説明

紙葉類処理装置のセンサ制御装置

【課題】本実施形態は装置を停止することなくセンサの診断と調整を行うことが可能であり、装置の信頼性と高稼働率を両立させることができる紙葉類処理装置のセンサ制御装置を提供する。
【解決手段】本実施形態は、制御対象センサが搬送路を通過する紙葉類を検出する。処理部は前記制御対象センサの上流の搬送路を通過する紙葉類の分岐処理及び又は検出処理を行う。そして制御部が前記処理部の処理結果に影響されて生じる時間であって前記制御対象センサに次の紙葉類が到達するまでの空き時間の長さ応じて、前記制御対象センサを検出スタンバイ状態、感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は紙葉類処理装置のセンサ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類処理装置では、複数枚の紙葉類を搬送路上に取出して搬送し、搬送される各紙葉類からその区分先に関する情報を読み取って、その区分先となる区分ポケットへ各紙葉類を区分集積している。区分先に関する情報に基づいて、搬送路上の紙葉類は、搬送路途中の分岐装置で複数の搬送路へ分岐される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−324574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙葉類処理装置においては、搬送路上の複数個所に、紙葉類(媒体と称しても良い)の有無を検出したり、紙葉類に記載されている区分先に関する情報を読み取るためのセンサが設定されている。
【0005】
紙葉類処理装置は、紙葉類の搬送処理などで紙粉などの埃が発生し、装置の長時間運転に比例して、センサの検出機能が劣化する。例えば、搬送路上において紙葉類の通過を判別するセンサでは、発光部もしくは受光部に埃が堆積することで発光量、明暗検出レベルが変化する。また、センサは周囲の温度環境や動作頻度に応じても劣化していくため、装置稼働に応じて調整時(初期時)の状態から変化していく。
【0006】
センサの状態が調整時の状態から変化することによって、検出結果の信頼性は徐々に低下し、ある一定の条件を下回ると誤検出を発生させ、装置の誤動作もしくは搬送ジャムを誘発する。これを防ぐためには定期的に機器内部の清掃を行うか、センサの再調整を行う必要があるが、清掃もしくは調整は装置の運転を停止し、保守員または操作員の手によって行わなければならないため、装置の稼働率に影響を与えるという問題点がある。また、保守員または操作員は現在のセンサの検出レベルの変化量を知る術がなく、清掃もしくは調整を適時行うことができないという問題もある。
【0007】
そこで本実施形態では、装置を停止することなくセンサの診断と調整を行うことが可能であり、装置の信頼性と高稼働率を両立させることができる紙葉類処理装置のセンサ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態によれば、搬送路を通過する紙葉類を検出する制御対象センサと、前記制御対象センサの上流の搬送路を通過する紙葉類の分岐処理及び又は検出処理を行う処理部とを有する。そして制御部が、前記処理部の処理結果に影響されて生じる時間であって前記制御対象センサに次の紙葉類が到達するまでの空き時間の長さ応じて、前記制御対象センサを検出スタンバイ状態、感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態に係る区分機の外観を示す斜視図。
【図2】図1の実施の形態に係る区分機の判別部で判別不能となった区分情報をオペレータの打鍵により入力するためのビデオコーディングシステムの構成を説明するための図。
【図3】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の内部構造を左側半分だけ拡大して示す概略図。
【図4】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の内部構造を右側半分だけ拡大して示す概略図。
【図5】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の搬送路の一部を示す概略図。
【図6】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の搬送路に設置されたあるセンサ41Bへ紙葉類が到達する時間の例を説明するための図。
【図7】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の搬送路に設置されたあるセンサ41Bの調整時間を確保する条件の例を示す図。
【図8】図1の紙葉類処理装置の搬送路に設置されたあるセンサ41Bの調整時間を確保できない場合の例を示す図。
【図9】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の搬送路に設置されたあるセンサ41Bの調整時間を確保するための手法の例を示す図。
【図10】図1の実施の形態に係る紙葉類処理装置の搬送路に設置されたあるセンサ41Bの構成例と、制御データなどの入出力方法の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1には、この発明の実施の形態に係る紙葉類処理装置1(以下、単に処理機1と称する)の外観を斜視図にして示してある。また、図2には、処理機1で判別不能となった区分情報をオペレータの打鍵により入力するビデオコーディングシステム30(以下、単にVCS30と称する)の構成を概略的に示してある。さらに、図3および図4には、処理機1の内部構造を概略的に示してあり、図3には処理機1の左側半分を拡大して示し、図4には右側半分を拡大して示してある。
【0011】
図1に示すように、処理機1は、大きく分けて3つのユニット、すなわち、向かって左側に配置された供給ユニット2、中央に配置された区分集積ユニット4、および向かって右側に配置されたバーコード処理ユニット6を有する。区分集積ユニット4は、処理機1の大部分を占める大きさを有する。
【0012】
図1および図3に示すように、供給ユニット2は、処理対象となる複数枚の紙葉類の投入を受け付ける投入部11を有する。投入部11の図中右端には、投入部11を介してオペレータによって立位で投入された複数枚の紙葉類のうち右端にある紙葉類から順に搬送路3上に取出す取出部12が設けられている。取出部12から延びた搬送路3上には、搬送路3上に取出された紙葉類のうち金属等の異物を含んでいることが検知された紙葉類を搬送路3から分岐せしめて排除する排除ポケット13、2枚取り、スキュー、長さ異常などの搬送異常を生じている紙葉類を搬送路3から分岐せしめて排除する排除ポケット14、および搬送路3を介して搬送されている紙葉類の表面からその区分先に関する情報、すなわち区分情報を読み取る読取部15が順に配設されている。
【0013】
読取部15を介して各紙葉類から読み取った区分情報は、処理機1の全体動作を制御する後述する中央制御装置(以下制御部、図示せず)で処理され、この区分情報から当該紙葉類の区分先が判別される。
【0014】
尚、読取部15から延びた搬送路3は、区分集積ユニット4の下端近くを通ってバーコード処理ユニット6まで延びている。
【0015】
図4に示すように、処理機1の右側に配設されたバーコード処理ユニット6は、CPUで判別した当該紙葉類の区分先をバーコード化した区分先コードを、搬送路3を介して搬送される当該紙葉類の表面に印刷するバーコードプリンタ16を有する。また、バーコードプリンタ16より下流側の搬送路3上には、紙葉類の表面に印刷したバーコードをベリファイリードするバーコードリーダ17が設けられている。そして、バーコードリーダ17を通って延びた搬送路3が、区分集積ユニット4の右端に配設された段パス部18の下端に接続されている。
【0016】
区分集積ユニット4は、紙葉類の区分先となる複数段、複数列の区分ポケット21を有する。本実施の形態では、8段6列の区分ポケット21をユニット化した区分部モジュールMを複数個並設し、この並設した区分部モジュールMの右側に段パス部18を設けて区分集積ユニット4を構成している。尚、図中最も左側にある区分部モジュールMの最も左側の列にある8つの区分ポケットは、区分集積ユニット4の各段に搬送された紙葉類のうちリジェクトすべき紙葉類を排除集積するリジェクトポケット21aとして機能する。
【0017】
また、段パス部18の各段には、複数の段パスゲートが設けられ、各区分ポケット21には、それぞれ区分ゲートが設けられている。しかして、バーコード処理ユニット6を介して段パス部18へ送り込まれた紙葉類は、その区分先に応じて切換え制御される段パスゲートおよび区分ゲートを介して所定の区分ポケット21へ区分集積されることになる。
【0018】
図3および図4に詳細に示すように、供給ユニット2の取出部12からバーコード処理ユニット6を介して区分集積ユニット4の段パス部18まで延びた搬送路3上には、紙葉類の通過を検知してその搬送状態を監視するための複数のセンサSが配設されている。また、区分集積ユニット4の各区分ポケット21の上方にも、各区分ポケット21毎に、紙葉類の搬送状態を監視するためのセンサSが設けられている。尚、各区分ポケット21に設けられたセンサSは、1つ下流側の区分ゲート22の切換えタイミングを取得するタイミングセンサとしても機能する。
【0019】
各センサSは、紙葉類が通過する搬送路を挟んで発光部と受光部を有し、搬送路を通過する紙葉類がその光軸を遮ることをもって紙葉類の通過を検知するように機能する。つまり、各センサSは、搬送路3を搬送される紙葉類の先端が到達したことおよび後端が通り抜けたことを検知し、紙葉類の搬送速度からその搬送方向に沿った長さをも検出できるようになっている。さらに、各センサSは、連続して搬送される2枚の紙葉類のギャップ検知にも利用される。つまり、各紙葉類の先端通過時刻を検知し、1枚目の紙葉類の搬送方向長さを検知することにより、ギャップを算出できる。
【0020】
図2に示すように、VCS30は、処理機1の読取部15を介して読み取った区分情報のうちCPUで区分先が判別不能となった区分情報を当該紙葉類の認識番号とともに処理機1から受け取って蓄積する蓄積分配装置31を有する。蓄積分配装置31には、オペレータによる操作入力がなされる端末機として、複数台のビデオコーディングデスク(VCD)32、およびスーパーバイザー端末33が接続されている。
【0021】
処理機1から取得して蓄積分配装置31に蓄積した区分情報は、VCD32からの要求に基づいて各VCD32に分配され、各VCD32を担当するオペレータによる打鍵により正しい区分情報が入力される。このようにして、訂正入力された区分情報は、当該紙葉類の認識番号とともに処理機1へ返信される。
【0022】
図1および図3に示すように、処理機1の前面、すなわち供給ユニット2の前面には、オペレータによる各種操作入力を受け付けるとともにオペレータに対する各種操作案内を表示するための操作・表示パネル5が設けられている。この操作・表示パネル5を介して、処理機1の動作モード(例えば処理機1の稼働状況の目的に合わせて選択される読取モード)が設定され、処理機1の運転開始や停止が指示される。
【0023】
また、図1に示すように、区分集積ユニット4の中央上部には、処理機1の稼働状況などをオペレータに知らせるための表示器7が設けられている。この表示器7および上記操作・表示パネル5を介して、処理機1の動作モードや区分指定面が表示され、または区分ポケット21の集積満杯やジャム発生などのイベントが表示される。
【0024】
上記したように紙葉類処理装置1は、区分情報に基づいて、紙葉類を集積ユニット4内の適切な集積部へ搬送している。そのために、紙葉類の搬送路を決定する箇所には分岐装置が設けられ、また紙葉類が確実に搬送されているかどうかをチェックするために複数個所にセンサが設けられている。例えば、取出部12から取り出した紙葉類を、複数の搬送路へ分岐する場合、あるいは段パス部18において紙葉類を複数の段の搬送路へ区分する場合は、分岐装置が用いられる。
【0025】
図5には、説明を容易にするために紙葉類の分岐装置と分岐先の搬送路との基本的な構成を概略的に示している。分岐装置40は、上流の搬送路(例えば共通搬送路)より搬送されてきた紙葉類を、制御部100からの分岐制御データに基づいて、例えば4つの搬送路A、B、C、Dの何れかに分岐して送り出す。搬送路Aの途中には間隔を置いてセンサ41A−44Aが配置され、搬送路Bの途中には間隔を置いてセンサ41B−44Bが配置され、各搬送路Cの途中には間隔を置いてセンサ41C−44Cが配置され、搬送路Dの途中には間隔を置いてセンサ41D−44Dが配置されている。搬送路Aの終端には集積装置51A、搬送路Bの終端には集積装置51B、搬送路Cの終端には集積装置51C、搬送路Dの終端には集積装置51Dが配置されている。
【0026】
制御部100は、分岐装置40の動作を区分情報に基づいて制御し、紙葉類を何れかの搬送路A−Dに分岐させる。またセンサ41A−44A、センサ41B−44B、センサ41C−44C、センサ41D−44Dのそれぞれは、制御部100からの信号に応じて、検出スタンバイ状態、感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかの状態に制御される。
【0027】
紙葉類が所定時間内にセンサの配置位置を通過することが明らかな場合に、当該センサは、スタンバイ状態に設定される。感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間は、次に説明するように紙葉類がセンサ位置に到達するまでに、チェック、感度調整の時間的余裕がある場合に設定される。
【0028】
<感度チェック、感度調整>
感度チェックは、センサにおいて、発光素子を点灯させたとき、受光素子での検出電流のデジタル値が、予め設定している値の範囲であるかどうかをチェックしている。受光素子が汚れていたり、発光素子の発光強度が低下すると、検出電流のデジタル値が低下するので、感度が低下していることを判断できる。感度調整は、感度が低下しているセンサの感度を復旧させるもので、発光素子に駆動電流値を調整する、及びまたは受光素子の検出感度を可変することである。制御部100は、測定した感度に応じて、調整値を計算して前記調整を行う。
【0029】
<感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の設定>
図6には感度チェックデータ読み取り期間或いは感度調整期間を設定するための時間的余裕を判断する方法の一例を示している。図に示すように、紙葉類61、62は、搬送ピッチY(mm)をもって、搬送速度v(mm/s)で搬送されるものとする。紙葉類62が紙葉類61の位置に到達するまでの時間は、
t1=(Y/v)(s)
となる。また紙葉類62が仮に搬送路Bに分岐されたとして、この紙葉類62がセンサ41Bに到達するまでの時間は、
t2=(X/v)(s)となる。Xは、分岐部40からセンサ41Bまでの距離。
【0030】
今、先行している紙葉類61が分岐部40で搬送路Aに分岐されたものとする。この場合は、搬送路Bのセンサ41Bは、次の紙葉類62が分岐装置40で仮に搬送路Bに分岐されたとしても、
時間Tp(s)= t1+t2の時間的余裕がある。図では、センサ41Bのみしか示していないが、図5のような構成であれば、センサ41C,41Dにも時間的余裕が生じたことになる。
【0031】
したがって、センサの感度チェック、或いは感度調整に必要な時間をTmとし、
Tp>Tmであれば、この時間Tmの経過時間にセンサの感度チェック、或いは感度調整を実施することが可能である。つまり、本装置では、稼働中にセンサの感度チェック、及び感度調整を実施し、センサの検出結果の信頼性を確保することができる。また、センサの調整における結果がある範囲を超えた場合(過剰調整になった場合)には埃堆積の過剰として保守員もしくは操作員に清掃を促す警告を通知することで、保守員もしくは操作員は装置の清掃時期を知ることができる。
【0032】
図7には、搬送路Bに設置されているセンサの中でも、搬送路Bの終わり近くの下流のセンサ44Bを取り出して、このセンサ44Bの調整時間或いは感度チェックのデータ読み取り期間の確保する他の条件の例を示している。図5で示したように、センサは、必ずしも分岐装置40の直ぐ下流でなく、分岐装置40から離れた位置にも複数のセンサが設置される。このようなセンサ、例えば図7のセンサ44Bを考えた場合、以下のことが言える。即ち、センサ44Bの調整に要する時間をTm(s)とし、このセンサ44Bを紙葉類61が通過したあと、このセンサ44Bに次の紙葉類62が到達するまでの時間tr(s)を考えた場合、
Tr > Tm ならば、センサ44Bの調整時間を確保することができる。
【0033】
上記の調整時間に対して、図8(A),図8(B)は、センサ44Bの調整時間を確保できなかった場合を示している。図8(A)は、センサ44Bの調整に要する時間をTm(s)とし、このセンサ44Bを紙葉類61が通過したあと、このセンサ44Bに次の紙葉類62が到達するまでの時間tr(s)を考えた場合、
Tr < Tm である。この場合は、センサ44Bの調整時間を確保することができない。図8(B)は、分岐装置40の上流に存在する紙葉類61Yまでも考慮した例である。今、センサ44Bを、紙葉類61が通過し、次に、上流の紙葉類61Xが分岐装置40により、搬送路Aの方へ分岐されるものとする。さらに分岐装置40の上流には、紙葉類間のギャップを挟んで次の紙葉類61Yが存在するものとする。
【0034】
このような場合に、紙葉類61Yが分岐装置40へ到達するまでの時間をt1(s)、仮にこの紙葉類61Yが搬送路Bへ分岐されて、センサ44Bへ到達するまでの時間をt2(s)とする。すると、紙葉類61Yがセンサ44Bへ到達するまでの時間tp(s)は、
tp(s) = t1(s) + t2(s) となる。ここでもしセンサ44Bの調整に必要な時間をTm(s)とし、
Tm(s) > tp(s) (= t1(s) + t2(s))
なる関係が成立すると、センサ44Bの調整時間を確保できないことになる。
【0035】
この問題を解決するためには、次のような対策を行うことで解決可能であり、図9を参照して説明する。図9には図5に示したセンサ配置状態を再度示している。今、搬送路Bのセンサ42Bの調整時間を検討する。ここで、分岐装置40で搬送路Bに分岐された紙葉類61Dがセンサ42Bに到達するまでの時間をT42bとする。次に、分岐装置40よりも上流の搬送路にて一定の間隔で送られてくる紙葉類間の間隔(図の例であると紙葉類61Eと61Dの間隔;所謂ギャップ)による時間をTr(s)とする。
【0036】
センサ42Bの調整時間を考えた場合、搬送路Bに進入した以降の紙葉類が次々と別の搬送路に分岐されれば、長い調整時間を得ることができる。したがって、センサ42Bの調整時間Tm(s)として、
Tm(s) < n x Tr(s) + T42b が成立するケースを検出することで、センサ42Bの調整を実施することができる。nは、分岐装置40において、進入する紙葉類が搬送路Bを除く他の搬送路へ分岐される回数(紙葉類枚数)である。分岐装置40で紙葉類が搬送路Bを除く他の搬送路へ分岐される枚数が多ければ多いほど、センサ42Bの調整時間を長く確保できることになる。
【0037】
センサ42Bの十分な調整時間が確保できるかどうかの判定は、制御部100において判断することができる。即ち、制御部100には、紙葉類を分岐するために、予め複数の紙葉類の区分情報が送信されている。制御部100はこの区分情報を利用して、例えば、各搬送路の各センサには、調整のためにどれだけの時間的余裕があるかどうかを判定することができる。
【0038】
調整対象となるセンサに調整のための時間的余裕が、例えばある時間TM1からある時間TM2まで生じている場合は、当該時間帯(TM1−TM2)に調整を行うように当該センサに指令を与えることができる。この時間TM1、TM2は、例えば紙葉類処理装置内の絶対時間を示すタイムスタンプである。
【0039】
図10は、センサの一構成例を示している。紙葉類処理装置内部には、多数のセンサが配置される。それぞれのセンサに対して独自に配線を行うと、配線規模が大きく、装置内部が複雑化し、価格の増加、メンテナンスの手間の増加となる。そこで、複数のセンサを制御する場合、センサ用メインバス99からの指令に基づいて制御する。
【0040】
センサ70の内部を代表して説明する。発光素子71には、電圧増幅器72からの駆動電圧が与えられる。駆動電圧増幅器72には、利得制御回路73から制御信号が与えられる。駆動電圧が変化すると発光素子71の輝度が変化し、紙葉類などの読み取り感度を制御することができる。利得制御回路73は、デジタルアナログ(DA)変換器74からの制御信号に基づいて出力制御信号を可変することができる。DA変換器74には、制御信号を可変することができる制御データがレジスタ75から与えられる。この制御データは、データ入出力制御部76がメインバス99から取得したものである。一方、81は受光素子であり、発光素子71からの光を受光し、光量に応じた値の検出電流を出力する。検出電流は、電流増幅器82を介してアナログデジタル(AD)変換器83で例えば8ビットにデジタル化され、センサ出力となる。
【0041】
電流増幅器82には、利得制御回路84から制御信号が与えられる。この制御信号により電流増幅度を変化させることは、受光素子81の感度を調整することに相当する。感度調整は、この方法に限らず、受光素子81の駆動電圧又は電圧を可変してもよい。利得制御回路84の出力制御信号は、DA変換器85からの制御信号に基づいて可変される。DA変換器85には、制御データがレジスタ86から与えられる。制御データの値により、電流増幅器82の制御信号を可変することができる
一方、電流増幅器82の出力をデジタル変換するAD変換器83の出力は、ラッチ回路87により、ラッチされ、レジスタ88を介してデータ入力出力制御部76により読み取られる。
【0042】
データ入力出力制御部76は、メインバス99から送られてくるシリアルデータを読み取り、シリアルパラレル変換を行う。シリアルパラレル変換されたデータの同期データを検出し、同期データに続くパケット内のヘッダ、アドレス、各種識別データ、各種制御データなどを取り込むことができる。またデータ入力出力制御部76は、受光素子81の読み取り状態を示す出力データ、つまりラッチ回路87、レジスタ88を経由してきたデータを、パラレルシリアル変換し、所定の回収データパケットのタイミングでメインバス99に送り込むことができる。
【0043】
したがって、メインバス99上には、多数のセンサに対する制御データ及び回収データパケットが存在し、また、データ伝送の安全と正確を得るために1つのセンサに対して同じ内容の制御データが複数回伝送される。
【0044】
図10には、送受信信号のフォーマットの一例を示している。送受信信号は、例えばヘッダパケット91、アドレスデータパケット92(各センサに割り当てられている)、VA識別データパケット93(続く制御データパケット94は電圧増幅器72用のものであることを示す)、IA識別データパケット95(続く制御データパケット96は電流増幅器82用のものであることを示す)、ラッチ回路識別データパケット97が含まれる。さらに回収データパケット98があり、このパケットは、感度検出のためのデータを配置するために利用される。
【0045】
上記の各パケットには、先頭に同期信号、タイムスタンプ(装置内の絶対時間を示している)、データの順で格納されている。データ入出力制御部76は、同期信号に同期して、次に続いているデータを取り込み、パケットの種類を判別する。ヘッダパケットには、このヘッダの後に、どのような種類のパケットにデータが含まれているかを示している。アドレスデータパケット92には、センサ固有のアドレスが含まれており、センサ70が自己のアドレスを認識すると、データ入力出力制御部76は、後続のデータの取り込みを開始する。
【0046】
制御データには、センサの空き時間(検出スタンバイ状態ではない、感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間)を設定するための、タイムスタンプが含まれている。タイムスタンプは、例えば、開始と終了を示すタイムスタンプが含まれており、開始時刻で、感度チェックデータ読み取り、或いは感度調整を開始し、終了時刻で感度チェックデータ読み取り、或いは感度調整を停止し、検出スタンバイ状態に移行する。
【0047】
尚、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。
【0048】
なおセンサの感度チェックデータ対感度調整データは、予め実験により求められており、制御部のメモリに格納されている。したがって、感度チェックデータが変化したら、感動調整データも変化して、センサが常に安定した検出を得るように維持される。また発光素子側と受光素子側のいずれを調整するかは、素子の駆動電圧の可変許容範囲、或いは増幅器の可変範囲などに応じて、一方及び又は両方が制御される。また制御データの範囲が上限或いは下限に到達すると、警告ランプ或いは警告表示が得られる。
【0049】
またこの実施形態は、制御方法としても特徴を有する。
【0050】
(1)制御対象センサが搬送路を通過する紙葉類を検出し、処理部が前記制御対象センサ44Bの上流の搬送路を通過する紙葉類の分岐処理及び又は検出処理(40及び又は43B)を行い、制御部100が前記制御対象センサと前記処理部を制御する制御方法において、前記処理部の処理結果に影響されて生じる時間であって前記制御対象センサに次の紙葉類62が到達するまでの空き時間の長さに応じて、前記制御対象センサを検出スタンバイ状態、感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御するようにした方法である。
【0051】
(2)前記処理部は、分岐装置40であり、前記制御対象センサ44Bが位置する搬送路の上流に位置する上流センサ43B若しくは、前記制御対象センサ44Bが位置する搬送路よりも上流の搬送路から複数の搬送路へ紙葉類を分岐することができる。
【0052】
(3)また前記上流センサと前記制御対象センサとの間に紙葉類が存在しない状態で、前記制御対象センサを最新の紙葉類が通過した後、前記上流センサが検出した紙葉類が前記制御対象センサに到達するまでの時間に前記制御対象センサを前記感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する方法を含むことができる。
【0053】
(4)前記分岐装置と前記制御対象センサとの間に紙葉類が存在しない状態で、前記制御対象センサを最新の紙葉類が通過した後、前記分岐装置が前記制御対象センサの搬送路に次の紙葉類を分岐しない場合に、前記制御対象センサを前記感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する方法を含むことができる。
【0054】
(5)前記分岐装置と前記制御対象センサとの間に紙葉類が存在しない状態で、前記制御対象センサを最新の紙葉類が通過した後、前記分岐装置が複数の紙葉類を連続して前記制御対象センサの搬送路に分岐しない場合に、前記制御対象センサを前記感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する方法を含むこともできる。
【0055】
(6)また前記制御対象センサに次の紙葉類が到達するまでの空き時間の長さが、前記制御対象センサの感度チェックデータ読み取り期間及び前記感度調整期間より短い場合は、前記検出スタンバイ状態に設定する。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…区分機、2…供給ユニット、3…搬送路、4…区分集積ユニット、5…操作・表示パネル、6…バーコード処理ユニット、7…表示器、11…投入部、12…取出部、13、14…排除ポケット、15…読取部、16…バーコードプリンタ、17…バーコードリーダ、18…段パス部、21…区分ポケット、21a…リジェクトポケット、22…区分ゲート、M…区分部モジュール、S…センサ、40…分岐装置、41A−44A,41B−44B,41C−44C,41D−44D…センサ、51A−51D…集積装置、100…制御部、61、62…紙葉類。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を通過する紙葉類を検出する制御対象センサと、
前記制御対象センサの上流の搬送路を通過する紙葉類の分岐処理及び又は検出処理を行う処理部と、
前記処理部の処理結果に影響されて生じる時間であって前記制御対象センサに次の紙葉類が到達するまでの空き時間の長さに応じて、前記制御対象センサを検出スタンバイ状態、感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する制御部と、
を有した紙葉類処理装置のセンサ制御装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記制御対象センサが位置する搬送路よりも上流の搬送路から複数の搬送路へ紙葉類を分岐する分岐装置、若しくは前記制御対象センサが位置する搬送路の上流に位置する上流センサである請求項1記載の紙葉類処理装置のセンサ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記上流センサと前記制御対象センサとの間に紙葉類が存在しない状態で、前記制御対象センサを最新の紙葉類が通過した後、前記上流センサが検出した紙葉類が前記制御対象センサに到達するまでの時間に前記制御対象センサを前記感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する請求項2記載の紙葉類処理装置のセンサ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記分岐装置と前記制御対象センサとの間に紙葉類が存在しない状態で、前記制御対象センサを最新の紙葉類が通過した後、前記分岐装置が前記制御対象センサの搬送路に次の紙葉類を分岐しない場合に、前記制御対象センサを前記感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する請求項2又は請求項3記載の紙葉類処理装置のセンサ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記分岐装置と前記制御対象センサとの間に紙葉類が存在しない状態で、前記制御対象センサを最新の紙葉類が通過した後、前記分岐装置が複数の紙葉類を連続して前記制御対象センサの搬送路に分岐しない場合に、前記制御対象センサを前記感度チェックデータ読み取り期間、感度調整期間の何れかのモードに制御する請求項2記載の紙葉類処理装置のセンサ制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記制御対象センサに次の紙葉類が到達するまでの空き時間の長さが、前記制御対象センサの感度チェックデータ読み取り期間及び前記感度調整期間より短い場合は、前記検出スタンバイ状態に設定する請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の紙葉類処理装置のセンサ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−66827(P2013−66827A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205789(P2011−205789)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】