説明

紙製容器及び紙製容器の製造方法

【課題】クマザサの成分を用いた抗菌・消臭作用を有する紙製容器で、製造に際して別途抽出液を含んだインキを塗布する工程が必要なく、製造コストを低減でき、また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる紙製容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】紙製容器5は、一対のライナーと一対のライナー間に設けられた略波形形状の中芯とからなる段ボールにより形成されていて、容器5の内側をなすライナーは、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材により形成されている。この紙材は、パルプ化に際しての調成工程において、紙繊維に填料や薬品とともに該残渣物を混合したものを製紙することにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、段ボールにヒノキチオールとゲンノショウコ、ササ、ヨモギ等からの植物抽出消臭抗菌成分である植物抽出液とを充填した多孔質マイクロカプセルと、亜鉛担体シリカ粉体とを分散させたバインダーをフレキソ用インキに混合して段ボールに印刷し、その印刷面が内側となるように製函して、抗菌・消臭作用を有する収納ケースを製造する方法がある(特許文献1)。
【0003】
また、従来より、クマザサ(熊笹または隈笹)はその有効成分を抽出して得た抽出液が薬品等に用いられている。
【0004】
クマザサから有効成分を抽出する方法としては、クマザサの葉を冷水で洗浄後に粗粉砕し、強圧して得た液に対して遠心分離、アルコール添加による殺菌、アルコール除去を行ってエキスを得る方法(特許文献2参照)、笹の葉及び稈をチップ状にした後に高温高圧下で蒸煮して加水分解後、得られた抽出液を濃縮乾燥する方法(特許文献3参照)、乾燥したクマザサの葉を細粉砕後エチルアルコール・水混合液で脂溶性物質を抽出する第一手段と、第一手段によって抽出したクマザサより水溶性物質を抽出する第二手段、さらに、それらの抽出液を混合する第三手段より抽出する方法(特許文献4)等がある。
【特許文献1】特開平10−181776号公報
【特許文献2】特開平1−187071号公報
【特許文献3】特開昭62−148425号公報
【特許文献4】特開2003−116480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の収納ケースにおいては、植物抽出液を含んだインキを段ボールに塗布することから段ボールに塗布する工程が別途必要となってしまう。また、植物抽出液を使用するため、コストが掛かってしまうという問題がある。
【0006】
また、クマザサを圧搾する等してエキスを抽出した後の残渣物の廃棄が問題となっており、該残渣物の有効活用が望まれていた。特に、該残渣物は一般的に焼却処分により廃棄しているので、化石燃料の消費やそれに伴う二酸化炭素の発生が問題となる。また、特許文献の収納ケースにおいては、植物抽出液を含んだインキを使用しているので、該残渣物を有効活用しているとはいえない。
【0007】
そこで、本発明は、クマザサの成分を用いた抗菌・消臭作用を有する紙製容器で、製造に際して別途抽出液を含んだインキを塗布する工程が必要なく、製造コストを低減でき、また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる紙製容器及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、紙製容器であって、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材により形成されていることを特徴とする。
【0009】
この第1の構成の紙製容器によれば、容器が該残渣物が混入された紙材により形成されているので、抗菌・消臭効果を得ることができる。また、該紙材には、該残渣物が模様として表れるので、斬新な模様を提供することができる。また、該残渣物が混入された紙により容器が形成されているので、紙製容器の状態でエキスを塗布する工程が必要ない。また、容器を構成する紙には該残渣物が混入されているので、クマザサのエキスを塗布する場合に比べて製造コストを低減することができ、また、紙の製造に際して紙繊維の量を節約できるので、その点でも製造コストを低減できる。また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる。
【0010】
また、第2には、紙製容器であって、紙製容器が、平板状の第1ライナーと、第1ライナーの一方の面に接着され、シート状部材を略波形形状に形成してなる中芯と、中芯の第1ライナー側とは反対側の面に接着された平板状の第2ライナーとを有する段ボール材により形成され、第1ライナーと第2ライナーの少なくともいずれかが、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材により形成されていることを特徴とする。
【0011】
この第2の構成の紙製容器によれば、容器を構成する段ボールのライナーが該残渣物が混入された紙材により形成されているので、抗菌・消臭効果を得ることができる。また、該紙材には、該残渣物が模様として表れるので、斬新な模様を提供することができる。また、該残渣物が混入された紙を用いて段ボールのライナーが構成されているので、紙製容器の状態でエキスを塗布する工程が必要ない。また、ライナーを構成する紙には該残渣物が混入されているので、クマザサのエキスを塗布する場合に比べて製造コストを低減することができ、また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる。
【0012】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、紙製容器の内側には、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材が露出して設けられていることを特徴とする。よって、容器の内側において抗菌・消臭作用を得ることができ、被収納物として食品に適した容器とすることができる。
【0013】
また、第4には、上記第1から第3までのいずれかの構成において、紙製容器が底部と底部の辺部から立設した側面部とを有するトレー状を呈することを特徴とする。
【0014】
また、第5には、上記第1から第4までのいずれかの構成において、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が、粉砕したクマザサの葉及び/又は稈を圧搾することによりエキスを抽出した後の残渣物であることを特徴とする。
【0015】
また、第6には、上記第1から第5までのいずれかの構成において、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材においては、紙材全体の重量に対して9〜18重量%の該残渣物が混入されていることを特徴とする。これにより、該残渣物の量を紙材全体の重量に対して9%以上とするので、抗菌・消臭機能を十分得ることができ、また、18%以下とするので、紙の機能に支障を来すことがない。
【0016】
また、第7には、紙製容器の製造方法であって、紙製造工程であって、古紙等のパルプ化材料をパルプ化するパルプ化工程で、パルプ化材料を調成前の紙繊維の状態にする調成前工程と、調成前工程で得られた紙繊維と、填料と、薬品と、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物を混合する調成工程と、を有するパルプ化工程と、パルプ化工程で得られたパルプを製紙して、笹が混入された紙を製造する製紙工程と、を有する紙製造工程と、段ボールを製造する段ボール製造工程で、紙製造工程において製造された紙を段ボールにおけるライナーに用いて段ボールを製造する段ボール製造工程と、段ボール製造工程において製造された段ボールを製函して容器を製造する製函工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
この第7の構成の紙製容器の製造方法により製造された紙製容器によれば、容器を構成する段ボールのライナーが該残渣物が混入された紙材により形成されているので、抗菌・消臭効果を得ることができる。また、該紙材には、該残渣物が模様として表れるので、斬新な模様を提供することができる。また、紙製造工程における調成工程において該残渣物を混合させるので、紙製容器の状態でエキスを塗布する工程が必要ない。また、ライナーを構成する紙の製造に際して、該残渣物を混合させるので、クマザサのエキスを塗布する場合に比べて製造コストを低減することができ、また、紙の製造に際して(特に、上記パルプ化工程において)紙繊維の量を節約できるので、その点でも製造コストを低減できる。また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる。
【0018】
また、第8には、上記第7の構成において、上記調成工程においては、調成前工程で得られた紙繊維の重量に対して10〜20%の重量の該残渣物を混合することを特徴とする。これにより、該残渣物の量を紙繊維に対して10%以上とするので、抗菌・消臭機能を十分得ることができ、また、20%以下とするので、紙の機能に支障を来すことがない。
【0019】
また、第9には、上記第7又は第8の構成において、上記段ボール製造工程においては、一対の平板状のライナーと一対のライナー間に設けられた略波形形状の中芯とを有する両面段ボールを製造し、一対のライナーにおける少なくとも一方のライナーに上記紙製造工程で製造された笹が混入された紙を用い、上記製函工程においては、笹が混入された紙により製造されたライナーが容器の内側になるように製函することを特徴とする。よって、容器の内側において抗菌・消臭作用を得ることができ、被収納物として食品に適した容器とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に基づく紙製容器及び紙製容器の製造方法によれば、容器が該残渣物が混入された紙材により形成されているので、抗菌・消臭効果を得ることができる。また、該紙材には、該残渣物が模様として表れるので、斬新な模様を提供することができる。また、該残渣物が混入された紙により容器が形成されているので、紙製容器の状態でエキスを塗布する工程が必要ない。また、容器を構成する紙には該残渣物が混入されているので、クマザサのエキスを塗布する場合に比べて製造コストを低減することができ、また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明においては、クマザサの成分を用いた抗菌・消臭作用を有する紙製容器で、製造に際して別途抽出液を含んだインキを塗布する工程が必要なく、また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる紙製容器及びその製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0022】
本発明に基づく紙製容器5は、図1〜図3に示すように構成され、底部10と、側面部12と、側面部14と、側面部16と、糊代部18と、糊代部20と、側面部22と、側面部24と、側面部26と、糊代部28と、糊代部30と、側面部32と、側面部34とを有し、全体にトレー状を呈している。
【0023】
ここで、紙製容器5を構成するブランクは、図3に示すように、平板板状の板紙からなるライナー(第1ライナー)Aと、ライナーAの一方の面に接着され、紙(シート状部材)を略波状に形成してなる略波形形状の中芯Bと、中芯BのライナーA側とは反対側に接着され、笹が混入された平板状の板紙からなるライナー(第2ライナー)Cとを有するいわゆる両面段ボールである。紙製容器5においては、ライナーCが紙製容器5の内側の面に露出して設けられている。ライナーCには粉砕された笹Tが混入されているので、ライナーCの表面に露出した笹Tが視認可能となっていて、粉砕された笹Tによる模様が形成されている。また、ライナーC全体の重量に対して9〜18重量%の笹(具体的には、笹の葉及び/又は稈からエキスを抽出した後の残渣物)が混入されている。該残渣物の量を紙材全体の重量に対して9%以上とするので、抗菌・消臭機能を十分得ることができ、また、18%以下とするので、紙の機能に支障を来すことがない。ライナーCの具体的な製造工程については後述する。なお、図2に示す展開図においては、ライナーA側が表れているものとして記載されている。
【0024】
ここで、底部10は、長方形状の角部が斜めに欠切された八角形を呈し、長辺部10a、10bと、短辺部10c、10dと、角部に位置する角辺部10e、10f、10g、10hとにより囲まれた形状を有している。長辺部10aと長辺部10b、短辺部10cと短辺部10d、角辺部10eと角辺部10h、角辺部10fと角辺部10gは互いに平行をなしている。また、底部10は、左右方向及び上下方向に線対称に形成されている。
【0025】
また、側面部12は、底部10の長辺部10aから折れ線を介して連設され、略長方形状を呈している。また、側面部14は、側面部12の左側面側の側辺から折れ線を介して連設され、組立て状態において上側に行くほど幅広の略台形形状を呈している。また、側面部16は、側面部12の右側面側の側辺から折れ線を介して連設され、組立て状態において上側に行くほど幅広の略台形形状を呈している。側面部14と側面部16とは線対称に形成されている。また、糊代部18は、側面部14の側面部12側とは反対側の辺部から折れ線を介して連設され、先端にいくほど幅狭の四角形を呈している。また、糊代部20は、側面部16の側面部12側とは反対側の辺部から折れ線を介して連設され、先端にいくほど幅狭の四角形を呈している。糊代部18と糊代部20とは線対称に形成されている。
【0026】
また、側面部22は、底部10の長辺部10bから折れ線を介して連設され、略長方形状を呈している。また、側面部24は、側面部22の左側面側の側辺から折れ線を介して連設され、組立て状態において上側に行くほど幅広の略台形形状を呈している。また、側面部26は、側面部22の右側面側の側辺から折れ線を介して連設され、組立て状態において上側に行くほど幅広の略台形形状を呈している。側面部24と側面部26とは線対称に形成されている。また、糊代部28は、側面部24の側面部22側とは反対側の辺部から折れ線を介して連設され、先端にいくほど幅狭の四角形を呈している。また、糊代部30は、側面部26の側面部22側とは反対側の辺部から折れ線を介して連設され、先端にいくほど幅狭の四角形を呈している。糊代部28と糊代部30とは線対称に形成されている。
【0027】
また、側面部32は、底部10の短辺部10cから連設され、略方形状を呈している。同様に、側面部34は、底部10の短辺部10dから連設され、略方形状を呈している。紙製容器5の組立て状態では、側面部32の内側には、糊代部18、28が接着されるとともに、側面部34の内側には、糊代部20、30が接着される。側面部14の下辺は底部10の角辺部10eと当接し、側面部16の下辺は底部10の角辺部10gと当接し、側面部24の下辺は底部10の角辺部10fと当接し、側面部26の下辺は底部10の角辺部10hと当接する。
【0028】
上記構成の紙製容器5の製造方法について説明する。全体の製造工程の流れとしては、図4に示すように、紙製容器5を構成する段ボール材に使用する紙を製造し(S11、紙製造工程)、製造された紙により段ボール材を製造し(S12、段ボール製造工程)、製造された段ボール材により紙製容器を製造する(S13、製函工程)。
【0029】
ここで、紙製造工程においては、ライナーAに使用する紙や、中芯Bに使用する紙は、従来と同様の方法で製造する。
【0030】
また、笹が混入されたライナーCの製造工程は、図5に示すように構成され、パルプ化工程(「パルプ製造工程」としてもよい)(S21)と製紙工程(S22)により構成され、パルプ化工程は、図6に示す各工程により構成される。
【0031】
すなわち、まず、古紙処理工程(S31)において、パルプ化材料としての古紙がパルパーに投入されて、古紙に付着していたインキ等の付着物や紙の繊維同士が離解され、その後、スクリーンによってゴミや塵が除去され、その後、デッカマシンに投入されて、古紙に含まれている合成糊料や界面活性剤等の薬剤を除去する。
【0032】
その後、古紙は、離解工程(S32)において、再びパルパーに投入されて付着物や紙の繊維同士が離解され、さらに、セブンファイナーやトップファイナーによりパルパーで離解されなかった繊維を離解する。
【0033】
その後、紙の繊維ごとに離解された古紙は、叩解工程(S33)において、リファイナーに投入され、紙の繊維を叩いたり潰したりして繊維同士を絡みやすくする。なお、上記古紙処理工程(S31)から叩解工程(S33)までの工程が「パルプ化材料を調成前の紙繊維の状態にする調成前工程」に当たる。
【0034】
その後、調成工程(S34)において、叩解された古紙(つまり、調成前の紙繊維(パルプ))と、填料と、染顔料と、薬品と、笹とをミキサーに投入して混合する。この場合の笹とは、具体的には、笹(具体的には、クマザサ)の葉及び/又は稈(具体的には、粉砕した葉及び/又は粉砕した稈)からエキスを抽出した後の残渣物であり、例えば、粉砕したクマザサの葉及び/又は笹の稈を圧搾してエキスを抽出した後の残渣物がこれに当たる。より具体的には、クマザサの葉を冷水で洗浄後に粗粉砕し、強圧した後の残渣物でもよく、また、笹の葉及び稈をチップ状にした後に高温高圧下で蒸煮して加水分解後に抽出液を得た後の残渣物でもよい。笹の葉及び/又は稈からエキスを抽出した後の残渣物の量としては、叩解された古紙(つまり、紙繊維)の重量に対して10〜20%の重量とする。例えば、叩解された古紙100kgに対して10〜20kgの残渣物を投入する。なお、残渣物の量を紙繊維の重量の20%よりも多くすると、紙としての機能(例えば、紙の強度等)が十分でなく、また、10%よりも少なくすると、抗菌・消臭効果が十分でないので、上記のように10〜20%とするのが好適である。
【0035】
また、填料としては、天然又は合成白色顔料(例えば、白土(クレー、粘土)、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン)が挙げられ、紙の白色度・不透明度・地合・表面の平滑性を向上させ、印刷時のインキ抜けなどを防ぐために投入される。また、薬品としては、紙の強度を高める薬品として、デンプンやPAM(ポリアクリルアミド)が挙げられ、水に濡れたときの強度(湿潤紙力)を高める薬品として、湿潤紙力剤が挙げられる。
【0036】
以上のようにして、古紙処理工程と離解工程と叩解工程と調成工程とを経て、パルプが製造される。上記のパルプ化工程においては、従来のパルプ化工程と比べて、調成工程において笹を混入する点が異なるといえる。
【0037】
なお、上記のパルプ化工程においては、デッカマシンによる処理は省略してもよく、離解工程や叩解工程を省略してもよく、また、フローテーターにより泡にインキを吸着させる工程を設けてもよい。つまり、例えば、パルパー、フローテーター、スクリーン、調成の順にパルプ化を行ってもよい。
【0038】
また、上記は古紙からパルプ化する再生パルプの場合であるが、パルプ化材料としての木材片(チップ)から薬品を使って取り出した繊維を調成してパルプ化する化学パルプや、パルプ化材料としての木材片(チップ)をリファイナーですりつぶし、その後スクリーンで塵を取り漂白することにより得た繊維を調成してパルプ化する機械パルプによりパルプ化を行ってもよい。その場合にも、パルプ化工程の最後における調成工程において、得られた繊維と染料や顔料とを混合するとともに、上記調成の際に、笹の葉や稈からエキスを抽出した後の残渣物を混合する。
【0039】
上記のようにパルプが製造されたら、製紙工程(「抄造工程」又は「抄紙工程」としてもよい)(S22)に移行し、製紙(「抄造」又は「抄紙」としてもよい)が行われる。この製紙工程は、従来の工程と同様の工程で行われる。すなわち、この製紙工程においては、ワイヤーパート、プレスパート、ドライパート、サイズプレス、カレンダーの順に処理が行われる。つまり、ワイヤーパートでは、網の上で繊維を絡み合わせながら水を切り紙層を形成し、プレスパートでは、紙層をフェルトの上に乗せて2本のロールの間を通して脱水し、ドライパートでは、蒸気で加熱した鉄製のドライヤーに紙を押しつけて乾燥させ、サイズプレスでは、紙の表面に薬品を塗布して印刷に適した紙にし、カレンダーでは、鉄製のロールの間に紙を通して紙の厚さの調成や紙の表面を滑らかにする。その後は、リールによる巻き取りを行い、ワインダーやカッターで断裁を行なう。上記ライナーCは板紙であるので、上記ワイヤーパートにおいては、紙層を多層に形成する。以上のようにして、ライナーC用の紙が製造される。製造されたライナーC用の紙においては、粉砕された笹の模様が表れており、また、残渣物に残ったエキスにより全体が薄い緑色となっている。
【0040】
なお、カレンダーの前でドライパートの後に紙の表面を顔料等で塗工する塗工工程を設けてもよく、また、サイズプレスとカレンダーとの間にさらにドライパートを設けてもよい。また、リールで巻き取りを行なう前に、ペーパーマスターによる調湿工程を設けてもよい。
【0041】
なお、ライナーA用の紙や、中芯B用の紙も上記と同様の工程で製造するが、ライナーA用の紙の場合には、笹は混入されていないので、上記調成工程においては、笹は混入されない。また、中芯B用の紙の場合にも、上記調成工程においては笹は混入されず、また、中芯用の紙は薄く形成するので、上記ワイヤーパートにおいては、紙層は1層(単層)に形成される。
【0042】
上記のように、ライナーA用の紙と、中芯B用の紙と、ライナーC用の紙とを製造したら、それらの紙を使用して段ボール材を製造する(S12)。
【0043】
段ボール材の製造に際しては、従来と同様の方法により製造し、具体的には、コルゲータ(コルゲートマシン)により製造される。このコルゲータは通常のコルゲータと同様の構成であり、ライナーA用の紙を繰り出す手段と、中芯B用の紙を繰り出す手段と、ライナーC用の紙を繰り出す手段と、それぞれの紙を予熱する予熱ロールと、予熱された中芯B用の紙からコルゲート状の中芯を連続的に形成するための一組の歯形ロールと、形成された中芯の一方の面の頂部に接着剤を塗布する第1接着剤塗布手段と、接着剤が塗布された中芯BとライナーA用の紙とを歯形ロールの一方の上で連続的に貼り合わせて「シングルフェーサー」とよばれる片面ダンボール紙を形成するための圧着ロールを有する第1貼り合わせ手段と、形成された片面ダンボール紙の他方の面の頂部に接着剤を塗布する第2接着剤塗布手段と、接着剤を塗布された片面ダンボール紙とライナーC用の紙とを貼り合わせて「ダブルバッカー」とよばれる両面ダンボール紙を形成するとともに、接着剤を乾燥させ、走行の間に貼り付けを完了するように配置された第2貼り合わせ手段で、熱盤と多数の小さな圧着ロールを有する第2貼り合わせ手段などを有する。
【0044】
上記の構成のコルゲータによりライナーAと中芯BとライナーCとからなる段ボール材を製造する。
【0045】
段ボール材を製造したら、トムソン等の型抜き装置により図2に示す展開状態に段ボールの型抜きを行い、その後、製函装置により図1に示す容器の形状に組み立てる。つまり、糊代部に18、20、28、30に接着剤を塗布するとともに、紙製容器5を構成する各部を折り曲げて容器状に形成する。
【0046】
以上のようにして、紙製造工程(S11)と段ボール製造工程(S12)と製函工程(S13)を経て紙製容器5が製造される。
【0047】
なお、紙繊維の重量に対して10〜20%の重量の該残渣物を混合するので、紙製容器5を構成するライナーCにおいては、ライナーC全体の重量に対して9〜18重量%の笹の葉及び/又は稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入されていることになる。
【0048】
上記のように製造された紙製容器5を使用する際には、紙製容器5内に被収納物を収納して使用する。特に、紙製容器5の内側のライナーCには、笹が混入されているので、抗菌・消臭効果を得ることができ、特に、被収納部として食品を収納した場合に好適である。
【0049】
また、紙製容器5においては、内側のライナーCに粉砕された笹の模様が表れているので、見た目にも笹が混入されていることを視認することができ、斬新な模様を提供することができ、また、ライナーCは、残渣物に残ったエキスにより全体が薄い緑色となっていて、自然な色素により着色したものとすることができる。
【0050】
また、紙製容器5の製造に際して、ライナーC用の紙の製造段階におけるパルプ化工程の調成工程において、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を投入するので、紙製容器の状態でエキスを塗布する工程が必要ない。
【0051】
また、パルプの調成に際して、残渣物を混合するので、その分、紙パルプ資源を節約でき、製造コストを低減することができ、例えば、紙繊維の重量に対して10〜20%の重量の残渣物を混合させることにより、その分の紙繊維を節約することができる。また、クマザサのエキスそれ自体を用いるのではなく、クマザサの葉や稈からエキスを抽出した後の残渣物を用いるので、クマザサのエキスを塗布する場合に比べて製造コストを低減することができ、また、クマザサからエキスを抽出した後の残渣物を有効活用することができる。特に、該残渣物を有効活用できるので、その分廃棄の必要がなく、化石燃料の消費を低減でき、二酸化炭素の発生量も低減させることができる。
【0052】
また、上記の説明においては、紙製容器5の内側のライナーCに笹を混入したライナーを用いるものとして説明したが、外側のライナーAもライナーCと同様に笹が混入されたライナーとしてもよく、その場合には、紙製容器5の外側の面も抗菌・消臭することができる。例えば、複数の紙製容器5を重ねた状態で保管する場合に、外側の面も抗菌・消臭処理が施されているので、紙製容器5の下側に位置する紙製容器5の内側の面を清潔に保つことができる。また、容器の外側に粉砕された笹の模様が表れているので、見た目にも笹が混入されていることを視認することができ、斬新な模様を提供することができるとともに、容器の外側の面を薄い緑色で自然な色素により着色したものとすることができる。その場合には、段ボールの製造に際しては、両方のライナーに笹が混入された紙を用いることになる。
【0053】
また、紙製容器5の内側のライナーの代わりに外側のライナーに笹を混入したライナーとしてもよい。この場合にも、複数の紙製容器5を重ねた状態で保管する場合に、外側の面が抗菌・消臭処理が施されているので、紙製容器5の下側に位置する紙製容器5の内側の面に影響を及ぼすことがなく、また、容器の外側に粉砕された笹の模様が表れているので、見た目にも笹が混入されていることを視認することができ、斬新な模様を提供することができる。
【0054】
また、上記の説明では、紙製容器5を構成するブランクは、ライナーAと中芯BとライナーCとからなる両面段ボールにより構成されるものとしたが、ライナーAの構成を省略して、片面段ボールとしてもよい。その場合に、ライナーCを容器の内側としてもよいし、容器の外側としてもよい。
【0055】
また、上記の説明では、笹が混入された紙を用いて段ボールを製造し、その段ボールを用いて製函するものとして説明したが、段ボールを製造することなく、笹が混入された紙を用いて紙製容器を製造してもよい。例えば、笹が混入された板紙(厚紙)を製造し、該板紙により紙製容器を製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例に基づく紙製容器の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に基づく紙製容器の展開図である。
【図3】本発明の実施例に基づく紙製容器を構成するブランクの断面図である。
【図4】本発明の実施例に基づく紙製容器の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】紙製造工程における工程を示すフローチャートである。
【図6】パルプ化工程における工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
5 紙製容器
10 底部
12、14、16、22、24、26、32、34 側面部
18、20、28、30 糊代部
A、C ライナー
B 中芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製容器であって、
笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材により形成されていることを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
紙製容器であって、
紙製容器が、平板状の第1ライナーと、第1ライナーの一方の面に接着され、シート状部材を略波形形状に形成してなる中芯と、中芯の第1ライナー側とは反対側の面に接着された平板状の第2ライナーとを有する段ボール材により形成され、
第1ライナーと第2ライナーの少なくともいずれかが、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材により形成されていることを特徴とする紙製容器。
【請求項3】
紙製容器の内側には、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材が露出して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙製容器。
【請求項4】
紙製容器が底部と底部の辺部から立設した側面部とを有するトレー状を呈することを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の紙製容器。
【請求項5】
笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が、粉砕したクマザサの葉及び/又は稈を圧搾することによりエキスを抽出した後の残渣物であることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載の紙製容器。
【請求項6】
笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物が混入された紙材においては、紙材全体の重量に対して9〜18重量%の該残渣物が混入されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5に記載の紙製容器。
【請求項7】
紙製容器の製造方法であって、
紙製造工程であって、
古紙等のパルプ化材料をパルプ化するパルプ化工程で、パルプ化材料を調成前の紙繊維の状態にする調成前工程と、調成前工程で得られた紙繊維と、填料と、薬品と、笹の葉及び/又は笹の稈からエキスを抽出した後の残渣物を混合する調成工程と、を有するパルプ化工程と、
パルプ化工程で得られたパルプを製紙して、笹が混入された紙を製造する製紙工程と、
を有する紙製造工程と、
段ボールを製造する段ボール製造工程で、紙製造工程において製造された紙を段ボールにおけるライナーに用いて段ボールを製造する段ボール製造工程と、
段ボール製造工程において製造された段ボールを製函して容器を製造する製函工程と、
を有することを特徴とする紙製容器の製造方法。
【請求項8】
上記調成工程においては、調成前工程で得られた紙繊維の重量に対して10〜20%の重量の該残渣物を混合することを特徴とする請求項7に記載の紙製容器の製造方法。
【請求項9】
上記段ボール製造工程においては、一対の平板状のライナーと一対のライナー間に設けられた略波形形状の中芯とを有する両面段ボールを製造し、一対のライナーにおける少なくとも一方のライナーに上記紙製造工程で製造された笹が混入された紙を用い、上記製函工程においては、笹が混入された紙により製造されたライナーが容器の内側になるように製函することを特徴とする請求項7又は8に記載の紙製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−23841(P2010−23841A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183567(P2008−183567)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000129493)株式会社クラウン・パッケージ (21)
【Fターム(参考)】