の裏側に重ねて引き上げる(図9参照)。これにより、上分離部84が開口する。この上分離部84では、裏ハーフカット82が表ハーフカット81の内側に形成された第1帯部分paによって規定されているため、上分離部84を、容器から引き上げるように、シート状体の裏側から表側に向けて力を加えた場合、内側の裏ハーフカット82から外方への剥離が生じて、外側の表ハーフカット81につながり、開口する。
より詳しくは、上記の引き上げ動作によって、被覆分離部93と、これに接着された分離部86とが、第2分離線p2、ハーフカット帯p1に沿って開かれる。これにより、蓋体100が形成され、この蓋体100はヒンジ用折り目線である第4折り目線m4を中心として回動して開閉するものとなる。この蓋体100は、上分離部84と上被覆分離部13とが接着された上面蓋部と、前分離部85と前被覆分離部23とが接着された前面蓋部とを備えるものとなる。
【0055】
以上の開封動作により、上記の通り、ガイド部95が、第4分離線p4にて台部22bから切り離され、幅狭部97及び前被覆分離部23が、第3分離線p3にて押さえ片22aから切り離される。
【0056】
次に、この蓋体100を閉じて、開口部を閉鎖する場合について説明する。
図10(A)及び図11へ示す通り、幅狭部97の先端を下方に向けて、左右の押さえ部22a,22aの間へ降下させる。このとき、差込部96,96は、一旦、台部22b,22bの被係止用部98に乗り上げて、台部22bの被係止用部98表面(前面)と、押さえ片22a,22aの裏面(後面)との間に、差し込まれる。そして、台部22bの被係止用部98裏面(前面)に沿って、更に幅狭部97を降下させると、差込部96,96は、台部22bの被係止用部98を乗り越えて後方Bへ移動し、差込部96,96は、容器本体の前面部41と押さえ片22aの裏面(後面)との間に差し込まれる。このように後方Bへ移動するのは、差込部96は、押さえ片22aの弾性によって、後方Bに向けて、付勢されているからである。そして、幅狭部97を更に降下させようとすると、差込部96,96が、台部22bと押さえ片22aとを繋ぐ折り目(第7折り目線m7)と当接して、それ以上、幅狭部97を降下させることができなくなる。このようにして、図10(B)へ示す通り、容器の正面視において、両押さえ片22a,22aの間に、幅狭部97が配置される。そして、このように幅狭部97が位置された状態において、図7(B)へ示す通り、差込部96は、押さえ片22aの裏面と、容器の前面部41との間に挟まれる。この状態において、差込部96,96の上端96a,96aが、台部22aの被係止用部98の下端22c,22cと当接する。言い換えると、差込部96が、被係止用部98に係止されることにより、幅狭部97は、上方へ後退することが困難になる。このようにして、ガイド部95は、開封後の開口部の閉鎖にて、図7(A)に示す開封前の状態に戻り、容器本体の前面(前面部41表面)と当接する。
この例では、差込部96がガイド部95の左右両側に設けられており、被差込部もこれに応じて、左右両側に設けられるが、差込部96、被差込部を左右いずれか一方のみに設けるようにしてもよい。
【0057】
更に、上記において、幅狭部97が、ガイド部95の厚み分、容器の前面部41より前方に位置する。また、差込部が図7(B)へ示す位置に納まり、台部22bに重ねられた押さえ片22aは、台部22bの厚み分容器の前面部41より前方へ位置する。
【0058】
開封後上記の動作にて閉ざした蓋を、再び開けるときは、開封時と同様の動作、即ち、幅狭部97を摘んで、第8折り目線m8を中心にして先端を回動することにより、押さえ片22aの弾性に抗して、押さえ片22aを前方へ押し広げつつ、差込部96を、押さえ片22aから上方へ引き抜けばよい。
【0059】
上述してきた例では、容器の2つの面に渡って(上面と前面とに)蓋体100を設けたが、容器の1つの面にのみ蓋体100を設けることも可能である。
図示はしないが、例えば、開口部を上面(或いは前面)のみに設けるものとし、これに対応して、蓋体100を上面(或いは前面)のみに設けるものとして実施することができる。
この場合、被覆部において、前被覆部は不要となるが、シートには、前被覆分離部23に相当する部位を設けておく。このような分離部を設けて第5折り目線m5を備えておくことによって、当該第5折り目線m5にて、蓋を屈伸させることができ、差込部の被差込部への挿入を円滑に行うことができるからである。
また、この場合、蓋体100は、ヒンジ用折り目線に対して、垂直方向に切り取られるようにしても良いし、斜め方向に切り取られるようにしても良い。
更にまた、上記に説明した例では、上面部31に対して被覆部10bが重ね合わされるものであったが、それ以外に、上面部31を省略し、上被覆部11のみで容器の上面を構成するものとしても良い。
【0060】
次に、前述の計量スプーンの台紙101の容器への取付構造を、図9及び図12(A)に基づき説明する。
台紙101は、蓋体100の裏面(より詳しくは上分離部84)に沿って配置される。これによって、開封時に使用者が蓋体100を開封すると、蓋体100の裏面に台紙101がくっついた状態で表れ、使用者にとって使い勝手のよいものになる。
【0061】
まず、展開図である図12に基づき説明すると、台紙101は、切り目線135を介して上面部31(上分離部84)に連設される。そして、さらに台紙101の先端側(図面の上側)に、糊付け片151が切り目線152を介して連設される。なお、この糊付け片151は、台紙101の左右辺の上端寄りに設けるなど、他の部分に設けても良い。また、台紙101の左右辺には、補助片141が連設される。より詳しくは、台紙101の左右には、切り目線142を介して補助片141が連設されており、この補助片141の前辺は、折り目線143を介して上面部31に連設されている。
【0062】
展開状態からの貼り付けに際しては、台紙101は、180度折り曲げられて上分離部84の裏面に配位され、糊付け片151と上分離部84とが接着剤や両面粘着テープで等で接着される。上記のように、台紙101が180度折り曲げられるため、切り目線135は、この大きな折り曲げによって破断される。特に、破断しやすいように、切り目線135は、繋がっている部分よりも切れている部分の方が多く(長く)しておくことが好ましい。この折り曲げに際して、台紙101と共に左右の補助片141も折り目線143から折り曲げられるが、折り目線143は押し罫などの折り目線に止まるため、繋がった状態で上面部31の裏に折り返される。
【0063】
このように、上面部31は、その裏面に台紙101が取り付けられた状態で、前面部41、下面部51、後面部後面部61、上被覆部11、前被覆部21と共に、それぞれ折り曲げられて、必要部分が接着され、容器本体(箱体)の組立と内容物の収納がなされる。開封に際しては、上分離部84の裏面には糊付け片151が接着されているため、台紙101は上分離部84と共に起こされる。このとき、補助片141は上面部31の裏側に止まるため、切り目線142が破断される。使用者は、糊付け片151と台紙101との間の切り目線152から、台紙101を破り取って、計量スプーンを組み立てることができる。なお、この例では、切り目線135を破れ易い破断線として実施したが、180度折り曲げても破れない切り目線として実施することもできる。また、補助片141は左右何れか一方にのみ設けて実施することもでき、省略することもできる。なお、この補助片141は接着剤などによって上面部31の裏側に接着してもよい。この場合、前述の糊付け片151を設けずに実施することもでき、補助片141を糊付け片として機能させることもできる。
【0064】
以上、上記の実施の形態では、ハーフカット帯p1が形成される上面部を被覆部10bで被覆したが、被覆部10bを設けることなく、上面部31と前面部41をむき出しのもとして実施することも可能である。分離部86の形状は、容器の用途や大きさや形状、開口部の用途や大きさに応じて、適宜変更することができるものである。
【符号の説明】
【0065】
p1 ハーフカット帯
81 表ハーフカット
82 裏ハーフカット
pa 第1帯部分
pb 第2帯部分
px 交差部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの一部分を手で破り開くことによって開口部を形成するようにしたシート製の容器において、
上記開口部はハーフカット帯によって規定され、
上記ハーフカット帯は、実質的に左右に並行して伸びる表ハーフカットと裏ハーフカットとを備え、
上記表ハーフカットは上記シート状体の表側から裏側に向けて形成され裏面に達していないものであり、
上記裏ハーフカットは上記シート状体の裏側から表側に向けて形成され表面に達していないものであり、
力が加えられることにより、上記表ハーフカットと裏ハーフカットとが繋がるように剥がれがシート状体に生じて、上記ハーフカット帯が開封されるものであり、
上記ハーフカット帯は、その伸びる方向に第1帯部分と交差部分と第2帯部分とを備え、上記表ハーフカットと上記裏ハーフカットとが上記交差部分で交差することによって、上記第1帯部分と上記第2帯部分とで上記表ハーフカットと上記裏ハーフカットの左右が逆になることを特徴とする容器。
【請求項2】
上記容器は上記シート状体を折り曲げる折り目線を備え、上記折り目線上に上記交差部分が配置されたことを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
上記の容器本体は、上面部と、この上面部から折り目を介して連設された前面部とを備えるものであり、
上記開口部は、上記上面部と上記前面部とにかけて形成されるものであり、
上記上面部及び上記前面部は、上記ハーフカット体によって容器本体側に残る残存部と、容器本体側から分離する分離部とに区分され、
上記ハーフカット体が開封されることにより、容器本体側から分離部が分離されることによって上記開口部が形成され、
上記分離部は、上面部に形成される上分離部と、前面部に形成される前分離部とを備え、
上記第1帯部分によって上記上分離部が規定され、上記第2帯部分pbによって上記前分離部が規定され、
上記前分離部を容器内に押し込むことにより、上記第2帯部分を開封し、
開封された上記前分離部を上記上分離部の裏面に重ねて引き上げることにより、上記第1帯部分を開封することを特徴とする請求項2記載の容器。
【請求項4】
上記の容器本体は、前面部の表面側に被せられる前被覆部を備え、
前被覆部は、破断可能な分離線によって容器本体側に残る前被覆残存部と、容器本体側から分離する前被覆分離部とに区分され、
前被覆分離部は上記前分離部の表面側に配位され、前被覆分離部を表面側に引くことで開封し、この開封部分から上記前分離部が表れるものであり、表れた上記前分離部を容器内に押し込むことにより、上記第2帯部分を開封することを特徴とする請求項3記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−180111(P2012−180111A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44706(P2011−44706)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000237846)富士包装紙器株式会社 (10)
【Fターム(参考)】