説明

紙葉類識別装置

【課題】
本発明は、搬送される紙葉類からの反射光の受光量の変動を抑え、紙葉類の特性データを高精度に取得する識別センサを備えた紙葉類識別装置を提供する。
【解決手段】
紙葉類の特徴を検出する光学検知部からの受光データに基づいて紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、光学検知部は、紙葉類の表面へ光を照射する第1の光源と、紙葉類表面で反射した反射光を集光する第1のレンズと、第1のレンズを透過した光を受光する第1の受光素子と、紙葉類へ光を照射する第2の光源と、紙葉類裏面で反射した反射光を集光する第2のレンズと、第2のレンズを透過した光を受光する第2の受光素子とを備え、紙葉類表面の反射面に対して第1のレンズ主面と第1の受光素子の受光面がシャインプルーフの関係になるように配置し、紙葉類裏面の反射面に対して第2のレンズ主面および第2の受光素子の受光面がシャインプルーフの関係になるよう配置にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類からの反射光の受光量の変動を抑え、紙葉類の特性データを高精度に取得する識別センサを備えた紙葉類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高精度なスキャナー、プリンタ及びコンピュータ等の装置の普及により、これらの装置を用いて紙幣、小切手等の有価証券等の紙葉類が偽造され悪用されるという問題があり、これら偽造券を確実に識別する方法や装置の提供が望まれている。
【0003】
例えば特許文献1には、光センサで構成された識別センサを用いて紙幣に印刷されたパールインキを識別し、紙幣の真偽を判別する紙葉類識別装置が提案されている。
【0004】
上記特許文献1に開示された識別センサは、紙幣の表面に対して斜めから赤と緑の光を夫々照射する発光素子と、発光素子が発光して紙幣に照射された照射光が紙幣表面で反射した反射光を紙幣表面に対して垂直方向で受光する受光素子と、斜め方向(紙幣表面に対して照射光の入射角と等しく、照射光の対向側)で受光する受光素子がそれぞれ配置されて構成されており、この識別センサを備えた紙葉類識別装置は、各受光素子での各反射光の受光量の差及び各反射光の緑と赤の受光量の比に基づき紙幣のパールインキの識別及び当該紙幣の真偽を判別するように構成されている。
【0005】
上記特許文献1に示された識別センサは、受光素子が受光する受光量が大きい程、受光素子で検出された受光量に対応した検出波形の変化も大きくなるので、パールインキの識別には有利となり、発光素子から紙幣の検出領域(紙幣の測定したい部分)への照射角と検出領域から受光素子への反射角が等しくなるように発光素子と受光素子とを配置して検出領域での反射光が効率良く受光素子で受光されるように構成されている。
【0006】
上記特許文献1以外にも光を紙幣の検出領域に効率良く照射するまたは検出領域からの反射光を受光素子で効率良く受光するための技術は種々提案されており、例えば特許文献2には、搬送される紙幣の紙幣搬送通路に沿って設けられた複数の光源と、紙幣搬送通路に沿って設けられた受光素子とを有し、複数の光源と紙幣搬送通路の間に、複数の光源から発せられた光を集光して紙幣搬送通路側に放射する略漏斗形状の第1の導光体を光センサ部に備えることで、照射光のロスを抑えるように構成した紙幣識別装置が提案されている。
【0007】
また、例えば特許文献3には、搬送路の検出領域に向けて光を照射する光源と、検出領域を挟んで光源と対向するように配置して光源から照射された光によって対象物から生じる蛍光を受光するフォトセンサと、フォトセンサと検出領域との間にフォトセンサの受光範囲を検出領域側に対して集光させる光学レンズとを備えることで、受光量のロスを抑えるように構成された蛍光検出装置が提案されている。
【特許文献1】特開2006−146321号公報
【特許文献2】特開2002−260051号公報
【特許文献3】特開2005−215784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記提案の特許文献1のように、単に発光素子を配置して紙葉類に光を照射し、紙葉類からの反射光を検出するだけでは概して紙葉類の検出領域での照射光の強弱のばらつきが生じたり、また、受光素子の検出感度のばらつきによって受光強度分布に差が生ずる場合がある。
【0009】
また、特許文献2や特許文献3のように光を集光するための漏斗形状の導光体や光学レンズ等を利用して紙葉類の検出領域に照射光を集光させると、光の強度分布が紙葉類の集光面でピークポイントとなり、検出領域の一部の特徴のみが強調されて検出され、また、集光された反射光を受光素子で受光した場合には、検出領域外の反射光も受光して検出するため、測定した検出領域の特徴を正確に検出できない場合がある。
【0010】
また、特許文献1乃至特許文献3のように、単に受光素子で反射光を受光する場合や、漏斗形状の導光部材やレンズによって集光して受光する場合は、搬送路に沿って搬送される紙葉類のバタツキに応じて紙葉類から受光素子までの距離が変動すると、受光素子で受光される紙葉類からの反射光の受光量が増減して不安定となるという課題が残る。
【0011】
そこで、本発明は、搬送される紙葉類からの反射光の受光量の変動を抑え、紙葉類の特性データを高精度に取得する識別センサを備えた紙葉類識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1の紙葉類識別装置の発明は、紙葉類を搬送路に沿って搬送する紙葉類搬送手段と、前記紙葉類の特徴を検出する光学検知部を備え、前記光学検知部からの受光データに基づいて紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、前記光学検知部は、前記紙葉類搬送手段で搬送される前記紙葉類の表面に対して所定の角度で配設され、前記紙葉類の表面へ光を照射する第1の光源と、前記紙葉類の表面で反射した反射光を集光する第1のレンズと、前記第1のレンズを透過した光を受光する第1の受光素子と、前記紙葉類搬送手段で搬送される前記紙葉類の裏面に対して所定の角度で配設され、前記紙葉類へ光を照射する第2の光源と、前記紙葉類の裏面で反射した反射光を集光する第2のレンズと、前記第2のレンズを透過した光を受光する第2の受光素子と、を備え、前記第1の光源からの光が照射される紙葉類表面の反射面に対して前記第1のレンズ主面と前記第1の受光素子の受光面がシャインプルーフの関係になるように配置し、前記第2の光源からの光が照射される紙葉類裏面の反射面に対して前記第2のレンズ主面および前記第2の受光素子の受光面が、シャインプルーフの関係になるように配置したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の紙葉類識別装置の発明は、請求項1の発明において、前記光学検知部は、視角により色相が変化する色相インキ印刷領域を有する紙葉類の特徴を検出する光学検知部であって、前記第1の光源、及び前記第2の光源は、複数の色の光を有し、前記紙葉類の表面で反射される前記第1の光源からの光の反射光を前記紙葉類の表面に対して垂直方向に集光する第3のレンズと、前記第3のレンズを透過した光を受光する第3の受光素子と、前記紙葉類の裏面で反射される前記第2の光源からの光の反射光を前記紙葉類の裏面に対して垂直方向に集光する第4のレンズと、前記第4のレンズを透過した光を受光する第4の受光素子と、を更に備え、前記第1の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第1の受光素子の受光出力、または前記第2の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第2の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを算出する第1の算出手段と、前記第1の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第3の受光素子の受光出力、または前記第2の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第4の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを算出する第2の算出手段と、前記第1の算出手段及び前記第2の算出手段の算出結果に基づき前記紙葉類を判別する紙葉類判別手段とを更に具備することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の紙葉類識別装置の発明は、請求項1の発明において、前記第1の光源および前記第2の光源は、照射光路を備え、前記照射光路の内壁に散乱反射面を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4の紙葉類識別装置の発明は、請求項1の発明において、前記紙葉類表面の検出領域の像と前記第1の受光素子の受光面に結像された像の大きさが等寸となるように前記第1のレンズを配置し、前記紙葉類裏面の検出領域の像と前記第2の受光素子の受光面に結像された像の大きさが等寸となるように前記第2のレンズを配置するとともに、前記第1の受光素子の直前に紙葉類の検出領域を規制する第1のスリットを配置し、前記第2の受光素子の直前に紙葉類の検出領域を規制する第2のスリットを配置したことを特徴とする。
【0016】
また、請求項5の紙葉類識別装置の発明は、請求項1の発明において、前記搬送路上の前記光学検知部が配置された部分は、前記紙葉類に対する垂直方向の幅が他の搬送路より狭く形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6の紙葉類識別装置の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記第1のレンズ、前記第2のレンズ、前記第3のレンズ、前記第4のレンズは、球レンズであり、前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、前記紙葉類の搬送路に対して垂直に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の紙葉類識別装置によれば、紙葉類搬送手段で搬送路に沿って搬送する紙葉類の表面および裏面上の検出領域に、光の強度分布が均等になるように第1の光源および第2光源から光を照射し、その光の検出領域の反射光をレンズで集光して受光素子の受光面に結像させ、その受光量に対応した受光データを取得するので、紙葉類の検出領域の一部の特徴のみが強調されて検出されることを抑え、紙葉類の検出領域以外で反射した光が受光素子へ進入することを防いで、あたかも紙葉類面上の検出領域に直接受光素子を配置したかのように検出領域の特徴のみを検出することができる。
【0019】
さらに、特許文献1乃至特許文献3のように、単に受光素子で反射光を受光する場合や、漏斗形状の導光部材やレンズによって集光して受光する場合に比較して、搬送路に沿って搬送される紙葉類のバタツキによって、紙葉類の検出領域から各受光素子までの距離が変動したときの受光量の変動が、抑えられ、紙葉類の特性データを高精度で取得することができる。
【0020】
また、紙葉類搬送手段で紙葉類を搬送する搬送路上の光学検知部が配置された部分は、該紙葉類に対する垂直方向の幅が他の搬送路より狭く形成されているので、搬送路に沿って搬送される紙葉類のバタツキが規制され、紙葉類の検出領域から各受光素子までの距離の変動による受光素子での受光量の変動が少なくなり、紙葉類の特性データが高精度で取得されて紙葉類の識別精度が向上する効果を奏する。
【0021】
また、第1のレンズ、第2のレンズ、第3のレンズ、第4のレンズを、球レンズとし、第1の受光素子及び第2の受光素子は、紙葉類の搬送路に対して垂直に配置したことで、光学検知部の組立を容易とすると共に受光素子及びレンズの取り付け精度を高めることができ、尚且つ光学検知部全体を小型にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係わる紙葉類識別装置の一実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係わる紙葉類識別装置100の要部の構成例を概略的に示した構成図である。
【0024】
図1に示すように、紙葉類識別装置100は、マイクロコンピュータ60と、光学検知部30(一点鎖線で囲まれた部分)と、紙幣搬送機構40(図中の破線で囲まれた部分)とで構成されており、マイクロコンピュータ60は、紙葉類識別装置100全体を統括制御する。
【0025】
光学検知部30は、本発明に係わる真正紙幣に印刷されたパールインキの特性データを高精度に取得する識別センサであり、紙葉類識別装置100の図示せぬ紙幣挿入口から挿入され、紙幣搬送機構40によって搬送される紙幣130(以下、「挿入紙幣130」という。)の表面及び裏面に赤色光と緑色光を順次照射し、その照射光が挿入紙幣130で反射した反射光及び透過した透過光の各受光量に対応した受光データを検出する。
【0026】
光学検知部30は、真正紙幣に印刷されたパールインキの特性データを高精度に取得するように構成された本発明の要部であり、光学検知部30の詳細については後述する。
【0027】
紙幣搬送機構40は、紙葉類識別装置100の紙幣挿入口から挿入された紙幣130を搬送路80に沿って搬送する紙葉類搬送手段である。
【0028】
なお、図1には示してないが、紙葉類識別装置100には、光学検知部30とは別に、磁気センサー、反射型光センサー、透過型光センサーからなる磁気及び光センサー49(図2参照)、紙幣挿入検出センサー47(図2参照)の各センサーが紙葉類識別装置100の所定の位置に配置されており、磁気及び光センサー49は、挿入紙幣130の磁気データと受光データを検出し、その金種や挿入方向(挿入紙幣130の表裏、正逆方向)を特定する。
【0029】
前述した各センサーの動作を簡単に説明すると、例えば紙葉類識別装置100に紙幣130が挿入されると、そのことを紙幣挿入検出センサー47が検出し、この検出結果に基づき紙幣搬送機構40の駆動が開始され紙幣が装置内部へと搬送される。また、磁気センサー、反射型光センサー、透過型光センサーからなる磁気及び光センサー49、光学検知部30が挿入紙幣130の磁気データ及び受光データを取得する。
【0030】
磁気及び光センサー49の各検出結果に基づく紙幣の真偽識別方法は、公知の紙幣識別方法として種々提案されており、この紙幣識別方法については、本発明に係わる紙葉類識別装置100の要部ではないので省略する。
【0031】
なお、本実施例では、説明の便宜上、磁気及び光センサー49の透過型光センサーと反射型光センサーを光学検知部30とは別に備えた構成としたが、この透過型光センサーと反射型光センサーによる挿入紙幣130の受光データの検出を光学検知部30が具備する透過型光センサーと反射型光センサーで兼用する構成としてもよい。
【0032】
紙葉類識別装置100を構成するマイクロコンピュータ60は、制御部51と、金種及び挿入方向判定部52と、受光データ補正部53と、透かし領域データ特定部54と、パールデータ判定部55と、透かしデータ判定部56と、メモリ57とを具備しており、メモリ57は、光学検知部30で検出される挿入紙幣130各面(表面及び裏面)における2色(赤、緑)それぞれの反射光と透過光の各受光データと、磁気及び光センサー49(図2参照)で検出される挿入紙幣130各面の反射光と透過光の各受光データ及び検出された磁気の磁気データと、予め設定された透かし領域データアドレス参照表と、パールインキ印刷部データアドレス参照表等の各種参照表及び参照データと、各種処理プログラム等を記憶する。
【0033】
透かし領域データアドレス参照表には、金種毎の真正紙幣を表裏、正逆の挿入方向でそれぞれ紙葉類識別装置100に挿入した場合の各真正紙幣の透かし領域の受光データが格納される記憶領域(メモリ57)の始点と終点のアドレス情報が真正紙幣の金種と挿入方向に対応して参照できるように予め設定されている。
【0034】
また、パールインキ印刷部データアドレス参照表には、透かし領域データアドレス参照表と同様に、金種毎の真正紙幣を表裏、正逆の挿入方向でそれぞれ紙葉類識別装置100に挿入した場合の各真正紙幣のパールインキが印刷された領域(以下、「パールインキ印刷部」という。)の受光データが格納される記憶領域(メモリ57)の始点と終点のアドレス情報が真正紙幣の金種と挿入方向に対応して参照できるように予め設定されている。
金種及び挿入方向判定部52は、磁気及び光センサー49により検出された挿入紙幣130の磁気データと、透過光及び反射光の各受光データとに基づき挿入紙幣130の金種と挿入方向の判定を行う。
【0035】
受光データ補正部53は、光学検知部30によって挿入紙幣130から取得された透かし領域の2色(赤、緑)それぞれの反射光の各受光量に対応した受光データに基づき後述する最大受光量を検出し、この最大受光量を基に光学検知部30で検出された挿入紙幣130の全ての反射光データに対して補正を行う。
【0036】
具体的には、光学検知部30で挿入紙幣130の透かし領域に赤色光を照射した場合のその反射光(以下、「赤色反射光」という。)の受光量と、緑色光を照射した場合のその反射光(以下、「緑色反射光」という。)の受光量との和が最大となる最大受光量を検出し、この最大受光量が予め定められた規定値となるように補正し、この補正に対応して光学検知部30で検出された挿入紙幣130の全ての反射光データに対する補正を行う。
【0037】
なお、挿入紙幣130の透かし領域の受光データは、金種及び挿入方向判定部52で判定された挿入紙幣130の金種と挿入方向の判定結果に基づき透かし領域データ特定部54によりメモリ57から読み出される。
【0038】
透かし領域データ特定部54は、金種及び挿入方向判定部52で判定された挿入紙幣130の金種と挿入方向に基づき透かし領域データアドレス参照表を参照して挿入紙幣130の透かし領域の受光データが格納されている記憶領域(メモリ57)を特定し、そこから挿入紙幣130の透かし領域の受光データを読み出す。
【0039】
パールデータ判定部55は、受光データ補正部53により各色の反射光データが補正された補正データから求めた挿入紙幣130の各検出領域でのインキの色合いやパールインキ成分及びその判定基準に基づき挿入紙幣130の真偽判定を行う。
【0040】
具体的には、本発明に係わる紙葉類識別装置100が真正紙幣と判定する紙幣の片面には、パールインキ印刷部が形成されており、このパールインキ印刷部のパールインキは、色相インキの一種で、視角によりパール光沢のある半透明な模様が浮かび上がるようなインキであり、ある特定波長の光を特定の角度で照射した場合に特殊な色で反射するインキである。
【0041】
このパールインキは、パールインキの種類(メーカーの違い等)によって、変化する色が異なるが、本実施例における真正紙幣に印刷されたパールインキは、具体的には、真正紙幣を真正紙幣面に対して垂直方向から見ると無色(印刷されていないように見える)に見え、斜め方向から見るとピンク色に見えるように真正紙幣の片面にパールインキ印刷部として印刷されている。
【0042】
この真正紙幣のパールインキ印刷部に各波長の光を照射し、その反射光の測定実験を行った結果、赤色光を斜めの角度で真正紙幣に照射して、その反射光を斜めに受光したところ、パールインキ印刷部の反射光が他の無地の部分の反射光に比べて受光量が顕著に大きく、また、緑色光を照射した場合の反射光の受光量は、パールインキ印刷部と他の無地の部分とでは殆ど変らないことの実験結果を本願発明者らは得た。
【0043】
このことからパールデータ判定部55では、挿入紙幣130の各面の各計測位置でのインキの色合いを識別すると共に、真正紙幣のパールインキ印刷部のパールインキの微妙な特性に基づき挿入紙幣130に印刷されたパールインキを精密に識別する。
【0044】
透かしデータ判定部56は、透かし領域データ特定部54により特定された挿入紙幣130の透かし領域の受光データに基づき挿入紙幣130の真偽判定を行う。
【0045】
光学検知部30は、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130を挟んで上側には光源1(第1の光源)と球レンズ4(第1のレンズ)及び受光素子5(第1の受光素子)、下側には光源8(第2の光源)と球レンズ11(第2のレンズ)及び受光素子12(第2の受光素子)を具備しており、光源1(第1の光源)がアンプ2及びD/Aコンバータ3を介してマイクロコンピュータ60と接続され、光源8(第2の光源)がアンプ9及びD/Aコンバータ10を介してマイクロコンピュータ60と接続されている。
【0046】
マイクロコンピュータ60の制御部51から各光源へのデジタルの指令信号は、各D/Aコンバータでアナログの指令信号に変換され、変換された指令信号に基づき各アンプが各光源に流す電流の増減制御を行い、各光源の発光量が調整される。
【0047】
また、受光素子5(第1の受光素子)は、アンプ6及びA/Dコンバータ7を介してマイクロコンピュータ60と接続され、受光素子12(第2の受光素子)は、アンプ13及びA/Dコンバータ14を介してマイクロコンピュータ60と接続されており、各受光素子は、受光した反射光や透過光の受光量に対応した信号レベルの電気信号を出力し、各受光素子から出力された電気信号は各アンプで増幅され、各A/Dコンバータでデジタル信号の受光データへ変換後、バス70を介してマイクロコンピュータ60のメモリ57の所定の記憶領域へ記憶される。
【0048】
各光源は2色(赤、緑)の光を発光する例えばLED(=Light Emitting Diode)であり、挿入紙幣130に形成されたパールインキ印刷部に、垂直に赤色の光源を配置して反射光を略垂直に受光したときの受光量に比較して、受光量が増大するように光源と受光素子を配置している。(本実施例においては、2色(赤、緑)の光を発光する光源(LED)と受光素子が夫々紙幣に対して45度で配置されている。)
具体的には、光源1(第1の光源)からの照射光による挿入紙幣130表面での反射光は、球レンズ4(第1のレンズ)で集光された後、受光素子5(第1の受光素子)で受光され、光源8(第2の光源)からの照射光による挿入紙幣130裏面での反射光は、球レンズ11(第2のレンズ)で集光された後、受光素子12(第2の受光素子)で受光される。
【0049】
また、光源1(第1の光源)と球レンズ11(第2のレンズ)とは対向して配置され、光源8(第2の光源)と球レンズ4(第1のレンズ)とは対向して配置されており、光源1(第1の光源)からの照射光が挿入紙幣130を透過する透過光を球レンズ11(第2のレンズ)で集光後、受光素子12(第2の受光素子)で受光し、光源8(第2の光源)からの照射光が挿入紙幣130を透過する透過光を球レンズ4(第1のレンズ)で集光後、受光素子5(第1の受光素子)で受光できるように構成されている。
【0050】
なお、本実施例では、可視光を照射する各発光素子を配置する構成としたが、可視光の他、赤外や、紫外のいずれの波長の光を照射する発光素子を配置する構成としてもよい。
【0051】
ところで、本発明に係わる光学検知部30は、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130からの反射光の受光量の変動を抑え、挿入紙幣130のパールインキの特性データを高精度に取得して紙葉類識別装置100による紙幣の識別精度を向上させるように以下の(1)から(4)に示すような構成となっている。
【0052】
(1)光学検知部30の各光源(光源1(第1の光源)及び光源8(第2の光源))から挿入紙幣130へ照射された光が挿入紙幣130の検出領域(紙幣の測定したい部分)に均等に照射されるように構成されている。
【0053】
具体的には、光学検知部30の各光源(光源1(第1の光源)及び光源8(第2の光源))には、2色(赤または緑)の光を発光するLEDを例えば直径4.8ミリの筒状の照射光路31(第1の照射光路)及び照射光路32(第2の照射光路)中に配置し、LEDを配置した筒状の照射光路31(第1の照射光路)及び照射光路32(第2の照射光路)中の表面を荒くする(散乱反射面であり、例えばM6のタップを切る)ことで、LEDが発光して発する各色(赤または緑)の光を筒中で散乱させ、各LEDが配置された筒中から照射される各光の強度分布が挿入紙幣130の検出領域で均等になるように構成されている。
【0054】
(2)光学検知部30内を搬送路80に沿って搬送される挿入紙幣130のバタツキによって挿入紙幣130から各受光素子までの距離が変動し、受光素子で受光される受光量が不安定とならないように構成されている。
【0055】
具体的には、光学検知部30が配置された搬送路80の幅(挿入紙幣130の搬送方向に対する垂直(上下)方向の幅が例えば1ミリ)が他の部分の搬送路80の幅(例えば2ミリ)よりも狭くして挿入紙幣130の折れや皺及び挿入紙幣130の搬送路80内のバタツキを規制し、挿入紙幣130が搬送路80の中心を搬送されるように構成されている。
【0056】
さらに、(3)挿入紙幣130表面(反射面)と球レンズ4(第1のレンズ)のレンズ主面及び受光素子5(第1の受光素子)の受光面の各面を延長した面が一本の直線(図中の点P)上で一致するように、また、挿入紙幣130裏面と球レンズ11(第2のレンズ)のレンズ主面及び受光素子12(第2の受光素子)の受光面の各面を延長した面が一本の直線(図中の点Q)上で一致するように、各球レンズ及び各受光素子を配置して、挿入紙幣130の検出領域とレンズ主面及び受光素子がシャインプルーフの関係になるようにしている。
【0057】
このように配置すると、各球レンズの主面と各受光素子が、挿入紙幣130に対して平行になるように配置されてなくても挿入紙幣130の反射光が各球レンズで集光され各受光素子の受光面上で結像可能となり、挿入紙幣130のバタつきによる受光量の変動を抑えることが可能となる。また、検出領域外の不要な部分からの反射光が受光素子で検出されるという問題が解消される。また、各レンズを各球レンズにすることで、挿入紙幣130の反射光の焦点距離を短くすることができ、光学検知部30を小型化するように構成されている。
【0058】
(4)挿入紙幣130の表裏各面(反射面)と各受光素子の受光面とのなす角がそれぞれ90度となるように各受光素子を配置すると共に、受光素子の受光面における像が挿入紙幣130の照射面と等寸になるように球レンズを配置し、スリット26(第1のスリット)及びスリット27(第2のスリット)によって検出領域を限定して受光するようにすることで各検出結果に基づく光学計算や光学検知部30の組立てが容易となるように構成されている。
【0059】
なお、球レンズ主面が、挿入紙幣130の各面(反射面)に対して45度となるように配置し、さらに球レンズと受光素子とが45度となるように配置すれば、レンズの配置位置決めがより容易となる。
【0060】
さらに、球レンズは他の凸レンズのように向きがない為、レンズの取り付け位置決めが容易である。
【0061】
紙幣搬送機構40は、紙幣挿入口から挿入された挿入紙幣130を搬送する搬送ベルト44と、搬送ベルト44を支持するローラ42及びローラ43と、ローラ42またはローラ43の回転方向、回転速度、回転数等を制御して搬送ベルト44を所望の方向へ、所望の搬送速度で、所望の搬送距離だけ移動させることが可能な搬送モータ41とを備えている。
【0062】
なお、搬送モータ41は、ローラ42またはローラ43の駆動制御をマイクロコンピュータ60の制御部51からの指令信号に基づき行う。
【0063】
制御部51は、紙葉類識別装置100全体を統括制御し、紙葉類識別装置100の各部間のデータ信号や制御信号等の授受は、バス70を介してマイクロコンピュータ60の制御部51の指令信号に基づき行われる。
【0064】
このように構成された紙葉類識別装置100の本発明の要部の回路構成を図2に示す。
【0065】
図2は、紙葉類識別装置100の回路構成の一例を概略的に示した回路ブロック図であり、図2に示すように、紙葉類識別装置100を構成する光学検知部30(一点鎖線で囲まれた部分)の回路構成は、光学検知部30内の搬送路80に対して垂直の上側には赤色光を発光するLED(R)及び緑色光を発光するLED(G)で構成された光源1(第1の光源)と、下側には赤色光を発光するLED(R)及び緑色光を発光するLED(G)で構成された光源8(第2の光源)が配置されており、光源1(第1の光源)のLED(R)は、LED(R)に流す電流の増減制御が可能なD/Aコンバータ3Rとアンプ回路2Rを介してマイクロコンピュータ60と接続され、LED(G)は、LED(G)に流す電流の増減制御が可能なD/Aコンバータ3Gとアンプ回路2Gを介してマイクロコンピュータ60と接続されている。
【0066】
また、光源8(第2の光源)のLED(R)は、LED(R)に流す電流の増減制御が可能なD/Aコンバータ10Rとアンプ回路9Rを介してマイクロコンピュータ60と接続され、LED(G)は、LED(G)に流す電流の増減制御が可能なD/Aコンバータ10Gとアンプ回路9Gを介してマイクロコンピュータ60と接続されている。
【0067】
受光素子5(第1の受光素子)は、A/Dコンバータ7とアンプ回路6を介してマイクロコンピュータ60と接続され、受光素子12(第2の受光素子)は、A/Dコンバータ14とアンプ回路13を介してマイクロコンピュータ60と接続されている。
【0068】
各受光素子は、受光した反射光や透過光の各受光量に応じた電気信号を出力し、各受光素子から出力される電気信号は、各受光素子に対応したそれぞれのアンプ回路で増幅され、各アンプに対応したそれぞれのA/Dコンバータでデジタル信号へ変換されてマイクロコンピュータ60のメモリ57へ記憶される。
【0069】
挿入紙幣130の搬送制御を行う搬送モータ41は、マイクロコンピュータ60に接続され、マイクロコンピュータ60の制御部51から送信される指令信号に基づき紙幣搬送機構40のローラ42またはローラ43の駆動制御を行う。
【0070】
また、搬送モータ41にはエンコーダ45が接続されており、エンコーダ45は、アンプ回路46を介してマイクロコンピュータ60と接続され、搬送モータ41の駆動に対応してエンコード化したパルス信号をアンプ回路46で増幅してマイクロコンピュータ60へ出力する。
【0071】
紙幣挿入検出センサー47は、アンプ回路48を介してマイクロコンピュータ60と接続され、紙葉類識別装置100に挿入された紙幣130を検出し、検出信号をアンプ回路48で増幅してマイクロコンピュータ60へ出力する。
【0072】
また、紙葉類識別装置100には、挿入紙幣130の磁気を検出する磁気センサーと、挿入紙幣130に照射された光の透過光を検出する透過型光センサーと、反射光を検出する反射光センサー等の磁気及び光センサー49がアンプ回路50を介してマイクロコンピュータ60と接続されており、これらの各センサーで検出された磁気データ及び受光データがアンプ回路50で増幅されてマイクロコンピュータ60へ入力され、マイクロコンピュータ60は、これら入力されたデータに基づく公知の紙幣識別方法により挿入紙幣130の真偽識別が可能なように構成されている。
【0073】
このように構成された紙葉類識別装置100が光学検知部30で高精度に検出された挿入紙幣130の特性データに基づき挿入紙幣130の真偽を判別する方法について以下に説明する。
【0074】
図3は、紙葉類識別装置100が真正紙幣と識別する真正紙幣110の構成と、この真正紙幣110から光学検知部30が検出する特性データに対応した波形信号の一例を示す図である。
【0075】
図3において、図3(a)は、本発明に係わる真正紙幣110の構成の一例を示す図、図3(b)は、光源1(第1の光源)または光源8(第2の光源)を赤色または緑色に発光させた場合の真正紙幣110から検出された反射光の受光出力に対応した波形信号を示す図、図3(c)は、図3(b)で示した赤色反射光の受光出力に対する緑色反射光の受光出力の比率の波形信号を示す図である。
【0076】
なお、図3(b)及び図3(c)において、真正紙幣110の模様が印刷された部分で検出される受光出力の信号波形は、真正紙幣110の印刷模様の色の変化に対応して変化するものであるが、この部分は本発明の要部ではないので、真正紙幣110の模様が印刷された部分の受光出力の詳細な信号波形の記載を省略し、説明の便宜上、ハッチング模様の矩形で示してある。
【0077】
図3(a)に示すように、本発明に係わる真正紙幣110は、真正紙幣110の中央近傍に透かし領域113が形成され、真正紙幣110の長手方向の両端にパールインキ印刷部111及びパールインキ印刷部112が形成されており、紙葉類識別装置100に挿入された真正紙幣110は、紙幣搬送機構40によって搬送路80に沿って所定の搬送方向(図中の矢印方向)に搬送される。
【0078】
なお、真正紙幣110の両端に形成された各パールインキ印刷部は、真正紙幣110の片面にのみ印刷されている。
【0079】
真正紙幣110が搬送路80に沿って光学検知部30内に搬送されると、光学検知部30内の搬送路80の幅(挿入紙幣130の搬送方向に対する垂直(上下)方向の幅)が他の部分の搬送路80の幅(例えば2ミリ)と比べて狭く(例えば幅が1ミリ)なっているので、真正紙幣110の折れや皺及び真正紙幣110のバタツキが規制され、搬送路80の中心に沿って搬送される。
【0080】
また、光学検知部30内に真正紙幣110が搬送されると、マイクロコンピュータ60の制御部51が光学検知部30内に配置された光源1(第1の光源)、光源8(第2の光源)及び受光素子5(第1の受光素子)、受光素子12(第2の受光素子)による真正紙幣110各面(表面及び裏面)の各計測位置での各色(赤、緑)の反射光及び透過光の受光量の計測と、計測された各受光量に対応したそれぞれの受光出力値(反射光データまたは透過光データ)の各受光データの収集を行うための制御を行う。
【0081】
具体的には、光学検知部30内に搬送された真正紙幣110に対して光源1(第1の光源)の各色(赤、緑)のLEDを順次発光させて真正紙幣110表面の各検出領域に発光色の光を均等に照射し、各発光色に対する真正紙幣110の反射光を球レンズ4(第1のレンズ)で集光して受光素子5(第1の受光素子)の受光面に結像させて受光し、透過光を球レンズ11(第2のレンズ)で集光して受光素子12(第2の受光素子)の受光面に結像させて受光して各受光量に対応したそれぞれの受光出力値(反射光データ及び透過光データ)を受光データとして収集する。
【0082】
また、光源8(第2の光源)の各色(赤、緑)のLEDを順次発光させて真正紙幣110裏面の各検出領域に発光色の光を均等に照射し、各発光色に対する真正紙幣110の反射光を球レンズ11(第2のレンズ)で集光して受光素子12(第2の受光素子)の受光面に結像させて受光し、透過光を球レンズ4(第1のレンズ)で集光して受光素子5(第1の受光素子)の受光面に結像させて受光して各受光量に対応したそれぞれの受光出力値(反射光データ及び透過光データ)を受光データとして収集する。
【0083】
このように真正紙幣110面上の検出領域に発光色の光を均等に照射し、その反射光を球レンズで集光して受光素子の受光面に結像させて受光量に対応した受光データを取得すると、あたかも真正紙幣110面上の検出領域に直接受光素子を配置したかのように真正紙幣110の特性データが高精度で取得できるので、検出領域外の不要な部分からの反射光が受光素子で検出されるという問題が解消される。
【0084】
このような方法で真正紙幣110のパールインキ印刷部が形成された面から収集された受光データは、図3(b)に示すように、赤色発光による真正紙幣110の赤色反射光の受光データが波形信号120で収集され、緑色発光による真正紙幣110の緑色反射光の受光データが波形信号121で収集される。
【0085】
波形信号120は、真正紙幣110に赤色の光を照射した場合、真正紙幣110のその光からの反射光(赤色反射光)の受光出力が、真正紙幣110の各パールインキ印刷部が透かし領域113の無地の部分よりも大きく、他の領域の赤色の印刷領域では大きく、黒色の印刷領域では小さく、真正紙幣110に印刷されたそれぞれの色に応じた受光出力が得られるという特性を示している。
【0086】
また、真正紙幣110の各パールインキ印刷部での赤色反射光の受光出力は、他の領域の赤色反射光の受光出力に比べて顕著に大きいという特性を示している。
【0087】
波形信号121は、真正紙幣110に緑色の光を照射した場合、真正紙幣110のその光からの反射光(緑色反射光)の受光出力が、真正紙幣110の各パールインキ印刷部と透かし領域113の無地の部分とでは殆ど変らず、また、各パールインキ印刷部の緑色反射光の受光出力は、赤色反射光の受光出力よりも小さいという特性を示している。
【0088】
また、他の領域の緑色の印刷領域では大きく、黒色の印刷領域で小さく、真正紙幣110に印刷されたそれぞれの色に応じた受光出力が得られるという特性を示している。
【0089】
このような特性を示す波形信号120及び波形信号121に基づき真正紙幣110の各計測位置における赤色反射光の受光出力値に対する緑色反射光の受光出力値の比率(以下、「赤緑比率(斜光)」という。)を算出すると、図3(c)に示すような波形信号122が得られる。
【0090】
図3(c)に示す波形信号122は、真正紙幣110の各パールインキ印刷部の赤緑比率(斜光)122−a及び122−bが、透かし領域113の無地の部分の赤緑比率(斜光)と比べて小さな値となるという特性を示しており、真正紙幣110の赤色反射光に対する緑色反射光の赤緑比率(斜光)からパールインキに依存する色合いの情報を得ることができる。
【0091】
このように、本発明に係わる紙葉類識別装置100は、光学検知部30内に搬送された挿入紙幣130の折れや皺及び挿入紙幣130の上下の振れのバタツキを規制し、挿入紙幣130の各計測位置の検出領域に各光源の発光色の光を均等に照射し、その反射光を球レンズで集光して受光素子の受光面に結像させて受光するので挿入紙幣130の特性データを高精度に取得することができる。
【0092】
以上説明したように、本発明に係わる紙葉類識別装置100は、光学検知部30内に搬送された挿入紙幣130からの反射光の受光量の変動を抑え、挿入紙幣130の検出領域の受光データを高精度で取得することができる。
【0093】
また、光学検知部30の構成により高精度で取得された挿入紙幣130の受光データに基づき赤緑比率を算出して挿入紙幣130に印刷されたパールインキ印刷部のパールインキに依存する色合いを含む情報を得るので、単なる個々の反射型光センサーの受光出力による色相インキの判別方法とは異なり、紙葉類識別装置100に挿入された挿入紙幣130に対して当該挿入紙幣130に印刷されたパールインキの微妙な特性の判別結果に基づくより精密な真偽判別を行うことができる。
【0094】
これまで説明した紙葉類識別装置100とは他の構成の本発明に係わる紙葉類識別装置101について以下に説明する。
【0095】
図4は、紙葉類識別装置100とは他の構成の本発明に係わる紙葉類識別装置101の一例を示す構成図であり、図5は、紙葉類識別装置101の回路構成の一例を示した回路ブロック図である。
【0096】
なお、図4及び図5において、前述の紙葉類識別装置100と構成及び回路ブロック並びに動作が同様な紙葉類識別装置101の各部には、説明の便宜上、紙葉類識別装置100と同一の符号を付し、これらの説明は、前述の説明を参照するものとする。また、説明が必要なものについては簡略して説明するものとする。
【0097】
図4及び図5に示すように、紙葉類識別装置101は、紙葉類識別装置101全体を統括制御するマイクロコンピュータ601と、紙葉類識別装置101の図示せぬ紙幣挿入口から挿入された紙幣130を搬送する紙幣搬送機構40(破線で囲まれた部分)と、紙幣搬送機構40によって搬送される紙幣130の各面(表面、裏面)に赤色と緑色の光を順次照射し、その照射光による紙幣130各面での反射光及び透過光の各受光量に対応した受光データを検出する光学検知部301(一点鎖線で囲まれた部分)とで構成されており、光学検知部301及びマイクロコンピュータ601の一部の構成が紙葉類識別装置100の光学検知部30及びマイクロコンピュータ60と異なるように構成された他は、紙葉類識別装置100と同様に構成されている。
【0098】
紙葉類識別装置101の光学検知部301は、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130を挟んで上側には、紙葉類識別装置100の光学検知部30と同様に配置された光源1(第1の光源)、球レンズ4(第1のレンズ)及び受光素子5(第1の受光素子)に加えて挿入紙幣130表面の反射光を挿入紙幣130表面に対して垂直方向で受光するように配置された球レンズ15(第3のレンズ)及び受光素子16(第3の受光素子)が配置されている。
【0099】
さらに、受光素子16の直前には、検出領域を限定して受光するためのスリット28が配置されている。
【0100】
また、挿入紙幣130を挟んで下側には、紙葉類識別装置100の光学検知部30と同様に配置された光源8(第2の光源)、球レンズ11(第2のレンズ)及び受光素子12(第2の受光素子)に加えて挿入紙幣130裏面の反射光を挿入紙幣130裏面に対して垂直方向で受光するように配置された球レンズ19(第4のレンズ)及び受光素子20(第4の受光素子)が配置されている。
【0101】
さらに、受光素子20の直前には、検出領域を限定して受光するためのスリット29が配置されている。
【0102】
この光学検知部301は、紙葉類識別装置100の光学検知部30の構成に加えて、受光素子16(第3の受光素子)及び受光素子20(第4の受光素子)が配置されたことにより受光素子16(第3の受光素子)とマイクロコンピュータ601とがアンプ(アンプ回路)17及びA/Dコンバータ18を介して接続され、受光素子20(第4の受光素子)とマイクロコンピュータ601とがアンプ(アンプ回路)21及びA/Dコンバータ22を介して接続されている。
【0103】
受光素子16(第3の受光素子)及び受光素子20(第4の受光素子)の各受光素子は、受光素子5(第1の受光素子)及び受光素子12(第2の受光素子)と同様な例えばフォトダイオード等であり、受光した反射光や透過光の受光量に対応した信号レベルの電気信号を出力し、各受光素子から出力された電気信号は各アンプで増幅され、各A/Dコンバータでデジタル信号の受光データへ変換後、バス70を介してマイクロコンピュータ601のメモリ57の所定の記憶領域へ記憶される。
【0104】
また、球レンズ15(第3のレンズ)は、光源1(第1の光源)からの照射光による挿入紙幣130表面の反射光及び光源8(第2の光源)からの照射光による挿入紙幣130の透過光を挿入紙幣130表面に対して垂直方向の光を集光して受光素子16(第3の受光素子)の受光面に結像させ、球レンズ19(第4のレンズ)は、光源8(第2の光源)からの照射光による挿入紙幣130裏面の反射光及び光源1(第1の光源)からの照射光による挿入紙幣130の透過光を挿入紙幣130裏面に対して垂直方向の光を集光して受光素子20(第4の受光素子)の受光面に結像させる。
【0105】
なお、各発光素子には、可視光の他、赤外光や、紫外光を照射する発光素子に置き換えた構成としてもよい。
【0106】
紙葉類識別装置101には、紙葉類識別装置100と同様に、挿入紙幣130の金種や挿入方向を特定するための磁気センサーと、反射型光センサー及び透過型光センサーとで構成された磁気及び光センサー49、紙葉類識別装置101に紙幣130が挿入されたことを検知する紙幣挿入検出センサー47(図5参照)の各センサーが紙葉類識別装置101の光学検知部301とは別に紙葉類識別装置101の所定の位置に配置されている。
【0107】
これらの各センサーの動作は、前述した紙葉類識別装置100の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0108】
なお、本実施例では、説明の便宜上、磁気及び光センサー49の透過型光センサー及び反射型光センサーを光学検知部301とは別に備えた構成としたが、挿入紙幣130の金種と挿入方向を特定するための挿入紙幣130の透過光及び反射光の受光データを光学検知部301が兼用して検出するような構成としてもよい。
【0109】
紙葉類識別装置101を構成するマイクロコンピュータ601は、制御部510と、金種及び挿入方向判定部52と、受光データ補正部530と、透かし領域データ特定部54と、パールデータ判定部550と、透かしデータ判定部56と、メモリ57とを備えている。
【0110】
メモリ57は、光学検知部301で検出される挿入紙幣130の各面(表面及び裏面)の2色(赤、緑)の反射光と透過光の各受光データと、磁気及び光センサー49(図5参照)で検出される挿入紙幣130の各面の反射光と透過光の各受光データ及び磁気データと、予め設定された透かし領域データアドレス参照表と、パールインキ印刷部データアドレス参照表等の各種参照表及び参照データと、各種処理プログラム等を記憶する。
【0111】
透かし領域データアドレス参照表及びパールインキ印刷部データアドレス参照表には、それぞれ紙葉類識別装置100の場合と同様に、金種毎の真正紙幣の表裏、正逆の挿入方向に対応した各真正紙幣の透かし領域の受光データが格納される記憶領域(メモリ57)の始点と終点のアドレス情報と、パールインキ印刷部の受光データが格納される記憶領域(メモリ57)の始点と終点のアドレス情報が真正紙幣の金種と挿入方向に対応して参照できるように予め設定されている。
【0112】
金種及び挿入方向判定部52は、紙葉類識別装置100の場合と同様に、磁気及び光センサー49により検出された挿入紙幣130の磁気データと、透過光と反射光の各受光データとに基づき挿入紙幣130の金種と挿入方向の判定を行う。
【0113】
受光データ補正部530は、挿入紙幣130から取得された透かし領域の赤色反射光データ及び緑色反射光データの各受光量から最大受光量を検出し、この最大受光量の規定値への補正に基づき光学検知部301で検出された挿入紙幣130の全ての反射光データに対する補正を行う。
【0114】
透かし領域データ特定部54は、紙葉類識別装置100の場合と同様に、金種及び挿入方向判定部52による挿入紙幣130の金種と挿入方向の判定結果に基づき透かし領域データアドレス参照表を参照して挿入紙幣130の透かし領域の受光データをメモリ57から読み出す。
【0115】
パールデータ判定部550は、受光データ補正部530により各色の反射光データが補正された補正データから求めた挿入紙幣130各面の各計測位置でのインキの色合いやパールインキ成分及びその判定基準に基づき挿入紙幣130の真偽判定を行う。
【0116】
透かしデータ判定部56は、紙葉類識別装置100の場合と同様に、透かし領域データ特定部54により特定された挿入紙幣130の透かし領域の受光データに基づき挿入紙幣130の真偽判定を行う。
【0117】
また、紙葉類識別装置101には、前述した紙葉類識別装置100と同様に磁気及び光センサー49がアンプ回路50を介してマイクロコンピュータ601と接続されており、磁気及び光センサー49で検出された磁気データ及び受光データがアンプ回路50で増幅されてマイクロコンピュータ601へ入力され、マイクロコンピュータ601がこれら入力されたデータに基づき公知の紙幣識別方法により挿入紙幣130の真偽識別ができるように構成されている。
【0118】
このように構成された紙葉類識別装置101が光学検知部301で挿入紙幣130の特性データを高精度に取得して挿入紙幣130の真偽を精密に判別する方法について、本発明に係わる真正紙幣の構成に基づき説明する。
【0119】
図6は、紙葉類識別装置101が真券と識別する真正紙幣の構成と、光学検知部301によって検出される真正紙幣の各受光データに対応した波形信号の一例を示す図である。
【0120】
紙葉類識別装置101が真券と識別する真正紙幣は、図6(a)に示すように、前述の図3(a)で示した真正紙幣110であり、真正紙幣110の中央近傍に透かし領域113が形成され、真正紙幣110片面の長手方向の両端には、パールインキ印刷部111及びパールインキ印刷部112が形成されている。
【0121】
紙葉類識別装置101に挿入された真正紙幣110は、紙幣搬送機構40により搬送路80に沿って所定の搬送方向(図中の矢印方向)へ搬送され、光学検知部301内に搬送された挿入紙幣110は、光学検知部301内の搬送路80の幅(例えば幅が1ミリ)が他の部分の搬送路80の幅(例えば2ミリ)と比べて狭くなっているので真正紙幣110の折れや皺及び真正紙幣110のバタツキが規制されながら搬送路80に沿って搬送される。
【0122】
光学検知部301内に真正紙幣110が搬送されると、マイクロコンピュータ601の制御部510が光源1(第1の光源)及び光源8(第2の光源)の各色のLEDを順次発光させ、真正紙幣110各面(表面及び裏面)の各計測位置における各色(赤、緑)の反射光及び透過光を受光素子5(第1の受光素子)、受光素子12(第2の受光素子)、受光素子16(第3の受光素子)、受光素子20(第4の受光素子)で受光し、各受光量に対応したそれぞれの受光出力値の受光データの収集を行う。
【0123】
具体的には、光源1(第1の光源)の各色(赤、緑)のLEDの発光による真正紙幣110表面の反射光を受光素子5(第1の受光素子)及び受光素子16(第3の受光素子)で受光し、また、真正紙幣110の透過光を受光素子12(第2の受光素子)で受光して各受光素子で受光された受光量に対応した受光出力値(反射光データ及び透過光データ)の受光データを収集する。
【0124】
光源1(第1の光源)の発光による真正紙幣110の反射光データ及び透過光データの収集後、光源8(第2の光源)の各色(赤、緑)のLEDの発光による真正紙幣110裏面の反射光を受光素子12(第2の受光素子)及び受光素子20(第4の受光素子)で受光し、また、真正紙幣110の透過光を受光素子5(第1の受光素子)で受光して各受光素子で受光された受光量に対応した受光出力値(反射光データ及び透過光データ)の受光データを収集し、このような制御動作を真正紙幣110各面の1枚分の各計測位置の受光データが収集されるまで繰り返す。
【0125】
このように収集された各受光データのうちの受光素子5(第1の受光素子)または受光素子12(第2の受光素子)で検出された反射光の受光データは、図6(b)に示すように、前述の図3(b)で示した特性の波形信号120及び波形信号121で収集され、真正紙幣110に赤色光が照射された場合の受光データが波形信号120で検出され、緑色光が照射された場合の受光データが波形信号121で検出される。
【0126】
これらの受光データ(波形信号120及び波形信号121)から赤色反射光の受光出力値に対する緑色反射光の受光出力値の比率(赤緑比率(斜光))を算出すると、図6(c)に示すように、前述の図3(c)で示した特性の波形信号122が算出される。
【0127】
また、受光素子16(第3の受光素子)または受光素子20(第4の受光素子)で検出された反射光の受光データは、図6(d)に示すように、真正紙幣110に赤色光が照射された場合の受光データが波形信号123で検出され、緑色光が照射された場合の受光データが波形信号124で検出される。
【0128】
これらの受光データ(波形信号123及び波形信号124)から赤色反射光の受光出力値に対する緑色反射光の受光出力値の比率(以下、「赤緑比率(垂直光)」という。)を算出すると、図6(e)に示すような波形信号125が算出される。
【0129】
また、波形信号125(図6(e)参照)及び波形信号122(図6(c)参照)から受光素子16(第3の受光素子)または受光素子20(第4の受光素子)で検出された反射光の赤緑比率(垂直光)に対する受光素子5(第1の受光素子)または受光素子12(第2の受光素子)で検出された反射光の赤緑比率(斜光)の比(赤緑比率比)を算出すると、図3(f)に示すような波形信号126が算出される。
【0130】
これらの各波形信号を解析すると、図6(b)に示した波形信号120及び波形信号121からは、前述の図3(b)で示したように、真正紙幣110に赤色光を照射して受光素子5(第1の受光素子)または受光素子12(第2の受光素子)で受光した場合のパールインキ印刷部の反射光の受光出力が他の無地の部分と比べて顕著に大きく検出され、また、緑色光を照射した場合のパールインキ印刷部の反射光の受光出力が他の無地の部分と殆ど変らないという特性の検出結果が得られ、図6(c)に示した波形信号122(赤緑比率(斜光))からは、真正紙幣110のパールインキ印刷部の赤緑比率(斜光)が透かし領域の無地の部分と比べて小さな値となるというパールインキ印刷部のパールインキの色合いの情報を得ることができる。
【0131】
また、図6(d)に示した波形信号123及び波形信号124からは、真正紙幣110に赤色光及び緑色光を照射して受光素子16(第3の受光素子)または受光素子20(第4の受光素子)で受光した場合、パールインキ印刷部と他の無地の部分とではその反射光の受光出力が殆ど変らず、他の領域では、例えば照射光が赤色の場合は、赤色印刷領域の反射光の受光出力が大きく、照射光が緑色の場合は、緑色印刷領域の反射光の受光出力が大きく、また、黒色印刷領域では反射光の受光出力が小さいというそれぞれの色に応じた受光出力が得られる。
【0132】
また、図6(e)に示した波形信号125(赤緑比率(垂直光))からは、真正紙幣110のパールインキ印刷部と透かし領域の無地の部分とでは赤緑比率(垂直光)が殆ど変らないというパールインキ印刷部のパールインキに依存しない色合いの情報が得られる。
【0133】
また、図6(f)に示した波形信号126(赤緑比率比)からは、真正紙幣110のパールインキ印刷部が他の領域(透かし領域や模様が印刷された領域)に比べて、波形信号126(赤緑比率比)の126−a、126−bに示すような顕著な差異の検出結果が得られる。
【0134】
このような検出結果から紙葉類識別装置101は、受光素子5(第1の受光素子)または受光素子12(第2の受光素子)で検出された挿入紙幣130の反射光の赤緑比率(斜光)を算出して挿入紙幣130に印刷されたパールインキ印刷部のパールインキに依存する色合いを含む情報を取得し、受光素子16(第3の受光素子)または受光素子20(第4の受光素子)で検出された挿入紙幣130の反射光の赤緑比率(垂直光)を算出して挿入紙幣130に印刷されたパールインキ印刷部のパールインキに依存しないインキの色合いを含む情報を取得し、更に、赤緑比率(垂直光)と赤緑比率(斜光)との比(赤緑比率比)を算出して挿入紙幣130に印刷されたパールインキ印刷部の微妙なパールインキの特性を検知することで、単なる個々の反射型光センサーの受光出力による色相インキの判別方法とは異なり、挿入紙幣130に印刷されたパールインキの微妙な特性の判別結果に基づくより精密な真偽判別を行うように構成されている。
【0135】
なお、本実施例では、紙葉類識別装置100の光学検知部30及び紙葉類識別装置101の光学検知部301において、各光源が赤色及び緑色の2色に発光する例を示したが、赤色及び緑色に加えて他の色も発光する構成としてもよい。
【0136】
前述した紙葉類識別装置101(図4参照)とは他の構成の本発明に係わる紙葉類識別装置102の一例について図7及び図8を参照して説明する。
【0137】
図7は、紙葉類識別装置102の構成を示す構成図であり、図8(a)は、紙葉類識別装置102が具備する光学検知部302の構成を示す斜視図、図8(b)は、光学検知部302の要部の断面図である。
【0138】
図7及び図8において、前述の紙葉類識別装置101と同様な構成及び動作を行う紙葉類識別装置102の各部には、説明の便宜上、紙葉類識別装置101と同一の符号を付し、これらの説明は、前述の説明を参照するものとする。
【0139】
図7に示すように、紙葉類識別装置102は、紙葉類識別装置102全体を統括制御するマイクロコンピュータ602と、紙葉類識別装置102に挿入された紙幣130を搬送する紙幣搬送機構40と、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130の各面(表面、裏面)に各色(赤、緑)光を順次照射して挿入紙幣130各面での反射光及び透過光の受光データを検出し、また、挿入紙幣130表面に赤外光を斜めから照射して挿入紙幣130を透過する赤外光を検出する光学検知部302とで構成されている。
【0140】
この光学検知部302は、図8(a)及び図8(b)に示すように、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130を挟んで上側及び下側には、紙葉類識別装置101の光学検知部301と同様に配置された光源1(第1の光源)、球レンズ4(第1のレンズ)及び受光素子5(第1の受光素子)、球レンズ15(第3のレンズ)及び受光素子16(第3の受光素子)で構成されたセンサユニット(上側)と、光源8(第2の光源)、球レンズ11(第2のレンズ)及び受光素子12(第2の受光素子)、球レンズ19(第4のレンズ)及び受光素子20(第4の受光素子)で構成されたセンサユニット(下側)に加えて、挿入紙幣130を挟んで上側で、且つ、各センサユニットの側面から挿入紙幣130表面に対して所定角度(例えば45度)の斜め方向から赤外光を照射するように赤外光LED23が配置されて構成されている。
このように、紙葉類識別装置102は、光学検知部302が紙葉類識別装置101の光学検知部301と異なるように構成され、光学検知部302の構成に対応して紙葉類識別装置102のマイクロコンピュータ602の構成の一部が紙葉類識別装置101のマイクロコンピュータ601の構成と異なるように構成された他は、紙葉類識別装置101と同様に構成されている。
【0141】
このように構成することで、赤外光LED23から照射された赤外光が挿入紙幣130の照射面に均等に照射されて、挿入紙幣130を透過する赤外光を受光素子20(第4の受光素子)で受光できるようになる。
【0142】
また、光源1(第1の光源)に赤外光を含んだ多色光のLEDを使用しなくても良く、赤外光専用の受光素子を必要としないため、センサコストが低減できる。
【0143】
例えば真正紙幣に赤外光を吸収するインクが印刷されている場合には、赤外光LED23により挿入紙幣130に赤外光を照射してその透過光を受光素子20(第4の受光素子)で測定することで、紙葉類識別装置101の構成による挿入紙幣130の真偽の判別方法に加えて、挿入紙幣130が複製偽造されたものか否かも判別することが可能となる。
【0144】
前述した紙葉類識別装置102(図8参照)とは他の構成の本発明に係わる紙葉類識別装置103の一例について図9及び図10を参照して説明する。
【0145】
図9は、紙葉類識別装置103の構成を示す構成図であり、図10(a)は、紙葉類識別装置103が具備する光学検知部303の構成を示す斜視図、図8(b)は、光学検知部303の要部の断面図である。
【0146】
図9及び図10において、前述の紙葉類識別装置102と同様な構成及び動作を行う紙葉類識別装置103の各部には、説明の便宜上、紙葉類識別装置102と同一の符号を付し、これらの説明は、前述の説明を参照するものとする。
【0147】
図9に示すように、紙葉類識別装置103は、紙葉類識別装置103全体を統括制御するマイクロコンピュータ603と、紙葉類識別装置103に挿入された挿入紙幣130を搬送する紙幣搬送機構40と、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130の各面(表面、裏面)に各色(赤、緑)光を順次照射して紙幣各面での反射光及び透過光の受光データを検出し、挿入紙幣130に赤外光を挿入紙幣130の各面に対して垂直方向から照射して挿入紙幣130を透過する赤外光を検出する光学検知部303とで構成されている。
【0148】
光学検知部303は、図10(a)及び図10(b)に示すように、紙幣搬送機構40によって搬送される挿入紙幣130を挟んで上側及び下側には、紙葉類識別装置102の光学検知部302と同様に配置された光源1(第1の光源)、球レンズ4(第1のレンズ)及び受光素子5(第1の受光素子)、球レンズ15(第3のレンズ)及び受光素子16(第3の受光素子)で構成されたセンサユニット(上側)と、光源8(第2の光源)、球レンズ11(第2のレンズ)及び受光素子12(第2の受光素子)、球レンズ19(第4のレンズ)及び受光素子20(第4の受光素子)で構成されたセンサユニット(下側)と、挿入紙幣130表面に対して垂直方向から赤外光を照射するように赤外光LED24を挿入紙幣130を挟んで上側で、且つ、センサユニット(上側)の側面に配置し、受光素子25を赤外光LED24と対向させ、挿入紙幣130を挟んで下側で、且つ、センサユニット(下側)の側面に配置して構成されている。
【0149】
このように、紙葉類識別装置103は、光学検知部303が紙葉類識別装置102の光学検知部302と異なるように構成され、光学検知部303の構成に対応して紙葉類識別装置103のマイクロコンピュータ603の構成の一部が紙葉類識別装置102のマイクロコンピュータ602の構成と異なるように構成された他は、紙葉類識別装置102と同様に構成されている。
【0150】
このように構成することで、赤外光LED24から照射された赤外光が挿入紙幣130の照射面に挿入紙幣130表面の垂直方向から均等に照射され、挿入紙幣130を透過した赤外光が受光素子25で受光されるので、赤外光LED24と受光素子25との軸合わせ等の位置合わせが容易となる。
【0151】
また、光源1(第1の光源)に赤外光を含んだ多色光のLEDを使用しなくても良い為、センサコストの低減となる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明に係わる紙葉類識別装置100の構成例を示す構成図
【図2】紙葉類識別装置100の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図3】真正紙幣110の構成と光学検知部30で検出される真正紙幣110の受光データの波形信号の一例を示す図
【図4】本発明に係わる紙葉類識別装置101の構成例を示す構成図
【図5】紙葉類識別装置101の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図6】真正紙幣110の構成と光学検知部301で検出される真正紙幣110の受光データの波形信号の一例を示す図
【図7】本発明に係わる紙葉類識別装置102の構成例を示す構成図
【図8】紙葉類識別装置102の光学検知部302の構成を示す斜視図及び断面図
【図9】本発明に係わる紙葉類識別装置103の構成例を示す構成図
【図10】紙葉類識別装置103の光学検知部303の構成を示す斜視図及び断面図
【符号の説明】
【0153】
1、8 光源
2、6、9、13、17、21 アンプ(回路)
3、10 D/Aコンバータ
4、11、15、19 球レンズ
7、14、18、22 A/Dコンバータ
5、12、16、20、25 受光素子
26、27、28、29 スリット
30、301、302、303 光学検知部
31、32 照射光路
40 紙幣搬送機構
41 搬送モータ
42、43 ローラ
44 搬送ベルト
45 エンコーダ
47 紙幣挿入検出センサー
49 磁気及び光センサー
60、601、602、603 マイクロコンピュータ
51、510 制御部
52 金種及び挿入方向判定部
53、530 受光データ補正部
54 透かし領域データ特定部
55、550 パールデータ判定部
56 透かしデータ判定部
57 メモリ
70 バス
80 搬送路
100、101、102、103 紙葉類識別装置
110 真正紙幣
111、112 パールインキ印刷部
120 真正紙幣110の赤色反射光の受光データが波形信号(受光素子5または受光素子12)
121 真正紙幣110の緑色反射光の受光データが波形信号(受光素子5または受光素子12)
122 赤緑比率(斜光)の波形信号(受光素子5または受光素子12)
123 真正紙幣110の赤色反射光の受光データが波形信号(受光素子16または受光素子20)
124 真正紙幣110の緑色反射光の受光データが波形信号(受光素子16または受光素子20)
125 赤緑比率(垂直光)の波形信号(受光素子16または受光素子20)
126 赤緑比率比の波形信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送路に沿って搬送する紙葉類搬送手段と、前記紙葉類の特徴を検出する光学検知部を備え、前記光学検知部からの受光データに基づいて紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置において、
前記光学検知部は、
前記紙葉類搬送手段で搬送される前記紙葉類の表面に対して所定の角度で配設され、前記紙葉類の表面へ光を照射する第1の光源と、
前記紙葉類の表面で反射した反射光を集光する第1のレンズと、
前記第1のレンズを透過した光を受光する第1の受光素子と、
前記紙葉類搬送手段で搬送される前記紙葉類の裏面に対して所定の角度で配設され、前記紙葉類へ光を照射する第2の光源と、
前記紙葉類の裏面で反射した反射光を集光する第2のレンズと、
前記第2のレンズを透過した光を受光する第2の受光素子と、
を備え、
前記第1の光源からの光が照射される紙葉類表面の反射面に対して前記第1のレンズ主面と前記第1の受光素子の受光面がシャインプルーフの関係になるように配置し、前記第2の光源からの光が照射される紙葉類裏面の反射面に対して前記第2のレンズ主面および前記第2の受光素子の受光面が、シャインプルーフの関係になるように配置したことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記光学検知部は、
視角により色相が変化する色相インキ印刷領域を有する紙葉類の特徴を検出する光学検知部であって、
前記第1の光源、及び前記第2の光源は、複数の色の光を有し、
前記紙葉類の表面で反射される前記第1の光源からの光の反射光を前記紙葉類の表面に対して垂直方向に集光する第3のレンズと、
前記第3のレンズを透過した光を受光する第3の受光素子と、
前記紙葉類の裏面で反射される前記第2の光源からの光の反射光を前記紙葉類の裏面に対して垂直方向に集光する第4のレンズと、
前記第4のレンズを透過した光を受光する第4の受光素子と、
を更に備え、
前記第1の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第1の受光素子の受光出力、または前記第2の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第2の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存する第1の色合いを算出する第1の算出手段と、
前記第1の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第3の受光素子の受光出力、または前記第2の光源からの複数の光を前記紙葉類の色相インキ印刷領域へ照射したときの前記第4の受光素子の受光出力に基づき前記色相インキ印刷領域に依存しない第2の色合いを算出する第2の算出手段と、
前記第1の算出手段及び前記第2の算出手段の算出結果に基づき前記紙葉類を判別する紙葉類判別手段と
を更に具備することを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記第1の光源および前記第2の光源は、照射光路を備え、
前記照射光路の内壁に散乱反射面を有する
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記紙葉類表面の検出領域の像と前記第1の受光素子の受光面に結像された像の大きさが等寸となるように前記第1のレンズを配置し、
前記紙葉類裏面の検出領域の像と前記第2の受光素子の受光面に結像された像の大きさが等寸となるように前記第2のレンズを配置するとともに、
前記第1の受光素子の直前に紙葉類の検出領域を規制する第1のスリットを配置し、
前記第2の受光素子の直前に紙葉類の検出領域を規制する第2のスリットを配置した
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記搬送路上の前記光学検知部が配置された部分は、
前記紙葉類に対する垂直方向の幅が他の搬送路より狭く形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記第1のレンズ、前記第2のレンズ、前記第3のレンズ、前記第4のレンズは、
球レンズであり、前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、前記紙葉類の搬送路に対して垂直に配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の紙葉類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−299639(P2008−299639A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145596(P2007−145596)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【特許番号】特許第4074917号(P4074917)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】