説明

紙製容器

【課題】バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れ、かつ使用後に分別廃棄できる環境に優しい紙製容器を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも紙からなる紙容器の内面及び外面に、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムをそれぞれ積層してなる、フランジを有する紙製容器において、前記内面樹脂フィルムは、前記紙容器の内面より一回り大きく、前記外面樹脂フィルムは、前記紙容器の外面より一回り大きく、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムは、前記フランジの紙端部を覆うように接着されて接着部を形成し、前記フランジ部に蓋材をシールした容器であって、記内面樹脂フィルムと紙、及び前記外面樹脂フィルムと紙、との間で分離容易とし、前記接着部を、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムとの間で剥離容易としたことを特徴とする紙製容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの内容物を収納する紙製容器に関し、バリア性、耐水性、耐レトルト殺菌性、及び分別廃棄性に優れた容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レトルト殺菌される内容物を収納する容器としては、袋状、金属缶の容器が使用されている。袋状の容器は、レトルト殺菌後にカートンに入れ2次包装されて販売、または、袋状で販売されている。金属缶もその状態で販売されている。これらの容器は、消費者が内容物を食する時に、一旦別の容器に移し、加温調理して食するのが一般的である。最近では、電子レンジが一般家庭に普及されてきており、電子レンジで加温調理して食するようになってきている。しかし、使用済みの容器は、袋状は、一般可燃ごみとして、金属缶は不燃ごみとして廃棄されている。
【0003】
レトルト殺菌可能な容器として、内容物を食する時に、他の容器の移さず、電子レンジで加熱調理することが可能な容器、また使用後は、容器を分別廃棄して、再生可能な資源にできる容器が望まれている。例えば、紙製容器が可能であれば、容器自体も軽量で非常に廃棄性が良いことからメリットが大きい。
【0004】
しかし、食品などの内容物を収納する一次容器として用いられている紙製容器は、トレ―、お椀、カップなどの形状が広く使用されている。ほとんどの紙製容器には、内容物が直収納されているため、内容物と容器の内面が接触している。こうした一次容器としては、容器の内面に熱可塑性プラスチックシートを積層した紙製容器が用いられている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この紙製容器は、容器の内面のみに熱可塑性プラスチックシートを積層しているため、容器の外面には耐水、防水性など有しておらず、レトルト殺菌する場合、容器の外面が吸水してしまうという問題があった。容器の外面が吸水した際、紙の層間剥離などが起こり、容器の強度低下による変形や、外面に印刷層がある場合には、印刷層の剥がれによる美粧性や必要情報の欠損など、さまざまな不具合が生じる。
【0006】
またレトルト殺菌可能な紙製容器で、常温流通が可能で、他の容器に移し換えず、電子レンジで内容物を調理でき、食することできる便利性に富んだ容器が望まれている。また使用後も使用されている材料を分別廃棄して、再生資源化できるような素材構成の環境に優しい容器が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−254280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、バリア性、耐水性、レトルト耐性などの機能に優れ、かつ使用後に分別廃棄できる環境に優しい紙製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも紙からなる紙容器の内面及び外面に、内面
樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムをそれぞれ積層してなる、フランジを有する紙製容器において、
前記内面樹脂フィルムは、前記紙容器の内面より一回り大きく、
前記外面樹脂フィルムは、前記紙容器の外面より一回り大きく、
前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムは、前記フランジの紙端部を覆うように接着されて接着部を形成し、前記フランジ部に蓋材をシールした容器であって、
前記内面樹脂フィルムと紙、及び前記外面樹脂フィルムと紙、との間で分離容易とし、
前記接着部を、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムとの間で剥離容易としたことを特徴とする紙製容器である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記内面樹脂フィルムと紙、及び前記外面樹脂フィルムと紙、とが直接熱接着されていることを特徴とする請求項1記載の紙製容器である。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、前記内面樹脂フィルムが、イージーピール性を有するシーラント層を有していることを特徴とする請求項1または2記載の紙製容器である。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、前記接着部に、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムとの間で剥離させるつまみを隣接し、該つまみの接着部の形状が、のこぎり刃状の凹凸形状であること特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の紙製容器である。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、前記蓋材、前記内面樹脂フィルム、前記外面樹脂フィルムがガスバリア性を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の紙製容器である。
【0014】
本発明の請求項6に係る発明は、前記蓋材が、イージーピール性を有するシーラント層を有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の紙製容器。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紙製容器は、食品などの内容物を収納し、蓋材をシールして密封容器にした後、レトルト殺菌が可能で、常温流通できる容器である。この容器は、トレー形状、カップ形状などが可能で、消費者が内容物を食するときに、他の容器に移し換えず、そのまま電子レンジで加温調理することができ、調理後そのままの容器で内容物を食することができる。食後は、容器を内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムと紙とにそれぞれ分離し、蓋材、内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムなどは、一般可燃ごみに、また紙は、分別して再生資源ごみとして廃棄できる紙製容器である。
【0016】
本発明の請求項1によれば、紙容器の内面に内面樹脂フィルム、外面に外面樹脂フィルムが積層されているため、容器の内面のみならず外面にも耐水性を付与することができる。また内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムを容器より一回り大きくし、かつフランジの紙端部を覆うように接着することにより、紙端面からの吸水による容器の強度低下、変形など防ぐことができる。よってレトルト殺菌が可能となる。さらに外面に印刷した印刷部を剥がれなど防ぐことができる。本発明の紙製容器に食品などの内容物を収納し、蓋材にてシールした密封容器を、レトルト殺菌し、そのままの容器にて常温流通ができる紙製容器である。
【0017】
使用後の紙製容器を分別廃棄ができるように、内面樹脂フィルムと紙、及び外面樹脂フィルムと紙、との間で分離する。また内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとの接着部では、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとの間で剥離するようにしたことで、使用後の容器を紙、内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムとにそれぞれ分別して廃棄することができる。
【0018】
本発明の請求項2によれば、内面樹脂フィルムと紙、及び外面樹脂フィルムと紙、とが直接熱接着して積層することを特徴とする。即ち接着剤を介さず、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムを、それぞれ加熱して軟化させ、紙の表面に熱接着させて積層する。本来、紙へ積層する場合は、接着剤を介して積層した方が接着強度は向上する。しかし本発明は接着剤を使用せず、紙の表面に軟化したフィルムを食い込ませることで接着させ積層するのである。この方法で得られた接着強度でも、レトルト殺菌時の内圧の上昇や流通時での振動、取り扱いなどでフィルムと紙とが分離することはない。使用後の分別廃棄するときに、消費者の手で引っ張ることにより分離できる。
【0019】
本発明の請求項3によれば、内面樹脂フィルムがイージーピール性を有したシーラント層を有していることを特徴とする。接着部で内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとの間で分離するようにする。このイージーピール層で、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを剥離することで、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムと紙との間での分離も可能となり、分別廃棄することができる。
【0020】
本発明の請求項4によれば、接着部で、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを剥離し易くするために、隣接してつまみを設けたことを特徴とする。内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムがヒートシールされ接着しているために、フィルムを剥がし難い問題がある。そこで剥がし易くするために、接着した部分より外側に未接着部分を形成し、即ちつまみを隣接して形成したものである。そのつまみで、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを手でそれぞれ掴み、内面樹脂フィルムを横方向に引っ張り剥がすことができる。またつまみの接着部の形状を、のこぎり刃状の凹凸形状にする。剥がすときに、接着部の凸部が起点となり剥がし易くなる。即ち、接着面積が少ない部分から剥がすことになるため容易に剥がすことができる。
【0021】
本発明の請求項5によれば、蓋材、内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムとがガスバリア性を有していることを特徴とする。食品などの内容物を収納後、蓋材をシールして密封し、レトルト殺菌して、常温流通にて店頭にて陳列される。経時による食品の酸化防止や、腐敗を防ぐために、ガスバリア性が必要なる。特に内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムは、容器の形状にする追随する必要性から多少フィルムが伸びてもガスバリア性を保持するようなフィルムが好ましい。
【0022】
本発明の請求項6によれば、蓋材のシーラント層が、イージーピール性を有していることを特徴とする。レトルト殺菌時、輸送流通時の振動や外的な力が掛かっても蓋材が剥がれない強度が必要である。しかし消費者が食するときに、蓋材を剥がす必要性から、イージーピールができる蓋材を使用する。例えば、容器に収納された食品を電子レンジで加温調理するときは、蓋材の一部を剥がし、内圧が上昇しないように行う。加温調理後は、容器を取り出し、食することができる。
【0023】
容器内の食品を食したあとは、接着部に隣接したつまみを、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムをそれぞれ手で持ち、内面樹脂フィルムを横方向に引っ張ることで、接着部の凹凸形状の凸部が起点となり剥がれ、内面フィルムと紙とを分離する。次に外面樹脂フィルムと紙とを剥がして、蓋材、内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムは、一般可燃ごみ、紙は再生資源ごみへと分別できる環境にやさしい紙製容器である。
【0024】
本発明の紙製容器は、トレー、カップ、お椀などの形状の容器に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の紙製容器の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の紙製容器の一例を示すA−A´断面図である。
【図3】本発明の紙製容器の一例を示すB−B´断面図である。
【図4】本発明の紙製容器のつまみの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の紙製容器の分離後の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の紙製容器の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の紙製容器のつまみの一例を示す説明図である。
【図8】本発明の紙製容器のつまみの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態として、トレー容器について図に基づいて説明する。
【0027】
本発明の容器は、紙を用いて、組み立て後の容器の形状に合わせたブランク(図に示していない)を作成し、紙容器を組み立てる。その後紙容器の内面に内面樹脂フィルム、外面に外面樹脂フィルムを積層し、図1に示すトレ―容器を作成する。
【0028】
図1は、本発明の紙製容器の一例を示す説明図である。トレー容器1の一例を示す斜視図である。
【0029】
図2は、図1のトレー容器1のA−A´線における断面図である。
【0030】
本発明では、内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4を、トレー容器のフランジ9の紙の端部を覆うように接着する。このとき、トレー容器1の内面に積層された内面樹脂フィルム3は、トレー容器の内面、即ち紙の端部より一回り大きく、またトレー容器の外面に積層された外面樹脂フィルム4も、トレー容器の外面、即ち紙の端部より一回り大きくして接着する。紙の内面、外面、及び端面からの水の浸透を防ぐことができる。
【0031】
図3は、図1のトレー容器1のB−B´線における断面図である。使用後分別廃棄する時にトレー容器の内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4を紙2と分離する時に使用するつまみ5を設けている。このつまみ5は、接着部7に隣接して形成されている。特につまみ5の位置は、限定しないが、トレー容器を持ち易く、また内面フィルムを引っ張り易い位置に設けるとよい。図3では、つまみ5をトレー容器の角隅部に設けたものである。このつまみは、一箇所だけでなく、一箇所以上あってもよい。
【0032】
図4は、本発明の紙製容器のつまみ5の一例を示した説明図である。トレー容器のつまみ5の平面図である。つまみ5は、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとの接着部に隣接して形成されている。接着部は、のこぎり刃状の凹凸形状を示している。つまみ5は、内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4とを剥がし、かつ内面樹脂フィルム3と外面樹脂フィルム4と紙2とをそれぞれ分離するために使用される。
【0033】
つまみ5は、図3に示すように、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとは接着されておらず、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとをそれぞれ手で保持し、内面樹脂フィルムを横に引っ張ることで剥離することができる。またつまみ5と接着部7の境界が、のこぎり刃状の凹凸刑状6になるようにヒートシール板にてシールする。この場合、ヒートシール板を同形状にすることで可能である。剥がすときにその凸部14が起点となり、接着面積が少ない部分から剥がすことになるため容易に剥がすことができる。
【0034】
図5は、本発明の紙製容器の分離後の一例を示す説明図である。トレー容器1の内面樹脂フィルム3、紙2、外面樹脂フィルム4、を分離した状態を示している。内面樹脂フィルム3には、イージーピール性を有するシーラント層を有しているため、外面樹脂フィルム4と剥離し、また紙とは、熱接着(接着剤を介しない)のために、接着強度が弱く、手
で容易に分離することができる。分別廃棄することができる。
【0035】
本発明の紙製容器の形状は、四角のトレー形状の他に、多角形のトレー形状でもよい。また図6に示すようなカップ形状でもよい。図6は、本発明の紙製容器をカップ容器8にした一例を示している。
【0036】
図6に示すカップ容器は、フランジ9を有する胴部12と底部13からなっている。予め胴部ブランクの端縁を重ね合わせてテーパーを有する円筒形状の胴部材を形成する。加えて、円形状の底部ブランクの周縁を下向きに起立させた周縁部を有する底部13を形成する。
【0037】
次に胴部12の下部内面に底部13の周縁の外面を接合する。その後に、周縁部を覆うように胴部12の下端縁部を内方に折り曲げ、底部13の周縁部内面に接合させて脚部(図には示していない)を形成する。次に胴部12の上部周縁を外方に折り曲げフランジを形成する。ここで胴部12の上部周縁は外方に1周以上巻き込んでもよい。フランジは、上下から加圧圧着などの方法で平坦にしてもよい。また本発明のカップ容器は、テーパー状のカップ形状に限定されず、円筒状のカップ形状でも同様である。
【0038】
図7は、カップ容器8でのつまみ5の一例をした説明図である。つまみ5位置は、特に限定されない。
【0039】
図8は、本発明の紙製容器のつまみ5の一例を示す断面図である。フランジ9は、上から順に蓋材11、内面樹脂フィルム3、紙2、外面樹脂フィルム4、からなっている。フランジには、接着部7に隣接してつまみ5を設けている。つまみ5は、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが接着されておらず、それぞれの内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムを引っ張りことで剥離することができ、かつその力で内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムを紙から分離することができる。安定した剥がしの起点となるのが、接着部ののこぎり刃状の凸部であり、接着面積が少ない部分から剥がすことになるため容易に剥がすことができる。
【0040】
また蓋材をフランジ部の内面樹脂フィルムと接着することにより、密封した紙製容器にすることができる。この蓋材のシーラントがイージーピール性を有しているので食するときや、電子レンジで加温調理するときに剥がすことができる。蓋材は、できればつまみ5より、一回り大きくした方が、蓋材を剥がし易く便利性がよい。
【0041】
本発明の紙製容器に用いる紙2としては、ボール紙、板紙、コート紙が使用できる。特に容器の形状を保持する剛性を有する紙を適宜選定すればよい。
【0042】
予め紙からなるブランク(図に示していない)をトレー形状に製函する際に、図1に示すブランクの貼着片10に接着剤を用いて仮留し、トレー形状に組み立て、その後内面樹脂フィルムを成形、積層し、その後外面樹脂フィルムを成形、積層し、紙の両面を貼り合わせる。また仮留をしないで内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムを貼り合せてもよい。
【0043】
イージーピール性を有する内面樹脂フィルム3としては、接着層/中間層/イージーピール性を有するシーラント層からなる。接着層としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン共重合体、ブロックポリプロピレン共重合体などのポリプロピレン(PP)などのフィルム、中間層としてエチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンとアクリル酸の共重合樹脂(EAA)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのフィルムが使用できる。またイージーピール性を有するシーラント層は、上記熱融着樹脂にイージーピール性を付与することで可能である。また酸素バリア性、水蒸気バリア性などからポリプロピレン(PP)/エチレンビニルアルコール(EVOH)/イージーピール性を有したポリプロピレン(PP)の積層フィルムや、ポリプロピレン(PP)/ナイロン(NY)/イージーピール性を有したポリプロピレン(PP)の積層フィルムが使用できる。レトルト殺菌などのような熱水処理されるような場合は、上記の積層構成が好ましい。紙との熱接着面は、イージーピール性を有するシーラント層である。
【0044】
また外面樹脂フィルム4としては、接着層/中間層/シーラント層からなる。接着層としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン共重合体、ブロックポリプロピレン共重合体などのポリプロピレン(PP)などのフィルム、中間層として、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンとアクリル酸の共重合樹脂(EAA)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのフィルムが使用できる。シーラント層は、上記接着層に用いられるフィルムを使用できる。また酸素バリア性、水蒸気バリア性などからポリプロピレン(PP)/エチレンビニルアルコール(EVOH)/ポリプロピレン(PP)の積層フィルムが使用できる。レトルト殺菌のような熱水処理されるような場合は、上記の積層構成が好ましい。紙との熱接着面は、シーラント層である。
【0045】
積層フィルムを作成する方法は、単体フィルムを接着剤を介して貼り合せてもよく、また共押出し法により作成してもよい。紙製容器に積層した後の各樹脂フィルムの総厚としては、30μm以上500μm以下であることが望ましい。膜厚が500μmより厚いと、積層時フィルム膜厚が不均一になることがあり、好ましくない。また30μm未満ではピンホールが発生する心配がある。
【0046】
内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムを紙の内面、または外面にそれぞれ逆に積層しても構わない。この場合、内面樹脂フィルムを紙容器の外面に積層することになる。外面の積層されたフィルムを剥がすことになり、剥がし難いことから内面樹脂フィルムを剥がす方が好ましい。
【0047】
また紙製容器を分離するときに、つまみ5により接着部7の内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとが接着している部分を剥離する必要がある。その為に、内面樹脂フィルムには、イージーピール性を有したシーラント層を設けている。
【0048】
イージーピール性を有したシーラント層としては、凝集破壊タイプ、層間剥離タイプがある。
【0049】
凝集破壊タイプは、シーラント層自体が凝集破壊するタイプで、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂を混合した樹脂を用いて、フィルム化し、基材層に積層したり、またはこの樹脂の塗工液を塗布することにより使用することができる。
【0050】
例えばポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂とポリブテン系樹脂を混合した樹脂、またポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂を混合した樹脂などが使用することができる。
【0051】
層間剥離タイプは、共押出し法にて3層フィルムを作成し、中間層から剥離するものである。この共押出しフィルムを基材層に積層し使用することができる。
【0052】
イージーピール性を有したシーラント層として、上記2タイプのいずれでも使用できる。厚みなどは、剥離強度、剥離性などから適宜決めればよい。
【0053】
紙製容器を分離させるために、紙と内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムの積層は、熱接着(接着剤を介しない)で紙と貼り合わせる。即ち、紙と内面樹脂フィルム及び外面
樹脂フィルムとの貼り合せを、擬似接着にし、接着強度を弱くすることにより、紙と分離することができる。
【0054】
次に紙製容器の内面に内面樹脂フィルムを、外面に外面樹脂フィルムをそれぞれ積層する方法について説明する。
【0055】
紙製容器と内面樹脂フィルムとを積層する方法は、真空成形法、又は圧空成形法、あるいは真空成形法と圧空成形法を併用した成形法により行うことができる。内面樹脂フィルムから積層し、その後外面樹脂フィルムを積層してもよく、また同時に積層してもよい。
【0056】
トレー容器での一実施形態を説明する。
【0057】
型内に置いた紙からなるトレー容器の上に内面樹脂フィルムを載置する。トレー容器のフランジと内面樹脂フィルムをヒートシールなどの方法で接着させると同時に、赤外線や熱風で内面樹脂フィルムを加熱軟化させる。加熱温度などは、使用する内面樹脂フィルムの材質、厚さなどによって適宜決められる。その後、例えば真空ポンプのような真空源より吸引管、吸引孔を通じて型内の空気を吸引すると、型内の空気は紙トレー容器の折り込み部の隙間などを通して吸引され、その内部は、真空状態になるので、加熱軟化された内面樹脂フィルムは吸引圧力により湾曲してトレー容器の内面に密着成形され、トレー容器と一体的に成形される。またプラグアシストを使用して接着性を向上させることも可能である。紙とは熱接着されている。紙の内面に接着剤が塗布されていないので、接着性は弱く擬似接着になる。
【0058】
内面樹脂フィルムを紙の内面に積層した後、決められたトレー容器の端部より一回り大きく、かつつまみを入れた寸法で外形抜きを行う。
【0059】
次に内面樹脂フィルムを積層したトレー容器の外面に外面樹脂フィルムを積層する。積層する方法は、内面樹脂フィルムの積層と同様に行えばよい。また予め外面樹脂フィルムを容器形状に成形したものを貼り合わせることもできる。紙トレーの端部より一回り大きい部分では、内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムとを成形と同時にヒートシールし、接着する。又は別工程でヒートシールすることも可能である。またつまみの内面樹脂フィルムと外面樹脂フィルムは、ヒートシールせずに未接着にし、つまみを形成し、接着部では、つまみの接着部の形状を、のこぎり刃状の凹凸形状にする。接着部の形成は、成形積層と同時に行う。または別工程で熱接着してもよい。
【0060】
次に紙製容器に用いる蓋材11について説明する。蓋材は、酸素バリア、水蒸気バリア性、及び耐レトルト殺菌性を有した構成で、かつイージーピール性を有するシーラント層からなるものが好ましい。例えばポリプロピレン(PP)/エチレンビニルアルコール(EVOH)/イージーピール性を有したポリプロピレン(PP)の積層したフィルムが好ましい。また中間層としてナイロン(NY)を積層したフィルムも用いることができる。また無機化合物層を蒸着したフィルムも使用できる。無機化合物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、あるいはそれらの混合物などが使用できる。無機化合物を蒸着する方法は、真空蒸着方法やその他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法などを用いることもできる。
【0061】
また紙を中間層に用いることもできる。この場合は、バリア層としてアルミ箔、アルミ蒸着したフィルムや、その他無機化合物層を蒸着したフィルムを積層して用いることができる。この場合、紙の周端縁には、紙の端部を樹脂フィルムで覆うようにする必要がある。
【0062】
イージーピール性を有したシーラント層としては、凝集破壊タイプ、層間剥離タイプがある。
【0063】
凝集破壊タイプは、シーラント層自体が凝集破壊するタイプで、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂を混合した樹脂を用いて、フィルム化し、基材層に積層したり、またはこの樹脂の塗工液を塗布することにより使用することができる。
【0064】
例えばポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂とポリブテン系樹脂を混合した樹脂、またポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂を混合した樹脂などが使用することができる。
【0065】
層間剥離タイプは、共押出し法にて3層フィルムを作成し、中間層から剥離するものである。この共押出しフィルムを基材層に積層し使用することができる。
【0066】
イージーピール性を有したシーラント層として、上記2タイプのいずれでも使用できる。厚みなどは、内面樹脂フィルムとの接着強度、また剥離強度、剥離性などから適宜決めればよい。
【0067】
本発明の紙製容器は、内容物を収納後、レトルト殺菌可能な容器であることから常温流通が可能である。
【0068】
紙製容器の蓋材を一部剥離して、紙製容器のまま電子レンジ加熱、調理することにより食することができる。
【0069】
使用済みの紙製容器は、蓋材、内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルム、紙とそれぞれ分離し、蓋材、内面樹脂フィルム、外面樹脂フィルムは一般可燃ごみへ、また紙は再生資源ごみへと分別廃棄することができる。環境に優しいレトルト殺菌可能な紙製容器である。
【0070】
紙製容器の紙の外面に所望の絵柄、文字などを印刷することができる。また蓋材へも可能である。印刷方式は、オフセット印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などで行うことができる。
【0071】
以上、実施形態としてトレー形状の紙製容器について説明したが、カップ形状、お椀形状でも同様にして作成することができる。また板紙からブランク作成、組み立て成形して容器にする方法の他に、予めトレー形状、カップ形状、お椀形状にしたパルプモールド成形容器も使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の紙製容器は、食品を収納した状態でレトルト殺菌が可能である。常温流通できること、また容器の形状をトレー、カップなどの容器にし、そのまま電子レンジで加熱調理し、食することができる。使用済みの紙製容器は、分別廃棄できる環境に優しい紙製容器である。またボイル殺菌も可能なことから収納する内容物も広く展開できる。
【符号の説明】
【0073】
1:本発明の紙製容器(トレ―容器)
2:紙
3:内面樹脂フィルム
4:外面樹脂フィルム
5:つまみ
6:のこぎり刃状の凹凸形状
7;接着部
8;カップ容器
9;フランジ
10:貼着片
11:蓋材
12:胴部
13:底部
14:凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙からなる紙容器の内面及び外面に、内面樹脂フィルム及び外面樹脂フィルムをそれぞれ積層してなる、フランジを有する紙製容器において、
前記内面樹脂フィルムは、前記紙容器の内面より一回り大きく、
前記外面樹脂フィルムは、前記紙容器の外面より一回り大きく、
前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムは、前記フランジの紙端部を覆うように接着されて接着部を形成し、前記フランジ部に蓋材をシールした容器であって、
前記内面樹脂フィルムと紙、及び前記外面樹脂フィルムと紙、との間で分離容易とし、
前記接着部を、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムとの間で剥離容易としたことを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
前記内面樹脂フィルムと紙、及び前記外面樹脂フィルムと紙、とが直接熱接着されていることを特徴とする請求項1記載の紙製容器。
【請求項3】
前記内面樹脂フィルムが、イージーピール性を有するシーラント層を有していることを特徴とする請求項1または2記載の紙製容器。
【請求項4】
前記接着部に、前記内面樹脂フィルムと前記外面樹脂フィルムとの間で剥離させるつまみを隣接し、該つまみの接着部の形状が、のこぎり刃状の凹凸形状であること特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の紙製容器。
【請求項5】
前記蓋材、前記内面樹脂フィルム、前記外面樹脂フィルムがガスバリア性を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の紙製容器。
【請求項6】
前記蓋材が、イージーピール性を有するシーラント層を有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の紙製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91809(P2012−91809A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239662(P2010−239662)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】