説明

紙葉類管理方法及び紙葉類管理システム

【課題】桁ずれを修正しながら識別番号の文字認識処理及び検索処理を行う。
【解決手段】文字を確定できない桁に所定文字を割り当てながら識別番号を形成する各桁の文字認識を行って得られた第1識別番号と、文字認識処理又は検索処理対象となる識別番号を示す第2識別番号とを比較して合致比率を算出し、合致比率が基準値より低い場合には第1識別番号を構成する各桁の文字を所定方向へシフトした番号と第2識別番号とを比較して合致比率を算出し、この合致比率が基準値以上になった場合にはシフト後の番号を第1識別番号として処理を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙葉類に印刷された識別番号を文字認識し、該識別番号を利用して紙葉類を管理する紙葉類管理方法及び紙葉類管理システムに関し、特に、桁ずれによる影響を抑制しながら、識別番号の文字認識及び登録済み識別番号の検索を行うことができる紙葉類管理方法及び紙葉類管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣、小切手、手形や商品券等の紙葉類には該紙葉類を特定する識別番号が印刷されている。紙幣の場合には、この識別番号が記番号と呼ばれている。金融機関等では、この記番号を文字認識して自動的にデータベースに登録し、取引する紙幣を管理したいという要求がある。例えば偽造紙幣が発見された場合に、その偽造紙幣が自行で取引された紙幣であるか否かを判断するためである。
【0003】
紙幣の記番号を利用してデータベースを構築するためには、データとして登録する記番号を正確に認識する必要があるが、紙幣表面の汚れ等によって記番号を形成する文字の一部を文字認識できない場合がある。文字認識できなかった文字についてはユーザが目視確認して手入力することもできるが、文字認識できない記番号が大量に発生すると記番号入力に要するユーザの作業負担が大きくなる。
【0004】
このため、例えば特許文献1には、認識できなかった文字にエラー文字を割り当てて記番号を自動的に記録する方法が開示されている。具体的には、記番号を示す文字列の各文字の位置を桁とした場合に、光学文字認識(OCR)等によって文字認識できなかった桁にエラー文字を割り当てて、ユーザによる目視確認や手入力を行わなくとも記番号認識処理を自動的に完了する。文字認識することが困難な文字にエラー文字を割り当てることにより、その文字を実際とは異なる文字として認識することを抑制できるため、後のユーザの作業負担を軽減することができる。なお、上記エラー文字として例えば「?」等の所定文字が利用される。
【0005】
また、特許文献2には、エラー文字を利用した記番号データベースの構築方法や記番号を利用した取引履歴の管理方法が開示されている。エラー文字の文字数上限等の所定条件を設定し、この条件を満たさない場合にのみユーザによる目視確認や手入力を要求することで文字認識処理に係るユーザの負担を軽減するという方法である。またデータベースを照会して記番号を検索する際にも、同様にエラー文字の文字数上限や特定の桁がエラー文字でないこと等の所定条件下で検索を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−213559号公報
【特許文献2】国際公開第2010/032335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる特許文献1及び2によれば、文字認識した記番号が紙幣表面の汚れや落書き等によって桁ずれしている場合でも、桁ずれしていることを認識できないという問題がある。桁ずれを認識できず、桁ずれした状態のまま記番号データがデータベースに登録されると、後に記番号を検索する際に、一致するはずの記番号データが異なる記番号とみなされるため、データベースを有効活用できない。
【0008】
記番号の前後に汚れや落書きがあったり背景の模様や色の影響を受けたりすることで、記番号先頭の文字のさらに前の位置、又は記番号末尾の文字のさらに後の位置に、文字があると誤認識されると、記番号を形成する各桁の文字が右側又は左側へ桁ずれして認識される。ところが、文字があると認識されるものの、実際には汚れ等であるために英字や数字とは認識されず、その桁にはエラー文字が割り当てられる場合が多い。エラー文字の文字数等が所定条件の範囲内にあると、ユーザによる目視確認を行われることなく桁ずれした状態のまま自動的にデータベースに登録されてしまう。
【0009】
具体的には、例えば紙幣上の「AB123456C」という記番号が、右側に桁ずれした状態で「?AB123456C」と文字認識される場合がある。文字認識結果に含まれるエラー文字が1文字だけであることから、ユーザの負担を軽減するため目視確認が行われることなく、文字認識した結果はそのままデータベースに登録される。その結果、データベースが照会されて、記番号「AB123456C」の紙幣の取引履歴を検索しても、記番号データが「?AB123456」として登録されているために、この紙幣の取引履歴を見つけることができない。記番号データが桁ずれしているために、各桁の比較結果が一致せず異なる記番号であると判定されるためである。このように桁ずれした記番号データがそのままの状態でデータベースに登録されると、有効に利用することができないデータとなる。
【0010】
本発明は、上記従来技術による課題を解決するためになされたものであって、桁ずれによる影響を抑制しながら、識別番号の文字認識及び登録済み識別番号の検索を行うことができる紙葉類管理方法及び紙葉類管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、紙葉類に印刷された識別番号によって該紙葉類を管理する紙葉類管理方法であって、紙葉類の識別番号が印刷された領域から読み取った複数の文字データをそれぞれ文字認識するとともに文字認識できない場合には所定文字を割り当てて第1識別番号を取得する入力識別番号取得工程と、入力識別番号取得工程により取得された第1識別番号と記憶部に記憶された第2識別番号との間で同じ桁にある文字が合致する比率を第1合致比率として算出する第1合致比率算出工程と、第1合致比率算出工程により算出された第1合致比率が所定の基準値よりも低い場合は第1識別番号をなす文字列を形成する各桁の文字を上位桁方向又は下位桁方向にそれぞれシフトする番号シフト工程と、番号シフト工程によりシフトされたシフト識別番号と第2識別番号との間で同じ桁にある文字が合致する比率を第2合致比率として算出する第2合致比率算出工程と、第2合致比率算出工程により算出された第2合致比率が基準値以上である場合に、シフト識別番号により第1識別番号を修正する修正工程とを含んだことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、第1識別番号が紙葉類上の第1の番号を文字認識して得られた番号であり、第2識別番号が同じ紙葉類上の第1の番号と異なる領域に、第1の番号と同じ番号が印刷された第2の番号を入力識別番号取得工程により取得した番号であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、修正工程による修正後の第1識別番号と、第2識別番号との間で、同じ桁の文字認識結果が、一方で文字認識できずに所定文字を割り当てられ、他方で文字認識された確定文字である場合は、その桁の文字認識結果を確定文字とする番号補完工程をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、修正工程による修正後の第1識別番号、又は補完工程による補完後の第1識別番号の少なくともいずれか一方をデータベースに登録することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、紙葉類は紙幣であって、第2識別番号が処理対象紙幣から発見すべき偽造紙幣の記番号として登録された記番号であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、番号シフト工程は、第1識別番号が第2識別番号に対して桁ずれしているか否かを判定する桁ずれ判定工程をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、桁ずれ判定工程は、第1識別番号の桁数が第2識別番号の桁数より多い場合に桁ずれしていると判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、桁ずれ判定工程は、第1識別番号の右端又は左端の文字が文字認識できず、その桁に文字認識できない桁に割り当てられる所定文字が割り当てられている場合に桁ずれしていると判定することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、桁ずれ判定工程は、第1識別番号が、各桁で使用される文字の種類が固定された識別番号を文字認識した番号であり、かつ異なる種類の文字が使用される隣り合う桁の少なくとも一方で使用されるべき種類の文字が使用されていない場合に、桁ずれしていると判定することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、桁ずれ判定工程は、第1識別番号が、各桁で使用される文字が複数種類の文字のいずれかに固定された識別番号を文字認識した番号であり、かつ所定桁の文字が複数種類の文字間で誤認識されやすい文字として認識されている場合には、各桁で使用されるべき文字の種類が使用されている場合であっても、桁ずれしていると判定することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、桁ずれ判定工程は、第1識別番号が、英字及び数字からなる識別番号を文字認識した番号であり、かつ英字が使用されるべき所定桁が「B」,「D」,「I」,「O」,「S」のいずれか一つと認識された場合又は数字が使用されるべき所定桁が「0」、「1」、「2」、「5」、「6」、「8」のいずれか一つと認識された場合に、桁ずれしていると判定することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、紙葉類に印刷された識別番号によって該紙葉類を管理する紙葉類管理システムであって、紙葉類表面を走査して紙葉類画像を生成する撮像部、及び紙葉類画像を送信する送信部を有する紙葉類処理装置と、紙葉類処理装置から紙葉類画像を受信する受信部、識別番号が印刷された領域から読み取った複数の文字データをそれぞれ文字認識するとともに文字認識できない場合には所定文字を割り当てる文字認識部、及び文字認識部によって取得された第1識別番号と第2識別番号との間で同じ桁にある文字が合致する比率を算出した第1合致比率が基準値より低く、かつ第1識別番号をなす文字列を形成する各桁の文字を上位桁方向又は下位桁方向にシフトしたシフト識別番号と第2識別番号との間で同じ桁にある文字が合致する比率を算出した第2合致比率が基準値以上になった場合は、シフト識別番号により第1識別番号を修正して確定する文字確定部を有する紙葉類管理装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、文字認識した第1識別番号を、偽造紙幣の識別番号や他の領域で文字認識した識別番号である第2識別番号と比較し、合致比率が所定基準値より低い場合に桁ずれしていると判定して、この桁ずれを修正するために第1識別番号の各桁の文字をシフトさせ、これにより合致比率が基準値を満たした場合は桁ずれが修正されたと判定して第1識別番号をシフト後の番号に修正することとしたので、桁ずれを修正した識別番号を自動的に取得することができる。
【0024】
また、本発明によれば、同一紙葉類上に複数の識別番号が印刷されている場合に、文字認識した2つの識別番号を比較して桁ずれを修正することとしたので、紙葉類上の識別番号を高い精度で文字認識することができる。
【0025】
また、本発明によれば、複数の識別番号を文字認識した際に、桁ずれを修正して合致比率が向上した2つの識別番号の間で、文字認識できなかった桁の文字を補完することとしたので、識別番号の文字認識率を高めることができる。
【0026】
また、本発明によれば、桁ずれを修正した後の識別番号をデータベースに登録することとしたので、後にデータベースを照会して識別番号を検索する際に、実際には一致するはずの識別番号が桁ずれしているために発見できないということがなく、高い精度で識別番号を検索することができる。
【0027】
また、本発明によれば、紙幣上で文字認識した記番号と、登録済みの偽造紙幣の記番号とを比較する際に、文字認識した記番号の桁ずれを修正して比較することとしたので、高い精度で偽造紙幣の記番号と一致する記番号を発見することができる。
【0028】
また、本発明によれば、文字認識した識別番号が桁ずれしていることを判定し、桁ずれしていると判定した場合に桁ずれを修正するように各桁の文字をシフトすることとしたので、効率よく桁ずれを修正することができる。
【0029】
また、本発明によれば、一致するはずの2つの識別番号の間で、一方の識別番号のみで桁数が多い場合や識別番号の先頭又は末尾の文字が認識できない場合に桁ずれしていると判定することとしたので、高い精度で桁ずれを判定し効率よく桁ずれを修正することができる。
【0030】
また、本発明によれば、各桁で使用される文字の種類が固定されている識別番号を文字認識した際に、例えば英字と数字のように異なる文字の種類が隣り合う桁位置で、使用されるべき文字の種類が使用されていない場合に桁ずれしていると判定することとしたので、高い精度で桁ずれを判定し効率よく桁ずれを修正することができる。
【0031】
また、本発明によれば、各桁で使用される文字の種類が固定されている識別番号を文字認識した際に、各桁で使用されるべき文字の種類が使用されている場合でも、文字認識結果が英字と数字の間で誤認識しやすい文字として認識されている場合には、桁ずれしていると判定することとしたので、文字認識の結果が誤認識を含む場合でも高い精度で桁ずれを判定することができる。
【0032】
また、本発明によれば、紙葉類処理装置で生成された紙葉類画像を受信して桁ずれを判定し、桁ずれを修正した識別番号情報を生成することとしたので、紙幣処理装置やスキャナ等の従来の紙葉類処理装置を利用しながら、高い精度で識別番号を文字認識し、このデータをデータベース等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本実施の形態を示す紙幣管理システム全体の概略構成を示す説明図である。
【図2】図2は、紙幣管理システム内部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、一般的な紙幣の記番号の位置関係を示す説明図である。
【図4】図4は、紙幣管理装置側の管理側制御部に関わる記番号認識部内部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、紙幣管理装置側の管理側制御部に関わる記番号登録条件処理部内部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、紙幣管理装置側の記番号認識処理に関わる管理側制御部内部の処理動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、記番号を桁ずれして文字認識した際の桁ずれの修正方法を示す説明図である。
【図8】図8は、記番号の桁ずれを修正した後の補完処理を示す説明図である。
【図9】図9は、桁ずれした桁数や方向が異なる例を示す説明図である。
【図10】図10は、桁数及び各桁の文字種が固定された記番号の桁ずれを示す説明図である。
【図11】図11は、桁数及び各桁の文字種が固定された記番号の異なる桁ずれの例を示す説明図である。
【図12】図12は、2つの記番号の認識結果から桁ずれした記番号を特定する方法を示すフローチャートである。
【図13】図13は、桁数及び各桁の文字種が固定された記番号の桁ずれを判定する方法を示す説明図である。
【図14】図14は、桁数及び各桁の文字種が固定された記番号の桁ずれ判定リストを示す説明図である。
【図15】図15は、桁数及び各桁の文字種が固定された記番号にエラー文字が含まれる場合の桁ずれ判定リストを示す説明図である。
【図16】図16は、紙幣管理装置側の記番号検索処理に関わる検索制御部内部の処理動作を示すフローチャートである。
【図17】図17は、紙幣管理装置側の表示部に表示される記番号検索画面を示す説明図である。
【図18】図18は、桁ずれを考慮した記番号検索を行う際の照合用記番号データを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る紙葉類管理方法及び紙葉類管理システムの好適な実施例について詳細に説明する。本実施形態では、紙葉類の例として紙幣を対象とし、紙幣上の記番号を文字認識するとともに、認識できない文字があった場合には、その文字にエラー文字として所定文字を割り当ててデータベースに登録し、登録された記番号データを利用して紙幣に関する取引内容を管理する紙幣管理システムについて説明する。
【0035】
この紙幣管理システムは、桁ずれを考慮しながら紙幣記番号の文字認識を行って、桁ずれを修正した記番号データをデータベースへ新たに登録するとともに、過去に桁ずれを考慮することなく文字認識が行われてデータベースに登録済みの記番号データについては、桁ずれを考慮しながらデータの検索を行うものである。これによりデータベースへの記番号データの登録時に桁ずれした記番号データが登録されることを抑制しつつ、仮に桁ずれした記番号データがデータベースに登録された場合でもデータベースを照会して記番号を検索する際に桁ずれを考慮した記番号検索を行うため、桁ずれによる影響を抑制することができる。
【0036】
図1は、本実施の形態に係る紙幣管理システム全体の概略構成を示す説明図、図2は、紙幣管理システム内部の構成概略を示すブロック図である。
【0037】
図1に示す紙幣管理システム1は、紙幣画像を生成するとともに紙幣を識別して分類集積する紙幣処理装置2と、この紙幣処理装置2を管理する紙幣管理装置3とによって構成されている。
【0038】
紙幣処理装置2は、紙幣が投入される紙幣投入部12と、紙幣投入部12から紙幣を一枚単位で搬送する搬送部13(図2参照)と、搬送部13で搬送した紙幣を順次集積する複数のスタッカ11と、スタッカ11への分類条件に該当しない紙幣をリジェクトするリジェクト部14と、各スタッカ11の状態を表示するスタッカ表示部15と、様々な情報を入力又は表示する操作表示部16とを有している。
【0039】
スタッカ11は、第1から第4の4つのスタッカ11A〜11Dで構成される。例えば金種別に各スタッカへ分類するというように、分類条件に基づいて分類された紙幣が各スタッカ11A〜11Dのいずれかへ搬送されて集積される。分類条件は、紙幣管理装置3側の指定操作に応じて適宜変更可能である。
【0040】
紙幣処理装置2は、搬送部13で搬送された紙幣が第1スタッカ11Aの分類条件に一致する場合はその紙幣を第1スタッカ11Aに集積する。同様に、各紙幣は、分類条件に応じて第2スタッカ11Bから第4スタッカ11Dのいずれかに搬送されて集積される。搬送部13で搬送される紙幣がどのスタッカ11A〜11Dの分類条件とも一致しない場合は、その紙幣はリジェクト部14へ搬送される。
【0041】
紙幣管理装置3は、接続された紙幣処理装置2を管理し、様々な情報を表示する表示部31と、様々な情報を入力する管理側操作部32と、紙幣に関する情報を登録管理するデータベース33とを有している。
【0042】
また、図2に示すように、紙幣処理装置2は、スタッカ11及び搬送部13を含むメカ機構17と、操作表示部16と、様々な情報を記憶する処理側メモリ部18と、紙幣管理装置3との通信インタフェースを司る処理側インタフェース19とを有している。さらに紙幣処理装置2は、搬送部13で搬送した紙幣の表面及び裏面の紙幣画像を撮像する撮像部20と、撮像部20にて撮像した紙幣画像から紙幣情報を抽出する紙幣情報抽出部21と、メカ機構17を駆動制御する駆動制御部22と、紙幣処理装置2全体を制御する処理側制御部23とを有している。
【0043】
撮像部20は、搬送部13で搬送する紙幣に対して、赤色や緑色等の可視光、赤外光、紫外光等から選択した光を照射する光照射部20Bと、撮像素子としてのラインセンサ20Aとを有している。撮像部20は、搬送部13で搬送される紙幣に対して光照射部20Bから選択した光を照射し、紙幣から反射された反射光をラインセンサ20Aで受光することで、その紙幣の表面及び裏面の画像を撮像する。さらに撮像部20は、紙幣に対して光照射部20Bから光を照射し、その紙幣を透過した透過光をラインセンサ20Aで受光することで、紙幣の透過画像を撮像することもできる。また撮像部20は、紙幣の表面及び裏面の磁気分布を検出する磁気センサ20Cを有し、磁気センサ20Cで検出した各紙幣の磁気分布を取得することもできる。つまり、撮像部20では、搬送部13で搬送される紙幣の表面及び裏面の反射画像、紙幣の透過画像、及び紙幣の磁気分布を紙幣画像として取得するものである。なお撮像素子として、ラインセンサ20Aの他、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等を利用してもよい。
【0044】
紙幣情報抽出部21は、搬送部13で搬送した紙幣について、金種を識別する金種識別部21Aと、正券や損券等を識別する正損識別部21Bとを有している。金種識別部21Aは、撮像部20から取得した紙幣の紙幣画像に基づき、例えば日本紙幣の場合、一万円、五千円、二千円や千円等の金種及び新旧券(紙幣改刷での前と後の紙幣)を識別する。海外紙幣の場合、金種の他に、版数(新旧券の世代)も識別する。また正損識別部21Bは、撮像部20から取得した紙幣の紙幣画像に基づき、例えば、金融機関のATMに装填可能な紙幣に相当する正券(以下、単にATMFIT券と称する)、窓口で使用可能な紙幣に相当する正券(以下、単にテラーFIT券と称する)、流通に適さない紙幣に相当する損券(UNFIT券と称する)等の正損結果を識別する。なお、ATMFIT券は、テラーFIT券に比較して、例えば、紙幣の“こし”が強く、“汚れ”も少なく、ATMの内部機構を円滑に通過することができる紙幣に相当する。
【0045】
処理側制御部23は、紙幣情報を生成する紙幣情報生成部23Aを有している。紙幣情報生成部23Aは、撮像部20からの紙幣画像、金種識別部21Aの金種識別結果、正損識別部21Bの正損結果、及びその紙幣に関する取引を識別する取引ID等を含む紙幣情報を生成する。
【0046】
紙幣管理装置3は、各種情報を表示するための表示部31と、各種情報の入力操作を行うための管理側操作部32と、管理側操作部32による操作を受けて各種制御を行うための管理側制御部38と、記番号データを含むデータベースが保存されたデータベース33と、紙幣処理装置2と通信を行うための管理側インタフェース34と、各種情報を記憶する管理側メモリ部35とを有している。
【0047】
紙幣管理装置3の管理側操作部32は、記番号データの登録条件を指定する登録条件指定部32Aと、記番号データの検索時に合致比率を指定する合致比率指定部32Bと、検索対象の記番号を入力する検索対象入力部32Cと、検索条件を指定する検索条件指定部32D等を有している。
【0048】
図3は、紙幣の記番号の一例を示す説明図である。紙幣には、一般的に、その紙幣を識別する複数桁の記番号が印刷されているが、記番号の桁数、記番号に利用する文字の種類、紙幣上に記番号が印刷される位置等は、紙幣を発行する国や金種等によって異なる。以下では、例として、同図に示したように、左上部に記番号A、右下部に記番号Bが記載してあるものとして説明する。
【0049】
図2に示す紙幣管理装置3の管理側制御部38は、紙幣処理装置2から受信した紙幣情報内の紙幣画像を利用して記番号の文字認識を行う記番号認識部38Aと、記番号認識部38Aにて認識した記番号データが所定登録条件を満たしているか否かを判定する記番号登録条件処理部38Bとを有している。
【0050】
記番号認識部38Aは、紙幣情報内の紙幣画像から各記番号が含まれる記番号領域を抽出し、抽出した記番号領域からOCR等を利用した文字認識によって記番号A及び記番号Bの文字認識を行う。このとき記番号を形成する桁の文字が、英字又は数字等、記番号に使用される文字として認識できなかった場合には、その桁に文字認識できなかったことを示すエラー文字として「?」等の所定文字を割り当てる。
【0051】
記番号登録条件処理部38Bは、記番号認識部38Aによって認識された記番号データが所定登録条件を満たしているか否かを判定する。例えば、後の照合に必要な特定桁(以下「照合必要特定桁」と記載する)の文字が認識されていることを条件としたり、認識できなかった文字であるエラー文字の合計数が所定数以内であることを条件としたり、記番号A及び記番号Bで認識できた同一桁の文字が合致した比率を示す合致比率が所定比率を超えることを条件としたり、記番号データが偽造紙幣リスト内にないことを条件とすることができる。なお合致比率の詳細については後述する。
【0052】
また、紙幣管理装置3は、記番号登録条件処理部38Bによって記番号データが所定登録条件を満たすと判断された場合に記番号データ及び紙幣情報に基づき紙幣詳細情報を生成する紙幣詳細情報生成部38Cと、その紙幣の取引に関わる取引情報を生成する取引情報生成部38Dとを有している。
【0053】
なお、ここで利用する記番号データは、記番号認識部38Aによって文字認識された結果であるが、図示しないキーボード等の入力手段によって手入力した記番号を利用することもできる。例えば、エラー文字が所定数より多い場合には、紙幣管理装置3上で、表示部31に紙幣画像を表示し、これを目視確認したユーザが管理側操作部32から記番号を入力したものを記番号データとして利用することができる。
【0054】
紙幣詳細情報生成部38Cは、紙幣処理装置2から受信した紙幣情報及び記番号認識部38Aによって認識された記番号データに基づき紙幣詳細情報を生成する。紙幣詳細情報には、紙幣を管理するための紙幣管理番号、記番号、金種識別結果、版数、正損識別結果、紙幣が分類集積されたスタッカ11に関する情報、取引情報ID、紙幣画像等が含まれている。
【0055】
取引情報生成部38Dは、紙幣詳細情報に含まれる取引情報IDに係る取引情報を生成する。取引情報には、取引情報ID、その紙幣の取引開始日時、取引終了日時、取引者である紙幣管理装置3のユーザを識別するユーザID、取引相手である顧客を識別する顧客IDと、取引した窓口やATMを識別する窓口/ATM番号、店舗を識別する店舗コード等が含まれている。
【0056】
管理側制御部38は、データベース33へのデータの登録を制御するデータベース制御部(以下、単にDB制御部と称する)38Eと、検索対象入力部32Cにて入力した検索対象の記番号に関わる紙幣詳細情報をデータベース33から検索する検索制御部38Fとを有している。
【0057】
DB制御部38Eは、紙幣詳細情報及び取引情報をデータベース33に登録する。データベース33では、紙幣詳細情報が紙幣詳細情報一覧データベース33Aに保管され、取引情報が取引一覧データベース33Bに保管される。
【0058】
検索制御部38Fは、検索条件指定部32Dにて指定された検索条件に基づき、検索対象入力部32Cにて入力された検索対象の記番号に関わる紙幣詳細情報をデータベース33から検索し、その検索結果を表示部31に画面表示する。なお管理側制御部38は、その検索結果を印刷出力することも可能である。
【0059】
管理側制御部38は、登録条件指定部32Aにて指定した記番号登録条件を設定する記番号登録条件設定部38Gと、検索条件指定部32Dにて指定した検索条件を設定する検索条件設定部38Hとを有している。
【0060】
記番号登録条件設定部38Gは、登録条件指定部32Aにて指定された各種登録条件を管理側メモリ部35内に記録する。記録された登録条件は、記番号登録条件処理部38Bによって利用される。
【0061】
検索条件設定部38Hは、検索条件指定部32Dにて指定される各種の検索条件に基づいて検索条件を設定する。検索条件として、例えば、記番号データに含まれるエラー文字数を指定したり、記番号データの特定桁の内容を指定することができる。
【0062】
図4は、紙幣管理装置3の記番号認識部38A内部の概略構成を示すブロック図である。記番号認識部38Aは、紙幣処理装置2から管理側インタフェース34経由で紙幣情報を受信する紙幣情報受信部41と、紙幣情報受信部41にて受信した紙幣情報に含まれる紙幣画像から記番号A及び記番号Bが含まれる2つの記番号領域を抽出する記番号領域抽出部42とを有している。また記番号認識部38Aは、記番号領域抽出部42にて抽出した記番号領域から記番号A及び記番号Bを文字認識する記番号文字認識部43と、記番号文字認識部43にて文字認識した記番号A及び記番号Bの文字認識結果を照合する記番号照合部44とを有している。また記番号認識部38Aは、記番号照合部44の文字認識結果同士を桁単位で照合し、照合結果に基づいて記番号の各桁の文字を確定する文字確定部45と、文字確定部45にて確定された各桁の文字から全桁の文字が確定された記番号データを生成する記番号データ生成部46とを有している。
【0063】
また、記番号認識部38Aは、文字認識結果に含まれるエラー文字の数を算出するエラー文字数算出部47と、このエラー文字数算出部47にて算出した記番号A及び記番号Bのエラー文字の文字数を記憶するエラー文字数メモリ部48と、記番号の優先順位等を記憶する確定条件メモリ部49とを有している。
【0064】
確定条件メモリ部49では、紙幣上の記番号に設定された優先順位を記憶している。例えば、記番号Aの優先順位を上位に、記番号Bの優先順位を下位に設定する。なお優先順位はユーザの指定操作に応じて設定変更することができる。
【0065】
記番号文字認識部43は、記番号領域から記番号を桁単位で文字認識し、文字認識ができた場合には認識した文字を同桁の文字とするとともに、文字認識ができなかった場合にはその文字にエラー文字であることを示す所定文字を割り当てる。エラー文字として使用する文字は特に限定されないが、以下では「?」をエラー文字として利用するものとして説明する。記番号文字認識部43は、記番号A及び記番号Bの各桁の文字認識結果を取得する。
【0066】
記番号照合部44は、記番号Aの文字認識結果及び記番号Bの文字認識結果を桁単位で比較照合する。記番号認識部43によって認識された記番号A及び記番号Bの文字列を、先頭から1文字ずつ照合し、その照合結果を文字確定部45に出力する。
【0067】
文字確定部45は、記番号照合部44による照合結果に基づいて各桁の文字を確定する。このとき、記番号の桁数に対する記番号Aと記番号Bの間で文字が一致した桁数の割合を示す合致比率が所定値以上であるときは、各桁の文字を確定する処理を行う。これに対し合致比率が所定値より小さい場合には、記番号Aと記番号Bのいずれかが桁ずれを生じているものと判断し、桁ずれを修正する処理を行う。合致比率については予め設定された所定値を利用する。この値は合致比率指定部32Bによって任意の値を指定することができる。
【0068】
桁ずれに関する処理内容の詳細については後述することとし、以下に合致比率が所定値以上である場合、即ち桁ずれしていないと判定された場合の処理について説明する。
【0069】
文字確定部45は、記番号Aと記番号Bの同じ桁の文字が一致し、かつその文字がエラー文字でない場合には、一致した文字をその桁の文字として確定する。具体的には、例えば記番号Aの第3桁目の文字が「3」であって、記番号Bの第3桁目の文字も「3」であった場合には、文字確定部45が第3桁目の文字を「3」に確定する。
【0070】
記番号Aと記番号Bの同じ桁の文字がいずれもエラー文字であった場合には、文字確定部45は同桁の文字をエラー文字「?」として確定する。具体的には、例えば記番号Aの第4桁目の文字が「?」であって、記番号Bの第4桁目の文字も「?」であった場合には、文字確定部45が記番号データ内の第4桁目の文字をエラー文字「?」に確定する。
【0071】
記番号Aと記番号Bの同じ桁の文字が、一方は認識できた文字で、他方はエラー文字である合には、文字確定部45は、認識できた文字をその桁の文字として確定する。具体的には、例えば記番号Aの第7桁目の文字が「?」であって、記番号Bの第7桁目の文字が「7」であった場合には、文字確定部45が第7桁目の文字を「7」に確定する。
【0072】
記番号Aと記番号Bの同じ桁の文字が、いずれもエラー文字ではないが、異なる文字である場合には、文字確定部は、確定条件に基づいて同桁の文字を確定する。
【0073】
確定条件として、例えば、文字確定部45は、エラー文字数メモリ部48に記憶中のエラー文字数に基づき、エラー文字数が少ない方の記番号の認識結果を優先する。例えば、記番号Aの領域に汚れや落書きがあって正確に文字認識できないような場合には、記番号Aに含まれるエラー文字の文字数が、記番号Bに含まれるエラー文字の文字数より多くなる。この場合、文字確定部45は、エラー文字の文字数に基づいて記番号Bの認識結果を優先し、記番号Aと記番号Bとで異なる文字として認識された桁の文字を、記番号Bで認識された文字に確定する。
【0074】
また、確定条件の他の例として、文字確定部45は、確定条件メモリ部49に記憶中の優先順位が上位の記番号側の認識結果を同桁の文字として確定する。例えば、紙幣上の記番号領域にある背景の柄や色等の影響により、記番号Aの方が記番号Bに比べて正確に文字認識される傾向がある場合に、記番号Aの認識結果を優先するように優先順位が設定されている。この場合は、文字確定部45は、確定条件メモリ部49に記憶された記番号Aが優先されているため、記番号Aの認識結果を優先し、記番号Aと記番号Bとで異なる文字として認識された桁の文字を、記番号Aで認識された文字に確定する。なお以下では、エラー文字ではなく英字や数字等の文字として認識され確定された文字を「確定文字」と記載する。
【0075】
図5は、紙幣管理装置3側の記番号登録条件処理部38B内部の概略構成を示すブロック図である。記番号登録条件処理部38Bは、記番号認識部38Aから取得した記番号データの照合必要特定桁が確定文字であるか否かを判定する特定桁判定部61と、特定桁判定部61にて記番号データの照合必要特定桁が確定文字であると判定された場合に、記番号データ内のエラー文字数が許容エラー文字数以内であるか否かを判定する許容エラー文字数判定部62とを有している。
【0076】
特定桁判定部61は、記番号認識部38A内の記番号データ生成部46から記番号データを取得すると、登録条件指定部32Aにて指定した記番号データ内の照合必要特定桁の文字が所定の確定文字であるか否かを判定する。
【0077】
具体的には、例えば、記番号の第1桁目及び第10桁目が、記番号の中で重要な意味を有しており該桁の文字がエラー文字となる場合には記番号データをそのまま登録せずに再度文字認識させたり手入力したりすることによって修正したい場合に、登録条件指定部32Aによって、これらの桁を照合必要特定桁に指定する。特定桁判定部61は、記番号データ内の第1桁目及び第10桁目を参照し、両方が確定文字であるか、即ちいずれかにエラー文字が含まれていないかを判定する。
【0078】
照合必要特定桁が確定文字である場合は、次に、許容エラー文字数判定部62が、記番号データ内のエラー文字の文字数が登録条件指定部32Aにて指定した許容エラー文字数以内であるか否かを判定する。
【0079】
記番号登録条件処理部38Bは、許容エラー文字数判定部62にて記番号データ内のエラー文字数が許容エラー文字数以内の場合に、記番号A及び記番号Bの文字認識結果同士の合致比率が合致比率指定部32Bにて指定した照合必要合致比率を超えたか否かを判定する合致比率判定部63を有している。
【0080】
合致比率は、記番号A及び記番号Bの文字認識結果を比較して、エラー文字を除いた同一桁間で認識結果が一致する割合から算出される。具体的には、例えば記番号Aの文字認識結果が「123456?890」であり、記番号Bの文字認識結果を「1?3?5678?0」であったとする。ここからエラー文字を除外して、数字として認識できた確定文字のうち、認識結果が一致する桁の数をXとする。この例では、第1桁目、第3桁目、第5桁目、第6桁目及び第10桁目の合計5個の桁で、確定文字が一致しているのでX=5となる。次に、確定文字ではあるが認識結果が異なる桁の数をZとする。この例では、第8桁目の1個の桁で、確定文字ではあるものの認識結果が一致していないのでZ=1となる。これらの結果に基づいてX/(X+Z)で算出した結果が合致比率である。この例では合致比率が83.3%となる。
【0081】
また、記番号登録条件処理部38Bは、合致比率判定部63にて合致比率が所定の照合必要合致比率を超えた場合に、記番号データが偽造紙幣リスト内の偽造紙幣の記番号に該当するか否かを判定する偽造紙幣リスト判定部64を有している。
【0082】
偽造紙幣リスト判定部64は、記番号データが偽造紙幣リスト内の偽造紙幣の記番号に該当しない場合、その記番号データが全ての所定登録条件を満たしたものと判断し、この記番号データを紙幣詳細情報生成部38Cに伝送する。
【0083】
なお、例えば、記番号データ内の照合必要特定桁が確定文字である、記番号データ内のエラー文字数が許容エラー文字数以内である、文字認識結果同士の合致比率が照合必要合致比率を超えている、記番号データが偽造紙幣リスト内の偽造紙幣の記番号に該当しない等の全ての条件を満たしていれば、記番号を形成する全ての文字が確定文字である場合に限らず、エラー文字を含む場合でも、記番号データが紙幣詳細情報生成部38Cに伝送される。
【0084】
紙幣詳細情報生成部38Cは、紙幣の記番号データ(又は入力記番号)及び紙幣情報に基づいて紙幣詳細情報を生成し、DB制御部38Eを通じて紙幣詳細情報をデータベース33に登録する。
【0085】
管理側制御部38は、偽造紙幣リスト判定部64にて紙幣の記番号データが偽造紙幣リスト内の偽造紙幣の記番号に該当すると判定された場合には、この紙幣に関わる紙幣詳細情報のデータベース33への登録を行わず、偽造紙幣の発見を表示部31及び操作表示部16に警告表示する。ユーザは、この警告表示によって偽造紙幣の発見を認識することができる。
【0086】
記番号登録条件処理部38Bは、特定桁判定部61にて記番号データ内の照合必要特定桁が確定文字でないと判定された場合、許容エラー文字数指定部62にて記番号データ内のエラー文字数が許容エラー文字数を超えていると判定された場合、合致比率判定部63にて合致比率が照合必要合致比率を満たさなかった場合、又は偽造紙幣リスト判定部64にて記番号データが偽造紙幣リスト内の偽造紙幣の記番号に該当すると判定された場合等に、記番号認識部38Aから紙幣詳細情報生成部38Cに記番号データを伝送することなく記番号の入力操作を要求するための記番号入力要求部65と、記番号の入力操作に応じて入力記番号を受け付ける記番号入力受付部66とを有している。これらは、文字認識して得られた記番号データが所定条件を満たさない場合に、紙幣画像を目視確認したユーザによる記番号の入力を受け付けるための機能部である。
【0087】
記番号入力要求部65は、記番号の入力操作要求に関わる記番号入力画面を表示部31に表示し、ユーザに記番号の手入力を促す。ユーザに記番号の手入力を促す場合には、表示部31に、記番号登録条件を満たさなかった記番号データと、この記番号データを読み取った紙幣画像が表示される。
【0088】
記番号入力受付部66は、ユーザが紙幣画像を目視確認しながら手入力する記番号を受け付ける。記番号が入力されると、偽造紙幣リスト判定部64が偽造紙幣リスト内の偽造紙幣の記番号に該当するか否かを判定する。偽造紙幣リスト判定部64にて入力記番号が偽造紙幣リスト内の記番号に該当しないと判定された場合は、紙幣詳細情報生成部38Cが、この入力記番号及び紙幣情報に基づいて紙幣詳細情報を生成し、DB制御部38Eを通じてデータベース33に登録する。なお偽造紙幣の記番号に該当すると判定された場合には、上述したように、この紙幣に関わる紙幣詳細情報のデータベース33への登録は行われず、偽造紙幣の発見が表示部31及び操作表示部16に警告表示される。
【0089】
検索制御部38Fは、上記各部の機能及び動作によりデータベース33に登録されたデータを参照して、記番号データを検索するための機能を有する。検索制御部38Fは、データベース33に登録された紙幣詳細情報中の記番号データを検索対象とし、検索条件設定部38Hにて設定された検索条件に基づき、番号が一致する記番号データ又は一致する可能性がある記番号データを検索し、その検索結果を表示部31に表示する。検索結果として表示される紙幣詳細情報には、例えば、記番号データ、金種識別結果、版数、正損識別結果、分類条件、取引情報及び紙幣画像の他に、取引情報として、取引情報ID、取引開始日時、取引終了日時、ユーザID、顧客ID、窓口/ATM番号及び店舗コード等が表示される。
【0090】
本発明の特徴の一つは、上述してきた紙幣処理装置2及び紙幣管理装置3から構成される紙幣管理システムによって、桁ずれを考慮した記番号登録及び記番号検索を可能とする点にある。
【0091】
まず、本発明に係る桁ずれに関する処理内容に関し、記番号データをデータベース33に登録する際に行う処理について、図6から図8を参照しながら詳細を説明する。記番号データの登録時に行う処理とは、具体的には、記番号認識部38A内で同一紙幣上で認識された2つの記番号認識結果を比較して記番号を確定する際に行う処理である。
【0092】
図6は、紙幣画像上から文字認識した記番号データの各桁の文字を、桁ずれを考慮しながら確定する処理の概要を示すフローチャートである。記番号文字認識部43によって記番号を形成する各桁の文字認識処理が完了すると、図3に示す2箇所の記番号A及び記番号Bの各々に対応する2つの記番号データが得られる(ステップS1)。
【0093】
記番号データA及び記番号データBの2つの記番号データが得られると、記番号照合部44による照合が行われ、照合結果に基づいて、上述したように文字確定部45によって合致比率が算出される(ステップS2)。
【0094】
これ以降の処理は文字確定部45によって行われる。また以下では、文字認識によって記番号Aとして認識された記番号データを「記番号A」と記載し、記番号Bとして認識された記番号データを「記番号B」と記載する。同一紙幣上に印刷された記番号Aと記番号Bは同一の記番号を示すが、文字認識された記番号データと区別するためこの紙幣上に印刷された実際の記番号を「紙幣記番号」と記載する。
【0095】
合致比率が所定値以上であるか否かが判断され(ステップS3)、合致比率が所定値以上である場合には(ステップS3;Yes)、上述した通り、記番号領域の優先度等に基づいて記番号を決定する補完処理が行われ(ステップS8)、記番号データが確定する(ステップS9)。これに対し、合致比率が所定値より小さい場合には(ステップS3;No)、桁ずれが発生しているか否かを判定する処理が開始される。
【0096】
まず、2つの記番号A及び記番号Bのどちらが桁ずれを起こしているかを判定する(ステップS4)。桁ずれを起こしている記番号の判定方法(ステップS4)については後述することとし、ここでは記番号Bが桁ずれを起こしていると判定されたものとして説明を続ける。
【0097】
記番号Bが桁ずれを起こしていると判定されると、記番号Bを構成する各桁の文字をシフトさせて桁ずれを修正するシフト処理を行う(ステップS5)。
【0098】
図7は、記番号Aが紙幣記番号を正しく文字認識して得られたデータであり、記番号Bが1桁分右側に桁ずれした状態で紙幣記番号を認識して得られたデータである場合を例示している。即ち紙幣記番号が「AB123456C」である場合の例である。例えば、紙幣上で、記番号Bの領域において先頭の文字「A」の前に汚れがあると、汚れの部分に文字があると認識される場合がある。ところが、汚れの部分に文字があると認識しながら、これを英字や数字等の文字として文字認識することができず、その桁をエラー文字として認識する場合がある。これを例示したものが同図に示す記番号B「?AB??3456C」である。
【0099】
図7を含む以下の図では、記番号Bの各桁の下方に、記番号Aの各桁との比較結果を示している。記番号Aと記番号Bとの間で、その桁の文字がいずれもエラー文字ではなく、両者の文字が一致する場合は「○」(マル)を、一致しない場合は「×」(バツ)を示している。また記番号A又は記番号Bの少なくともいずれか一方がエラー文字であるために、一致するか否かを判定できない場合は「−」(バー)を示している。
【0100】
図7に示すように、紙幣記番号を正しく文字認識した記番号Aと、紙幣記番号を1桁分桁ずれした状態で文字認識した記番号Bとでは、認識結果が一致する桁が存在せず、合致比率は0%となる。しかし、同図最下段に示したように、記番号Bを左側へ1桁分シフトさせると、記番号Aとシフト後の記番号Bとの間では、エラー文字を除いて認識できた全ての文字が一致し、合致比率は100%となる。
【0101】
記番号データを形成する各桁の文字をシフトする方向やシフトする桁数は、シフトパターンとして確定条件メモリ部49内に記憶されている。シフトパターンには、シフトする方向とシフトさせる桁数とを様々な条件で組み合わせた内容が含まれている。
【0102】
具体的には、例えば、シフトパターンとして、記番号データの内容によらず、左右に1桁ずつ3桁分までシフトするという内容が設定されている。この場合は、シフトパターンに従い、記番号データを左側に1桁ずつシフトさせて合致比率を検証しながら3桁分シフトさせた後、シフトする前の初期状態に戻し、次に右側へ1桁ずつシフトさせて3桁分のシフトを行ってシフト処理を完了する。
【0103】
シフトパターンの内容は管理側操作部32によって設定変更することができる。またシフトパターンとして予め設定された内容を利用する他、桁ずれしていると判定された記番号データの内容に基づいてシフトパターンが自動的に設定変更されてもよい。例えば、図7に示すように記番号データの左側にエラー文字がある場合は、この部分が汚れ等である可能性が高いことから、左側へ1桁ずつ3桁分シフトするシフトパターンが設定される。このとき左側へのシフトのみを行うよう設定されてもよいし、左側へのシフトによって所定値以上の合致比率が得られなかったときは続いて右側へシフトするように設定されてもよい。このようにシフトパターンを記番号データの認識結果に基づいて動的に変更すれば、桁ずれを正しく修正できる可能性が高いシフト処理を優先して行うことになり、桁ずれを修正した記番号データを短時間で得ることができる。
【0104】
シフトパターンに基づいてシフト処理(図6ステップS5)を行っても合致比率が所定値より小さい場合は(ステップS6;No)、全てのシフトパターンが実行されるまで(ステップS7;No)、記番号Bのシフト処理(ステップS5)が継続される。全てのシフトパターンを実行しても合致比率が所定値より小さい場合には(ステップS7;Yes)、桁ずれに関する処理を終了し、各桁の文字をシフトすることなく記番号文字認識部43によって文字認識された直後の状態で記番号データが確定される(ステップS9)。
【0105】
その後、図5を参照しながら上述したように、記番号登録条件処理部38Bによって処理が継続される。そして合致比率が所定値より小さい場合には、記番号入力要求部65及び記番号入力受付部66によって、ユーザによる紙幣画像の目視確認と記番号の手入力が行われることになる。
【0106】
なお、本実施例では、シフトパターンに従って1桁ずつシフトさせながら合致比率を検証し、途中で合致比率が所定値以上となったときにシフト処理を終了する例を示したが、シフト処理の終了条件はこれに限らず、合致比率の変化率を終了条件としてもよい。桁ずれが起きている場合には、上述したように桁ずれを修正することによって合致比率が大きく変化する。この合致比率の変化に基づいて、例えば合致比率が所定幅以上向上した場合に桁ずれが修正されたものと判定してシフト処理を終了することとしてもよい。
【0107】
また、合致比率の値に基づいてシフト処理を終了するのではなく、合致比率によらずシフトパターンに含まれる全てのシフト処理を行うこととしてもよい。この場合は、シフトパターンに含まれる全てのシフト処理を行った後、合致比率が最大値となったときのシフト後の記番号Bを用いて以下の補完処理を行えばよい。
【0108】
シフト処理(図6ステップS5)を行った結果、合致比率が所定値以上となった場合には(ステップS6;Yes)、続いて記番号の補完処理が行われる(ステップS8)。図8は、記番号の補完処理を説明する図である。図7と同じく紙幣記番号が「AB123456C」である場合の例を示している。図8に示すように、文字認識を行った直後の状態では、記番号Aの第2桁目と、記番号Bの第1桁目、第4桁目及び第5桁目とが、エラー文字となっている。記番号Aと記番号Bの合致比率は0%である。しかし、記番号Bを左側へ1桁シフトすると、同図に示すように合致比率が向上し85.7%となる。この合致比率が所定値以上であれば、次に記番号の補完処理(ステップS8)が行われる。
【0109】
具体的には、記番号Aと、シフト後の記番号Bとを比較し、一方が文字認識できずエラー文字である桁が、他方で文字として認識されているときは、エラー文字を認識された文字で補完する。図8では、記番号Aの第2桁目がエラー文字であるが、同桁はシフト後の記番号Bでは「B」と認識されているため、第2桁目を「B」に確定する。同様にシフト後の記番号Bでは第3桁目及び第4桁目がエラー文字であるが、同桁は記番号Aでは「1」及び「2」と認識されているため、第3桁目を「1」、第4桁目を「2」と確定する。その結果、記番号データは「AB123456C」と全桁が認識された文字として確定される(図6ステップS9)。
【0110】
このように、文字認識直後の状態では、合致比率が低くユーザによる目視確認や手入力が必要とされるような場合であっても、桁ずれを考慮した処理を行うことによって、桁ずれを自動的に修正し、記番号を精度良く認識することができる。また記番号A及び記番号Bの各記番号データで文字認識できずエラー文字とされている場合であっても、補完処理によって文字を確定することができるため、文字認識の認識率を向上させることができる。
【0111】
桁ずれを修正する処理及び補完処理が終了し、記番号データが確定すると(ステップS9)、図5を参照しながら上述したように、記番号登録条件処理部38Bによって処理が継続され、記番号データを含む紙幣詳細情報がデータベース33に登録される。データベース33に登録される記番号データは、桁ずれが修正されたデータであるため、後にデータベース33を照会して記番号を検索する際にも、桁ずれしている場合のように一致する記番号であるにも拘わらず異なる記番号とみなされて発見できないという事態を回避することができる。即ち、記番号データは、データベース内で後の利用が可能な、有効なデータとして蓄積されることになる。
【0112】
なお、上記説明では、右側へ1桁分桁ずれした例を示したが、図9に示したように、2桁又はそれ以上の桁ずれが生じている場合や左側へ桁ずれしている場合でも、同様の処理によって桁ずれの修正や文字認識結果の補完の処理を行うことができる。
【0113】
図9は、記番号Aが紙幣記番号を正確に文字認識し、記番号B1が同じ紙幣記番号を右側へ2桁分桁ずれして認識した場合を示している。この場合は、設定されたシフトパターンに従ってシフト処理を行うと、左側へ2桁シフトした際にシフト後の記番号B1と記番号Aとが一致し、合致比率が0%から100%へ向上する。また記番号B2は同じ紙幣記番号を左側へ1桁分桁ずれして認識した場合を示している。この場合も、同様にシフト処理を行って右側へ1桁シフトさせるた際に、シフト後の記番号B2と記番号Aとの合致比率が20%から100%へ向上する。
【0114】
このように桁ずれの方向や桁ずれした桁数に拘わらず、上記方法によって、人手を介することなく桁ずれを修正した有効な記番号データを得ることができる。そして桁ずれを修正した記番号データをデータベース33に登録することにより、後に記番号を検索する際にも正しく検索が行われることになる。
【0115】
次に、記番号の桁数が固定され、かつ各桁で使用される文字の種類が固定されている場合について説明する。上記図7から図9では、記番号の桁数や、各桁に使用される文字の種類が固定されていない場合の例を示したが、発行国及び金種によって、例えば米国紙幣のように、予め紙幣の記番号の桁数や、各桁に使用される文字の種類が固定されている場合がある。以下では、このように記番号の桁数及び各桁の文字の種類が固定されている場合の桁ずれに係る処理について、図10及び図11を参照しながら説明する。なお、記番号の桁数が11桁に固定され、各桁に使用される文字の種類については、先頭から第1桁目、第2桁目及び第11桁目が英字に、その他の桁が数字に、各々固定されているものとする。
【0116】
桁ずれを考慮して記番号を確定する処理の流れは、図6を参照して上述した処理と同じであるため図6を参照しつつ説明を行う。図10に示すように記番号A及び記番号Bが認識された場合(図6ステップS1)、合致比率は12.5%である(ステップS2)。合致比率が所定値より低い場合には(ステップS3;No)、桁ずれが発生しているか否かの判定が開始される。
【0117】
まず、同じ紙幣記番号を文字認識した2つの記番号A及び記番号Bが異なる場合に、どちらが桁ずれを起こしているかを判定する(ステップS4)。記番号の第1桁目、第2桁目及び第11桁目が英字でありその他が数値であるという記番号の構成に基づいて、図10に示す文字認識の結果から、記番号Aは桁ずれすることなく文字認識されたものと判定する。即ち、記番号Bが桁ずれしているものと判定して処理が継続される。
【0118】
また、記番号Bが桁ずれしている方向と桁ずれしている量についても、図10に示すように第2桁目が英字と認識され、第11桁目が英字として認識されずエラー文字になっていることから、記番号Bが右側へ1桁分桁ずれしていると判定する。桁ずれしていることを判定する方法の詳細については後述する。
【0119】
桁ずれを起こしている記番号が記番号Bであると判定されると、その後の処理(図6ステップS5〜S9)は、図7から図9を参照しながら上述した内容と同様である。図10に示すように、記番号Bを左側へ1桁分シフトさせて、合致比率が100%となる(ステップS6;Yes)。これを受けてエラー文字の補完処理が行われ(ステップS8)、記番号データが「IL19508854A」と確定される(ステップS9)。
【0120】
また、図11に示すように記番号A及び記番号Bが得られた場合にも、記番号の構成条件と、各記番号データを形成する各桁の内容から、記番号Bが左側へ1桁分桁ずれをしていると判定できる。そのため、記番号Bを右側へ1桁分シフトさせ、補完処理によって記番号データの全桁の文字を確定することができる。桁ずれしている記番号を特定することができれば、右又は左へ2桁分以上桁ずれしている場合でも、同様にシフトさせて記番号を確定することができる。
【0121】
このように記番号の桁数や各桁に使用される文字の種類が固定されている場合には、桁ずれしている記番号、桁ずれしている方向、桁ずれの量の判定を容易に行うことができる。そのため、文字認識直後の状態では、合致比率が低くユーザによる目視確認や手入力が必要な状態にあっても、桁ずれを修正して記番号を精度良く認識することができる。また記番号A及び記番号Bの各記番号データで文字認識できずエラー文字とされている場合であっても、補完処理によって文字を確定することができるため、文字認識の認識率を向上することができる。
【0122】
次に、図6に示した桁ずれが発生している記番号を判定する処理(ステップS4)について詳細を説明する。図12は、桁ずれが発生している記番号を判定する方法を示したフローチャートである。
【0123】
上述したように、記番号には、処理対象となる記番号の桁数が固定されていない場合、桁数が固定されている場合、桁数及び各桁に使用される文字の種類が決まっている場合等がある。桁数が固定されているか否か、各桁の文字の種類が決まっているか否かは、紙幣の発行国及び金種によって判断することができる。具体的には、例えば米国のある金種の紙幣では、桁数と各桁で使用される文字の種類が決まっているというように、発行国及び金種によって記番号の構成条件を特定することができる。そのため、紙幣処理装置2の金種識別部21Aによる金種識別結果に基づいて、金種識別された紙幣の記番号の桁数や、各桁に使用される文字の種類を特定することができる。金種識別結果から得られた記番号の構成条件に係る情報と、紙幣管理装置3に含まれる記番号認識部43によって認識された記番号データとに基づいて、桁ずれが発生している記番号を以下のように判定する。
【0124】
まず、金種識別結果に基づいて桁数が固定されているか否かを判定する(ステップS11)。金種と、記番号桁数及び各桁に使用される文字の種類との関係は、予め紙幣処理装置2内の処理側メモリ部18や、紙幣管理装置3内の管理側メモリ部35等に記憶されており、これを利用して、処理対象紙幣の記番号の構成条件が判定される。
【0125】
記番号の桁数が固定されていない場合には(ステップS11;No)、文字認識した2つの記番号の桁数を比較して、一方の桁数が他方より多い場合は(ステップS12;Yes)、桁数の多い方の記番号が桁ずれしていると判定する(ステップS13)。記番号の前後に汚れや落書きがあると、実際の記番号に加えて汚れや落書きを文字と認識してしまうために桁ずれが起きることが多い。そのため、桁数が多い方で桁ずれが起きていると判定する。
【0126】
2つの記番号の桁数が同じである場合は(ステップS12;No)、認識された記番号の端の文字がエラー文字であるか否かを判定する(ステップS14)。2つの記番号のうち、いずれか一方の記番号の右端(又は左端)の文字がエラー文字であり、他方の記番号の右端(又は左端)の文字がエラー文字でない場合には(ステップS14;Yes)、端の文字がエラー文字である方の記番号が桁ずれしていると判定する(ステップS15)。記番号の前後に汚れや落書きがあって、そこに文字があると誤認識したために桁ずれが起きた場合でも、英字や数字としては認識されずエラー文字として認識される場合が多い。そのため、一方の記番号で左右いずれかの端の文字がエラー文字として認識されている場合は、これを桁ずれによるものと判定する。
【0127】
両方の記番号で端の文字がエラー文字となっている場合や、両方の記番号で共に端の文字がエラー文字でない場合には(ステップS14;No)、エラー文字の数が一方の記番号で他方の記番号より多くなっているか否かを判定する(ステップS16)。いずれか一方の記番号が、他方に比べてエラー文字を多く含む場合は(ステップS16;Yes)、エラー文字の数が多い方を桁ずれしている記番号であると判定する(ステップS17)。桁ずれの主な原因である汚れや落書きがある場合には、紙幣上の記番号を正確に読み取ることができずエラー文字と認識される可能性が高い。そのため、エラー文字の文字数が多い方で桁ずれが起きていると判定する。
【0128】
上記の判定方法ステップS12、S14及びステップS16で桁ずれが起きている記番号を判定できない場合には(ステップS16;No)、過去に行った桁ずれに関する処理データに基づいて、桁ずれが起きている可能性が高い記番号を判定する(ステップS18)。文字確定部45で桁ずれを修正する上記処理を行って合致比率が向上した場合は、関連する情報が処理履歴として確定条件メモリ50に蓄積される。この情報を参照して記番号の桁ずれが起きている記番号を推定する。
【0129】
具体的には、例えば、判定中の記番号が印刷された処理対象紙幣と同一の金種で、過去に、記番号Aが記番号Bに比べて桁ずれして文字認識された例が多く記録されている場合には、記番号Aで桁ずれが起きていると判定する。記番号の桁ずれは、実際の記番号の前後に汚れや落書きがある場合の他、例えば、記番号の背景にある柄や模様を文字と誤認識したり、実際の記番号の端の文字が擦れて背景の柄や模様に埋もれて認識されなかったりした場合にも発生する。そのため、記番号が印刷された領域の柄や模様等の紙幣の特徴から、桁ずれしやすい記番号を推定できる場合がある。過去に蓄積された情報から、例えば、ある金種の紙幣では記番号Aが桁ずれして認識されやすいという傾向があれば、これに基づいて記番号Aで桁ずれが起きていると判定して処理を進める。なお、文字認識の結果、桁ずれを生ずる可能性がある原因としては、記番号が印刷される領域の柄や模様の他、紙幣に利用される紙の材質や記番号の印刷に利用されるインク等も影響する。
【0130】
また、例えば、判定中の記番号の処理直前に、連続して記番号Bが桁ずれしていた場合には、記番号Bで桁ずれが起きていると判定する。通常は、紙幣処理装置2の紙幣投入部12に載置された複数の紙幣が連続して処理される。そのため、処理中の紙幣束が、記番号Bが印刷された領域に汚れが付着しやすい環境で使用されたために記番号Bが桁ずれして認識されやすい状態にある場合には、連続して記番号Bが桁ずれして認識される可能性が高い。具体的には、例えば処理中の紙幣束が自動販売機等から回収されたもので、その自動販売機内部の搬送路等の一部が汚れていたために、搬送される多くの紙幣の同じ位置に汚れが付着しているような場合である。
【0131】
次に、図12のステップS11での判定の結果、記番号の桁数が固定されている場合について説明する。記番号の桁数が固定されている場合は(ステップS11;Yes)、文字の種類が固定されているか否かを判定する(ステップS19)。文字の種類が固定されていない場合には、桁数が固定されていない場合(ステップS11;No)と同様の処理(ステップS12)へ進む。
【0132】
文字の種類が固定されている場合には(ステップS19;Yes)、記番号の所定位置の桁がエラー文字であるか否かを判定する(ステップS20)。一方の記番号で所定位置の桁がエラー文字となっている場合は(ステップS20;Yes)、この記番号で桁ずれが起きていると判定する(ステップS21)。
【0133】
一般に、記番号を認識するための文字認識は、光学的に認識した各文字の特徴を、テンプレートとしてデータ化された英字や数字等の各文字の特徴と比較することによって、両者の特徴が一致した場合にその文字であると認識する処理である。記番号の各桁に使用される文字の種類が固定されている場合は、認識率を上げるために、その文字の種類のテンプレートのみが利用される。具体的には、例えば、ある桁で使用される文字の種類が英字である場合には英字のテンプレートのみを利用し、その桁の文字が数字である場合には数字のテンプレートのみが利用される。即ち、英字である桁を数字として認識するための処理や、数字である桁を英字として認識するための処理は行われない。そのため桁ずれすることによって英字が使用されるべき桁位置に数字がある場合には、正しく文字認識できずエラー文字として処理される可能性が高い。数字が使用されるべき桁に英字がある場合も同様にエラー文字とされる可能性が高くなる。
【0134】
例えば、2つの記番号のうちのいずれか一方のみで、記番号の左端又は右端の文字の種類が使用されるべき文字の種類と異なっている場合に、これを桁ずれしている記番号であると判定する。また所定位置の桁とその隣の桁とで使用される文字の種類が異なる記番号では、文字の種類が変わる境界の両側の桁で使用されるべき種類の文字が使用されていない場合に、桁ずれしていると判定する。
【0135】
具体的には、例えば、図10及び図11を参照しながら上述したように、11桁の記番号が印刷された米国紙幣では第1桁目、第2桁目、及び第11桁目が英字となる。これに対し、汚れ等を記番号の端の桁である第1桁目や第11桁目の文字であると誤認識した場合や、記番号の端に位置する英字であるべき第1桁目や第11桁目に桁ずれによって数字がある場合には、英字として認識できないためエラー文字となる可能性が高い。例えば、図10では右側に桁ずれした記番号Bの第1桁目がエラー文字と認識され、図11では左側に桁ずれした記番号Bの第11桁目がエラー文字と認識されているのは、これを理由とする。
【0136】
また、図10及び図11の記番号Aのように、第2桁目及び第3桁目と、第10桁目及び第11桁目が使用される文字の種類が変わる境界を形成する。このように隣り合う桁で使用される文字の種類が異なる桁位置では、桁ずれした場合に、隣の桁で使用される異なる種類の文字がその桁の文字となる。その結果、エラー文字と認識される可能性が高い。右側に桁ずれした図10の記番号Bの第3桁目及び第11桁目がエラー文字と認識され、左側に桁ずれした図11の記番号Bの第2桁目及び第10桁目がエラー文字と認識されているのは、これを理由とする。
【0137】
このように、記番号の桁数や各桁に使用される文字の種類が固定されている場合には、所定桁の文字の種類が、使用されるべき文字の種類と異なる場合に桁ずれしていると判定することができる。
【0138】
認識した文字の種類がその桁で使用されるべき文字の種類と一致している場合や、両方の記番号で文字の種類の不一致がある場合には(図12ステップS20;No)、判定リストを参照する(ステップS22)。判定リストには、桁ずれをしていると判定する条件がリスト化されている。この判定リストの内容に一致する場合には(ステップS22;Yes)、一致する記番号で桁ずれが起きていると判定する。
【0139】
所定桁の文字がエラー文字であることに基づき判定する方法(ステップS20)は、記番号の各桁で使用される文字の種類が決まっている場合に、その桁の文字が異なる種類の文字と認識された場合や認識できない場合にエラー文字となることを利用した方法である。しかし、上記方法(ステップS20)では、桁ずれが起きていることを判定できない場合がある。紙幣記番号が「ID12345678A」である場合を例に、図13及び図14を参照しながら具体的に説明する。
【0140】
図13に認識例1として示したように、紙幣記番号を右に1桁分桁ずれして認識した場合には、典型的には「?I?1234567?」と認識される。同図に認識領域として示したように、汚れ等を第1桁目と認識した場合には、その領域には実際には文字が無い。そのため認識例1として示したように、第1桁目では文字認識されずエラー文字が割り当てられる。また第3桁目では数字が認識されるべき位置に英字が来るために文字認識できず、第11桁目では英字が認識されるべき位置に数字が来るために文字認識できない。その結果、第1桁目、第3桁目、及び第11桁目がエラー文字となる。しかし、この場合は、まだ上記方法(ステップS20)によって桁ずれを判定することができる。
【0141】
図13に認識例2として示したように、例えば第11桁目は英字であることから、英字として文字認識しようとした結果、実際には数字の「8」であるにも拘わらず、英字の「B」として誤認識される場合がある。この場合には、第11桁目はエラー文字とはならず「B」として正常に認識されたことになる。しかし、第1桁目や第3桁目がエラー文字となっていることから、この場合も、まだ上記方法(ステップS20)によって桁ずれを判定することができる。
【0142】
ところが、図13に認識例3として示したように、同様に第3桁目の英字「D」が数字「0」と認識され、さらに記番号が無い部分の汚れや落書き等が第1桁目として「I」として認識されてしまった場合には、第1桁目、第3桁目及び第11桁目の全ての桁で、その桁で使用されるべき文字として正しく認識されたことになるため、上記方法(ステップS20)では桁ずれしていると判定することができない。
【0143】
このような場合に対応するために予め判定リストが作成され、確定条件メモリ部49に記憶されている。図14に判定リストの例を示す。「*」の桁は任意の文字であることを示し、数字や英字が指定されている桁は、その桁がその文字として認識された場合に、桁ずれと判定することを示している。例えば、同図判定リストの最上段の例では、数字が使用される第3桁目が数字の「0」であっても実際には英字の「D」であり、英字が使用される第11桁目が英字の「B」であっても実際には数字の「8」であって、桁ずれしている可能性があることを示している。このように判定リストでは、各桁の文字認識の結果が、各桁で使用されるべき文字の種類と一致している場合であっても、桁ずれしている可能性があるものがリストアップされている。この判定リストの内容を利用して、リストの内容と一致する場合には、その記番号データが桁ずれを起こしていると判定する。判定リストには、図14に示したように、英字と数字の間で互いに誤認識される可能性がある文字として「1、2、5、6、8及び0」と、「I、Z、S、B、D及びO」とがリストに含まれている。
【0144】
なお、記番号の各桁で利用される文字の種類は、発行国や金種によって決められている。そのため、発行国又は金種毎に、その紙幣で使用される文字の種類に基づいて判定リストを個別に作成し、文字認識する際には、その紙幣に対応する判定リストを利用することが好ましい。このように個別に判定リストを作成すれば、例えば、数字を使用する桁であっても「1」が利用されることがない紙幣であれば、「1」に関する判定処理が不要となる。そのため、全体の処理量を低減し、処理を高速化することができる。
【0145】
また、上記説明の通り、所定桁がエラー文字であることを判定する方法(ステップS20)が、判定リストを利用する方法(ステップS22)と独立した工程である場合の他、2つの方法(ステップS20及びS22)が一工程で処理されてもよい。この場合は、一工程でエラー文字に関する判定処理(ステップS20)と、英字と数字の間で誤認識しやすい文字に関する判定処理(ステップS22)とを同時に行うため、判定リストが図15に示すようにエラー文字「?」を含むリストとなる。図12の各桁に使用される文字の種類が固定されている場合の処理(ステップS20〜S23)が一つの処理にまとめられ、図15の判定リストと照合する処理のみによって桁ずれが起きている記番号を判定することができる。
【0146】
また、上記説明は記番号が右側へ桁ずれした場合について説明したものであるが、左側へ桁ずれした場合についても、同様に判定リストを作成して桁ずれした記番号の判定を行うことができる。図14及び図15の最下段は左側へ桁ずれした場合の例を示している。
【0147】
これらの判定方法は、管理側操作部32によって設定変更することができる。具体的には、上述した各判定方法の利用の有無、判定の順序、判定内容等を自由に設定することができる。ユーザによって設定された内容は、確定条件メモリ部49内に記憶され、文字確定部45によって利用される。
【0148】
このように桁数や、所定桁の認識結果等を考慮して桁ずれが起きている記番号を判定することにより、ユーザが目視確認することなく自動的に桁ずれを判定することができる。そして、この判定結果を利用して上述した記番号の桁ずれを修正する処理(図6ステップS5〜S9)を行うことにより、桁ずれを含まない記番号データをデータベース33に登録して利用することができる。
【0149】
次に、桁ずれを考慮して記番号を検索する方法について図16から図18を参照しながら説明する。上述したように桁ずれを修正する処理を行って記番号データを形成する各桁の文字を確定することにより桁ずれの影響を抑制することができる。特に、記番号の桁数が固定されている場合や、さらに各桁に使用される文字の種類が固定されている場合には、精度良く桁ずれを判定し、桁ずれのない記番号データに修正することができる。
【0150】
しかし、既に従来の方法で文字認識されてデータベース33に登録済みの記番号データが、桁ずれを含んでいる可能性がある。記番号データとともに紙幣画像が保管されている場合には、紙幣画像を利用して、上述した記番号認識処理を行うことによってデータベース33に保管済みの記番号データを桁ずれを修正した記番号データに置き換えることも可能であるが、再度認識処理を行うには時間と手間がかかるという問題がある。
【0151】
本発明は、上述した紙幣処理装置2及び紙幣管理装置3から構成される紙幣管理システムによって、桁ずれを考慮した記番号検索を可能とする点を一つの特徴としている。即ち、データベースを照会して記番号データを検索する際に、上述した桁ずれに関する処理を適用した処理を行うことによって桁ずれによる影響を抑制し、桁ずれした状態で保存された記番号データを含む全ての記番号データから、目的とする記番号データを精度良く検索することができる。
【0152】
なお、桁ずれを修正することなく過去に登録されたデータベース33を照会する場合の他、桁ずれを修正する上記処理を行うことができない従来装置による文字認識結果を利用して照合処理を行うような場合にも、以下に説明する方法を利用することができる。
【0153】
以下、桁ずれが修正されずにデータベース33に登録された複数の記番号データを比較元、偽造紙幣の記番号を比較先として、両者を桁ずれを考慮しながら照合することによって、データベース33から偽造紙幣の記番号と一致する記番号データを検索する場合を例に、詳細を説明する。
【0154】
図16は、桁ずれを考慮した記番号の照合方法を示すフローチャートである。比較元及び比較先のデータは、管理側操作部32の表示部31上で、検索対象入力部32Cによって指定することができる。
【0155】
図17に、管理装置3の表示部31に表示される検索画面の例を示す。画面上の比較先データボタン71によって、比較先の記番号として偽造紙幣の記番号を指定する。そして、比較元データベースボタン72によって、偽造紙幣の記番号と一致する記番号データを検索する対象となる、比較元の記番号データベース33を指定する。比較元のデータは、例えば、ある期間内に処理された紙幣に関するデータベース33や、ある店舗で処理された紙幣に関するデータベース33である。そして、画面右下にある検索ボタン75が押されると、検索処理が開始される。
【0156】
比較先データである偽造紙幣の記番号と、比較元データであるデータベース33とが指定されると、これらのデータの比較が開始される(図16ステップS22)。データベース33に含まれる記番号データと、偽造紙幣の記番号とが所定値以上の合致比率で一致した場合には(ステップS23;Yes)、次のデータに関する処理が開始され(ステップS26;No)、データベースに含まれる全データの比較が完了するまで(ステップS26;Yes)、処理が継続される。
【0157】
比較先データである偽造紙幣の記番号と、比較元データである記番号データとが一致しない場合には(ステップS23;No)、桁ずれしている可能性を考慮して比較元の記番号データを形成する各桁の文字をシフトした照合用記番号データを生成する(ステップS24)。桁ずれを考慮することなく記録された記番号データは、実際には比較先データである偽造紙幣の記番号と一致する記番号データであるにも拘わらず、桁ずれしているために、一致しないと判定されている可能性がある。そのため、図6を参照して上述した桁ずれに関する処理と同様に、記番号データの各桁をシフトして比較先データである偽造紙幣の記番号と一致するか否かを検証する。
【0158】
具体的には、図18に示すように、比較先データである偽造紙幣の記番号が「AB1234567C」であり、比較元データである記番号データが「?A?0123456?」である場合には、合致比率が0%となり、両者は一致しないと判定される(図16ステップS23;No)。そこで比較元データである記番号データを、右側へ1桁分シフトした照合用記番号データ1や、左側へ1桁分シフトした照合用記番号データ2を生成する(ステップS24)。記番号をシフトする方向や、シフトする桁数は、シフトパターンとして管理側メモリ部35に記憶されている。シフトパターンは、予め設定された所定条件を利用することもできるし、管理側操作部32によって設定変更することもできる。シフトパターンについては、図6を参照して上述したものと同様であるため詳細な説明を省略する。
【0159】
シフトパターンに従って、比較元データである記番号データをシフトした照合用記番号データが生成されると、再度、比較先データである偽造紙幣の記番号と比較される(ステップS22)。そして、比較の結果、比較元データである照合用記番号データと、比較先データである偽造紙幣の記番号とが所定値以上の合致比率で一致した場合には(ステップS23;Yes)、照合用データや合致比率等の情報を記録して、この記番号データに関する処理を終了する。そして、次に、比較元データとして、データベース33から次の記番号データが読み出され、この記番号データに関する処理が開始される(ステップS26;No)。そして、比較元として選択されたデータベース33に含まれる全ての記番号データの比較が完了するまで(ステップS26;Yes)処理が継続される。
【0160】
比較の結果、比較先データである偽造紙幣の記番号と、比較元データであるデータベース33の照合用記番号データとが、所定値以上の合致比率で一致しない場合には(ステップS23;No)、シフトパターンに従って次の照合用記番号データが生成され(ステップS24)、再度、比較先データである偽造紙幣の記番号と比較される(ステップS22)。こうして、桁ずれを考慮したシフトパターン全ての検証が完了するまで(ステップS25;Yes)、比較元データである記番号データをシフトして比較先データである偽造紙幣の記番号と比較する処理が繰り返される。
【0161】
例えば、図18の例では比較元となる記番号データを右側へ1桁分シフトした照合用記番号データ1は比較先の記番号と一致しない(図16ステップS23;No)。しかし、シフトパターンに従ってシフトしながら比較先記番号と比較する処理を繰り返し、比較元記番号データが左側へ1桁分シフトされて同図の照合用記番号データ2の状態となったときに(ステップS24)、合致比率が100%となる(ステップS23;Yes)。そのため、合致比率等の情報を記録した後、この記番号データに関する処理を終了し、次の記番号データを対象とした処理を開始する(ステップS26;No)。
【0162】
こうして、指定された(ステップS21)偽造紙幣の記番号と、記番号データベース33に含まれる全ての記番号データ及びこの記番号をシフトパターンに従ってシフトした照合用記番号データとの比較が完了すると(ステップS26;Yes)、照合結果を表示部31に表示する(ステップS27)。
【0163】
図17に、照合結果の表示例を示している。このように、表示部31上には、比較先データである偽造紙幣の記番号に関する情報73と、比較元データとして処理した記番号データベースに関する情報74とが表示される。
【0164】
偽造紙幣の記番号に関連する情報73としては、比較先データボタン71によって指定されたデータベースの名称と、紙幣の発行国と、金種と、記番号等が表示される。また比較元データボタン72で指定されたデータベース33に関する情報としては、ボタンの下方にデータベースの名称が表示され、さらにその下方に検索結果74が表示される。検索結果74としては、例えば画面左側から、偽造紙幣の記番号と一致する可能性を示す順位と、その根拠となる合致比率と、その合致比率が得られた記番号データが記憶されたフォルダ名及びファイル名と、紙幣の発行国、金種及び方向等の情報と、記番号データと、その合致比率を得たときの照合用データと、この紙幣に関する取引内容を特定可能な取引情報IDとが表示される。
【0165】
図18に示した記番号の例では、データベースに保存された状態では合致比率が0%であるが、桁ずれを考慮したシフト処理を行って照合した結果、合致比率が100%となって、図17の検索結果74に示したように合致比率第1位として最上段に表示される。検索結果74では、データベースに保存された記番号データに加えて、合致比率が得られたときの照合用データが表示される。そのため、ユーザは、データベース33に登録された状態の記番号データではなく、記番号データをシフトした照合用データによって検索結果74に表示された合致比率が得られたことを認識することができる。
【0166】
また検索結果74内の、任意の行を選択すると、そのデータに対応する紙幣画像が画面上に表示される。そのため、ユーザは、紙幣画像上の記番号を確認して、記番号検索結果に誤りがないことを容易に検証することができる。即ち、シフトして判定した結果が正しい判定であるか否かを、紙幣画像上の記番号と偽造紙幣の記番号とを表示部31上で比較して確認することができる。
【0167】
なお、上記記番号の照合が、従来装置による文字認識結果を利用して行われる場合には、表示部31には、比較先データである偽造紙幣の記番号に関する情報73と、比較元データである文字認識結果に関する情報及び紙幣画像とが、検索結果74として表示される。
【0168】
また、比較先データとして、複数の偽造紙幣の記番号を含む偽造紙幣データベースを指定して処理を行った場合には、表示部31では、偽造紙幣の記番号がリストボックスの状態で表示される。このリストボックスから検索結果を確認したい偽造紙幣の記番号を個別に選択することによって、選択した記番号に関する検索結果74が表示されるようになっている。また検索結果は、一覧表やレポート等の所定形式で印刷することもできる。
【0169】
また、2つの記番号の一致度を確認する際に、合致比率として、エラー文字を除いて文字として認識できた桁のみについて一致度を算出する例を示したが、合致比率の算出方法がこれに限定されるものではなく、エラー文字を含む全桁の文字について一致度を算出してもよい。具体的には、例えば、図18に示す例では、比較用記番号と照合用記番号データ2とを比較した場合に、エラー文字を除いて算出する合致比率は上述した通り100%となる。これに対し、エラー文字を含む全桁を利用して算出する場合には、比較用記番号と照合用記番号データ2との間で、11桁中の8桁で文字が一致しているため合致比率は72.73%となる。合致比率の変化によって桁ずれが修正されたと判定することができれば、いずれの方法によって合致比率を算出しても構わない。
【0170】
このように、桁ずれを考慮して、記番号データをシフトさせて照合する処理を行うことによって、検索したい記番号データを精度良く発見することができる。桁ずれを考慮することなく記録されたデータベース内の記番号データについても精度良く記番号を発見することができるため、過去に蓄積されたデータベースを有効に活用することもできる。
【0171】
上述してきたように、本発明によれば、紙幣上の記番号を文字認識する際に、桁ずれによる影響を抑制した記番号認識を行うことができる。このとき記番号の桁数及び各桁に使用される文字が固定されている場合や、所定位置で文字認識できずにエラー文字となっている場合等、記番号の構成やその認識結果に応じて桁ずれを判定することとしたので、高い精度で桁ずれを認識して桁ずれを修正することができる。
【0172】
また、このようにして桁ずれを修正した記番号データをデータベースに登録することとしたので、後に記番号データを検索するときにも精度良く記番号データを発見することができる。
【0173】
また、桁ずれを考慮した記番号データの検索処理を行うことができるので、桁ずれを考慮せずに登録された過去の記番号データを検索する場合や、従来装置の文字認識結果として得られた記番号データを利用して照合を行う場合にも、一致する記番号を精度良く発見することができる。
【0174】
また、桁ずれを考慮したシフト処理を行う際に、全ての記番号データを同様にシフトさせるのではなく、記番号の認識結果に応じてシフトパターンを設定してシフト処理を行うこととしたので、全てのシフトパターンを総当たり的に行う場合に比べて処理時間を短縮し効率よく処理を行うことができる。またこれらの処理を全て装置内部で自動的に行うこととしたので、ユーザの負担を軽減しながら、ユーザが目視確認した場合と同等の精度で記番号データを認識したり、記番号データを検索したりすることができる。
【0175】
なお、上述した機能及び動作は、紙幣に限らず、小切手、手形、商品券等の紙葉類に印刷された識別番号全般に適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上のように、本発明に係る紙葉類管理方法及び紙葉類管理システムは、紙葉類上に印刷された識別番号を文字認識してデータベースに登録したり、所定の識別番号と一致する識別番号をデータベースから検索したりする際に、文字認識されたデータやデータベースに登録済みのデータが桁ずれしている場合に有用である。
【符号の説明】
【0177】
1 紙幣管理システム
2 紙幣処理装置
3 紙幣管理装置
32A 登録条件指定部
32B 合致比率指定部
32C 検索対象入力部
32D 検索条件指定部
33 データベース
38A 記番号認識部
38B 記番号登録条件処理部
38E DB制御部
38F 検索制御部
43 記番号文字認識部
44 記番号照合部
45 文字確定部
46 記番号データ取得部
61 特定桁判定部
62 許容エラー文字数判定部
63 合致比率判定部
64 偽造紙幣リスト判定部
65 記番号入力要求部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類に印刷された識別番号によって該紙葉類を管理する紙葉類管理方法であって、
前記紙葉類の識別番号が印刷された領域から読み取った複数の文字データをそれぞれ文字認識するとともに文字認識できない場合には所定文字を割り当てて第1識別番号を取得する入力識別番号取得工程と、
前記入力識別番号取得工程により取得された第1識別番号と、記憶部に記憶された第2識別番号との間で、同じ桁にある文字が合致する比率を第1合致比率として算出する第1合致比率算出工程と、
前記第1合致比率算出工程により算出された第1合致比率が所定の基準値よりも低い場合は、前記第1識別番号をなす文字列を形成する各桁の文字を上位桁方向又は下位桁方向にそれぞれシフトする番号シフト工程と、
前記番号シフト工程によりシフトされたシフト識別番号と、前記第2識別番号との間で、同じ桁にある文字が合致する比率を第2合致比率として算出する第2合致比率算出工程と、
前記第2合致比率算出工程により算出された第2合致比率が前記基準値以上である場合に、前記シフト識別番号により前記第1識別番号を修正する修正工程と
を含んだことを特徴とする紙葉類管理方法。
【請求項2】
前記第1識別番号は紙葉類に印刷された第1の紙葉類識別番号を文字認識して得られた番号であり、前記第2識別番号は前記紙葉類上で前記第1の紙葉類識別番号とは異なる領域に印刷された第2の紙葉類識別番号を前記入力識別番号取得工程により取得した番号であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類管理方法。
【請求項3】
前記修正工程による修正後の前記第1識別番号と、前記第2識別番号との間で、同じ桁の文字認識結果が、一方では文字認識できずに所定文字が割り当てられ、他方では文字認識された確定文字である場合は、その桁の文字認識結果を前記確定文字とする番号補完工程
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の紙葉類管理方法。
【請求項4】
前記修正工程による修正後の前記第1識別番号、又は前記補完工程による補完後の前記第1識別番号の少なくともいずれか一方をデータベースに登録することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の紙葉類管理方法。
【請求項5】
前記紙葉類が紙幣であって、前記第2識別番号が偽造紙幣の記番号であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類管理方法。
【請求項6】
前記番号シフト工程は、前記第1識別番号が前記第2識別番号に対して桁ずれしているか否かを判定する桁ずれ判定工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の紙葉類管理方法。
【請求項7】
前記桁ずれ判定工程は、前記第1識別番号の桁数が前記第2識別番号の桁数より多い場合に桁ずれしていると判定することを特徴とする請求項6に記載の紙葉類管理方法。
【請求項8】
前記桁ずれ判定工程は、前記第1識別番号の右端又は左端の文字に、文字認識できない桁に割り当てられる所定文字が割り当てられている場合に桁ずれしていると判定することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の紙葉類管理方法。
【請求項9】
前記桁ずれ判定工程は、前記第1識別番号が、各桁で使用される文字の種類が固定された識別番号を文字認識した番号であり、かつ異なる種類の文字が使用される隣り合う桁の少なくとも一方で使用されるべき種類の文字が使用されていない場合に、桁ずれしていると判定することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の紙葉類管理方法。
【請求項10】
前記桁ずれ判定工程は、前記第1識別番号が、各桁で使用される文字が複数種類の文字のうちいずれかに固定された識別番号を文字認識した番号であり、かつ所定桁の文字が前記複数種類の文字間で誤認識されやすい文字として認識されている場合に、桁ずれしていると判定することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の紙葉類管理方法。
【請求項11】
前記第1識別番号が、英字及び数字からなる識別番号を文字認識した番号であり、かつ英字が使用されるべき所定桁が「B」,「D」,「I」,「O」,「S」のいずれか一つと認識された場合又は数字が使用されるべき所定桁が「0」、「1」、「2」、「5」、「6」、「8」のいずれか一つと認識された場合に、桁ずれしていると判定することを特徴とする請求項10に記載の紙葉類管理方法。
【請求項12】
紙葉類に印刷された識別番号によって該紙葉類を管理する紙葉類管理システムであって、
紙葉類表面を走査して紙葉類画像を生成する撮像部、及び前記紙葉類画像を送信する送信部を有する紙葉類処理装置と、
前記紙葉類処理装置から前記紙葉類画像を受信する受信部、前記識別番号が印刷された領域から読み取った複数の文字データをそれぞれ文字認識するとともに文字認識できない場合には所定文字を割り当てる文字認識部、及び前記文字認識部によって取得された第1識別番号と第2識別番号との間で同じ桁にある文字が合致する比率を算出した第1合致比率が基準値より低く、かつ前記第1識別番号をなす文字列を形成する各桁の文字を上位桁方向又は下位桁方向にシフトしたシフト識別番号と前記第2識別番号との間で同じ桁にある文字が合致する比率を算出した第2合致比率が前記基準値以上になった場合は、前記シフト識別番号により前記第1識別番号を修正して確定する文字確定部を有する紙葉類管理装置と
を備えることを特徴とする紙葉類管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−174132(P2012−174132A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37422(P2011−37422)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】