説明

紙葉類取扱装置

【課題】紙幣取扱装置101は、紙幣収納庫70に複数の紙幣用カセット71があっても紙幣の枚数管理が容易である。
【解決手段】紙幣取扱装置101は、出金部30bと、紙幣判別部40と、紙幣を収納する第1収納部71A〜74Aおよび第2収納部71B〜74Bを有する紙幣用カセット71〜74を有する紙幣収納庫70と、搬送機構と、一時保管庫50と、制御ユニット80とを備えている。紙幣の払い出し指令により、特定された紙幣用カセット71の第1収納部71Aから紙幣を払い出し、払い出した紙幣を紙幣判別部40が正常券であると判別したときには出金部30bへ搬送し、リジェクト紙であると判別したときには一時保管庫50に保管し、紙幣の払い出しが完了したときに、一時保管庫50に保管された紙幣を、特定された紙幣用カセット71の第2収納部71Bへ戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金融機関などで使用される現金自動取引装置に実装されるような紙葉類取扱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関などで使用される現金自動取引装置では、収納庫に収納された紙幣を入出金部に搬送する際に、紙幣の2枚出しや連れ出しが発生してしまうと、収納庫内に集積されている紙幣の枚数が分からない状態になることがある。こうした場合に、収納庫内に集積されている紙幣の枚数を把握するための技術として、収納庫内の紙幣を別の収納庫に移動させ、紙幣の枚数を計数する機能を有した装置(特許文献1)や、装填回収庫を用いて紙幣の枚数を計数する機能を有した装置(特許文献2)が知られている。
【0003】
しかし、上記の従来の技術では、構成が複雑であり、また収納庫内にある紙幣の枚数を検査する作業につき、収納庫から全紙幣を繰出し・回収する処理や保守員の手作業による計数を行なうなどの面倒な作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295132
【特許文献2】特開2003−272027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、紙葉類収納庫の紙葉類の枚数管理が容易である紙葉類取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、複数の紙葉類を選択して払い出す紙葉類取扱装置であって、
紙葉類を集積する集積部と、
上記紙葉類が正常である正常券か、正常でないリジェクトされるリジェクト紙であるかを判別する紙葉類判別部と、
上記紙葉類を収納する第1収納部および第2収納部を有する紙葉類用カセットを複数有し、上記各々の紙葉類用カセットに異なった紙葉類を収納する紙葉類収納庫と、
上記集積部と紙葉類収納庫との間で紙葉類を搬送する搬送路を構成する搬送機構と、
上記搬送路に配置され、紙葉類を一時的に保管する一時保管庫と、
紙葉類の払い出し指令により、上記集積部、上記紙葉類収納庫、上記一時保管庫および上記搬送機構を制御する制御ユニットと、
を備え、
上記第1収納部は、少なくとも紙葉類の払い出しをするように構成され、上記第2収納部は、紙葉類を集積するように構成され、
上記制御ユニットは、
上記紙葉類の払い出し指令により、特定された紙葉類用カセットの第1収納部から紙葉類を払い出し、該払い出した紙葉類を上記紙葉類判別部が正常券であると判別したときには上記集積部へ搬送し、リジェクト紙であると判別したときには上記一時保管庫に保管し、紙葉類の払い出しが完了したときに、上記一時保管庫に保管された紙葉類を、上記特定された紙葉類用カセットの第2収納部へ戻すように構成したこと、を特徴とする。
【0008】
適用例1に記載の紙葉類取扱装置によれば、第1および第2収納部を有する紙葉類用カセットを複数備え、第1収納部に紙葉類を収納する収納庫とし、他の第2収納部をリジェクト紙用の収納庫とし、該カセット内の紙幣枚数が確定している状態で運用開始する。そして、制御ユニットの紙葉類の払い出し指令により、特定された紙葉類用カセットの第1収納部から紙葉類を払い出し、該払い出した紙葉類を紙葉類判別部が正常券であると判別したときには集積部へ搬送し、リジェクト紙であると判別したときには一時保管庫に保管し、紙葉類の払い出しが完了したときに、一時保管庫に保管された紙葉類を、特定された紙葉類用カセットの第2収納部へ戻す。したがって、紙葉類は、特定された紙葉類用カセットから繰り出し、および戻されるので、他の紙葉類用カセットに紛れることがなく、紙葉類の枚数管理が簡単で、精査処理を行う必要がない。
【0009】
[適用例2]
適用例2において、
上記第1収納部は、紙葉類の払い出し、および上記搬送路から搬送された紙葉類の集積を行なえるように構成し、上記制御ユニットは、紙葉類の払い出しが完了したときに、上記一時保管庫に保管された紙葉類が上記紙葉類判別部により正常券であると判別されたときに上記第1収納部へ集積し、リジェクト券であると判別されたときに上記第2収納部に集積するように構成することができる。この構成により、紙葉類の払い出しが完了したときに、一時保管庫に保管された紙葉類は、リジェクト券の場合に第2収納部に集積され、正常券の場合には、第1収納部に戻されて、再度、紙葉類の払い出しのために使用される。よって、第2収納部が満杯になりにくいことから、稼動率の向上と精査に要する係員の負担を軽減することができる。
【0010】
[適用例3]
適用例3において、上記制御ユニットは、上記紙葉類用カセットの紙葉類に集積されている枚数を、上記払い出し指令の前の枚数から上記集積部に払い出した枚数を減算することにより算出されるように構成することができる。
【0011】
[適用例4]
適用例4の紙葉類用カセットは、第1収納部と第2収納部とを一体に着脱可能であるように構成することができる。この構成により、紙葉類用カセットは、第1および第2収納部を一体に着脱可能としたことにより、一層、紙葉類の枚数管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例にかかる紙幣取扱装置を搭載した現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
【図2】紙幣取扱装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】上部ユニットを説明する説明図である。
【図4】紙幣用カセットを説明する説明図である。
【図5】紙幣取扱装置の制御ユニットを示すブロック図である。
【図6】出金処理を説明するフローチャートである。
【図7】紙幣取扱装置の出金処理における動作を説明する説明図である。
【図8】紙幣取扱装置の出金処理における動作を説明する説明図である。
【図9】第2実施例にかかる出金処理を説明するフローチャートである。
【図10】紙幣取扱装置の出金処理における動作を説明する説明図である。
【図11】他の実施例にかかる紙幣用カセットを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明にかかる紙葉類取扱装置の実施例を以下、図面と共に説明する。この実施例では、紙葉類として紙幣を使用する場合について説明する。
【0014】
A.第1実施例
(1) 紙葉類取扱装置の概略構成:
図1は本発明の一実施例にかかる紙幣取扱装置を搭載した現金自動取引装置100の外観を示す斜視図である。現金自動取引装置100は、銀行などの金融機関によって管理され、利用者(顧客)の操作に応じて各種取引を行うための装置である。現金自動取引装置100は、紙幣取扱装置101と、硬貨取扱装置102と、通帳取扱装置103と、カード明細票取扱装置104と、顧客操作部105とを備えている。また、図示は省略しているが、現金自動取引装置100は、電源ユニットや、現金自動取引装置100の全体を制御するための本体制御ユニットを備えている。
【0015】
紙幣取扱装置101は、利用者との紙幣の授受を行うための装置である。この紙幣取扱装置101については、後から詳述する。硬貨取扱装置102は、利用者との硬貨の授受を行う。通帳取扱装置103は、通帳を取り扱い、取引に応じて、通帳に記されたマークなどの読み取りや、印字処理などを行う。カード明細票取扱装置104は、磁気ストライプカード(いわゆるキャッシュカード)に記録された情報を読み取ったり、取引に応じて、その内容を記録した取引明細票を発行したりする。顧客操作部105は、入出金取引のための情報表示および入出金取引のための操作入力を行うための利用者とのインタフェースである。
【0016】
(2) 紙幣取扱装置の構成:
図2は紙幣取扱装置101の概略構成を示す側断面図である。紙幣取扱装置101は、上部に配置された上部ユニット101aと、下部に配置された金庫ユニット101bと、両ユニットを制御する制御ユニット80とを備えており、紙幣の搬送路を、限られた内部スペースに配置し、金庫ユニット101bを多目的に利用可能としている。以下、紙幣取扱装置101の各部の構成について説明する。
【0017】
(2)−1 上部ユニット101aの構成:
図3は上部ユニット101aを説明する説明図である。上部ユニット101aは、概ね、利用者との紙幣の授受に必要な機構を備えており、紙幣入出金部30と、紙幣判別部40(紙葉類判別部)と、一時保管庫50と、取り忘れ紙幣収納庫60と、紙幣を各部の間で搬送する搬送機構とを備えている。
【0018】
紙幣入出金部30は、利用者が紙幣の預け入れを行なう入金部30aと、紙幣の払い出しを行なう出金部30b(集積部)とを備え、これらは仕切板31により仕切られるとともに、出金部30bに集積された紙幣を入金部30a側に移動させるための押圧板32を設けている。紙幣判別部40は、紙幣の金種、真偽、および、リジェクト紙幣であるか否かを鑑別し、その鑑別結果を制御ユニット80(図2)に出力する機構であり、例えば、紙幣をスキャンして得られる画像データ、紙幣の表面の凹凸形状、磁気特性、紫外線などに対する光学特性など種々の情報を利用して行うことができる。ここで、リジェクト紙幣は、紙幣の真偽により不適合な紙幣であるか、重なり合ったり、折れ曲がったりして真偽が不明な紙幣などをいう。一時保管庫50は、紙幣入出金部30と金庫ユニット101bとの間の紙幣の搬送過程において、紙幣を一時的に保管する機構である。取り忘れ紙幣収納庫60は、利用者が取り忘れた紙幣を集積する機構である。
【0019】
搬送機構は、紙幣入出金部30の入金部30aから紙幣を回収する入金用搬送路30Paと、出金部30bへ紙幣を繰り出す出金用搬送路30Pbと、鑑別用搬送路40Pと、一時保管用搬送路50Paと、リジェクト用搬送路60Pとを備えている。鑑別用搬送路40Pおよび一時保管用搬送路50Paなどの搬送路は、双方向に搬送可能に構成されている。また、搬送路の分岐箇所には、ゲート31G,32G,50Gなどが配置され、上述した搬送路における紙幣の搬送方向を切り替えるように構成されている。また、紙幣取扱装置101には、紙幣を検出するためのセンサが配置されている。すなわち、紙幣判別部40に通過センサ40Sが配置され、一時保管庫50に空検知センサ50Saおよび満杯検知センサ50Sbが配置されている。これらのセンサの検出信号は、制御ユニット80に送られ、紙幣の通過や紙幣の有無の判定に使用される。
【0020】
(2)−2 金庫ユニット101bの構成:
図2において、金庫ユニット101bは、紙幣収納庫70(紙葉類収納庫)、搬送機構、センサおよびゲートを備え、上部ユニット101aとの間で紙幣を双方向に搬送する機構である。紙幣収納庫70は、4個の紙幣用カセット71〜74を備え、それらはほぼ同じ構成であり、扱う紙幣の種類が異なっており、例えば、1万円、5千円、千円、2千円を収納する紙幣庫として用いている。4個の紙幣用カセット71〜74は、同じ構成であることから、紙幣用カセット71を代表して説明する。図4は紙幣用カセット71を説明する説明図である。紙幣用カセット71は、上段の第1収納部71Aと、下段の第2収納部71Bとを備えている。第1収納部71Aおよび第2収納部71Bには、紙幣を載置するとともに昇降する昇降板が配置されている。
【0021】
搬送機構は、図2および図4に示すように、上部ユニット101aの鑑別用搬送路40Pに接続される収納用搬送路70Pを備えている。収納用搬送路70Pは、収納用主搬送路71Pmと、収納用主搬送路71Pmから分岐した第1搬送分岐路71Paと、第1搬送分岐路71Paに続く第2搬送分岐路71Pbとを備え、これらは双方向に紙幣を搬送可能に設けられている。収納用主搬送路71Pmと第1搬送分岐路71Paとの接続箇所には、ゲート71Gmが設けられ、また、第1搬送分岐路71Paと第2搬送分岐路71Pbとの接続箇所には、ゲート71Gaが配置されている。ゲート71Gmは、収納用主搬送路71Pmと第1搬送分岐路71Paとのいずれかの方向に切り替えることにより、紙幣用カセット71または他の紙幣用カセット72〜74のいずれかに紙幣を搬送するかを切り替える手段である。ゲート71Gaは、第1収納部71Aと第2搬送分岐路71Pbとのいずれかの方向に切り替えることにより、第1収納部71Aと第2収納部71Bのいずれかに紙幣を搬送するかを切り替える手段である。紙幣用カセット71には、紙幣を検出するセンサが配置されており、すなわち、第1収納部71Aに紙幣がないことを検出する空検知センサ71Sa−1および紙幣が満杯であることを検出する満杯検知センサ71Sa−2が配置され、また、第2収納部71Bに空検知センサ71Sb−1および満杯検知センサ71Sb−2が配置されている。さらに、紙幣用カセット71の第1収納部71Aおよび第2収納部71Bには、紙幣の通過を検出する通過センサ71Sc,71Sdがそれぞれ配置されている。
【0022】
図2において、紙幣用カセット72〜74も、紙幣用カセット71と同様な構成を備えており、つまり、紙幣の種類に応じて、第1収納部72A〜74Aおよび第2収納部72B〜74Bをそれぞれ備え、各収納部に、図4で説明したような搬送路、ゲートおよびセンサが設けられている。
【0023】
(2)−3 制御ユニット80の構成:
図5は紙幣取扱装置101の制御ユニット80を示すブロック図である。制御ユニット80は、主制御部81を中心に構成され、金融機関に設置される自動取引装置のホストコンピュータなどの上位装置HCからの指令を回線制御部90を介して受け渡すとともに、上述したセンサからの信号に基づいて各部を制御する。
【0024】
主制御部81は、中央制御部82を中心に構成され、プログラムや種々の情報を記憶する記憶部83や、中央制御部82により制御される各制御部を備えている。各制御部として、紙幣入出金部30に対して紙幣の分離や集積などを制御する入出金制御部84と、紙幣判別部40の紙幣の識別結果を出力する識別制御部85と、一時保留部制御部86に対して紙幣の分離や集積を制御する一時保留部制御部86と、紙幣収納庫70に対して紙幣の分離や集積などを制御する収納庫制御部87とを備えている。
【0025】
制御ユニット80は、主制御部81により駆動される駆動部やセンサなどを備えている。駆動部は、紙幣の通過を検出する通過センサや満杯検知センサ等のセンサを制御するセンサ駆動部91と、紙幣を所定の集積先に搬送するようにゲートを切り替えるゲート駆動部92と、搬送路駆動モータを制御する搬送路モータ駆動部93と、搬送路の移動量を計数する搬送路移動量計数部94と、搬送異常を検出する紙幣搬送監視部95とを備えている。紙幣搬送監視部95は、識別制御部85からの識別結果を元に主制御部81により決定した集積先の情報とセンサ駆動部91からのセンサ情報を元に、繰出しから集積まで搬送路上の紙幣が正しく搬送されていることを監視する機能を有している。主制御部81は、上述したセンサなどの信号に基づいて、各駆動部などを制御することで、出金処理、入金処理などの各種の紙幣取扱処理を実行する。
【0026】
(3) 紙幣取り扱い処理:
紙幣取扱装置101により実行される出金処理について説明する。図6は出金処理を説明するフローチャート、図7および図8は紙幣取扱装置101の出金処理における動作を説明する説明図である。出金処理は、図5に示した主制御部81が上位装置HCから回線制御部90を介して出金指示を受けた場合に各制御部を指令することにより実行される。図6において、まず、ステップS100にて、出金処理のための各制御部の起動などの準備がされる。すなわち、図7に示すように紙幣収納庫70の第1収納部71A〜74Aから紙幣判別部40を経て出金部30bまたは一時保管庫50へ紙幣を搬送可能なように、収納用搬送路70P、鑑別用搬送路40P、出金用搬送路30Pb、一時保管用搬送路50Paの起動や、ゲート71Gm,32G,31G,50Gの切り替えや、出金部30b、紙幣判別部40および一時保管庫50の起動がされる。
【0027】
各部の準備処理が完了した後、ステップS102にて、上位装置HCより指定された紙幣およびその枚数につき、紙幣収納庫70の第1収納部71A〜74Aのいずれかが順次特定される。例えば、最初の処理では、第1収納部71Aが特定されたとする。続くステップS104にて、特定された第1収納部71Aから指定枚数の紙幣が1枚ずつ分離されて、収納用搬送路70Pを通じて紙幣判別部40へ送られる。ステップS106にて、紙幣判別部40が第1収納部71Aから繰出された紙幣に対して、真偽、損傷、金種、重なりなどを識別し、つまり、紙幣の真偽、損傷がない正常券であるか、リジェクト紙幣であるかの紙幣判別処理を実行する。ステップS108にて、紙幣判別部40が正常券であると判定すると、ステップS110へ進み、ゲート31Gが出金部30bの方向へ切替えられ、その紙幣が出金用搬送路30Pbを通じて出金部30bに送られる。一方、ステップS108にて、紙幣判別部40がリジェクト紙幣であると判定すると、ステップS112に進み、ゲート31Gが一時保管庫50の方向へ切り替えられ、紙幣が一時保管用搬送路50Paを通じて一時保管庫50に送られる。
【0028】
続くステップS114では、主制御部81により紙幣収納庫70から取り出すことを指示された枚数の紙幣の全てが、出金部30bへ集積された枚数に一致するまで搬送されたかについて判定される。すなわち、主制御部81で指示した枚数が、通過センサ71Scの検出信号に基づいてカウントした枚数と一致した否かを判定する。ステップS114の判定にて、否定判定の場合には、全ての紙幣が取り出されるまで、ステップS104〜S112までの処理を繰り返し、肯定判定の場合に、次のステップS116に進む。
【0029】
ステップS116では、上位装置HCにより指示されている紙幣が紙幣入出金部30の出金部30bへ搬送されたかを判定する(ステップS116)。すなわち、紙幣判別部40により金種を検出し、また通過センサ40Sの検出信号に基づいて、出金部30bに集積された枚数が算出され、この金額が上位装置HCで指定した金額と一致しているかで判定される。そして、上位装置HCで指示された紙幣の枚数が不足している場合には、ステップS118へ進み、不足している枚数の紙幣を第1収納部71Aから分離し、さらに、ステップS106〜ステップS116までの処理を繰り返す。そして、上位装置HCの出金指示が出金部30bに集積した金額と一致している場合には、ステップS120へ進む。
【0030】
ステップS120では、一時保管庫50にリジェクト紙幣が集積されているかについて、図8に示すように、空検知センサ50Saの検出信号に基づいて判定される。ステップS120にて、リジェクト紙幣があると判定されると、ステップS122に進み、リジェクト紙幣が一時保管庫50から第2収納部71Bに搬送される。すなわち、ゲート50G,31Gを、一時保管庫50から紙幣判別部40の方向へ切り替え、さらにゲート71Gm,ゲート71Gaを、収納用搬送路70Pの第2搬送分岐路71Pbから第2収納部71Bへの方向に切り替える。これにより、一時保管庫50の紙幣は、一時保管用搬送路50Paから、収納用主搬送路71Pmに搬送され、さらに第2搬送分岐路71Pbを通って第2収納部71Bに収納される。
【0031】
続くステップS124では、紙幣用カセット71の残高が算出される。すなわち、紙幣用カセット71の元の金額と、通過センサ40Sの検出信号に基づいて第1収納部71Aから取り出した金額とに基づいて、現在の紙幣用カセット71の金額が算出される。そして、続くステップS126にて、第1収納部71Aの他の第1収納部72A〜74Aについて紙幣の処理が完了しているかについて判定され、完了していない場合には、ステップS102に戻り、ステップS124までの処理を繰り返し、完了した場合には、搬送路などの各部が停止され、主制御部81が回線制御部90を介して上位装置HCに出金正常終了を報告する。これにより、本処理を終了する。
【0032】
(4) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(4)−1 紙幣取扱装置101によれば、制御ユニット80の出金の払い出し指令により、特定された紙幣用カセット71の第1収納部71Aから紙幣を払い出し、該払い出した紙幣を上記紙幣判別部40が正常券であると判別したときには上記出金部30bへ搬送し、リジェクト紙であると判別したときには上記一時保管庫50に保管し、紙幣の払い出しが完了したときに、一時保管庫50に保管された紙幣を、特定された紙幣用カセット71の第2収納部71Bへ戻す。したがって、紙幣は、特定された紙幣用カセット71から繰り出し、および戻されるので、他の紙幣用カセット72〜74に紛れることがなく、紙幣の枚数管理が簡単で、精査処理を行う必要がない。
【0033】
(4)−2 紙幣用カセット71の全体の枚数は、出金前の枚数から出金した枚数を差し引くことで求めることができる。よって、紙幣用カセット71の枚数は、出金の枚数を管理すれば、容易に把握することができる。
【0034】
(4)−3 紙幣用カセット71は、第1収納部71Aと第2収納部71Bとを一体に紙幣取扱装置101の筐体から着脱可能であるから、より紙葉類の枚数管理が容易になる。
【0035】
(4)−4 出金処理の際に、第1収納部71Aから繰り出された紙幣は、一旦、一時保管庫50に保管されてから、処理の完了後に一度に第2収納部71Bに戻されるので、処理の途中に、搬送路を逆送させないから、スムーズな動作を行なうことができる。
【0036】
B.第2実施例
図9は第2実施例にかかる出金処理を説明するフローチャート、図10は紙幣取扱装置101の出金処理における動作を説明する説明図である。本実施例は、図6で説明したステップS122の変形例であり、一時保管庫50に一時的に格納したリジェクト紙幣を再度鑑別して紙幣収納庫70に戻す処理に特徴を有する。
【0037】
図9の処理は一時保管庫50にリジェクト紙幣があると判定されたときに実行される。すなわち、一時保管庫50のリジェクト紙幣が1枚ずつ繰り出され(ステップS202、紙幣判別部40へ搬送される(ステップS204)。続くステップS206にて、紙幣判別部40がリジェクト紙幣であるか否かの判定がされ、リジェクト紙幣でない正常券と判定されると、ステップS208にて、紙幣が搬送路を通って第1収納部71Aに送られる。一方、ステップS206にて、紙幣判別部40が再度、リジェクト紙幣であると判定されると、ステップS210にて、その紙幣は、第2収納部71Bに送られる。そして、本処理は、一時保管庫50の紙幣が無くなるまで繰り返される。
【0038】
上記実施例にかかる出金処理において、第1収納部71Aから繰り出された紙幣が、一旦、リジェクト紙幣と判定され、一時保管庫50に保管されても、紙幣収納庫70に戻される際に、再度、紙幣判別部40によって正常券と判定されると、第1収納部71Aに戻され、リジェクト紙幣と再度判定されたものだけが第2収納部71Bに戻される。よって、第2収納部71Bが満杯になりにくいことから、稼動率の向上と精査に要する係員の負担を軽減することができる。
【0039】
また、紙幣用カセット71の全体の枚数は、出金前の枚数から出金した枚数を差し引くことで求めることができる。よって、紙幣用カセット71の枚数は、出金の枚数を管理すれば、容易に把握することができる。
【0040】
C.第3実施例
図11は第3実施例にかかる紙幣用カセット171を説明する説明図である。本実施例は、紙幣用カセット171を3段とした構成に特徴を有する。すなわち、紙幣用カセット171は、3段の収納部から構成され、上段の収納部171Aに千円券を収納し、中段の収納部171Bに万円券を収納し、下段の収納部171Cに上段および中段の収納部171A,171Bとのリジェクト紙幣を収納している。なお、本発明でいう第1収納部が複数の収納部171A,171Bで構成され、第2収納部が1個の収納部171Cで構成されている。
【0041】
本実施例にかかる出金処理において、紙幣用カセット171から収納部171A,171Bから3形態(千円券のみ、万円券のみ、千円券と万円券の連続出金)で払い出すことができ、リジェクト紙幣が生じた場合には、リジェクト紙幣を下段の収納部171Cに戻す。本実施例においても、紙幣用カセット171の千円券,万円券の各々の枚数は、出金前の千円券,万円券枚数から出金した枚数を差し引くことで求めることができる。また、紙幣用カセット171の全体の枚数は、出金前の枚数から出金した枚数を差し引くことで求めることができる。よって、係員による紙幣の枚数の精査を省くことができる。このように、紙幣用カセット171は、紙幣を繰り出す複数の収納部171A,171Bを備えていても、他の紙幣用カセットと区別して、元の紙幣用カセット171の収納部171Cにリジェクト紙幣を戻すことで、紙幣の管理を簡単に行なうことができる。
【0042】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施例にかけるリジェクト紙幣を一時的に戻すために一時保管庫は、紙幣判別部から出金部へ紙幣を搬送する搬送路から分岐する搬送路に設け、かつ繰出し集積可能な収納庫であれば、同様に本発明の効果を達成できる。
【0043】
また、紙幣用カセットの金額は、上位装置に出力して表示可能とするほか、紙幣取扱装置の表示画面に表示できるようにしてもよい。さらに、上記実施例では、紙幣に適用した紙幣取扱装置ついて説明したが、これに限らず、有価証券など種々の紙葉類にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
30…紙幣入出金部
30a…入金部
30b…出金部
30Pa…入金用搬送路
30Pb…出金用搬送路
31G,32G,50G,71Gm,…ゲート
31…仕切板
32…押圧板
40…紙幣判別部
40P…鑑別用搬送路
40S…通過センサ
50…一時保管庫
50Sa…満杯検知センサ
50Sb…空検知センサ
50Pa…一時保管用搬送路
60…取り忘れ紙幣収納庫
60P…リジェクト用搬送路
70…紙幣収納庫
70P…収納用搬送路
71…紙幣用カセット
71A〜74A…第1収納部
71B〜74B…第2収納部
71Sa−1…空検知センサ
71Sb−2…満杯検知センサ
71Sc,71Sd…通過センサ
71Ga…ゲート
71Pa…第1搬送分岐路
71Pb…第2搬送分岐路
71Pm…収納用主搬送路
72…紙幣用カセット
80…制御ユニット
81…主制御部
82…中央制御部
83…記憶部
84…入出金制御部
85…識別制御部
86…一時保留部制御部
87…収納庫制御部
90…回線制御部
91…センサ駆動部
92…ゲート駆動部
93…搬送路モータ駆動部
94…搬送路移動量計数部
95…紙幣搬送監視部
100…現金自動取引装置
101…紙幣取扱装置
101a…上部ユニット
101b…金庫ユニット
102…硬貨取扱装置
103…通帳取扱装置
104…カード明細票取扱装置
105…顧客操作部
171…紙幣用カセット
171A,171B,171C…収納部
HC…上位装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙葉類を選択して払い出す紙葉類取扱装置であって、
紙葉類を集積する集積部と、
上記紙葉類が正常である正常券か、正常でないリジェクトされるリジェクト紙であるかを判別する紙葉類判別部と、
上記紙葉類を収納する第1収納部および第2収納部を有する紙葉類用カセットを複数有し、上記各々の紙葉類用カセットに異なった紙葉類を収納する紙葉類収納庫と、
上記集積部と紙葉類収納庫との間で紙葉類を搬送する搬送路を構成する搬送機構と、
上記搬送路に配置され、紙葉類を一時的に保管する一時保管庫と、
紙葉類の払い出し指令により、上記集積部、上記紙葉類収納庫、上記一時保管庫および上記搬送機構を制御する制御ユニットと、
を備え、
上記第1収納部は、少なくとも紙葉類の払い出しをするように構成され、上記第2収納部は、紙葉類を集積するように構成され、
上記制御ユニットは、
上記紙葉類の払い出し指令により、特定された紙葉類用カセットの第1収納部から紙葉類を払い出し、該払い出した紙葉類を上記紙葉類判別部が正常券であると判別したときには上記集積部へ搬送し、リジェクト紙であると判別したときには上記一時保管庫に保管し、紙葉類の払い出しが完了したときに、上記一時保管庫に保管された紙葉類を、上記特定された紙葉類用カセットの第2収納部へ戻すように構成したこと、を特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類取扱装置において、
上記第1収納部は、紙葉類の払い出し、および上記搬送路から搬送された紙葉類の集積を行なえるように構成し、
上記制御ユニットは、紙葉類の払い出しが完了したときに、上記一時保管庫に保管された紙葉類が上記紙葉類判別部により正常券であると判別されたときに上記第1収納部へ集積し、リジェクト券であると判別されたときに上記第2収納部に集積するように構成した紙葉類取扱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紙葉類取扱装置において、
上記制御ユニットは、上記紙葉類用カセットの紙葉類に集積されている枚数を、上記払い出し指令の前の枚数から上記集積部に払い出した枚数を減算することにより算出されるように構成した紙葉類取扱装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の紙葉類取扱装置において、
上記紙葉類用カセットは、上記第1収納部と上記第2収納部とを一体に着脱可能な筐体に収納されている紙葉類取扱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate